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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ケーブル保護管用継手
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/06 20060101AFI20240423BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240423BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20240423BHJP
   F16L 27/12 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H02G9/06
H02G3/04 081
H02G1/06
F16L27/12 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020077680
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021175277
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本庄 美香
(72)【発明者】
【氏名】松田 博樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 潔
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-078766(JP,A)
【文献】特開2000-261945(JP,A)
【文献】実開昭56-054836(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/06
H02G 3/04
H02G 1/06
F16L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のケーブル保護管どうしを連結するケーブル保護管用継手であって、
一方の前記ケーブル保護管を一端側に接続可能な第1筒状部材と、
前記第1筒状部材の他端側が、前記一端側の内部に挿入され、他方の前記ケーブル保護管を前記他端側に接続可能な、第2筒状部材と、
前記第2筒状部材の外周面に螺合して取り付けられ、前記第1筒状部材が前記第2筒状部材から抜けることを規制する第3筒状部材とを含み、
前記第1筒状部材は、
前記ケーブル保護管を接続可能に、前記一端側に形成された第1接続部と、
前記他端側に形成された突出部と、
前記第1接続部と前記突出部との間に形成されたつば部と、
前記突出部の外縁に取り付けられた密接部材とを有し、
前記第2筒状部材は、
前記ケーブル保護管を接続可能に、前記他端側に形成された第2接続部と、
内周径が前記つば部の外周径よりも小さく、内周面に前記密接部材が接した状態で前記突出部を挿入可能に、前記一端側に形成された挿入部と、
前記挿入部の外周面に形成された外ネジ部とを有し、
前記第3筒状部材は、
前記つば部の外周径よりも内周径が大きく、
内周径が、前記第1筒状部材の前記つば部の外周径よりも小さく、かつ、前記第1筒状部材の前記第1接続部と前記つば部の間の領域の外周径よりも大きく、前記一端側に形成された縁部と、
前記縁部から前記他端側に向かって所定の距離離れた位置に形成された、前記外ネジ部に螺合可能な内ネジ部と
前記内ネジ部と前記縁部との間の内周面から突出して、前記第1筒状部材の前記突出部が前記挿入部に挿入され、前記外ネジ部と前記内ネジ部とが螺合された状態において、前記第1筒状部材の前記つば部の両面のそれぞれに接触することにより、前記第1筒状部材を前記第3筒状部材の中心軸に沿った方向において位置決めすることができる2つ以上の突起部と、を有し、
前記第1筒状部材の前記突出部が前記挿入部に挿入され、前記外ネジ部と前記内ネジ部とが螺合された状態において、前記つば部が、前記第3筒状部材の内周の前記第2筒状部材と前記縁部との間に収容されることにより、
前記突出部が前記挿入部から抜けることが規制されつつ、前記密接部材の密接性が維持された状態で、
前記第1筒状部材が、前記第2筒状部材および前記第3筒状部材の中心軸に沿った方向および前記中心軸に対して傾斜する方向に対して所定範囲内で移動可能な、
ケーブル保護管用継手。
【請求項2】
2本のケーブル保護管どうしを連結するケーブル保護管用継手であって、
一方の前記ケーブル保護管を一端側に接続可能な第1筒状部材と、
前記第1筒状部材の他端側が、前記一端側の内部に挿入され、他方の前記ケーブル保護管を前記他端側に接続可能な、第2筒状部材と、
前記第2筒状部材の外周面に螺合して取り付けられ、前記第1筒状部材が前記第2筒状部材から抜けることを規制する第3筒状部材とを含み、
前記第1筒状部材は、
前記ケーブル保護管を接続可能に、前記一端側に形成された第1接続部と、
前記他端側に形成された突出部と、
前記第1接続部と前記突出部との間に形成されたつば部と、
前記突出部の外縁に取り付けられた密接部材とを有し、
前記第2筒状部材は、
前記ケーブル保護管を接続可能に、前記他端側に形成された第2接続部と、
内周径が前記つば部の外周径よりも小さく、内周面に前記密接部材が接した状態で前記突出部を挿入可能に、前記一端側に形成された挿入部と、
前記挿入部の外周面に形成された外ネジ部とを有し、
前記第3筒状部材は、
前記つば部の外周径よりも内周径が大きく、
内周径が、前記第1筒状部材の前記つば部の外周径よりも小さく、かつ、前記第1筒状部材の前記第1接続部と前記つば部の間の領域の外周径よりも大きく、前記一端側に形成された縁部と
前記縁部から前記他端側に向かって所定の距離離れた位置に形成された、前記外ネジ部に螺合可能な内ネジ部とを有し、
前記外ネジ部と前記内ネジ部とが螺合され、前記第3筒状部材が前記第2筒状部材の前記外ネジ部の前記他端側を被覆した状態において、前記第2筒状部材の前記外ネジ部の前記他端側と、前記第2筒状部材を被覆する前記第3筒状部材との間にICタグが設けられ、
前記第1筒状部材の前記突出部が前記挿入部に挿入され、前記外ネジ部と前記内ネジ部とが螺合された状態において、前記つば部が、前記第3筒状部材の内周の前記第2筒状部材と前記縁部との間に収容されることにより、
前記突出部が前記挿入部から抜けることが規制されつつ、前記密接部材の密接性が維持された状態で、
前記第1筒状部材が、前記第2筒状部材および前記第3筒状部材の中心軸に沿った方向および前記中心軸に対して傾斜する方向に対して所定範囲内で移動可能な、
ケーブル保護管用継手。
【請求項3】
前記外ネジ部と前記内ネジ部との螺合状態が解除されることを規制するロック構造を備える、
請求項1または2に記載のケーブル保護管用継手。
【請求項4】
前記ICタグは、
前記第2筒状部材の前記外ネジ部と前記第2接続部との間の外周面に形成された第1リブ、および、前記第3筒状部材の前記内ネジ部よりも前記他端側の内周面に形成された第2リブの少なくともいずれかにより密封されている、
請求項に記載のケーブル保護管用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル保護管用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
通信や送電のためのケーブルを収容して地中に埋設するためのケーブル保護管どうしを連結するケーブル保護管用継手が知られている。特許文献1は、管材(ケーブル保護管)が挿入される筒状の継手本体と、継手本体内に挿入配置されて管材を囲繞する防水パッキンと、この防水パッキン端縁に当接して継手本体に配置されて管材を囲繞する断面がC字形のストッパーリングと、このストッパーリングを窄めて管材外周面に圧接させるよう接続部にネジ止めされる接続ソケットとを備えた配管継手装置(ケーブル保護管用継手)を開示している。この配管継手装置によれば、管材を、防水パッキンを備えた継手本体に挿入した後に、接続ソケットを捩じ込むだけで簡単に管材どうしを接続固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-291837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたケーブル保護管用継手は、ケーブル保護管とケーブル保護管用継手との接続が密接部材(シール部材)であるパッキンを介して行われているため、地殻変動や地震により大きな力が作用すると、ケーブル保護管がケーブル保護管用継手から抜けるという問題があった。また、特許文献1に開示されたケーブル保護管用継手は、地殻変動や地震による地中内でのケーブル保護管の移動や変形に対応するためのフレキシブル性について充分に検討されていなかった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、密接性、密封性(シール性)を維持しながら、軸方向への力によりケーブル保護管どうしの連結が外れることを規制し、かつ、ケーブル保護管の地中での変形や移動にも対応できるフレキシブル性を備えたケーブル保護管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、2本のケーブル保護管どうしを連結するケーブル保護管用継手であって、一方のケーブル保護管を一端側に接続可能な第1筒状部材と、第1筒状部材の他端側が、一端側の内部に挿入され、他方のケーブル保護管を他端側に接続可能な、第2筒状部材と、第2筒状部材の外周面に螺合して取り付けられ、第1筒状部材が第2筒状部材から抜けることを規制する第3筒状部材とを含み、第1筒状部材は、ケーブル保護管を接続可能に、一端側に形成された第1接続部と、他端側に形成された突出部と、第1接続部と突出部との間に形成されたつば部と、突出部の外縁に取り付けられた密接部材とを有し、第2筒状部材は、ケーブル保護管を接続可能に、他端側に形成された第2接続部と、内周径がつば部の外周径よりも小さく、内周面に密接部材が接した状態で突出部を挿入可能に、一端側に形成された挿入部と、挿入部の外周面に形成された外ネジ部とを有し、第3筒状部材は、つば部の外周径よりも内周径が大きく、内周径が、第1筒状部材のつば部の外周径よりも小さく、かつ、第1筒状部材の第1接続部とつば部の間の領域の外周径よりも大きく、一端側に形成された縁部と、縁部から他端側に向かって所定の距離離れた位置に形成された、外ネジ部に螺合可能な内ネジ部と、内ネジ部と縁部との間の内周面から突出して、第1筒状部材の突出部が挿入部に挿入され、外ネジ部と内ネジ部とが螺合された状態において、第1筒状部材のつば部の両面のそれぞれに接触することにより、第1筒状部材を第3筒状部材の中心軸に沿った方向において位置決めすることができる2つ以上の突起部と、を有し、第1筒状部材の突出部が挿入部に挿入され、外ネジ部と内ネジ部とが螺合された状態において、つば部が、第3筒状部材の内周の第2筒状部材と縁部との間に収容されることにより、突出部が挿入部から抜けることが規制されつつ、密接部材の密接性が維持された状態で、第1筒状部材が、第2筒状部材および第3筒状部材の中心軸に沿った方向および中心軸に対して傾斜する方向に対して所定範囲内で移動可能な、ケーブル保護管用継手である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、密接(密封)性を維持しながら、軸方向への力によりケーブル保護管どうしの連結が外れることを規制し、かつ、ケーブル保護管の地中での変形や移動にも対応できるフレキシブル性を備えたケーブル保護管継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係るケーブル保護管用継手の縦断面図
図2】本発明の第1の実施形態に係るケーブル保護管用継手の拡大断面図
図3】本発明の第1の実施形態に係るケーブル保護管用継手の動きを説明する縦断面図
図4】本発明の第1の実施形態に係るケーブル保護管用継手の動きを説明する縦断面図
図5】本発明の第1の実施形態の変形例に係るケーブル保護管用継手の拡大断面図
図6】本発明の第2の実施形態に係るケーブル保護管用継手の縦断面図
図7】本発明の第2の実施形態に係るケーブル保護管用継手の横断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るケーブル保護管用継手100について、図を参照して説明する。図1は、ケーブル保護管用継手100の縦断面図であり、図2は、図1において点線で囲ったA部の拡大断面図である。以下では、便宜上、ケーブル保護管用継手100の、図1の紙面右側端を一端側とし、紙面左側端を他端側として説明をする。
【0010】
ケーブル保護管用継手100は、通信や送電のためのケーブルを収容して地中に埋設するケーブル保護管1、2どうしを連結するために用いられる。ケーブル保護管用継手100は、第1筒状部材10、第2筒状部材20、および、第3筒状部材30を含む。
【0011】
(第1筒状部材)
第1筒状部材10は、一端側にケーブル保護管1が接続可能な筒状の部材であり、第1接続部11、突出部12、つば部13、および、密接部材14を有する。
【0012】
第1接続部11は、第1筒状部材10の一端側に、ケーブル保護管1を接続可能に形成される円筒状の部分である。ケーブル保護管1は、第1接続部11の内部に挿入されて、第1接続部11の内周面に接着、溶着などにより接続される。
【0013】
突出部12は、第2筒状部材20の一端側の内部に挿入される、第1筒状部材10の他端側において外方に延出する部分である。突出部12は、外縁に凹部12aが形成され、凹部12aに第2筒状部材20の一端側に設けられた後述する挿入部22と突出部12との間を密接(密封)する密接部材14が取り付けられている。密接部材14が挿入部22と突出部12との間を密接(密封)することにより、ケーブル保護管1、2の内部に水分や塵埃が入り込んで収容されたケーブルを汚損することを防止する。密接部材14は、一例としてOリングであるが、第2筒状部材20と突出部12との間を密接(密封)することができれば限定されない。
【0014】
つば部13は、突出部12が第2筒状部材20から抜けることを規制するために、第1接続部11と突出部12との間において外方に延出するつば状に形成された部分である。
【0015】
(第2筒状部材)
第2筒状部材20は、一端側の内部に、第1筒状部材10の他端側を挿入可能であり、他端側に、ケーブル保護管2が接続可能な筒状の部材であり、第2接続部21、挿入部22、外ネジ部23、第1リブ24、および、ICタグ25を有する。
【0016】
第2接続部21は、第2筒状部材20の他端側に、ケーブル保護管2を接続可能に形成された円筒状の部分である。ケーブル保護管2は、第2接続部21の内部に挿入されて、第2接続部21の内周面に接着、溶着などにより密封して接続される。
【0017】
挿入部22は、第2筒状部材20の一端側に、第1筒状部材10の突出部12を挿入するための円筒状の部分である。挿入部22の内周径は、つば部13の外周径よりも小さい。また、挿入部22の内周径は、突出部12を挿入可能であるとともに、突出部12を挿入することにより、密接部材14との間で密接(密封)性を持つことができる所定の締め代を有する大きさに形成される。
【0018】
外ネジ部23は、挿入部22の外周面に、後述する第3筒状部材30の内ネジ部32を螺合するために形成されている外ネジである。外ネジ部23は、一例として、挿入部22の一端側端部の外周面に形成されている。外ネジ部23のネジ山は、第3筒状部材30の取り付けを容易にするために、1周未満の相対回転により螺合が完了するように形成されることが好ましい。
【0019】
第1リブ24は、第3筒状部材30を第2筒状部材20の外周面に螺合により取り付けた際に、後述する第3筒状部材30の第2リブ33と係合して、螺合が緩むことを規制するロック構造を構成する。第1リブ24は、一例として挿入部22の外周面の、外ネジ部23から他端側に向かって所定距離離れた位置に周方向に全周にわたり形成されるリブである。なお、第1リブ24は、螺合が緩むことを規制できれば円周方向に所定の範囲にだけ形成されてもよい。
【0020】
ICタグ25は、所定の情報が内部のICチップ(不図示)に記録されており、ケーブル保護管用継手100の埋設後に、当該情報を電波によって地上から読み取るために設けられる。ICタグ25は、一例として、挿入部22の外周面の、外ネジ部23と第1リブ24との間の領域に形成された深さ1mm程度の溝26に貼り付けて取り付けられている。外ネジ部23と第1リブ24との間の領域は、外ネジ部23の内ネジ部32との螺合および第1リブ24の第2リブ33との係合により密封が保たれている。このため、当該領域に取り付けられたICタグ25は、外部からの雨水や塵埃等の侵入により機能が損なわれることが抑制される。ICタグ25が備えるICチップに記録される情報は特に限定されず、例えば、ケーブル保護管用継手100が埋設された地点の地理的情報などを記録することができ、この情報を誘導システム等に活用することができる。なお、ICタグ25は設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0021】
(第3筒状部材)
第3筒状部材30は、第2筒状部材20の外周面に螺合により取り付けられ、第1筒状部材10が第2筒状部材20から抜けることを規制するための部材であり、縁部31、内ネジ部32、および、第2リブ33を有する。第3筒状部材30の縁部31と内ネジ部32との間の部分の内周径は、つば部13の外周径よりも大きく形成されている。第3筒状部材30は、一例として、内周面が円柱形状の六角筒形状に形成されている。これにより、第3筒状部材30は、スパナなどの工具を用いて第2筒状部材20へ容易に取り付けることができる。
【0022】
縁部31は、第3筒状部材30の一端側において内方に延出して形成された部分である。縁部31の内周径は、第1筒状部材10のつば部13の外周径よりも小さく、かつ、第1筒状部材10の第1接続部11とつば部13の間の領域Rの外周径よりも大きく形成されている。
【0023】
内ネジ部32は、第2筒状部材20の外ネジ部23を螺合して、第3筒状部材30を第2筒状部材20の外周面に固定するために形成されている内ネジである。内ネジ部32は、縁部31から他端側に向かって所定の距離離れた位置に形成されている。内ネジ部32のネジ山も、外ネジ部23と同様に、第2筒状部材20への取り付けを容易にするために、1周未満の相対回転により螺合が完了するように形成されることが好ましい。
【0024】
第2リブ33は、第3筒状部材30を第2筒状部材20の外周面に螺合により取り付けた際に、第2筒状部材20の第1リブ24と係合して、螺合が緩むことを規制するロック構造を構成する。第2リブ33は、一例として第3筒状部材30の内ネジ部32よりも他端側に向かって所定距離離れた内周面に周方向に全周にわたり形成されるリブである。なお、第2リブ33は、螺合が緩むことを規制できれば円周方向に所定の範囲にだけ形成されてもよい。
【0025】
第1筒状部材10、第2筒状部材20、および、第3筒状部材30は、いずれも樹脂材料を用いて製造することができる。一例として、耐熱性・強度を高めるために、塩化ビニールとABS樹脂とを混合(共重合)した材料を用いることができる。また、密接部材14は、ブタジエンゴムを用いて製造することができ、耐熱性を付与するためにこれにシリコンを混合したり、耐酸性・耐アルカリ性を付与するためにフッ素を混合したりしてもよい。
【0026】
ケーブル保護管用継手100は、次の手順により組立てることができる。はじめに、第2筒状部材20の挿入部22の内部に、密接部材14が取り付けられた突出部12が挿入される。その後、第2筒状部材20の挿入部22の外周面に、内ネジ部32の内周に第1筒状部材10の第1接続部11を通した第3筒状部材30が外嵌される。さらに、第2筒状部材20と第3筒状部材30とが相対的に回転させられることで外ネジ部23と内ネジ部32とが螺合して、ケーブル保護管用継手100が組立てられた状態となる。外ネジ部23と内ネジ部32とが螺合した際には、第1リブ24と、第2リブ33とが軸方向において係合するため、螺合が緩むことが防止される。
【0027】
このように、ケーブル保護管用継手100は、第2筒状部材20の挿入部22の内部に第1筒状部材10を挿入した後に、第2筒状部材20と第3筒状部材30とを相対的に回転させるという、比較的単純な作業により組立てが可能である。とくに、外ネジ部23と内ネジ部32とが、1周未満の相対回転により螺合が完了するネジで形成されれば、ケーブル保護管用継手100の組立てはより容易になる。
【0028】
このようにして、第1筒状部材10の突出部12が挿入部22に挿入され、外ネジ部23と内ネジ部32とが螺合されたケーブル保護管用継手100は、図1に示すように、つば部13が、第3筒状部材30の内周の第2筒状部材20の一端側と縁部31との間の空間Sに収容された状態となる。これにより、空間S内に収容されたつば部13は、空間Sの内部における所定の範囲での移動が可能になり、この結果、第1筒状部材10は、第2筒状部材20および第3筒状部材30の中心軸に沿った方向および中心軸に対して傾斜する方向に対して、次に説明する所定範囲内で移動可能となる。
【0029】
上述のように、縁部31および第2筒状部材20の挿入部22は、内周径が、つば部13の外周径よりも小さく形成されている。このため、空間S内に収容されたつば部13は、図3に示すように、挿入部22の一端側の端面と縁部31との間で軸方向における移動が規制される。これにより、第1筒状部材10は、軸方向への移動の範囲が規制されるので、軸方向への力が作用した場合に第3筒状部材30から抜けて、ケーブル保護管1、2どうしの連結が外れることが規制される。図3は、つば部13が縁部31に接触した状態を示す断面図である。
【0030】
第1筒状部材10の軸方向への移動量は、挿入部22の縁部31側の端面と縁部31との間の距離D(図3参照)により調整することができる。距離Dは、一例として、ケーブル保護管1として通常定尺寸法で最も長い4M管を用いた場合に伸縮代が1%となる距離としての40mm程度とすることができる。
【0031】
また、上述のように、縁部31の内周径は、領域Rにおける第1筒状部材10の外周径よりも大きく形成されている。このため、空間S内に収容されたつば部13は、外周面が第3筒状部材30の内周面に接触するか、第1筒状部材10の領域Rの外周面が縁部31の内周面に接触するまで傾斜することができる。図4は、つば部13の外周面が第3筒状部材30の内周面に接触した状態を示す断面図である。
【0032】
第1筒状部材10の第2筒状部材20および第3筒状部材30の中心軸に対する傾斜角度は、つば部13の外周径と第3筒状部材30の内周径との差、および、領域Rにおける第1筒状部材10の外周径と縁部31の内周径との差により調整することができる。第1筒状部材10の第2筒状部材20および第3筒状部材30の中心軸に対する傾斜角度θ(図4参照)は、一例として、6°程度とすることができる。
【0033】
さらに、突出部12とつば部13との軸方向における距離は、つば部13が縁部31の他端側の面に接触した状態、および、つば部13が、外周面が第3筒状部材30の内周面に接触するか、領域Rにおける第1筒状部材10の外周面が縁部31の内周面に接触するまで傾斜した状態のいずれにおいても、密接部材14が挿入部22の内周面に接触して、密接(密封)性が確保されるように形成されている。これにより、ケーブル保護管用継手100は、第1筒状部材10が、第2筒状部材20および第3筒状部材30の中心軸に沿った方向および中心軸に対して傾斜する方向に対して所定範囲内での移動をした場合にも、密接部材14の密接(密封)性を維持することができる。
【0034】
なお、第1筒状部材10が中心軸に対して傾斜した場合には、図4に示すように、縁部31の内周面と領域Rにおける第1筒状部材10との間にわずかな隙間CLが生じるが、このような状態においても、密接部材14が挿入部22の内周面に接触しているため、密接(密封)性は確保される。隙間CLを中心軸の延伸方向から見た場合の周方向における角度範囲は、縁部31からつば部13が抜けることを防止できるように、中心軸から見て180°以下であることが好ましく、第1筒状部材10および第3筒状部材30の変形などが生じた場合にも確実に抜けを防止するためには中心軸からみて140°以下であることがより好ましい。
【0035】
以上で説明をしたように、ケーブル保護管用継手100は、突出部12が挿入部22から抜けることが規制されつつ、密接部材14の密接(密封)性が維持された状態で、第1筒状部材10が、第2筒状部材20および第3筒状部材30の中心軸に沿った方向および中心軸に対して傾斜する方向に対して所定範囲内で移動可能である。このため、地殻変動や地震が発生をしても、密接(密封)性を維持しながら、ケーブル保護管1、2どうしの連結が外れることを規制し、かつ、ケーブル保護管1、2の地中での変形や移動にもフレキシブルに対応して、収容されたケーブルを好適に保護することができる。
【0036】
(変形例)
ケーブル保護管用継手100は、外ネジ部23と内ネジ部32との螺合状態が緩むことを規制するロック構造を第1リブ24と第2リブ33との係合により実現したが、ロック構造はこの形態に限定されない。例えば、ロック構造は、第1リブ24および第2リブ33の少なくともいずれかのネジ山の間に設けた突起部(不図示)が、この突起部を乗り越えて螺合した相手方のネジ山の螺合解除方向への回転を防止するようにして構成されてもよい。
【0037】
また、ケーブル保護管用継手100は、第1筒状部材10の領域Rの表面に、ケーブル保護管用継手100が組立てられる際に第1筒状部材10の位置を決るための位置決め用マーク(不図示)を備えてもよい。位置決め用マークは、つば部13が挿入部22の一端側の端部と縁部31の他端側の面との軸方向における略中間に位置する状態で、領域Rにおける、縁部31の近傍に位置する箇所に形成される。位置決め用マークを用いて位置決めされた第1筒状部材10は、一端側および他端側のいずれにも所定の範囲での移動が可能となる。このため、第1筒状部材10が一端側または他端側に偏った状態でケーブル保護管用継手100が埋設されてしまうことで、地中において第1筒状部材10の一方向側への移動が不可能になることを防止できる。なお、位置決め用マークは、目視で位置を確認できるように描かれた線状の印でもよいし、触れることで位置を確認できる凸部や凹部などでもよい。
【0038】
さらに、ICタグ25を設ける位置は、ケーブル保護管用継手100の内部において密封を保つことができれば、上述の位置に限定されない。具体的には、ICタグ25は、外ネジ部23と内ネジ部32とが螺合され、第3筒状部材30が第2筒状部材20の外ネジ部23の他端側を被覆した状態において、第2筒状部材20の外ネジ部23の他端側と、第2筒状部材20を被覆する第3筒状部材30との間に設ければよい。また、ICタグ25を設けた位置の密封方法も上記の形態に限定されない。図5の(a)~(c)は、変形例に係るケーブル保護管用継手のICタグ25を設ける位置および密封方法を示した拡大断面図である。
【0039】
図5の(a)は、第2筒状部材20の外周面に設けた溝26にICタグ25を設けるとともに、第2筒状部材20の外周面から突出してICタグ25の一端側および他端側を密封する1対の第1密封リブ27を設けた形態を示している。
【0040】
図5の(b)は、溝26にICタグ25を設けるとともに、第1密封リブ27に加えて、第3筒状部材30の内周面から突出してICタグ25の一端側および他端側を密封する1対の第2密封リブ34を設けた形態を示している。図5の(b)に示した形態によれば、第1密封リブ27および第2密封リブ34でICタグ25の一端側および他端側を密封しているため、図5の(a)に示した形態と比較してより高い密封性を実現することができる。なお、この場合、ロック構造を構成する第1リブ24および第2リブ33が、他端側の第1密封リブ27および第2密封リブ34として用いられてもよい。
【0041】
図5の(c)は、溝26を設けずに、第3筒状部材30の内周面に設けた深さ1mm程度の溝35にICタグ25を設けるとともに、第2筒状部材20の表面に形成した凹部に取り付けられてICタグ25の一端側および他端側を密封する1対の密接部材28を設けた形態を示している。図5の(c)に示した形態によれば、密接部材28でICタグ25の一端側および他端側を密封しているため、図5の(a)、(b)に示した形態と比較してより高い密封性を実現することができる。
【0042】
なお、溝26および溝35は設けてもよいし、設けなくてもよい。また、第1密封リブ27および第2密封リブ34は、ICタグ25を密封することができれば、円周方向全周にわたって形成されてもよいし、円周方向に所定の範囲だけに形成されてもよい。
【0043】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るケーブル保護管用継手101について、ケーブル保護管用継手100との相違を中心に説明する。図6は、ケーブル保護管用継手101の縦断面図であり、図7は、ケーブル保護管用継手101をB-B’で切断した横断面図である。ケーブル保護管用継手101とケーブル保護管用継手100との相違は、第3筒状部材30が、突起部36a、36bを有する点である。
【0044】
突起部36a、36bは、第1筒状部材10を、ケーブル保護管用継手101の所定の位置へ位置決めをするために設けられる。突起部36a、36bは、図6に示すように、第1筒状部材10のつば部13の一端側(突起部36a)と他端側(突起部36b)の面にそれぞれ接触するように、第3筒状部材30の縁部31と内ネジ部32との間の内周面から突出して形成される。図7に示すように、突起部36a、36bは、一例として、つば部13の一端側と他端側とに、それぞれ3個、合計で6個形成されている。しかしながら、突起部36a、36bの数は、第1筒状部材10の中心軸に沿った方向における位置決めが可能であればこれに限定されず、つば部13の一端側と他端側とにそれぞれ1個以上、合計で2個以上あればよい。
【0045】
突起部36a、36bを設ける位置は、典型的には、ケーブル保護管用継手101を組立てた状態において、つば部13を、挿入部22の一端側の端部と縁部31の他端側の面との軸方向における略中間に位置決めできる位置とすることができる。これにより、第1筒状部材10が一端側または他端側に偏った状態でケーブル保護管用継手101が埋設されてしまい、地中において第1筒状部材10の一方向への移動が不可能になることを防止できる。
【0046】
突起部36a、36bの第3筒状部材30の内周面からの突出高さは、一例として、第1筒状部材10に軸方向へ移動させる所定の力が作用した際に、つば部13が乗り越えることができる高さに設計される。これにより、埋設した後に、地殻変動や地震により所定の力が作用した第1筒状部材10は、つば部13が突起部36a、36bを乗り越えることで軸方向へ移動することができる。また、突起部36a、36bは、第1筒状部材10に作用した力により破断するように形成されてもよく、これにより、第1筒状部材10の軸方向への移動を可能としてもよい。
【0047】
ケーブル保護管用継手101は突起部36bを備えるため、ケーブル保護管用継手100のように、第1筒状部材10を挿入した第2筒状部材20の外周面に第3筒状部材30を他端側へ向かって移動させて外嵌することが困難である。このため、ケーブル保護管用継手101では、一例として、第3筒状部材30を第2筒状部材20の外周面に外嵌する際に、第1筒状部材10をつば部13が突起部36bを乗り越えることができる角度まで傾斜させ、つば部13が突起部36bを乗り越えた後に第1筒状部材10をもとの位置に戻すようにしてもよい。これにより、つば部13が突起部36bに突き当たることなく、第3筒状部材30をつば部13へ外嵌することができる。
【0048】
また、組立を容易にするために、つば部13が、軸方向に向かって移動する第3筒状部材30の突起部36bが通過できる切欠きを備えてもよい。これにより、第1筒状部材10を挿入した第2筒状部材20の外周面に第3筒状部材30を他端側へ向かって移動させて外嵌させても、突起部36bはこの切欠きを通過できるため、組立に際して第1筒状部材10を傾斜させる作業が不要となる。第3筒状部材30が第2筒状部材20の外周面に外嵌した後には、第1筒状部材10を中心軸の周りに所定の角度回転させることで、つば部13の切欠きを突起部36bが通過して、第1筒状部材10が一端方向へ抜けてしまうことを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、通信や送電のためのケーブルの地中への埋設に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1、2 ケーブル保護管
10 第1筒状部材
11 第1接続部
12 突出部
13 つば部
14 密接部材
20 第2筒状部材
21 第2接続部
22 挿入部
23 外ネジ部
24 第1リブ
25 ICタグ
26 溝
27 第1密封リブ
28 密接部材
30 第3筒状部材
31 縁部
32 内ネジ部
33 第2リブ
34 第2密封リブ
35 溝
36a、36b 突起部
100、101 ケーブル保護管用継手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7