(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】水電解用除湿システム、メタン製造システム、および水電解用除湿システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20240423BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240423BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20240423BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240423BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20240423BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240423BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20240423BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B01D53/26 100
C25B9/00 A
C25B15/02
B01D53/04 230
C01B3/56 Z
C01B32/50
C07C9/04
C07C1/12
(21)【出願番号】P 2020088152
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】村田 元
(72)【発明者】
【氏名】関 純太郎
(72)【発明者】
【氏名】香山 智之
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-049906(JP,A)
【文献】特開平08-085892(JP,A)
【文献】特開2012-026463(JP,A)
【文献】特開2019-142806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
C07C 9/04
C07C 1/12
C25B 9/00
B01D 53/02 - 53/12
C01B 3/00 - 3/58
C01B 32/50
C25B 15/02
H01M 8/00 - 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解槽における水電解により生成された、水蒸気を含有する水素ガスを除湿する、水電解用除湿システムであって、
前記水電解槽に接続され、前記水電解槽から前記水電解用除湿システムに供給される第1水素ガスを除湿する除湿部であって、電子冷却素子を有する冷却部と、前記冷却部の下流に接続される気液分離部と、を備える除湿部と、
電源から前記除湿部の前記冷却部への電力供給を制御する電力制御部であって、少なくとも、前記水電解槽に電力が供給されないとき、前記冷却部へ電力供給をさせない、電力制御部と、
前記除湿部の下流に配置され、前記除湿部から排出される第2水素ガスの水分量を検出する水分量検出部と、
前記第2水素ガスを貯留可能な第1タンクと、
前記第2水素ガスを貯留可能な第2タンクと、
前記第2水素ガスの流入先を、前記第1タンクと前記第2タンクとに切替可能な切替部と、
前記水分量検出部により検出された前記第2水素ガスの水分量が所定の閾値以下の場合に、前記第2
水素ガスを前記第1タンクに流入させ
、
前記水分量検出部により検出された前記第2水素ガスの水分量が前記所定の閾値より大きい場合に、前記切替部を制御して、前記第2水素ガスを前記第2タンクに流入させる、貯留制御部と、
を備える、水電解用除湿システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水電解用除湿システムであって、
前記電力制御部は、
前記第1タンクが満杯の間、前記冷却部への供給電力を、前記第1タンクが満杯になる前より低減させ
、
前記貯留制御部は、
前記第1タンクが満杯の間、前記第2水素ガスの水分量によらず、前記切替部を制御して、前記第2水素ガスを前記第2タンクに流入させる、
水電解用除湿システム。
【請求項3】
水電解槽における水電解により生成された、水蒸気を含有する水素ガスを除湿する、水電解用除湿システムであって、
前記水電解槽に接続され、前記水電解槽から前記水電解用除湿システムに供給される第1水素ガスを除湿する除湿部であって、電子冷却素子を有する冷却部と、前記冷却部の下流に接続される気液分離部と、を備える除湿部と、
電源から前記除湿部の前記冷却部への電力供給を制御する電力制御部であって、少なくとも、前記水電解槽に電力が供給されないとき、前記冷却部へ電力供給をさせない、電力制御部と、
前記除湿部の下流に配置され、前記除湿部から排出される第2水素ガスの水分量を検出する水分量検出部と、
前記第2水素ガスを貯留可能な第1タンクと、
前記水分量検出部の下流に設けられ、前記第2水素ガスを除湿する第2除湿部と、
前記第2水素ガスの流入先を、前記第1タンクと前記第2除湿部とに切替可能な切替部と、
前記水分量検出部により検出された前記第2水素ガスの水分量が所定の閾値以下の場合に、前記第2水素ガスを前記第1タンクに流入させ、
前記水分量検出部により検出された前記第2水素ガスの水分量が前記所定の閾値より大きい場合に、前記切替部を制御して、前記第2水素ガスを前記第2除湿部に流入させる、貯留制御部と、
を備える、水電解用除湿システム。
【請求項4】
水電解槽における水電解により生成された、水蒸気を含有する水素ガスを除湿する、水電解用除湿システムであって、
前記水電解槽に接続され、前記水電解槽から前記水電解用除湿システムに供給される第1水素ガスを除湿する除湿部であって、電子冷却素子を有する冷却部と、前記冷却部の下流に接続される気液分離部と、を備える除湿部と、
電源から前記除湿部の前記冷却部への電力供給を制御する電力制御部であって、少なくとも、前記水電解槽に電力が供給されないとき、前記冷却部へ電力供給をさせない、電力制御部と、
前記除湿部の下流に配置され、前記除湿部から排出される第2水素ガスの水分量を検出する水分量検出部と、
前記第2水素ガスを貯留可能な第1タンクと、
前記水分量検出部により検出された前記第2水素ガスの水分量が所定の閾値以下の場合に、前記第2水素ガスを前記第1タンクに流入させ、
前記水分量検出部により検出された前記第2水素ガスの水分量が前記所定の閾値より大きい場合に、前記第2水素ガスを排出させる、貯留制御部と、
を備える、水電解用除湿システム。
【請求項5】
二酸化炭素と水素からメタンを製造するメタン製造システムであって、
請求項
1または請求項
2に記載の水電解用除湿システムと、
前記水電解用除湿システムの前記第1タンクに接続され、二酸化炭素吸着性能を有する吸着材に、供給源から供給された二酸化炭素含有ガスを流し、前記吸着材に前記第1タンク内の前記第2水素ガスを流して、前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部と、
前記水電解用除湿システムの前記第2タンクに接続されると共に、前記二酸化炭素回収部に接続され、前記二酸化炭素回収
部により回収された二酸化炭素と、前記第2タンクに貯留された前記第2水素ガスと、を用いて、メタン化反応を生じさせるメタン化反応部と、
を備える、
メタン製造システム。
【請求項6】
水電解槽における水電解により生成された、水蒸気を含有する水素ガスを除湿する水電解用除湿システムの制御方法であって、
前記水電解用除湿システムは、
前記水電解槽に接続され、前記水電解槽から前記水電解用除湿システムに供給される第1水素ガスを除湿する除湿部であって、電子冷却素子を有する冷却部と、前記冷却部の下流に接続される気液分離部と、を備える除湿部と、
前記除湿部の下流に配置され、前記除湿部から排出された第2水素ガスの水分量を検出する水分量検出部と、
前記第2水素ガスを貯留可能な第1タンクと、
前記第2水素ガスを貯留可能な第2タンクと、
前記第2水素ガスの流入先を、前記第1タンクと前記第2タンクとに切替可能な切替部と、
を備えており、
少なくとも、前記水電解槽に電力が供給されないとき、前記冷却部へ電力を供給させず、
前記水分量検出部により検出された前記第2水素ガスの水分量が所定の閾値以下の場合に、前記第2
水素ガスを前記第1タンクに流入させ
、
前記水分量検出部により検出された前記第2水素ガスの水分量が前記所定の閾値より大きい場合に、前記切替部を制御して、前記第2水素ガスを前記第2タンクに流入させる、
水電解用除湿システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解用除湿システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水の電気分解(以下、「水電解」ともいう)によって水素と酸素を生成する水電解装置が知られている。水電解により生成される水素ガスには水蒸気が含まれる。例えば、燃料電池自動車等に水素を供給する場合は、高い乾燥状態の水素が要求される。そのため、水電解により生成された水素ガスを除湿する水電解用除湿システムが提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【0003】
特許文献1、2、4には、水電解用除湿システムにおいて、吸着剤を用いて除湿する方法が開示されている。吸着剤を内包する吸着器を用いる方法では、一般に、二つの吸着器を備えており、まず、一方の吸着器で水分を含んだ状態の水素の供給を受け、その容量が所定量以上に達した段階で、その吸着器への水素供給を停止すると共に、もう一方の吸着器へ水分を含んだ水素を供給するように切り替える。そして、供給を終えた吸着器から乾燥水素を取り出した後、吸着剤を乾燥させる。吸着剤を乾燥させるとき、PSA(Pressure Swing Adsorption:圧力変動吸着法)方式の場合には、ポンプにより吸着器内部のガスを吸引して減圧する方法がある。また、PSA方式には、別途製造した乾燥ガスで掃気する方法もある。また、TSA(Thermal Swing Adsorption:温度変動吸着法)方式の場合には、吸着器を加熱して昇温させる。
【0004】
また、特許文献3には、圧力が高められた高圧水素が断熱膨張で冷却される効果を利用して冷熱源として活用し、水電解により生成された水素ガスを冷却して除湿する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-183197号公報
【文献】特開2014-185388号公報
【文献】特開2011-168862号公報
【文献】特開2014-40637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸着剤を用いて水素ガスを除湿する技術を用いると、吸着剤を乾燥させるとき、PSA方式でポンプを用いた方法の場合、ポンプで吸引する間中、電力を連続的に供給させる必要がある。また、ポンプを用いず、別途製造した乾燥水素で掃気する場合、配管構成が複雑化し制御用のバルブ類が増え、その分、その消費電力が常時必要になる。また、TSA方式の場合にも、昇温脱離作業の間中、電力を連続的に供給させる必要がある。特に、TSAの場合には、昇温脱離作業の途中で電力が遮断されると、放熱により温度が下がり再加熱が必要になり、エネルギー効率が悪くなるため、連続的に電力を供給することが好ましい。上述の通り、吸着剤の乾燥は、水電解装置からの水素の供給が終わった後に行われる。すなわち、水素の製造のための電力供給と、吸着剤の乾燥のための電力供給とのタイミングは、一致しない場合がある。そのため、例えば、水素の製造および除湿に、自然エネルギー(再生可能エネルギー)を使用した場合に、水素の製造時には電力が供給されたものの、吸着剤の乾燥が必要なタイミングで電力が供給されない可能性がある。そのため、適時の電力供給を確保するために、系統電力や電池を介した安定電力を用いるのが適当である。
【0007】
また、PSA方式で乾燥ガスを送り込む場合、ポンプを用いた場合は、ポンプでシステム外に排出する水素が発生する。PSA方式で乾燥ガスで掃気する場合も、システム外に排出する水素が発生する。TSA方式の場合にも、システム構成や制御方式によっては、多量の水を含んだ水素を排出する可能性がある。このように、吸着剤を用いて水素ガスを除湿する技術を用いると、水素のロス(排気)が発生する可能性がある。また、このロスを回避しようとすると、掃気ガスを貯めるタンクやその出し入れのためにバルブ制御が必要になり、装置が複雑化するうえ、常時必要な消費電力が増えてしまう。
【0008】
また、特許文献3の技術は、数十MPaの高圧水素を用いるからこそ実現する冷却効果と考えられる。そのため、水素ガスの除湿だけに注目すると、エネルギー削減に有効であるものの、水電解により生成される水素ガスの昇圧のエネルギーを除湿に利用していることになるため、水電解による水素の生成を含めたドライ水素の製造全体でみると、昇圧に要するエネルギーが大きく、エネルギーのロスが大きくなる場合がある。また、高圧を要さない場合等、特許文献3の技術を適用できない場合もある。
【0009】
このように、除湿器に供給する電力と、水素ガスの除湿に伴う水素のロス(排気)により、水電解による水素製造に要する費用が高くなる虞がある。そのため、除湿器に供給する電力の低減と、排気水素の低減が望まれている。
【0010】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、水電解によって生成された水素ガスを除湿する除湿器に供給する電力を低減する他の技術を提供すること、除湿による排気水素を低減する他の技術を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0012】
(1)本発明の一形態によれば、水電解槽における水電解により生成された、水蒸気を含有する水素ガスを除湿する、水電解用除湿システムが提供される。この水電解用除湿システムは、前記水電解槽に接続され、前記水電解槽から前記水電解用除湿システムに供給される第1水素ガスを除湿する除湿部であって、電子冷却素子を有する冷却部と、前記冷却部の下流に接続される気液分離部と、を備える除湿部と、電源から前記除湿部の前記冷却部への電力供給を制御する電力制御部であって、少なくとも、前記水電解槽に電力が供給されないとき、前記冷却部へ電力供給をさせない、電力制御部と、前記除湿部の下流に配置され、前記気液分離器により分離された第2水素ガスの水分量を検出する水分量検出部と、前記第2水素ガスを貯留可能な第1タンクと、前記水分量検出部により検出された前記第2水素ガスの水分量が所定の閾値以下の場合に、前記第2ガスを前記第1タンクに流入させる、貯留制御部と、を備える。
【0013】
この構成によれば、電子冷却素子を有する冷却部により第1水素ガスを冷却して、除湿が行われる。電子冷却素子は起動が早いため、水電解槽に電力が供給され、水素ガスが生成されているときに、電力が供給されていれば、適切に第1水素ガスの除湿を行うことができる。この構成では、水電解槽に電力が供給されていないとき、すなわち、第1水素ガスが生成されないとき、冷却部へ電力供給をさせないように、電力制御部により制御されるため、不要な電力の供給を抑制することができ、水電解用除湿システムに供給される電力を低減することができる。
【0014】
また、除湿部が冷却部と気液分離部により構成されるため、吸着剤を用いて除湿する方法と比較して、排気水素を低減することができる。
【0015】
また、貯留制御部により、所定の閾値以下の水分量の第2水素ガスが第1タンクに貯留される。そのため、水電解槽により生成された第1水素ガスの水分量の変動や、除湿部による除湿程度の変動等による、第2水素ガスの水分量の変動に関わらず、所望の水分量の水素ガスを提供することができる。
【0016】
(2)上記形態の水電解用除湿システムであって、前記電力制御部は、前記第1タンクが満杯の間、前記冷却部への供給電力を、前記第1タンクが満杯になる前より低減させてもよい。第1タンクが満杯のときは、所定の閾値以下の水分量の第2水素ガスを流入させる先がないため、高い除湿能力を要さない。そのため、第1タンクが満杯の間、冷却部への供給電力を低減させることにより、不要な電力供給を抑制することができる。
【0017】
(3)上記形態の水電解用除湿システムであって、前記第2水素ガスを貯留可能な第2タンクと、前記第2水素ガスの流入先を、前記第1タンクと前記第2タンクとに切替可能な切替部と、をさらに備え、前記貯留制御部は、前記水分量検出部により検出された前記第2水素ガスの水分量が前記所定の閾値より大きい場合に、前記切替部を制御して、前記第2水素ガスを前記第2タンクに流入させてもよい。このようにすると、水分量が異なる2種類の水素ガスを提供することができる。水分量が比較的高い水素も利用することができるため、水電解により生成された水素の利用効率を向上させることができる。
【0018】
(4)上記形態の水電解用除湿システムであって、前記第2水素ガスを貯留可能な第2タンクと、前記第2水素ガスの流入先を、前記第1タンクと前記第2タンクとに切替可能な切替部と、をさらに備え、前記貯留制御部は、前記第1タンクが満杯の間、前記第2水素ガスの水分量によらず、前記切替部を制御して、前記第2水素ガスを前記第2タンクに流入させてもよい。この構成では、第1タンクが満杯の場合は、冷却部への供給電力を低減させるため、第2水素ガスの水分量が上昇する可能性が高い。そのため、水分量が所定の閾値以上の第2水素ガスが第2タンクに貯留され、水分量が比較的高い水素も利用することができる。その結果、水電解用除湿システムへの電力供給を抑制すると共に、水電解により生成された水素の利用効率を向上させることができる。第1タンクが満杯の場合は、第2水素ガスの水分量によらず、第2水素ガスを第2タンクに流入させることにより、制御を容易にすることができる。
【0019】
(5)本発明の他の形態によれば、二酸化炭素と水素からメタンを製造するメタン製造システムが提供される。このメタン製造システムは、上記の水電解用除湿システムと、前記水電解用除湿システムの前記第1タンクに接続され、二酸化炭素吸着性能を有する吸着材に、供給源から供給された二酸化炭素含有ガスを流し、前記吸着材に前記第1タンク内の前記第2水素ガスを流して、前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部と、前記水電解用除湿システムの前記第2タンクに接続されると共に、前記二酸化炭素回収部に接続され、前記二酸化炭素回収装置により回収された二酸化炭素と、前記第2タンクに貯留された前記第2水素ガスと、を用いて、メタン化反応を生じさせるメタン化反応部と、を備える。
【0020】
この構成によれば、比較的水分量が少ない水素を要する二酸化炭素回収部に、第1タンク内の第2水素ガスが供給され、比較的水分量が多い水素を利用可能なメタン化反応部に、第2タンク内の第2水素ガスが供給される。そのため、水電解により生成された水素ガスの利用効率を向上させることができる。
【0021】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、水電解用除湿システムの制御方法、水素製造システムなどの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態の水電解用除湿システムの構成を概念的示す模式図である。
【
図2】電力制御部における電力制御を示すフローチャートである。
【
図3】貯留制御部における貯留制御を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態におけるメタン製造システムの構成を概念的示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の水電解用除湿システム100の構成を概念的示す模式図である。水電解用除湿システム100は、水電解槽210における水電解により生成された、水蒸気を含有する第1水素ガスを除湿する。
図1では、水電解槽210を有する水電解システム200も共に図示している。
【0024】
本実施形態の水電解用除湿システム100の説明に先立って、水電解システム200について、説明する。水電解システム200では、水電解槽210において水を電気分解することで酸素と水素を生成する。水電解システム200は、水電解槽210と、水電解電力制御部220と、気液分離器230と、を備える。
【0025】
水電解槽210は、PEM(Polymer Electrolyte Membrane:固体高分子電解質膜)型水電解槽であって、高分子電解質膜を隔膜に用いた単セルが複数個積層されたものからなる。単セルは、高分子電解質膜の両面に電極(酸素極、水素極)が接合された膜電極接合体(MEA)と、MEAの両側に配置されたセパレータとを備えている。水電解槽210の構造は、水電解が可能である限りにおいて、特に限定されない。例えば、水電解槽210は、
(a)酸素極側及び水素極側の双方において、水を循環させる両極循環方式、
(b)酸素極側のみ水を循環させる片側循環方式
のいずれであっても良い。
【0026】
水電解電力制御部220は、いわゆる、電力調整器を備え、電源500から供給される電力を、水電解槽210へ供給すると共に、水電解用除湿システム100へ供給する。水電解槽210に対し、水が供給されると共に、水電解電力制御部220により電力が供給されると、水電解槽210において、酸素と水素が生成される。生成された水素は、液水と水蒸気を含む水素ガスとして、水電解槽210から排出される。
【0027】
気液分離器230は、水電解槽210において生成された水蒸気および液水を含む水素ガスから液水を分離して、水電解槽210に戻すと共に、水蒸気を含む水素ガスを水電解用除湿システム100に供給する。以降の説明において、水電解用除湿システム100に供給される水素ガスを、「第1水素ガス」とも呼ぶ。
【0028】
本実施形態において、電源500は、太陽光、水力、風力、波力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギー由来の電源である。再生可能エネルギー由来の電源から供給される電力は、電力量が大きく変動しやすい。そのため、水電解槽210によって生成される水素ガスの量および水分量も、供給される電力の変動に伴い、変動する。電源500の種類は、特に限定されず、他の実施形態では、商用電源であってもよい。
【0029】
本実施形態の水電解用除湿システム100について説明する。
図1に示すように、水電解用除湿システム100は、第1水素ガスを除湿する除湿部10と、電源から除湿部10への電力供給を制御する電力制御部20と、除湿部の下流に配置され、除湿部10から排出される第2水素ガスの水分量を検出する水分量検出部30と、第2水素ガスを貯留可能な第1タンク40と、第2タンク50と、第2水素ガスの貯留先を切替可能な切替部60と、切替部60を制御して第2水素ガスの貯留先を切替させる貯留制御部70と、を備える。
【0030】
除湿部10は、冷却部12と、気液分離部14と、を備える。冷却部12は、電子冷却素子(例えば、ペルチェ素子)を備え、電力制御部20から電力が供給されると、冷却を行うことができる。冷却部12は、気液分離器230を介して水電解槽210に接続されており、水電解槽210により生成され、気液分離器230により液水が除去された、水蒸気を含む第1水素ガスを、冷却する。水蒸気を含む第1水素ガスが冷却されると、水蒸気の一部が液化する。
【0031】
気液分離部14は、冷却部12の下流に接続されており、冷却部12を通った第1水素ガスが流入する。気液分離部14は、流入した第1水素ガス中の液水を除去して、除湿部10から排出する。除湿部10から排出される水素ガスを、「第2水素ガス」と呼ぶ。
【0032】
電力制御部20は、いわゆる、電力調整器を備え、電源500から除湿部10の冷却部12への電力供給を制御する。後に詳述するように、電力制御部20は、少なくとも、水電解槽210に対して電力が供給されないとき、冷却部12へ電力供給をさせない。上述の通り、水電解システム200の水電解電力制御部220は、電源500から水電解槽210へ電力を供給する際、電力制御部20へも電力を供給する。電力制御部20は、水電解電力制御部220を介して、電源500から電力を受け取ると、電力を調整して、冷却部12へ供給する。水電解システム200の水電解電力制御部220は、電源500から水電解槽210へ電力を供給しないときは電力制御部20へ電力を供給せず、電源500以外の電源から電力制御部20への電力供給がないため、水電解槽210へ電力が供給されないとき、電力制御部20は、冷却部12へ電力を供給しない。
【0033】
また、電力制御部20は、第1タンク40が満杯の間、冷却部12への供給電力を、第1タンク40が満杯になる前より低減させる。本実施形態では、電力制御部20は、第1タンク40が満杯の間、冷却部12へ電力を供給しない。換言すると、電力制御部20は、冷却部12への供給電力を、0(ゼロ)に低減させる。
【0034】
上述の通り、冷却部12に対して、電力が供給されるときと、電力が供給されないときがある。冷却部12に電力が供給されると、冷却部12が動作するため、第1水素ガスが冷却される。冷却部12にて冷却された第1水素ガスは、水蒸気の一部が液水になっているため、気液分離部14により、液水を除去することより、比較的高い除湿率で除湿することができる。一方、冷却部12に電力が供給されていないと、冷却部12が動作しないため、第1水素ガスはほぼ冷却されないまま、気液分離部14に流入する。気液分離部14では、第1水素ガスに含まれる液水(気液分離器230で除去されず残留する液水、冷却部12を通過する際に液化した液水等)がある場合、その液水を除去することができるものの、冷却部12に電力が供給されている場合より、第1水素ガスの除湿率は低い。すなわち、除湿部10から排出される水素ガスである第2水素ガスの水分量は、変動する。
【0035】
第1タンク40と第2タンク50は、除湿部10から排出される第2水素ガスを貯留可能な容器であり、切替部60を介して除湿部10に接続されている。切替部60は、例えば、三方弁であり、貯留制御部70によって制御される。他の実施形態では、複数の開閉弁を備えてもよい。第1タンク40は、第1タンク40内の圧力を検出する圧力センサ42を備え、第2タンク50は、第2タンク50内の圧力を検出する圧力センサ52を備える。圧力センサ42による検出信号は、電力制御部20および貯留制御部70に出力される。圧力センサ52による検出信号は、貯留制御部70に出力される。
【0036】
水分量検出部30は、除湿部10と切替部60とを接続する流路に配置されており、流路内の第2水素ガスの水分量を検出して、検出信号を貯留制御部70に出力する。水分量検出部30は、例えば、湿度計、温度計、圧力計を備え、それらによる検出値を用い、乾燥水素に対する水分量を計算する。ここでは、例えば、下記のTetens(1930)の式(式1)を用いる。
E(t)=6.11×10^(7.5t/(t+237.3)) … (式1)
(式1)において、E(t)は飽和蒸気圧(hPa)、tは温度(℃)である。
本実施形態では、水分量の指標として、大気圧露点に換算して用いる。他の実施形態では、他の方法で水分量を求めてもよいし、大気圧露点以外を水分量の指標としてもよい。
【0037】
貯留制御部70は、切替部60を制御して、除湿部10から排出される第2水素ガスの流入先を、第1タンク40と第2タンク50とに切替させる電子装置である。貯留制御部70は、水分量検出部30により検出された第2水素ガスの水分量に応じて、第2水素ガスの流入先を切替える。具体的には、貯留制御部70は、所定の閾値Thを基準に、水分量検出部30により検出された水分量Hの大小により、貯留制御を行う。ここで、所定の閾値Thは、例えば、排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置で用いることができる程度に低い値に設定することができる。例えば、吸着材としてゼオライトを用いる二酸化炭素回収装置の場合には、所定の閾値Thとして、大気圧露点-15℃を用いてもよい。
【0038】
また、貯留制御部70は、第1タンク40および第2タンク50のガスの貯留状態に応じて、第2水素ガスの流入先を切替える(後に、詳述する)。貯留制御部70は、第1タンク40および第2タンク50のガスの貯留状態を、圧力センサ42および圧力センサ52から入力される検出信号を用いて判断する。
【0039】
図2は、電力制御部20における電力制御を示すフローチャートである。
水電解電力制御部220から水電解槽210へ電力が供給されると(ステップS102:YES)、電力制御部20は、圧力センサ42から受信した圧力検出信号を用いて、第1タンク40が満杯か否か判断する(ステップS104)。本実施形態では、上述の通り、水電解電力制御部220は、水電解槽210に電力を供給すると共に、電力制御部20に電力を供給するため、電力制御部20に電力が供給されているとき、ステップS102はYESとなる。電力制御部20は、第1タンク40が満杯でないと判断すると(ステップS104:NO)、水電解電力制御部220を介して供給された電源500からの電力を調整して、冷却部12に供給して(ステップS106)、ステップS102へ戻る。
【0040】
ステップS106において、電力制御部20が冷却部12に対して電力を供給すると、冷却部12が動作するため、第1水素ガスが冷却され、第1水素ガスが含有する水蒸気が液化する。冷却部12を通った第1水素ガスが気液分離部14に流入すると、気液分離部14により液水が除去されるため、除湿を行うことができる。そのため、第2水素ガスの水分量は、第1水素ガスの水分量より低下する。
【0041】
一方、第1タンク40が満杯の場合(ステップS104:YES)、電力制御部20は、水電解電力制御部220を介して電源500から電力制御部20へ電力が供給されているものの、冷却部12に対して電力を供給せず(ステップS108)、ステップS102へ戻る。
【0042】
また、水電解電力制御部220から水電解槽210へ電力が供給されないと(ステップS102:NO)、電力制御部20は、冷却部12へ電力を供給せず(ステップS108)、ステップS102へ戻る。
【0043】
ステップS108において、電力制御部20が冷却部12に対して電力を供給しないと、冷却部12が動作しないため、第1水素ガスがほぼ冷却されない状態で、気液分離部14に流入する。そのため、除湿部10において、第1水素ガスの除湿をほとんど行うことができず、除湿部10から排出される第2水素ガスの水分量は、第1水素ガスの水分量とほぼ変わらない。
【0044】
図3は、貯留制御部70における貯留制御を示すフローチャートである。
ステップS202では、貯留制御部70は、第1タンク40が満杯か否か、上述のステップS104と同様に判断する。第1タンク40が満杯でない場合(ステップS202:NO)、貯留制御部70は、水分量検出部30から入力される検出信号を用いて、第2水素ガスの水分量Hが、所定の閾値Th以下か否か判断する(ステップS204)。一方、第1タンク40が満杯の場合(ステップS202:YES)、ステップS208に進む。
【0045】
水分量H≦所定の閾値Thの場合には(ステップS204:YES)、貯留制御部70は、切替部60を制御して、第2水素ガスを、第1タンク40に流入させて(ステップS206)、ステップS202へ戻る。
【0046】
一方、水分量H>所定の閾値Thの場合には(ステップS204:NO)、貯留制御部70は、第2タンク50が満杯か否か、圧力センサ52からの検出信号を用いて判断する。第2タンク50が満杯でない場合(ステップS208:NO)、貯留制御部70は、切替部60を制御して、第2水素ガスを、第2タンク50に流入させて(ステップS210)、ステップS202へ戻る。
【0047】
第2タンク50が満杯の場合(ステップS208:NO)、貯留制御部70は、切替部60を制御して、第2水素ガスを、排気させて(ステップS212)、ステップS202へ戻る。
【0048】
このように、除湿部10から排出される第2水素ガスの水分量に応じて、第2水素ガスの流入先(排気を含む)が切替えられる。そのため、第1タンク40には、水分量Hが所定の閾値Th以下の第2水素ガスが貯留され、第2タンク50には、水分量Hが所定の閾値Thより大きい第2水素ガスが貯留される。
【0049】
第1タンク40が満杯になると、第2タンク50が満杯になるまでは、第2水素ガスの水分量Hによらず、第2水素ガスは第2タンク50に貯留される。本実施形態では、上述の通り、第1タンク40が満杯になると、除湿部10の冷却部12への電力供給が停止され(電力が供給されない)、除湿部10において第1水素ガスの除湿がほぼ行われないため、第2タンク50に貯留される第2水素ガスの水分量は、第1タンク40に貯留される第2水素ガスの水分量より高くなる可能性が高い。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の水電解用除湿システム100によれば、電子冷却素子を有する冷却部12により第1水素ガスを冷却して、除湿が行われる。電子冷却素子は起動が早いため、水電解槽210に電力が供給され、水素ガスが生成されているときに、電力が供給されていれば、適切に第1水素ガスの除湿を行うことができる。これに対し、例えば、吸着剤を用いて水素ガスを除湿する技術を用いる除湿システムの場合は、吸着剤の乾燥が、水電解装置からの水素の供給が終わった後に行われる。そのため、水電解槽210に電力が供給されていないときにも、除湿システムに電力を供給する必要がある。これに対し、本実施形態の水電解用除湿システム100によれば、水電解槽210に電力が供給されていないとき、すなわち、水素ガスが生成されないとき、冷却部12へ電力供給をしないため、不要な電力の供給を抑制することができ、水電解用除湿システムに供給される電力を低減することができる。
【0051】
また、再生可能エネルギー由来の電力は、系統電力と比較して、電力単価が安価に取引されているため、水素の製造および除湿に、再生可能エネルギー由来の電力を使用することが検討されている。再生可能エネルギー由来の電力は、変動が大きいため、水素の製造および除湿に、再生可能エネルギー由来の電力を使用する場合、吸着剤による除湿では、水素の製造時には電力が供給されたものの、吸着剤の乾燥が必要なタイミングで電力が供給されず、適切に除湿できない可能性がある。そのため、吸着剤を用いて水素ガスを除湿する技術を用いる場合は、適時の電力供給を確保するために、再生可能エネルギー由来の電力を用いず、系統電力や電池を介した安定電力を用いたり、これらを、再生可能エネルギー由来の電力と併用するのが適当である。これに対し、本実施形態の水電解用除湿システム100は、上述の通り、水電解槽210に電力が供給され、水素ガスが生成されているときに、電力が供給されていれば、適切に第1水素ガスの除湿を行うことができるため、再生可能エネルギー由来の電力を用いることができる。上述の通り、再生可能エネルギー由来の電力は、系統電力と比較して、電力単価が安価に取引されているため、安価な電力のみを用いて、水素発生と除湿とを実施することができる。その結果、製造物である水素について大幅な低コスト化を実現することができる。また、再生可能エネルギーが水電解システム200および水電解用除湿システム100に供給されていない時の電力使用が不要になるため、蓄電池の設置が不要になり、それによりコスト増加や施設規模の増加を抑制できる。
【0052】
水電解用除湿システム100は、電子冷却素子を利用して除湿するシステムであり、電子冷却素子としてのペルチェ素子は、電力変動で大きく破損する機構ではないため、変動する再生可能エネルギーを入力に用いることができる。
【0053】
また、水電解用除湿システム100によれば、吸着剤を利用したPSA方式やTSA方式の除湿システムと比較して、安価な部品、低設置スペース、シンプルな制御システム構成が可能となる。
【0054】
水電解用除湿システム100によれば、電力制御部20は、第1タンク40が満杯の間、冷却部12への供給電力を、停止させるため、水電解用除湿システム100への供給電力を低減させることができる。第1タンク40が満杯のときは、所定の閾値Th以下の水分量の第2水素ガスを流入させる先がないため、高い除湿能力を要さない。そのため、第1タンク40が満杯の間、冷却部12への供給電力を停止させることにより、不要な電力供給を抑制することができる。
【0055】
水電解システム200および水電解用除湿システム100に、再生可能エネルギー由来の電力を用いる場合、再生可能エネルギー由来の電力の変動により、第1水素ガスおよび第2水素ガスの水分量も変動する。そのため、第2水素ガスの出口を直接他の装置(例えば、燃料電池、二酸化炭素回収装置等)に接続して、水素を利用すると、水素ガスに含有される水分が多いときに、不具合が生じる虞がある。これに対し、水電解用除湿システム100では、第2水素ガスの水分量Hが所定の閾値Th以下の場合に、第1タンク40に貯留されるため、利用者の所望の水分量の水素を提供することができる。
【0056】
さらに、水電解用除湿システム100では、水分量Hが所定の閾値Thより大きい第2水素ガスも排気せず、第2タンク50に貯留している。そのため、水分量が異なる2種類の水素ガスを提供することができる。例えば、水素ガスの水分量が比較的高くても利用可能な装置(例えば、メタン化反応装置等)に、第2タンク50に貯留された第2水素ガスを提供することにより、水電解システム200により生成された水素ガスの利用効率を向上させることができる。また、これにより、水素の排気を抑制することができ、水電解システム200により製造される水素の低コスト化に資することができる。
【0057】
また、水電解用除湿システム100によれば、第1タンク40が満杯の場合は、第2水素ガスの水分量によらず、第2水素ガスを第2タンク50に流入させるため、貯留制御を容易にすることができる。
【0058】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態におけるメタン製造システム600の構成を概念的示す模式図である。メタン製造システム600は、第1実施形態の水電解用除湿システム100とメタン化反応装置300と、を備える。第1実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して、先行する説明を参照する。
【0059】
メタン化反応装置300は、二酸化炭素と水素からメタンを製造する。本実施形態のメタン化反応装置300は、例えば、
図4に示すように、動力、電力、熱等を生成する燃焼器等420から排出される排ガス(二酸化炭素含有ガス)を利用して、メタンを生成する。
【0060】
メタン化反応装置300は、第1流量制御部310と、第2流量制御部320と、二酸化炭素回収部330と、メタン化反応部340と、を備える。第1流量制御部310は、水電解用除湿システム100の第1タンク40に貯留される第2水素ガスの流量を制御して、二酸化炭素回収部330に供給する。第2流量制御部320は、水電解用除湿システム100の第2タンク50に貯留される第2水素ガスの流量を制御して、メタン化反応部340に供給する。
【0061】
二酸化炭素回収部330は、二酸化炭素吸着性能を有する吸着材を備え、排ガス等の二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を回収する。二酸化炭素回収部330は、水電解用除湿システム100の第1タンク40に、第1流量制御部310を介して接続され、所定の量の第2水素ガスが供給される。
図4に示すように、燃焼器等420から排出される排ガスが、脱水器440によって脱水され、二酸化炭素回収部330に供給されると、二酸化炭素吸着性能を有する吸着材に、二酸化炭素が吸着される。その後、第1タンク40から二酸化炭素回収部330に対して第2水素ガスが供給されると、吸着材に吸着された二酸化炭素が脱離して、二酸化炭素回収部330から排出される。
図4に示す例では、二酸化炭素回収部330によって、排ガスから回収された二酸化炭素は、メタン化反応装置300のメタン化反応部340に供給されると共に、メタン製造システム600外の燃焼器等420に供給される。メタン製造システム600から燃焼器等420に対して二酸化炭素を供給する際、加圧装置460によって加圧されて供給される。
【0062】
メタン化反応部340は、二酸化炭素回収部330から供給される二酸化炭素と、水電解用除湿システム100の第2タンク50から供給される第2水素ガス中の水素を用いて、メタンを製造する。
図4に示す例では、メタン化反応装置300によって製造されたメタンは、燃焼器等420に供給される。メタン化反応装置300によって製造されたメタンは、他の用途に用いられてもよい。
【0063】
メタン化反応装置300が備える二酸化炭素回収部330は、吸着材の特性を継続的に担保するためには、比較的低水分量の水素ガスを用いる必要がある。例えば、吸着材として、ゼオライトを用いる場合、大気圧露点-15℃程度(0.1%程度)の水素ガスが必要である。一方、メタン化反応装置300が備えるメタン化反応部340は、水素ガスの水分量に対する要求仕様がない。メタン化反応では水が生成されるため、メタン化反応部340は、水に対する耐性を持った材料で構成されているためである。そのため、水電解用除湿システム100と組み合わせてメタン製造システム600を構成することにより、水電解システム200で生成された水素ガスを、無駄を抑制して利用することができる。換言すると、水電解システム200で生成された水素ガスの利用率を向上させることができる。
【0064】
また、メタン化反応装置300は、例えば、燃料電池自動車向けの水素に比べて、水分量が多い水素でも使用することが可能である。そのため、簡易な構成であり、さらには、消費電力を低減する制御が可能である水電解用除湿システム100と共にメタン製造システム600を構成することにより、メタン製造システム600のシステム構成を簡易にして低廉化することができ、また、メタン製造システム600の消費電力を低減することができる。
【0065】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0066】
・上記実施形態において、水電解槽210として、PEM型水電解槽を例示したが、水電解槽の種類は、上記実施形態に限定されない。例えば、アルカリ水電解槽、高温水蒸気電解槽等を用いてもよい。PEM型水電解槽の場合は、生成される水素ガスの含水量が高く、動作温度も高いため、水素ガスに含まれる水蒸気量が多く、水蒸気の分離が問題となることが多いため、水電解用除湿システム100を用いるのが好適である。
【0067】
・上記実施形態において、電源500から水電解電力制御部220を介して電力制御部20に電力が供給される例を示したが、これに限定されない。例えば、電源500から、直接、電力制御部20に対して電力が供給されてもよい。また、水電解槽210に電力を供給する電源と異なる他の電源から、水電解用除湿システム100の除湿部10に対して電力を供給する構成にしてもよい。
【0068】
・上記実施形態において、電力制御部20が水電解電力制御部220からの電力供給が無いときに、冷却部12への電力供給をしない例を示したが、これに限定されない。例えば、水電解用除湿システム100が、水電解電力制御部220から水電解槽210への電力供給を検出する電力センサを備え、電力制御部20が電力センサからの検出信号を用いて、水電解電力制御部220から水電解槽210への電力供給が無いときに、電力制御部20が冷却部12への電力供給をしないように制御してもよい。
【0069】
・上記実施形態において、水分量(含水量)が所定の閾値以下の第2水素ガスを貯留する第1タンク40と、水分量(含水量)が所定の閾値より大きい第2水素ガスを貯留する第2タンク50とを、それぞれ、1つずつ備える例を示したが、それぞれ、1つ以上ずつ備えてもよい。第1タンク40の数と、第2タンク50の数は、同じでもよく、異なってもよい。
【0070】
・上記実施形態において、第1タンク40と第2タンク50とを備え、水分量に応じて第2水素ガスの貯留先を切替える構成を例示したが、第2タンク50を備えない構成にしてもよい。例えば、水分量が所定の閾値より大きい第2水素ガスを、除湿部10と異なる除湿部に導入する構成にしてもよい。このようにしても、水分量が所定の閾値以下の第2水素ガスを提供することができる。
【0071】
・上記実施形態において、第2水素ガスの水分量を2種類に分けてタンクに貯留する例を示したが、3種類以上に分けてもよい。
【0072】
・前記第1タンクが満杯の間、前記冷却部への供給電力を、前記第1タンクが満杯になる前より低減させてもよい。このようにしても、水電解用除湿システム100への供給電力を低減させることができる。
【0073】
・上記実施形態において、第1タンク40が満杯の間、第2水素ガスの水分量によらず、第2水素ガスを第2タンク50に流入させる例を示したが、第1タンク40が満杯の間も、第2水素ガスの水分量が閾値Thより大きい場合に、第2タンク50に流入させてもよい。
【0074】
・上記実施形態の水電解用除湿システム100と、水電解システム200とを備える水素製造システムを構成してもよい。また、水電解用除湿システム100と、水電解システム200と、メタン化反応装置300と、を備えるメタン製造システムを構成してもよい。
【0075】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0076】
H…水分量
Th…閾値
10…除湿部
12…冷却部
14…気液分離部
20…電力制御部
30…水分量検出部
40…第1タンク
42、52…圧力センサ
50…第2タンク
60…切替部
70…貯留制御部
100…水電解用除湿システム
200…水電解システム
210…水電解槽
220…水電解電力制御部
230…気液分離器
300…メタン化反応装置
310…第1流量制御部
320…第2流量制御部
330…二酸化炭素回収部
340…メタン化反応部
420…燃焼器等
440…脱水器
460…加圧装置
500…電源
600…メタン製造システム