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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】エンジンの吸気装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/50 20160101AFI20240423BHJP
   F02M 26/05 20160101ALI20240423BHJP
   F02M 26/23 20160101ALI20240423BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
F02M26/50 321
F02M26/05
F02M26/23
F02M35/10 101M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020087805
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181772
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】濱詰 嘉浩
(72)【発明者】
【氏名】吉川 高史
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-273610(JP,A)
【文献】国際公開第2019/038911(WO,A1)
【文献】特開2018-162715(JP,A)
【文献】特開2017-002777(JP,A)
【文献】特開2003-074417(JP,A)
【文献】特開2015-203353(JP,A)
【文献】特開2016-102429(JP,A)
【文献】特開2016-125404(JP,A)
【文献】特開2019-039374(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0026565(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/00
F02M 35/00
F02B 29/04
B60K 11/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に並ぶ複数の気筒を有し、複数の前記気筒が車両の前後方向に並ぶ姿勢で車両に搭載されるエンジン本体と、
前記エンジン本体に吸気を導入する吸気通路と、
前記エンジン本体から排出された排気ガスの一部を前記吸気通路に還流させるためのEGR通路と、
前記EGR通路の途中に設けられて当該EGR通路を通過する排気ガスであるEGRガスを冷却するEGRクーラーとを備え、
前記吸気通路は、前記エンジン本体の車幅方向の一方側に設けられて複数の前記気筒に吸気を分配するサージタンクと、前記エンジン本体の車幅方向の前記一方側に設けられるとともに前記サージタンクから下方に延びる形状を有して前記吸気通路のうち前記サージタンクから吸気流の上流側に延びる部分を区画する側方吸気通路部を備え、
前記EGR通路は、前記EGRクーラーよりも下流側の前記EGR通路を区画して前記エンジン本体の車幅方向の前記一方側に設けられた下流側EGR通路部を備え、
前記下流側EGR通路部は、前記側方吸気通路部の下方付近に接続されて、当該接続部分から上方に延びる形状を有するとともに、当該下流側EGR通路部の少なくとも一部が前記側方吸気通路部よりも後方に位置し、且つ、車両の前方から見たときに当該下流側EGR通路部の下端部から上方に延びる領域が前記側方吸気通路部と重複するように、配設されており、
前記下流側EGR通路部の前方には、前記下流側EGR通路部の一部と同じ高さ位置に、車両補機が配設されている、ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの吸気装置において、
前記車両補機として第1車両補機及び第2車両補機を備え、
前記第1車両補機及び前記第2車両補機は、前記下流側EGR通路部の前方において上下方向に配設されている、ことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の方向に並ぶ複数の気筒を有し、複数の前記気筒が車両の前後方向に並ぶ姿勢で車両に搭載されるエンジン本体を備えるエンジンの吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン本体に供給する吸気を冷却する吸気通路に排気ガスの一部であるEGRガスを還流させるEGR通路を備えたエンジンが知られている。例えば特許文献1には、4つの気筒が直列に並ぶ直列4気筒エンジンであって、吸気通路、EGR通路及びEGR通路の途中に設けられたEGRクーラーとを有し、EGRクーラーにより冷却されたEGRガスが吸気通路に還流するように構成されたエンジンが開示されている。このエンジンでは、吸気通路の一部を構成する吸気導入管が、エンジン本体の一側面であって気筒配列方向と直交する方向の一側面に沿って上下方向に延びる姿勢で配設されている。また、EGR通路のうちEGRクーラーよりも下流側の部分を構成するEGRガス導入流路が、吸気導入管に沿って上下方向に延びる姿勢で配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-102429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のエンジンでは、前記のEGRガス導入流路が、気筒配列方向と直交する方向について前記の吸気導入管の外側に配設されている。そのため、このエンジンを、気筒配列方向と車幅方向とが一致するように車両に搭載した場合、つまり、エンジンを縦置き状態で車両に搭載した場合、吸気導入管とEGRガス導入流路とが車幅方向に並ぶことになる。そのため、前方からの走行風がEGRガス導入管にあたり、これを流れるEGRガスであってEGRクーラーで冷却された後のEGRガスがさらに冷却されることになる。EGRガスには、燃焼により生じた水が含まれている。そのため、EGRガスが過度に冷却されると凝縮水が発生するおそれがある。凝縮水が吸気とともにエンジン本体に導入されると燃焼に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、EGRガスの過冷却を抑制できるエンジンの吸気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係るエンジンの吸気装置は、所定の方向に並ぶ複数の気筒を有し、複数の前記気筒が車両の前後方向に並ぶ姿勢で車両に搭載されるエンジン本体と、前記エンジン本体に吸気を導入する吸気通路と、前記エンジン本体から排出された排気ガスの一部を前記吸気通路に還流させるためのEGR通路と、前記EGR通路の途中に設けられて当該EGR通路を通過する排気ガスであるEGRガスを冷却するEGRクーラーとを備え、前記吸気通路は、前記エンジン本体の車幅方向の一方側に設けられて複数の前記気筒に吸気を分配するサージタンクと、前記エンジン本体の車幅方向の前記一方側に設けられるとともに前記サージタンクから下方に延びる形状を有して前記吸気通路のうち前記サージタンクから吸気流の上流側に延びる部分を区画する側方吸気通路部を備え、前記EGR通路は、前記EGRクーラーよりも下流側の前記EGR通路を区画して前記エンジン本体の車幅方向の前記一方側に設けられた下流側EGR通路部を備え、前記下流側EGR通路部は、前記側方吸気通路部の下方付近に接続されて、当該接続部分から上方に延びる形状を有するとともに、当該下流側EGR通路部の少なくとも一部が前記側方吸気通路部よりも後方に位置し、且つ、車両の前方から見たときに当該下流側EGR通路部の下端部から上方に延びる領域が前記側方吸気通路部と重複するように、配設されており、前記下流側EGR通路部の前方には、前記下流側EGR通路部の一部と同じ高さ位置に、車両補機が配設されている(請求項1)。
【0007】
この吸気装置によれば、複数の気筒が車両の前後方向に並ぶ姿勢つまり縦置きの姿勢でエンジン本体が車両に搭載されたときに、側方吸気通路部が下流側EGR通路部に対しての風除けとなり、前方からの走行風が下流側EGR通路部に当たるのを側方吸気通路部が防ぐ。従って、EGRクーラーによって冷却された後のEGRガスが走行風によってさらに冷却されること、すなわち、EGRガスが過冷却されることが抑制される。また、車両補機との衝突によって走行風の流れが前方から見て車両補機の周囲に広がるように変えられる。従って、車両補機後方の下流側EGR通路部に走行風が当たること、及び、下流側EGR通路部内のEGRガスが過冷却されることがより確実に抑制される。
【0012】
前記のエンジンの吸気装置において、前記車両補機として第1車両補機及び第2車両補機を備え、前記第1車両補機及び前記第2車両補機は、前記下流側EGR通路部の前方において上下方向に配設されていることが望ましい(請求項)。
【0013】
この吸気装置によれば、第1車両補機と第2車両補機とが走行風の流れをより一層拡散させることで、下流側EGR通路部に走行風が当たること、及び、部分EGR通路内のEGRガスが過冷却されることがより一層確実に抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、EGRガスの過冷却を抑制可能なエンジンの吸気装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る吸気装置が適用されるエンジンのシステム図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る吸気装置が適用されたエンジン本体の車両搭載状態を説明するための概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る吸気装置の概略斜視図である。
図4図4は、吸気装置を吸気側から見た概略側面図である。
図5図5は、吸気装置を前方から見た概略正面図である。
図6図6は、吸気装置の一部を下方から見た概略底面図である。
図7図7は、図4の一部拡大図である。
図8図8は、蓋部材が取り外された状態のEGR側延設部と吸気側延設部の一部と合わせて示した図である。
図9図9は、図7に対応する図であってEGR側延設部と吸気側延設部との重複領域を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[エンジンの全体構成]
以下、図面を参照して、本発明に係るエンジンの吸気装置500について詳細に説明する。まず、図1に示すシステム図を参照して、本発明に係るエンジンの吸気装置500が適用されるエンジンシステムSの全体構成を説明する。図1に示されるエンジンシステムSは、走行用の動力源として車両に搭載される、4サイクルのターボ付ガソリンエンジンである。
【0017】
エンジンシステムSは、エンジン本体1と、エンジン本体1に外気(吸気)を導入する吸気通路20と、エンジン本体1から排出される排気ガスが流通する排気通路30とを備える。つまり、エンジンシステムSは、エンジン本体1と、エンジン本体1に接続されて吸気通路20を区画する吸気通路部320と、エンジン本体1に接続されて排気通路30を区画する排気通路部330とを備える。また、エンジンシステムSは、排気通路30を流れる排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路20に還流するEGR装置40と、吸気通路20を通過する吸気を冷却するインタークーラー23とを備える。
【0018】
エンジン本体1は、気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、気筒2を上から閉塞するようにシリンダブロック3の上面に取り付けられたシリンダヘッド4と、気筒2内に収容されたピストン5とを備える。
【0019】
図2は、エンジンシステムSが搭載される車両Vの概略図である。車両Vは、例えば、車体102と、車体102を支持する4つの車輪103を備えた4輪自動車である。エンジン本体1は、車両Vの前部に設けられたエンジンルームR内に搭載されている。エンジン本体1は、所定の方向に並ぶ複数の気筒2を有する。図2の例では、エンジン本体1は、6つの気筒2を有する直列6気筒エンジンである。図2に示すように、エンジン本体1は、各気筒2が車両Vの前後方向に並ぶ姿勢でエンジンルームR内に配設されている。つまり、エンジン本体1は、気筒2の配列方向が車両Vの前後方向に沿う縦置きの姿勢で車両Vに搭載されている。このように、エンジン本体1は複数の気筒2を有するが、図1では簡略化のため、1つの気筒2のみを図示している。以下では、車両Vの前後方向を単に前後方向という。また、以下では、適宜、車幅方向を左右方向といい、車両Vの中心から前方を見た状態での右、左をそれぞれ右、左とする。
【0020】
図1に示すように、ピストン5は、所定のストロークで往復摺動可能に気筒2内に収容されている。ピストン5の下方には、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸7が設けられている。クランク軸7は、ピストン5とコネクティングロッド8を介して連結され、ピストン5の往復運動に応じて中心軸回りに回転駆動される。
【0021】
ピストン5の上方には燃焼室6が区画されている。燃焼室6は、シリンダヘッド4の下面、気筒2及びピストン5の冠面によって形成されている。シリンダヘッド4には、燃焼室6に燃料(主にガソリン)を噴射するインジェクタ13と、インジェクタ13から燃焼室6に噴射された燃料と燃焼室6に導入された空気とが混合された混合気に点火する点火プラグ14とが設けられている。前記混合気が燃焼室6で燃焼され、その燃焼による膨張力で押し下げられたピストン5が上下方向に往復運動する。
【0022】
シリンダヘッド4には、燃焼室6と連通する吸気ポート9及び排気ポート10が形成されている。シリンダヘッド4の下面には、吸気ポート9の下流端である吸気側開口と、排気ポート10の上流端である排気側開口とが形成されている。シリンダヘッド4には、前記吸気側開口を開閉する吸気弁11と、前記排気側開口を開閉する排気弁12とが組み付けられている。図2に示すように、吸気ポート9及び排気ポート10は、1気筒2につき2つずつ設けられている。吸気ポート9と排気ポート10とは、気筒2の配列方向に沿って延びる仮想線O1を挟んで左右方向の互いに反対側に設けられている。本実施形態では、前記のようにエンジン本体1が縦置きとされていることから、吸気ポート9と排気ポート10とは、前後方向に延びる仮想線O1を挟んで車幅方向の互いに反対側に設けられている。図2の例では、吸気ポート9は仮想線O1の左側に設けられており、排気ポート10は仮想線O1の右側に設けられている。以下では、適宜、左右方向(車幅方向)について、エンジン本体1を基準とした左側を吸気側といい右側を排気側という。
【0023】
吸気通路20は、吸気ポート9と連通して各気筒2に吸気を供給する経路である。吸気通路20の上流端から取り込まれた空気は、吸気通路20及び吸気ポート9を通して燃焼室6に導入される。具体的には、吸気通路20は、その下流端部を構成して各気筒2の吸気ポート9とそれぞれ個別に連通する複数の独立吸気通路25を有する。吸気通路20には、これら独立吸気通路25の直上流に設けられてすべての独立吸気通路25と連通する空間を区画するサージタンク26が設けられている。吸気は、このサージタンク26内の空間に導入された後、各独立吸気通路25にほぼ均等に分配され、独立吸気通路25と吸気ポート9とを通って燃焼室6に導入される。
【0024】
吸気通路20のうちサージタンク26よりも上流側の部分には、上流側から順に、エアクリーナ21、ターボ過給機15のコンプレッサ15b、スロットルバルブユニット22及びインタークーラー23が配置されている。
【0025】
エアクリーナ21は、吸気中の異物を除去して吸気を清浄化する。スロットルバルブユニット22はスロットルバルブ22aを含む。スロットルバルブ22aは、図略のアクセルの踏み込み動作と連動して吸気通路20を開閉し、吸気通路20における吸気の流量を調整する。ターボ過給機15は、吸気を圧縮しつつ吸気通路20の下流側へ当該吸気を送り出す。
【0026】
インタークーラー23は、ターボ過給機15により圧縮された吸気を冷却する。インタークーラー23は、水冷式であって、インタークーラー23に導入された吸気と冷却水との熱交換によって吸気は冷却される。
【0027】
排気通路30は、排気ポート10と連通し、燃焼室6で生成された既燃ガス(排気ガス)を車両Vの外部に排出する経路である。排気通路30(排気通路部330)には、上流側から順に、ターボ過給機15のタービン15a、上流触媒コンバータ32、下流触媒コンバータ33及び消音器35が配置されている。上流触媒コンバータ32には、排気ガス中に含まれる有害成分(HC、CO、NOx)を浄化するための三元触媒と、排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するためのGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルタ)とが内蔵されている。下流触媒コンバータ33は、三元触媒やNOx触媒等の適宜の触媒を内蔵している。
【0028】
ターボ過給機15は、吸気通路20に配置されたコンプレッサ15bと、排気通路30に配置されたタービン15aとを含む。タービン15aは、排気通路30を流れる排気ガスのエネルギーを受けて回転する。これに連動してコンプレッサ15bが回転することにより、吸気通路20を流通する空気が圧縮(過給)される。
【0029】
EGR装置40は、いわゆる高圧EGRを実現する装置であって、排気通路30と吸気通路20とを接続してエンジン本体1から排出された排気ガスの一部を吸気通路20に還流させるEGR通路41を備える。つまり、EGR装置40は、このようなEGR通路41を区画するEGR通路部340を備える。EGR通路41は、排気通路30のうちタービン15aよりも上流側の部分と、吸気通路20のうちインタークーラー23とサージタンク26との間の部分とを接続している。
【0030】
EGR装置40は、EGR通路41に設けられたEGRクーラー42及びEGRバルブユニット43を備える。EGRクーラー42は、EGR通路41を通過するEGRガスを熱交換により冷却する。EGRバルブユニット43はEGRバルブ43aを含む。EGRバルブ43aは、EGR通路41を流れる排気ガスの流量を調整する。本実施形態では、EGRバルブ43aは、EGR通路41のうちEGRクーラー42よりも下流側の部分に設けられている。
【0031】
[エンジン本体1の吸気側の配設構造]
次に、吸気装置500の詳細について説明する。図3は、エンジン本体1の吸気側に配設された本発明の実施形態に係る吸気装置500の一部を示す概略斜視図である。図4は、吸気装置500を吸気側から見た概略側面図である。図5は、吸気装置500を前方から概略正面図である。図6は、吸気装置500の一部を下方から見た概略底面図である。図7は、図4の一部拡大図である。本発明の実施形態に係る吸気装置500は、前記のインタークーラー23と、前記のEGR通路41(EGR通路部340)のうちの後述するEGR側延設部341と、前記の吸気通路20(吸気通路部320)のうちの後述する吸気側延設部325と、後述するオルタネータ401及びエアコン用コンプレッサ402とを備える。なお、図3では、後述するオルタネータ401及びエアコン用コンプレッサ402の図示は省略している。
【0032】
エンジン本体1の吸気側の側面1aには、インマニユニット321が取り付けられている。インマニユニット321は、各独立吸気通路25とこれら独立吸気通路25と連通する空間とが内側に区画された部品である。つまり、本実施形態では、吸気通路20のうち、いわゆるインテークマニホールドであって独立吸気通路25を区画する部分と、独立吸気通路25と連通する空間を区画するサージタンク26とが一体化されて、インマニユニット321とされている。インマニユニット321は、シリンダヘッド4の前端付近から後端付近まで延びるとともにシリンダヘッド4の吸気側の側面4aから左方に膨出する形状を有する。インマニユニット321のうちエンジン本体1に近い右側部分に独立吸気通路25が区画されており、インマニユニット321の左側部分がサージタンク26を構成している。インマニユニット321の左側端部の前後方向の略中央には、インマニユニット321(サージタンク26)内に吸気を導入するための吸気取り入れ口321aが設けられている。本実施形態では、吸気取り入れ口321aは左斜め下方に開口している。
【0033】
インタークーラー23はインマニユニット321の下方で、エンジン本体1の吸気側の側面1aと後述する吸気側延設部325及びEGR側延設部341との間の空間に配設されている。インタークーラー23の外形は、略直方体を呈している。インタークーラー23は、その上面がインマニユニット321の下面に沿う姿勢で、エンジン本体1の吸気側の側面1aに固定されている。また、図6に示すように、インタークーラー23は、前斜め右に傾斜する姿勢で、つまり、前側ほどエンジン本体1に近づくように傾斜する姿勢で固定されている。
【0034】
インタークーラー23の下面の前部には、インタークーラー23で冷却された吸気をインタークーラー23の外部に導出するための導出口23aが形成されている。エンジン本体1の吸気側には、この導出口23aとインマニユニット321の吸気取り入れ口321aとをつなぎ、インタークーラー23とサージタンク26との間の吸気通路20を区画する下流側吸気通路部322が設けられている。
【0035】
下流側吸気通路部322は、インタークーラー23の導出口23aに連結されたインタークーラー導出部323と、インマニユニット321の吸気取り入れ口321aに連結された吸気側延設部325と、これらインタークーラー導出部323と吸気側延設部325とをつなぐ接続部324とを備える。
【0036】
インタークーラー導出部323は、インタークーラー23の下面に固定されている。インタークーラー導出部323は、インタークーラー23の導出口23aが形成されたインタークーラー23の下面から下方に延びている。インタークーラー導出部323は、下斜め右方に膨出するように湾曲しており、その下流端は左方に開口している。
【0037】
接続部324は、インタークーラー導出部323の左端部(下流端部)から左方に延びている。接続部324は、インタークーラー23の前面の左縁付近まで延びている。
【0038】
吸気側延設部325は、接続部324の左端部から上方に延びており、その上端部においてインマニユニット321の吸気取り入れ口321aに接続されている。接続部324は、インタークーラー23よりも低い位置に配設されており、吸気側延設部325は、インタークーラー23の左方を通ってインタークーラー23よりも下方の位置からこれよりも上方の位置まで延びている。本実施形態では、図4に示すように吸気側から見て、吸気側延設部325は、前斜め下方に傾斜している。この吸気側延設部325は、請求項の「側方吸気通路部」に相当する。なお、インタークーラー23の後面の下部には、インタークーラー23の内部に吸気を導入するための導入口23bが形成されており、この導入口23bに、吸気通路20のうちインタークーラー23よりも上流側の部分が接続されている。これより、図6の破線矢印に示すように、インタークーラー23内において吸気は前方に向かって移動する。
【0039】
エンジン本体1の吸気側には、EGR通路41のうちEGRバルブユニット43よりも下流側の部分を構成するEGR側延設部341が配設されている。EGR側延設部341は上下方向に延びる形状を有する。EGR側延設部341は、インマニユニット321及びインタークーラー23の左方に配設されている。このEGR側延設部341は、請求項の「下流側EGR通路部」に相当する。
【0040】
EGRバルブユニット43はインマニユニット321の上方に配設されている。EGRバルブユニット43は、EGR通路41の一部を区画する筐体43bと、この筐体43b内に配設されたEGRバルブ43aと、EGRバルブ43aを駆動する駆動部43cとを有する。EGRバルブユニット43の筐体43bには、EGRバルブ43aよりも下流側となる位置に設けられて、これを通過したEGRガスを外部に導出するEGR導出部43dが設けられている。EGR導出部43dは、左方に開口している。EGR側延設部341は、このEGR導出部43dと連通しており、EGR導出部43dからインタークーラー23の左方を通って下方に延びている。なお、EGRバルブユニット43は、インマニユニット321の上方に設けられたEGRクーラー42とEGRガス配管342を介して接続されている。
【0041】
EGR側延設部341は、その上端部を構成してEGR導出部43dと連通する第1部位341aと、EGR側延設部341の下端部であってEGR側延設部341及びEGR通路41の下流端部を構成する第4部位341dと、第1部位341aから下方にほぼまっすぐに延びる第2部位341bと、第2部位341bの下端部から前斜め下方に傾斜して第4部位341dに接続される第3部位341cとを含む。
【0042】
第4部位341dは、吸気側延設部325の上下方向の中間部分に接続されている。第4部位341dは、この吸気側延設部325の上下方向の中間部分の周面を左方から覆う形状を有している。本実施形態では、第4部位341dは、吸気側延設部325の下から1/4程度(吸気側延設部325の上下方向の長さの1/4程度)の部分に接続されている。
【0043】
本実施形態では、EGR側延設部341は、吸気側延設部325の右側部分と一体に形成された部位と、この部位を左方から覆う蓋部材とで構成されている。図8は、蓋部材が取り外された状態のEGR側延設部341と、吸気側延設部325の右側部分とを合わせて示した概略斜視図である。この図8及び図7等に示すように、第4部位341dは、吸気側延設部325の周面から左方に膨出する形状を有しており、第4部位341dと吸気側延設部325の周面との間には空間が形成されている。第4部位341dと対向する吸気側延設部325の周面には、吸気側延設部325の周壁を貫通する貫通孔325cが吸気側延設部325の周方向に沿って複数形成されている。第4部位341d及びEGR側延設部341内のEGRガスは、これら貫通孔325cを通って吸気側延設部325の内側に導入される。つまり、EGR通路41内のEGRガスは、これら貫通孔325cを介して吸気通路20内に導入される。
【0044】
第1部位341aは、図4に示すように吸気側から見て、EGR導出部43dから後方に延びる形状を有する。吸気側から見て、EGR導出部43dは、吸気側延設部325の上縁の後部上方に配設されており、第1部位341aは、吸気側延設部325の上縁の後部と対向する位置から、吸気側延設部325の後縁よりも後方の位置まで延びている。
【0045】
第2部位341bは、第1部位341aの下端から吸気側延設部325の上縁よりも下方の位置まで延びている。第2部位341bは、第1部位341aの後部であって前後方向について吸気側延設部325よりも後方に位置する部分から下方に延びている。これより、吸気側から見て、第2部位341bの下端部は吸気側延設部325よりも後側に配設されている。つまり、第2部位341bは、吸気側延設部325の後方を通るように配設されている。
【0046】
図9は、図7に対応する図であって、EGR側延設部341と吸気側延設部325とを外形線のみで表し、これらが前後方向に重複する領域を明示した図である。この図9に示すように、第2部位341bの下端部の右側部分は吸気側延設部325の後方で、且つ、前方から見て吸気側延設部325と重複する位置に配設されている。
【0047】
第3部位341cは、第2部位341bの下端から吸気側延設部325の後縁に沿うように前斜め下方に傾斜している。図9に示すように、第3部位341cの右側部分も、吸気側延設部325の後方で、且つ、前方から見て吸気側延設部325と重複する位置に配設されている。
【0048】
第3部位341cの下端部の右側部分は吸気側延設部325の周面に接続されている。一方、第3部位341cの左側部分は、第4部位341dの後端部の上部に接続されている。
【0049】
前記のように、本実施形態では、EGR側延設部341は、その一部が、詳細には、第1部位341aの下端部と第3部位341cの右側部分とを含む領域Cが、吸気側延設部325の後方で、且つ、前方から見て吸気側延設部325と重複する位置に配設されている。
【0050】
ここで、前記のように、インタークーラー23は、エンジン本体1の吸気側の側面1aと吸気側延設部325及びEGR側延設部341の間の領域に配設されている。また、前記のように、EGR側延設部341は、吸気側延設部325の後方を通って上下方向に延びるように配設されている。そして、前記のように、インタークーラー23は、前斜め右に傾斜する姿勢で配設されている。これより、図6に示すように、左右方向について、インタークーラー23とEGR側延設部341との離間距離d1の方が、インタークーラー23と吸気側延設部325との離間距離d2よりも短くなっている。
【0051】
エンジン本体1の吸気側には、さらに、車両補機の一つであるオルタネータ401と、同じく車両補機の一つであるエアコン用コンプレッサ402が設けられている。オルタネータ401は、エンジン本体1により駆動されて発電する車両補機である。エアコン用コンプレッサ402は、車両Vに搭載されたバッテリからの電力を受けて駆動してエアコン用の冷媒を昇圧するための車両補機である。前記のオルタネータ401は請求項の「第1車両補機」に相当し、前記のエアコン用コンプレッサ402は請求項の「第2車両補機」に相当する。
【0052】
オルタネータ401及びエアコン用コンプレッサ402は、ともに、略円柱状の外形を有しており、エンジン本体1の吸気側に、その中心軸が前後方向に延びる姿勢で配設されている。また、オルタネータ401とエアコン用コンプレッサ402は上下方向に並設されている。本実施形態では、図5に示すように、オルタネータ401は、インタークーラー23の前方にこれと前後方向に重複するように配設されている。そして、エアコン用コンプレッサ402は、このオルタネータ401の下方に配設されている。
【0053】
[作用等]
以上のように、本実施形態では、車両Vに縦置きの姿勢で配設されたエンジン本体1の吸気側つまり車幅方向の一方側に、吸気通路20の一部を構成する吸気側延設部325と、EGRクーラー42よりも下流側のEGR通路41を区画するEGR側延設部341とが配設されている。そして、EGR側延設部341の一部が、吸気側延設部325よりも後方に位置し、且つ、車両Vの前方から見たときに吸気側延設部325と重複するように配設されている。
【0054】
これより、吸気側延設部325がEGR側延設部341に対する走行風についての風除けとして機能する。すなわち、車両前方からの走行風がEGR側延設部341に当たるのを吸気側延設部325が防ぐ。従って、EGRクーラー42によって冷却された後のEGRガスが走行風によってさらに冷却されることが抑制され、EGRガスの過冷却が抑制される。
【0055】
詳細には、EGRクーラー362は、高負荷運転時においてEGRガスを十分に冷却可能な冷却能力を具備させる必要がある。このため、中・軽負荷時等においてEGRクーラー362通過後のEGRガスがさらに走行風により冷却されると、EGRガスが過冷却されてしまいEGRガス内に含まれる水が凝縮して多量の凝縮水が発生するおそれがある。凝縮水がエンジン本体1に導入されるとエンジン本体1内での混合気の燃焼が不安定になる等が生じ、好ましくない。これに対して、本実施形態では、前記のようにEGRガスの過冷却を抑制できるので、多量の凝縮水が発生することおよび燃焼の不安定化等を抑制できる。
【0056】
しかも、本実施形態では、インタークーラー23が、車幅方向について吸気側延設部325がEGR側延設部341と対向するように配設されている。そして、インタークーラー23と吸気側延設部325との車幅方向の離間距離d1よりも、インタークーラー23とEGR側延設部341との車幅方向の離間距離d2の方が短くなるように、インタークーラー23が配設されている。
【0057】
これより、EGRガスの過冷却がより確実に抑制される。具体的には、インタークーラー23に流入する吸気は、ターボ過給機15で加圧されていることもあり、冷却されたEGRガスに比べてかなりの高温となる。これより、この吸気の熱を受けるインタークーラー23の温度は高く、これに近い位置にEGR側延設部341が設けられていることで、インタークーラー23からの放射熱によってEGR側延設部341が保温される。従って、EGR側延設部341を通過するEGRガスの過冷却がより確実に抑制される。
【0058】
特に、本実施形態では、インタークーラー23内において吸気が前方に向かって移動しており、吸気の冷却が未済の状態であるインタークーラー23の上流側の部分つまりインタークーラー23の後側の部分の温度の方が、インタークーラー23の下流側つまり前側の部分の温度よりも高くなる。そして、EGR側延設部341は吸気側延設部325よりも後方であって、このインタークーラー23のうちの温度が比較的高い部分に近接して配設されている。これより、EGRガスの過冷却がより一層確実に抑制される。
【0059】
また、前記のようにインタークーラー23から遠い位置に吸気側延設部325が設けられていることで、吸気側延設部325を通過する吸気がインタークーラー23からの熱によって昇温するのが抑制される。これより、吸気の温度が低く抑えられ、エンジン本体1の吸気効率が高く維持される。
【0060】
さらに、本実施形態では、EGR側延設部341の前方に、オルタネータ401とエアコン用コンプレッサ402とが配設されている。
【0061】
この配置によれば、車両前方からの走行風は、EGR側延設部341よりも前側の位置でオルタネータ401及びエアコン用コンプレッサ402に衝突し、この位置においてその流れの向きが車幅方向に広がるように変えられることになる。これより、EGR側延設部341に向かう走行風は、さらに少なく抑えられる。従って、本実施形態によれば、走行風によるEGR側延設部341及びこれを通過するEGRガスの冷却がより一層確実に抑制される。
【0062】
特に、本実施形態では、オルタネータ401とエアコン用コンプレッサ402とが上下方向に並設されている。つまり、オルタネータ401とエアコン用コンプレッサ402のいずれか一方のみが配設されている場合に比べて、車両前方から見て、より広範囲にわたってEGR側延設部341の前方領域が塞がれている。これより、本実施形態によれば、走行風の流れをエンジン本体1の周囲により一層確実に拡散させることができ、EGR側延設部341及びこれを通過するEGRガスの冷却がさらに一層確実に抑制される。
【0063】
[変形例]
前記実施形態では、EGR側延設部341の一部が吸気側延設部325の後方且つこれと前後方向に重複する場合を説明したが、EGR側延設部341全体が吸気側延設部325の後方且つこれと前後方向に重複するように配設されてもよい。
【0064】
前記実施形態では、EGR側延設部341の前方にオルタネータ401とエアコン用コンプレッサ402と上下に並んで配設される場合を説明したが、オルタネータ401とエアコン用コンプレッサ402のいずれか一方は省略されてもよい。また、オルタネータ401とエアコン用コンプレッサ402に代えて、他の車両補機がEGR側延設部341の前方に配設されてもよい。
【0065】
エンジン本体1は直列多気筒エンジンであればよく、気筒数は前記の6つに限らない。
【符号の説明】
【0066】
1 エンジン本体
20 吸気通路
23 インタークーラー
41 EGR通路
42 EGRクーラー
325 吸気側延設部(側方吸気通路部)
341 EGR側延設部(下流側EGR通路部)
401 オルタネータ(車両補機)
402 エアコン用コンプレッサ(車両補機)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9