IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通株式会社の特許一覧

特許7476673異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置
<>
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図1
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図2
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図3
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図4
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図5
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図6
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図7
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図8
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図9
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図10
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図11
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図12
  • 特許-異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240423BHJP
   B63B 79/20 20200101ALI20240423BHJP
   B63B 79/40 20200101ALI20240423BHJP
【FI】
G05B23/02 R
G05B23/02 V
B63B79/20
B63B79/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020095066
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021189803
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 顕一郎
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-018385(JP,A)
【文献】特開2018-132786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 -23/02
B63B 1/00 -85/00
B63J 1/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
第1の時系列データから第1のデータを選択し、
前記第1のデータが位置する前記第1の時系列データの波形形状に基づいて、前記第1のデータのクラス分類を実行し、
第2の時系列データから前記第1のデータのクラスと同じクラスに属する第2のデータを特定し、
前記第1のデータと前記第2のデータとに基づき、前記第1の時系列データから異常点を検出する処理を実行させ
前記選択する処理は、センサデータの入力に応じて機械学習モデルが予測した前記第1の時系列データから前記第1のデータを選択し、
前記特定する処理は、前記機械学習モデルが予測目標とした前記第2の時系列データから前記第2のデータを特定することを特徴とする異常点検出プログラム。
【請求項2】
前記実行する処理は、前記第1のデータが前記第1の時系列データの波形形状におけるプラス側のピーク、マイナス側のピーク、上昇途中、または、下降途中のいずれに位置するかにより、前記第1のデータのクラス分類を実行することを特徴とする請求項1に記載の異常点検出プログラム。
【請求項3】
前記特定する処理は、分類された前記第1のデータのクラスと同じクラスに属する複数の前記第2のデータを、前記第1の時系列データと同じ時間軸で表した前記第2の時系列データから特定し、
前記検出する処理は、前記第1のデータと前記複数の第2のデータそれぞれとの比較により、前記第1のデータが異常点か否かを判定することで、前記第1の時系列データから異常点を検出することを特徴とする請求項2に記載の異常点検出プログラム。
【請求項4】
前記検出する処理は、前記第1のデータと前記複数の第2のデータそれぞれとの距離を算出し、最短の距離が閾値以上である場合に、前記第1のデータを異常点と検出することを特徴とする請求項3に記載の異常点検出プログラム。
【請求項5】
前記特定する処理は、前記第1の時系列データと同じ時間軸で表した前記第2の時系列データから、前記第1のデータの時刻を基準とする所定範囲内に位置する前記第2のデータを特定することを特徴とする請求項2に記載の異常点検出プログラム。
【請求項6】
前記検出する処理は、前記第1のデータの時刻を基準とする所定範囲内に位置する前記第2のデータが存在しない場合に、前記第1のデータを異常点と検出することを特徴とする請求項5に記載の異常点検出プログラム。
【請求項7】
前記第1の時系列データに含まれる各第1のデータを時系列の順で順次選択し、
順次選択される前記各第1のデータについて、前記第2のデータを特定し、
前記各第1のデータの時刻と、前記各第1のデータに対して特定された各第2のデータの時刻とに基づき、前記第1の時系列データと前記第2の時系列データとの時刻差分を算出する処理を、前記コンピュータにさらに実行させ、
前記特定する処理は、前記時刻差分を算出後、前記第1のデータと同じクラスに属する前記第2のデータを特定する際に、前記第1のデータの時刻から前記時刻差分ずらした調整後の時刻を基準として、前記第2の時系列データにおける前記第2のデータの探索範囲を決定することを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の異常点検出プログラム。
【請求項8】
前記選択する処理は、前記第1の時系列データに含まれる各第1のデータを時系列の順で順次選択し、
前記実行する処理は、前記各第1のデータについて、前記クラス分類を実行し、
前記特定する処理は、前記各第1のデータについて、同じクラスに属する前記第2のデータを特定し、
前記検出する処理は、前記各第1のデータについて、前記第2のデータとの比較により、前記各第1のデータが異常点か否かを判定することにより、前記第1の時系列データから異常点を検出することを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の異常点検出プログラム。
【請求項9】
コンピュータが、
第1の時系列データから第1のデータを選択し、
前記第1のデータが位置する前記第1の時系列データの波形形状に基づいて、前記第1のデータのクラス分類を実行し、
第2の時系列データから前記第1のデータのクラスと同じクラスに属する第2のデータを特定し、
前記第1のデータと前記第2のデータとに基づき、前記第1の時系列データから異常点を検出する処理を実行し、
前記選択する処理は、センサデータの入力に応じて機械学習モデルが予測した前記第1の時系列データから前記第1のデータを選択し、
前記特定する処理は、前記機械学習モデルが予測目標とした前記第2の時系列データから前記第2のデータを特定することを特徴とする異常点検出方法。
【請求項10】
第1の時系列データから第1のデータを選択する選択部と、
前記第1のデータが位置する前記第1の時系列データの波形形状に基づいて、前記第1のデータのクラス分類を実行する分類実行部と、
第2の時系列データから前記第1のデータのクラスと同じクラスに属する第2のデータを特定する特定部と、
前記第1のデータと前記第2のデータとに基づき、前記第1の時系列データから異常点を検出する検出部と、を有し、
前記選択部は、センサデータの入力に応じて機械学習モデルが予測した前記第1の時系列データから前記第1のデータを選択し、
前記特定部は、前記機械学習モデルが予測目標とした前記第2の時系列データから前記第2のデータを特定することを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサデータの収集コストの低下により、時系列データの活用が活発化している。例えば、船舶の航行データから燃料消費予測や船舶の故障検知などが実行されている。このとき、分析対象の船舶などに内蔵されたセンサの出力値にはノイズが載っている場合が多く、正しくデータ解析を実行するためには、異常なデータを検出して事前にノイズを適切に除去することが要求される。
【0003】
一般的な異常検出の手法としては、自己回帰モデル(ARモデル)を用いた変化点検知が知られている。具体的には、緯度、経度、速度などのセンサデータをRNN(Recurrent Neural Network)に入力して航行データ(予測波形)を予測し、予測された航行データと実データ(実波形)との差分により異常点を検出することが行われている。一般的に予測波形は、ある程度の精度が期待できるが、実波形と完全に一致するとまではいかず、ある程度の誤差が見込まれることから、予測波形と実波形とを適切に比較し、異常点の検出精度を向上させる手法が知られている。
【0004】
例えば、異常点の検出精度を向上させる手法として、動的時間伸縮法(DTM(Dynamic Time Warping)法)が知られている。DTM法は、2つの波形において類似性を検証するとき、A波形の任意のa点について、a点と同時刻近辺のB波形の複数個のb点の距離をそれぞれ測定し、その値から類似度を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-070930号公報
【文献】国際公開第2011/036809号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記DTM法では、予測波形の任意の点とその周辺に位置する実波形のすべての点との距離を計算して総合的に類似性を判定するので、非常に計算コストが多くなり、処理が長時間化する。
【0007】
例えば、DTM法は、時間または早さの異なる2つの信号シーケンスの間の類似度を測る手法である。例えば、時系列データXと時系列データYがある場合に、それぞれのデータ長がN、Mであるとする。このとき、N×Mの大きさのDTW距離を格納した類似度行列DTWを生成する。そして、DTM法によりDTW[0][0]からDTW[N-1][M-1]までのコストを順番に求めていき、DTW[N-1][M-1]のコストが最小となるパスを求める。そして、求めた行列のDTW[N-1][M-1]の値がXとYの距離となる。
【0008】
このように、時系列データXと時系列データYがあり、それぞれのデータ長をNとMとした場合、N×M回の計算が実行されるので、処理時間が長くなり、特に大規模問題への適用は困難である。なお、計算コストを下げるために、予測波形と比較する実波形の比較範囲を狭めることも考えられるが、局所的な範囲でしか類似性を検証できなくなくなり、異常点の検出精度が低下する。
【0009】
一つの側面では、異常点の検出処理を高速化することができる異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の案では、異常点検出プログラムは、コンピュータに、第1の時系列データから第1のデータを選択する処理を実行させる。異常点検出プログラムは、コンピュータに、前記第1のデータが位置する前記第1の時系列データの波形形状に基づいて、前記第1のデータのクラス分類を実行する処理を実行させる。異常点検出プログラムは、コンピュータに、第2の時系列データから前記第1のデータのクラスと同じクラスに属する第2のデータを特定する処理を実行させる。異常点検出プログラムは、コンピュータに、前記第1のデータと前記第2のデータとに基づき、前記第1の時系列データから異常点を検出する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
一実施形態によれば、異常点の検出処理を高速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1にかかる情報処理装置を説明する図である。
図2図2は、比較点の検出の問題点を説明する図である。
図3図3は、実施例1にかかる情報処理装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
図4図4は、クラス分類を説明する図である。
図5図5は、比較点の検出を説明する図である。
図6図6は、比較パターン1を説明する図である。
図7図7は、比較パターン2を説明する図である。
図8図8は、比較パターン3を説明する図である。
図9図9は、異常点検出処理の流れを示すフローチャートである。
図10図10は、効果を説明する図である。
図11図11は、精度劣化の可能性を説明する図である。
図12図12は、実施例2にかかる比較点の探索を説明する図である。
図13図13は、ハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願の開示する異常点検出プログラム、異常点検出方法および情報処理装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、各実施例は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【実施例1】
【0014】
[情報処理装置の説明]
図1は、実施例1にかかる情報処理装置10を説明する図である。図1に示す情報処理装置10は、ARモデルにより生成された第1の時系列データと、実データである第2の時系列データの2つの時系列データとを比較する際に、第1の時系列データの各データ(各点)が異常点か否かを判定するときに比較対象とするデータの探索を効率的に実行することで、異常点の検出処理を高速化するコンピュータ装置の一例である。なお、本実施例では、時系列データとして航行データを例にして説明する。
【0015】
ここで、参考技術として、一般的に利用される異常点検出の問題点を説明する。図2は、比較点の検出の問題点を説明する図である。一般的に、時間軸を同じとする2つの時系列データを比較する際、各時系列データに属するデータを比較点として探索し、比較点の類似度や距離などにより、異常点の検出が実行される。この比較点を検出する際、図2の(a)に示すように、予測波形データの任意点Aと同じ時刻の比較点を特定する手法や、図2の(b)に示すように、予測波形データの任意点Aからの距離が最短である点を比較点と特定する手法が利用される。しかし、時間軸や距離による比較点は、振幅形状を考慮したものではなく、常に最良の比較点とは限らない。
【0016】
そこで、ARモデルとの比較解析では、2つの波形は類似性があることを利用し、実施例1では、比較点の傾きも比較点決定の要因になり得ることから、グラフ全体で比較する必要はなく、近傍で同じ点を見つけてくれば良いという観点で比較点の探索を実行する。
【0017】
具体的には、図1に示すように、情報処理装置10は、学習済みのRNNを用いて、船舶の緯度、経度、速度などのセンサデータから予測波形データを取得する。そして、情報処理装置10は、予測波形データの各データ(各点)をクラスに分類するとともに、実波形データの各データ(各点)をクラスに分類する。その後、情報処理装置10は、分類されたクラスにより探索範囲を絞り込んだ上で比較点を特定し、予測波形データから異常点を検出する。
【0018】
つまり、情報処理装置10は、近傍法を流用し、予測波形データ上の点aと比較対象である実波形データの比較点群bにおいて、それぞれ傾きを特徴として持たせ、同じ特徴(傾き)を持った点のみを比較対象とする。この結果、情報処理装置10は、比較対象を特徴(傾き)で絞ることで、計算コストを抑えつつ近傍範囲を広げることができ、異常点の検出処理を高速化することができる。
【0019】
[機能構成]
図3は、実施例1にかかる情報処理装置10の機能構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、情報処理装置10は、通信部11、出力部12、記憶部13、制御部20を有する。
【0020】
通信部11は、他の装置の間の通信を制御する処理部であり、例えば通信インタフェースなどにより実現される。例えば、通信部11は、管理者の端末から各種指示を受信し、船舶に設置された各種センサからセンサデータを受信する。
【0021】
出力部12は、各種情報を表示する処理部であり、例えばディスプレイやタッチパネルなどにより実現される。例えば、出力部12は、後述する制御部20による処理結果として、異常点や波形の類似性などを表示する。
【0022】
記憶部13は、各種データや制御部20が実行するプログラムなどを記憶する記憶装置の一例であり、例えばメモリやハードディスクなどにより実現される。この記憶部13は、センサデータ14、予測波形データ15、実波形データ16、判定結果17などを記憶する。
【0023】
センサデータ14は、船舶に設置されたセンサから取得されるデータであり、例えば緯度や経度の位置情報、速度、重さ、燃料量などである。なお、ここで記憶される情報は、管理者などが格納してもよく、センサから取得してもよい。
【0024】
予測波形データ15は、学習済みである機械学習モデルにより予測された時系列データであり、第1の時系列データの一例である。例えば、予測波形データ15は、船舶の航行データなどであり、例えば横軸が時間、縦軸が方向角速度や船舶の横揺れなどである。この予測波形データ15が異常点の検出対象であり、実波形データ16との類似性の比較対象となる。
【0025】
実波形データ16は、船舶のセンサに基づき実際に取得された時系列データであり、第2の時系列データの一例である。具体的には、実波形データ16は、予測波形データ15と同じ時間軸で生成された時系列データであり、学習済みの機械学習モデルが予測目標とする時系列データである。
【0026】
判定結果17は、制御部20により判定された各種情報である。例えば、判定結果17には、異常点の検出結果、予測波形データ15と実波形データ16との類似性の判定結果などが含まれる。
【0027】
制御部20は、情報処理装置10全体を司る処理部であり、例えばプロセッサなどにより実現される。この制御部20は、予測部21、検出部22、判定部23を有する。なお、予測部21、検出部22、判定部23は、プロセッサが有する電子回路やプロセッサが実行するプロセスなどにより実現される。
【0028】
予測部21は、学習済みの機械学習モデルを用いて、センサデータ14から予測波形データ15を予測する処理部である。例えば、予測部21は、センサデータ14を学習済みのRNNに入力し、学習済みのRNNから出力された波形データを、予測波形データ15として記憶部13に格納する。
【0029】
検出部22は、予測波形データ15から、予測が正確ではない異常なデータである異常点(異常データ)を検出する処理部である。具体的には、検出部22は、予測波形データ15から選択された第1のデータが位置する予測波形データ15の波形形状に基づいて、第1のデータのクラス分類を実行する。そして、検出部22は、実波形データ16から予測波形データ15の第1のデータのクラスと同じクラスに属する第2のデータを特定する。その後、検出部22は、第1のデータと第2のデータとに基づき、予測波形データ15から異常点を検出し、検出した結果を判定結果17として記憶部13に格納する。つまり、検出部22は、クラス分類、比較点探索、異常点検出を実行する。
【0030】
(クラス分類)
まず、クラス分類について説明する。例えば、検出部22は、予測波形データ15を構成する各データについて、各データが予測波形データ15の波形形状におけるプラス側のピーク、マイナス側のピーク、上昇途中、または、下降途中のいずれに位置するかにより、クラスに分類する。同様に、検出部22は、実波形データ16を構成する各データについても、同様のクラス分類を実行する。
【0031】
図4は、クラス分類を説明する図である。図4に示すように、検出部22は、波形の傾きがマイナス、プラス、マイナスと変化する位置に位置する各データをクラスAに分類し、波形の傾きがプラス、マイナス、プラスと変化する位置に位置する各データをクラスBに分類する。また、検出部22は、波形の傾きがプラスで継続している位置に位置する各データをクラスCに分類し、波形の傾きがマイナスで継続している位置に位置する各データをクラスDに分類する。
【0032】
(比較点検出)
次に、比較点検出について説明する。例えば、検出部22は、予測波形データ15の各データについて、当該データのクラスと同じクラスに属する1つ以上のデータを、実波形データ16から特定する。そして、検出部22は、予測波形データ15の各データについて、実波形データ16から特定された同じクラスのデータそれぞれと比較することにより、予測波形データ15の各データが異常点か否かを判定する。
【0033】
図5は、比較点の検出を説明する図である。図5では、予測波形データ15のデータA(点A)の比較点を検出する例で説明する。図5に示すように、検出部22は、K近傍法を流用し、データAの時刻t1からΔtだけ進んだ時刻t2との距離(Δt)を半径とする円内に位置する実波形データ16の各点のうち、データAのクラスAと同じクラスAに属する各点(各データ)を比較点として検出する。
【0034】
なお、Δtは、予め設定しておくこともでき、動的に変化させることもできる。例えば、検出部22は、初期値のΔtから探索を開始し、探索範囲(Δt)を徐々に広げていき、設定数分のK個の比較点が特定されるまで探索することもできる。
【0035】
(異常点検出)
次に、異常点検出について説明する。例えば、検出部22は、予測波形データ15の各データについて、特定された比較点との比較により、各データが異常点に該当するか否かを判定する。そして、検出部22は、異常点の検出結果を出力部12に表示することもできる。
【0036】
上記例で説明すると、検出部22は、予測波形データ15のデータAについて、探索範囲を固定した状態で比較点の探索を実行し、比較点が特定できなかった場合、当該データAを異常点と検出する。また、検出部22は、予測波形データ15のデータAについて、探索範囲を変化させてK個の比較点を特定し、データAと各比較点との距離を算出する。そして、検出部22は、最短距離が閾値以上である場合、当該データAを異常点と検出する。
【0037】
ここで、図6から図8を用いて、各種比較パターンについて説明する。図6は、比較パターン1を説明する図であり、図7は、比較パターン2を説明する図であり、図8は、比較パターン3を説明する図である。
【0038】
図6に示すように、データの密集度に比べてK値(探索範囲)が大きい場合、検出部22は、比較範囲であるK値を小さくするなど、識別するデータ数に応じてK値を適切に設定することができる。
【0039】
また、図7に示すように、実波形データ16と予測波形データ15とが周波数的に大きく異なる場合、検出部22は、予測波形データ15のデータAに対して数多くの比較点を検出する。この場合、局所的に類似するか否かを判定することができないので、このような所定の比較範囲で閾値以上の比較点が検出された場合には、予測波形データ15と実波形データ16とは類似しないと判定する。
【0040】
また、図8に示すように、検出部22は、予測波形データ15のデータAに対して比較点を検出できないこともある。この場合、単に予測波形データ15と実波形データ16とが類似しないと判定する。
【0041】
図3に戻り、判定部23は、予測波形データ15と実波形データ16との類似性を判定する処理部である。具体的には、判定部23は、検出部22による検出結果と公知の様々な手法とを用いて、予測波形データ15と実波形データ16とが類似するか否かを判定し、判定結果17として記憶部13に格納する。また、判定部23は、判定結果を出力部12に表示することもできる。
【0042】
例えば、判定部23は、予測波形データ15から閾値以上の異常点が検出された場合、予測波形データ15と実波形データ16とが類似しないと判定する。一方、判定部23は、予測波形データ15から検出された異常点の数が閾値未満の場合、予測波形データ15と実波形データ16とが類似すると判定することができる。また、判定部23は、上述した検出部22により検出された比較点を用いてDTW法を実行することで、予測波形データ15と実波形データ16とが類似するか否かを判定することもできる。
【0043】
[処理の流れ]
図9は、異常点検出処理の流れを示すフローチャートである。図9に示すように、管理者等により処理開始が指示されると(S101:Yes)、予測部21は、学習済みの機械学習モデルを用いて、センサデータ14から予測波形データ15を生成する(S102)。
【0044】
続いて、検出部22は、予測波形データ15から異常点検出の判定が未処理である任意の点(データ)を選択し(S103)、選択した任意の点に対してクラス分類を実行し、該当クラスを特定する(S104)。
【0045】
そして、検出部22は、実波形データ16から、任意の点と同じクラスに属する、任意の点の近傍の点(データ)を抽出する(S105)。続いて、検出部22は、予測波形データ15の任意の点と、実波形データ16から抽出した近傍の点とを比較して、当該任意の点が異常点か否かを判定する異常判定を実行する(S106)。
【0046】
その後、検出部22は、予測波形データ15において異常判定が未処理の点が存在する場合(S107:No)、S103に戻って、異常判定が未処理のデータに対して以降の処理を繰り返す。
【0047】
一方、予測波形データ15のすべての点において異常判定が終了した場合(S107:Yes)、判定部23は、検出された異常点の数が閾値以上か否かを判定する(S108)。
【0048】
ここで、判定部23は、検出された異常点の数が閾値未満の場合(S108:No)、予測波形データ15と実波形データ16とが類似すると判定し、予測に利用された機械学習モデルを高精度と判定する。
【0049】
一方、判定部23は、検出された異常点の数が閾値以上の場合(S108:Yes)、予測波形データ15と実波形データ16とが類似せず、予測に利用された機械学習モデルの精度が悪いと判定し、機械学習モデルの再生成の指示などを出力部12に表示する(S109)。
【0050】
[効果]
上述したように、情報処理装置10は、予測波形データ15内の予測データと実波形データ16の実データとの部分比較を行う際に、予測データと同じ時間帯の実データのうち、同じクラスの属する近傍の実データに絞り込んで抽出した上で、比較することができる。この結果、情報処理装置10は、比較処理を高速化できるので、異常点の検出処理を高速化することができる。
【0051】
また、情報処理装置10は、該当する比較点の検出状況に応じて探索範囲を動的に変更することができる。この結果、情報処理装置10は、時系列データの波形形状に依存することなく、異常点の検出精度を上げることができる。また、情報処理装置10は、同じクラス同士のデータを比較することで、異常点の検出精度を上げることができる。
【0052】
図10は、効果を説明する図である。図10に示すように、予測波形データ15と実波形データ16とが一見して類似している場合であっても、上述した処理を実行することで、予測波形データ15の異常点を高精度の検出することができる。この結果、情報処理装置10は、予測波形データ15において実波形データ16とは異なる特徴を示すノイズを効果的に識別することができる。
【実施例2】
【0053】
ところで、実施例1による手法では、予測波形データ15における複数の点に対して同じ比較点を特定する事象が発生して、異常点の検出精度が劣化することも考えられる。図11は、精度劣化の可能性を説明する図である。図11に示すように、予測波形データ15のデータAに対するK近傍により、実波形データ16上の比較点Xが検出されるとともに、予測波形データ15のデータBに対するK近傍においても、実波形データ16上の比較点Xが検出されることがある。このような場合、波形形状の比較という性質上、精度劣化の要因となることが考えられる。
【0054】
そこで、実施例2では、RNNなどの波形予測では予測結果がどちらか一方の時間方向にずれる傾向が強いことを考慮し、予測波形データ15と実波形データ16との時間差分を算出して補正することで、精度劣化を抑制する。
【0055】
具体的には、情報処理装置10の検出部22は、予測波形データ15に含まれる各データを時系列の順に順次選択し、順次選択される各データについて、実施例1と同様の手法により、実波形データ16から比較点を特定する。そして、検出部22は、各データの時刻と、各データに対応する各比較点の時刻とに基づき、予測波形データ15と実波形データ16との時刻差分を算出する。時刻差分を算出後、検出部22は、予測波形データ15の比較元データと同じクラスに属する実波形データの比較先データ(比較点)を特定する際に、比較元データの時刻から時刻差分ずらした調整後の時刻を基準として、実波形データ16の比較先データの探索範囲を決定する。
【0056】
図12は、実施例2にかかる比較点の探索を説明する図である。図12に示すように、情報処理装置10の検出部22は、実施例1と同様の手法により、予測波形データ15のデータAに対して比較点の特定を実行し、特定された比較点のうち最も距離が短い実波形データ16上のデータXを特定する。そして、検出部22は、データAの時刻とデータXの時刻との差分である時刻差分Δtを算出する。
【0057】
このようにして、検出部22は、予測波形データ15における所定数のデータについて、比較点の特定とともに、時間差分Δtを算出する。そして、検出部22は、所定数の時間差分Δtが算出されると、その平均値を算出する。
【0058】
その後、検出部22は、予測波形データ15のデータBに対する比較点の特定を実行する際、データBの時刻を「時間差分Δtの平均値」だけずらした時刻を基準にして、実施例1と同様の手法により、比較点の特定を実行する。
【0059】
このようにすることで、予測波形データ15の異なるデータに対して、異常点か否かを判定するために特定される実波形データ16上の比較点が重複することを抑制することができるので、異常点の精度劣化を抑制することができる。なお、時刻差分Δtは、予測波形データ15のデータより時間的に進んでいる実波形データ16の比較点が特定された場合は、プラスの値となり、予測波形データ15のデータの方が実波形データ16の比較点より時間的に進んでいる場合は、マイナスの値となる。また、時間差分の算出は、時系列の順に限らず、任意の複数のデータに対して実行してもよい。
【実施例3】
【0060】
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0061】
[数値等]
上記実施例で用いた対象とするデータの種類、距離の算出方法、機械学習モデル、Kなどの値、各閾値、処理フローの順番等は、あくまで一例であり、矛盾が発生しない範囲内で、任意に変更することができる。また、上述した異常点の検出手法は、予測波形データと実波形データとの比較に限らず、2つの異なる波形データの比較にも用いることができる。また、機械学習モデルは、RNNに限らず、他の機械学習モデルを採用することができる。
【0062】
また、上記実施例で用いた各波形データも一例であり、例えば航行データとしては縦揺れ、舵角などを用いることもでき、航行データ以外には株価や地震波などの時系列データを用いることもできる。また、検出部22は、予測波形データ15の全データのクラス分類と実波形データ16の全データのクラス分類とを実行した後に、比較点の特定を実行することもでき、予測波形データ15のデータ1つずつに対して、クラス分類と比較点の特定とを実行することもできる。
【0063】
[システム]
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。なお、検出部22は、選択部と分類実行部と特定部と検出部の一例である。
【0064】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、予測部21と、検出部22と、判定部23とは、それぞれ別の装置で実現することもできる。
【0065】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0066】
[ハードウェア]
次に、情報処理装置10のハードウェア構成例を説明する。図13は、ハードウェア構成例を説明する図である。図13に示すように、情報処理装置10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、図13に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0067】
通信装置10aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、図3に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0068】
プロセッサ10dは、図3に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、図3等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、情報処理装置10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、予測部21、検出部22、判定部23等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、予測部21、検出部22、判定部23等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0069】
このように、情報処理装置10は、プログラムを読み出して実行することで異常点検出方法を実行する情報処理装置として動作する。また、情報処理装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施例と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施例でいうプログラムは、情報処理装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0070】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 情報処理装置
11 通信部
12 出力部
13 記憶部
14 センサデータ
15 予測波形データ
16 実波形データ
17 判定結果
20 制御部
21 予測部
22 検出部
23 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13