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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/46 20060101AFI20240423BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240423BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B65H3/46 D
G03G21/00 370
G03G21/00 512
B65H3/06 350A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020086097
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021178728
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐史
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-159370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/46
G03G 21/00
B65H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置内に送り込む用紙を格納するトレイと、
前記画像形成装置内に用紙を搬送する給紙ローラーと、
前記給紙ローラーに対向し、前記画像形成装置内に複数の用紙が搬送されないようにする捌きローラーとを備え、
前記用紙は、前記捌きローラーに接触したのち、前記捌きローラーの回転によって給紙ニップに到達し、
前記用紙が前記給紙ローラーより上流の所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間に基づき、前記捌きローラーの交換タイミングを判断する制御装置をさらに備え
前記給紙ローラーよりも上流に前記用紙の到達を検出する給紙開始センサーをさらに備え、
前記所定の位置は、前記給紙開始センサーが設けられた位置である、画像形成装置。
【請求項2】
画像形成装置内に送り込む用紙を格納するトレイと、
前記画像形成装置内に用紙を搬送する給紙ローラーと、
前記給紙ローラーに対向し、前記画像形成装置内に複数の用紙が搬送されないようにする捌きローラーとを備え、
前記用紙は、前記捌きローラーに接触したのち、前記捌きローラーの回転によって給紙ニップに到達し、
前記用紙が前記給紙ローラーより上流の所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間に基づき、前記捌きローラーの交換タイミングを判断する制御装置をさらに備え、
前記給紙ローラーの下流に前記用紙の到達を検出する第1センサーをさらに備え、
前記制御装置は、
前記用紙が前記第1センサーを通過する際の給紙速度を算出し、
算出された給紙速度に基づいて、前記用紙が前記給紙ローラーより上流の所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間を算出する、画像形成装置。
【請求項3】
前記第1センサーの下流に前記用紙の到達を検出する第2センサーをさらに備え、
前記制御装置は、
前記第1センサーと前記第2センサーとの間の距離および前記第1センサーおよび前記第2センサーにおいて前記用紙の到達を検出した時間差に基づいて前記給紙速度を算出する、請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記用紙が前記所定の位置から前記第1センサーに到達するまでの第1到達時間を測定し、
前記給紙ニップと前記第1センサーとの間の距離および前記給紙速度に基づいて前記給紙ニップから前記第1センサーに到達するまでの第2到達時間を算出し、
前記第1到達時間から前記第2到達時間を除去することにより前記用紙が前記給紙ローラーより上流の前記所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間を算出する、請求項2または3記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像形成装置内に送り込む用紙を格納するトレイと、
前記画像形成装置内に用紙を搬送する給紙ローラーと、
前記給紙ローラーに対向し、前記画像形成装置内に複数の用紙が搬送されないようにする捌きローラーとを備え、
前記用紙は、前記捌きローラーに接触したのち、前記捌きローラーの回転によって給紙ニップに到達し、
前記用紙が前記給紙ローラーより上流の所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間に基づき、前記捌きローラーの交換タイミングを判断する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記トレイへの用紙交換サイクルに応じて前記用紙が前記給紙ローラーより上流の所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間に基づき、前記捌きローラーの交換タイミングを判断する、画像形成装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記用紙が前記給紙ローラーより上流の所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間が所定の閾値以上の場合に前記捌きローラーの交換タイミングであると判断する、請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像形成装置内に送り込む用紙を格納するトレイと、
前記画像形成装置内に用紙を搬送する給紙ローラーと、
前記給紙ローラーに対向し、前記画像形成装置内に複数の用紙が搬送されないようにする捌きローラーとを備え、
前記用紙は、前記捌きローラーに接触したのち、前記捌きローラーの回転によって給紙ニップに到達し、
前記用紙が前記給紙ローラーより上流の所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間に基づき、前記捌きローラーの交換タイミングを判断する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記用紙の種別に応じて設定された複数の閾値の中から1つの閾値を選択し、
前記用紙が前記給紙ローラーより上流の所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間が選択された閾値以上の場合に前記捌きローラーの交換タイミングであると判断する、画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置内に送り込む用紙を格納するトレイと、
前記画像形成装置内に用紙を搬送する給紙ローラーと、
前記給紙ローラーに対向し、前記画像形成装置内に複数の用紙が搬送されないようにする捌きローラーとを備え、
前記用紙は、前記捌きローラーに接触したのち、前記捌きローラーの回転によって給紙ニップに到達し、
前記用紙が前記給紙ローラーより上流の所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間に基づき、前記捌きローラーの交換タイミングを判断する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記用紙の種別に従って前記用紙が前記給紙ローラーより上流の所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間を補正する、画像形成装置。
【請求項9】
画像形成装置内に送り込む用紙を格納するトレイと、
前記画像形成装置内に用紙を搬送する給紙ローラーと、
前記給紙ローラーに対向し、前記画像形成装置内に複数の用紙が搬送されないようにする捌きローラーとを備え、
前記用紙は、前記捌きローラーに接触したのち、前記捌きローラーの回転によって給紙ニップに到達し、
前記用紙が前記給紙ローラーより上流の所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間に基づき、前記捌きローラーの交換タイミングを判断する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記用紙が前記給紙ローラーより上流の所定の位置から前記給紙ニップへの到達時間と、前記捌きローラーの交換タイミングとが関連付けられたデータを収集し、収集結果を用いた機械学習を用いて、所定の交換準備期間時の前記到達時間を予測し、
予測した前記到達時間が所定の閾値以上である場合には、前記捌きローラーの交換タイミングであると判断する、画像形成装置。
【請求項10】
前記交換準備期間とは、前記画像形成装置のメンテナンスにおいて、前記捌きローラーの状態を把握し、交換する捌きローラーを準備し、前記画像形成装置の捌きローラーを交換するまでに必要な日数である、請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記所定の位置とは、前記トレイに格納された用紙の先端位置である、請求項1~10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関し、特に捌きローラーの交換タイミングに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-184129号公報では捌きローラーの回転量を検出する検知手段を設け、給紙中の回転量を検出する。給紙用紙が給紙ニップを通過して、直後の下流にあるセンサーに到達してから給紙用紙が通過するまでの捌きローラーの回転量を計測する。捌きローラーの回転検知センサーの検出量が給紙用紙に応じた値でない場合を寿命と判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-184129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、捌きローラーの一部において摩耗が激しい場合、給紙用紙は給紙ニップに到達しない場合あるため、上記の先行では捌きローラーの摩耗を検出できない。また、上記手法では捌きローラーの回転量を検出する検知手段が必要となる。本開示は、上述のような背景に鑑みてなされたものであって、簡易な方式で捌きローラーの交換タイミングを判断することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある局面に従う画像形成装置は、画像形成装置内に送り込む用紙を格納するトレイと、画像形成装置内に用紙を搬送する給紙ローラーと、給紙ローラーに対向し、画像形成装置内に複数の用紙が搬送されないようにする捌きローラーとを備える。用紙は、捌きローラーに接触したのち、捌きローラーの回転によって給紙ニップに到達する。用紙が給紙ローラーより上流の所定の位置から給紙ニップへの到達時間に基づき、捌きローラーの交換タイミングを判断する制御装置をさらに備える。
【0006】
好ましくは、給紙ローラーよりも上流に用紙の到達を検出する給紙開始センサーをさらに備える。所定の位置は、給紙開始センサーが設けられた位置である。好ましくは、所定の位置とは、トレイに格納された用紙の先端位置である。好ましくは、給紙ローラーの下流に用紙の到達を検出する第1センサーをさらに備える。制御装置は、用紙が第1センサーを通過する際の給紙速度を算出し、算出された給紙速度に基づいて、用紙が給紙ローラーより上流の所定の位置から給紙ニップへの到達時間を算出する。好ましくは、第1センサーの下流に用紙の到達を検出する第2センサーをさらに備える。制御装置は、第1センサーと第2センサーとの間の距離および第1センサーおよび第2センサーにおいて用紙の到達を検出した時間差に基づいて給紙速度を算出する。好ましくは、制御装置は、用紙が所定の位置から第1センサーに到達するまでの第1到達時間を測定し、給紙ニップと第1センサーとの間の距離および給紙速度に基づいて給紙ニップから第1センサーに到達するまでの第2到達時間を算出し、第1到達時間から第2到達時間を除去することにより用紙が給紙ローラーより上流の所定の位置から給紙ニップへの到達時間を算出する。好ましくは、制御装置は、トレイへの用紙交換サイクルに応じて用紙が給紙ローラーより上流の所定の位置から給紙ニップへの到達時間に基づき、捌きローラーの交換タイミングを判断する。
【0007】
好ましくは、制御装置は、用紙が給紙ローラーより上流の所定の位置から給紙ニップへの到達時間が所定の閾値以上の場合に捌きローラーの交換タイミングであると判断する。好ましくは、制御装置は、用紙の種別に応じて設定された複数の閾値の中から1つの閾値を選択し、用紙が給紙ローラーより上流の所定の位置から給紙ニップへの到達時間が選択された閾値以上の場合に捌きローラーの交換タイミングであると判断する。好ましくは、制御装置は、用紙の種別に従って用紙が給紙ローラーより上流の所定の位置から給紙ニップへの到達時間を補正する。好ましくは、制御装置は、用紙が給紙ローラーより上流の所定の位置から給紙ニップへの到達時間と、捌きローラーの交換タイミングとが関連付けられたデータを収集し、収集結果を用いた機械学習を用いて、所定の交換準備期間時の到達時間を予測し、予測した到達時間が所定の閾値以上である場合には、捌きローラーの交換タイミングであると判断する。好ましくは、交換準備期間とは、画像形成装置のメンテナンスにおいて、捌きローラーの状態を把握し、交換する捌きローラーを準備し、画像形成装置の捌きローラーを交換するまでに必要な日数である。
【0008】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に従う画像形成装置1の外観を説明する図である。
図2】実施形態に従う画像形成装置1の構成を説明する図である。
図3】実施形態に従う画像形成装置1の主要なハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に従う給紙機構35について説明する図である。
図5】実施形態に従う給紙された用紙が給紙ニップに到達する仕組みを表した図である。
図6】実施形態に従う複数枚の給紙ニップに到達した時、捌きローラー202により画像形成装置1の機内に搬送される用紙を1枚に限定する方式を説明する図である。
図7】実施形態に従う給紙ローラー201の上流にセンサーがないときの到達時間Tの区間を説明する図である。
図8】実施形態に従う給紙ローラー201の上流に給紙開始センサー206があるときの到達時間Tの区間を説明する図である。
図9】実施形態に従う制御装置101の給紙された用紙の到達時間Tの算出方式を説明する図である。
図10】実施形態に従う制御装置101の到達時間Tの算出処理を説明するフロー図である。
図11】実施形態に従う連続給紙時の給紙開始から給紙センサーの到達時間を表した図である。
図12】実施形態に従う到達時間Tの推移を説明する図である。
図13】実施形態に従う機械学習を用いた捌きローラー202の交換タイミングの判断方式について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る技術思想の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
以下の実施形態では、画像形成装置としては、たとえばMFP、プリンター、複写機、またはファクシミリなどが挙げられる。
[1.画像形成装置1の構成]
図1は、実施形態に従う画像形成装置1の外観を説明する図である。図1を参照して、画像形成装置1は、カラープリンターとしての画像形成装置1が示されている。以下では、カラープリンターとしての画像形成装置1について説明するが、画像形成装置1は、カラープリンターに限定されない。たとえば、画像形成装置1は、モノクロプリンターであってもよいし、モノクロプリンターまたはカラープリンターとファクシミリとの複合機(所謂MFP(Multi Functional Peripheral))であってもよい。
【0012】
画像形成装置1は、画像読取部としてのスキャナー20と、画像形成部としてのプリンター25とを備える。スキャナー20には、ADF(Auto Document Feeder)24が設けられている。プリンター25には、用紙を収納するトレイ37が設けられている。画像形成装置1は、画像形成装置1に関する各種の設定操作や情報を表示するための表示パネル105を備える。表示パネル105は、画像形成装置1の正面側に設けられている。
【0013】
図2は、実施形態に従う画像形成装置1の構成を説明する図である。図2を参照して、画像形成装置1の上部には、スキャナー20が設けられている。スキャナー20は、カバー21と、用紙台22と、トレイ23と、ADF24とを含む。カバー21の一端は、用紙台22に固定されており、カバー21は、当該一端を支点として開閉可能に構成されている。操作者は、カバー21を開くことで、原稿を用紙台22にセットすることができる。画像形成装置1は、原稿が用紙台22にセットされた状態でスキャン指示を受け付けると、用紙台22にセットされた原稿のスキャンを開始する。また、画像形成装置1は、原稿がトレイ23にセットされた状態でスキャン指示を受け付けると、ADF24によって1枚ずつ自動的に原稿を読み取る。
【0014】
プリンター25は、画像作成部90Y,90M,90C,90Kと、IDC(Image Density Control)センサー19と、転写ベルト30と、一次転写ローラー31と、転写駆動機32と、二次転写ローラー33と、トレイ37A~37Cと、従動ローラー38と、駆動ローラー39と、タイミングローラー40と、クリーニングユニット43と、定着器60とを備える。
【0015】
画像作成部90Y,90M,90C,90Kは、転写ベルト30に沿って順に並べられている。画像作成部90Yは、トナーボトル15Yからトナーの供給を受けてイエロー(Y)のトナー像を形成する。画像作成部90Mは、トナーボトル15Mからトナーの供給を受けてマゼンタ(M)のトナー像を形成する。画像作成部90Cは、トナーボトル15Cからトナーの供給を受けてシアン(C)のトナー像を形成する。画像作成部90Kは、トナーボトル15Kからトナーの供給を受けてブラック(BK)のトナー像を形成する。画像作成部90Y,90M,90C,90Kは、それぞれ、転写ベルト30に沿って転写ベルト30の回転方向の順に配置されている。画像作成部90Y,90M,90C,90Kはそれぞれ、回転可能に構成されている感光体10と、帯電装置11と、露光装置13と、現像器14と、クリーニングユニット17と、トナーセンサー18とを備える。画像作成部90Y,90M,90C,90Kがそれぞれ、上述したように作動した後に、転写駆動機32の転写によって、イエロー(Y)のトナー像、マゼンタ(M)のトナー像、シアン(C)のトナー像、およびブラック(BK)のトナー像が順に重ねられて感光体10から転写ベルト30に転写される。これにより、カラーのトナー像が転写ベルト30上に形成される。
【0016】
IDCセンサー19は、転写ベルト30上に形成されるトナー像の濃度を検知する。典型的には、IDCセンサー19は、反射型フォトセンサーからなる光強度センサーであり、転写ベルト30の表面からの反射光強度を検知する。転写ベルト30は、従動ローラー38と駆動ローラー39とに張架されている。駆動ローラー39はモーター(図示しない)に接続されている。当該モーターを制御することにより、駆動ローラー39は回転する。転写ベルト30および従動ローラー38は、駆動ローラー39に連動して回転する。これにより、転写ベルト30上のトナー像が二次転写ローラー33に送られる。トレイ37A~37Cのそれぞれには、異なる大きさの用紙がセットされる。用紙は、記録媒体の一例である。用紙は、トレイ37A~37Cのいずれかから1枚ずつ給紙機構35を介してタイミングローラー40に搬送される。そして、タイミングローラー40によって搬送経路41に沿って二次転写ローラー33に送られる。用紙が送り出されるタイミングに合わせて、二次転写ローラー33に印加する転写電圧を制御する。
【0017】
二次転写ローラー33は、トナー像の帯電極性と逆極性の転写電圧を搬送中の用紙に印加する。その結果、トナー像は、転写ベルト30から二次転写ローラー33に引き付けられ、転写ベルト30上のトナー像が転写される。二次転写ローラー33への用紙の搬送タイミングは、転写ベルト30上のトナー像の位置に合わせてタイミングローラー40によって制御される。その結果、転写ベルト30上のトナー像は、用紙の適切な位置に転写される。定着器60は、定着器60を通過する用紙を加圧および加熱する。これにより、トナー像は用紙に定着する。その後、用紙は、トレイ49に排紙される。クリーニングユニット43は、転写ベルト30から用紙へのトナー像の転写後に転写ベルト30の表面に残留するトナーを回収する。回収されたトナーは、搬送スクリュー(図示しない)で搬送され、廃トナー容器(図示しない)に貯められる。
【0018】
[2.ハードウェア構成]
図3は、実施形態に従う画像形成装置1の主要なハードウェア構成を示すブロック図である。図3を参照して、画像形成装置1のハードウェア構成の一例について説明する。
【0019】
画像形成装置1は、スキャナー20およびプリンター25に加え、制御装置101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、ネットワークインターフェイス104と、表示パネル105と、マイク106と、記憶装置110とを含む。制御装置101は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。制御装置101は、画像形成装置1の制御パラメーターを調整するためのプログラム112などの各種プログラムを実行することで画像形成装置1の動作を制御する。制御装置101は、プログラム112の実行命令を受け付けたことに基づいて、記憶装置110からRAM103にプログラム112を読み出す。RAM103は、ワーキングメモリとして機能し、プログラム112の実行に必要な各種データを一時的に格納する。ネットワークインターフェイス104には、アンテナ(図示しない)や無線モジュールなどが接続される。画像形成装置1は、アンテナや無線モジュールを介して、外部の通信機器との間でデータをやり取りする。外部の通信機器は、たとえば、スマートフォンなどの携帯通信端末、サーバーなどを含む。画像形成装置1は、プログラム112をアンテナを介してサーバーからダウンロードできるように構成されてもよい。
【0020】
表示パネル105は、ディスプレイとタッチパネルとで構成されている。ディスプレイおよびタッチパネルは互いに重ねられており、画像形成装置1に対する操作をタッチ操作で受け付ける。また、表示パネル105は、設定操作を受け付けるのみならず、ユーザーに各種の情報を提供することが可能である。
【0021】
記憶装置110は、たとえば、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)その他の記憶装置である。記憶装置110は、内蔵式、外付け式のいずれであってもよい。記憶装置110は、本実施形態に従うプログラム112などを格納する。ただし、プログラム112の格納場所は記憶装置110に限定されず、制御装置101の記憶領域(たとえば、キャッシュなど)、ROM102、RAM103、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。プログラム112は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、本実施形態に従う制御処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施形態に従うプログラム112の趣旨を逸脱するものではない。さらに、プログラム112によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーがプログラム112の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で画像形成装置1が構成されてもよい。マイク106は、音声の入力を受け付ける。
【0022】
図4は、実施形態に従う給紙機構35について説明する図である。図3に示されるように給紙機構35は、画像形成装置1の各トレイ23毎に設けられている。給紙機構35は、トレイ23内に格納された用紙を給紙するピックローラー210と、ピックローラー210によって給紙された用紙を画像形成装置1の機内に搬送する給紙ローラー201と機内に搬送する用紙が2枚以上にならないように給紙された用紙を捌くための捌きローラー202によって構成されている。捌きローラー202は、給紙ローラー201に対向して設けられており、給紙ローラー201と捌きローラー202との間に給紙ニップが形成される。給紙センサー203は、給紙ローラー201と捌きローラー202が形成する給紙ニップの下流にあり、給紙された用紙が画像形成装置1の機内に給紙されたことを検知する。給紙センサー203の下流にある搬送センサー204は給紙された用紙が画像形成装置1の所定の位置に到達したことを検知する。
【0023】
ピックローラー210と、給紙ローラー201は給紙モーター205を駆動源とし回転する。捌きローラー202は、給紙ローラー201が順転すると給紙ローラー201のトルクによって捌きローラー202は従動する。給紙ローラー201と捌きローラー202との間の給紙ニップに用紙が1枚到達した場合でも給紙ローラー201のトルクが用紙を通じて捌きローラー202は従動する。一方、給紙ローラー201と捌きローラー202との間の給紙ニップに用紙が2枚(もしくはそれ以上)到達したとき、重複した用紙によって給紙ローラー201のトルクが、捌きローラー202には伝わらず従動しない。その結果、捌きローラー202に接地した用紙は搬送されず、給紙ローラー201に接地した用紙のみが搬送される。
【0024】
図5は、実施形態に従う給紙された用紙が給紙ニップに到達する仕組みを表した図である。図5(A)に示されるように、ピックローラー210によって給紙を開始した給紙された用紙は、トレイ23内の図示しない経路を通って捌きローラー202に衝突する。衝突により捌きローラー202の摩耗が生じる。図5(B)に示されるように衝突した用紙は、給紙ローラー201のトルクによって従動している捌きローラー202によって給紙ニップまでガイドされる。給紙ニップに到達した給紙された用紙は給紙ローラー201の回転によって画像形成装置1の機内に搬送される。
【0025】
図6は、実施形態に従う複数枚の給紙ニップに到達した時、捌きローラー202により画像形成装置1の機内に搬送される用紙を1枚に限定する方式を説明する図である。図6(A)に示されるように給紙された用紙が1枚の時は、給紙ローラー201のトルクが給紙された用紙を通じて捌きローラー202に伝達して捌きローラー202は従動して回転する。一方、図6(B)に示されるように給紙された用紙が2枚の時は、給紙ローラー201のトルクが捌きローラー202に伝達せず捌きローラー202は従動しない。なぜなら、給紙された用紙が2枚あることで給紙ローラー201のトルクが給紙された用紙同士の摩擦によって伝達しないからである。よって、捌きローラー202は回転せず、捌きローラー202と接地している給紙された用紙は搬送されず、給紙ローラー201と接地した給紙された用紙だけが搬送される。なお、給紙された用紙が3枚以上であっても同様である。
【0026】
図7は、実施形態に従う給紙ローラー201の上流にセンサーがないときの到達時間Tの区間を説明する図である。図7に示されるように、到達時間Tの開始位置は、給紙ローラー201よりも上流の所定の位置であり、一例として給紙された用紙の先端位置である。到達時間Tの終了位置は給紙ニップである。また、給紙ローラー201よりも下流には給紙センサー203および搬送センサー204がそれぞれ設けられている。
【0027】
図8は、実施形態に従う給紙ローラー201の上流に給紙開始センサー206があるときの到達時間Tの区間を説明する図である。図8に示されるように、到達時間Tの開始位置は、給紙開始センサー206の位置である。到達時間Tの終了位置は、給紙ニップである。
【0028】
図9は、実施形態に従う制御装置101の給紙された用紙の到達時間Tの算出方式を説明する図である。図9に示されるように、測定開始ポイントから給紙センサー203までの時間をt1とする。給紙センサー203から搬送センサー204までの時間をt2とする。給紙ローラー201から給紙センサー203までの時間をt3とする。本例においては、給紙センサー203から搬送センサー204までの距離および給紙ローラー201から給紙センサー203までの距離は予め設計値として取得しているものとする。したがって、時間t2に基づいて給紙された用紙の搬送速度を算出することが可能である。具体的には、給紙センサー203から搬送センサー204までの距離を時間t2で除算することにより搬送速度Vを算出することが可能である。また、給紙ローラー201から給紙センサー203までの距離を当該搬送速度で除算することにより給紙ローラー201から給紙センサー203までの時間t3を算出することが可能である。したがって、到達時間Tは、時間t1から時間t3を減算することにより算出することが可能である。
【0029】
図10は、実施形態に従う制御装置101の到達時間Tの算出処理を説明するフロー図である。図10に示されるように、制御装置101は、給紙された用紙が給紙ローラー201に搬送され給紙された用紙の先端が給紙センサー203に到達した時間を取得する(ステップS101)。到達時間Tの測定を開始する地点から給紙センサー203に到達するまでの時間をt1とする。次に、制御装置101は、給紙ローラー201に搬送された給紙された用紙の先端が搬送センサー204に到達した時間を取得する(ステップS102)。給紙センサー203の到達から搬送センサー204への到達までの時間をt2とする。次に、制御装置101は、給紙ニップと給紙センサー203の距離の設計値を取得する(ステップS103)。この距離をd1とする。次に、制御装置101は、給紙センサー203と搬送センサー204との距離の設計値を取得する(ステップS104)。この距離をd2とする。次に、制御装置101は、時間t2と距離d2とに基づいて給紙ローラー201の搬送速度Vを算出する(ステップS105)。次に、制御装置101は、搬送速度Vと距離d1とに基づいて時間t3を算出する(ステップS106)。次に、制御装置101は、到達時間Tを算出する。具体的には、t1-t3=Tである。そして、制御装置101は、処理を終了する(エンド)。
【0030】
図11は、実施形態に従う連続給紙時の給紙開始から給紙センサーの到達時間を表した図である。図11に示されるように、トレイを閉じた直後の給紙は給紙センサー203への到達時間が長くなる。2枚目以降は、直前の給紙に伴って連れ送りが発生し、用紙の先端位置は給紙するごとに徐々に短くなることがわかる。
【0031】
図12は、実施形態に従う到達時間Tの推移を説明する図である。図12に示されるように、給紙回数が増えるにしたがって、捌きローラー202が摩耗することにより到達時間Tが長くなる傾向がある。なお、この到達時間Tはトレイを閉じてから給紙を実施してトレイ内に載置された用紙がなくなるまでの到達時間Tの平均をプロットしたものである。
【0032】
実施形態においては、制御装置101は、到達時間Tを算出して、到達時間Tが所定の閾値以上の場合に捌きローラー202の交換タイミングであると判断する。所定の閾値については、画像形成装置1の機種別により任意の値に設定することが可能である。当該処理により簡易な方式で捌きローラー202の交換タイミングを判断することが可能である。
【0033】
制御装置101は、到達時間Tを算出して、到達時間Tが所定の閾値以上の場合であると判断した場合には捌きローラー202の交換を促す通知処理を実行する。例えば、表示パネル105に交換処理を促すガイダンス表示を実行するようにしてもよい。当該通知処理に基づいてユーザーは捌きローラー202の交換タイミングを把握して交換処理を実行することが可能である。また、到達時間Tが所定の閾値以上である場合には、捌きローラー202を交換するサービスマンに直接通知されるようにしても良い。
【0034】
また、図8で説明したように給紙ローラー201の上流に給紙開始センサー206がある場合には、到達時間Tの開始タイミングは、給紙された用紙の先端が給紙開始センサー206に到達した時とする。そして、到達時間Tは、給紙開始センサー206から給紙ニップに到達するまでの時間とする。この時間に応じて捌きローラー202の劣化を判断することが可能である。また、給紙開始センサー206がない場合には、到達時間の開始タイミングである所定の位置として、トレイ37に格納された用紙の先端位置としても良い。
【0035】
また、図12に示されるように、給紙開始から給紙センサー203に到達するまでの時間は、トレイを閉じた直後の給紙が最も長くなり、給紙を繰り返すごとに徐々に短くなる。その理由は、トレイを閉じた直後の給紙位置はトレイ内の規制板によって、用紙束のトレイでの位置を規制された状態で給紙されるからである。一方で、2枚目以降は給紙された用紙の進行方向の規制板の影響を受けないため、前の用紙との摩擦力により前の用紙が進むに合わせて用紙が給紙センサー203に近づくためである。これを通常「連れ送り」と呼ぶ。そのため、到達時間Tはトレイを閉じた後、給紙する度に短くなるので、トレイ閉じた後の給紙と2枚目以降の到達時間Tとの間には差が生じ、到達時間Tの測定タイミングが一律でないと正しい捌きローラー202の交換タイミングを判断することができない可能性がある。また、到達時間Tはトレイ内の最終用紙ではその時間が大きく短くなる場合がある。なぜなら最終用紙は次の用紙がないためトレイと接地しており、これまででは用紙との摩擦力の影響を受けていたところが、トレイとの摩擦に代わってしまうからである。それで、到達時間Tの測定タイミングを一律にするようにしても良い。具体的には、測定タイミングはトレイを閉じた直後や例えばトレイを閉じた後の10枚目などに設定することにより、安定的に到達時間Tを測定することが可能である。また、給紙の交換サイクル毎に到達時間Tの平均値を算出してもよい。
【0036】
また、上記においては、到達時間Tが所定の閾値以上である場合に捌きローラー202の交換タイミングを判断する方式について説明したが、判断基準として、到達時間Tの平均や中央値、分散などの統計量を用いても良い。また、到達時間Tだけでなく、到達時間Tを算出する過程で使用した時間t1、t2、t3、搬送速度V等を用いて多変量解析を用いて交換タイミングを判断するようにして良い。
【0037】
また、給紙制御には、給紙される用紙の坪量や表面性を考慮した制御が必要である。なぜなら、給紙ローラー201で搬送するため、坪量が大きい用紙の場合、給紙ローラー201のトルクでは搬送できない可能性がある。また、用紙の表面性においても同様で給紙ローラー201との摩擦力が確保されないと搬送することができない。したがって、給紙される用紙の種別に応じて、トルクや摩擦力を確保するために搬送速度を調整する制御を実行する場合がある。搬送速度を遅くすると、到達時間Tも長くなるため、捌きローラー202の交換タイミングを正しく評価することができなくなる可能性がある。したがって、用紙の種別に応じて到達時間Tを補正してもよい。具体的には、基準となる搬送速度Vからの搬送速度の変化率を到達時間Tに乗算することにより到達時間Tを補正するようにしてもよい。また、到達時間Tを補正しない場合には、用紙の種別に応じて交換タイミングを判断する閾値を調整するようにしても良い。例えば、坪量が大きい用紙の場合には、搬送速度が遅くなるため所定の閾値を変更して長く設定するようにしてもよい。例えば、予め用紙の種別に応じた複数の閾値を用意して、用紙の種別の設定の際に対応する閾値を選択するようにしても良い。当該処理により、用紙が変更された場合であっても変更された用紙に合わせた閾値を選択して、捌きローラー202の交換タイミングを適切に判断することが可能である。
【0038】
図13は、実施形態に従う機械学習を用いた捌きローラー202の交換タイミングの判断方式について説明する図である。図13に示されるように、画像形成装置1は、データサーバー2に、機械学習として用いられるデータを送信する。具体的には、用紙が給紙ローラー201より上流の所定の位置から給紙ニップへの到達時間と、捌きローラー202の交換タイミングとが関連付けられたデータを送信する。なお、複数の画像形成装置1からデータサーバー2に送信することにより機械学習の精度がより向上する。データサーバー2は、当該データを収集し、収集結果を用いた機械学習を用いて、所定の交換準備期間時の到達時間を予測する。例えば、劣化判断アルゴリズムを用いて、予測した到達時間が所定の閾値以上であるか否かを判断し、所定の閾値以上の場合には、捌きローラー202の交換タイミングであると判断して、サービスマンに判断結果を通知する。また、交換準備期間とは、画像形成装置1のメンテナンスにおいて、捌きローラー202の状態を把握し、交換する捌きローラー202を準備し、画像形成装置1の捌きローラー202を交換するまでに必要な日数としてもよい。
【0039】
当該処理により、捌きローラー202が完全に劣化すると給紙機構35での紙詰まりが多発する。そのため、捌きローラー202が完全に劣化する前にサービスマンに劣化の兆候が見えた地点でアナウンスし、捌きローラー202が完全に劣化するまでにサービスマンによる交換を可能にすることが可能である。なお、データサーバー2を画像形成装置1の外部に設けた構成について説明したが、これに限られず画像形成装置1内部に設けて、交換タイミングを通知する構成としても良い。
【0040】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 画像形成装置、2 データサーバー、10 感光体、11 帯電装置、13 露光装置、14 現像器、15C,15K,15M,15Y トナーボトル、25 プリンター、30 転写ベルト、31 一次転写ローラー、35 給紙機構、38 従動ローラー、39 駆動ローラー、40 タイミングローラー、41 搬送経路、60 定着器、101 制御装置、102 ROM、103 RAM、104 ネットワークインターフェイス、105 表示パネル、106 マイク、110 記憶装置、201 給紙ローラー、202 捌きローラー、203 給紙センサー、204 搬送センサー、205 給紙モーター、206 給紙開始センサー、210 ピックローラー。
図1
図2
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図8
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図10
図11
図12
図13