(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 11/20 20160101AFI20240423BHJP
H02K 5/04 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H02K11/20
H02K5/04
(21)【出願番号】P 2020057516
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 亨
(72)【発明者】
【氏名】細井 信寿
(72)【発明者】
【氏名】シポンパンクル ソムチャイ
(72)【発明者】
【氏名】パッタラワディ- パーオブトン
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-230089(JP,A)
【文献】特開2014-050316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/20
H02K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータとロータとを有するモータ本体と、
少なくとも一部に金属製の放熱部を有し、前記モータ本体を収容するケーシングと、
前記ケーシングに収容され、
過電流が流れたときに溶断して前記モータ本体を
前記過電流から保護するヒューズを搭載した回路基板と、
前記ヒューズと前記放熱部との間に配置された絶縁性熱伝導部と
を備えた電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機であって、
前記ケーシングは、
前記モータ本体と前記回路基板を収容するケース本体と、
前記放熱部を有し、前記ケース本体に取り付けられ、前記回路基板に対向する蓋部と、
を有する
電動機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動機であって、
前記絶縁性熱伝導部は、弾性変形可能な絶縁性熱伝導樹脂である
電動機。
【請求項4】
請求項
3に記載の電動機であって、
前記絶縁性熱伝導樹脂は、シリコーン樹脂である
電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズを内蔵した電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載のように、過電流からモータを保護するガラス管ヒューズをモータケーシング内部に一体成型したモールドモータが知られている。
【0003】
ヒューズは、その定格電流よりも大きな電流が流れたときに溶断し、過電流から回路を保護する電流遮断素子である。一般に、ヒューズは、定格ディレーティングと、温度ディレーティングをもつ。ヒューズの選定においてはこれらのディレーティングを考慮し、設計条件を定める必要がある。定格ディレーティングは、ヒューズの規格等により定まるもので、例えば、0.75程度である。一方、温度ディレーティングは、ヒューズのもつ抵抗温度係数によって定まるもので、温度が高いほど定格電流が低くなるように決定される。したがって、ヒューズを選定するにあたっては、ヒューズの定常電流は、定格電流に対して定格ディレーティングと温度ディレーティングを掛けた値以下にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年における電動機の小型化、高機能化に伴い、定常電流と異常電流との差が小さくなりつつある。このような電動機に適用されるヒューズには、定常電流は流しつつ、異常電流が流れたときは速やかに溶断することが要求される。
【0006】
しかしながら、市場で入手できるヒューズの定格電流には限りがある。しかも、ヒューズの定格ディレーティングおよび温度ディレーティングを考慮した選定が必要とされる。このため、定常電流と異常電流との差が小さい回路に適合した定格電流のヒューズの選定が困難であった。
【0007】
また、使用環境温度が比較的高温の場合、要求される定常電流を安定に流すことができるように比較的高容量の(定格電流が大きい)ヒューズを選択せざるを得ない場合がある。しかし、電流に対するヒューズの溶断時間はヒューズが高容量のものほど長くなるため、異常電流が流れたときに、所望とする溶断時間で電流を遮断することができないという問題がある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、定常電流と異常電流との差が小さい場合でもヒューズを安定に動作させることができる電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電動機は、モータ本体と、ケーシングと、回路基板と、絶縁性熱伝導部とを備える。
上記モータ本体は、ステータとロータとを有する。
上記ケーシングは、少なくとも一部に金属製の放熱部を有し、上記モータ本体を収容する。
上記回路基板は、上記ケーシングに収容され、上記モータ本体を過電流から保護するヒューズを搭載する。
上記絶縁性熱伝導部は、上記ヒューズと上記放熱部との間に配置される。
【0010】
上記ケーシングは、上記モータ本体と上記回路基板を収容するケース本体と、上記放熱部を有し、上記ケース本体に取り付けられ、前記回路基板に対向する蓋部と、を有してもよい。
【0011】
上記絶縁性熱伝導部は、弾性変形可能な絶縁性熱伝導樹脂であってもよい。
【0012】
前記絶縁性熱伝導樹脂は、シリコーン樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、定常電流と異常電流との差が小さい場合でもヒューズを安定に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動機の断面図である。
【
図4】ヒューズの特性の一例を示す図であり、(A)は温度ディレーティング、(B)は溶断特性を示している。
【
図5】上記電動機における蓋部の構成の変形例を示す図であり、(A)は外面側斜視図、(B)は内面側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、第1の実施形態に係る電動機1の断面図であり、
図2は、その分解斜視図である。本実施形態では、電動機1として、アキシャルエアギャップ型電動機を例に挙げて説明する。
【0016】
電動機1は、円柱状のステータ2と、
図1においてステータ2の左右の両側面に所定の空隙(ギャップ)をもって対向するように配置される円盤状の一対のロータ3a,3bとを備えている。各ロータ3a,3bは、ステータ2を貫通し回転駆動力を出力する出力軸4に固定され、各ロータ3a,3bと、ステータ2とは出力軸4を中心軸として同軸に配置されている。ステータ2と各ロータ3a,3bは、電動機1のモータ本体Mを構成する。
【0017】
電動機1はさらに、電動機を駆動するための回路基板5を備えている。回路基板5は、円盤状に形成された基板本体の上に、後述する電源パワーICチップ51や制御用ICチップ52、ヒューズ53などの部品が実装されている。回路基板5は一方のロータ3a(
図1において左側のロータ3a)と蓋部6との間に配置されている。なお回路基板5の配置は、他方のロータ3b側であっても良い。
【0018】
ステータ2は、合成樹脂製のケース本体10に収容される。
図2に示すように、ステータ2は出力軸4を中心として円周方向に沿って環状に配置された複数個のポールメンバー21が含まれている。
図1を併せて参照して、ポールメンバー21は、左右一対のフランジ状のティース面22を有する固定子鉄心にコイル24を巻回してなり、上記固定子鉄心は、H字状に形成された複数枚の電磁鋼板を半径方向に沿って積層することにより形成される。
【0019】
各ポールメンバー21は、絶縁樹脂からなるインシュレータによって全体がティース面22を残して覆われている。インシュレータには、各ポールメンバー同士を連結するための図示しない連結手段が設けられている。なお、本発明においてステータ2の構成は任意的事項である。
【0020】
次に、一対のロータ3a,3bについて説明するが、一対のロータ3a,3bは同一構成であるため、この例ではロータ3a,3bを合わせて説明する。
図2に示すように、ロータ3a,3bは、円盤状のヨーク31と、同ヨーク31に出力軸4を中心に環状に配置される複数のマグネット32とを備えている。なお、本発明において、ロータ3a,3bの具体的な構成も任意的事項である。
【0021】
この例において、各ロータ3a,3bは同一の出力軸4を共有しているが、各ロータ3a,3bに出力軸4を有する2出力軸タイプであってもよい。
【0022】
この連結手段を介して各ポールメンバー21が環状に連結されたのち、軸受部23a,23bとともにインサート成形によって樹脂で一体にモールドされる。これにより、ステータ2の外周には、ケース本体10が一体形成される。なお、軸受部23a,23bは、一対のラジアルボールベアリングを有し、出力軸4を回転可能に軸支する。
【0023】
図1に示すように、ケース本体10は、例えばBMC樹脂などのエンジニアリングプラスチックからなり、両端にロータ3a,3bを収納するための収納凹部11a,11bが形成されている。ケース本体10の一方の端部(
図1では左端部)には、ブッシング7が嵌合されるガイド溝12z(
図2参照)が軸方向に沿ってコ字状に切り欠かれている。ブッシング7は、回路基板5を図示しない電源へ接続する電源ケーブル54を挟持する。
【0024】
収納凹部11a,11bは、ケース本体10の内周面とステータ2の両側面との間に形成される。収納凹部11a,11bは、ロータ3を回転可能に収納な可能な大きさ(深さ)を有し、この例において、一方の収納凹部11a(
図1では左側)は、回路基板5をさらに収納可能な深さを備えている。
【0025】
収納凹部11a,11bの開放端には、蓋部6a,6bが固定される係止面111が設けられている。係止面111は、収納凹部11の内周面と、収納凹部11の内径よりもさらに一回り大きい内径を有する側面との間に形成された段差面からなり、この係止面111に沿って蓋部6a,6bのフランジ部61が当接することで、蓋部6a,6bがケース本体10に固定される。ケース本体10および蓋部6a,6bは、モータ本体Mおよび回路基板5を収容するケーシングCを構成する。
【0026】
蓋部6a,6bは、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム合金などの金属材料で形成される。蓋部6a,6bは、ケース本体10の開放端に沿って圧入可能な円盤状に形成されており、その外周には、ケース本体10の係止面111に沿って係止されるフランジ部61が設けられている。蓋部6a,6bの中央には、出力軸4を外部に引き出すための引出部62が設けられている。引出部62は、蓋部6a,6bの表面側に向かって突出されている。
【0027】
回路基板5は、電源パワーIC51や制御用IC52、ヒューズ53などの部品が搭載される実装面を蓋部6aに向けて収容凹部11aに収容されている。電源パワーIC51は、電源ケーブル54を介して入力される電力を所定の電力に変換する。制御用IC52は、電源パワーIC51によって生成された電力を基に、コイル24を励磁するためのコイル電流を生成する。
【0028】
ヒューズ53は、コイル24の短絡などにより回路基板5に異常電流が流れたときに電流を遮断し、回路基板5やコイル24を焼損から保護する素子である。ヒューズ53は、電動機1の駆動電流(コイル電流)の最大値以上の定格電流を有し、予め設定された異常電流が流れたときに溶断する電流遮断特性を有する。
【0029】
電源パワーIC51および制御用IC52は、蓋部6aとの間に所定の間隙が形成されることにより、蓋部6aと電気的に絶縁される。一方、ヒューズ53は、絶縁性熱伝導部63を挟んで、蓋部6aと対向している。
【0030】
図3は、ヒューズ53と蓋部6aとの関係を示す要部の側断面図である。ヒューズ53は、ヒューズエレメント(導線)を収容する本体部53aと、本体部53aの両端に設けられた一対の電極部53bとを有する表面実装型のチップヒューズであり、一対の電極部53bが回路基板5にはんだ付けされる。本体部53aは、セラミック管あるいはガラス管などの管体を含む。ヒューズ53は、回路基板5に直接はんだ付けされるものに限られず、予め回路基板5上に搭載された端子台(ソケット)に挿着されるものであってもよい。
【0031】
絶縁性熱伝導部63は、ヒューズ53の上面と蓋部6aの内面(
図3において蓋部6aの下面)との間に挟み込まれる。蓋部6aは金属材料で形成されているため、ヒューズ53で発生した熱を絶縁性熱伝導部63を介して放出する放熱部として機能する。
【0032】
本実施形態において絶縁性熱伝導部63は、電気絶縁性の材料からなる熱伝導シートであり、典型的には、シリコーン系/非シリコーン系の熱伝導性樹脂のほか、熱伝導性セラミック等であってもよい。絶縁性熱伝導部63を熱伝導性樹脂で形成した場合、絶縁性熱伝導部63が弾性変形可能であるため、蓋部6aに加わる外力の緩衝効果が得られる。このため、蓋部6aに加わる応力が直接ヒューズ53に作用することを防止できる。
【0033】
絶縁性熱伝導部63の厚みTは、ヒューズ53と蓋部6aとの間の電気絶縁性を確保できれば特に限定されず、絶縁性熱伝導部63を構成する熱伝導シートの弾性や熱伝導特性などに応じて適宜設定可能である。絶縁性熱伝導部63は空気よりも高い熱伝導性を有していればその熱伝導率は特に限定されず、好ましくは、0.1W/m・K以上である。
【0034】
絶縁性熱伝導部63は、粘着性を有するシートであってもよい。この場合、絶縁性熱伝導部63は、あらかじめヒューズ53または蓋部6aに貼着され、ケース本体10に対する蓋部6aの取り付け時(本実施形態では圧入時)に、絶縁性熱伝導部63がヒューズ53と蓋部6aとの間に挟み込まれる。
【0035】
なお、絶縁性熱伝導部63は、シート状のものに限られず、ペースト材料の硬化物であってもよい。この場合、ヒューズ53は回路基板5上において上記ペースト材料でモールドされる。ペースト材料の硬化処理後、ケース本体10に対する蓋部6aの取り付け時(本実施形態では圧入時)に蓋部6aが上記ペースト材料の硬化体に当接される。
【0036】
以上のように構成される本実施形態の電動機1において、回路基板5は、ステータ2のコイル24へ駆動電流を入力し、ステータ2に回転磁界を生成させる。これにより、ロータ3a,3bがステータ2に対して回転し、その回転駆動力が出力軸4を介して外部機器に伝達される。外部機器としては、例えば、空気調和機におけるファン装置(室内ファンまたは室外ファン)が挙げられる。
【0037】
電動機1の駆動時、コイル24からの発熱などにより発熱し、ケーシングCの内部が所定温度(例えば、100℃)に上昇する。電動機1は、ヒューズ53と蓋部6aとの間に絶縁性熱伝導部63を備えているため、ヒューズ53に作用する熱が絶縁性熱伝導部63を通って放熱部としての蓋部6aへ伝達される。これにより、ヒューズ53の放熱性が高まるため、ヒューズ53はその周囲の温度よりも低温に維持される。
【0038】
上述のように、ヒューズ53は、コイル24の短絡などにより回路基板5に異常電流が流れたときに電流を遮断し、回路基板5やコイル24を焼損から保護する。ヒューズ53は、電動機1の駆動電流以上の定格電流を有し、予め設定された異常電流が流れたときに溶断する電流遮断特性を有する。以下、ヒューズ53の定格電流について説明する。
【0039】
一般にヒューズは定格ディレーティングと温度ディレーティングをもつため、ヒューズの定常電流は、次式で示すように、定格電流に対して定格ディレーティングと温度ディレーティングを掛けた値以下にする必要がある。
定常電流≦定格電流×定常ディレーティング×温度ディレーティング …(1)
【0040】
温度ディレーティングは、ヒューズのもつ抵抗温度係数によって定まるもので、温度が高いほど抵抗値が大きくなる。
図4(A)に、ヒューズの温度ディレーティング特性の一例を示す。同図において横軸は周囲温度、縦軸は定格電流の変化率(%)である。典型的には、室温より高い温度下では定格電流が下がり、室温より低い温度下では定格電流が上がる傾向を示す。
また、
図4(B)に、ヒューズのI-t特性の一例を示す。同図において横軸は電流値を示し、縦軸は溶断時間を示している。つまり、I-t特性は、ヒューズに流れる電流の大きさと溶断時間との関係を示すヒューズの溶断特性に相当する。一般的な溶断特性としては、同図に示すように電流値が大きいほど溶断時間は短く、電流値が同じでも定格電流が大きいヒューズほど溶断時間は長くなる。
【0041】
一例として、定常電流が0.825A(電圧AC250V)、周囲温度が100℃の条件で使用されるヒューズの選定方法について説明する。定常ディレーティングが0.8、温度ディレーティングが0.8のヒューズの場合、定格電流は、上記(1)式より、次式のように算出される。
0.825[A]/(0.8×0.8)=1.289[A] …(2)
したがって、上記条件で使用されるヒューズとしては、1.289A以上の容量、すなわち定格電流をもつものでなければならない。
ところが、市場で入手できるヒューズの定格電流が
図4(B)に示すように小さいものから順に1A、1.25A、1.6A、2A、2.5A、3.15A、4Aおよび5Aの8種類しかない場合、1.6Aのものを選ばざるを得ない。このとき、異常電流が3Aの場合、溶断時間は20秒以上かかることになるため、回路保護という観点からは安全面に不安が残る。
【0042】
これに対して本実施形態の電動機1は、ヒューズ53が絶縁性熱伝導部63を介して金属製の蓋部6aに接続されているため、絶縁性熱伝導部63がない場合と比較して、ヒューズ53の放熱性が高められる。
例えば、蓋部6aへの放熱により、ヒューズ53の温度を20℃低くできるとした場合(周囲温度80℃に相当)、
図4(A)に示す温度ディレーティング特性を有するヒューズの場合では、温度ディレーティングは0.85以上となるため、定格電流は、次式のようになる。
0.825[A]/(0.8×0.85)=1.213[A] …(2)'
この場合、ヒューズ53の定格電流としては、上述の例では1.25Aのものを選ぶことができる。このとき、異常電流が3Aの場合、溶断時間は0.3秒以下にすることができるため、定格電流が1.6Aのものを選定した場合よりも、異常電流が流れたときに速やかに溶断して回路を過電流から保護することができるようになる。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、回路基板5上のヒューズ53と放熱部としての蓋部6aとの間に配置された絶縁性熱伝導部63を備えているため、ヒューズ53を周囲環境温度よりも低温に維持することができる。これにより、ヒューズの温度ディレーティングに起因する定格電流の低下を抑えられるため、限られた定格電流のヒューズのラインアップの中から使用可能なヒューズの選定の幅を広げることができる。
【0044】
その結果、ヒューズのディレーティング特性の関係から選択できなかった定格電流のヒューズの放熱性を高めることでその選択が可能となる。さらに、周囲温度が高いなどの過酷な条件下で使用されるヒューズであってもその溶断時間が長くなるのを防ぐことができる。これにより、定常電流と異常電流との差が小さい場合であってもヒューズ53を安定に動作させることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0046】
例えば、以上の実施形態では、電動機として、ステータの軸方向にロータが間隙をおいて対向するアキシャルエアギャップ型電動機を例に挙げて説明したが、これに限らず、ステータの径方向にロータが間隙をおいて対向するラジアルギャップ型電動機にも本発明は適用可能である。
【0047】
また、以上の実施形態では、放熱部としての蓋部6aの全体を金属材料で形成したが、これに限られず、ヒューズ53に対向する部位のみ金属材料で構成されてもよい。
例えば、
図5(A),(B)に、変形例に係る蓋部60の外面側斜視図および内面側斜視図である。
同図に示すように、蓋部60は、全体が合成樹脂材料で形成され、ヒューズ53と対向する領域のみ金属製の放熱部64が設けられる。合成樹脂材料としては、例えば、ABS(アクロル二トリル-ブタジエン-スチレン)やPPS(ポリ-フェニレン-サルファイド)などが挙げられる。
放熱部64は矩形の金属板であり、その表面および裏面が蓋部60の外面および内面の一部を構成している。
このような構成によっても、上述の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
この例において、放熱部64は、蓋部60にインサート成型によって一体化されているが、これ以外に、あらかじめ成型された蓋部60に開口部を設け、その開口部に放熱部64を接着などの方法で固定してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…電動機
2…ステータ
3a,3b…ロータ
4…出力軸
5…回路基板
6a…蓋部(放熱部)
10…ケース本体
53…ヒューズ
63…絶縁性熱伝導部
64…放熱部
C…ハウジング
M…モータ本体