(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】車載用飛行体の制御システム
(51)【国際特許分類】
B64C 13/18 20060101AFI20240423BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240423BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240423BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20240423BHJP
B64F 1/12 20060101ALI20240423BHJP
B64U 20/75 20230101ALI20240423BHJP
B64U 20/87 20230101ALI20240423BHJP
B64U 70/30 20230101ALI20240423BHJP
B64U 70/93 20230101ALI20240423BHJP
B64U 70/97 20230101ALI20240423BHJP
【FI】
B64C13/18 Z
B64C27/08
B64C39/02
B64D47/08
B64F1/12
B64U20/75
B64U20/87
B64U70/30
B64U70/93
B64U70/97
(21)【出願番号】P 2020087575
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】橋口 拓允
(72)【発明者】
【氏名】安竹 昭
(72)【発明者】
【氏名】有永 剛
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2020-0019510(KR,A)
【文献】特開2016-138853(JP,A)
【文献】特開2012-071645(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2015-0000053(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0187724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/18
B64C 27/08
B64C 39/02
B64F 1/12
B64D 47/08
B64U 20/75
B64U 20/87
B64U 70/30
B64U 70/93
B64U 70/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた発着台に対し離着陸可能でかつ撮影部を備えた飛行体を制御する制御システムであって、
前記発着台に設けられた巻取装置と、
前記巻取装置と前記飛行体とを連結しかつ前記巻取装置により巻き取りまたは引き出される連結部材と、
乗員に各種情報を提示するための表示部と、
前記巻取装置
、前記表示部、および前記飛行体を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、飛行中の前記飛行体を前記発着台に着陸させる着陸要求を受けた場合に、前記巻取装置により前記連結部材を巻き取るとともに、前記撮影部が予め定められた規定撮影方向を向いた状態で前記飛行体が前記発着台に着陸するよう前記飛行体の姿勢を制御
し、
前記制御部は、前記着陸要求を受けたときに、前記規定撮影方向を前記車両基準で決定するよう乗員に求める表示である撮影方向設定画面を前記表示部に表示させ、
前記撮影方向設定画面は、前後左右の各方向を表す4つのアイコンと、当該アイコンのいずれかの選択によって着陸後の撮影方向が設定される旨を説明するメッセージとを含む、車載用飛行体の制御システム。
【請求項2】
前記発着台からの前記飛行体の離間距離を検出するセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記着陸要求を受けた後、前記センサによる検出距離が所定距離以下まで低下した場合に、前記撮影部が前記規定撮影方向を向くように前記飛行体の姿勢を制御する、請求項1に記載の車載用飛行体の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた発着台に対し離着陸可能でかつ撮影部を備えた飛行体を制御する制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の周囲を撮影する等の目的で飛行体を車両に付属することが提案されている。例えば、下記特許文献1には、カメラ付きの飛行体を用いて車両の走行支援等を行う車両用ナビゲーションシステムが開示されている。このシステムにおいて、飛行体は、ワイヤーを介して車両に連結されており、車内のナビゲーション装置からの指示に応じて車両上空を飛行する。飛行した飛行体は、自車両を含む映像をカメラにより撮影し、撮影データをナビゲーション装置に送信する。ナビゲーション装置は、送信された画像を解析し、その解析結果に基づいて所定の走行支援(例えば空いている駐車スペースを探し出して自車両を誘導する等の支援)を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1では、飛行体による周囲の撮影が、必ず車両上空を飛行する飛行体によって行われるようになっている。これに対し、例えば車両に着陸した飛行体による撮影を追加で行えるようにすれば、より幅広い用途に飛行体を利用できるようになり、飛行体の利便性が高まると考えられる。ただしこの場合は、着陸したときの飛行体の姿勢次第で撮影方向がばらつくことが想定される。撮影方向がばらつくと、乗員が意図する画像が得られないケースが増え、撮影画像を有効に利用することが困難になると考えられる。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、着陸後の飛行体により撮影を行う場合の撮影方向がばらつくのを防止することが可能な車載用飛行体の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためのものとして、本発明は、車両に設けられた発着台に対し離着陸可能でかつ撮影部を備えた飛行体を制御する制御システムであって、前記発着台に設けられた巻取装置と、前記巻取装置と前記飛行体とを連結しかつ前記巻取装置により巻き取りまたは引き出される連結部材と、乗員に各種情報を提示するための表示部と、前記巻取装置、前記表示部、および前記飛行体を制御する制御部とを備え、前記制御部は、飛行中の前記飛行体を前記発着台に着陸させる着陸要求を受けた場合に、前記巻取装置により前記連結部材を巻き取るとともに、前記撮影部が予め定められた規定撮影方向を向いた状態で前記飛行体が前記発着台に着陸するよう前記飛行体の姿勢を制御し、前記制御部は、前記着陸要求を受けたときに、前記規定撮影方向を前記車両基準で決定するよう乗員に求める表示である撮影方向設定画面を前記表示部に表示させ、前記撮影方向設定画面は、前後左右の各方向を表す4つのアイコンと、当該アイコンのいずれかの選択によって着陸後の撮影方向が設定される旨を説明するメッセージとを含むものである(請求項1)。
【0007】
本発明によれば、巻取装置と飛行体とを連結する連結部材が飛行体の着陸時に巻き取られるので、巻き取られた連結部材により飛行体を拘束しつつ発着台に接近させることができ、飛行体を発着台上の安定した位置に着陸させることができる。しかも、着陸時に撮影部が定められた撮影方向(規定撮影方向)を向くように飛行体の姿勢が調整されるので、着陸後に撮影部による撮影を行った場合の撮影方向がばらつくのを防止することができる。これにより、飛行体の飛行中だけでなく離陸後においても撮影部から有用な画像を取得することができ、飛行体の活用の幅を広げることができる。
また、飛行体を着陸させる着陸要求が発せられるのに応じて、前記規定撮影方向として乗員が選択可能な複数の選択肢が表示部に表示されるので、乗員は、当該複数の選択肢の中から好みの撮影方向を選ぶことができ、簡便な操作によって着陸後の撮影方向を設定することができる。
【0008】
好ましくは、前記制御システムは、前記発着台からの前記飛行体の離間距離を検出するセンサをさらに備え、前記制御部は、前記着陸要求を受けた後、前記センサによる検出距離が所定距離以下まで低下した場合に、前記撮影部が前記規定撮影方向を向くように前記飛行体の姿勢を制御する(請求項2)。
【0009】
この構成によれば、飛行体が発着台に対し一定の距離まで近づいたことがセンサにより確認された時点で撮影部の撮影方向が調整されるので、着陸後に撮影を行った場合における撮影方向をより安定化することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の車載用飛行体の制御システムによれば、着陸後の飛行体により撮影を行う場合の撮影方向がばらつくのを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車載用飛行体の制御システムが適用された車両の外観を示す斜視図である。
【
図2】発着台およびその近傍の車体構造を示す断面図である。
【
図5】車両、発着台、および飛行体の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】飛行体を離着陸させる制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一または相応する要素を示すものとする。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る車載用飛行体の制御システムが適用された車両1の外観を示す斜視図である。本図に示すように、車両1には、当該車両1の外側(車外)を飛行可能な飛行体2が搭載されている。車両1の後部には、飛行体2が離着陸するための発着台3が着脱可能に取り付けられている。飛行体2は、一般にドローンと称される軽量の無人航空機である。
【0018】
図2は、発着台3およびその近傍の車体構造を示す断面図である。この
図2および先の
図1に示すように、車両1は、車室の上面を覆うルーフパネル6と、ルーフパネル6の後側に連設されたバックドア5とを備えている。
【0019】
バックドア5は、上下方向に回動し得るようにルーフパネル6の後縁にヒンジ結合されるとともに、車両1の後部に形成された荷室開口11aを開閉可能に覆っている。バックドア5は、ルーフパネル6に結合された枠状のドア本体11と、ドア本体11の枠開口を覆うようにドア本体11に固定された透明(または半透明)のガラス製のバックウィンドウ12とを備えている。バックウィンドウ12は、後側ほど高さが低くなるように傾斜した姿勢でドア本体11に取り付けられている。
【0020】
図2に示すように、ルーフパネル6の下方には、車室の天井面を構成するルーフトリム23が形成されている。ルーフパネル6およびルーフトリム23の各後端部の間には、車幅方向に延びるルーフヘッダ21およびエクステンション部材22が配設されている。ルーフヘッダ21は、所定の閉断面形状をもって車幅方向に延びる部材であり、ルーフパネル6を下から支持するように当該ルーフパネル6の後端部に結合されている。エクステンション部材22は、ルーフヘッダ21よりも後側において車幅方向に延びる部材であり、ルーフヘッダ21の後面に結合されている。
【0021】
バックウィンドウ12の前端部(上端部)の下方には、上端フレーム部13が配設されている。上端フレーム部13は、ドア本体11の上側の縁(換言すればウィンドウの上枠)を構成する部材であり、所定の閉断面形状をもって車幅方向に延びるように形成されている。上端フレーム部13は、バックウィンドウ12を下から支持するように当該バックウィンドウ12の前端部に結合(接着)されている。上端フレーム部13のさらに下方には、ルーフトリム23の表面と略連続した意匠面を形成するバックドアトリム14が取り付けられている。
【0022】
バックウィンドウ12の前端部下面であって上述した上端フレーム部13との結合部を含む領域は、磁性体を含むシールド部材15によって覆われている。このシールド部材15は、透明(または半透明)のバックウィンドウ12を通じて上端フレーム部13等の構造物が視認されるのを防止するシールドとしての機能と、発着台3の前端部(後述する磁石39)を吸引して固定する磁性体としての機能とを兼ね備えたシート材である。
【0023】
上端フレーム部13は、図外のドアヒンジを介してエクステンション部材22に結合されている。言い換えると、バックドア5は、上端フレーム部13とエクステンション部材22との間に設けられた当該ドアヒンジを支点にして上下方向に回動可能なように車体(ルーフ部)に取り付けられている。
【0024】
エクステンション部材22の後端には、ゴム等の弾性材料からなるウェザーストリップ24が取り付けられている。ウェザーストリップ24は、バックドア5の閉時に上端フレーム部13に当接することにより、当該上端フレーム部13とエクステンション部材22との間をシールする。
【0025】
図3は、発着台3を単体で示す斜視図である。この
図3および先の
図2に示すように、発着台3は、台部材31と、ベース部32と、左右一対の脚部33と、リール34とを備えている。リール34は、本発明における「巻取装置」の一例に該当する。
【0026】
台部材31は、所定の厚みを有する平板状の部材である。台部材31の上面31aは、飛行体2が離着陸する発着面として機能する。以下では、台部材31の上面31aのことを発着面31aとも称する。発着面31aは、水平面と略平行な平坦面である。発着面31aには、飛行体2が離着陸する場所であることを表す所定のデザイン柄が表記されていてもよい。なお、
図1には、Hの文字を丸で囲ったデザイン柄を発着面31aに表記した例が示されている。
【0027】
ベース部32は、台部材31の前部の下面に取り付けられた中空のケースである。ベース部32は、台部材31の前部とバックウィンドウ12との隙間を埋めるように、後側ほど厚みが拡大するように形成されている。
【0028】
リール34は、ベース部32の内部に収容されている。主に
図3に示すように、リール34は、円筒状のリール本体35と、リール本体35を回転駆動する電動式のリールモータ36とを備えている。リール本体35にはテザー4(
図1~
図3)が巻き付けられており、リール本体35の回転に応じてテザー4がリール本体35に巻き取られ、またはリール本体35から引き出されるようになっている。テザー4の先端(リール本体35とは反対側の端部)は飛行体2に接続されている。テザー4は、本発明における「連結部材」の一例に該当する。
【0029】
テザー4は、飛行体2を発着台3に繋ぎ止めるテザー(綱)としての機能と、飛行体2に電力を供給する電力線としての機能とを兼ね備えた可撓性のケーブルである。テザー4は、リール34(リール本体35)から後方に延びてベース部32の後壁上端を貫通し、かつ台部材31の下面に沿って延びるように配索されている。台部材31の略中央には、テザー4を通すためのガイド孔h1が、台部材31を貫通するように設けられている。すなわち、リール34から引き出されたテザー4は、台部材31のガイド孔h1を通じて発着面31aの上方にさらに引き出されるとともに、当該発着面31aの上方において飛行体2に接続されている。
【0030】
リール34は、テザー4の引き出し量を飛行体2の離着陸に合わせて変更する。すなわち、飛行体2の離陸時は、リール本体35が引き出し方向(テザー4を引き出す方向)に回転するようにリールモータ36が制御され、リール本体35に対するテザー4の引き出し量が増大される。一方、飛行体2の着陸時は、リール本体35が巻き取り方向(テザー4を巻き取る方向)に回転するようにリールモータ36が駆動され、リール本体35に対するテザー4の引き出し量が低減される。これにより、飛行体2の発着台3に対する離着陸を許容しつつ、離陸した飛行体2が強風などで飛ばされないように飛行体2を拘束することができる。また、飛行体2の着陸時には、飛行体2が発着面31aに着陸する位置を、ガイド孔h1が形成される発着面31aの中央付近に位置決めすることができる。
【0031】
ベース部32の底壁の上面には、磁石39(
図2)が取り付けられている。磁石39は、例えば車幅方向に延びるプレート状の強力磁石(もしくは車幅方向に分散して配置された複数のブロック状の強力磁石)であり、リール34よりも前側の領域においてベース部32の底壁に固定されている。磁石39は、磁性を有するシールド部材15に吸引されることにより、ベース部32をバックウィンドウ12の上面に固定する役割を果たす。
【0032】
左右一対の脚部33は、台部材31の後端部の左右両側から下方に延びるように配設されている。各脚部33は、その下端に、各脚部33をバックウィンドウ12に着脱可能に固定するための吸着部33aを有している。吸着部33aとしては、例えば真空に基づく強力な吸着力を発揮するガラス用の吸盤を用いることができる。
【0033】
上記のとおり、当実施形態の発着台3は、前側に位置するベース部32が磁石39を介してバックウィンドウ12に着脱可能に固定され、後側に位置する脚部33が吸着部33aを介してバックウィンドウ12に着脱可能に固定される。すなわち、発着台3はバックウィンドウ12に対して着脱可能であり、飛行体2を使用しない不要時には手動でバックウィンドウ12から発着台3を取り外すことが可能である。
【0034】
発着台3の前端部には、コネクタ38が取り付けられている。
図3に示すように、このコネクタ38とリールモータ36との間であってベース部32の内部には、中継ケーブル9が配索されている。中継ケーブル9は、リールモータ36に電力を供給する電力線と、リール本体35に巻回されたテザー4に接続されかつ当該テザー4を介して飛行体2に電力を供給する電力線とを含む多芯ケーブルである。なお、
図3では省略しているが、コネクタ38とリールモータ36との間には、リールモータ36に制御信号を供給するための信号線9’(
図5)が中継ケーブル9と並列に配索される。
【0035】
図2に示すように、コネクタ38の前端には、車内から延びるケーブル8が着脱可能に接続されている。ケーブル8の接続が着脱式であることにより、発着台3の取り外し時にケーブル8をコネクタ38から抜出できるようになっている。
【0036】
ケーブル8は、車内のバッテリ41(
図5)に蓄えられた電力を供給するためのケーブルであり、当該バッテリ41とコネクタ38とを互いに接続するように配索されている。すなわち、ケーブル8は、バッテリ41の電力をコネクタ38および中継ケーブル9を介してリールモータ36に供給するとともに、バッテリ41の電力をコネクタ38、中継ケーブル9、およびテザー4を介して飛行体2に供給することが可能である。なお、
図2では省略しているが、コネクタ38には、リールモータ36に制御信号を供給するための信号線8’(
図5)も接続される。この信号線8’は、ケーブル8と並列にコネクタ38に対し着脱可能に接続される。ケーブル8および信号線8’は、例えば単一の端子を介してまとめてコネクタ38に接続可能とされている。
【0037】
ケーブル8は、コネクタ38よりもやや手前において、エクステンション部材22を貫通するように配索されている。エクステンション部材22の前後方向の途中部には、ケーブル8を通すための貫通孔(図示略)が形成されており、この貫通孔に対応する部位には、ケーブル8保護用のグロメット25が取り付けられている。エクステンション部材22を貫通したケーブル8は、ルーフパネル6とバックウィンドウ12との隙間を通じて車外に導出され、コネクタ38に接続されている。
【0038】
図4は、飛行体2の外観を示す斜視図である。この
図4および先の
図2に示すように、飛行体2は、いわゆるクワッドコプター型のドローンであり、本体部111と、本体部111の前面に配置されたカメラ112と、本体部111の四隅に配置された4つのプロペラ113と、本体部111から左右に延びる一対のシャフト114と、本体部111を内包する網目球体状の緩衝部材115とを備えている。本体部111と緩衝部材115とは、シャフト114によって互いに連結されている。本体部111の下面には、上述したテザー4が接続されている。なお、
図2では、緩衝部材115を簡略化して二点鎖線の球で表している。
【0039】
飛行体2は、プロペラ113の回転によって浮力を得て飛行する。このプロペラ113を回転させるための電力、つまり飛行体2を飛行させるための電力は、車内のバッテリ41から上述したテザー4を介して供給される。このため、当実施形態では、飛行体2へのバッテリの搭載が省略されており、これによって飛行体2の軽量化が図られている。飛行体2の総重量は、飛行規制の対象となる制限重量(例えば200グラム)未満に設定されている。
【0040】
図5は、車両1、発着台3、および飛行体2の機能構成を示すブロック図である。本図に示すように、車両1は、上述したバッテリ41に加えて、ナビゲーション装置42、表示部43、操作部44、および通信部45を備えている。また、車両1は、これら各要素の動作を統括的に制御するECU50を備えている。
【0041】
ECU50は、周知のCPU、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサである。このECU50は、車両1の動作に関する制御を司る車両制御部51と、飛行体2の動作に関する制御を司る飛行体制御部52とを機能的に有している。
【0042】
ナビゲーション装置42は、自車両の走行位置を特定しつつ目的地までの経路誘導を行う装置である。ナビゲーション装置42は、例えば、GPS衛星から送信される位置情報を表す信号を受信するGPS受信機と、道路地図のデータや交通規制情報等を記憶する地図データ記憶部と、ユーザにより目的地が設定されたときに当該目的地までの最適な走行経路(推奨走行経路)を演算してユーザに提示する経路誘導部と、推奨走行経路の情報を道路地図とともに表示するディスプレイとを有している。
【0043】
表示部43は、LCDまたは有機EL等を用いたディスプレイを含む。この表示部43のディスプレイは、ナビゲーション装置42が備えるディスプレイであってもよい。
【0044】
操作部44は、車両1に搭乗している乗員(運転者または同乗者)による手動の操作を受け付け可能な各種スイッチを含む。操作部44は、例えば、ステアリングホイールに設けられたステアリングスイッチ、車室のコンソール部に設けられたコンソールスイッチ、および表示部43のディスプレイに適用されるタッチスイッチ(タッチパネル)のいずれかを含む。
【0045】
通信部45は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信方式によって、飛行体2(詳しくは後述する通信部125)との間で双方向にデータ通信を行うものである。通信部45は、離着陸等の所望の動作を飛行体2に行わせるための制御信号(操縦信号)を飛行体2に送信するとともに、飛行体2から送信された映像データ、位置データ、および姿勢データを受信することが可能である。
【0046】
発着台3は、リールモータ36に付属されたリールセンサ37を備えている。リールセンサ37は、リールモータ36の回転を検出して所定の信号を出力するセンサである。このリールセンサ37から出力される信号には、リール本体35からのテザー4の引き出し量を特定するための信号が含まれる。
【0047】
飛行体2は、撮影部120、駆動部121、位置検出部122、姿勢検出部123、照明部124、および通信部125を備えている。また、飛行体2は、これら各要素の動作を統括的に制御するフライトコントローラ130を備えている。
【0048】
フライトコントローラ130は、周知のCPU、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサである。フライトコントローラ130は、車両1の飛行体制御部52からの指令を通信部125を介して受け付けるとともに、受け付けた指令に基づいて飛行体2の離着陸や撮影部120による撮影等の動作を制御する。なお、フライトコントローラ130および飛行体制御部52の組合せは、本発明における「制御部」の一例に該当する。
【0049】
撮影部120は、上述したカメラ112(
図4も参照)と、当該カメラ112により取得された画像データを処理する画像処理部とを含む。撮影部120により撮影される画像には、静止画像(写真)および動画像(映像)の双方が含まれ得るが、以下では、撮影部120によって動画像が撮影される場合を例にとって説明を進める。撮影部120は、撮影された動画像データ(映像データ)をリアルタイムで出力する。
【0050】
駆動部121は、上述した4つのプロペラ113(
図4)を回転駆動するためのモータを含む。駆動部121は、4つのプロペラ113の回転方向および回転速度を個別に制御する。これにより、飛行体2は、前進、後進、上昇、降下、旋回、およびホバリング等の任意の飛行動作を行うことができる。
【0051】
位置検出部122は、GPS受信機および高度センサ等を含む。位置検出部122は、これらの要素から特定される飛行体2の位置データをリアルタイムで出力する。
【0052】
姿勢検出部123は、加速度センサ、ジャイロセンサ、および磁気方位センサ等を含む。位置検出部122は、これらの要素から特定される飛行体2の姿勢データをリアルタイムで出力する。
【0053】
照明部124は、飛行体2の本体部111の所定箇所に配置されたLED等の光源を含む。
【0054】
通信部125は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信方式によって、上述した車両1の通信部45との間で双方向にデータ通信を行うものである。
【0055】
図6は、飛行体2を離着陸させる制御の一例を示すフローチャートである。この制御がスタートすると、車両1のECU50は、ステップS1において、飛行体2の離陸を指示する操作が乗員により行われたか否かを判定する。具体的に、ECU50は、飛行体2の離陸を指示する操作として予め定められた所定の操作が操作部44に対し行われたか否かを、操作部44からの入力信号に基づき判定する。
【0056】
上記ステップS1でYESと判定されて離陸指示の操作がされたことが確認された場合、ECU50(飛行体制御部52)およびフライトコントローラ130は、次のステップS2において、飛行体2に離陸および撮影を行わせる。すなわち、ECU50(飛行体制御部52)は、離陸および撮影を行うべき旨の指令を通信部45,125を介してフライトコントローラ130に出力する。フライトコントローラ130は、当該指令を受けて、飛行体2が発着台3から離陸して車両1の上空を飛行するようにプロペラ113の駆動(駆動部121)を制御するとともに、車両1の上空から規定の映像を撮影するように撮影部120(カメラ112)を制御する。ECU50(飛行体制御部52)はまた、飛行体2の離陸(高度の上昇)に合わせてリール34からテザー4が引き出されるように、リールモータ36を引き出し方向に駆動してテザー4の引き出し量を増大させる。このとき、テザー4の引き出し量は、車両1(発着台3)から飛行体2までの離間距離が予め定められた上限値を超えないように設定される。
【0057】
上記ステップS2で撮影された映像は、通信部45,125を介してリアルタイムで送信され、車内の表示部43に表示される。ここで撮影される映像は種々考えられるが、例えば、車両1を上方かつ後方から俯瞰する映像、つまり車両1の前方領域を車両1自身を含めて上空から俯瞰した映像を撮影することが考えられる。このような映像(以下、これを車両俯瞰映像という)は、飛行体2の上方かつ後方の位置を飛行するように飛行体2を制御しつつ、この飛行体2のカメラ112の向き(撮影方向)を前方かつ下方に向けることにより、撮影することができる。このような車両俯瞰映像を表示部43に表示することにより、乗員は、自身が運転(搭乗)する車両1の走行状況を上空から俯瞰するように確認することができる。なお、撮影部120(カメラ112)により撮影された映像は、表示部43に表示するだけでなく、所定の記憶媒体に記憶させることも可能である。映像が記憶される記憶媒体は、ナビゲーション装置42等に備わる内部記憶媒体でもよいし、USBメモリー等の外部記憶媒体でもよい。
【0058】
次いで、ECU50は、ステップS3において、飛行体2の着陸が要求されたか否かを判定する。具体的に、ECU50は、次の(i)(ii)の条件のいずれかが成立した場合に、飛行体2の着陸が要求されたと判定する。
【0059】
(i)飛行体2の着陸を指示する操作が乗員により行われたこと。つまり、飛行体2の着陸を指示する操作として予め定められた所定の操作が操作部44に対し行われたこと。
【0060】
(ii)飛行体2の飛行に支障が出る所定の飛行制限エリアに車両1が入りつつあること。ここで、飛行制限エリアとしては、例えば、トンネルを通過するトンネル区間や、空港の周辺エリアを挙げることができる。トンネル区間では、飛行体2がトンネルの壁に衝突する可能性があり、空港周辺エリアでは、航空法により飛行体2の飛行が禁止されることがある。このため、トンネル区間や空港周辺エリアに車両1がある程度近づいた時点で、飛行体2の着陸が必要であると判定することができる。このような判定は、ナビゲーション装置42に記憶されている地図データおよび車両1の位置データ等に基づき行うことができる。
【0061】
上記ステップS3において上記(i)(ii)のいずれかの条件が成立したこと、つまり飛行体2の着陸要求があることが確認された場合、ECU50は、次のステップS4において、飛行体2の着陸時に撮影部120のカメラ112(より詳しくはそのレンズ部)を車両1基準でいずれの方向に向かせるかを決定するよう乗員に求める表示(以下、これを撮影方向設定表示という)を車内の表示部43に表示させる。撮影方向設定表示の具体的内容は種々考えられるが、表示部43のディスプレイがナビゲーション装置42に備わるディスプレイである場合、例えば、「前」「後」「左」「右」の各方向を表す4つのアイコンと、当該アイコンのいずれかの選択によって着陸後の撮影方向が設定される旨を説明するメッセージとを組み合わせたものを、上記撮影方向設定画面としてディスプレイに表示することが考えられる。
【0062】
上記撮影方向設定画面を見た乗員は、操作部44を用いて撮影方向を設定することができる。例えば、上述したような「前」「後」「左」「右」の各方向を表す4つのアイコンが表示部43に表示される場合、乗員は、これらのアイコンのいずれかを操作部44を用いて選択することにより、着陸後の撮影方向を設定することができる。具体的な操作方法は種々考えられるが、例えば、操作部44が表示部43のディスプレイに適用されるタッチスイッチである場合、乗員は、当該ディスプレイ上で上記アイコンのいずれかに触れることにより、着陸後の撮影方向を設定することができる。また、操作部44がステアリングスイッチまたはコンソールスイッチである場合には、これらのスイッチを操作して上記アイコンのいずれかを選択および決定することにより、着陸後の撮影方向を設定することができる。
【0063】
次いで、ECU50は、ステップS5において、上述した着陸後の撮影方向、つまり飛行体2の着陸時に撮影部120(カメラ112)が向くべき方向が決定されたか否かを判定する。なお、このステップS5において決定される着陸後の撮影方向のことを、以下では規定撮影方向と称する。
【0064】
具体的に、上記ステップS5において、ECU50は、(a)乗員が操作部44を用いて撮影方向を設定する操作を行ったこと、および、(b)撮影方向設定画面の表示開始から所定時間が経過したこと、のいずれかが成立した場合に、上記規定撮影方向が決定されたと判定する。すなわち、(a)の場合は、操作部44の操作により設定された方向(乗員が選択した方向)が規定撮影方向として決定されたことになる。一方、(b)の場合は、デフォルトとして予め定められた方向が規定撮影方向として決定されたことになる。このことは、操作部44により撮影方向を設定する操作が所定時間にわたって行われなかった場合に、予め定められたデフォルトの方向が規定撮影方向として強制的に設定されることを意味する。デフォルトの撮影方向は車両1基準で前後左右のいずれでもよいが、例えば飛行体2の飛行中(上記ステップS2)において車両1の前方領域(車両1を上方かつ後方から俯瞰する映像)が撮影される場合には、デフォルトの撮影方向を車両1基準で「前」とすることが考えられる。デフォルトの撮影方向を「前」とした場合、飛行体2の着陸後に撮影部120が撮影する映像は、車両1のルーフ越しに前方を臨む映像となる。
【0065】
ECU50(飛行体制御部52)およびフライトコントローラ130は、次のステップS6において、飛行体2に着陸を開始させる。すなわち、ECU50(飛行体制御部52)は、着陸を開始すべき旨の指令を通信部45,125を介してフライトコントローラ130に出力する。フライトコントローラ130は、当該指令を受けて、飛行体2が発着台3に近づく(高度が下がる)方向にプロペラ113(駆動部121)を制御する。また、ECU50(飛行体制御部52)は、飛行体2の高度低下に合わせてテザー4がリール34に巻き取られるように、リールモータ36を巻き取り方向に駆動してテザー4の引き出し量を低減させる。
【0066】
次いで、ECU50(飛行体制御部52)は、ステップS7において、飛行体2と発着台3(発着面31a)との間の距離が予め定められた所定距離以下になったか否かを判定する。具体的に、ECU50は、リールセンサ37の検出値に基づいて、発着面31aから飛行体2までの離間距離(より詳しくは飛行体2の緩衝部材115の下端までの離間距離)を特定し、特定した離間距離が上記所定距離以下まで低下したか否かを判定する。ここで閾値として用いられる所定距離は、例えば10cm程度に設定することができる。
【0067】
上記ステップS7でYESと判定されて発着台3から飛行体2までの離間距離が所定距離以下になったことが確認された場合、ECU50(飛行体制御部52)およびフライトコントローラ130は、次のステップS8において、上記ステップS5で定められた規定撮影方向に従って飛行体2の撮影部120(カメラ112)の向きを調整する。すなわち、ECU50(飛行体制御部52)は、カメラ112が上記規定撮影方向を向くように飛行体2の姿勢を調整すべき旨の指令を、通信部45,125を介してフライトコントローラ130に出力する。フライトコントローラ130は、当該指令を受けて、カメラ112のレンズ部が向く方向(撮影視野の中心線の方向)である撮影方向が上記規定撮影方向と一致するように、プロペラ113(駆動部121)を駆動しつつ飛行体2の姿勢を調整する。例えば、上記ステップS5で定められた規定撮影方向が「前」である場合、フライトコントローラ130は、姿勢検出部123による検出情報に基づいて、カメラ112(そのレンズ部)が車両1の前方を向くように飛行体2の姿勢を調整する。
【0068】
より詳しくは、フライトコントローラ130は、姿勢検出部123に含まれる磁気方位センサやジャイロセンサからの信号に基づいてカメラ112の撮影方向を地球基準で特定するとともに、特定したカメラの撮影方向と、ナビゲーション装置42(そのGPS受信機)から特定される車両1の進行方向とを比較しながら、カメラ112の撮影方向を車両1基準で調整する。例えば、規定撮影方向が「前」で、かつ車両1の進行方向が「北」である場合、フライトコントローラ130は、カメラ112のレンズ部が車両1の進行方向と同じ「北」を向くように飛行体2の姿勢を調整することにより、カメラ112の撮影方向を上記規定撮影方向(前)に一致させる。
【0069】
次いで、ECU50(飛行体制御部52)およびフライトコントローラ130は、ステップS9において、飛行体2を発着台3に着陸させる。すなわち、ECU50(飛行体制御部52)は、着陸を行うべき旨の指令を通信部45,125を介してフライトコントローラ130に出力する。フライトコントローラ130は、当該指令を受けて、飛行体2が発着台3の上に到達する(飛行体2と発着面31aとの距離がゼロになる)まで飛行体2の高度が下がるようにプロペラ113(駆動部121)を制御し、飛行体2が発着台3上に到達した時点でプロペラ113を停止させる。また、ECU50(飛行体制御部52)は、飛行体2の高度低下に合わせてテザー4がリール34に巻き取られるように、リールモータ36を巻き取り方向に駆動してテザー4の引き出し量を低減させる。このリール34の巻き取りにより、テザー4は、着陸を完了した飛行体2(発着面31a上に位置する飛行体2)とリール34との間で張り渡され、これによってテザー4に所定のテンションが発生する。このテンションは、発着面31a上の所定の着陸位置に飛行体2を拘束する。詳しくは、飛行体2は、発着面31aからのテザー4の引き出し位置であるガイド孔h1(
図2)の直上部に拘束される。
【0070】
なお、
図6では省略しているが、飛行体2が発着台3に着陸した後も、撮影部120による撮影は原則として(例えば撮影を停止させる特定の操作が乗員により行われない限り)継続される。また、このような撮影の継続中(つまり着陸した飛行体2による撮影中)に、上述した飛行制限エリアから車両1が抜け出るなどの所定の許可条件が成立した場合には、飛行体2が発着台3から再び離陸するように制御され、車両1を上空から撮影する制御が再び行われることになる。
【0071】
以上説明したように、当実施形態では、飛行体2を発着台3に着陸させる着陸要求があった場合に、飛行体2に接続されたテザー4がリール34により巻き取られるとともに、飛行体2の撮影部120(カメラ112)が予め定められた規定撮影方向を向いた状態で飛行体2が発着台3に着陸するよう飛行体2の姿勢が制御される。このような構成によれば、着陸後の飛行体2により撮影を行う場合の撮影方向がばらつくのを防止できるという利点がある。
【0072】
すなわち、上記実施形態では、飛行体2の着陸時にテザー4が巻き取られるので、巻き取られたテザー4により飛行体2を拘束しつつ発着台3に接近させることができ、飛行体2を発着台3上の安定した位置に着陸させることができる。しかも、着陸時に撮影部120が定められた撮影方向(規定撮影方向)を向くように飛行体2の姿勢が調整されるので、着陸後に撮影部120による撮影を行った場合の撮影方向がばらつくのを防止することができる。これにより、飛行体2の飛行中だけでなく離陸後においても撮影部120から有用な映像を取得することができ、飛行体2の活用の幅を広げることができる。
【0073】
また、上記実施形態では、着陸動作中の飛行体2と発着台3(発着面31a)との間の距離が所定距離以下になったことがリールセンサ37の検出値に基づき確認された時点で、撮影部120が上記規定撮影方向を向くように飛行体2の姿勢が調整されるので、飛行体2が発着台3に対し一定の距離まで近づいた時点で撮影部120の向きを調整することができ、着陸後に撮影を行った場合における撮影方向をより安定化することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、操作部44に対する操作によって規定撮影方向を車両1基準で可変的に設定できるため、飛行体2の着陸後にいずれの方向の映像を取得するのかを乗員の好みに応じて設定することができ、飛行体2の利便性をより高めることができる。
【0075】
より具体的に、上記実施形態では、飛行体2を着陸させる着陸要求が発せられるのに応じて、上記規定撮影方向の候補である複数の選択肢を含む所定の表示(撮影方向設定表示)が表示部43に表示されるので、乗員は、当該表示に従った簡便な操作(選択肢を選ぶ操作)によって着陸後の撮影方向を適切に設定することができる。
【0076】
なお、上記実施形態では、飛行体2の着陸要求後、所定時間以内に規定撮影方向(着陸後の撮影方向)を設定する操作がされなかった場合に、規定撮影方向を予め定められたデフォルトの方向(例えば「前」)に設定するようにしたが、このデフォルトの方向をさらに所定の操作によって変更できるようにしてもよい。例えば、ユーザによっては、自車両の後続車両を撮影するいわゆる後方ドライブレコーダの代わりとして飛行体2(撮影部120)を重点的に利用すると考えられる。このようなユーザにとっては、デフォルトの撮影方向は「後」である方が便利である。デフォルトの撮影方向を可変とすることは、このようなユーザに対する飛行体2の利便性を高めることにつながる。すなわち、デフォルトの撮影方向が可変であれば、飛行体2を利用する主目的に応じてユーザが好みの向きにデフォルトの撮影方向を設定できるので、飛行体2の利便性をさらに高めることができる。
【0077】
逆に、飛行体2(撮影部120)を用いた撮影の目的が限定されている車両では、常にその目的に応じた方向に撮影部120を向かせればよい。そこで、このような車両に搭載される飛行体については、規定撮影方向を可変とする(ユーザによる選択を許容する)措置はそもそも不要となる。この場合における規定撮影方向は、限定された目的に応じて適宜設定すればよく、車両の前後左右のいずれであってもよい。
【0078】
また、上記実施形態では特に言及しなかったが、飛行体2が着陸した状態で撮影部120による撮影を行っているときに、乗員が別の方向を新たに撮影したくなるシーンが想定される。このようなシーンにおいて乗員の要求に応えるべく、着陸後に撮影方向を変える所定の操作を受け付け可能なように操作部44等を構成してもよい。この場合、乗員は、飛行体2が既に着陸している状態で操作部44等を用いた所定の操作を行い、撮影方向を変更する。これを受けて飛行体2は、発着台3から一旦わずかな距離だけ離陸し、その状態で新たな撮影方向に従って姿勢を変更し、その後に発着台3に着陸する。これにより、発着台3上での飛行体2の向きが変更され、新たに設定された撮影方向の映像を取得できるようになる。
【0079】
また、上記実施形態では、飛行体2の姿勢を調整する制御、つまり撮影部120の撮影方向が予め定められた規定撮影方向と一致するように飛行体2の姿勢を調整する制御(ステップS8)を、飛行体2に備わる姿勢検出部123(磁気方位センサやジャイロセンサ等)による検出情報に基づき行うようにしたが、これに代えて、撮影部120により撮影される映像に基づき飛行体2の姿勢(向き)を車両1基準で認識しつつ飛行体2の姿勢を調整してもよい。例えば、規定撮影方向が「前」である場合には、撮影部120が撮影した車両1または発着台3の映像から車両1の前方を特定した上で、この特定した車両1の前方と撮影部120の撮影方向とが一致するように飛行体2の姿勢を調整する。このとき、車両1基準の方向(車両1の前後左右)が認識され易くなるように、車両1または発着台3に方向性のある記号(例えば矢印記号)を付しておくことが考えられる。具体的に、先端が車両1の前方を向く矢印記号を車両1または発着台3に付しておけば、当該矢印記号の先端が向く方向を車両1の「前」として認識することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、発着台3の前部を磁石39を用いて車体(バックウィンドウ12)に着脱可能に固定するようにしたが、発着台3の前端にフック等の係止部材を設けるとともに、当該係止部材をルーフパネル6の後端に形成される凹部等の被係止部に係止させることにより、発着台3の前部を車体に着脱自在に固定してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、台部材31の前部下方にリール34を配置したが、リールは発着台の任意の位置に配置することが可能であり、例えば台部材の中央部または後部の下方にリールを配置してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、発着台3に備わるリールモータ36等の部品に電力を供給するためのケーブル8を、ルーフパネル6とバックウィンドウ12との隙間を通じて車外から車内に導入するようにしたが、発着台3用のケーブルを車内に導入することは必須ではない。例えば、最近の車両では、ルーフパネル6の後端部に、各種電波を受信するためのアンテナが内蔵されたひれ状の部品(いわゆるシャークアンテナ)が取り付けられることが多い。そこで、このようなシャークアンテナの後端面に、信号および電力を受け取るための差込み口を設け、当該差込み口に発着台3用のケーブルを差し込むようにすることが考えられる。このようにすれば、発着台3用のケーブルを車内に導入することが不要になる。
【0083】
また、上記実施形態では、リール34と飛行体2とを連結するテザー4を通じて車両1から飛行体2に電力を供給する一方、飛行体2と車両1との間の制御信号のやり取りを通信部45,125を介して無線で行うようにしたが、信号線としての機能をテザーに付加することにより、制御信号のやり取りを有線で行うようにしてもよい。逆に、飛行体にバッテリを内蔵し、かつ飛行体と車両との間の制御信号のやり取りを無線で行うことにより、電力線および信号線としての機能をテザーから省いて、飛行体とリールとを純粋なテザー(単なる可撓性のワイヤー)により連結することも可能である。
【0084】
また、上記実施形態では、着陸時に飛行体2の姿勢を調整するタイミングの決定、つまり飛行体2が発着台3にどれだけ近づいたら飛行体2の姿勢を調整するかの決定を、リールセンサ37の検出値から特定されるテザー4の引き出し量に基づき行うようにしたが、飛行体2に備わる位置検出部122の精度によっては、この位置検出部122による検出情報に基づいて上記タイミングを決定することも可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 :車両
2 :飛行体
3 :発着台
4 :テザー(連結部材)
34 :リール(巻取装置)
37 :リールセンサ(センサ)
43 :表示部
44 :操作部
52 :飛行体制御部(制御部)
120 :撮影部
130 :フライトコントローラ(制御部)