(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成装置の制御方法、および画像形成装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/21 20060101AFI20240423BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2020072163
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山谷 自広
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-142007(JP,A)
【文献】特開2017-154396(JP,A)
【文献】特開2010-194839(JP,A)
【文献】特開2016-206301(JP,A)
【文献】特開2011-160085(JP,A)
【文献】特開2009-71649(JP,A)
【文献】特開2008-304931(JP,A)
【文献】特開2008-83058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に複数の色材による画像を形成するための画像形成装置であって、
画像の形成に用いる複数の色材の各色度に対して設定値以上の色差を有する色度の範囲を、前記複数の色材に対する共通の下地の色範囲として算出する下地色範囲算出部
と、
前記下地色範囲算出部において算出した下地の色範囲を表示する表示部とを備えた
画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の色材のうちの一つが、白色の色材である
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記下地色範囲算出部において算出する下地の色範囲は、前記複数の色材によって形成される調整用チャートの下地の色範囲である
請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記下地色範囲算出部は、前記複数の色材の各色度に対して20以上の色差を有する色度の範囲を、前記下地の色範囲として算出する
請求項1~3のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記下地色範囲算出部は、前記複数の色材の各色度に対して30以上の色差を有する色度の範囲を、前記下地の色範囲として算出する
請求項1~4のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記下地色範囲算出部は、CIE DE2000色差式に基づいて前記色度の範囲を算出する
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記下地色範囲算出部において算出した下地の色範囲に含まれる色度を有する下地を、前記色材を用いて記録媒体上に形成し、前記色材を用いて形成された下地の上部に
前記複数の色材によって形成される調整用チャートを形成する画像形成制御部を備えた
請求項1~
6のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
複数色の色材の供給により記録媒体に画像を形成する色材供給装置と、
前記下地色範囲算出部において算出した下地の色範囲に含まれる色度を有する記録媒体を、前記色材供給装置に供給する媒体供給装置とを備えた
請求項1~
6のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記媒体供給装置は、前記記録媒体が収容された複数のカセットを備え、
前記下地色範囲算出部において算出した下地の色範囲に含まれる色度を有する記録媒体が、前記複数のカセットのうちの何れのカセットに収容されているかを表示する表示部を備えた、
請求項
8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
記録媒体上に複数の色材による画像を形成するための画像形成装置の制御方法であって、
下地色範囲算出部が、画像の形成に用いる複数の色材の各色度に対して設定値以上の色差を有する色度の範囲を、前記複数の色材に対する共通の下地の色範囲として算出
し、
表示部が、前記下地色範囲算出部において算出した下地の色範囲を表示する
画像形成装置の制御方法。
【請求項11】
記録媒体上に複数の色材による画像を形成するための画像形成装置の制御プログラムであって、
下地色範囲算出部に対して、画像の形成に用いる複数の色材の各色度に対して設定値以上の色差を有する色度の範囲を、前記複数の色材に対する共通の下地の色範囲として算出させ、
表示部に対して、前記下地色範囲算出部において算出した下地の色範囲を表示させるための
画像形成装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成装置の制御方法、および画像形成装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の検査に関する技術として、下記特許文献1に開示の技術がある。この特許文献1には、複数種類のノズルのうち、前記記録媒体との色差が最も小さい第1の色のインクを吐出する第1ノズル群を構成するノズルにおいてインクの吐出異常が発生しているか否かを判定する場合において、前記第1の色とは異なる第2の色のインクを吐出する第2ノズル群を構成するノズルから前記記録媒体にインクを吐出させた後、前記記録媒体における前記第2の色のインク滴が着弾した領域に向けて、前記第1ノズル群を構成するノズルから前記第1の色のインクを吐出させることで、該領域上に前記第1ノズル群を構成するノズルにおいてインクの吐出異常が発生しているか否かを示す第1判定用パターンを印刷させる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクやトナーなどの色材を用いた画像形成装置においては、画像形成の実施に先立ち、調整用チャートを用いた各色の色材間の形成位置の位置合わせや色むらなどの画像調整を行っている。調整用チャートの中には、各色の色材を同時に並べて形成する場合がある。この場合、上述した技術においては、第2の色材としてのインク上に形成した第1の色材としてのインクの視認性は向上するものの、第2の色のインク上に形成した他の色のインクの視認性が向上するとは限らず、各色の色材を同時かつ容易に検知できるとは限らなかった。
【0005】
そこで本発明は、複数色の色材を用いた調整用チャートを用いた画像調整において、同時かつ容易に複数色の色材を確実に検知した画像調整が可能な画像形成装置、画像形成装置の制御方法、および画像形成装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明は、記録媒体上に複数の色材による画像を形成するための画像形成装置であって、画像の形成に用いる複数の色材の各色度に対して設定値以上の色差を有する色度の範囲を、前記複数の色材に対する共通の下地の色範囲として算出する下地色範囲算出部を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数色の色材を用いた調整用チャートを用いた画像調整において、同時かつ容易に複数色の色材を確実に検知した画像調整が可能な画像形成装置、画像形成装置の制御方法、および画像形成装置の制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
【
図2】実施形態に係る画像形成装置に設けられたヘッドユニットの底面図である。
【
図3】実施形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る画像形成装置の制御方法において算出した下地の色範囲の表示例(その1)である。
【
図5】実施形態に係る画像形成装置の制御方法において算出した下地の色範囲の表示例(その2)である。
【
図6】実施形態に係る画像形成装置の制御方法を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態に係る画像形成装置の制御方法において形成する調整用チャートの一例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る画像形成装置の制御方法において形成する色材下地付き調整用チャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した画像形成装置、画像形成装置の制御方法、および画像形成装置の制御プログラムの実施の形態を説明する。なお、以降に説明する各実施の形態においては、色材として各色インクを用いたインクジェット方式の画像形成装置を例示して説明を行うが、本発明はこれに限定されることなく、各色トナーを用いた電子写真方式の画像形成装置に対しても適用可能である。
【0010】
≪画像形成装置≫
図1は実施形態に係る画像形成装置1の構成図であって、インクジェット方式の画像形成装置1における画像形成部を側方から見た図である。この図に示すように、実施形態に係る画像形成装置1は、媒体供給装置10、媒体搬送装置20、色材供給装置30、画像読取装置40、および制御装置50を備えている。これらは、次のように構成されている。
【0011】
<媒体供給装置10>
媒体供給装置10は、記録媒体Pを収納する複数のカセット11a,11b(ここでは一例として2つ)と、各カセット11a,11bに収納された記録媒体Pを送り出す送り出しローラー12、送り出しローラー12で送り出された記録媒体Pを媒体搬送装置20に供給する供給ローラー13などの各部品を備えている。
【0012】
このような媒体供給装置10によって供給される記録媒体Pは、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛またはシート状の樹脂等、シート状の主面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の材質のものであってよい。また媒体供給装置10は、ロールから長尺状の記録媒体Pを巻き出す構成のものであってもよい。
【0013】
<媒体搬送装置20>
媒体搬送装置20は、媒体供給装置10から供給された記録媒体Pを、所定方向に搬送するためのものである。この媒体搬送装置20は、例えばベルト搬送装置であって、駆動ローラー21、従動ローラー22、およびこれらに張架された無端ベルト23を備え、駆動ローラー21の回転によって無端ベルト23を周回動作させる。無端ベルト23は、駆動ローラー21と従動ローラー22との間の外周面部分が、記録媒体Pの載置面23sとなっている。無端ベルト23は、載置面23s上に供給された記録媒体Pを、載置面23sに対して吸着した状態で無端ベルト23の周回方向に搬送する。
【0014】
以下においては、このような媒体搬送装置20による記録媒体Pの搬送方向を、搬送方向xとする。また、無端ベルト23の載置面23s内において、搬送方向xと垂直な方向を幅方向yとする。
【0015】
<色材供給装置30>
色材供給装置30は、媒体搬送装置20によって搬送される記録媒体Pに対して、色材を供給するための装置であって、ここでは一例としてインク供給装置である。この色材供給装置30は、記録媒体Pの搬送方向xに沿って配置された複数のヘッドユニット31を備えている。本実施の形態における画像形成装置1は、一例としてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のプロセスカラー、および白色(W)の各色にそれぞれ対応する5つのヘッドユニット31y、31m、31c、31k、31wを有することとする。これらのヘッドユニット31は、記録媒体Pの搬送方向xの上流側から所定の順に、所定の間隔で配列されている。
【0016】
図2は、実施形態に係る画像形成装置1に設けられたヘッドユニット31の底面図であり、
図1に示したヘッドユニット31のうちの1つを、媒体搬送装置20に対向する面側から見た図である。
【0017】
図2に示すように、各ヘッドユニット31は、媒体搬送装置20側に向かう底面に沿って複数のインクヘッド32を配列したものである。ここではヘッドユニット31の一例として、記録媒体Pの搬送方向xに対して垂直な幅方向yに配列された4個のインクヘッド32の列が互い違いに2列配置された構成となっている。各インクヘッド32の媒体搬送装置20に向かう面は、複数のインク吐出ノズルのノズル開口32bが配列されたノズル面32aとなっている。
【0018】
ここで各インクヘッド32は、インクを貯留するインク室と、インク室の底面に設けられたヘッドチップ、および駆動回路基板などを有する。このうちヘッドチップは、インク液滴吐出のための駆動源として圧電アクチュエータを用いたピエゾ方式のものの他、サーマル方式のものであってもよい。このようなヘッドチップは、基板材の厚み方向に複数のノズルを形成したノズル基板を有する。ノズル基板の基板面が、上述したノズル面32aとなっている。またヘッドチップは、上述したインク室と各ノズルとを個別に連通するインク圧力室またはインク加熱室を有する素子基板を備えている。これにより、各ノズル開口32bからのインク吐出が、個別に制御される構成となっている。
【0019】
以上のような構成の各ヘッドユニット31は、例えば媒体搬送装置20で搬送される記録媒体Pの幅方向yを覆う大きさで設けられており、記録媒体Pのほぼ全面に同時にインクを供給可能なワンパス方式の構成となっている。なお、この色材供給装置30は、ヘッドユニット31が幅方向yに往復走査されるスキャン方式のものであってもよい。
【0020】
<画像読取装置40>
画像読取装置40は、媒体搬送装置20によって搬送される記録媒体Pの主面を撮像するためのものである。この画像読取装置40は、媒体搬送装置20における搬送方向xに対して、色材供給装置30の下流側に配置され、色材供給装置30からのインク供給によって記録媒体P上に形成された画像を読み取る。このような画像読取装置40は、撮像素子を配列したラインセンサーであってよく、撮像素子は、CCD(Charge Coupled Device)であっても他の素子であってもよい。
【0021】
<制御装置50>
制御装置50は、この画像形成装置1を用いて実施される画像形成に関する各種の制御を実施する。このような制御装置50は、例えば操作部51と表示部52と制御部53を備えている。これらは、次のような構成である。
【0022】
[操作部51]
操作部51は、この画像形成装置1で実施される画像形成のための各種の設定を入力する部分である。この操作部51は、次に説明する表示部52と一体に設けたタッチパネルであってもよく、表示部52とは別に設けた操作パネルであってもよい。
【0023】
[表示部52]
表示部52は、操作部51での操作の内容を表示する。またこの表示部52は、以降に説明する制御部53からの指示に基づいて、画像調整のための調整用チャートの下地として適切な色範囲を表示する。さらにこの表示部52は、以降に説明する制御部53からの指示に基づいて、画像調整のための調整用チャートの下地として適切な色範囲の色度を有する記録媒体Pを収容したカセットの通知を表示する。これらの色範囲は、次に説明する制御部53において算出した値である。なお、このような操作部51および表示部52は、制御部53を備えた画像形成装置1との間でデータの受け渡しのための通信が可能なパーソナルコンピューターや他の外部装置のものであってもよい。
【0024】
[制御部53]
制御部53は、計算機によって構成されている。計算機は、いわゆるコンピューターとして用いられるハードウェアであって、ここでの図示を省略したCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)やHDD(hard disk drive)のような不揮発性の記憶部を備える。さらに、計算機は、ネットワークインタフェースを備える。
【0025】
このような制御部53は、各種の制御プログラムを不揮発性の記憶部に保存し、保存されたプログラムに基づく処理を実行する。不揮発性の記憶部が保持する各種の制御プログラムは、本実施形態において特徴的な画像形成装置1の制御プログラムを含む。なお、この制御部53は、画像形成装置1との間でデータの受け渡しのための通信が可能なパーソナルコンピューターや他の外部装置に設けられた情報処理装置であってもよい。
【0026】
図3は、実施形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。この図に示すように、制御部53は、機能的要素として、下地色範囲算出部53a、表示制御部53b、カセット選択部53c、画像形成制御部53d、および画像検査部53eを有する。これらの各機能的要素の詳細は、以下の通りである。
【0027】
-下地色範囲算出部53a-
下地色範囲算出部53aは、各インクヘッド32に貯留された各色インクの色度に基づいて、調整用チャートの下地の色範囲を算出する。ここで調整用チャートとは、画像形成のための各種の画像調整に用いるテストパターンを有する画像である。各種の画像調整とは、各色インクの形成位置の調整、および色むらの調整、さらには各色インクの吐出不良の検知も含む。このような調整用チャートは、画像調整の目的に対応して用いられる通常の画像であってよい。
【0028】
下地色範囲算出部53aは、このような調整用チャートを形成する際に、各ヘッドユニット31から供給される各色インクに対する共通の下地の色範囲を算出する。各色インクに対する共通の下地の色範囲は、各色インクの色度に対する色差が共通して大きい色範囲であることとする。この場合、下地色範囲算出部53aは、各色インクとの色差に所定の設定値を設け、各色インクの色度に対して設定値以上の色差を有する範囲を、下地の色範囲として算出する。
【0029】
ここで、下地の色度と各色インクの色度との色差は、20以上であることが好ましく、これにより視覚的に下地と各色インクとの区別が十分に可能となる。また、下地の色度と各色インクの色度との色差が30以上であれば、画像読取装置40で取得した画像を用いて自動的に各種の補正値を算出することが可能となる。
【0030】
このような下地の色範囲は、各ヘッドユニット31に貯留された各色インクの色度と、各色の色サンプルの色度との色差を算出し、その色差が設定値以上となる色サンプルの色範囲を、下地の色範囲として算出する。
【0031】
なお、各ヘッドユニット31に貯留された各色インクの色度は、例えば基準色の記録媒体P上に、調整用チャートの形成時と同量の液滴量で各色インクを滴下してパッチを形成し、形成した各色のパッチを測色することによって取得された値であることとする。基準色は、白または透明とする。
【0032】
また各色の色サンプルの色度は、例えば、L*a*b*色空間色度図の座標値を、各方向に所定間隔(例えば10度)で機械的に振った値を用いることができる。
【0033】
下地色範囲算出部53aは、各色インクの色度と、各色の色サンプルの色度との色差を算出し、全ての色インクの色度に対する色差が所定の設定値(例えば色差20、または色差30)以上となる色範囲を、下地の色範囲として算出する。なお、色差は、CIE LAB(L*a*b*色空間)での色差判定に一般的に用いられる色差ΔE*abや、クロマネティクス指数差Δ*b*等による。ここでは、CIE LAB(L*a*b*色空間)の色空間上での人の目の色識別域に近似するように定義されたCIE DE2000色差式による色差(ΔE00)とすることが好ましい。
【0034】
また、各色の色サンプルの色度は、先に説明した基準色の記録媒体上に形成した各色の色パッチを測色した値を用いることとする。この場合の各色の色パッチは、各色インクの濃度を、所定間隔(例えば10%)で機械的に振って形成した複数のパッチが用いられる(例えば10×10×10×10=10000パッチ)を形成したものが例示される。色パッチの他の例としては、IT8.7の1617色等の標準カラーチャートで示される各色の色パッチが用いられる。さらに他の例として、パントーン、マンセルなど色見本帳で示される各色の色度を、色サンプルの色度としてもよい。また紙メーカーが発行している紙(すなわち記録媒体)の見本帳で示される色度を、色サンプルの色度としてもよい。
【0035】
-表示制御部53b-
表示制御部53bは、下地色範囲算出部53aで算出された下地の色範囲を、表示部52に表示させる。
図4は、実施形態に係る画像形成装置の制御方法において算出した下地の色範囲の表示例(その1)である。この図に示すように、表示制御部53bは、色度
図1001上に、算出した下地の色範囲[A1]~[A3]を表示する構成であってもよい。
【0036】
また
図5は、実施形態に係る画像形成装置の制御方法において算出した下地の色範囲の表示例(その2)である。この図に示すように、表示制御部53bは、例えば複数の色パッチを使用した場合であれば、パッチで示された色サンプル1002上において、算出した下地の色範囲[A11]~[A15]を示す構成であってもよい。また、色サンプル1002から、算出した下地の色範囲内のパッチ1003を抜き出して表示してもよい。
【0037】
また以上の他にも、表示制御部53bは、算出した下地の色範囲を絶対値で表示してもよい。この場合、色範囲は、Lab表記であっても、マンセル表記であってもよい。
【0038】
さらに、表示制御部53bは、算出した下地の色範囲を、その色範囲に含まれる色度を有する記録媒体の種類(銘柄、または紙種)として表示してもよい。また表示制御部53bは、算出した下地の色範囲に含まれる色度を有する記録媒体が、複数のカセット11a,11bのうちの何れに収容されているか、または収容されていないのかを表示してもよい。この場合、表示制御部53bは、予め保持している記録媒体の種類(銘柄、または紙種)毎の色度情報に基づいて、この表示を実施する。
【0039】
-カセット選択部53c-
カセット選択部53cは、下地色範囲算出部53aが算出した下地の色範囲内の色度を有する記録媒体Pが、媒体供給装置10のカセット11a,11bの何れかに収容されているか否かの判断を実施する。この判断は、例えばカセット選択部53cに保持された媒体情報に基づいて実施される。この媒体情報は、例えば制御装置50の操作部51から入力された情報であることとする。
【0040】
-画像形成制御部53d-
画像形成制御部53dは、媒体供給装置10、媒体搬送装置20、および色材供給装置30の駆動を制御し、記録媒体Pへの調整用チャートの形成を実施する。この際、画像形成制御部53dは、下地色範囲算出部53aで算出した下地の色範囲およびカセット選択部53cでの判断に基づいて調整用チャートの形成を実施する。
【0041】
画像形成制御部53dの制御によって形成される調整用チャートは、記録媒体Pに直接形成される調整用チャートであるか、または色材下地付き調整用チャートである。記録媒体Pに直接形成される調整用チャートは、下地の色範囲内の色度を有する記録媒体P上に形成される。また色材下地付き調整用チャートは、下地の色範囲内の色度を有する色材下地上に形成される。このような画像形成制御部53dによる調整用チャートの形成手順は、以降の画像形成装置の制御方法において詳細に説明する。
【0042】
-画像検査部53e-
画像検査部53eは、画像読取装置40の駆動を制御することにより、記録媒体Pに形成した調整用チャートの読み取りを実施する。また画像検査部53eは、記録媒体Pから読み取った調整用チャートを解析し、その解析結果に基づいた補正値を算出しもよい。ここで補正値とは、例えばインクヘッド32のノズル開口32bからのインク吐出タイミング、さらにはインクヘッド32を備えたヘッドユニット31の位置、さらにはインク吐出量などである。
【0043】
≪画像形成装置の制御方法≫
図6は、実施形態に係る画像形成装置の制御方法を示すフローチャートであって、
図1~
図5を用いて説明した制御部53に保持された制御プログラムによって実行される画像調整の手順を示している。以下、
図6のフローチャートに沿って、先の
図1~
図5および必要に応じた他の図を参照しつつ、画像形成装置1の制御方法を説明する。なお、このフローは、例えば制御装置50の操作部51において調整用チャートの形成の指示が入力されたことをトリガーとして開始される。
【0044】
[ステップS101]
ステップS101において、下地色範囲算出部53aは、各インクヘッド32に貯留された各色インク(色材)の色度を取得する。各色インクは、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のプロセスカラー、および白色(W)の全5色の各インクである。また、各色インクの色度は、白色もしくは透明な基準色の記録媒体P上に単色で形成した各色インクの画像を測色して得た情報であって、例えば制御装置50の操作部51から入力された情報であるか、ここでの図示を省略した測色計から得られた情報であってもよい。
【0045】
[ステップS102]
ステップS102において、下地色範囲算出部53aは、取得した各色インクの色度に基づいて、各色インクを用いて調整用チャートを形成する際の下地の色範囲を、先に説明したようにして算出する。
【0046】
[ステップ103]
ステップS103において、表示制御部53bは、下地色範囲算出部53aが算出した下地の色範囲を、表示部52に表示させる(
図4および
図5参照)。
【0047】
これにより、画像形成装置1のオペレーターは、各色インクを用いて形成される調整用チャートの下地に適する色範囲を、表示部52の表示画像によって確認することができる。そして、算出された色範囲内の色度を有する記録媒体Pを、媒体供給装置10のカセット11a、11bの何れかに収容することができる。また、画像形成装置1のオペレーターは、色範囲内の色度を有する記録媒体Pをカセット11a,11bのうちのどちらに収容したのかに関する情報を、制御装置50の操作部51から入力することができる。
【0048】
[ステップ104]
ステップS104において、カセット選択部53cは、下地色範囲算出部53aが算出した下地の色範囲内の色を有する記録媒体Pが、媒体供給装置10のカセット11a,11bの何れかに収容されているか否かの判断を実施する。カセット選択部53cは、下地の色範囲内の色度を有する記録媒体Pが、媒体供給装置10のカセット11a,11bの何れかに収容されている(YES)と判断した場合には、ステップS105に進む。一方、収容されていない(NO)と判断した場合には、ステップS106aに進む。
【0049】
[ステップS105]
ステップS105において、カセット選択部53cは、媒体供給装置10が有する複数のカセット11a,11bのうち、下地の色範囲内の色度を有する記録媒体Pが収容されたカセットを選択し、ステップS106に進む。なお、表示制御部53bは、複数のカセット11a,11bのうちのいずれに、下地色範囲算出部53aが算出した下地の色範囲内の色を有する記録媒体Pが収容されているのかを表示してもよい。これにより、画像形成装置1のオペレーターが、操作部51からの操作によって、複数のカセット11a,11bのうちの何れから記録媒体Pを供給するのかを選択する構成であってもよい。
【0050】
[ステップS106]
ステップS106において、画像形成制御部53dは、記録媒体Pへの調整用チャートの形成を実施する。この際、画像形成制御部53dは、媒体供給装置10の駆動を制御することにより、カセット選択部53cが選択したカセットから下地の色範囲内の色度を有する記録媒体Pを供給する。また画像形成制御部53dは、媒体搬送装置20および色材供給装置30の駆動を制御し、記録媒体Pへの調整用チャートの形成を実施する。ここで形成する調整用チャートは、制御装置50の操作部51において設定された調整用チャートであってよく、複数種類のものであってもよい。
【0051】
図7は、実施形態に係る画像形成装置の制御方法において形成する調整用チャート2001の一例を示す図であって、各色インクの形成位置の位置合わせ用の調整チャートの一例である。この図に示す調整用チャート2001は、記録媒体P上に直接的に各色インクを単色で着弾させて形成された各色インクのパターンで構成されている。この記録媒体Pは、調整用チャート2001を構成する複数の色インクの全ての色度に対する色差が設定値(例えば20、または30)以上のものである。これにより、記録媒体P上に形成した調整用チャート2001は、各色インクの全ての検知が容易なものとなっている。
【0052】
なお、比較として、例えば白色インクの下地としてのみ、白色インクの色度に対して所定以上の色差を有する下地を設けた場合には、白色インクに隣接する色インクの端部が白色インクの下地上に重ねて配置される。この場合、隣接する色インクと下地との色差が十分でなく、白インクに対しての隣接する色インクの形成位置の検知が困難な場合が発生するのである。
【0053】
[ステップS106a]
一方、ステップS106aにおいて、画像形成制御部53dは、記録媒体Pへの色材下地付き調整用チャートの形成を実施する。この際、画像形成制御部53dは、媒体供給装置10の駆動を制御することにより、何れかのカセット11a,11bから記録媒体Pを供給する。また、媒体搬送装置20および色材供給装置30の駆動を制御し、記録媒体Pへの色材下地(ここではインク下地)の形成と、調整用チャートの形成を実施する。ここで形成する調整用チャートは、制御装置50の操作部51において設定された調整用チャートであってよく、複数種類のものであってもよいことは、ステップS106と同様である。
【0054】
図8は、実施形態に係る画像形成装置の制御方法において形成する色材下地付き調整用チャート2002の一例を示す図であって、各色インクの形成位置の位置合わせ用の調整チャートの一例である。この図に示すように、色材下地付き調整用チャート2002は、記録媒体Pに色材下地2002aを形成し、この色材下地2002a上に、調整用チャート2002bを形成したである。この色材下地2002aは、調整用チャート2002bを構成する複数の色インクの全ての色度に対する色差が設定値(例えば20、または30)以上のものである。これにより、この色材下地2002a上に形成した調整用チャート2002bは、各色インクの全ての検知が容易なものとなっている。
【0055】
[ステップS107]
ステップS107において、画像検査部53eは、画像読取装置40の駆動を制御することにより、記録媒体Pに形成した調整用チャートの読み取りを実施する。
【0056】
[ステップS108]
ステップS108において、画像検査部53eは、記録媒体Pから読み取った調整用チャートを解析し、その解析結果に基づいて画像形成に関する補正値を算出する。この補正値は、例えばインクヘッド32のノズル開口32bからのインク吐出タイミング、インクヘッド32を備えたヘッドユニット31の位置である。また調整用チャートとして色むらの調整用チャートを形成した場合であれば、各ノズル開口32bからのインク吐出量である。
【0057】
また画像検査部53eは、算出した補正値を、必要に応じて画像形成制御部53dにフィードバックしてもよい。これにより、画像形成制御部53dは、ノズル開口32bからのインク吐出タイミングの補正、インクヘッド32を備えたヘッドユニット31の位置補正、さらには各ノズル開口32bからのインク吐出量の補正を実施することができる。また、画像検査部53eは、算出した補正値を、必要に応じて表示制御部53bにフィードバックしてもよい。これにより、表示制御部53bは、補正値を表示部52に表示させ、画像形成装置1のオペレーターに補正値を通知し、オペレーターが対応する補正処理を実施することが可能になる。
【0058】
以上により、一連の制御方法の手順を終了させる。なお、本ステップS108は、必要に応じて実施すればよく、記録媒体Pに形成した調整用チャートを目視で検査する場合には、実施しなくてもよい。
【0059】
≪実施形態の効果≫
以上説明したように本実施形態によれば、全ての色インクの色度からの色差が設定値以上に大きいに色範囲の下地上に、各色インクを用いた調整用チャートを形成することで、調整用チャートにおける全ての色インクを同時にかつ要因に検知することが容易となる。この結果、複数色の色インクを用いた高精度な画像調整を、少ない手順で実施することが可能となる。特に、
図7および
図8を用いて説明した各色インクの形成位置の調整用チャートにおいては、白色インクを含むすべての色のインクを同時に比較することが可能であるため、著しい効果を発揮する。また色むらの調整および各色インクの吐出不良の検知は、各色インクの色毎に調整可能である。しかしながらこの場合であっても、本実施形態を適用することにより、白色のインクの調整においてのみ特別に下地を有色に変更するといった手間を掛けることなく、全色の色インクを同一の下地上に形成した調整用チャートにより、色むらの調整および各色インクの吐出不良の検知を実施することが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1…画像形成装置
10…媒体供給装置
12…カセット
30…色材供給装置
52…表示部
53a…下地色範囲算出部
53d…画像形成制御部
2001…調整用チャート
2002…色材下地付き調整用チャート
2002a…色材下地