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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】歯切り工具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 15/28 20060101AFI20240423BHJP
   B23F 21/10 20060101ALI20240423BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B23P15/28 Z
B23F21/10
B23B27/14 A
B23B27/14 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020093040
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021107105
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2019239003
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 文昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 稔
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-066744(JP,U)
【文献】特開2005-118929(JP,A)
【文献】特開2000-005932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 15/28;
B23F 21/10;
B23B 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物に歯車の歯を創成する歯切り工具であって、
外周面に創成された複数の支持刃を有する環状の支持刃部と、
前記支持刃部の形成材料より硬質な材料を用いて形成され、前記支持刃部の一端側に同軸上に連結され且つ外周面に複数の前記支持刃の各々によって支持されるように創成された複数の切刃を有する環状の切刃部と、を備える歯切り工具の製造方法であって、
前記支持刃部の素材である支持刃用環状部材の外周面に複数の前記支持刃を創成することにより、前記支持刃部を形成する支持刃創成工程と、
前記支持刃部の一端側に、前記支持刃部の形成材料より硬質な材料を用いて形成された切刃用環状部材を接合する接合工程と、
前記切刃用環状部材の外周面に前記支持刃部に創成された複数の前記支持刃に対応する複数の前記切刃を創成することにより、前記切刃部を形成する切刃創成工程と、
を備える、歯切り工具の製造方法。
【請求項2】
工作物に歯車の歯を創成する歯切り工具であって、
外周面に創成された複数の支持刃を有する環状の支持刃部と、
前記支持刃部の形成材料より硬質な材料を用いて形成され、前記支持刃部の一端側に同軸上に連結され且つ外周面に複数の前記支持刃の各々によって支持されるように創成された複数の切刃を有する環状の切刃部と、を備える歯切り工具の製造方法であって、
前記支持刃部の素材である支持刃用環状部材と前記切刃部の素材である切刃用環状部材とを接合する接合工程と、
前記支持刃用環状部材の外周面に複数の前記支持刃を創成することにより前記支持刃部を形成すると共に、前記切刃用環状部材の外周面に複数の前記切刃を創成することにより前記切刃部を形成する創成工程と、
を備える、歯切り工具の製造方法。
【請求項3】
前記支持刃部の径方向にて外方となる前記支持刃の前逃げ面は、前記切刃部の径方向にて外方となる前記切刃の前逃げ面を仮想的に回転軸線方向に沿って延長した延長面よりも小径である、請求項1または2に記載の歯切り工具の製造方法
【請求項4】
前記支持刃部の回転軸線方向に沿って創成された前記支持刃の2面一対の側逃げ面の間の距離を表す幅の大きさは、前記切刃部の回転軸線方向に沿って創成された前記切刃の2面一対の側逃げ面を回転軸線方向に沿って仮想的に延長した2面一対の延長面の間の距離を表す幅の大きさよりも小さい、請求項1-3のうちの何れか一項に記載の歯切り工具の製造方法
【請求項5】
前記切刃部の回転軸線方向における厚みは、前記切刃の形状を再現する少なくとも1回の再研磨を可能とする厚み以上である、請求項1-のうちの何れか一項に記載の歯切り工具の製造方法
【請求項6】
前記支持刃部と前記切刃部とは、前記支持刃部及び前記切刃部の少なくとも一方が溶融して固化して接合された、請求項1-のうちの何れか一項に記載の歯切り工具の製造方法
【請求項7】
前記支持刃部と前記切刃部とは、互いに押圧した状態で擦り合わせて発生する摩擦熱によって、前記支持刃部及び前記切刃部の少なくとも一方が溶融して固化して接合された、請求項に記載の歯切り工具の製造方法
【請求項8】
更に、前記切刃のすくい面と、前記支持刃部及び前記切刃部の外周面とにクロムを含む層がコーティングにより形成された、請求項1-のうちの何れか一項に記載の歯切り工具の製造方法
【請求項9】
前記支持刃部と前記切刃部との接合面において、前記支持刃部と前記切刃部の少なくとも一方に突起が設けられ、
前記突起によって前記支持刃部と前記切刃部とが接合されている、請求項1-のうちの何れか一項に記載の歯切り工具の製造方法
【請求項10】
前記突起は、前記支持刃部と前記切刃部のうち接合相手に向かって先細に形成されている、請求項に記載の歯切り工具の製造方法
【請求項11】
前記歯切り工具は、スカイビング加工に用いられるスカイビングカッタである、請求項1-10のうちの何れか一項に記載の歯切り工具の製造方法
【請求項12】
前記支持刃部は、浸炭鋼を用いて形成され、
前記切刃部は、ハイス鋼又は超硬材を用いて形成された、請求項1-11のうちの何れか一項に記載の歯切り工具の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯切り工具製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コストの面から高速加工可能な歯車加工が望まれており、このような歯車加工の一つにスカイビング加工が知られている。スカイビング加工とは、歯切り工具の回転軸線と工作物の回転軸線とを傾斜させた状態(歯車加工における交差角を有する状態)とする。そして、歯切り工具及び工作物をそれぞれの回転軸線回りに同期回転させながら、歯切り工具を工作物の回転軸線方向に相対移動(パス)する加工である。
【0003】
スカイビング加工用の歯切り工具は、上述のパスを複数回行うが、全てのパスにおいて歯切り工具の刃の刃先が加工を行うため、刃先の摩耗量が多くなる。この場合、刃先の摩耗量が限界を超えたら歯切り工具を交換すれば良いが、一般に、歯切り工具は、全体が高価な硬質材を用いて形成される。このため、歯切り工具の交換を行う場合には、コストが高くなる。
【0004】
歯切り工具に部分的に発生する摩耗に対し、コストを抑えるために、例えば、下記特許文献1に開示された付加製造を用いて摩耗した刃先に肉盛りを行うことにより、ハイス鋼又は超硬材の使用量を低減することが考えられる。又、例えば、下記特許文献2に開示された蒸着による表面被覆を用いて、刃先の摩耗を低減することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-529455号公報
【文献】特開2016-221655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特にスカイビング加工用の歯切り工具においては、上述したように、一般に刃先以外の加工に直接的に寄与しない部分も高価な硬質材を用いて形成されている。これにより、刃の創成に伴って硬質材の一部を削り取るにも拘らず硬質材の使用量が多いために素材費が高くなり、又、刃先以外の部分も硬質材であるため刃の創成に伴う加工費も高くなる。従って、このような歯切り工具において、付加製造によって硬質材を肉盛りしたり、表面被覆によって摩耗を低減したりしても、歯切り工具の製造にかかるコストの低減効果は期待できない。
【0007】
本発明は、高価な硬質材の使用量を抑えて製造にかかるコストを低減することができる歯切り工具製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
対象の歯切り工具)
本発明に係る歯切り工具の製造方法の対象である歯切り工具は、工作物に歯車の歯を創成する歯切り工具であって、外周面に創成された複数の支持刃を有する環状の支持刃部と、支持刃部の形成材料より硬質な材料を用いて形成され、支持刃部の一端側に同軸上に連結され且つ外周面に複数の支持刃の各々によって支持されるように創成された複数の切刃を有する環状の切刃部とを備える。
【0009】
(歯切り工具の第一製造方法)
本発明に係る歯切り工具の製造方法は、支持刃部の素材である支持刃用環状部材の外周面に複数の支持刃を創成することにより、支持刃部を形成する支持刃創成工程と、支持刃部の一端側に、支持刃部の形成材料より硬質な材料を用いて形成された切刃用環状部材を接合する接合工程と、切刃用環状部材の外周面に支持刃部に創成された複数の支持刃に対応する複数の切刃を創成することにより、切刃部を形成する切刃創成工程とを備える。
【0010】
(歯切り工具の第二製造方法)
本発明に係る歯切り工具の製造方法は、支持刃部の素材である支持刃用環状部材と切刃部の素材である切刃用環状部材とを接合する接合工程と、支持刃用環状部材の外周面に複数の支持刃を創成することにより支持刃部を形成すると共に、切刃用環状部材の外周面に複数の切刃を創成することにより切刃部を形成する創成工程と、
【0011】
これらによれば、支持刃が創成される支持刃部を比較的安価な形成材料を用いて形成し、切刃が創成される切刃部のみを高価な硬質材を用いて形成することができる。従って、支持刃部及び切刃部の全体を高価な硬質材を用いて形成する場合と比べて、硬質材の使用量を低減することができるため、素材費や加工費等のコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第一例の歯切り工具を示す斜視図である。
図2図1の歯切り工具を回転軸線と直角な方向から見た一部断面図である。
図3】支持刃部及び切刃部の歯切り工具の径方向における大きさの違い(段差)を説明するための図である。
図4】支持刃部及び切刃部の歯切り工具の幅方向における大きさの違い(段差)を説明するための図である。
図5】歯切り工具の製造装置である研削装置の概略的な構成を示し、支持刃部の支持刃を創成加工する研削装置を示す図である。
図6】歯切り工具の製造装置である研削装置の概略的な構成を示し、切刃部の切刃を創成加工する研削装置を示す図である。
図7図1の歯切り工具の製造方法を示すフローチャートである。
図8A図1の歯切り工具の製造過程において支持刃部の支持刃の加工前の加工状態を示す一部断面図である。
図8B図1の歯切り工具の製造過程において支持刃部の支持刃を創成した加工状態を示す一部断面図である。
図8C図1の歯切り工具の製造過程において支持刃部に硬質材を用いて形成された環状部材を接合した加工状態を示す一部断面図である。
図8D図1の歯切り工具の製造過程において環状部材(切刃部)に切刃を創成した加工状態を示す一部断面図である。
図9A図8Bの製造過程において創成された支持刃の形状を説明するための図である。
図9B図8Dの製造過程において創成された切刃の形状を説明するための図である。
図10】第二例の歯切り工具の構成を説明するための一部断面図である。
図11】第三例の歯切り工具の構成を説明するための一部断面図である。
図12図11の歯切り工具の製造方法を示すフローチャートである。
図13A図11の歯切り工具の製造過程において支持刃用環状部材と切刃用環状部材との接合前の状態を示す一部断面図である。
図13B図11の歯切り工具の製造過程において支持刃用環状部材と切刃用環状部材との接合した加工状態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1.歯切り工具の適用対象)
対象の歯切り工具は、工作機械に装着され、工作物を機械加工、例えば、歯車を創成する切削加工や研削加工するための回転工具である。歯切り工具は、外接面の形状が円錐台形状又は円筒形状とすることができる。本例では、外接面の形状が円錐台形状の回転工具であるスカイビングカッタを例に挙げる。そして、本例においては、工作機械としてスカイビング加工によって工作物(歯車)を製造する歯車加工装置を例に挙げる。
【0014】
(2.第一例の歯切り工具の形状)
本例における歯切り工具10の形状について、図1及び図2を参照して説明する。歯切り工具10は、図1及び図2に示すように、支持刃部11と、切刃部12とを備える。支持刃部11と切刃部12とは、互いの境界面において、支持刃部11及び切刃部12の少なくとも一方が溶融して固化することにより、一体に接合(溶接)される。又、歯切り工具10は、支持刃部11に連結される工具本体13を備える。工具本体13は、本例においては、中空円筒形状に形成される。尚、工具本体13は、円柱状であっても良い。
【0015】
支持刃部11は、図1及び図2に示すように、円環状に形成され、工具本体13の一端側に同軸上に連結される。支持刃部11は、形成材料として比較的安価な浸炭鋼を用いて形成される。支持刃部11は、後述する製造過程を経ることによって外周面に創成された複数の支持刃11aを有している。尚、支持刃部11と工具本体13とは、ボルト14によって締結される。
【0016】
切刃部12は、支持刃部11に同軸上に接合(溶接)されることによって連結される。切刃部12の回転軸線Cの方向における厚みは、切刃12aの形状を再現する少なくとも1回の再研磨を可能とする厚みに設定される。例えば、切刃部12の厚みは、支持刃部11の回転軸線Cの方向における厚みよりも薄く、例えば、6mm以下、好ましくは、3~4mm程度に設定される。尚、切刃部12の厚みについては、歯切り工具10による加工後に行われる後述のすくい面12a1の再研磨回数に応じて、適宜設定することが可能である。
【0017】
切刃部12は、支持刃部11を形成する形成材料よりも硬質な材料により形成されている。例えば、切刃部12は、支持刃部11を形成する浸炭鋼とは異なり、浸炭鋼よりも硬質な硬質材であるハイス鋼又は超硬材を用いて形成される。切刃部12は、支持刃部11の支持刃11aの刃筋方向(刃溝方向に等しい)に連続的に創成された複数の切刃12aを有している。即ち、切刃部12の切刃12aは、支持刃部11の支持刃11aに対応して創成されており、支持刃11aによって回転軸線Cの方向において支持される。
【0018】
切刃部12の切刃12aは、図2に示すように、回転軸線Cの方向の端面に、回転軸線Cと直交する面に対してすくい角θを有するすくい面12a1を備える。つまり、すくい面12a1は、回転軸線Cを中心としたテーパ状に形成される。
【0019】
又、支持刃部11の支持刃11a及び切刃部12の切刃12aの外接面は、円錐台形状に形成される。つまり、複数の支持刃11a及び切刃12aの外周面は、切刃12aのすくい面12a1に対して前逃げ角αを有する前逃げ面11a1及び前逃げ面12a2となる。従って、切刃12aの刃先から刃筋方向(刃溝方向に等しい)にて支持刃11aに行くに従って、前逃げ面11a1及び前逃げ面12a2は回転軸線Cからの距離が徐々に小さくなっている。又、支持刃11aの前逃げ面11a1に連結され且つ回転軸線Cの方向に沿って延設される側面及び切刃12aの前逃げ面12a2に連結され且つ回転軸線Cの方向に沿って延設される側面は、各々、側逃げ面11a2及び側逃げ面12a3となる。
【0020】
ここで、図3に示すように、支持刃部11の径方向にて外方即ち外周面となる支持刃11aの前逃げ面11a1は、切刃部12の径方向にて外方即ち外周面となる切刃12aの前逃げ面12a2を仮想的に回転軸線Cの方向にて延長した延長面P1よりも小径となるように創成される。これにより、図3に示すように、支持刃11aの前逃げ面11a1と切刃12aの前逃げ面12a2との境界部分には径方向の段差D1が存在する。
【0021】
又、図4に示すように、支持刃部11の回転軸線Cの方向に沿って創成された支持刃11aの2面一対の側逃げ面11a2の間の距離を表す幅H1の大きさは、切刃部12の回転軸線Cの方向に沿って創成された切刃12aを回転軸線Cの方向に沿って仮想的に延長した2面一対の延長面P2の間の距離を表す幅H2よりも小さくなるように創成される。これにより、図4に示すように、支持刃11aの2面一対の側逃げ面11a2と切刃12aの2面一対の側逃げ面12a3との境界部分には幅方向の段差D2が存在する。
【0022】
ここで、支持刃11aの前逃げ面11a1と切刃12aの前逃げ面12a2とによって形成される段差D1の大きさは、歯切り工具10による加工状態や再研磨回数等に基づいて設定され、例えば、2mm以下、より好ましくは、0.5~1mm程度に設定される。同様に、支持刃11aの側逃げ面11a2と切刃12aの側逃げ面12a3とによって形成される段差D2の大きさも、歯切り工具10の加工状態や再研磨回数等に基づいて設定され、2mm以下、より好ましくは、0.5~1mm程度に設定される。
【0023】
又、支持刃部11の支持刃11a及び切刃部12の切刃12aは、回転軸線Cに対してねじれ角βを有している。但し、スカイビング加工においては、加工する歯車の歯のねじれ角と、切削加工における歯車と歯切り工具10との交差角に応じて、支持刃11a及び切刃12aのねじれ角βは適宜異なる。よって、支持刃11a及び切刃12aは、ねじれ角βを有しない場合(ねじれ角βが0度)も存在する。
【0024】
以上のように、浸炭鋼を用いて形成される支持刃部11と硬質材(ハイス鋼又は超硬材)を用いて形成される切刃部12とは別体で構成され、複数の支持刃11a及び複数の切刃12aは外周面に刃筋方向が連続的となるように創成される。このため、高価な超硬材を用いて創成される切刃12aは、歯切り工具10全体の一部とすることができる。
【0025】
従って、支持刃部11及び切刃部12の全体を高価な超硬材を用いて形成する場合と比べて、超硬材の使用量を低減することができるため、本例の歯切り工具10はコスト具体的には素材費を大幅に抑えることができる。又、歯切り工具10の切刃12aが寿命を迎えた場合、支持刃部11を再利用して切刃部12のみを交換することが可能である。これにより、歯切り工具10の維持費用を抑えることができ、ひいては、製造コストを抑えることができる。
【0026】
又、切刃12aのみを硬質材(ハイス鋼又は超硬材)を用いて創成することができる。このため、例えば、切刃12aを創成するために硬質材を切削する切削距離や硬質材を研削する研削距離を短くすることができる。これにより、切削加工に用いるカッタや研削加工に用いる砥石等の消耗を抑制して寿命を延ばすことが可能となり、ひいては、歯切り工具10のコスト具体的には加工費を抑えることができる。
【0027】
又、支持刃11aの前逃げ面11a1は切刃12aの前逃げ面12a2よりも小径、換言すれば、前逃げ面12a2が前逃げ面11a1よりも大径となるように切刃12aを創成することができる。加えて、支持刃11aの2面一対の側逃げ面11a2の間の幅H1は切刃12aの2面一対の側逃げ面12a3の間の幅H2よりも小さい、換言すれば、幅方向において支持刃11aよりも大きくなるように切刃12aを創成することができる。
【0028】
これにより、切刃12aを創成加工する場合や歯切り工具10の使用状態(加工状態)に応じて再研磨を行う場合には、砥石を用いて、支持刃11aを研磨することなく切刃12aのみを研磨することができる。従って、研磨距離を短くすることができ、短時間で切刃12aの再研磨が可能となる。その結果、歯切り工具10の維持費用を抑えることができる。又、再研磨においては支持刃11aが共研磨されることを防止することができるため、切刃部12のみを交換することによって支持刃部11を再利用することができる。従って、歯切り工具10の維持費用を抑えることができる。
【0029】
(3.第一例の歯切り工具10の製造装置)
上述した歯切り工具10を製造する製造装置は、円環状の支持刃部11において工具本体13と連結される小径部11b及び支持刃11aの分だけ大径の大径部11cを加工する装置として、旋盤やマシニングセンタ等の切削装置が用いられる。尚、切削装置については詳細な説明を省略する。又、支持刃部11の支持刃11a及び切刃部12の切刃12aを加工する装置として、工具研削盤やアンギュラ研削盤等の研削装置が用いられる。以下、図5及び図6を参照して製造装置としての研削装置60を説明すると共に、支持刃部11の支持刃11a及び切刃部12の切刃12aの研削及び接合を行う場合について説明する。
【0030】
研削装置60は、図示しないベッド上において、研削対象である歯切り工具10を、歯切り工具10の回転軸線Cの回り(Θc)に回転可能に支持する主軸ユニット61を備える。更に、研削装置60は、砥石車63及び砥石車64を、砥石車63,64の回転軸線Tの回り(Θt)に回転可能に支持する砥石台62を備える。
【0031】
砥石台62は、主軸ユニット61に対して直交3軸方向に相対移動可能である。尚、主軸ユニット61と砥石台62とは、相対移動可能であれば良く、主軸ユニット61が移動可能な構成とすることも可能である。又、砥石台62は、主軸ユニット61に対して歯切り工具10の研削加工における交差角ηを調整可能(歯切り工具10の回転軸線Cと砥石車63,64の回転軸線Tとを直交させた状態から交差角ηだけ傾斜させる調整が可能)である。砥石台62と主軸ユニット61との交差角ηは、歯切り工具10のねじれ角βに合わせて調整される。本例においては、ねじれ角βと交差角ηとは同一であるとする。
【0032】
砥石車63,64は、回転軸線Tの回りの円盤状に形成される。砥石車63は、支持刃11aを研削するためのものである。砥石車64は、砥石車63よりも厚みが薄く、切刃12aを研削するためのものである。
【0033】
研削装置60においては、主軸ユニット61及び砥石台62が位置決めされることにより、歯切り工具10の回転軸線Cと砥石車63,64の回転軸線Tとが交差角ηを有する状態に位置決めされる。この状態で、歯切り工具10が回転軸線Cの回り(Θc)に回転される。そして、砥石車63,64は、回転軸線Tの回り(Θt)に回転される。更に、砥石車63,64は、歯切り工具10の回転に同期して、歯切り工具10の回転軸線Cの方向(Mc)、歯切り工具10の径方向(Mr)、及び、歯切り工具10の回転接線方向(並進方向)(Mm)に移動する。このようにして、歯切り工具10の支持刃11a及び切刃12aの側逃げ面11a2及び側逃げ面12a3が研削される。
【0034】
この研削では、砥石車63,64は、歯切り工具10(より詳しくは、支持刃部11及び切刃部12)に創成する刃溝に沿って回転しながら往復移動しても良い。又、砥石車63,64は、歯切り工具10の刃溝に対して隣接する支持刃11a又は切刃12aの両側を同時に研削するが、刃溝の片側を研削しても良い。更に、砥石車63,64は、歯切り工具10の回転方向が変わっても、歯切り工具10の回転方向に合わせて歯切り工具10の刃溝を研削できるように追従しても良い。
【0035】
(4.第一例の歯切り工具10の製造方法)
次に、歯切り工具10の製造方法について図7図8A図8D図9A図9Bを参照して説明する。先ず、図8Aに示すように、円環状の支持刃部11の小径部11b及び大径部11cを切削装置を用いて加工した支持刃用環状部材A1(支持刃部11の素材)を準備する。支持刃用環状部材A1は、支持刃部11の大径部11cの端面においてボルト14を挿通する4つの貫通孔の加工も施されている。尚、上述したように、支持刃部11は円筒形状の工具本体13とボルト14により連結される。このため、工具本体13の端面には、支持刃部11の貫通孔を挿通したボルト14と螺合する雌ねじが加工されている。
【0036】
そして、図8Bに示すように、支持刃用環状部材A1の外周に支持刃11aを創成することによって、支持刃部11が形成される(図7のS1:支持刃創成工程)。この場合、図示を省略するが、支持刃部11の小径部11bには工具本体13が連結されて、締結された工具本体13と支持刃部11を研削装置60に取り付ける(図5を参照)。尚、支持刃部11と工具本体13とは、例えば、シュリンクディスク等を用いることにより、同軸の状態を維持してボルト締結される。
【0037】
ここで、支持刃部11に支持刃11aを創成する場合、図5に示すように、研削装置60の砥石台62には、砥石車64に比べて厚みの大きい砥石車63が取り付けられる。これにより、図9Aに示すように、加工された支持刃11aの互いに対向する2面一対の側逃げ面11a2の幅H1は、後述するように加工される切刃12aの2面一対の側逃げ面12a3の幅H2よりも小さくなる。
【0038】
支持刃部11に支持刃11aが創成されると、図8Cに示すように、切刃部12を創成するための硬質材(ハイス鋼又は超硬材)から形成された切刃用環状部材A2を、支持刃部11の一端側に、例えば、摩擦圧接によって接合する(図7のS2:接合工程)。摩擦圧接は、支持刃部11と切刃用環状部材A2(切刃部12の素材)とを互いに押圧した状態で擦り合わせて発生する摩擦熱によって支持刃部11及び切刃用環状部材A2の少なくとも一方が溶融して固化し、支持刃部11と切刃用環状部材A2とを接合する接合方法である。尚、この場合、支持刃部11と切刃用環状部材A2とが同軸となるように接合される。
【0039】
ここで、切刃用環状部材A2の外径(直径)の大きさは、支持刃部11の外径(直径)の大きさに比べて5mm以下、より好ましくは3~4mm程度大きくなるように設定される。又、切刃用環状部材A2の回転軸線Cの方向における厚みは、例えば、6mm以下、好ましくは、3~4mm程度に設定される。尚、切刃用環状部材A2の外径(直径)の大きさ及び厚みについては、上述したように、歯切り工具10が工作物の加工した後の再研磨回数等に応じて設定することが可能である。
【0040】
そして、図8Dに示すように、切刃用環状部材A2の外周に切刃12aを創成することによって、切刃部12が形成される(図7のS3:切刃創成工程)。この場合においても、支持刃部11の他端側には工具本体13が連結されており、支持刃部11の一端側には切刃用環状部材A2(切刃部12の素材)が摩擦圧接によって一体に接合されている。これにより、例えば、工具本体13を研削装置60に取り付け、先ず、切刃部12の外周に切刃12aを荒加工する。そして、荒加工が完了した後、研削装置60を用いて、荒加工された切刃12aを仕上げ加工する。
【0041】
ここで、切刃用環状部材A2に切刃12aを創成する場合、図6に示すように、研削装置60の砥石台62には、砥石車63に比べて厚みの小さい(薄い)砥石車64が取り付けられる。これにより、砥石車64が切刃用環状部材A2を研削することにより創成する切刃12aの刃溝の幅は、砥石車63が支持刃部11を研削することにより創成する支持刃11aの刃溝の幅よりも狭くなる。換言すれば、図9Bに示すように、最終的に加工された切刃12aの2面一対の側逃げ面12a3の幅H2は、加工された支持刃11aの2面一対の側逃げ面11a2の幅H1よりも大きくなる。
【0042】
又、切刃用環状部材A2の外径は、支持刃部11の外径よりも大きく設定されている。これにより、図9Bに示すように、切刃部12の最外径を形成する切刃12aの前逃げ面12a2は、支持刃部11の最外径を形成する支持刃11aの前逃げ面11a1よりも大径になる。即ち、図9Bに示すように、切刃12aは、支持刃11aに対して相似的に大きくなるように加工される。
【0043】
このように、切刃12aが相似的に支持刃11aよりも大きな寸法を有することにより、例えば、砥石車64が切刃12aを加工する場合、砥石車64は相似的に寸法が小さい支持刃11aに接触することがない。即ち、砥石車64は、切刃用環状部材A2のみを研削することにより、換言すれば、材質の異なる支持刃11aを共研磨することなく、切刃12aを加工することができる。
【0044】
ところで、歯切り工具10を用いて歯車を加工する場合、上述したように、切刃部12における切刃12aの刃先が加工するため、切刃12aの刃先の摩耗量が多くなる。このため、所定の加工数(例えば、1加工毎等)が経過するごとに、切刃12aは、再研磨される(再研磨工程)。そして、本例の歯切り工具10においては、再研磨を行う際には、切刃12aのみを再研磨することができる。
【0045】
上述したように、切刃12aの回転軸線Cの方向における厚みは、例えば、6mm以下、好ましくは、3~4mm程度に設定される。又、切刃12aの前逃げ面12a2と支持刃11aの前逃げ面11a1との間には、2mm以下、より好ましくは、0.5~1mm程度の段差D1となるように支持刃11aが小径に創成される。更に、切刃12aの2面一対の側逃げ面12a3と支持刃11aの2面一対の側逃げ面11a2との間には、2mm以下、より好ましくは、0.5~1mm程度の段差D2となるように支持刃11aの幅H1が小さく創成される。
【0046】
これにより、例えば、切刃12aのすくい面12a1を再研磨する場合には、切刃12aが加工で許容される厚みとなるまで複数回再研磨することができる。従って、すくい面12a1を再研磨する場合には、切刃12aのみが研磨されるため、支持刃11aが研磨されることがなく、歯切り工具10を交換する必要がない。
【0047】
又、必要に応じて、切刃12aの前逃げ面12a2及び側逃げ面12a3を再研磨する場合には、段差D1及び段差D2が設けられているため、段差D1及び段差D2が許容される厚みとなるまで複数回再研磨することができる。この場合、支持刃11aは切刃12aに対して相似的に小さく創成されている。このため、大径の前逃げ面12a2及び幅広の側逃げ面12a3を再研磨する際には、砥石が小径の前逃げ面11a1及び幅狭の側逃げ面11a2を研磨することが防止される。即ち、切刃12aの前逃げ面12a2及び側逃げ面12a3を再研磨する場合には、切刃12aのみが研磨されるため、支持刃11aが共研磨されることがないため、歯切り工具10を交換する必要がない。
【0048】
更に、支持刃11aは、切刃12aと共に共研磨されないため、支持刃部11を再利用することができる。このため、例えば、摩耗の進んだ古い切刃部12を切除して新しい切刃用環状部材A2を再利用する支持刃部11に接合することにより、切刃12aを創成することができる。これにより、切刃部12のみを新たに交換することにより、歯切り工具10を廃棄することなく使用することができる。
【0049】
以上のように、本例の製造方法によれば、安価な浸炭鋼を用いて形成された支持刃部11に対して浸炭鋼よりも硬質且つ高価なハイス鋼又は超硬材を用いて形成された切刃用環状部材A2を摩擦圧接により一体化した後、複数の切刃12aを有する切刃部12を創成して歯切り工具10を製造することができる。これにより、高価な硬質材即ちハイス鋼又は超硬材を用いる量を低減することができ、素材費を大幅に削減することができる。
【0050】
又、支持刃11aに比べて切刃12aを相似的に大きく創成することができる。これにより、例えば、所定の加工数を経過した後に行う再研磨時において、切刃12aのみを再研磨することができる。従って、再研磨する領域を少なくする、換言すれば、研磨距離を短くすることができるため、歯切り工具10の加工費を削減することができる。又、切刃12aのみを再研磨するため、切刃12aの刃先精度も向上することができる。
【0051】
(5.第二例の歯切り工具)
上述したように形成された支持刃部11及び切刃部12の外周面には、図10にて太実線により示すように、クロムを含むコーティングを行うことによってコーティング層15を形成することも可能である。具体的に、コーティング層15は、支持刃11aの前逃げ面11a1及び側逃げ面11a2(歯溝を含む)と、切刃12aのすくい面12a1、前逃げ面12a2及び側逃げ面12a3(歯溝を含む)に形成される。
【0052】
コーティング層15は、例えば、PVD(Physical Vapor Deposition)法(物理蒸着法)やCVD(Chemical Vapor Deposition)法(化学蒸着法)等を用いて形成することができる。PVD法やCVD法を用いて形成されるコーティング層15の膜厚は、2~15μm、好ましくは、3~12μm程度に設定される。
【0053】
このように、歯切り工具10の支持刃11a及び切刃12aにクロムを含むコーティング層15を形成することにより、歯車加工時における潤滑性を向上させることができ、その結果、動摩擦が低減されて切削抵抗を低減することができる。又、歯切り工具10の支持刃11a及び切刃12aにコーティング層15を形成することにより、歯車加工時に発生する加工熱に対する耐熱性を向上させることができ、その結果、支持刃11a及び切刃12aを加工熱から良好に保護することができる。
【0054】
(6.上記例の変形例)
上述においては、硬質材(ハイス鋼又は超硬材)を用いて形成された切刃用環状部材A2を摩擦圧接によって支持刃部11に一体に接合(溶接)し、その後、研削装置60を用いて複数の切刃12aを創成するようにした。支持刃部11と切刃部12との接合(溶接)については、摩擦圧接に限定されるものではなく、例えば、付加製造(レーザクラッド等)により支持刃部11の先端側に硬質材(ハイス鋼又は超硬材)の肉盛りを行い、その後、研削装置60の砥石車64を用いて切刃12aを創成することも可能である。この場合、付加製造としては、支持刃部11に対する肉盛り加工が容易な指向性エネルギー堆積(Directed Energy Deposition)方式のうち、例えば、LMD(Laser Metal Deposition)を用いることができる。
【0055】
又、上述した本例及び別例においては、歯切り工具10の外接面が円錐台形状であるとした。歯切り工具10の外接面の形状については、円錐台形状に限定されるものではなく、例えば、円筒形状であっても良い。
【0056】
(7.第三例の歯切り工具の形状)
本例の歯切り工具110の形状について、図12を参照して説明する。歯切り工具110は、第一例の歯切り工具10に対して、以下に説明する点以外は同一であるため、同一構成部分についての説明は省略する。
【0057】
本例においては、切刃部12の切刃12aの前逃げ面12a2の延長面に、支持刃部11の支持刃11aの前逃げ面11a1が位置する。また、切刃部12の切刃12aの側逃げ面12a3の延長面に、支持刃部11の支持刃11aの側逃げ面11a2が位置する。
【0058】
ただし、第一例の歯切り工具10と同様に、支持刃部11の支持刃11aの前逃げ面11a1は、切刃部12の切刃12aの前逃げ面12a2の延長面よりも小径となるようにしても良い。また、支持刃部11の回転軸線Cの方向に沿って創成された支持刃11aの2面一対の側逃げ面11a2の間の距離を表す幅H1の大きさは、切刃部12の回転軸線Cの方向に沿って創成された切刃12aを回転軸線Cの方向に沿って仮想的に延長した2面一対の延長面P2の間の距離を表す幅H2よりも小さくなるようにしても良い。
【0059】
また、歯切り工具110を構成する支持刃部11には、支持刃部11と切刃部12との接合面に、突起11dが設けられている。突起11dの摩擦圧接によって、支持刃部11と切刃部12とが接合されている。
【0060】
突起11dは、支持刃部11の大径部11cのうち切刃部12と対向する面の一部に設けられている。具体的には、突起11dは、大径部11cのうち切刃部12と対向する面のうち、径方向における中間部分に設けられている。ただし、突起11dは、径方向における内側部分のみに設けても良いし、径方向における外側部分のみに設けても良い。更に、突起11dは、径方向において、1か所としても良いし、複数箇所としても良い。
【0061】
また、突起11dは、径方向において、支持刃11aが形成される範囲と、支持刃11aよりも径方向内側の範囲とに跨って形成される。これにより、支持刃11aが、切刃12aを支持する支持力を発揮することができる。ただし、突起11dは、径方向において、支持刃11aよりも径方向内側の範囲のみに形成されるようにしても良い。この場合であっても、突起11dの溶融バリによって、支持刃11aと切刃12aとの間の少なくとも一部が、埋められた状態とすることは可能である。
【0062】
更に、突起11dは、周方向に連続した環状に形成されている。この他に、突起11dは、周方向に断続的に複数箇所形成されるようにしても良い。
【0063】
また、突起11dは、接合相手である切刃部12に向かって先細に形成されている。特に、突起11dは、軸方向断面において先細に形成されている。例えば、突起11dは、軸方向断面において、先細の台形状、先細の三角形状等に形成される。また、突起11dが周方向に断続的に形成される場合には、周方向の断面において先細に形成されるようにしても良い。
【0064】
ここで、突起11dが摩擦圧接により切刃部12に接合されており、支持刃部11の大径部11cの軸方向端面における突起11dの周囲の部分は、切刃部12に接合されていない。図12においては、突起11dの周囲の部分と、切刃部12との間には、僅かに隙間を有する。ただし、突起11dの溶融バリによって、支持刃部11の大径部11cの軸方向端面と切刃部12の軸方向端面との間が埋められるようにすることも可能である。
【0065】
(8.第三例の歯切り工具の製造方法)
歯切り工具110の製造方法について、図12図13A図13Bを参照して説明する。図13Aに示すように、支持刃用環状部材A1(支持刃部11の素材)及び切刃用環状部材A2(切刃部12の素材)を準備する。
【0066】
図13Aに示すように、支持刃用環状部材A1は、溶融前の突起11dを有する。突起11dは、上述したように、支持刃部11の大径部11cの軸方向端面の一部に設けられている。具体的には、突起11dは、大径部11cの軸方向端面のうち、径方向における中間部分に設けられている。また、突起11dは、先細、例えば台形状に形成されている。
【0067】
そして、図13Bに示すように、支持刃用環状部材A1と切刃用環状部材A2とを、摩擦圧接により接合する(図12のS11:接合工程)。支持刃用環状部材A1の突起11dと切刃用環状部材A2とが、摩擦圧接により溶融し固化されることによって、接合される。
【0068】
ここで、突起11dと切刃部12とが対向する面積は、支持刃部11の大径部11cの軸方向端面と切刃部12の軸方向端面とが対向する面積に比べて小さくなる。従って、摩擦圧接の際の押付力を小さくしたとしても、必要な面圧を確保できる。つまり、摩擦圧接の設備を小型化することができる。
【0069】
そして、支持刃用環状部材A1の外周面に複数の支持刃11aを創成すると共に、切刃用環状部材A2の外周面に複数の切刃12aを創成する(図12のS12:創成工程)。このようにして、図11に示すように、支持刃用環状部材A1に支持刃11aが創成されることによって支持刃部11が形成され、且つ、切刃用環状部材A2に切刃12aが創成されることによって切刃部12が形成される。
【0070】
本例では、支持刃11aと切刃12aとは、同時に加工される。従って、支持刃11aは、切刃12aの延長面上に位置する。ただし、第一例のように、支持刃11aが切刃12aの延長面上に位置しないようにしてもよい。この場合、支持刃11aの創成と切刃12aの創成とは、第一例と同様に別工程にて行われる。
【0071】
(9.第三例の変形例)
第三例の歯切り工具110は、突起11dを支持刃部11に設けることとした。この他に、支持刃部11と切刃部12との接合面において、切刃部12に設けるようにしても良い。更に、支持刃部11と切刃部12との接合面において、支持刃部11及び切刃部12に突起を設け、それぞれの突起同士が摩擦圧接により接合されるようにしても良い。なお、支持刃部11の材料の方が切刃部12の材料よりも溶融しやすいため、支持刃部11に突起11dを設けるのが好ましい。
【符号の説明】
【0072】
10,110…歯切り工具、11…支持刃部、11a…支持刃、11a1…前逃げ面、11a2…側逃げ面、11b…小径部、11c…大径部、11d…突起、12…切刃部、12a…切刃、12a1…すくい面、12a2…前逃げ面、12a3…側逃げ面、13…工具本体、14…ボルト、15…コーティング層、60…研削装置、61…主軸ユニット、62…砥石台、63,64…砥石車、C…回転軸線、D1…段差、D2…段差、H1…幅、H2…幅、P1…延長面、P2…延長面、A1…支持刃用環状部材、A2…切刃用環状部材、T…回転軸線、α…前逃げ角、β…ねじれ角、η…交差角、θ…すくい角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B