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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】点火コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/12 20060101AFI20240423BHJP
   F02P 15/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01F38/12 G
H01F38/12 J
H01F38/12 L
F02P15/00 303B
F02P15/00 303H
F02P15/00 301C
F02P15/00 301E
F02P15/00 302B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020062931
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163832
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 繁美
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-184696(JP,A)
【文献】特開2006-049475(JP,A)
【文献】特開2006-324515(JP,A)
【文献】特開2004-353572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0025837(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/12
F02P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体(21)、及び前記ケース本体から突出した筒状のタワー部(22)を有するケース(2)と、
前記タワー部内に配された抵抗体(3)と、
前記ケース本体内に充填された充填樹脂(4)と、を備え、
前記タワー部は、前記抵抗体に対して前記タワー部の突出方向(X)における先端側から対向する先端対向壁(221)と、前記抵抗体に対して前記突出方向における基端側から対向する基端対向壁(222)と、前記先端対向壁と前記基端対向壁とをつなぐ周壁(223)と、を備える抵抗配置部(220)を有し、
前記先端対向壁には、前記抵抗体を前記突出方向の先端側へ向かって露出させる先端開口部(225)が形成されており、
前記抵抗体が、前記先端対向壁と前記基端対向壁との間に挟まれた状態において、前記先端対向壁は、前記先端開口部の周り全周にわたって前記抵抗体に当接しており、
前記タワー部は、前記ケース本体内の空間に位置する前記周壁の基端側に、前記タワー部内における前記抵抗配置部内の領域と前記ケース本体内の領域とを連通する連通穴(220a)を有し、
前記連通穴を介して前記タワー部内における前記抵抗体の周囲に前記充填樹脂の一部が充填されている、点火コイル(1)。
【請求項2】
前記連通穴は、前記周壁の周方向において、前記周壁を径方向に貫通するとともに基端側が開放されるように、複数設けられており、
前記先端対向壁は、前記抵抗体に溶着されてなる、請求項1に記載の点火コイル。
【請求項3】
前記ケース本体には、互いに磁気的に結合された一次コイル(11)及び二次コイル(12)が配されており、前記基端対向壁は、前記二次コイルと前記抵抗体とを電気的に接続する接続部材(5)を内側に挿入した基端開口部(224)を有する、請求項1又は2に記載の点火コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関用の点火コイルとして、互いに磁気結合された一次コイル、二次コイル、及びコアと、スパークプラグにおいて放電が発生した際の雑音を抑制する抵抗体と、ケースとを備えたものが開示されている。当該ケースは、一次コイル及び二次コイルを収納するケース本体と、ケース本体から突出した筒状のタワー部とを有する。
【0003】
また、特許文献1に記載の点火コイルにおいて、ケース本体内には充填樹脂が充填されている。そして、特許文献1には、抵抗体の周囲にも充填樹脂を配した例が開示されている。抵抗体の周囲を充填樹脂によって封止することで、抵抗体の劣化を抑制することができる。
【0004】
さらに、特許文献1において、タワー部の内周部は、内周側に突出するタワー縮径部を備え、抵抗体の先端部は、先端側に突出する抵抗突出部を備える。そして、抵抗突出部をタワー縮径部に圧入することで、タワー縮径部と抵抗突出部との間がシールされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-155212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の点火コイルにおいては、抵抗体とタワー部との圧入部付近に応力が発生し、冷熱ストレスによってタワー部に亀裂が生じるおそれがあり、抵抗体及びタワー部の耐久性の低下が懸念される。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、抵抗体及びタワー部の耐久性を向上させることができる内燃機関用の点火コイルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ケース本体(21)、及び前記ケース本体から突出した筒状のタワー部(22)を有するケース(2)と、
前記タワー部内に配された抵抗体(3)と、
前記ケース本体内に充填された充填樹脂(4)と、を備え、
前記タワー部は、前記抵抗体に対して前記タワー部の突出方向(X)における先端側から対向する先端対向壁(221)と、前記抵抗体に対して前記突出方向における基端側から対向する基端対向壁(222)と、前記先端対向壁と前記基端対向壁とをつなぐ周壁(223)と、を備える抵抗配置部(220)を有し、
前記先端対向壁には、前記抵抗体を前記突出方向の先端側へ向かって露出させる先端開口部(225)が形成されており、
前記抵抗体が、前記先端対向壁と前記基端対向壁との間に挟まれた状態において、前記先端対向壁は、前記先端開口部の周り全周にわたって前記抵抗体に当接しており、
前記タワー部は、前記ケース本体内の空間に位置する前記周壁の基端側に、前記タワー部内における前記抵抗配置部内の領域と前記ケース本体内の領域とを連通する連通穴(220a)を有し、
前記連通穴を介して前記タワー部内における前記抵抗体の周囲に前記充填樹脂の一部が充填されている、点火コイル(1)にある。
【発明の効果】
【0009】
前記態様の点火コイルにおいて、タワー部は、抵抗体に対してタワー部の突出方向における先端側から対向する先端対向壁と、抵抗体に対して突出方向における基端側から対向する基端対向壁と、を有する。このように、抵抗体が先端対向壁と基端対向壁とに突出方向に挟まれた状態において、先端対向壁は、先端開口部の周り全周にわたって抵抗体に当接している。それゆえ、抵抗体の先端部と先端対向壁との当接部において充填樹脂の漏れを防止でき、抵抗体及びタワー部に応力が集中することを抑制しやすい。さらに、タワー部は、タワー部内における抵抗体が配される領域とケース本体内の領域とを連通する連通穴を有する。そして、連通穴を介してタワー部内における抵抗体の周囲に充填樹脂の一部が充填されている。それゆえ、抵抗体を、先端対向壁と基端対向壁とによって突出方向に挟んだ構成であっても、連通穴を介して抵抗体の周囲に充填樹脂を充填させることができる。それゆえ、抵抗体の表面劣化を抑制することができる。
【0010】
以上のごとく、前記態様によれば、抵抗体及びタワー部の耐久性を向上させることができる内燃機関用の点火コイルを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における、点火コイルの断面図。
図2】実施形態1における、点火コイルにおける抵抗体周辺の拡大断面図。
図3】実施形態1における、点火コイルにおける抵抗体周辺の拡大断面図であって、連通穴を通過する断面図。
図4図2のIV視図であって、抵抗配置部の基端部及び抵抗体を表した図。
図5図2のV視図であって、抵抗配置部の先端部及び抵抗体を表した図。
図6】実施形態1における、抵抗配置部の基端部の斜視図。
図7】実施形態1における、ケースに抵抗体を組み付ける様子を説明する図であって、タワー部内に抵抗体を挿入するときの様子を示す断面図。
図8】実施形態1における、ケースに抵抗体を組み付ける様子を説明する図であって、受け治具及び超音波ホーンによって抵抗配置部を挟んだ様子を示す断面図。
図9】実施形態1における、ケースに抵抗体を組み付ける様子を説明する図であって、先端対向壁を抵抗体に溶着する様子を示す断面図。
図10】実施形態2における、抵抗配置部の基端部の斜視図。
図11】実施形態3における、点火コイルにおける抵抗体周辺の拡大断面図。
図12】実施形態3における、点火コイルにおける抵抗体周辺の拡大断面図であって、連通穴を通過する断面図。
図13】実施形態3における、ケースに抵抗体を組み付ける様子を説明する図であって、タワー部内に抵抗体を挿入するときの様子を示す断面図。
図14】実施形態3における、溶着前の抵抗配置部の斜視図
図15】実施形態3における、ケースに抵抗体を組み付ける様子を説明する図であって、受け治具及び超音波ホーンによって抵抗配置部を挟んだ様子を示す断面図。
図16】実施形態3における、ケースに抵抗体を組み付ける様子を説明する図であって、先端対向壁及び基端対向壁のそれぞれを抵抗体に溶着する様子を示す断面図。
図17】実施形態4における、溶着前の抵抗配置部の基端部の斜視図。
図18】実施形態5における、溶着前の抵抗配置部の基端部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
点火コイルの実施形態につき、図1図9を用いて説明する。
図1に示すごとく、本形態の点火コイル1は、ケース2、抵抗体3、及び充填樹脂4を備える。
【0013】
ケース2は、ケース本体21、及びケース本体21から突出した筒状のタワー部22を有する。以後、ケース本体21からのタワー部22の突出方向をX方向とする。X方向の一方側であって、ケース本体21からタワー部22が突出する側(例えば図1の下側)を先端側といい、その反対側を基端側という。抵抗体3は、タワー部22内に配されている。充填樹脂4は、ケース本体21内に充填されている。
【0014】
図1図3に示すごとく、タワー部22は、先端対向壁221と基端対向壁222とを備える。先端対向壁221は、抵抗体3に対して先端側から対向している。基端対向壁222は、抵抗体3に対して基端側から対向している。先端対向壁221には、抵抗体3を先端側へ向かって露出させる先端開口部225が形成されている。先端対向壁221は、先端開口部225の周り全周にわたって、抵抗体3に当接している。図3図6に示すごとく、タワー部22は、タワー部22内における抵抗体3が配される領域とケース本体21内の領域とを連通する連通穴220aを有する。連通穴220aを介してタワー部22内における抵抗体3の周囲に充填樹脂4の一部が充填されている。
以後、本形態の点火コイル1につき詳説する。
【0015】
点火コイル1は、自動車、コージェネレーション等の内燃機関に設置されるスパークプラグに接続され、スパークプラグに高電圧を印加する手段として用いられる。
【0016】
図1に示すごとく、ケース2は、電気的絶縁性を有する熱可塑性樹脂等からなり、ケース本体21とタワー部22とを一体に成形してなる。ケース本体21は、X方向の基端側に開放されている。ケース本体21は、その内側の空間を外周側から覆うケース側壁211と、ケース側壁211を先端側から覆うように形成されたケース底壁212とを備える。ケース底壁212の略中央位置から、先端側に向かってタワー部22が延設されている。
【0017】
図3図4に示すごとく、タワー部22は、厚みを有する筒状に形成されている。ケース2単体を見たとき(つまり、ケース2内に充填樹脂4等が充填されていない状態)、タワー部22内の空間は、ケース本体21内の空間に連通している。タワー部22の基端部に、抵抗体3を配置した抵抗配置部220を備える。抵抗配置部220は、先端対向壁221と基端対向壁222と周壁223とを備える。前述のごとく、先端対向壁221は抵抗体3に対して先端側から対向しており、基端対向壁222は抵抗体3に対して基端側から対向している。周壁223は、先端対向壁221と基端対向壁222とをX方向につなぐとともに、抵抗体3を外周側から覆うよう形成されている。
【0018】
図4図6に示すごとく、基端対向壁222は、円環状に形成されている。すなわち、基端対向壁222は、その中央部に、X方向に貫通した基端開口部224を有する。図4に示すごとく、基端側から見たとき、基端開口部224は、抵抗体3の基端面331の内側に収まるよう、抵抗体3の基端面331よりも小径に形成されている。そして、図2図3に示すごとく、基端対向壁222は、抵抗体3の基端面331の外周端部に当接している。基端開口部224には、抵抗体3と後述の二次コイル12との導通を図るための接続部材5が挿入されており、接続部材5は抵抗体3に接触している。基端対向壁222の外周端縁は、周壁223の基端部につながっている。
【0019】
図3図4図6に示すごとく、周壁223の基端部は、周壁223の基端縁から先端側に凹むよう形成された連通穴220aを有する。連通穴220aは、周壁223を径方向に貫通するとともに、基端側が開放されている。連通穴220aは、複数(具体的には4つ)形成されており、周方向に等間隔に設けられている。そして、周壁223の基端部における、周方向に隣接する連通穴220a同士の間の部位は、基端側に突出するよう形成された突出片223aとなっている。突出片223aの内周面に連結するよう、基端対向壁222が形成されている。
【0020】
図2図3に示すごとく、連通穴220aの先端位置は、抵抗体3の後述の基端キャップ33よりも基端側に位置しているが、これに限られない。連通穴220aは、抵抗体3によって塞がれていない。本形態において、周壁223は、抵抗体3と径方向に間隔を設けるよう形成されている。すなわち、周壁223の内周面の直径は、抵抗体3の直径よりも大きい。これにより、連通穴220aと抵抗体3との間にも間隔が形成されている。抵抗体3の先端側に、前述の先端対向壁221が形成されている。なお、周壁223の内周面の直径は、抵抗体3の直径と同等にすることも可能である。この場合、連通穴220aを、後述の基端キャップ33よりもX方向に長く、抵抗体3の後述の抵抗本体31に向かって開口するよう形成すれば、充填樹脂4を抵抗本体31の周囲に配することが可能となる。
【0021】
図2図3図5に示すごとく、先端対向壁221は、抵抗体3の先端面321の外周部の全周を包み込むよう形成されている。先端対向壁221は、後述する溶着により、抵抗体3の先端面321の全周に当接するよう形成されている。先端対向壁221は、その中央部に、X方向に貫通した先端開口部225を有する。図5に示すごとく、先端側から見たとき、先端開口部225は、抵抗体3の先端面321の内側に収まるよう、抵抗体3の先端面321よりも小径に形成されている。
【0022】
図2図3に示すごとく、タワー部22における抵抗配置部220から先端側には、抵抗配置部220の内径よりも内径が大きく、先端側に開放されている大径筒面部226が形成されている。図示は省略するが、大径筒面部226内には、タワー部22に取り付けられたジョイント部材内に配されたコイルバネの一部が挿入される。コイルバネは、抵抗体3とスパークプラグとを導通させるために用いられる。
【0023】
タワー部22の外周部には、図示しないジョイント部材を嵌合保持するための嵌合突起227が形成されている。嵌合突起227は、タワー部22の全周に形成されており、外周側に突出するよう形成されている。ジョイント部材には、タワー部22の突出部に嵌合可能な凹部が形成されており、ジョイント部材がタワー部22に組み付いた状態においては、タワー部22の突出部とジョイント部材の凹部とが嵌合することで、ジョイントがタワー部22から抜けることが防止される。
【0024】
図2図3に示すごとく、抵抗配置部220に、抵抗体3が配置されている。本形態において、抵抗体3は、抵抗本体31と、抵抗本体31の先端部を覆う先端キャップ32と、抵抗本体31の基端部を覆う基端キャップ33とを備える。抵抗本体31は、例えばセラミック抵抗や巻き線抵抗によって構成される。先端キャップ32及び基端キャップ33は、例えば金属板をカップ状にプレス成形することにより形成される。先端キャップ32内に抵抗本体31の先端部が挿入されており、基端キャップ33内に抵抗本体31の基端部が挿入されている。抵抗体3は、先端キャップ32及び基端キャップ33が配された部位が、それ以外の部位よりも直径が大きくなるよう形成されている。抵抗体3は、X方向において対称に形成されている。
【0025】
図2図3に示すごとく、抵抗体3の先端キャップ32の先端面321は、抵抗配置部220の先端対向壁221に対して全周において当接している。また、基端キャップ33の基端面331は、抵抗配置部220の基端対向壁222に対して当接している。そして、抵抗体3の略全体と、抵抗配置部220の周壁223との間には、若干の間隙が形成されている。
【0026】
図1に示すごとく、ケース本体21内には、互いに磁気的に結合された一次コイル11、二次コイル12、及びコア13が収容されている。一次コイル11及び二次コイル12は、同心状に内外周に重なって配置されている。二次コイル12は、一次コイル11の外周側において、一次コイル11を構成する一次電線よりも細い二次電線を、一次電線よりも多い巻回数で巻回して形成してある。一次コイル11は、ケース本体21から突出するよう形成されたコネクタ部213の図示しない端子に電気的に接続される。当該コネクタ部213を介して、外部機器から一次コイル11に電力が供給される。二次コイル12の高圧出力側は、導電性の接続部材5を介して抵抗体3に電気的に接続されている。一次コイル11の内周側には、コア13が挿入されている。コア13は、一次コイル11への通電によって生じる磁束を通過させるものである。例えば、コア13は、鉄心、フェライト、アモルファス等によって構成することができる。
【0027】
そして、ケース2内には、充填樹脂4が充填されている。充填樹脂4は、例えば電気的絶縁性を有する熱硬化性樹脂からなり、ケース2内に収容された点火コイル1の構成部品を封止している。充填樹脂4をケース2内に充填するに当たっては、充填樹脂4を構成する、硬化前の液状樹脂をケース本体21の基端側の開放部から注ぎ込む。これにより、液状樹脂は、ケース本体21内の隙間に充填される。ここで、図3に示すごとく、当該液状樹脂は、連通穴220aを通り、抵抗配置部220内における抵抗体3の周囲にも充填される。そして、前述のごとく、抵抗体3の先端キャップ32の先端面321と先端対向壁221の先端開口部225の周囲とが全周により当接していることにより、当該当接部よりも先端側に液状樹脂が漏れ出ることを防止している。つまり、本形態においては、抵抗体3の先端キャップ32の先端面321と先端対向壁221との当接部から基端側のケース2の内側領域に液状樹脂が充填されている。ケース2内に液状樹脂が行きわたった後に、当該液状樹脂の温度を下げることにより、当該液状樹脂が硬化して充填樹脂4となる。
【0028】
次に、図7図9を用いて、本形態における抵抗配置部220内に抵抗体3を配置する方法の一例につき説明する。
本形態において、ケース2は、成形後、抵抗体3を挿入する前の状態と、抵抗体3を保持した状態との間において、抵抗配置部220の形状が異なっている。図7に示すごとく、ケース2を成形した後、ケース2に抵抗体3を挿入する前の状態において、抵抗配置部220の先端部(すなわち最終的に先端対向壁221となる部位)は、X方向に沿った円筒状の初期先端部61となっている。そして、初期先端部61の先端側から、抵抗体3が抵抗配置部220内に挿入される。
【0029】
次いで、図8に示すごとく、抵抗配置部220の基端側に受け治具14を配置し、抵抗配置部220の先端側に超音波ホーン15を配置し、受け治具14と超音波ホーン15とで抵抗配置部220を挟み込む。超音波ホーン15は、超音波振動を生じさせることができるものである。超音波ホーン15の基端側を向くホーン端面151は、変形後の初期先端部61(すなわち溶着後の先端対向壁221)に沿うよう湾曲している。
【0030】
そして、受け治具14と超音波ホーン15とで抵抗配置部220を挟み込みつつ、超音波ホーン15において超音波振動を生じさせる。これにより、図9に示すごとく、初期先端部61が溶融してホーン端面151に沿って変形するとともに、当該初期先端部61が溶融した分、超音波ホーン15が基端側に移動する。そして、最終的には、初期先端部61が、全周において抵抗体3の先端キャップ32を覆うよう溶着され、これにより先端対向壁221が形成される。図9において、溶融前の初期先端部61を破線で表している。以上のように、抵抗体3が先端対向壁221と基端対向壁222とによって囲まれた状態が形成され得る。
【0031】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
本形態の点火コイル1において、タワー部22は、抵抗体3に対して先端側から対向する先端対向壁221と、抵抗体3に対して基端側から対向する基端対向壁222と、を有する。このように、抵抗体3が先端対向壁221と基端対向壁222とにX方向に挟まれた状態において、先端対向壁221は、先端開口部225の周り全周にわたって抵抗体3に当接している。それゆえ、抵抗体3の先端部と先端対向壁221との当接部において充填樹脂4の漏れを防止でき、抵抗体3をタワー部22に圧入した場合に比べ、抵抗体3及びタワー部22に径方向の応力が生じず、タワー部22に亀裂が生じることを防止できる。また、抵抗体3をタワー部22に圧入する場合は、抵抗体3の径方向の寸法とタワー部22の径方向の寸法との関係を厳密にしなければならないが、本形態においては圧入工程が不要であるため、抵抗体3とタワー部22との間の寸法精度の要求を低くしやすい。
【0032】
また、タワー部22は、タワー部22内における抵抗体3が配される領域とケース本体21内の領域とを連通する連通穴220aを有する。そして、連通穴220aを介してタワー部22内における抵抗体3の周囲に充填樹脂4の一部が充填されている。それゆえ、抵抗体3を、先端対向壁221と基端対向壁222とによってX方向に挟んだ構成であっても、連通穴220aを介して抵抗体3の周囲に充填樹脂4を充填させることができる。それゆえ、抵抗体3の表面劣化を抑制することができる。
【0033】
また、先端対向壁221は、抵抗体3に溶着されてなる。それゆえ、本形態の点火コイル1のように、先端側が開放された抵抗配置部220に対して抵抗体3を挿入した後、抵抗配置部220の先端を閉じるように先端対向壁221を抵抗体3に溶着することで、抵抗体3が先端対向壁221と基端対向壁222とに挟まれた状態を実現することができる。また、抵抗体3における耐振性を向上させることができる。これに伴い、点火コイル1への振動発生に伴って、抵抗体3とこれに接続される前述のコイルバネ等の部材との間の接触が不安定となることを抑制することができる。
【0034】
また、基端対向壁222は、二次コイル12と抵抗体3とを電気的に接続する接続部材5を内側に挿入した基端開口部224を有する。それゆえ、抵抗体3に対して基端側から対向するよう基端対向壁222を配した場合であっても、抵抗体3の基端部と二次コイル12との電気的な接続構造を容易にしやすい。
【0035】
また、抵抗体3は、X方向に対称な形状を有する。それゆえ、抵抗配置部220に抵抗体3を挿入する際、抵抗体3のX方向の姿勢を識別する必要がなく、点火コイル1の生産性を向上させやすい。
【0036】
以上のごとく、本形態によれば、抵抗体及びタワー部の耐久性を向上させることができる内燃機関用の点火コイルを提供することができる。
【0037】
(実施形態2)
本形態は、図10に示すごとく、実施形態1に対して、基端対向壁222の形状を変更した形態である。
【0038】
本形態において、基端対向壁222は、4つ形成されている。4つの基端対向壁222は、4つの突出片223aの先端部のそれぞれから内周側に向かって径方向に形成されている。そして、4つの基端対向壁222の内周端面は、周壁223の中心部を向くよう形成されている。4つの基端対向壁222の内周側の領域が、基端開口部224を構成している。4つの基端対向壁222の内周端面は、これらの間に形成される仮想的な円図形に沿うよう弧状に湾曲して形成されているが、これに限られず、例えば平面状等、他の形状に構成されていてもよい。そして、周方向に隣り合う突出片223a同士の間及び基端対向壁222同士の間の間隙が、連通穴220aとなっている。本形態において、連通穴220aと基端開口部224とは連通している。
【0039】
その他は、実施形態1と同様である。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0040】
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0041】
(実施形態3)
本形態は、図11図16に示すごとく、実施形態1に対して、先端対向壁221及び基端対向壁222の構成を変更した実施形態である。
【0042】
図11図12に示すごとく、先端対向壁221は、周壁223から内周側に突出する第一部位221aと、第一部位221aの内周端部から基端側に突出した第二部位221bとを備える。そして、第二部位221bの基端側の面に、抵抗体3の先端キャップ32の先端面321が全周において当接している。後述するように、第二部位221bは、抵抗体3に対して全周において溶着されている。
【0043】
基端対向壁222は、周壁223の先端部から内周側に向かって形成されている。本形態においては、周方向に等間隔に形成された4つの基端対向壁222を有する。なお、図14には、基端対向壁の変形前の状態である初期基端部63を示している。図11に示すごとく、各基端対向壁222は、後述する溶着により、抵抗体3の基端キャップ33の基端面331の外周部に当接している。そして、4つの基端対向壁222の内周側の領域が、基端開口部224を構成している。そして、周方向に隣り合う基端対向壁222同士の間の間隙が、連通穴220aとなっている。本形態において、連通穴220aと基端開口部224とは連通している。
【0044】
次に、図12図16を用いて、本形態における抵抗配置部220内に抵抗体3を配置する方法の一例につき説明する。
【0045】
本形態において、ケース2は、成形後、抵抗体3を挿入する前の状態と、抵抗体3を保持した状態との間において、抵抗配置部220の形状が異なっている。図13に示すごとく、ケース2を成形した後、ケース2に抵抗体3を挿入する前の状態において、抵抗配置部220の先端部(すなわち最終的に先端対向壁221となる部位)は、前述の第一部位221aと、第一部位221aの内周端部から基端側に突出するとともに第一部位221aよりも厚みが小さい筒状の初期筒部62とを備える。
【0046】
また、ケース2を成形した後、ケース2に抵抗体3を挿入する前の状態において、抵抗配置部220の基端部(すなわち最終的に基端対向壁222となる部位)は、X方向に沿った円筒状の初期基端部63を備える。初期基端部63は、周方向の4か所に所定間隔で形成されている。そして、周方向の初期基端部63同士の間は、最終的に連通穴を構成するスリット部64になっている。そして、図13図15に示すごとく、初期基端部63の基端側から、抵抗体3が抵抗配置部220内に挿入されるとともに初期筒部62の基端側の端面に配置される。
【0047】
次いで、図15に示すごとく、抵抗配置部220の先端側に受け治具14を配置し、抵抗配置部220の基端側に超音波ホーン15を配置し、受け治具14と超音波ホーン15とで抵抗配置部220を挟み込む。ここで、超音波ホーン15の先端側を向くホーン端面151は、変形後の初期基端部63(すなわち溶着後の基端対向壁222)に沿うよう湾曲している。また、ホーン端面151の中央部は、抵抗体3の基端キャップ33の中央部に向かって突出するホーン突出部152を備える。ホーン突出部152は、初期基端部63の変形後である4つの基端対向壁222に囲まれた前述の基端開口部224に接続部材5を挿入できる大きさに形成されている。
【0048】
そして、受け治具14と超音波ホーン15とで抵抗配置部220を挟み込みつつ、超音波ホーン15において超音波振動を生じさせる。これにより、図16に示すごとく、初期基端部63が溶融して超音波ホーン15のホーン端面151に沿って変形するとともに、ホーン突出部152によって抵抗体3に超音波振動が伝達される。そして、抵抗体3に超音波振動が伝達されることにより、抵抗体3の先端部と当接している初期筒部62が溶融し、変形する。そして、最終的には、初期筒部62が、全周において抵抗体3の先端キャップ32を覆うよう溶着されて先端対向壁221の後述の第二部位221bとなり、初期基端部63が周方向において部分的に抵抗体3の基端キャップ33に溶着される。そして、周方向における変形後の初期基端部63が抵抗体3の基端キャップ33に到着していない領域が、図12に示すような連通穴220aとなる。以上のように、抵抗体3が先端対向壁221と基端対向壁222とによって囲まれた状態が形成され得る。
その他は、実施形態1と同様である。
【0049】
本形態においては、先端対向壁221が抵抗体3の先端部に溶着されており、基端対向壁222が抵抗体3の基端部に溶着されているため、抵抗体3は、先端対向壁221と基端対向壁222とによって確実に固定される。それゆえ、抵抗体3における耐振性を向上させることができる。これに伴い、点火コイル1への振動発生に伴って、抵抗体3とこれに接続される前述のコイルバネ等の部材との間の接触が不安定となることを抑制することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0050】
(実施形態4)
本形態は、図17に示すごとく、実施形態3に対して、ケース2を成形した後、ケース2に抵抗体3を挿入する前の状態における抵抗配置部220の基端部の形状を変更した形態である。具体的には、初期基端部63の外周面がテーパ面631となっている。テーパ面631は、初期基端部63における基端側の部位ほど厚みが小さくなるよう形成されている。
その他は、実施形態3と同様である。
【0051】
本形態においては、溶着時において初期基端部63を溶融させやすく、点火コイル1の生産性を向上させやすい。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0052】
(実施形態5)
本形態は、図18に示すごとく、実施形態3に対して、ケース2を成形した後、ケース2に抵抗体3を挿入する前の状態における抵抗配置部220の基端部の形状を変更した形態である。具体的には、初期基端部63の内周面がテーパ面632となっている。テーパ面632は、初期基端部63における基端側の部位ほど厚みが小さくなるよう形成されている。
その他は、実施形態3と同様である。
【0053】
本形態においては、抵抗配置部220への抵抗体3の挿入を行いやすい。
また、溶着時において初期基端部63を溶融させやすく、点火コイル1の生産性を向上させやすい。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0054】
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 点火コイル
2 ケース
21 ケース本体
22 タワー部
220a 連通穴
221 先端対向壁
222 基端対向壁
3 抵抗体
4 充填樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図18