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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】木質基材及び木質基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/02 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
B27N3/02 D ZAB
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020072272
(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公開番号】P2021169158
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 透
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-144399(JP,A)
【文献】特開2002-225011(JP,A)
【文献】特開平09-267311(JP,A)
【文献】特開2004-155980(JP,A)
【文献】特開平04-007366(JP,A)
【文献】特開2009-056650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0171404(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状又はチップ状の木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物とを含む混合物を加熱加圧して形成される木質基材であって、
前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、有機過酸化物及び不飽和ジカルボン酸とを含有し、
前記有機過酸化物と、前記不飽和ジカルボン酸とのそれぞれの含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~3質量部であり、
前記木質材料と前記熱可塑性樹脂との間に共有結合を有し
前記有機過酸化物の含有量と、前記不飽和ジカルボン酸の含有量との比(有機過酸化物の含有量/不飽和ジカルボン酸の含有量)が、1.5/1~1.5/0.01であることを特徴とする木質基材。
【請求項2】
粉体状又はチップ状の木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物とを含む混合物を加熱加圧して形成される木質基材であって、
前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、有機過酸化物及び不飽和ジカルボン酸とを含有し、
前記有機過酸化物と、前記不飽和ジカルボン酸とのそれぞれの含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~3質量部であり、
前記有機過酸化物が、1,1-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンであり、
前記有機過酸化物の含有量と、前記不飽和ジカルボン酸の含有量との比(有機過酸化物の含有量/不飽和ジカルボン酸の含有量)が、1.5/1~1.5/0.01であることを特徴とする木質基材。
【請求項3】
前記混合物において前記木質材料と、前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、95/5~70/30であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木質基材。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエスエル、ポリアミド、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、エチレンビニルアセテート、またはシリコーンゴムであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項6】
前記有機過酸化物の含有量が、前記不飽和ジカルボン酸の含有量よりも多いことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の木質基材の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記有機過酸化物及び前記不飽和ジカルボン酸をそれぞれ0.01~3質量部添加し、それらを加熱混錬して前記熱可塑性樹脂組成物を得る第一工程と、
前記粉体状又はチップ状の木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物とを混合して原料混合物を得る第二工程と、
前記原料混合物を加熱加圧する第三工程と、を含むことを特徴とする木質基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、実用的な機械強度と耐水性とを備えた木質基材及び木質基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材は、木粉、木質チップ、木質繊維などの木質材料を接着剤と混合したものを加熱加圧成形して得られる基材であり、木質材料の種類などによりパーティクルボードや中密度繊維板などと称され、床や壁などの下地材、建具や家具など幅広い用途で使用されている。
木質基材の接着剤としては、従来、尿素樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤が、ホルムアルデヒドを含む硬化剤とともに用いられていた。ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因となる有害物質であるため、木質基材からの放散が問題となり、放散量低減のための各種施策が検討されているが完全に抑制することは困難であった。
これに対し、従来、ホルムアルデヒドを含まない接着剤として、粉体の糖類と粉体のポリカルボン酸を主成分とする接着剤を用い、これを植物繊維と混合し加熱加圧成形することで繊維ボードを製造する方法が提案されていた(特許文献1の段落[0017]参照)。また、従来、ポリビニルアルコールと水からなる接着剤を用いた木質基材を含む積層体の製造方法が提案されていた(特許文献2の段落[0017]、及び図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-55620号公報
【文献】特許第5553279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の接着剤を用いた木質基材は、曲げ強度などの機械特性や耐水性が実用上十分なものではなかった。
そこで、本発明の一態様は、実用的な機械強度と耐水性とを備えた木質基材及び化粧材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る木質基材は、粉体状又はチップ状の木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物とを含む混合物を加熱加圧して形成される木質基材であって、前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、有機過酸化物及び不飽和ジカルボン酸とを含有し、前記有機過酸化物と、前記不飽和ジカルボン酸とのそれぞれの含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~3質量部であることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記混合物において前記木質材料と、前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、95/5~70/30であることを特徴とする。
【0006】
本発明の一態様に係る木質基材は、前記熱可塑性樹脂がポリエチレンであることを特徴とする。
本発明の一態様に係る木質基材は、不飽和ジカルボン酸が、マレイン酸又は無水マレイン酸の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係る木質基材は、木質材料が、菌床を原料に含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧材は、粉体状又はチップ状の木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物とを含む混合物を加熱加圧して形成される木質基材であって、前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、有機過酸化物及び不飽和ジカルボン酸とを含有し、前記有機過酸化物と、前記不飽和ジカルボン酸とのそれぞれの含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~3質量部であり、前記木質基材に、意匠性を有する意匠層が積層されてなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、実用的な機械強度と耐水性とを備えた木質基材及び化粧材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係り、木質基材の原料混合物の模式図である。
図2】本発明の第2実施形態に係り、化粧材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示す第1実施形態)
図1中、20は、本発明の第1実施形態に係る木質基材であり、木質材料11の種類などによりパーティクルボードや中密度繊維板などと称され、床や壁などの下地材、建具や家具など幅広い用途で使用されている。
木質基材20は、図1に示すように、粉体状又はチップ状の木質材料11と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物12とを含む原料混合物10を加熱加圧して形成される。
【0010】
(木質材料11)
木質材料11は、粉体状又はチップ状のものである。
ここで、「粉体状」、「チップ状」には、サイズや形状の定義は一般に存在しない。本第1実施形態では、サイズが概ね数十ミクロン~数センチメートルの範囲にあるものをいう。
木質材料11は、例えば、木粉、木質繊維、木材をチップ状に破砕したものが挙げられ、原料としてはし間伐材、オガ粉、廃木材なども用いることができる。
また、木質材料11は、木材以外でも、竹、麻、ヤシ繊維、クルミ殻など、木材と同様にセルロース成分を含むものであれば候補とすることができる。
木質材料11の原料としては、例えば、キノコ栽培時に大量に発生する使用済み菌床が好適である。菌床は、キノコ栽培に用いる培地であり、木材チップやオガ粉にフスマや米ぬかなどの栄養分を混ぜたものである。菌床は、キノコ栽培後の国内で年間30万トン前後が廃棄されていると推定されバイオマスとして有望であるが、リサイクルが進んでいないのが現状である。
【0011】
(木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比)
木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)は、95/5~70/30の範囲である。
木質材料11の含有量が、上記した範囲より大きくなると、木質基材20に十分な曲げ強度を付与することができない。一方、木質材料11の含有量が、上記した範囲より小さくなると、加熱加圧時に木質基材20の変形が生じやすくなり好ましくない。
【0012】
(熱可塑性樹脂組成物12)
熱可塑性樹脂組成物12は、粉体状であり、次の含有物を含有している。
(1)熱可塑性樹脂
(2)有機過酸化物
(3)不飽和ジカルボン酸
【0013】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエスエル、ポリアミド、ポリオレフィン、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、エチレンビニルアセテート、シリコーンゴムなど各種用いることができるが、木質基材20の機械強度と耐水性の点でポリエチレンが好適である。
ポリエチレン樹脂は、特に限定されるものでなく、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなど既存の材料から、加熱加圧時の反応性や原料混合物10の流動性などを考慮し適宜選択して用いられる。
【0014】
(有機過酸化物)
有機過酸化物は、原料混合物10の加熱加圧において熱可塑性樹脂をラジカル架橋するために用いられる。
後述する熱可塑性樹脂が含有する不飽和ジカルボン酸は、ラジカル反応により熱可塑性樹脂に結合する。
有機過酸化物は、特に限定されるものではなく、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルなどの既存材料から、反応性や安定性を考慮し適宜選択して用いられる。
また、有機過酸化物は、ラジカル架橋剤の一種で有り、例えば、ヒドロペルオキシド類、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシジカルボナート類、ペルオキシエステル類、ペルオキシカルボナート類、ジアルキルペルオキシド類、ケトンペルオキシド類等がある。
【0015】
(不飽和ジカルボン酸)
不飽和ジカルボン酸は、木質材料11と熱可塑性樹脂の接着性を向上するために用いられ、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸の少なくとも一つを含むことが好ましい。
また、酸成分としてのラジカル重合可能な不飽和結合を有する不飽和ジカルボン酸又はその無水物としては、例えば、上記したマレイン酸、フマル酸のほか、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びそれらの無水物が挙げられる。
【0016】
(有機過酸化物と不飽和ジカルボン酸との添加量)
有機過酸化物と、不飽和ジカルボン酸とのそれぞれの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01~3質量部である。
すなわち、有機過酸化物の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01~3質量部である。
有機過酸化物の添加量が、0.01質量部に満たないと、原料混合物の加熱加圧時の反応性が不足するため、木質基材に十分な強度を得ることができない。また、有機過酸化物の添加量が、3質量部を超えると反応時の分解生成物が多くなり、木質基材20の変形の原因になる場合があるため好ましくない。
【0017】
不飽和ジカルボン酸の添加量は、有機過酸化物と同様に、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01~3質量部である。
不飽和ジカルボン酸の添加量が0.01質量部に満たないと、木質材料11との熱可塑性樹脂との接着性が不足するため、木質基材20に十分な強度を得ることができない。また、不飽和ジカルボン酸の添加量が3質量部を超えると、未反応の不飽和ジカルボン酸が木質基材20に残存しやすく、臭気や耐水性が低下する要因となる場合があるため好ましくない。
有機過酸化物と不飽和ジカルボン酸との両者の添加量の範囲を等しく設定したが、これに限定されず、異ならせても良く、例えば有機過酸化物を「1.5質量部」に対し、不飽和ジカルボン酸を「1質量部」としても良い。
【0018】
(木質基材20の製造方法)
木質基材20は、上記した構成を有し、次のように製造する。
有機過酸化物と不飽和ジカルボン酸を含む熱可塑性樹脂組成物12は、各種公知の方法で作製することが可能である。
熱可塑性樹脂組成物12は、例えば、一軸混錬機やバッチ式混錬機を用いて熱可塑性樹脂とともに有機過酸化物と不飽和ジカルボン酸とを加熱混錬後、機械的粉砕や凍結粉砕などの方法で粉体化することができる。
原料混合物10の加熱加圧は、各種公知の方法を用いることができるが、枠型を用いたプレス成型が好適である。
原料混合物10の加熱温度は、通常、120℃~250℃であり、熱可塑性樹脂の融点以上であることが必要である。250℃を超えると木質材料11の熱劣化が顕著に生じ場合がある。
加圧圧力は、通常、10kgf/cm~400kgf/cmであり、所望する木質基材20の密度により適宜した値を用いる。
上記で得られる木質基材20の密度や形状は用途に応じて適宜決定されるが、密度については0.5~1.2g/cm、特に0.6~1.1g/cmが好ましい。
【0019】
図2に示す第2実施形態)
図2を用いて第2実施形態について説明する。
本第2実施形態の特徴は、先に図1を用いて説明した第1実施形態に係る木質基材20に、意匠性を有する意匠層31を積層した化粧材30とした点である。
本第2実施形態によれば、木質基材20に意匠層31を積層することで、意匠性を付与することができる。
すなわち、木質基材20は、基材単独でも化粧材として実用に供することができるが、意匠性を付与するため、図2に示すように絵柄などの意匠が付与された紙やフィルムなどの意匠層31を木質基材20に積層して化粧材30としたものである。
【実施例
【0020】
以下に、本発明の第1実施形態に係る木質基材の実施例1~6及び比較例1~4について説明する。なお、本発明は、下記の実施例1~6に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1の熱可塑性樹脂組成物は、次の通りである。
(1)低密度ポリエチレン樹脂(LDPE) 100質量部
(2)有機過酸化物(商品名:パーヘキサC、日油(株)製) 1.5質量部
(3)不飽和ジカルボン酸:無水マレイン酸粉末(商品名CRYSTAL MAN、日油(株)製) 1質量部
上記(1)~(3)を、バッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、「粉体状の熱可塑性樹脂組成物」を得た。
「木質材料」には、使用済み菌床を洗浄し乾燥した材料を用いる。
木質材料と熱可塑性樹脂組成物とは、質量比(木質材料/前記熱可塑性樹脂組成物)が「85/15」で乾式混合することで、木質基材の原料混合物を得た。
原料混合物をアルミ製の型枠に導入し、熱プレス装置で加熱加圧することで、木質基材を得た(プレス条件:40kgf/cm、200℃10分、基材材厚:10mm、基材密度:0.8g/cm)。
【0021】
(実施例2)
実施例2においては、木質材料と熱可塑性樹脂組成物の質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「60/40」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
(実施例3)
実施例3においては、実施例1の「低密度ポリエチレン樹脂」(LDPE)を「エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂」(EVA)に置き換え、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
(実施例4)
実施例4においては、実施例1の「無水マレイン酸粉末」を「イタコン酸粉末」に置き換え、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
(実施例5)
実施例5においては、実施例1の「無水マレイン酸粉末」を「1部」から「0.01部」に減少させ、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
(実施例6)
実施例6においては、実施例1の「無水マレイン酸粉末」を「1部」から「3部」に増加させ、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0022】
(比較例1)
比較例1においては、実施例1の「有機過酸化物」を使用せず、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。すなわち、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)と無水マレイン酸粉末とから熱可塑性樹脂組成物を得た。
(比較例2)
比較例2においては、実施例1の「無水マレイン酸」を使用せず、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。すなわち、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)と有機過酸化物とから熱可塑性樹脂組成物を得た。
(比較例3)
比較例3においては、有機過酸化物の配合量を、実施例1の「1質量部」から「5質量部」に増加し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
(比較例4)
比較例4においては、無水マレイン酸の配合量を、実施例1の「1.5質量部」から「5質量部」に増加し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0023】
(木質基材の評価)
木質基材の物性評価は、次の(1)機械強度、(2)耐水性、(3)基材変形の3点で評価した。
(機械強度)
機械強度は、JISA5908に準拠する方法で曲げ強度を測定した。測定値(単位:N/mm)に対する機械強度の評価基準は当該JISの規格値を踏まえ、以下とした。
機械強度の評価基準は、次の通り、「○」、「△」、「×」の3段階で評価し、「○」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
○:13以上(合格)
△:8以上13未満(合格)
×:8未満(不合格)
【0024】
(耐水性)
耐水性は、JISA5908に準拠する方法で吸水厚さ膨潤率を測定した。測定値(単位:%)に対する耐水性の評価基準は当該JISの規格値を踏まえ、以下とした。
耐水性の評価基準は、次の通り、「○」、「△」、「×」の3段階で評価し、「○」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
○:8未満(合格)
△:8以上12未満(合格)
×:12以上(不合格)
【0025】
(基材変形)
基材変形とは、基材表面が部分的に膨れた状態であり、主にプレス中に基材内部で発生するガスの滞留により発生する。基材変形は基材端部の状態により如実に反映されるため、基材端部の外観を目視評価した。
基材変形の評価基準は、次の通り、「○」、「△」、「×」の3段階で評価し、「○」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
○:空隙なし(合格)
△:痕跡程度の空隙あり(合格)
×:空隙あり(不合格)
(評価結果)
木質基材の評価結果は、次の表1の通りである。
【0026】
【表1】
【0027】
3点の物性評価のすべてが「合格」なのは、実施例1~6だけであり、比較例1~4は1個以上の不合格を含んでいた。
(機械強度の評価結果)
機械強度が不合格なものは、比較例1及び比較例2の2件であった。
比較例1では、「有機過酸化物」を使用せず、又、比較例2では「無水マレイン酸」を使用しないことが原因と推測できる。すなわち、「有機過酸化物」と「無水マレイン酸」とのいずれか一方でも欠くと、機械強度が低下することが推測できる。
【0028】
(耐水性の評価結果)
耐水性が不合格なものは、比較例1、比較例3及び比較例4の3件であった。
比較例1では、「有機過酸化物」を使用しないことが原因と推測できる。比較例3では、「有機過酸化物」を増加させ、又、比較例4では「無水マレイン酸」を増加させたことが原因と推測できる。
すなわち、「有機過酸化物」を「0」まで減少させたり、或いは「有機過酸化物」と「無水マレイン酸」とのいずれか一方でも増加しすぎると、耐水性が低下することが推測できる。
【0029】
(基材変形の評価結果)
基材変形が不合格なものは、比較例3及び比較例4の2件であった。
比較例3では、「有機過酸化物」を増加させ、又、比較例4では「無水マレイン酸」を増加させたことが原因と推測できる。すなわち、「有機過酸化物」と「無水マレイン酸」とのいずれか一方でも増加しすぎると、基材変形がしやすいことが推測できる。
【0030】
(実施例1~6の評価結果)
実施例1~6の評価結果は、3点の物性評価のすべてが「合格」である。
実施例1~6の評価結果を比較すると、3点の物性評価のすべてが「○」であるのは、実施例1の1件だけで、6件の中でベストモードである。
機械強度の評価結果に「△」を含むのは、実施例3~実施例5の3件である。
実施例3では、「低密度ポリエチレン樹脂」(LDPE)を「エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂」(EVA)に置き換えたことが原因と推測できる。実施例4では、実施例1の「無水マレイン酸粉末」を「イタコン酸粉末」に置き換えことが原因と推測できる。実施例5では、実施例1の「無水マレイン酸粉末」を「1部」から「0.01部」に減少したことが原因と推測できる。すなわち、有機過酸化物の添加量が減少すると、原料混合物の加熱加圧時の反応性が低下し、その結果、木質基材の強度を低下したものと推測できる。
耐水性の評価結果に「△」を含むのは、実施例3、実施例4及び実施例6の3件である。
【0031】
実施例3では、「低密度ポリエチレン樹脂」(LDPE)を「エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂」(EVA)に置き換えたことが原因と推測できる。実施例4では、実施例1の「無水マレイン酸粉末」を「イタコン酸粉末」に置き換えたことが原因と推測できる。実施例6では、実施例1の「無水マレイン酸粉末」を「1部」から「3部」に増加させたことが原因と推測できる。
基材変形の評価結果に「△」を含むのは、実施例2及び実施例5の2件である。
実施例2では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物の質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「60/40」に変更したことが原因と推測できる。実施例5では、実施例1の「無水マレイン酸粉末」を「1部」から「0.01部」に減少させたことが原因と推測できる。
(総合的な評価結果)
総合的な評価結果としては、実施例1~6は、3点の物性評価のすべてが「合格」である。
【符号の説明】
【0032】
10 原料混合物
11 木質材料
12 熱可塑性樹脂組成物
20 木質基材
30 化粧材
31 意匠層
図1
図2