(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ポリエステル複合繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 8/14 20060101AFI20240423BHJP
D02G 1/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
D01F8/14 B
D02G1/02 B
(21)【出願番号】P 2020063091
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小野 勇将
(72)【発明者】
【氏名】高岡 友裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩史
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131920(JP,A)
【文献】特開2002-061031(JP,A)
【文献】特開2005-146503(JP,A)
【文献】特開2016-125166(JP,A)
【文献】特開昭51-084924(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110523(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F、D02G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類のポリマーからなり、一方が
固有粘度(IV)0.7~2.0のポリブチレンテレフタレートを主体としたポリエステルであり、もう一方が
固有粘度(IV)0.4以上のポリエチレンテレフタレートを主体としたポリエステルであり
、前記2種類のポリエステルの固有粘度差が0.3以上1.5以下、かつ、次の(1)~(5)の構成要件を全て満足することを特徴とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型のポリエステル複合繊維。
(1)単糸繊度が0.3~1.5dtex
(2)フィラメント数が40~150
(3)伸縮伸長率が20~40%
(4)繊維長手方向に捲縮発現部分と捲縮非発現部分が混在し、捲縮発現率が20~80%
(5)5≧(交絡度CF)/(1mあたりの捲縮部の個数N)≧1
【請求項2】
交絡度CFが10~40個/mであることを特徴とする請求項1記載のサイドバイサイド型または偏心芯鞘複合繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソフトストレッチ性に優れ、柔らかな風合いの織編物、特に婦人紳士衣料用途に好適であり、高次通過性に優れたポリエステル複合繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、織編物のなかでもストレッチ性能を付与したストレッチ織編物が、その着用感から強く要望されている。このような要望を満足するために、例えば、ポリウレタン系繊維をポリエステル系繊維等に混繊することにより、ストレッチ性を付与した織編物が多数用いられている。しかしながら、ポリウレタン系繊維は、ポリエステル系繊維に用いられる分散染料に染まり難いために染色工程が煩雑になることや、長時間の使用により脆化し、性能が低下するなどの問題がある。また、ポリウレタン系繊維は、特に水着用編物に展開した場合、水に含まれる塩素によりポリウレタン系繊維が脆化し、十分な機能を付与することができていない。このような欠点を回避する目的で、ポリウレタン系繊維の代わりに、ポリエステル系繊維の捲縮糸の応用が検討されている。
【0003】
ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル繊維は伸長回復率が高く、ヤング率が低いことによる優れたソフト性を有している。これをサイドバイサイド型複合繊維に用いることで、ソフト性の付加価値を与えたストレッチ性素材とする事ができるため、衣料用途から非衣料用途まで広範囲で盛んに研究開発がなされている。例えば、特許文献1や特許文献2などがあり、2種類のポリエステル系重合体からなり、少なくとも一方にポリトリメチレンテレフタレートを主体としたポリエステルを用いることで、高い嵩高性と優れた捲縮発現力を示し、高品位でソフトストレッチ性に優れた布帛を得ることが可能となった。しかしながら、ポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維は、非常にストレッチ性が高く、婦人紳士衣料のようなフォーマルな用途では、よりソフトなストレッチ性の繊維が求められている。
【0004】
特許文献3には、一方にポリブチレンテレフタレートを用いたソフトストレッチ糸が提案されている。ポリブチレンテレフタレートが捲縮の内側になると、糸の50%伸長に対する応力を低下させ易く、また同時に回復率を向上させ易いことが提案されている。しかしながら、実施例には単糸繊度が4.7dtexの複合繊維しか示されておらず、単糸繊度が大きいために、この繊維を用いた布帛は柔らかい風合いを達成することができなかった。
【0005】
特許文献4には、2種のポリマーからなる繊維横断面を規定した偏心芯鞘複合であり、伸縮伸長率が20~70%とすることで高いストレッチ性能を有し、単糸繊度が1.0dtex以下とすることで布帛の軽量性を向上し、さらには繊維の剛性も小さくなり、ソフト性も一層付与することができることが提案されている。また、一方のポリマーにポリブチレンテレフタレートを用いることが好ましいとの記載があるが、ポリブチレンテレフタレートを用いた実施例には、伸縮伸長率が50~68%の複合繊維しか示されていなかった。また、共重合ポリエチレンテレフタレートを用いることで伸縮伸長率25%の複合繊維を得ているが、ポリエチレンテレフタレートはハリ・コシが強いために、布帛の風合いは硬くなる。つまり、ソフトなストレッチ性と柔らかな風合いを両立できていなかった。
【0006】
これまでにポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維において、タルミの改善技術が提案されている。特許文献5では、特定成分を含有した処理剤を付着させ、延伸前に0.08~0.15MPaの範囲の空気圧で交絡を付与し、延伸の予熱ロールの温度を45~49℃に制御することにより、予熱時のポリトリメチレンテレフタレート同士の融着および延伸不良を抑制し、タルミの発生を改善する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-339169号公報(特許請求の範囲)
【文献】特開2002-061031号公報(特許請求の範囲)
【文献】特開2005-146503号公報(段落番号[0020]、実施例)
【文献】国際公開第2018-110523号パンフレット(特許請求の範囲、段落番号[0062]、[0064]、[0086]、実施例)
【文献】特開2010-024575号公報(段落番号[0046]~[0052])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、一方がポリブチレンテレフタレートを主体としたポリエステルであり、もう一方がポリエチレンテレフタレートを主体としたポリエステルからなるサイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維とし、単糸繊度を小さく、伸縮伸長率を小さくすることで、ソフトなストレッチ性と柔らかな風合いを両立できることを見出した。しかしながら、熱処理加工や仮撚加工等を付与する前の未加工糸は、伸縮伸長率が小さいため、捲縮を発現していない顕在捲縮となるが、単糸繊度が小さいことにより、一部のみが捲縮発現することがわかった。
【0009】
本ポリマー構成の複合繊維の新たな課題として、タルミの発生が顕在化した。このタルミを解析すると、捲縮が発現した単糸と発現していない単糸があり、この単糸間での糸長差によって、タルミとなっていることがわかった。このタルミは、高次加工でのパッケージ解舒不良や工程通過性の悪化等の問題を引き起こす。特許文献5で発生しているタルミは、本発明の複合繊維で課題となっているタルミとは原因が異なるため、従来技術ではタルミを解消することができなかった。
【0010】
従来の技術では、婦人紳士衣料用途に求められるソフトストレッチ性および柔らかな風合いを両立した織編物用ポリエステル複合繊維は、単糸間の捲縮発現のバラツキに起因するタルミ欠点に課題があった。本発明はソフトストレッチ性に優れ、柔らかな風合いの織編物、特に婦人紳士衣料用途に好適であり、タルミ欠点が改善され、高次通過性に優れたポリエステル複合繊維を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記のポリエステル複合繊維とすることで目的を達成できる。
2種類のポリマーからなり、一方が固有粘度(IV)0.7~2.0のポリブチレンテレフタレートを主体としたポリエステルであり、もう一方が固有粘度(IV)0.4以上のポリエチレンテレフタレートを主体としたポリエステルであり、前記2種類のポリエステルの固有粘度差が0.3以上1.5以下、かつ、次の(1)~(5)の構成要件を全て満足することを特徴とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型のポリエステル複合繊維。
(1)単糸繊度が0.3~1.5dtex
(2)フィラメント数が40~150
(3)伸縮伸長率が20~40%
(4)繊維長手方向に捲縮発現部分と捲縮非発現部分が混在し、捲縮発現率が20~80%
(5)5≧(交絡度CF)/(1mあたりの捲縮部の個数N)≧1
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリエステル複合繊維は、従来の技術では成し得なかった、ソフトストレッチ性に優れ、柔らかな風合いの織編物、特に婦人紳士衣料用途に好適であり、タルミ欠点が改善され、高次通過性に優れたポリエステル複合繊維を提供する。更に詳しくは、繊維長手方向に捲縮発現部分と非発現部分が混在したポリエステル複合繊維において、単位長さ当たりの捲縮個数に対して、十分な交絡を付与することにより、繊維長手方向および単糸間での捲縮の発現状態を均一化し、タルミ欠点のない、高次通過性に優れたポリエステル複合繊維が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、繊維長手方向の捲縮発現部分、非発現部分の一例を示す模式図
【
図2】
図2は、本発明で好ましく用いられる製糸工程(直接紡糸延伸法)の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のポリエステル複合繊維とその製造方法について、詳細に説明する。
まず、本発明のポリエステル複合繊維について説明する。
本発明のポリエステル複合繊維は、良好な捲縮特性を得るために、高粘度ポリエステル成分と低粘度ポリエステル成分がサイドバイサイド型に貼り合わされた形態、または偏心芯鞘型の形態をとるものである。粘度の異なるポリエスエルをサイドバイサイド型または偏心芯鞘型の断面とすることで、紡糸と延伸時に高粘度側に応力が集中するため、各成分間で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差および布帛の熱処理工程での熱収縮差により高粘度側が大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイルの形態をとる。特に偏心芯鞘型の断面が好ましい。本発明で言う偏心とは、複合繊維断面において芯成分ポリエステルの重心点位置が複合繊維断面中心と異なっていることを指す。また、高粘度ポリエステル成分が低粘度ポリエステル成分に覆われているほうが好ましい。高粘度成分が低粘度成分に完全に覆われることにより、繊維や布帛に摩擦や衝撃が加わっても白化現象や毛羽立ちなどが生じることがないので布帛品位を保つことができる。
【0015】
本発明のポリエステル複合繊維の3次元コイルの径および単位繊維長当たりのコイル数、すなわち捲縮数は、高粘度ポリエステル成分と低粘度ポリエステル成分との収縮差によって決まるといってもよく、ストレッチ素材として要求されるコイル捲縮特性を満足するためには、ポリエステル成分の固有粘度差が肝要となってくる。
【0016】
本発明におけるポリエステル成分の固有粘度(IV)は、高粘度ポリエステル成分においては0.7~2.0の範囲であることが好ましい。固有粘度を0.7以上とすることにより、十分な強度と伸度を兼ね備えた繊維を製造することが容易となる。より好ましい固有粘度は0.8以上である。また、固有粘度を2.0以下とすることにより、生産安定性が得られやすい。より好ましい固有粘度は、1.8以下である。
【0017】
一方、低粘度ポリエステル成分は、固有粘度を0.4以上にすることにより安定した製糸性が得られる。より好ましい固有粘度は0.5以上である。さらに高い捲縮特性を得るためには、低粘度ポリエステル成分の固有粘度は0.7以下であることが好ましい。
【0018】
本発明においては、捲縮特性に優れた原糸を得るために、上記の高粘度ポリエステル成分と低粘度ポリエステル成分の固有粘度差を0.3以上とすることが好ましい。固有粘度差を0.5以上大きくすると、さらに伸縮性の優れた原糸が得られる。一方、固有粘度差が1.5を超えると、得られた繊維糸条の捲縮特性は良好であるものの、紡糸された繊維糸条が高粘度成分側に過度に曲がるため、長時間にわたって安定して製糸することができず、好ましくない。したがって、安定した製糸性とストレッチ回復性の両方を満たすため、固有粘度差は0.3以上1.5以下の範囲であることが望ましい。
【0019】
ここで、本発明のポリエステル複合繊維の高粘度ポリエステル成分には、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと称する。)を主成分とするポリマーを用いる。PBTを高粘度ポリエステル成分として用いることで、良好な捲縮を有し、品位の良い布帛が得られる。すなわち、PBTはポリマー特性として収縮率が高いため、低粘度ポリエステル成分との収縮差が大きくなるために、捲縮が発現した際に高いストレッチ性能を示す。またPBTは非常に高い結晶性を有していることから、繊維形態での寸法安定性に優れ、張力や温度のムラから生じる、布帛のスジ欠点等の抑制が可能となる。さらにPBTは高い柔軟性を有することから、布帛は非常にソフトな風合いとなる。
【0020】
本発明で用いられるPBTとは、90モル%以上がブチレンテレフタレートの繰り返し単位からなるPBTである。ここでいうPBTとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,4-ブタンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし、10モル%未満の割合で他のエステル結合を形成可能な共重合成分を含むものであってもよい。このような共重合成分としては、例えば、酸成分として、例えば、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸およびセバシン酸などのジカルボン酸類が挙げられ、また、グリコール成分として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどを挙げることができるが、これらに限られるものではない。
【0021】
また、艶消剤として二酸化チタン、滑剤としてシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、さらには難燃剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤および着色顔料等を、必要に応じてPBTに添加することができる。
【0022】
一方、本発明のポリエステル複合繊維の低粘度ポリエステル成分には、ポリエチレンレンテレフタレート(以下、PETと称する。)を主成分とするポリマーを用いる。
【0023】
低粘度ポリエステル成分であるPETとしては、テレフタル酸を主たる酸成分としエチレングリコールを主たるグリコール成分とする、90モル%以上がエチレンレンテレフタレートの繰り返し単位からなるポリエステルを用いることができる。ただし、10モル%未満の割合で他のエステル結合を形成可能な共重合成分を含むものであっても良い。このような共重合成分として、例えば、酸成分として、例えば、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸およびセバシン酸などのジカルボンサン類が挙げられ、また、グリコール成分として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどを挙げることができるが、これらに限られるものではない。
【0024】
また、艶消剤として二酸化チタン、滑剤としてシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体および着色顔料などを、必要に応じてPETに添加することができる。
【0025】
次に、本発明のポリエステル複合繊維の形状について説明する。
本発明のポリエステル複合繊維のPBT成分とPET成分の複合比は、製糸性、捲縮性能の発現性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の点で、PBT成分:PET成分=80:20~20:80(重量%)の範囲が好ましく、より好ましい複合比は、70:30~30:70の範囲である。本発明で定義する複合比とは、単繊維の横断面写真において、単繊維を構成する2種のポリエステル成分の(横断面積×ポリマー密度)比率である。
【0026】
本発明のポリエステル複合繊維を構成する単繊維の単糸繊度は、0.3~1.5dtexの範囲である。単繊維繊度を0.3dtex以上とすることにより、工業的に安定した製糸が可能となり、単繊維繊度を1.5dtex以下とすることにより、本発明のポリエステル複合繊維を布帛、特に織編物に用いた際に十分なソフト感が得られる。単繊維繊度は、小さいほど布帛にしたときのソフト性が向上するため、好ましくは0.3~1.0dtexの範囲であり、より好ましくは0.3~0.8dtexの範囲である。
【0027】
本発明のポリエステル複合繊維のフィラメント数は、40~150の範囲である。この範囲とすることで布帛とした際に十分なストレッチとソフトな風合いを両立できるのである。フィラメント数が40より小さいと十分なストレッチ性が発揮されず、150より大きいと布帛が厚くなり、柔らかな風合いが損なわれてしまう。好ましくは60~120の範囲である。
【0028】
上記のような単繊維繊度およびフィラメント数を達成するためには、ポリエステル複合繊維の製造において、吐出量および紡糸口金(孔数)を適宜変更すればよい。
【0029】
次に、本発明のポリエステル複合繊維の物性について述べる。
本発明のポリエステル複合繊維は、破断強度が2.5~5.0cN/dtexの範囲であることが好ましい。破断強度を2.5cN/dtex以上にすることにより布帛において良好な引き裂き強度を得ることができる。また破断強度が高くなると、布帛において摩擦などにより白化現象や毛羽立ちが起こりやすくなるため、5.0cN/dtex以下とすることが好ましい。より好ましい破断強度は、2.8~4.0cN/dtexの範囲である。本発明のポリエステル複合繊維は、破断伸度が20~50%の範囲であることが好ましい。破断伸度を20%以上にすることにより延伸切れの発生を抑えることができ、工業的に安定した製造が可能となり、また高次加工性の観点より50%以下とすることが好ましい。より好ましい破断伸度は、25~45%の範囲である。
【0030】
本発明のポリエステル複合繊維は、伸縮伸長率が20~40%の範囲である。伸縮伸長率は、捲縮の度合いを示す値であり、高いほうがストレッチ性能が高いことを示している。一方で伸縮伸長率が高すぎると、寸法安定性が損なわれる。特に婦人紳士衣料のようなフォーマル用途では、伸縮伸長率を20~40%の範囲とすることで、優れたストレッチ性と寸法安定性を両立することができる。好ましい伸縮伸長率は、25~35%の範囲である。
【0031】
本発明のポリエステル複合繊維は、初期引張抵抗度が40~60cN/dtexの範囲であることが好ましい。初期引張抵抗度は繊維の硬さを示す尺度であり、初期引張抵抗度の高い繊維を用いた布帛はハリ・コシが強くなる。初期引張抵抗度を60cN/dtex以下とすることで非常に柔らかい風合いの布帛となり、40cN/dtex以上とすることで十分なハリ・コシを持つ布帛を得ることができる。より好ましい初期引張抵抗度は、45~55cN/dtexの範囲である。
【0032】
さらに、本発明のポリエステル複合繊維の捲縮形態について述べる。
本発明のポリエステル複合繊維は、
図1の捲縮部1のような繊維の長手方向に捲縮が発現している部分と非捲縮部2のような捲縮が発現していない部分が混在していることに大きな特徴がある。本発明のポリエステル複合繊維は、捲縮が発現している長さの割合である捲縮発現率が20~80%の範囲である。捲縮発現率を20%より小さくしようとした場合、伸縮伸長率が低くストレッチ性能が不十分になったり、繊維が硬く布帛の風合いが悪くなったり、優れたストレッチ性およびソフト性を得ることができない。一方、捲縮発現率が80%より大きくしようとした場合、伸縮伸長率が高くストレッチが強くなり、寸法安定性が悪化する。好ましい捲縮発現率は、30~70%の範囲である。
【0033】
本発明のポリエステル複合繊維は、捲縮の発現状態に応じて、交絡を付与することが重要である。本発明者らは、タルミ欠点の要因となる単糸間の捲縮バラツキを抑制するためには、単位長さあたりの捲縮部の個数に対して十分な交絡を付与することで、繊維長手方向および単糸間での捲縮の発現状態を均一化し、タルミ欠点のない、高次通過性に優れたポリエステル複合繊維が得られることを見出した。本発明のポリエステル複合繊維は、伸縮伸長率が低いために、捲縮が発現しにくいことが特徴であるが、単糸繊度が小さく、フィラメント数が大きいため、製造工程や高次加工工程における擦過によって、マルチフィラメントを構成する単糸の一部のみが捲縮を発現してしまい、結果としてタルミ欠点が発生しやすくなっていた。そこで、交絡を付与することにより単糸同士の収束性を向上させることで、単糸間の捲縮の発現バラツキを抑制することに成功したのである。
【0034】
本発明のポリエステル複合繊維は、実施例記載の方法で測定される1mあたりの捲縮部の個数Nに対し、交絡度CFを制御することが重要である。交絡度と捲縮部の個数の比、(交絡度CF)/(1mあたりの捲縮部の個数N)は1~5の範囲とすることで単糸間の捲縮発現が均一化してタルミが抑制できる。(交絡度CF)/(1mあたりの捲縮部の個数N)が1未満では、収束性が不十分でありタルミが発生し、5より大きくなると、交絡を付与する際にダメージを受けて毛羽が発生する。好ましくは2~4の範囲である。
【0035】
本発明のポリエステル複合繊維の交絡度CFは、10~40個/mの範囲が好ましい。交絡度CFが10個/m未満では、収束性が不十分でありタルミが発生し、40個/mより大きくなると、交絡を付与する際にダメージを受けて毛羽が発生する。好ましくは15~30個/mの範囲である。
【0036】
本発明のポリエステル複合繊維は、繊維長1mにおける捲縮部の長さの平均が3~20cmが好ましい。また長手方向の捲縮発現の均一性の観点から捲縮部の長さの平均の標準偏差σは、1.5~3.0cmの範囲が好ましい。この範囲とすることで、パッケージからの解舒が安定し、また熱処理工程や仮撚加工工程等の高次加工において高次通過性が良好となり好ましい。
【0037】
次いで、本発明のポリエステル複合繊維の好ましい製造方法について説明する。
本発明のポリエステル複合繊維の製造方法としては、紡糸口金から吐出された繊維糸条を一旦ドラムに巻き取った後に延伸する方法や、紡糸段階で連続的に繊維糸条を延伸する方法などが挙げられる。これらの製造方法について、具体的に説明する。
【0038】
本発明のポリエステル複合繊維は、PBTとPETをそれぞれ溶融し押出し、複合紡糸機を用い、所定の複合パックに送り、パック内で両ポリマーを濾過した後、紡糸口金でサイドバイサイド型に貼り合わせる、または偏心芯鞘型に複合紡糸し、一旦未延伸糸条を巻き取った後、通常の延伸機で所定の破断伸度となるように延伸する2工程法によって製造することができる。または、紡糸口金から吐出された繊維糸条を一旦巻き取ることなく引き続き延伸を行う1工程法によっても製造することができる。繊維長手方向での品質安定性と生産安定性を考慮すると、直接紡糸延伸法(以下、DSD法と称する。)による生産が最も優れている。偏心芯鞘型断面を形成する方法としては、品質および操業安定的に紡糸することが可能であれば、紡糸口金は、公知のいずれの内部構造のものであっても良く、特に特開2011-174215号公報や特開2011-208313号公報、特開2012-136804号公報に例示される分配板方式口金を好適に用いて所望とする断面形状とすることができる。
【0039】
本発明のポリエステル複合繊維の製造方法において、紡糸ドラフトは300倍以下とするとフィラメント間での物性バラツキが抑制された均質な繊維が得られ好ましい。フィラメント数は、口金のサイズにより適宜設定できるが、フィラメントの吐出孔間隔を10mm以上に保つと、フィラメントの冷却固化がスムーズに行えて均質な繊維を得やすいので好ましい。紡糸ドラフトは下記式で求められ、50~300倍が好ましい。
紡糸ドラフト=Vs/V0
Vs:紡糸速度(m/分)、V0:吐出線速度(m/分)
紡糸ドラフトを50倍以上とすることで、口金孔から吐出されたポリマー流が長時間口金直下に留まることを防止し、口金面汚れを抑制することができることから、製糸性が安定する。また、紡糸ドラフトを300倍以下とすることで過度な紡糸張力による糸切れを抑制することが可能となり、ポリエステル複合繊維を安定した製糸性で得ることができるので好ましい。より好ましくは80~250倍である。
【0040】
紡糸張力は0.02~0.15cN/dtexにするのが好ましい。紡糸張力を0.02cN/dtex以上にすることで紡糸時の糸揺れによる単糸間での糸条干渉がなく、第1ローラである引取りローラに逆巻きすることもないため安定走行が可能となる。また、紡糸張力を0.15cN/dtex以下とすることで、製糸安定的にポリエステル複合繊維を得られるので好ましい。紡糸張力のより好ましい範囲は0.07~0.10cN/dtexである。
【0041】
本発明のポリエステル複合繊維を操業・品質安定的に製糸するにあたり、吐出されたポリマーの冷却固化を厳密に制御することが好ましい。細繊度化に伴い吐出ポリマー量を抑制すると、ポリマーの細化および冷却固化が口金に近づく(上流へ移動する)ため、従来技術で想定される冷却方法では長手方向の糸斑の多い繊維しか得られない。また、固化した繊維による随伴気流が増大し、紡糸張力が大きくなるため、これらを低減する技術が必要となる。紡糸張力の増大を低減する方法として、冷却開始点を口金面から20~120mmとすることが好ましい。冷却開始点が20mm以上であれば冷却風による口金の面温度低下を抑制でき、低温糸、口金孔詰まりや複合異常、吐出斑といった諸問題を回避できるので好ましい。また、冷却開始点は120mm以下とすることで、長手方向での糸斑の少ない高品質なポリエステル複合繊維を得ることができるので好ましい。冷却開始点のより好ましい範囲は25~100mmである。
【0042】
また、冷却風による口金面温度の低下を抑制するため、必要に応じて冷却風の温度管理や、口金周辺部に加熱装置を設置してもよい。
【0043】
口金面から給油位置までの距離は1300mm以下であることが好ましい。口金吐出面から給油位置までの距離を1300mm以下とすることで冷却風による糸条揺れ幅を抑え、繊維長手方向での糸斑を改善できるほか、糸条の収束に至るまでの随伴気流を抑制できるため紡糸張力を低減でき、毛羽や糸切れの少ない安定した製糸性が得やすいので好ましい。給油位置のより好ましい範囲は1200mm以下である。
【0044】
本発明のポリエステル複合繊維の延伸方法は、特に限定するものではなく、公知の技術に準じることができる。例えば、第1ホットロールと第2ホットロール間で1段加熱延伸熱する方法、第1ホットロールと非加熱ロール、およびそのロール間のホットプレートで1段加熱延伸する方法、第1ホットロールと第2ホットロール間で1段目の加熱延伸、第2ホットロールと第3ホットロール間で2段目の加熱延伸をする方法などから好適に選択することができる。
【0045】
また、本発明のポリエステル複合繊維の延伸の温度は、1段延伸の場合、第1ホットロールは、50℃~80℃とし、第2ホットロールまたはホットプレートは、120℃~180℃の範囲とするのが好ましい。第1ホットロールの温度を50℃以上とすることにより、均一に延伸しやすくなり良好である。一方、第1ホットロールの温度を80℃より高い温度とすると、ガラス転移温度の低いPBTが軟化し、PBT成分同士が融着しやすくなり、毛羽やタルミが発生しやすい。第2ホットロールまたはホットプレートの温度を120℃以上とすることにより、配向を制御し、繊維の結晶化を促進して高強度化する。一方、180℃以下の場合はホットロールまたはホットプレートでの融着を防止して製糸性が良好となる。多段延伸の場合、第1ホットロールは50℃~80℃とし、第2ホットロール以降は徐々に温度を増加していくことが好ましく、最終ホットロールは、120℃~180℃の範囲とするのが好ましい。
【0046】
さらに、本発明のポリエステル複合繊維の延伸倍率は、トータルで2.0~4.0倍とすることが好ましい。より好ましくは2.5~3.5倍である。
【0047】
本発明のポリエステル複合繊維は、延伸後に交絡を付与することが重要である。交絡付与方法は、公知の交絡ノズルを用いることができる。交絡の圧空圧は0.20~0.50MPaとすることが好ましい。0.12MPa未満では十分な交絡をいれることは難しく、0.50MPaを超えると糸切れが多発し生産性が悪くなる。より好ましくは0.15~0.40MPaである。
【0048】
本発明のポリエステル複合繊維は、ストレッチ織編物として、例えば、シャツ、ブラウス、パンツおよびスーツなどの婦人紳士衣料に好適に用いることができる。織物としては、このまま単独で経糸や緯糸に用いてもよく、他の繊維糸条と混繊または交織して用いてもよく、本発明のポリエステル複合繊維の特長を発揮させるいかなる方法を用いても何ら差し支えない。
【実施例】
【0049】
以下、本発明のポリエステル複合繊維について実施例をもって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例の測定値は、次の方法で測定した。
【0050】
(1)固有粘度(IV)
定義式のηrは、25℃の温度の純度98%以上のo-クロロフェノール(以下、OCPと略記する。)10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かし、25℃の温度にてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを下式により求め、固有粘度(IV)を算出した。PTTについては160℃の温度の純度98%以上のOCP10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かし、25℃の温度に冷却後、オストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを下式により求め、固有粘度(IV)を算出した。
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0)
固有粘度(IV)=0.0242ηr+0.2634
ここで、η:ポリマー溶液の粘度、η0:OCPの粘度、t:溶液の落下時間(秒)、d:溶液の密度(g/cm3)、t0:OCPの落下時間(秒)、d0:OCPの密度(g/cm3)。
【0051】
(2)繊度(dtex)
100mかせ取り、かせの質量(g)に100を乗じた値を繊度とした。
【0052】
(3)破断強度(cN/dtex)と破断伸度(%)、初期引張抵抗度(cN/dtex)
JIS L1013(2010)8.5項および8.10項に従い、オリエンテック製テンシロンUCT-100を用いて測定した。
【0053】
(4)伸縮伸長率(%)
JIS L1013(2010)8.11項C法(簡便法)に従い、測定した。なお湿熱処理は、90℃の温水で20分間浸漬し、5時間以上風乾した。
【0054】
(5)交絡度CF(個/m)
エンタングルメントテスター(Entanglement Tester Type R2072)を用い、以下のように交絡度を求めた。
【0055】
糸条に針を刺したままで初張力10gを掛けて一定速度5m/分で走行させ、交絡点で張力が規定値(トリップレベル)の15.5cNまで達する長さ(開繊長)を30回測定し、30回分を平均した長さ(平均開繊長:mm)に基づいて、下記式を用い糸条1m当たりの交絡度(CF値)を求めた。
交絡度CF=1000/平均開繊長 。
【0056】
(6)捲縮発現率(%)、1mあたりの捲縮部の個数N(個/m)、捲縮部の平均長さ(cm)、捲縮部の平均長さのバラツキσ
無荷重の状態で1mのポリエステル複合繊維を採取し、
図1の捲縮部1のような捲縮が発現している部分の個数をカウントし、N=10の平均を1mあたりの捲縮部の個数Nとした。また捲縮発現している部分の長さを測定し、1m中での平均を算出し、さらにN=10の平均を1mあたりの捲縮部の平均長さとした。捲縮部の平均長さのバラツキは1m中での平均長さのN=10の標準偏差σとした。さらに、捲縮発現率は、上記で測定した1mあたりの捲縮部の個数と長さから下記式を用いて求めた。
捲縮発現率=(1mあたりの捲縮部の個数N)×(捲縮部の平均長さ) 。
【0057】
(7)パッケージ表面のタルミ個数(個/cm2)
本発明の各実施例および各比較例のポリエステル複合繊維を外径140mm、長さ125mmの紙管を用い、巻き幅110mmで8.0kg巻で巻き取り、チーズパッケージを得た。このパッケージの表面および端面部を目視で確認し、3mm以上の長さのタルミの個数をカウントした。パッケージ表面、端面部の面積を算出し、単位面積あたりのタルミ個数を求めた。
【0058】
(8)仮撚加工糸切れ
本発明の各実施例および各比較例のポリエステル複合繊維を下記の条件で仮撚加工を施した。
仮撚加工機:TMTマシナリー(株)社製 ATF-21
加工速度:350m/分
仮撚り数:150T/m
熱処理温度(非接触):230℃
糸切れした回数で以下の3段階で評価した。合格レベルは◎と〇である。
◎:0.05回未満/日・糸条で極めて良好。
〇:0.05回以上/日・糸条、0.10回未満/日・糸条で良好。
×:0.10回以上/日・糸条で不良。
【0059】
(9)布帛のストレッチ性および風合い
経糸に56dtex-24フィラメントのPET繊維の無撚糊付け糸条を用い、緯糸に本発明の各実施例および各比較例のポリエステル複合繊維糸条に上記(8)の仮撚加工を施した仮撚糸を用いて、下記の平織物を作成した。
経密度:110本/2.54cm
緯密度:98本/2.54cm
織 機:津田駒工業社製 ウォータージェットルームZW-303
製織速度:450回転/分
得られた生機を、オープンソーパーを用いて95℃の温度で連続精錬後、120℃の温度でシリンダー乾燥した後、液流染色機を用いて120℃の温度で染色を行った。次いで、175℃の温度で仕上げと幅だし熱セットの一連の処理を行った。得られた織物を、熟練した検査技術者が検査し、ストレッチ性および表面風合いを、次の4段階で評価した。合格レベルは◎と○である。
◎:ソフトストレッチ性・ソフト風合いが極めて良好。
○:ソフトストレッチ性・ソフト風合いが良好。
△:ソフトストレッチ性は良好だが、ソフト風合いが不良、
またはソフトストレッチ性が不良だが、ソフト風合いが良好。
×:ソフトストレッチ性・ソフト風合いが不良。
【0060】
実施例1
高粘度ポリマー成分としてポリブチレンテレフタレート(固有粘度1.30)、低粘度ポリマー成分としてポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.51)とし、高粘度ポリマーと低粘度ポリマーをいずれもエクストルーダーを用いてそれぞれ260℃、280℃で溶融後、ポンプによる計量を行い、275℃を紡糸温度として、温度を保持したまま口金に流入させた。PBT成分とPET成分の重量複合比は50/50とし、吐出孔数72の偏心芯鞘型複合繊維用紡糸口金に流入させた。各ポリマーは、口金内部で合流し、低粘度ポリマー中に高粘度ポリマーが包含された偏心芯鞘型複合形態を形成し、口金から吐出した。
【0061】
口金から吐出された糸条は、
図2の設備を用いて紡糸・延伸した。すなわち、紡糸口金3から吐出されたポリエステル複合繊維を冷却開始点が50mmとなるように糸条冷却送風装置4により冷却し、油剤付与装置5により、油剤を繊維重量を基準として0.6重量%付着させ、前交絡装置6により空気圧0.03MPaで前交絡を付与した後、1200m/分の速度で65℃の温度に加熱された第1ホットローラ7に引き取り、一旦巻き取ることなく、3200m/分の速度で150℃の温度に加熱された第2ホットローラ8に引き回し、延伸倍率2.7倍で延伸、熱セットを行った。さらに、本交絡装置9により空気圧0.30MPaで本交絡を付与し、3205m/分の速度で2個のゴデットローラ10,11に引き回した後、パッケージ巻き取り速度3167m/分でパッケージ13に巻取り、56dtex-72フィラメントのポリエステル複合繊維を得た。得られた複合繊維の特性評価結果は表1の通りであり、パッケージ表面のタルミ個数が0.9個/cm
2と少なく、非常に優れた仮撚加工性であり、得られた布帛は非常に優れたソフトストレッチ性とソフトな風合いが得られた。
【0062】
実施例2、比較例1、2
本交絡装置9による空気圧を0.2、0.1、0MPaにした以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル複合繊維を得た。得られた複合繊維の特性評価結果は表1の通りであった。実施例2は、パッケージ表面のタルミ個数が0.6個/cm2と少なく、非常に優れた仮撚加工性であり、得られた布帛は非常に優れたソフトストレッチ性とソフトな風合いが得られた。比較例1、2は、交絡度が低く、(交絡度CF)/(1mあたりの捲縮部の個数N)がそれぞれ0.5、0と小さいため、パッケージ表面にタルミが多く、仮撚加工での糸切れが多発した。
【0063】
実施例3、4、比較例3
紡糸速度、つまり第1ホットローラ7の速度を1150m/分、1300m/分、1100m/分とし、延伸倍率を2.8倍、2.5倍、2.9倍とした以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル複合繊維を得た。得られた複合繊維の特性評価結果は表1の通りであった。実施例3は、延伸倍率が少し高いために伸縮伸長率が36%と高めとなり、布帛も若干ストレッチ性が高くなったが、良好なソフトストレッチ性を有していた。実施例4は、延伸倍率が少し低いために伸縮伸長率が23%と低めとなり、布帛も若干ストレッチ性が低くなったが、良好なソフトストレッチ性を有していた。比較例3は、延伸倍率が高いために、初期引張抵抗度が63cN/dtex、伸縮伸長率が54%、捲縮発現率が83%と高くなった。得られた布帛はストレッチ性が強く、風合いも若干硬めとなった。
【0064】
実施例5
PBT成分とPET成分の重量複合比を40/60とした以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル複合繊維を得た。得られた複合繊維の特性評価結果は表1の通りであった。得られた布帛は非常に優れたソフトストレッチ性とソフトな風合いが得られた。
【0065】
【0066】
実施例6~8、比較例4、5
偏心芯鞘型複合繊維用紡糸口金の吐出孔数を96、144、48、36、24とした以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル複合繊維を得た。得られた複合繊維の特性評価結果は表2の通りであり、いずれもパッケージ表面のタルミ個数が少なく、優れた仮撚加工性であった。実施例6、7は単糸繊度が小さいため、得られた布帛は非常にソフトな風合いとなった。一方、比較例4、5は単糸繊度が大きいため、得られた布帛は風合いが硬くなった。
【0067】
実施例9
用いる口金の吐出孔形状をサイドバイサイド型にした以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル複合繊維を得た。得られた複合繊維の特性評価結果は表2の通りであった。得られた布帛は優れたソフトストレッチ性とソフトな風合いが得られた。
【0068】
比較例6、7
高粘度ポリマー成分をポリトリメチレンテレフタレート(固有粘度1.44)、または共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.67、共重合量:イソフタル酸7.0mol%、2・2ビス{4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン4mol%)とした以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル複合繊維を得た。得られた複合繊維の特性評価結果は表2の通りであった。比較例6は、初期引張抵抗度が79cN/dtex、伸縮伸長率が73%と高くなった。また繊維長手方向の全てに捲縮が発現した。得られた布帛はストレッチ性が強く、風合いも若干硬めとなった。比較例6は、初期引張抵抗度が62cN/dtexと高くなった。伸縮伸長率は30%と実施例1と同等であったが、繊維長手方向に捲縮の発現はまったく認められなかった。得られた布帛はコシが強く風合いが硬くなった。
【0069】
【符号の説明】
【0070】
1:捲縮部
2:非捲縮部
3:紡糸口金
4:糸条冷却送風装置
5:油剤付与装置
6:前交絡装置
7:第1ホットローラ
8:第2ホットローラ
9:本交絡装置
10:ゴデットローラ
11:ゴデットローラ
12:コンタクトローラ
13:パッケージ