(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】非常用装置、照明器具
(51)【国際特許分類】
H05B 45/385 20200101AFI20240423BHJP
H05B 45/50 20220101ALI20240423BHJP
H05B 47/20 20200101ALI20240423BHJP
【FI】
H05B45/385
H05B45/50
H05B47/20
(21)【出願番号】P 2020075590
(22)【出願日】2020-04-21
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148057
【氏名又は名称】久野 淑己
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯田 岳秋
(72)【発明者】
【氏名】江口 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】篠田 健吾
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157729(JP,A)
【文献】特開2020-036419(JP,A)
【文献】特開2017-168455(JP,A)
【文献】特開2007-244034(JP,A)
【文献】特開2008-166165(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0310160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
H05B 45/00-45/59
H02B 47/00-47/29
H02M 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を直流電圧に変換するAC-DC変換回路と、
前記AC-DC変換回路から充電電流の供給を受ける蓄電池と、
前記蓄電池を電源として非常用器具に電流を供給する電流供給回路と、
前記AC-DC変換回路より電力の供給を受けて前記AC-DC変換回路及び前記電流供給回路を制御する制御部と、を備え、
前記AC-DC変換回路は、整流回路と、スイッチング素子とインダクタまたはトランスによりエネルギの充放電を行い直流電圧を生成する直流生成回路と、前記直流生成回路の出力に配置され前記蓄電池と直列に接続された抵抗素子と、前記抵抗素子と並列に接続された短絡スイッチ素子と、を有し、
前記制御部の制御により、少なくとも前記交流電圧投入時は前記短絡スイッチ素子をオフした状態で前記蓄電池を充電し、その後前記短絡スイッチ素子をオンした状態で前記蓄電池を充電することを特徴とする非常用装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記蓄電池に供給する充電電流の値に応じて前記スイッチング素子のオン時間を制御することを特徴とする請求項1に記載の非常用装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記蓄電池への充電開始後、前記蓄電池の電圧が基準電圧に達すると、前記短絡スイッチ素子をオンすることを特徴とする請求項1又は2に記載の非常用装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記蓄電池の電圧が前記交流電圧投入時よりも上昇した場合に、前記短絡スイッチ素子をオンすることを特徴とする請求項1又は2に記載の非常用装置。
【請求項5】
前記AC-DC変換回路は、前記蓄電池への充電開始後に前記蓄電池への充電電流を低減することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の非常用装置。
【請求項6】
前記AC-DC変換回路は、前記蓄電池の電圧が前記交流電圧投入時よりも上昇した場合に、前記蓄電池への充電電流を低減することを特徴とする請求項5に記載の非常用装置。
【請求項7】
前記蓄電池と直列に接続されたことで前記充電電流を検出する電流検出抵抗を備え、
前記制御部は、前記電流検出抵抗によって得られた充電電流を予め定められた値に近づける制御を行い、
前記電流検出抵抗は、前記蓄電池が前記非常用器具に電流を供給する経路を避けて設けられた請求項1から6のいずれか1項に記載の非常用装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記短絡スイッチ素子をオンする前に前記スイッチング素子の動作を止め、前記短絡スイッチ素子をオンしてから前記スイッチング素子の動作を再開することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の非常用装置。
【請求項9】
前記短絡スイッチ素子はノーマリオフタイプであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の非常用装置。
【請求項10】
前記直流生成回路はフライバックコンバータであり、
前記フライバックコンバータを構成するトランスは、前記AC-DC変換回路の入力側に接続する1次巻線と、前記蓄電池側に接続される2次巻線と、前記1次巻線及び前記2次巻線と磁気的に結合され、前記2次巻線より巻数が多い補助巻線を有し、
前記制御部は、前記補助巻線から電力の供給を受けて動作することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の非常用装置。
【請求項11】
前記非常用器具は、光源、誘導灯、スピーカ又はフラッシュ装置であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の非常用装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の非常用装置と、
前記非常用器具として提供されたLEDと、を備えたことを特徴とする照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は非常用装置及び照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)を光源とした照明器具の中でも、災害等による停電時に点灯させることを想定している非常用照明器具または誘導灯は、内蔵する蓄電池の電力を用いてLEDを点灯させる。停電が発生していない平常時において交流電源から入力されたエネルギを蓄電池に充電することで、停電時に長時間LEDを点灯させることを可能とする。
【0003】
特許文献1には、交流電源が正常に得られている通常時に非常用電源である蓄電池を充電し、停電が発生している非常時に蓄電池の電力を用いて光源を点灯する非常用照明器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非常灯器具に用いられる回路は、交流を直流に変換して直流電圧を得るフライバック形スイッチングレギュレータと、LEDを点灯させるための点灯回路に加え、蓄電池を充電するための充電回路を備える。そのため、同程度の出力の他の照明器具と比較して部品点数が多く、器具形状が大型であるとともに高コストであるという課題があった。また、フライバック形スイッチングレギュレータから充電回路を介して蓄電池を充電するため、充電回路での電力損失が発生し、蓄電池の充電中に消費電力が大きくなるという課題もあった。
【0006】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、小型化に好適であり、蓄電池充電時の消費電力を抑制した非常用装置及び照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る非常用装置は、交流電圧を直流電圧に変換するAC-DC変換回路と、該AC-DC変換回路から充電電流の供給を受ける蓄電池と、該蓄電池を電源として非常用器具に電流を供給する電流供給回路と、該AC-DC変換回路より電力の供給を受けて該AC-DC変換回路及び該電流供給回路を制御する制御部と、を備え、該AC-DC変換回路は、整流回路と、スイッチング素子とインダクタまたはトランスによりエネルギの充放電を行い直流電圧を生成する直流生成回路と、該直流生成回路の出力に配置され該蓄電池と直列に接続された抵抗素子と、該抵抗素子と並列に接続された短絡スイッチ素子と、を有し、該制御部の制御により、少なくとも該交流電圧投入時は該短絡スイッチ素子をオフした状態で該蓄電池を充電し、その後該短絡スイッチ素子をオンした状態で該蓄電池を充電することを特徴とする。
【0008】
本開示のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、AC-DC変換回路で直接蓄電池を充電するので、別途設けていた充電回路が不要となり、装置及び照明器具全体を小型かつ低コストにできるとともに、蓄電池充電時の消費電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る非常用装置の回路構成図である。
【
図2】実施の形態2に係る非常用装置の回路構成図である。
【
図3】実施の形態3に係る制御のタイミングチャートである。
【
図4】実施の形態4に係る非常用装置の回路構成図である。
【
図5】実施の形態5に係る非常用装置の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態に係る非常用装置と照明器具について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。実施の形態の非常用装置と照明器具は限定的なものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る非常用装置100の回路構成図である。非常用装置100は、交流電源1から電力の供給を受けて蓄電池BTを充電し、交流電源1の停電時には蓄電池BTより非常用器具10へ電力供給するものである。この例においては、非常用器具10は光源である。光源の例はLED(Light Emitting Diode)である。非常用装置100は、AC-DC変換回路2、AC-DC変換回路制御部3、電流供給回路4、点灯回路制御部5を備えている。AC-DC変換回路制御部3と点灯回路制御部5は1つの制御部として提供することもできる。これらをまとめて制御部と称することがある。
【0013】
AC-DC変換回路2は交流電圧を直流電圧に変換する回路として提供される。一例によれば、AC-DC変換回路2は、ダイオードブリッジで構成される整流回路DBと、直流生成回路とを備える。直流生成回路は、スイッチング素子とインダクタまたはトランスによりエネルギの充放電を行い直流電圧を生成する回路である。
図1の例では、直流生成回路としてフライバックコンバータを備える。フライバックコンバータは、コンデンサC1、トランスT1、スイッチング素子SW1、ダイオードD1及び平滑コンデンサC2を備えている。交流電源1から整流回路DBを介して全波整流された電圧はフライバックコンバータにより電力変換される。整流回路DBの直流出力側には、交流電源の停電有無を検出する電源検出抵抗R1を有し、電源検出抵抗R1の検出信号は点灯回路制御部5に入力される。
【0014】
AC-DC変換回路2はAC-DC変換回路制御部3の制御を受けて動作する。スイッチング素子SW1をオンするとトランスT1の1次巻線N1に電流が流れ、トランスT1にエネルギが蓄えられる。スイッチング素子SW1をオフするとトランスT1の2次巻線N2よりトランスT1に蓄えられたエネルギを蓄電池BT側に放出する。
【0015】
AC-DC変換回路2は、平滑コンデンサC2と蓄電池BTの間に、抵抗素子R2と、抵抗素子R2と並列に接続された短絡スイッチ素子SW2とを有している。抵抗素子R2は、直流生成回路の出力に配置され、蓄電池BTと直列に接続されている。短絡スイッチ素子SW2は点灯回路制御部5の指令に基づいてオンオフ動作する。短絡スイッチ素子SW2は、例えばMOSFET等の半導体スイッチで構成したり、他のトランジスタで構成したりすることができる。
【0016】
AC-DC変換回路制御部3は、蓄電池BTに流れる電流を電流検出抵抗R4より読み取る手段を有している。AC-DC変換回路制御部3は、整流回路DBの直流出力側より電力の供給を受けて動作する。AC-DC変換回路制御部3は必要に応じて力率改善動作を行ってもよい。すなわち、非常用装置100の入力電流波形を正弦波状で且つ交流電源1の電圧とほぼ同位相となるようにスイッチング素子SW1を制御し、力率改善を行う。この時、コンデンサC1は交流電源1の商用周波数成分を直流平滑するためのものではなく、スイッチングリプルを除去するためのフィルタコンデンサとして用いられる。
【0017】
電流供給回路4は、昇圧チョッパ回路で構成され、昇圧用リアクトルL1、スイッチング素子SW3、ダイオードD3及びコンデンサC3を備えている。電流供給回路4は点灯回路制御部5の制御を受けて動作する。スイッチング素子SW3をオンすると蓄電池BTより昇圧用リアクトルL1に電流が流れ、昇圧用リアクトルL1にエネルギを蓄える。スイッチング素子SW3をオフすると昇圧用リアクトルL1に蓄えたエネルギが、ダイオードD3を介してコンデンサC3及び非常用器具10側に放出される。この時、コンデンサC3には昇圧用リアクトルL1に発生する逆起電力に蓄電池BTの直流電圧が重畳した電圧が印加されるため、蓄電池BTの電圧よりも高い電圧が生成され、非常用器具10に印加される。
【0018】
電流供給回路4は、非常用器具10と直列接続された光源電流検出抵抗R5を有している。点灯回路制御部5は、光源電流検出抵抗R5で検出される電流検出信号を監視し、非常用器具10に流れる電流が所望の直流電流となるようにスイッチング素子SW3のオン時間を調整し、定電流制御を行う。また、点灯回路制御部5は、蓄電池BTの充電電圧を検出する蓄電池電圧検出抵抗R3より電圧検出信号を受け、蓄電池BTの電圧を監視する。なお、点灯回路制御部5は、AC-DC変換回路2の出力より電力の供給を受けて動作する。
【0019】
次に、実施の形態1に係る非常用装置100の動作を説明する。まず、蓄電池BTにエネルギが十分充電されていない状況において、非常用装置100に交流電源1を印加する場合について説明する。非常用装置100に交流電源1が印加されると、整流回路DBは入力された交流電圧を全波整流し、整流された電圧がコンデンサC1の両端に印加される。整流された直流電圧によりAC-DC変換回路制御部3に電力が供給され、AC-DC変換回路2が動作を開始する。これによりスイッチング素子SW1がオンオフ動作し、トランスT1の2次巻線N2に電圧が誘起され、平滑コンデンサC2に直流電圧が生成される。蓄電池BTはAC-DC変換回路2から充電電流の供給を受ける。
【0020】
AC-DC変換回路2の起動時は、短絡スイッチ素子SW2はオフ状態であり、平滑コンデンサC2の電圧は主に抵抗素子R2と蓄電池BTに印加される。AC-DC変換回路制御部3は、電流検出抵抗R4の電流検出信号を監視し、蓄電池BTへの充電電流が予め定められた電流値となるようにスイッチング素子SW1のオン時間を調整し、定電流制御により蓄電池BTを充電する。すなわち、制御部は、電流検出抵抗R4によって得られた充電電流を予め定められた値に近づける制御を行う。また、点灯回路制御部5にも平滑コンデンサC2の電圧が印加されることで、点灯回路制御部5に駆動電源が供給される。これにより点灯回路制御部5が動作を開始する。ただし、交流電源1が投入されている間は、点灯回路制御部5は電流供給回路4の動作を停止状態で維持する。したがって、非常用器具10は消灯状態となる。
【0021】
点灯回路制御部5は、蓄電池電圧検出抵抗R3により蓄電池電圧を監視し、充電を開始してから一定時間が経過することで蓄電池電圧が上昇し予めプログラム等により定めた基準電圧に到達すると、短絡スイッチ素子SW2をオン状態に制御する。これにより、AC-DC変換回路2の出力電流は抵抗素子R2を流れず、短絡スイッチ素子SW2を経由して蓄電池BTを充電する。なお、蓄電池電圧を検出する方法は、蓄電池電圧検出抵抗R3に限定されず、例えば点灯回路制御部5が充電開始時点から経過時間をカウントし予め定められた時間が経過したら蓄電池電圧が上昇したものとみなして、短絡スイッチ素子SW2をオンしてもよい。別の例によれば、制御部は、蓄電池BTの電圧が交流電圧投入時よりも上昇した場合に、短絡スイッチ素子SW2をオンする。
【0022】
ここで、抵抗素子R2と短絡スイッチ素子SW2を用いる意義について説明する。蓄電池BTが十分に充電されていないエネルギ放電状態においては、蓄電池BTの電圧はエネルギ満充電時と比較して低い状態となる。この状態において、抵抗素子R2と短絡スイッチ素子SW2がなく、AC-DC変換回路2の出力が蓄電池BTに直接接続されていると仮定すると、蓄電池は定電圧特性を有するためAC-DC変換回路2の出力電圧は蓄電池BTの電池電圧と同一電圧となる。そのため、AC-DC変換回路2の出力電圧は低電圧状態となる。
【0023】
そして、AC-DC変換回路2の出力電圧は点灯回路制御部5の駆動用電源も兼ねているため、AC-DC変換回路2の出力電圧が低い場合は、点灯回路制御部5に入力される電圧も低くなり、点灯回路制御部5を起動することができない。以上のことから、蓄電池BTにエネルギが十分充電されていない状態、又は過放電状態においては、AC-DC変換回路2の出力電圧が低下し、これに伴い、電流供給回路4を駆動する点灯回路制御部5に正常に駆動用電源が供給されず、非常用装置100は正常動作することができない。
【0024】
そこで、蓄電池BTが過放電状態等において、蓄電池BTへの充電電流が抵抗素子R2を流れるようにした。抵抗素子R2には、抵抗素子R2の抵抗値と充電電流の積で決まる電圧が発生し、AC-DC変換回路2の出力電圧は、蓄電池BTの電圧に抵抗素子R2の発生電圧が重畳した値となる。そのため、抵抗素子R2を設けない場合と比較して、AC-DC変換回路2の出力電圧を上昇させることができる。これにより交流電源1の投入時に、蓄電池電圧が低い場合でも、点灯回路制御部5に正常な制御電源を供給することができる。
【0025】
また、蓄電池BTへの充電動作により蓄電池電圧が十分に高まった場合は、短絡スイッチ素子SW2で抵抗素子R2を短絡すれば、抵抗素子R2で発生する電力損失を削減でき、充電電流における非常用装置100の消費電力を削減することができる。なお、蓄電池BTを複数本直列接続して用いる場合など、エネルギが十分に充電されてない状態でも十分な電池電圧を確保できる場合は、当然ながら抵抗素子R2と短絡スイッチ素子SW2を省略し得る。
【0026】
このように、制御部の制御により、少なくとも交流電圧投入時は短絡スイッチ素子SW2をオフした状態で蓄電池BTを充電し、その後短絡スイッチ素子SW2をオンした状態で蓄電池BTを充電する。
【0027】
次に、何らかの原因により、交流電源1が停電した場合の動作について説明する。交流電源1が停電すると、点灯回路制御部5は電源検出抵抗R1の電圧低下によりこれを検知して、電流供給回路4の動作を開始する。電流供給回路4が動作すると、蓄電池BTを電源として、非常用器具10に電流を供給し、非常用器具10が点灯する。交流電源1が停電するのでAC-DC変換回路2は動作を停止する。このため、点灯回路制御部5の駆動用制御電源はAC-DC変換回路2の出力より得られないため、非常用器具10が点灯中は電流供給回路4の出力より制御電源の供給を受ける。
図1の例では、AC-DC変換回路2の出力と、電流供給回路4の出力を、それぞれダイオードD4、D5によるダイオードOR接続し、点灯回路制御部5に制御電源を供給している。
【0028】
以上のように、別途充電回路を設けることなく、AC-DC変換回路2を定電流制御することで蓄電池BTを直接充電するため、回路を簡素化することができ、非常用装置を小型かつ低コストとすることができる。また、従来発生していた充電回路による電力損失を削減することができる。
【0029】
なお、AC-DC変換回路2の蓄電池BTへの充電電流は、蓄電池BTの充電状態によって適宜切り替えてもよい。例えば、蓄電池電圧が低い充電初期は充電電流を高くし、満充電時または満充電に近い状態となった時は充電電流を低減するようにしてもよい。言いかえると、制御部の制御により、蓄電池BTの電圧が交流電圧投入時よりも上昇した場合に、AC-DC変換回路2は蓄電池BTへの充電電流を低減する。制御部は、蓄電池BTに供給する充電電流の値に応じて、スイッチング素子SW1のオン時間を制御する。別の例によれば、AC-DC変換回路2は、蓄電池BTへの充電開始後に蓄電池BTへの充電電流を低減する。これにより満充電時における非常用装置100の消費電力を削減することができる。蓄電池BTの充電状態は蓄電池電圧検出抵抗R3により検出し得る。蓄電池電圧検出抵抗R3を用いる場合、図示していないが、点灯回路制御部5からAC-DC変換回路制御部3へ蓄電池電圧信号を伝送してもよいし、蓄電池電圧検出抵抗R3の信号電圧をAC-DC変換回路制御部3が直接監視してもよい。別の例によれば、交流電源1の投入後、制御部にて充電時間をカウントし、予め定められた時間が経過してから、充電電流を低減することもできる。また、図示していないが、AC-DC変換回路制御部3と点灯回路制御部5への制御電源供給は、適宜、抵抗、ツェナダイオード若しくは3端子レギュレータ等の降圧手段、又は電圧安定化手段を介して行ってもよい。
【0030】
本実施の形態では、AC-DC変換回路2にフライバックコンバータ方式を適用しており、トランスT1により1次巻線N1側と2次巻線N2側は電気的に絶縁されている。したがって、例えば1次巻線N1側に設けられた電源検出抵抗R1の信号を点灯回路制御部5に送信する場合、又は、2次巻線側に設けられた電流検出抵抗R4の信号をAC-DC変換回路制御部3に送信する場合は、適宜フォトカプラ等を用いて電気信号を絶縁して送信してもよい。
【0031】
非常用器具10は、光源に限らず、誘導灯、スピーカ、フラッシュ装置、又はその他任意の非常用設備とすることができる。非常用器具10としてスピーカを採用する場合は、電流供給回路4はスピーカを駆動するための音声回路に電流を供給する。音声回路とスピーカを設けることで、音声で避難案内する機能を有する非常用装置を提供できる。フラッシュ装置は、例えばキセノンランプなどの光源の点滅により避難者を誘導する装置である。フラッシュ装置を採用する場合は、電流供給回路4はフラッシュ装置を駆動するための点灯回路に電流を供給する。蓄電池BTに複数の電流供給回路を並列接続して、機能の異なる非常用設備を複数動作させることもできるし,一つの電流供給回路に複数の機能の異なる非常用設備を接続して動作させても良い。
【0032】
実施の形態1に記載した変形例、修正例又は代案については、以下の実施の形態に係る非常用装置に応用し得る。以下の実施の形態に係る非常用装置については、主として実施の形態1との相違点を説明する。
【0033】
実施の形態2.
図2は、実施の形態2に係る非常用装置101の回路構成図である。電流検出抵抗R4は、蓄電池BTが非常用器具10に電流を供給する経路を避けて設けられている。この例では、電流検出抵抗R4は、平滑コンデンサC2と蓄電池BTの間のグランドラインに直列に接続されている。
【0034】
図1では、電流検出抵抗R4が蓄電池BTの放電経路に設けられている。そのため、蓄電池BTから放電電流が電流検出抵抗R4を通り電力損失になる。
【0035】
これに対し、実施の形態2に係る非常用装置101では、電流検出抵抗R4が蓄電池BTと直列に接続されたことで蓄電池BTの充電電流を検出することができ、しかも電流検出抵抗R4は蓄電池BTの放電経路にはないので放電電流が電流検出抵抗R4を通ることによる電力損失はない。
【0036】
実施の形態3.
図3は、実施の形態3に係る制御のタイミングチャートである。制御部は、短絡スイッチ素子SW2をオンする前にスイッチング素子SW1の動作を止め、短絡スイッチ素子SW2をオンしてからスイッチング素子SW1の動作を再開する。
【0037】
短絡スイッチ素子SW2をオンすると、平滑コンデンサC2の電圧が変動し、AC-DC変換回路2の動作が不安定になりやすい。また、短絡スイッチ素子SW2のオンの際には、瞬間的に、平滑コンデンサC2に蓄えられた電圧が蓄電池BTの電圧より若干高くなるので、突入電流が蓄電池BTに流れることが考えられる。
【0038】
これらの弊害を抑制するために、上述のとおり、短絡スイッチ素子SW2をオンすることによる負荷変動のタイミングでは、スイッチング素子SW1のスイッチング動作をいったん停止することとした。スイッチング動作の停止期間は例えば数10μsec~数10msecである。
【0039】
実施の形態4.
図4は、実施の形態4に係る非常用装置102の回路構成図である。短絡スイッチ素子SW2はノーマリオフタイプのMOSFETである。これにより、交流電源を投入しマイコン等で構成された制御部が駆動する前に、充電電流が流れないようにすることができる。MOSFET以外の任意のノーマリオフタイプのスイッチング素子を、短絡スイッチ素子SW2として用いることができる。
【0040】
実施の形態5.
図5は、実施の形態5に係る非常用装置110の回路構成図である。AC-DC変換回路制御部3の制御電源を提供するために、補助巻線N3、ダイオードD10及びコンデンサC10が設けられている。点灯回路制御部5の制御電源を提供するために、補助巻線N4、ダイオードD11及びコンデンサC11が設けられている。
【0041】
フライバックコンバータを構成するトランスT1は、AC-DC変換回路2の入力側に接続する1次巻線N1と、蓄電池BT側に接続される2次巻線N2と、を備えている。そして、上述の補助巻線N3、N4は、いずれもトランスT1の1次巻線N1及び2次巻線N2と同一の鉄心に巻き付けられ、1次巻線N1及び2次巻線N2と磁気的に結合している。補助巻線N3、N4はいずれも2次巻線N2より巻数が多く設定されている。
【0042】
次に実施の形態5に係る非常用装置110の動作を説明する。ここでは、蓄電池BTの満充電時の電圧が、AC-DC変換回路制御部3及び点灯回路制御部5の動作電圧よりも低いものとして説明する。非常用装置110に交流電源1が印加されると、整流回路DBの直流出力より起動抵抗R10を介してAC-DC変換回路制御部3に制御電源が供給され、スイッチング素子SW1がオンオフ動作を開始し、AC-DC変換回路2が動作する。このとき、短絡スイッチ素子SW2はオフ状態であるため、蓄電池BTが未充電の低電圧状態であっても、抵抗素子R2に電圧が印加され、2次巻線N2には高い電圧が誘起される。
【0043】
同時に補助巻線N3、N4にも電圧が誘起される。補助巻線N3に誘起された電圧はダイオードD10及びコンデンサC10により整流、平滑された後、AC-DC変換回路制御部3に制御電源として供給される。これにより、AC-DC変換回路2は動作を継続する。AC-DC変換回路制御部3は、電流検出抵抗R4の電流検出信号を監視し、所望の充電電流となるようにスイッチング素子SW1のオン時間を調整し、蓄電池BTの充電を開始する。また、点灯回路制御部5には補助巻線N4より制御電源が供給され、点灯回路制御部5が起動する。交流電源1が投入されている間は、点灯回路制御部5は電流供給回路の動作を停止状態で維持し、非常用器具10は消灯状態とする。
【0044】
点灯回路制御部5が蓄電池BTの充電を開始してから予め定められた時間が経過し、蓄電池BTの電圧が上昇し、予めプログラム等により定めた基準電圧に到達すると、蓄電池電圧検出抵抗R3により点灯回路制御部5がこれを検知する。そして点灯回路制御部5は短絡スイッチ素子SW2をオン状態に制御する。これにより、AC-DC変換回路2の出力電流は抵抗素子R2を流れず、短絡スイッチ素子SW2を経由して蓄電池BTを充電する。これにより蓄電池充電時に抵抗素子R2で発生する電力損失を削減することができる。このとき、補助巻線N3、N4はいずれも2次巻線N2の巻数よりも多く設定されているので、2次巻線N2の発生電圧すなわち蓄電池電圧よりも高い電圧が補助巻線N3、N4に発生する。そのため、短絡スイッチ素子SW2をオンしても、AC-DC変換回路制御部3と点灯回路制御部5には補助巻線N3、N4から制御電源が継続して供給される。
【0045】
次に何らかの原因により、交流電源1が停電した場合の動作について説明する。交流電源1が停電すると電源検出抵抗R1により点灯回路制御部5がこれを検知し、電流供給回路4の動作を開始する。電流供給回路4が動作すると、蓄電池BTを電源として非常用器具10に電流が供給され、非常用器具10が点灯する。なお、交流電源1が停電するのでAC-DC変換回路2は動作が停止する。これに伴い、補助巻線N4の誘起電圧もゼロになる。そこで、点灯回路制御部5は、電流供給回路4を構成する昇圧チョッパ回路の出力から、蓄電池BTよりも高い電圧で制御電源の供給を受けて、動作する。停電発生から電流供給回路4が動作を開始するまでの切替期間は短時間であり、この間はコンデンサC11に蓄えられたエネルギにより制御電源の供給を受ける。
【0046】
以上のように、本実施の形態では、例えば小さな室内空間向けの出力の小さい非常用装置における、制御部への電源供給について説明した。低出力の非常用装置は、蓄電池の本数が少ない。例えば標準的なニッケル水素蓄電池では出力電圧が1.2Vであり、これを2本直列に設けると、蓄電池の出力電圧は合計2.4Vとなる。他方、一般的なマイクロコンピュータの動作電圧は3.3V~5V程度で動作する。抵抗素子R2を短絡スイッチ素子SW2で短絡すると2次巻線N2の誘起電圧が蓄電池電圧2.4Vで固定されるため、点灯回路制御部5の少なくとも一部がマイクロコンピュータで構成される場合、点灯回路制御部5を駆動することができない。AC-DC変換回路制御部3も同様に駆動できない。そこで、本実施の形態では、補助巻線N3、N4の巻数を、2次巻線N2の巻数よりも多く設定することで、補助巻線の誘起電圧を高くし、短絡スイッチ素子SW2の動作に関係なく制御部に対し駆動に必要な電圧を提供することとした。
【0047】
実施の形態6.
図6は、照明器具200の内部構造を示す図である。照明器具200は、照明器具筐体20、給電コネクタ21、非常用装置22、蓄電池23及び光源基板24を備えている。照明器具筐体20は、非常用装置22、蓄電池23、光源基板24などを取り付けるための筺体である。給電コネクタ21は、商用電源などの交流電源から電力の供給を受けるための接続部である。光源基板24は、LED又は有機ELなどの光源24a及び光学レンズ24bを実装した基板である。
【0048】
非常用装置22として、実施の形態1から5のいずれかで説明した非常用装置を採用する。非常用装置22は、給電コネクタ21と配線25を介して交流電源からの電力供給を受ける。非常用装置22は、入力した電力を直流に変換し、変換した電力を、配線26を介して蓄電池23に供給する。また、停電時は蓄電池23から配線26を介して非常用装置22に電力を供給する。そして非常用装置22は蓄電池23の電力を変換し、配線27を介して光源基板24に電流を供給する。これにより光源基板24に実装された光源24aが点灯する。
【0049】
これにより、上述した非常用装置の利点を備えた照明器具200が提供される。照明器具200によれば、実施の形態1-5で述べた非常用装置のいずれか1つを備えることで、AC-DC変換回路2で直接蓄電池を充電するので、従来別途設けていた充電回路が不要となり、回路及び照明器具全体を小型かつ低コストにでき、蓄電池充電時の消費電力も削減できる。
【符号の説明】
【0050】
1 交流電源、 2 AC-DC変換回路、 3 AC-DC変換回路制御部、 4 電流供給回路、 5 点灯回路制御部、 10 非常用器具、 BT 蓄電池、 R2 抵抗素子、 SW1 スイッチング素子、 SW2 短絡スイッチ素子、 R4 電流検出抵抗、 N3,N4 補助巻線、 20 照明器具筐体、 21 給電コネクタ、 22 非常用装置、 23 蓄電池、 24 光源基板、 100,101,102,110 非常用装置