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特許7476658画像検査装置、画像形成システム、画像検査方法、および画像検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】画像検査装置、画像形成システム、画像検査方法、および画像検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20240423BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G03G21/00 510
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020084911
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021179366
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植竹 重夫
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 徹
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-256691(JP,A)
【文献】特開2014-052566(JP,A)
【文献】特開2018-044882(JP,A)
【文献】特開2016-161469(JP,A)
【文献】特開2019-128286(JP,A)
【文献】特開2014-163771(JP,A)
【文献】特開平03-195253(JP,A)
【文献】特表2019-517003(JP,A)
【文献】実開昭59-056550(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-G01N21/958
G03G13/34
G03G15/00
G03G15/36
G03G21/00
G03G21/02
G03G21/14
G03G21/20
B41J29/00-29/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光沢感が制御された加飾画像を有する記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送される記録媒体の画像形成面において、前記搬送方向に対して垂直な搬送幅方向にわたって検査光を照射する光照射器と、
前記記録媒体で反射した前記検査光の反射光を検出する光検出器とを備え、
前記光照射器は、前記搬送幅方向に隣接する前記検査光の照射領域に対し、前記搬送幅方向に対して順次にパルス幅を変更して前記検査光を照射し、
前記光検出器は、前記記録媒体で正反射した前記検査光の正反射光についての前記搬送幅方向における反射光分布を検出する
画像検査装置。
【請求項2】
前記光照射器は、前記搬送幅方向に対して波長の異なる検査光を照射する
請求項1に記載の画像検査装置。
【請求項3】
前記光検出器で検出した前記反射光分布を示す反射光データと、前記加飾画像の基準画像についての基準データとに基づいて、前記加飾画像の検査を行うデータ処理部を備えた
請求項1または2に記載の画像検査装置。
【請求項4】
前記データ処理部は、前記加飾画像の形成予定領域と、前記形成予定領域の境界領域とについて、前記加飾画像の検査を行う
請求項に記載の画像検査装置。
【請求項5】
前記データ処理部は、
前記反射光データと前記基準データとに基づいて、前記加飾画像の良否を判断する判断部を備えた
請求項3または4に記載の画像検査装置。
【請求項6】
前記記録媒体で拡散反射した前記検査光の拡散反射光を検出する拡散光検出器を有し、
前記判断部は、前記反射光データと、前記基準データと、前記拡散光検出器で検出した拡散反射光データとに基づいて、前記加飾画像の良否を判断する
判断部を備えた
請求項に記載の画像検査装置。
【請求項7】
前記判断部における判断に基づいて、前記加飾画像が形成された記録媒体を異なるトレーに分別して排出する排出機構を備えた
請求項5または6に記載の画像検査装置。
【請求項8】
前記データ処理部は、
前記判断部における判断に基づいて、前記加飾画像を形成するための加飾画像形成装置の駆動制御部に対して駆動条件の補正を指示する指示部を備えた
請求項5~7のうちの何れか1項に記載の画像検査装置。
【請求項9】
前記記録媒体は、前記加飾画像の下地として下地画像が形成されたものであり、
前記指示部は、前記下地画像を形成するための下地画像形成装置に対して、差し替えのための下地画像の形成を指示する
請求項に記載の画像検査装置。
【請求項10】
記録媒体の一主面側に、光沢感が制御された加飾画像を形成するための加飾画像形成装置と、
前記加飾画像形成装置で形成された前記加飾画像の検査を行うための画像検査装置として請求項1~のうちの何れか1項に記載の画像検査装置とを備えた
画像形成システム。
【請求項11】
前記加飾画像形成装置によって前記加飾画像を形成する前の前記記録媒体に、下地画像を形成するための下地画像形成装置を備えた
請求項10に記載の画像形成システム。
【請求項12】
光沢感が制御された加飾画像を有する記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送される記録媒体の画像形成面において、前記搬送方向に対して垂直な搬送幅方向にわたって検査光を照射する光照射器と、
前記記録媒体で反射した前記検査光の反射光を検出する光検出器とを備えた画像検査装置による画像検査方法であって、
前記光照射器は、前記搬送幅方向に隣接する前記検査光の照射領域に対し、前記搬送幅方向に対して順次にパルス幅を変更して前記検査光を照射し、
前記光検出器は、前記記録媒体で正反射した前記検査光の正反射光についての前記搬送幅方向における反射光分布を検出する
画像検査方法。
【請求項13】
光沢感が制御された加飾画像を有する記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送される記録媒体の画像形成面において、前記搬送方向に対して垂直な搬送幅方向にわたって検査光を照射する光照射器と、
前記記録媒体で反射した前記検査光の反射光を検出する光検出器とを備えた画像検査装置における画像検査プログラムであって、
前記光照射器に対して、前記搬送幅方向に隣接する前記検査光の照射領域に対し、前記搬送幅方向に対して順次にパルス幅を変更して前記検査光を照射させ、
前記光検出器に対して、前記記録媒体で正反射した前記検査光の正反射光についての前記搬送幅方向における反射光分布を検出させるための
画像検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査装置、画像形成システム、画像検査方法、および画像検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置によって記録媒体に形成した画像を検査する技術として、下記特許文献1に開示の技術がある。この特許文献1には「画像が形成された被計測対象物に対して斜め方向から照明光を照射する光照明手段と、前記光照明手段から前記被計測対象物に照射された前記照明光の正反射光を受光する撮像手段と、前記画像を検査する画像検査手段と、を有し、画像検査手段は、前記画像の形成に用いられたプリントデータに含まれる濃度分布データから換算手段を用いて光沢基準データを生成し、前記光沢基準データと前記撮像手段が受光した前記正反射光の光量に基づいて生成された前記画像の光沢分布とを用いて前記画像の光沢分布を検査する。」と記載され、光照明手段から同じ照射条件で照明光を照射することで、トナー付着量によって変化する光沢分布を検知するとしている。
【0003】
また、記録媒体に対する画像形成の中には、トナー画像やインク画像などの印刷画像に対して箔を貼り合わせたり、印刷画像の表面形状を加工することにより、画像の光沢感(光反射特性)を制御する加飾技術がある。このようにして得られた加飾画像の検査は、正反射光を用いた検査を実施しようとしても、拡散反射光の影響によって精度の高い正反射光量を得ることができず、目視によって実施されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-237562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、トナー画像のような有色画像の検査は画像検査装置によって自動で検査を行うことができるものの、加飾画像の検査は目視で実施されていており、しかも検査者が光を当てる角度や観察方向を調整しながら欠陥の有無を確認するため、検査に要する負担が大きかった。
【0006】
そこで本発明は、光沢感が制御された加飾画像の検査を自動化することが可能な画像検査装置、画像形成システム、画像検査方法、および画像検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本発明は、光沢感が制御された加飾画像を有する記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送される記録媒体の画像形成面において、前記搬送方向に対して垂直な搬送幅方向にわたって検査光を照射する光照射器と、前記記録媒体で反射した前記検査光の反射光を検出する光検出器とを備え、前記光照射器は、前記搬送幅方向に隣接する前記検査光の照射領域に対し、照射条件を変更して前記検査光を照射し、前記光検出器は、前記照射条件を変更して照射された前記検査光の反射光についての前記搬送幅方向における反射光分布を検出する画像検査装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光沢感が制御された加飾画像の検査を自動化することが可能な画像検査装置、画像形成システム、画像検査方法、および画像検査プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る画像形成システムの概略構成図である。
図2】実施形態に係る画像形成システムのブロック図である。
図3】加飾画像の形成手順を説明する図である。
図4】加飾画像の形成手順の他の例(その1)を説明する図である。
図5】加飾画像の形成手順の他の例(その2)を説明する図である。
図6】実施形態に係る画像検査装置における検査光の照射の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る画像検査装置における反射光の検出の一例を示す図である。
図8】実施形態に係る画像検査方法の手順を示すフローチャートである。
図9】加飾画像と正反射光データの一例を示す図である。
図10】加飾画像と正反射光データの他の一例を示す図である。
図11】変形例1の検査光の照射を示す図である。
図12】変形例2の検査光の照射を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る画像検査装置、画像形成システム、画像検査方法、および画像検査プログラムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態においては、先ず、本発明に係る画像形成システムの構成を説明し、この画像形成システムに設けられるものとして本発明に係る画像検査装置の構成を説明する。
【0011】
≪画像形成システム≫
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成システム1の概略構成図である。また図2は、本発明の実施形態に係る画像形成システム1のブロック図である。これらの図に示す画像形成システム1は、シート状の記録媒体Sに対して、加飾画像の形成を含む複数種類の画像形成工程を順次に実施すると共に、加飾画像の検査を実施するシステムである。シート状の記録媒体Sは、普通紙、厚紙、薄紙、和紙、特殊紙等の様々な材質、坪量、厚み、およびサイズを有するものが用いられる。
【0012】
このような画像形成システム1は、操作装置100、下地画像形成装置200、加飾画像形成装置300、および画像検査装置400を備えている。これらの各装置は、それぞれが別体として構成されたものであってもよく、この場合には各装置はネットワークインターフェースを備え、装置間においてデータの通信が可能な構成となっていることとする。以下、画像形成システム1が備える各装置の構成を説明する。
【0013】
<操作装置100>
操作装置100は、この画像形成システム1を用いて実施される画像形成および画像検査に関する各種の設定および処理を実施し、またこのために必要とする情報を保持する。このような操作装置100は、操作部101と、表示部102と、制御部103とを備えたものである。
【0014】
[操作部101]
操作部101は、この画像形成システム1を用いて実施される画像形成に関する各種の設定を入力する部分である。このような操作部101は、表示部102と一体に設けたタッチパネルであってもよく、表示部102とは別に設けた操作ボタンを有していてもよい。さらにこのような操作部101は、以降に説明する制御部103との間でデータの受け渡しのための通信が可能なパーソナルコンピューターや、プリンターコントローラーなどの外部装置のものであってもよい。
【0015】
[表示部102]
表示部102は、操作部101での操作の内容、および操作部101での操作にしたがって設定された内容、さらには次に説明する制御部103の指示に従った表示を実施する。
【0016】
[制御部103]
制御部103は、記録媒体Pに形成する下地画像に関する下地画像データ[Dg]、および加飾画像に関する加飾画像データ[Dm]を、下地画像形成装置200および加飾画像形成装置300で取り扱い可能なデータとするための処理を実施する。また制御部103は、表示部102における表示制御を実施する。さらに制御部103は、下地画像形成装置200による下地画像の形成、加飾画像形成装置300による加飾画像の形成、および画像検査装置400による画像検査に必要な設定に関する制御を実施する。
【0017】
下地画像データ[Dg]および加飾画像データ[Dm]は、例えばグラフィックデザインソフト(Adobe社illustratorなど)で形成されたデータであって、ネットワークインターフェースを介して外部装置から入力されたデータであることとする。
【0018】
なお、下地画像の一部が加飾画像を接着するための接着用画像となる場合、および下地画像の一部が加飾画像の表面加工部分となる場合には、下地画像データ[Dg]は、加飾画像に関するデータを含む。
【0019】
また加飾画像データ[Dm]は、加飾画像の形成位置の他、加飾画像に関する情報を含む。加飾画像データ[Dm]が有する加飾画像に関する情報は、加飾画像の種類によって異なるが、例えば加飾画像が箔画像であれば、箔の種類や光沢度である。また、加飾画像が表面の成型画像であれば、表面の成型形状、大きさ、光沢度である。さらに加飾画像がニス画像であれば、ニス材料の種類、および光沢度である。このような加飾画像データ[Dm]は、加飾画像に関する情報として、光沢度の他に、加飾画像における拡散反射光の光強度、および正反射光の光強度として保持することが好ましい。
【0020】
なお、加飾画像データ[Dm]のうち、加飾画像に関する情報は、外部装置から入力された初期の加飾画像データ[Dm]に含まれていなくてもよく、以降に説明する説明する加飾画像形成装置300が有していてもよい。
【0021】
このような制御部103は、計算機によって構成されたものである。計算機は、いわゆるコンピュータとして用いられるハードウェアである。計算機は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリを備える。さらに、計算機は、必要に応じて不揮発性の記憶部およびネットワークインターフェースを備える。なお、この制御部103は、例えば下地画像形成装置200の制御部と一体に構成されてものであってもよい。
【0022】
<下地画像形成装置200>
下地画像形成装置200は、操作装置100で処理された下地画像データ[Dg]に基づいて記録媒体Sに下地画像を形成するための装置である。下地画像は、例えばトナーやインクを色材として用いた印刷画像であることとする。なお、次に説明する加飾画像形成装置300が箔画像を形成するものである場合、下地画像形成装置200は、箔を接着するための箔接着用トナー画像や箔接着用インク画像も、下地画像の一部として形成する。また次に説明する加飾画像形成装置300が成型画像を形成するものである場合、下地画像形成装置200は、表面の成型対象となるトナー画像やインク画像も下地画像の一部として形成する場合もある。
【0023】
以上のような下地画像形成装置200は、トナー画像を形成するための一般的な電子写真方式の画像形成装置や、インク画像を形成するためのインクジェット記録装置が用いられる。ここでは下地画像形成装置200の一例として、電子写真方式の画像形成装置を例示して説明する。このような下地画像形成装置200は、媒体供給部201、トナー画像形成ユニット202、中間転写ベルト203、定着部204、およびこれらの各部の駆動を制御する制御部(図示省略)を備えている。以下、これらの各部の構成を説明する。
【0024】
[媒体供給部201]
媒体供給部201は、大量の記録媒体Sを収容することが可能であり、収容した記録媒体Sを中間転写ベルト203に対して順次に供給する。
【0025】
[トナー画像形成ユニット202]
トナー画像形成ユニット202は、露光部による露光走査によって形成された静電潜像に各トナーを、所定量で付着させてトナー画像を形成するものである。このようなトナー画像形成ユニット202は、各色のトナーに対応して設けられ、一例としてイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の有色トナーに対応するトナー画像形成ユニット202y,202m,202c,202kである。さらに下地画像形成装置200は、接着性の良好なトナーを用いた箔接着用トナー画像を形成するための接着性トナー画像形成ユニット202hを有していていてもよく、また透明トナーによるトナー画像を形成するユニットが追加されてもよい。これらの接着性の良好なトナーおよび透明トナーも、下地画像としてのトナー画像を構成する色材となる。
【0026】
[中間転写ベルト203]
中間転写ベルト203は、回転する無端ベルトとして構成され、各トナー画像形成ユニット202y,202m,202c,202k、および接着性トナー画像形成ユニット202hに形成されたトナー画像が、その表面に転写される。また中間転写ベルト203に転写されたトナー画像は、媒体供給部201から供給された記録媒体Sに転写される。
【0027】
[定着部204]
定着部204は、記録媒体Sをニップする一対のローラーで構成され、中間転写ベルト203から転写されたトナー画像を有する記録媒体Sを加熱及び加圧する部分である。定着部204は、トナー画像を有する記録媒体Sを加熱及び加圧することにより、トナー画像を構成するトナーを加熱溶融させ、記録媒体Sにトナー画像が定着させる。また定着部204は、トナー画像を定着させた記録媒体Sを加飾画像形成装置300に送り出す。
【0028】
<加飾画像形成装置300>
加飾画像形成装置300は、加飾画像データ[Dm]に基づいて、記録媒体Sに対して加飾画像を形成するための装置である。加飾画像は、画像表面の光沢感(表面反射特性)が制御された画像であって、例えば下地画像に貼り合わせた箔画像、下地の表面を型押しして成型した成型画像、およびニスを塗布したニス画像などである。
【0029】
このような加飾画像形成装置300としては、箔画像形成装置や、表面成型装置、またはニス画像塗布形成装置が用いられる。ここでは加飾画像形成装置300の一例として、下地画像の一部を箔接着用の下地画像(以下、接着用画像と記す)とし、この接着用画像に対して箔を押圧して箔画像を形成する箔画像形成装置を例示して説明する。なお、接着用画像はインク画像であってもよく、この場合は下地画像形成装置200として、例えばインクジェット記録装置が適用される。
【0030】
このような加飾画像形成装置300は、予備加熱ローラー301、シート供給ローラー302、シート巻取ローラー303、支持ローラー304、加熱ヘッド305、冷却ユニット306、分離ローラー307、およびこれらの各部の駆動を制御する制御部(図示省略)を備えている。以下、これらの各部の構成を説明する。
【0031】
[予備加熱ローラー301]
予備加熱ローラー301は、下地画像形成装置200から送り込まれた記録媒体Sをニップし、記録媒体Sに形成された下地画像を加熱する。このような予備加熱ローラー301は、定着部204から送り込まれた記録媒体Sの搬送速度に対し、以降に説明する加熱ヘッドの加熱量が不足する場合に設置されていればよい。このような予備加熱ローラー301による記録媒体Sの加熱温度は、下地画像を構成する下地材料のガラス転移温度未満の温度であることとし、これにより下地画像の光沢変化や、箔シートFsからの箔の分離不良を防止する。
【0032】
[シート供給ローラー302およびシート巻取ローラー303]
シート供給ローラー302およびシート巻取ローラー303は、予備加熱ローラー301を通過した記録媒体Sの下地画像形成面側に箔シートFsを供給するシート供給機構である。箔シートFsは、樹脂などからなるフィルム状の支持体層の上に離型層を介して箔を設けたものである。箔は一般的な金色、銀色の箔に限定されず、カラー顔料箔、ホログラム箔などであってもよい。
【0033】
このような箔シートFsは、箔が形成された側を記録媒体Sに対向させる状態で、シート供給ローラー302から巻き出され、シート巻取ローラー303で巻き取られる。
【0034】
[支持ローラー304]
支持ローラー304は、予備加熱ローラー301の下流側において、予備加熱ローラー301を通過した記録媒体Sを、下地画像の形成面とは逆側から支持する。
【0035】
[加熱ヘッド305]
加熱ヘッド305は、支持ローラー304との間に記録媒体Sと箔シートFsとをニップし、支持ローラー304に支持された記録媒体Sに対して箔シートFsを加熱および加圧する。この加熱ヘッド305は、複数の発熱抵抗体が、箔シートFsおよび記録媒体Sの搬送方向に対して垂直方向のライン状に配列された素子であって、操作装置100からの情報に基づいて任意の発熱抵抗体に電流を流して発熱させることで、任意の位置を加熱することが可能な構成となっている。
【0036】
このような加熱ヘッド305は、記録媒体S上の下地材料(ここでは例えばトナー)を溶融するのに十分な熱量が得られる範囲で解像度が設定されていることとし、一例として100~300(dpi)の解像度を有することとする。このような加熱ヘッド305による加熱により、記録媒体S上の加熱領域の下地材料が、箔シートFsを介して所定の解像度で加熱されて溶融する。
【0037】
[冷却ユニット306]
冷却ユニット306は、支持ローラー304および加熱ヘッド305の下流側に配置され、加熱ヘッド305において加熱された記録媒体Sおよび箔シートFsを冷却する。この冷却により、加熱ヘッド305の加熱領域において溶融した記録媒体S上の下地材料が固化し、固化した部分に対応する箔シートFs上の箔が、下地画像に接着する。
【0038】
[分離ローラー307]
分離ローラー307は、冷却ユニット306の下流側において箔シートFs側に配置され、シート巻取ローラー303に巻き取られる箔シートFsを屈曲させる。これにより、記録媒体S上の下地画像に接着した箔に対して、シート巻取ローラー303に巻き取られる箔シートFsの支持体層が曲率分離し、記録媒体S側に残された箔によって箔画像が形成される。
【0039】
また分離ローラー307は、箔画像が形成された記録媒体Sを画像検査装置400に送り出す。以下、上述して加飾画像形成装置300による加飾画像の形成手順を説明し、次いで加飾画像の形成手順の他の2例についても説明する。
【0040】
[加飾画像の形成手順(箔画像)]
図3は、加飾画像の形成手順を説明する図である。この図に示す加飾画像の形成手順は、図1に示した加飾画像形成装置300による箔画像の形成を説明する図であって、加飾画像[M]として、箔画像を形成する手順を示す図である。以下、図1および図3に基づいて、加飾画像[M]の形成手順を説明する。
【0041】
まず図1を参照し、下地画像形成装置200から送り込まれた記録媒体Sは、シート供給ローラー302から巻き出された箔シートFsと重ねられた状態で、支持ローラー304と加熱ヘッド305との間に送り込まれる。
【0042】
これにより図3の第1工程(a)に示すように、記録媒体Sの下地画像[G](ここではトナー画像)の形成面に対して、箔シートFsが対向して配置される。下地画像[G]は、接着用画像[Gb]を含む。また箔シートFsは、シート基材10の一主面側に、離型剤層11を介して箔材料層12を設けたものであり、箔材料層12を記録媒体S側に向けた状態で配置される。箔材料層12は一般的な金色箔、銀色箔、カラー顔料箔などの表面平坦な光沢感を有する材料層に限定されず、ホログラム箔層などであってもよい。
【0043】
この状態において、図3の第2工程(b)に示すように、箔シートFs側から、加熱ヘッド305を記録媒体Sに押し当て、加熱ヘッド305を発熱させた位置の下地画像[G]を溶融させる。これにより、下地画像[G]の溶融部に接着性を発現させ、下地画像[G]の溶融部に箔シートFsの箔材料層12を接着させる。ここで、加熱ヘッド305を発熱させる位置は、操作装置100からの情報に基づき、下地画像[G]のうちの接着用画像[Gb]に一致させる。
【0044】
その後、図1を参照し、冷却ユニット306によって記録媒体Sおよび箔シートFsを冷却し、さらに分離ローラー307によって屈曲させた箔シートFsを、シート巻取ローラー303で巻き取ることにより、記録媒体Sから箔シートFsを分離させる。
【0045】
これにより図3の第3工程(c)に示すように、下地画像[G]が形成された記録媒体Sから箔シートFsが離間し、下地画像[G]の溶融部に接着した箔材料層12部分のみが記録媒体S側に残る。そして、下地画像[G]上に箔材料層12からなる加飾画像[M]を形成する。この加飾画像[M]は、箔材料層12の種類によって、表面平坦な光沢感を有する画像や、マット感を有する画像や、ホログラム画像となる。なお、接着用画像[Gb]として下地画像[G]と同一の有色トナーを使用してもよい。また、箔シートFsは熱溶融型の接着層が設けられた構成であってもよい。
【0046】
[加飾画像の形成手順の他の例(その1:成型画像)]
図4は、加飾画像の形成手順の他の例(その1)を説明する図である。この図に示す加飾画像の形成手順は、加飾画像[M’]として成型画像を形成する手順を示す図である。成型画像の形成は、次のように実施される。
【0047】
先ず図4の第1工程(a)に示すように、記録媒体Sの下地画像[G]の形成面に対して、成型シートFs’が対向して配置される。なお、下地画像[G]は、トナー画像またはインク画像であってよい。また成型シートFs’は、シート基材20の一主面側が、所望の表面形状に成型された成型面20aであり、記録媒体S側に成型面20a向けた状態で配置される。
【0048】
成型面20aの表面形状は、図示したような凹凸形状(マット処理形状)であったり、または平面形状(グロス処理形状)であってもよい。また成型シートFs’は、ホログラムフィルムであってもよく、この場合、成型面20aは回折格子のように光の干渉が起きる程度の微細凹凸パターンを有する。
【0049】
次に図4の第2工程(b)に示すように、成型シートFs’側から、加熱ヘッド305を記録媒体Sに押し当て、加熱ヘッド305を発熱させた位置の下地画像[G]を軟化させる。これにより、下地画像[G]の軟化した部分に成型シートFs’の表面形状を、下地画像[G]の軟化した部分に型押しして転写する。ここで、加熱ヘッド305を発熱させる位置は、操作装置100からの情報に基づき、下地画像[G]のうちの光沢感を制御したい領域に一致させる。
【0050】
その後図4の第3工程(c)に示すように、記録媒体Sおよび成型シートFs’を冷却し、次いで記録媒体Sから成型シートFs’を離間させる。こにより、下地画像[G]の表面の成型によって光沢感が制御された加飾画像[M’]を形成する。このようにして形成された加飾画像[M’]は、成型シートFs’の成型面20aが凹凸形状である場合には、下地画像[G]にマット感が追加された画像となり、さらに凹凸のピッチの調整によりホログラム画像となる。また加飾画像[M’]は、成型面20aが平面形状である場合には、表面平坦な光沢を有する面となり、下地画像[G]に対して光沢感が追加される。なお、このような表面の成型による加飾画像[M’]は、記録媒体Sの表面が熱可塑性樹脂からなる場合、記録媒体Sの表面を型押しによって成型した画像であってもよい。
【0051】
[加飾画像の形成手順の他の例(その2:ニス画像)]
図5は、加飾画像の形成手順の他の例(その2)を説明する図である。この図に示す加飾画像の形成手順は、加飾画像[M”]としてニス画像を形成する手順を示す図である。ニス画像の形成は図5に示すように、記録媒体Sにおいける下地画像[G]の形成面に、ニスと塗布することより実施される。この加飾画像[M”]は、ニスによる光沢感を有する画像となる。なお、このようなニスの塗布による加飾画像[M”]は、記録媒体Sの表面に直接ニスを塗布して成型した画像であってもよい。
【0052】
<画像検査装置400>
図1および図2に戻り、画像検査装置400の構成を説明する。画像検査装置400は、記録媒体Sに形成された加飾画像の検査を行うための装置である。このような画像検査装置400は、搬送ローラー401、検査情報取得部402、排出ローラー403、データ処理部404、およびこれらの各部の駆動を制御する駆動制御部(図示省略)を備えている。これらの各部は、操作装置100からの情報に基づいて駆動することにより、記録媒体Sに形成された加飾画像の検査を実施する。これらの各部は、次のようである。
【0053】
[搬送ローラー401]
搬送ローラー401は、加飾画像形成装置300から送り込まれた記録媒体Sを所定状態で搬送するための搬送機構である。
【0054】
[検査情報取得部402]
検査情報取得部402は、加飾画像が形成された記録媒体Sから検査情報を取得するためのものであって、光照射器402a、正反射光検出器402b、および拡散光検出器402cを備えている。これらは、次のようなものである。
【0055】
-光照射器402a-
光照射器402aは、搬送ローラー401によって所定状態で搬送された記録媒体Sの画像形成面側に、検査光Hを照射する。この光照射器402aは、複数の発光素子を、記録媒体Sの面内において記録媒体Sの搬送方向xに対して垂直な搬送幅方向(搬送幅方向とも称する)にわたって搬送幅方向に沿って配列した構成のものである。
【0056】
各発光素子は、記録媒体Sの画像形成面の法線に対して斜め方向から、記録媒体Sに対して検査光Hを照射するように設けられている。各発光素子から記録媒体Sの画像形成面への検査光Hの照射光路は互いに平行であって、一例として搬送方向xに対して平行であることとする。このような発光素子は、ここでは一例として白色発光のLEDであってよい。
【0057】
また光照射器402aは、画像検査の解像度が所望の解像度となるように、複数の発光素子を配置した構成であることとする。例えば、以降の画像検査方法で説明するように、画像検査装置400での検査結果に応じて、加飾画像形成装置300の加熱ヘッド305の駆動条件を補正する場合、画像検査の解像度は、加熱ヘッド305の解像度と同程度かそれ以上であることが好ましい。具体的には、加熱ヘッド305の解像度が300dpiであれば、複数の発光素子は、画像検査の解像度が300dpiまたは600dpi程度となるように、その配置間隔と、記録媒体Sの画像形成面に照射する検査光Hの照射スポットの径が調整されていることとする。
【0058】
また特にこの光照射器402aは、搬送幅方向yに隣接する検査光Hの照射領域に対し、照射条件を変更して検査光Hを照射するものであり、各発光素子に対して個別に設定された照射条件での光照射を実施する。ここで照射条件は、1つの発光素子から照射された検査光Hが記録媒体Sにおいて反射した反射光を、他の発光素子からの反射光と切り分けることができる条件であることとする。このような照射条件の一例として、ここでは検査光の照射のタイミングが各発光素子に対して個別に設定されていることとする。
【0059】
このような照射条件の設定が可能な光照射器402aは、各発光素子のそれぞれが、検査光Hの照射のオン/オフが自在な構成ものであるか、または各発光素子の発光面にシャッターが設けられた構成であって、各シャッターの開閉が自在な構成のものであることとする。
【0060】
図6は、実施形態に係る画像検査装置400における検査光の照射の一例を示す図である。この図は、搬送幅方向yの各位置に配置された各発光素子からの光照射のタイミングチャートと、搬送方向xに搬送中の記録媒体Sにおいての光照射スポットSpを示している。図6に示すように、搬送幅方向yの各位置に配置された各発光素子は、搬送幅方向yに対する配置順にオン状態となり、搬送幅方向yにおいて光照射のタイミングをずらす構成である
【0061】
なお、図6のタイミングチャートは、搬送幅方向yに隣接して配置された発光素子からの光照射タイミングが重ならない構成となっているが、一部が重なってもよい。さらに記録媒体Sの光照射スポットSpも、一部が重なっても良い。この場合であっても、光照射開始/終了のタイミングに応じて、次に説明する正反射光検出器402bでの受光量の差分を抽出することで、搬送幅方向yの位置と正反射光量とを紐づけることが可能なためである。また、隣接する発光素子間においての光照射の切り替えのタイミングは、次に説明する正反射光検出器402bのシャッタースピードと同程度かそれ以下の遅いタイミングとすることによっても、搬送幅方向yの位置と正反射光量とを紐づけることが可能である。
【0062】
さらに図6のタイミングチャートに示したように、搬送幅方向yに所定の距離[dy]だけ離れた位置の発光素子は、同じタイミングで検査光Hを照射してもよい。この距離[dy]は、2つの発光素子から記録媒体S上に同時に照射された検査光Hの拡散反射光が、次に説明する正反射光検出器402bにおいて互いに影響を及ぼすことのない程度の大きさであることとする。
【0063】
このように発光素子からの検査光Hの照射を制御することにより、搬送幅方向yに配列された発光素子を全てオン状態とするのに要する1フレーム期間[Ft]が短縮され、搬送幅方向yに平行なライン上の画像検査に要する時間を短縮することができる。また、これにより、搬送方向xにおける画像検査の解像度を高めることができる。
【0064】
つまり、搬送幅方向yに沿って配置された発光素子からの光照射のタイミングをずらすことにより、記録媒体S上における各光照射スポットSpは、搬送方向xに多少のずれが生じる。このズレの大きさ[dx]は、1フレーム期間[Ft]に対応する大きさであり、搬送方向xにおける画像検査の解像度に対応する。このため、1フレーム期間[Ft]が短縮されることにより、搬送方向xにおける画像検査の解像度が高くなるのである。なお、搬送方向xにおける画像検査の解像度を上げるためには、搬送方向xへの記録媒体Sの搬送速度を低速にしてもよい。
【0065】
なお、光照射器402aを構成する各発光素子は、搬送幅方向に沿って配列されていることとしたが、記録媒体Sに照射する検査光の照射位置が、記録媒体Sの搬送方向xに段階的にずれるように配置されていてもよい。これによっても、各発光素子からの検査光の照射位置にずれが生じて照射位置間の間隔が広がる。したがって、次に説明するような正反射光検出器402bに対しての拡散反射光の影響を抑えることができるため、発光素子のスイッチングのタイミングを早めることができ、搬送幅方向yに平行なライン上の画像検査に要する時間を短縮することができる。
【0066】
-正反射光検出器402b-
正反射光検出器402bは、光照射器402aから照射された検査光Hのうち、記録媒体Sで正反射した正反射光H1を検出する。この正反射光検出器402bは、記録媒体Sの面内において搬送方向xに対して垂直な搬送幅方向yにわたって、複数の受光素子を配列したラインセンサーであり、これにより搬送幅方向yにおける正反射光の反射光分布を検出する。
【0067】
各受光素子は、光照射器402aの各発光素子から照射された検査光Hの記録媒体Sに対する入射角と等しい反射角の方向に配置されている。各受光素子は、例えばフォトダイオードであって、記録媒体Sで正反射した検査光Hの正反射光H1を検出し、その受光量を電気信号に変換してデータ処理部404に送る。
【0068】
図7は、実施形態に係る画像検査装置における反射光の検出の一例を示す図であって、正反射光検出器402bにおいて得られる正反射光データ[Dr]を示している。この正反射光データ[Dr]は、図6のタイミングチャートに従って検出光Hを照射した場合において、正反射光検出器402bから得られる反射光分布を示すデータであって、加飾画像が形成された記録媒体Sから得られる検査情報のうちの一つである。ここで反射光が分布を示す理由は、正反射光をラインセンサ―で検出するため、拡散反射光のうち搬送幅方向y成分(ラインセンサーと平行な方向成分)が含まれるためである。
【0069】
この図に示すように、搬送幅方向yに受光素子を配列した正反射光検出器402bから得られる正反射光データ[Dr]は、搬送幅方向yの各位置で検出された反射光の受光量を示すデータであって、搬送幅方向yにおける反射光分布を示す。このような正反射光データ[Dr]において、検出される反射光の受光量は、図6に示したタイミングチャートにしたがってタイミングをずらして各発光素子から照射された検査光Hが、記録媒体Sで正反射した正反射光の受光量である。このため、正反射光データ[Dr]における各ピークは、1つの発光素子から照射された検査光Hの正反射光の受光量に対応し、他の発光素子から照射された検査光Hの拡散光の影響を受けない値となっている。
【0070】
また正反射光データ[Dr]の搬送幅方向yにおける受光量のピーク位置は、発光素子から光照射した検査光Hの光照射スポットSpの位置に対応している。このため、この正反射光データ[Dr]は、記録媒体Sにおける搬送幅方向yの位置と、正反射光検出器402bで受光した正反射光の受光量とが紐付けられたデータとなっている。さらに、正反射光データ[Dr]における時間軸は、記録媒体Sにおける搬送方向xの位置と対応している。このため、この正反射光データ[Dr]は、記録媒体Sにおける搬送方向xの位置と、正反射光検出器402bで受光した正反射光の受光量とが紐付けられたデータとなっている。
【0071】
したがって、この正反射光データ[Dr]は、記録媒体S上の各アドレス位置の正反射光量を、記録媒体S上における拡散反射の影響を受けることなく、高精度に示すものとなっている。
【0072】
-拡散光検出器402c-
拡散光検出器402cは、記録媒体Sに形成された下地画像(印刷画像)の画像情報を取得するためのものである。このような拡散光検出器402cは、光照射器402aから照射された検査光Hのうち、記録媒体Sで拡散反射した拡散反射光H2を検出する。この拡散光検出器402cは、記録媒体Sの面内において搬送方向xに対して垂直な搬送幅方向yにわたって、複数の受光素子を配列したラインセンサーである。各受光素子は、例えばフォトダイオードであって、記録媒体Sで拡散反射した検査光Hの拡散反射光H2を検出し、その受光量を電気信号に変換してデータ処理部404に送る。
【0073】
なお、画像検査装置400は、必要に応じて拡散光検出器402cを備えていればよいこととする。さらに、拡散光検出器402cは、正反射光検出器402bと光照射器402aを共有する必要はなく、ここでの図示を省略した別の光照射器から照射された検査光の拡散反射光を検出する構成であってもよい。
【0074】
[排出ローラー403]
排出ローラー403は、搬送ローラー401で搬送され、光照射器402aからの検査光Hの受光箇所を通過した記録媒体Sを、画像検査装置400から排出する排出機構である。この排出ローラー403は、次に説明するデータ処理部404で解析結果に基づいて、記録媒体Sを複数のトレー400a,400bに分配して排出する排出機構として構成されている。
【0075】
[データ処理部404]
データ処理部404は、加飾画像データ[Dm]および正反射光検出器402bから取得した正反射光データ[Dr]に基づいて、記録媒体Sに形成された加飾画像の検査を実施する。
【0076】
このようなデータ処理部404は、計算機によって構成されたものである。計算機は、いわゆるコンピュータとして用いられるハードウェアであって、CPU、ROMおよびRAMなどのメモリを備え、さらに必要に応じて不揮発性の記憶部およびネットワークインターフェースを備える。なお、このデータ処理部404は、画像検査装置400の各部の駆動を制御する制御部と一体に設けられたものであってもよい。またデータ処理部404は、画像検査装置400の他の部分とは別体として構成されたものであってよく、画像検査装置400との間でデータの受け渡しのための通信が可能なパーソナルコンピューターやサーバーなどの外部装置のものであってもよい。さらにデータ処理部404は、画像形成システム1を構成する他の装置の制御部と一体に設けられたものであってよい。
【0077】
このデータ処理部404が実施する加飾画像の検査の手順は、画像検査プログラムとして、予めデータ処理部404を構成するROMに保存されたプログラムであるか、または外部装置からRAMまたは不揮発性ストレージにロードされた保存されたプログラムである。この画像検査プログラムは、以降の画像検査方法において説明するステップを、計算機に実行させる。
【0078】
このようなデータ処理部404は、機能的要素として、データ解析部404aと、判断部404bと、指示部404cとを備える。これらの機能的要素は次のようである。
【0079】
-データ解析部404a-
データ解析部404aは、加飾画像データ[Dm]および正反射光検出器402bから取得した正反射光データ[Dr]を解析し、記録媒体Sに形成された加飾画像の検査を実施する。また、必要に応じて下地画像データ[Dg]および拡散光検出器402cから取得した拡散反射光データ[Dd]を解析し、記録媒体Sに形成された加飾画像の検査を実施する。
【0080】
-判断部404b-
判断部404bは、データ解析部404aでの解析結果に基づいて、加飾画像の位置ずれや欠陥の発生を判定する。
【0081】
-指示部404c-
指示部404cは、判断部404bでの判定結果に基づいて、加飾画像形成装置300に対して各部の駆動条件の補正を指示し、操作装置100に対してメンテナンスの報知を指示し、さらに排出ローラー403による記録媒体Sの排出を指示する。さらに指示部404cは、判断部404bでの判定結果に基づいて、下地画像形成装置200に対して、差し替えのための下地画像の形成を指示する。この指示部404cによる指示の手順は、次の画像検査方法において詳細に説明する。
【0082】
≪画像検査方法≫
次に、上述した画像検査装置400によって実施される画像検査方法を説明する。図8は、本発明の実施形態に係る画像検査方法の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、図1および図2に示した画像検査装置400が有する画像検査プログラムによって実施される画像検査方法の手順を示している。このフローは、例えば操作装置100の操作部101において、ジョブの開始が入力されたことをトリガーとして開始される。
【0083】
以下、図8のフローチャートに示す順に、図1および図2を参照するとともに、必要に応じて他の必要図を参照しつつ、画像検査方法の手順を説明する。
【0084】
<ステップS101>
ステップS101において、加飾画像形成装置300から画像検査装置400に、加飾画像が形成された記録媒体Sが搬送されると、検査情報取得部402は記録媒体S上に形成された加飾画像を検査画像とし、この検査画像に関する正反射光データ[Dr]を取得する。
【0085】
この際、検査情報取得部402は、搬送方向xに搬送される記録媒体Sに対して、図6を用いて説明したタイミングで、光照射器402aから検査光Hを照射する。そして、記録媒体Sで反射した検査光Hを正反射光検出器402bで検出することにより、正反射光データ[Dr]を取得する。ここで得られる正反射光データ[Dr]は、例えば次のようである。
【0086】
図9は、加飾画像[M’]と正反射光データ[Dr]の一例を示す図である。この図に示す加飾画像[M’]は、記録媒体S上に印刷された下地画像[G]の表面をグロス処理した成型画像である。この加飾画像[M’]は、下地画像[G]に対するグロス処理の位置ずれが生じていて、下地画像[G]の端縁の一部がグロス処理による成型がなされておらず、また部分的にグロス処理による成型がなされていない欠陥[F]を有している。
【0087】
このような加飾画像[M’]を有する記録媒体Sについて取得された正反射光データ[Dr]は、下地画像[G]に対してグロス処理がなされた領域においては正反射光の受光量のピークが高い。これに対し、グロス処理がなされていない下地画像[G]の領域においては正反射光の受光量のピークは低くなる。また記録媒体Sは表面が粗いため、正反射光の受光量はほとんどゼロになる。
【0088】
図10は、加飾画像[M’]と加飾画像データ[Dr]の他の一例を示す図である。この図に示す加飾画像[M’]は、記録媒体S上に印刷された下地画像[G]の表面をマット処理した成型画像である。この加飾画像[M’]は、下地画像[G]に対するマット処理の位置ずれが生じていて、下地画像[G]の端縁の一部がマット処理による成型がなされておらず、また部分的にマット処理による成型がなされていない欠陥[F]を有している。
【0089】
このような加飾画像[M’]を有する記録媒体Sについて取得された正反射光データ[Dr]は、下地画像[G]に対してマット処理がなされた領域および記録媒体Sの表面が露出している領域は、正反射光の受光量はほとんどゼロになる。これに対し、グロス処理がなされていない下地画像[G]の領域は、わずかに正反射光が受光され、受光量のピークが検出される。
【0090】
なお、正反射光データ[Dr]の取得にあたっては、検査情報取得部402は、形成される加飾画像の種類に応じて検査条件を調整してもよい。ここで調整する検査条件とは、記録媒体Sに照射する検査光Hの照射スポットの間隔および検査光Hの入射角度である。具体的には、加飾画像[M’]が、マット処理による成型画像のように、拡散反射光が多いと予測される画像である場合には、光照射スポットの間隔を広くするか、または入射角度を大きくする。入射角度を大きくする調整を実施する場合、検査情報取得部402の光照射器402aおよび正反射光検出器402bは、入射角度を可変とする機構を備えていることとする。
【0091】
<ステップS102>
ステップS102において、データ解析部404aは、正反射光検出器402bで取得した正反射光データ[Dr]を、基準データと照合する。ここで、基準データとは、位置ズレや欠陥などの不具合のないことが確認された加飾画像に関するデータであって、例えば不具合のない加飾画像において取得された正反射光データ[Dr]であることとする。この基準データは、予め検査情報取得部402において取得したデータであるか、または加飾画像データ[Dm]に基づくシミュレーションによって取得したデータであってもよい。
【0092】
取得した正反射光データ[Dr]と基準データとの照合は、例えば正反射光データ[Dr]と基準データとの差分を取ることによって実施される。
【0093】
またここでは、加飾画像データ[Dm]に基づいて、記録媒体Sにおいて加飾画像が形成された領域を含む限定された領域についてのみ、基準データとの照合を実施してもよい。ここで限定された領域とは、加飾画像が形成される予定領域とその境界領域である。これにより、データ解析部404aにおいてのデータ処理負荷を軽減することが可能となる。
【0094】
<ステップS103>
ステップS103において、判断部404bは、データ解析部404aでの照合の結果に基づき、加飾画像に位置ズレがあるか否かの判断を実施する。位置ずれがある(YES)と判定した場合には、ステップS104に進む。一方、位置ずれがない(NO)と判断した場合には、ステップS108に進む。
【0095】
なお、位置ずれの判断は、例えば加飾画像の境界領域に相当する位置において、正反射光データ[Dr]と基準データとの差分がゼロではなく閾値を越える受光量が生じていた場合に、位置ずれがある(YES)と判断することができる。
【0096】
またこのような位置ずれの判断には、拡散光検出器402cで得た下地画像に関するデータを合わせて用いてもよく、また下地画像形成装置200が有するインラインセンサーで得た画像データを合わせて用いてもよい。これにより、下地画像を基準とした加飾画像の位置ずれの検出が可能となる。
【0097】
<ステップS104>
ステップS104において、指示部404cは、加飾画像形成装置300の制御部に対して、加熱ヘッドによる加熱位置の補正を指示する。この際、指示部404cは、ステップS102の照合の結果得られた位置ずれの量および方向を、加飾画像形成装置300の制御部にフィードバックする。これにより図9および図10に示した、下地画像[G]に対する加飾画像[M’]の位置ずれの発生を防止するべく、加飾画像形成装置300の制御部は、加熱ヘッド305による加熱位置を、位置ずれを打ち消す方向に補正することができる。
【0098】
また指示部404cは、操作装置100に対して、加飾画像の位置ズレの報知を指示してもよい。これにより、操作装置100の表示部102は、加飾画像の位置ズレの発生を報知する表示を実施し、画像形成システム1のオペレーターに加熱ヘッドのメンテナンスを促すことが可能になる。
【0099】
<ステップS105>
ステップS105において、判断部404bは、データ解析部404aでの照合の結果に基づき、加飾画像に欠陥があるか否かの判断を実施する。欠陥がある(YES)と判定した場合には、ステップS106に進む。一方、欠陥がない(NO)と判断した場合には、ステップS107に進む。
【0100】
なお、欠陥の判断は、例えば加飾画像の形成予定領域内において、正反射光データ[Dr]と基準データとの差分がゼロではなく閾値を越える受光量が生じていた場合に、欠陥がある(YES)と判断することができる。
【0101】
<ステップS106>
ステップS106において、指示部404cは、加飾画像形成装置300の制御部に対して、加熱ヘッドによる加熱温度の補正を指示する。この際、指示部404cは、ステップS102の照合の結果から得られた欠陥の発生位置を、加飾画像形成装置300の制御部にフィードバックしてもよい。これにより図9および図10に示した、加飾画像[M’]における欠陥[F]の発生を防止するべく、加飾画像形成装置300の制御部は、加熱ヘッド305による加熱温度を補正することができる。
【0102】
また指示部404cは、加飾画像形成装置300の制御部に対して、シート供給ローラー302およびシート巻取ローラー303の駆動トルクの補正を指示してもよい。これにより図9および図10に示した、加飾画像[M’]における欠陥[F]の発生を防止するべく、加飾画像形成装置300の制御部は、シート供給ローラー302およびシート巻取ローラー303の駆動トルクを補正することができる。
【0103】
なお、指示部404cは、検出した欠陥の大きさや形状によって、何れの補正を指示するのかを判断してもよい。
【0104】
また指示部404cは、操作装置100に対して、加飾画像[M’]における欠陥[F]発生の報知を指示してもよい。これにより、操作装置100の表示部102は、加飾画像[M’]における欠陥[F]の発生を報知する表示を実施し、画像形成システム1のオペレーターに、適切なメンテナンスの実施を促すことが可能になる。
【0105】
<ステップS107>
ステップS107において、判断部404bは、排出ローラー403の駆動を制御することにより、加飾画像[M’]が形成された記録媒体Sを、不良品トレー400bに排出させる。
【0106】
また判断部404bは、下地画像形成装置200に対して、差し替えのための下地画像の形成を指示してもよい。
【0107】
<ステップS108>
またステップS108は、ステップS103において位置ずれはない(NO)と判断して進んだステップである。このステップS108において、判断部404bは、ステップS102でのデータ解析部404aでの照合の結果に基づき、加飾画像に欠陥があるか否かの判断を実施する。この判断はステップS105と同様に実施し、欠陥がある(YES)と判定した場合には、ステップS106に進む。一方、位置ずれがない(NO)と判断した場合には、ステップS109に進む。
【0108】
<ステップS109>
ステップS109において、判断部404bは、排出ローラー403の駆動を制御することにより、加飾画像[M’]が形成された記録媒体Sを、良品トレー400aに排出させる。
【0109】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態によれば、記録媒体Sの搬送方向xに対して垂直は搬送幅方向に受光素子を配列した正反射光検出器402bにおいて、記録媒体S上の各アドレス位置の正反射光量を、記録媒体S上における拡散反射の影響を受けることなく取得することができる。このため、画像表面の光沢感(光反射特性)が制御された加飾画像の検査を、目視によらずに自動化することが可能になる。
【0110】
また検査の自動化が可能となったことにより、加飾画像形成装置の駆動条件の補正や、検査で不良と判断された画像が形成された記録媒体Sの分別、さらには差し替えのための下地画像の形成の自動化も可能となる。またこのような自動化を可能とするため、加飾画像形成装置300および画像検査装置400は、下地画像形成装置200と連結された構成とすることが望ましい。
【0111】
≪変形例1≫
次に、以上で説明した実施形態の変形例1を説明する。この変形例1は、光照射器402aに設定される照射条件として、光照射器402aの各発光素子から照射する検査光の照射時間を変更する例である。
【0112】
図11は、変形例1の検査光の照射を示す図である。この図は、搬送幅方向yの各位置に配置された各発光素子からの光照射のタイミングチャートと、搬送方向xに搬送中の記録媒体Sにおいての光照射スポットSpを示している。図11に示すように、搬送幅方向yの各位置に配置された各発光素子は、同時に光照射をオン状態とし、搬送幅方向yにおいて順次に光照射をオフ状態とすることにより、隣接する発光素子間においての光照射の照射パルス幅(照射時間)を変更している。
【0113】
この場合、正反射光検出器402bから得られる正反射光データ[Dr]に基づいて、1つの発光素子から照射された検査光Hの正反射光の受光量を、他の発光素子から照射された検査光Hの拡散光の影響を受けない値として算出することができる。またこの正反射光データ[Dr]においては、記録媒体Sにおける搬送幅方向yの位置と、正反射光検出器402bで受光した正反射光の受光量とを紐付けることができる。また、記録媒体Sにおける搬送方向xの位置と、正反射光検出器402bで受光した正反射光の受光量とを紐付けることができる。したがって、先に説明した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0114】
≪変形例2≫
次に、以上で説明した実施形態の変形例2を説明する。この変形例2は、各発光素子に対する個別の照射条件として、光照射器402aの各発光素子から照射する検査光の波長を変更する例である。
【0115】
図12は、変形例1の検査光の照射を示す図であって、搬送幅方向yの各位置に配置された各発光素子から照射する各色波長の検査光Hのタイミングチャートである。図12に示すように、搬送幅方向yの各位置に配置された各発光素子は、例えば搬送幅方向yの位置によって赤(R)、緑(G)、青(B)の波長が異なる検査光Hを発生するものである。また、白色発光の発光素子に対して、搬送幅方向yの位置によって赤(R)、緑(G)、青(B)の各色のフィルターを設けてもよい。これらの発光素子の光照射のオン/オフのタイミングは同時であってよい。
【0116】
この場合、正反射光検出器402bから得られる正反射光データ[Dr]は、搬送幅方向yの位置で分光分布が異なるため、搬送幅方向yの位置と分光分布とを関連付けることができる。
【0117】
なお、この変形例2は、実施形態および変形例1と組み合わせ可能であり、これにより、拡散反射光の影響を抑える効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0118】
1…画像形成システム
200…下地画像形成装置
300…加飾画像形成装置
400…画像検査装置
400a…良品トレー
400b…不良品トレー
401…搬送ローラー(搬送機構)
402a…光照射器
402b…正反射光検出器
402c…拡散光検出器
403…排出ローラー
404…データ処理部(排出機構)
404b…判断部
404c…指示部
H…検査光
H1…正反射光
H2…拡散反射光
S…記録媒体
Sp…照射スポット(照射領域)
x…搬送方向
y…搬送幅方向
[Dr]…正反射光データ
[G]…下地画像
[M],[M’],[M”]…加飾画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12