(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/14 20060101AFI20240423BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20240423BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G03G21/14
G03G15/08 390Z
G03G21/00
(21)【出願番号】P 2020095439
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 國智
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-180439(JP,A)
【文献】特開2014-163947(JP,A)
【文献】特開2018-136397(JP,A)
【文献】特開平04-029267(JP,A)
【文献】特開2006-343623(JP,A)
【文献】特開2007-333788(JP,A)
【文献】特開2009-258276(JP,A)
【文献】特開平09-054531(JP,A)
【文献】特開2007-333940(JP,A)
【文献】特開2018-031948(JP,A)
【文献】特開2012-103601(JP,A)
【文献】特開2012-058517(JP,A)
【文献】特開2009-162790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/01
13/08
13/095
13/34
15/00-15/01
15/08
15/095
15/36
21/00-21/04
21/10-21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光回転体と、
ハウジングの開口を介して感光回転体の現像位置に臨む周面部分にトナーを含む現像剤を穂立ちさせる現像ローラーと、現像位置よりも感光回転体の回転方向下流側の空間に位置し、前記開口と現像ローラーの隙間から外に飛翔しようとするトナーを受け止めるトナー飛散防止用シールを有し、画像形成時に感光回転体上の静電潜像を現像剤の穂立ちで現像する現像部と、
固形潤滑剤から潤滑剤を掻取部で掻き取る掻取ローラーを有し、掻き取った潤滑剤を画像形成時に感光回転体上に供給する供給部と、
画像形成の終了に伴う感光回転体の停止後、現像ローラーと掻取ローラーを回転状態とする回転制御部と、
を備え、
前記回転制御部は、画像形成の終了に伴って前記現像ローラーと前記掻取ローラーも停止させた後、前記感光回転体が停止したまま前記現像ローラーと前記掻取ローラーを再回転させ、前記再回転において前記掻取ローラーを画像形成時と同方向に回転させることを特徴とす
る画像形成装置。
【請求項2】
前記回転制御部は、前記現像ローラーの再回転を前記感光回転体の停止から所定時間経過時に開始することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記回転制御部は、前記再回転において前記現像ローラーと前記掻取ローラーを同時に回転させることを特徴とする請求項
1または
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記回転制御部は、前記再回転において前記現像ローラーと前記掻取ローラーの少なくとも一方のローラーの回転速度を画像形成時の回転速度よりも低速にすることを特徴とする請求項
1~
3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記回転制御部は、前記再回転の実行途中に次の画像形成ジョブの予定が入った場合、前記再回転の終了まで前記画像形成ジョブの実行を待たせることを特徴とする請求項
1~
4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記回転制御部は、環境湿度または環境温度が閾値未満の場合、前記再回転の実行を禁止することを特徴とする請求項
1~
5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記回転制御部は、前記再回転において前記現像ローラーを画像形成時と同方向に回転させることを特徴とする請求項
1~
6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記回転制御部は、前記再回転において前記掻取ローラーを1回転以上回転させることを特徴とする請求項
1~
7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記感光回転体と前記トナー飛散防止用シールとは、前記感光回転体の現像位置から回転方向下流側に所定長さまでの周面部分に、前記感光回転体の停止時の振動に伴って前記トナー飛散防止用シールに蓄積されたトナー粒子が落下するような関係を有する位置に配されていることを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記現像ローラーと前記掻取ローラーを回転駆動させる共通の駆動源を有し、
前記回転制御部は、前記共通の駆動源に前記再回転を実行させることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記現像ローラーを回転駆動させる第1駆動源と、前記掻取ローラーを回転駆動させる第2駆動源を有し、
前記回転制御部は、前記第1駆動源に前記現像ローラーを再回転させ、前記第2駆動源に前記掻取ローラーを再回転させることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記掻取ローラーは、複数本のブラシ毛を有するブラシローラーであることを特徴とする請求項1~
11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
プリントジョブを実行する画像形成装置であって、
感光回転体と、
ハウジングの開口を介して感光回転体の現像位置に臨む周面部分にトナーを含む現像剤を穂立ちさせる現像ローラーと、現像位置よりも感光回転体の回転方向下流側の空間に位置し、前記開口と現像ローラーの隙間から外に飛翔しようとするトナーを受け止めるトナー飛散防止用シールを有し、画像形成時に感光回転体上の静電潜像を現像剤の穂立ちで現像する現像部と、
固形潤滑剤から潤滑剤を掻取部で掻き取る掻取ローラーを有し、掻き取った潤滑剤を画像形成時に感光回転体上に供給する供給部と、
前記プリントジョブの終了に伴う感光回転体の停止後、現像ローラーと掻取ローラーを回転状態とする回転制御部と、
を備え、
前記回転制御部は、
前記プリントジョブ時には、プリント条件に応じて、前記感光回転体、前記現像ローラーおよび前記掻取ローラーの回転速度を、基準のシステム速度とこれよりも一定速度だけ遅くした低速のいずれかに切り替え、
さらに、前記プリントジョブの終了に伴って前記現像ローラーと前記掻取ローラーも停止させた後、前記感光回転体が停止したまま前記現像ローラーと前記掻取ローラーを再回転させ、
当該再回転において前記現像ローラーと前記掻取ローラーのうち、一方の回転速度を前記基準のシステム速度、他方の回転速度を前記低速にし、または、両方の回転速度を前記低速にする
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光回転体上の静電潜像を現像する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンターなどの画像形成装置は、回転する感光回転体、例えば感光体ドラムを帯電させて、帯電された感光体ドラムを露光して静電潜像を作像し、感光体ドラム上に作像された静電潜像を、現像器のハウジングの開口を介して感光体ドラムの現像位置に臨む現像ローラーに担持された現像剤で現像してトナー像を形成し、形成されたトナー像を記録用のシートに転写する構成になっている。
【0003】
このような画像形成装置として特許文献1には、帯電、現像、転写性の向上のために潤滑剤を感光体ドラムに供給する潤滑剤供給部をさらに備える構成が開示されている。具体的には、感光体ドラムとこれの周囲に配された固形潤滑剤との間に掻取ローラーの一例としてのブラシローラーを介在させ、ブラシローラーを回転させることで、ブラシ毛の先端部で潤滑剤を掻き取り、掻き取った潤滑剤をブラシ毛の先端部から感光体ドラムに供給する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成ジョブの実行中、感光体ドラムと現像ローラーとブラシローラーが回転しているが、画像形成ジョブの終了に伴って、感光体ドラムと現像ローラーと掻取ローラーの回転が停止される。この感光体ドラムの回転停止時に、例えば感光体ドラムを駆動するモーターの減速中に感光体ドラムに振動が生じ易い。
【0006】
感光体ドラムの回転停止時に生じた振動が現像器のハウジングに伝わると、ハウジングの開口と現像ローラーとの間の隙間からハウジング内のトナー粒子がハウジングの外に飛翔するのを受け止めるためのトナー飛散防止用シール(例えば、
図2:上シール821)も振動して、トナー飛散防止用シールの裏面に蓄積しているトナー粒子の塊(
図7(a):Tb)が感光体ドラム上に落下することがある。
【0007】
感光体ドラム上に落下したトナー粒子の塊が、次の画像形成ジョブにより回転を開始した感光体ドラムによりブラシローラーに運ばれると、ブラシローラーのブラシにトナー粒子が付着する。画像形成ジョブの終了、トナー塊の落下、ブラシへのトナー粒子の付着が長期間に亘って繰り返されると、やがてトナー粒子がブラシに固着したりブラシに接する固形潤滑剤の表面を覆うようになったりする。
【0008】
このようなブラシや固形潤滑剤の表面へのトナー粒子の固着や付着が進むと、ブラシローラーの回転軸方向に潤滑剤の掻き取り量のばらつきが生じ始め、画像形成ジョブ時における感光体ドラムへの潤滑剤の供給が不安定になって、やがて帯電、現像、転写性の低下に繋がってしまう。
【0009】
なお、上記では、感光体ドラムの回転停止時に生じた振動によりトナー飛散防止用シールからトナーが落下する場合の例を説明したが、これ以外にも画像形成の終了に伴う感光体ドラムの停止の際に例えば現像部が感光体ドラムから離間する構成の移動時の振動や他の回転部材が停止する際の振動などでもトナー落下が生じる場合もあり得る。
【0010】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、感光回転体への潤滑剤の供給を長期に亘って安定させることが可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本開示に係る画像形成装置は、感光回転体と、ハウジングの開口を介して感光回転体の現像位置に臨む周面部分にトナーを含む現像剤を穂立ちさせる現像ローラーと、現像位置よりも感光回転体の回転方向下流側の空間に位置し、前記開口と現像ローラーの隙間から外に飛翔しようとするトナーを受け止めるトナー飛散防止用シールを有し、画像形成時に感光回転体上の静電潜像を現像剤の穂立ちで現像する現像部と、固形潤滑剤から潤滑剤を掻取部で掻き取る掻取ローラーを有し、掻き取った潤滑剤を画像形成時に感光回転体上に供給する供給部と、画像形成の終了に伴う感光回転体の停止後、現像ローラーと掻取ローラーを回転状態とする回転制御部と、を備え、前記回転制御部は、画像形成の終了に伴って前記現像ローラーと前記掻取ローラーも停止させた後、前記感光回転体が停止したまま前記現像ローラーと前記掻取ローラーを再回転させ、前記再回転において前記掻取ローラーを画像形成時と同方向に回転させることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記回転制御部は、前記現像ローラーの再回転を前記感光回転体の停止から所定時間経過時に開始するとしても良い。
【0014】
また、前記回転制御部は、前記再回転において前記現像ローラーと前記掻取ローラーを同時に回転させるとしても良い。
【0015】
さらに、前記回転制御部は、前記再回転において前記現像ローラーと前記掻取ローラーの少なくとも一方のローラーの回転速度を画像形成時の回転速度よりも低速にするとしても良い。
【0016】
また、前記回転制御部は、前記再回転の実行途中に次の画像形成ジョブの予定が入った場合、前記再回転の終了まで前記画像形成ジョブの実行を待たせるとしても良い。
【0017】
さらに、前記回転制御部は、環境湿度または環境温度が閾値未満の場合、前記再回転の実行を禁止するとしても良い。
【0018】
また、前記回転制御部は、前記再回転において前記現像ローラーを画像形成時と同方向に回転させるとしても良い。
【0020】
また、前記回転制御部は、前記再回転において前記掻取ローラーを1回転以上回転させるとしても良い。
【0021】
さらに、前記感光回転体と前記トナー飛散防止用シールとは、前記感光回転体の現像位置から回転方向下流側に所定長さまでの周面部分に、前記感光回転体の停止時の振動に伴って前記トナー飛散防止用シールに蓄積されたトナー粒子が落下するような関係を有する位置に配されているとしても良い。
【0022】
また、前記現像ローラーと前記掻取ローラーを回転駆動させる共通の駆動源を有し、前記回転制御部は、前記共通の駆動源に前記再回転を実行させるとしても良い。
【0023】
さらに、前記現像ローラーを回転駆動させる第1駆動源と、前記掻取ローラーを回転駆動させる第2駆動源を有し、前記回転制御部は、前記第1駆動源に前記現像ローラーを再回転させ、前記第2駆動源に前記掻取ローラーを再回転させるとしても良い。
【0024】
また、前記掻取ローラーは、複数本のブラシ毛を有するブラシローラーであるとしても良い。
本開示の別の局面に係る画像形成装置は、プリントジョブを実行する画像形成装置であって、感光回転体と、ハウジングの開口を介して感光回転体の現像位置に臨む周面部分にトナーを含む現像剤を穂立ちさせる現像ローラーと、現像位置よりも感光回転体の回転方向下流側の空間に位置し、前記開口と現像ローラーの隙間から外に飛翔しようとするトナーを受け止めるトナー飛散防止用シールを有し、画像形成時に感光回転体上の静電潜像を現像剤の穂立ちで現像する現像部と、固形潤滑剤から潤滑剤を掻取部で掻き取る掻取ローラーを有し、掻き取った潤滑剤を画像形成時に感光回転体上に供給する供給部と、前記プリントジョブの終了に伴う感光回転体の停止後、現像ローラーと掻取ローラーを回転状態とする回転制御部と、を備え、前記回転制御部は、前記プリントジョブ時には、プリント条件に応じて、前記感光回転体、前記現像ローラーおよび前記掻取ローラーの回転速度を、基準のシステム速度とこれよりも一定速度だけ遅くした低速のいずれかに切り替え、さらに、前記プリントジョブの終了に伴って前記現像ローラーと前記掻取ローラーも停止させた後、前記感光回転体が停止したまま前記現像ローラーと前記掻取ローラーを再回転させ、当該再回転において前記現像ローラーと前記掻取ローラーのうち、一方の回転速度を前記基準のシステム速度、他方の回転速度を前記低速にし、または、両方の回転速度を前記低速にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記の構成によれば、画像形成の終了に伴う感光回転体の停止時などに振動が生じ、トナー飛散防止用シールに蓄積していたトナー粒子が感光回転体の現像位置付近に落下したとしても、その落下したトナー粒子のうち、現像位置において穂立ちを形成する現像剤に接するトナー粒子は、感光回転体が停止したまま現像ローラーが回転することで現像部のハウジング内に回収される。
【0026】
落下したトナー粒子のうち、ハウジング内に回収できずに感光回転体上に残ったトナー粒子は、次の画像形成による感光回転体の回転開始により掻取ローラーに至るものがある。しかし、この時点では、この前の感光回転体の停止中での掻取ローラーの回転により、掻き取られた潤滑剤が掻取部の表面に蓄積されている。このため、掻取ローラーに至ったトナー粒子は、この蓄積された潤滑剤を介して掻取部の表面に付く、つまり直に掻取部の表面に付くことが防止される。潤滑剤は、離型性を有し、その離型性から掻取部へのトナー粒子の付着力が弱くなって掻取部から外れ易くなるので、掻取ローラーの回転時の振動や遠心力により掻取部から外れて行き、長期間に亘って掻取部や固形潤滑剤にトナー粒子が固着することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】現像部の現像ローラーが現像剤を担持する様子を示す模式図である。
【
図3】現像ローラーの一部を拡大して示す図である。
【
図6】回転制御部の制御内容を示すタイミングチャートである。
【
図7】(a)は、現像部の上シールの内面に蓄積しているトナー塊が落下した様子を模式的に示す図であり、(b)は、落下したトナー粒子が現像ローラーの回転により回収されている様子を模式的に示す図である。
【
図8】(a)は、通常のプリントジョブの実行中に感光体ドラムとブラシローラーの両方が回転している状態を示す図であり、(b)は、待機時に感光体ドラムを停止させたままブラシローラーが回転している様子を示す図であり、(c)は、ブラシローラーのブラシ繊維に蓄積された潤滑剤を介してトナー粒子がブラシ繊維に付着している様子を示す図であり、(d)は、ブラシローラーの回転時の振動や遠心力によりトナー粒子がブラシ繊維から外れて落下する様子を示す図である。
【
図9】回転制御部の制御内容を示すフローチャートである。
【
図10】変形例に係る回転制御処理をその一部のみを抜き出して示すフローチャートである。
【
図11】(a)、(b)、(c)は、変形例に係るトナー飛散防止用シールの構成例を概略して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示に係る画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラープリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例にして説明する。
【0029】
〔1〕プリンターの全体の構成
図1は、プリンター1の全体の構成を示す図である。
【0030】
同図に示すようにプリンター1は、周知の電子写真方式により画像を形成するものである。ここで、同図では、プリンター1をユーザーが操作する正面側から見たときの左右方向をX軸方向、上下方向をY軸方向、X軸とY軸の双方に直交する方向を奥行方向としてZ軸方向で示している。Y軸方向は、プリンター1の装置本体1aの上下方向になる。
【0031】
プリンター1は、作像部10と、中間転写部20と、給紙部30と、定着部40と、制御部50を備え、ネットワーク(例えばLAN)に接続され、外部の端末装置(不図示)から画像形成ジョブの一例としてのプリントジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色からなるカラーの画像形成を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成部分の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
【0032】
作像部10は、Y~K色のそれぞれに対応する作像ユニット10Y、10M、10C、10Kと露光部11を備えている。作像ユニット10Y、10M、10C、10Kは、この順に中間転写部20の中間転写ベルト21の走行方向に沿って並置されている。
【0033】
作像ユニット10Y~10Kは、矢印A方向に回転する感光回転体としての感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kと、その周囲にドラム回転方向Aに沿って配設された帯電部2Y、2M、2C、2Kと、現像部3Y、3M、3C、3Kと、クリーニング部4Y、4M、4C、4Kと、潤滑剤供給部5Y、5M、5C、5Kと、除電部6Y、6M、6C、6Kを備えており、感光体ドラム1Y~1Kに対応する色のトナー像を作像する。感光体ドラム1Y~1Kや現像部3Y~3K、潤滑剤供給部5Y~5Kなど作像部10に含まれる各部は装置本体1aに取り付けられている。
【0034】
中間転写部20は、中間転写ベルト21と、駆動ローラー22と、従動ローラー23~25と、中間転写ベルト21を介して感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに対向配置された一次転写ローラー26Y、26M、26C、26Kと、中間転写ベルト21を介して駆動ローラー22に対向配置される二次転写ローラー27などを備える。
【0035】
中間転写ベルト21は、駆動ローラー22、従動ローラー23~25、一次転写ローラー26Y~26Kにより張架され、駆動ローラー22の回転駆動力により矢印Qで示す方向に周回走行する。
【0036】
給紙部30は、給紙カセット31と、繰り出しローラー32と、搬送ローラー対33と、タイミングローラー対34などを備えている。
【0037】
給紙カセット31は、記録用のシートとしての用紙Sを収容する。繰り出しローラー32は、給紙カセット31に収容されている用紙Sを搬送路39に1枚ずつ繰り出す。
【0038】
搬送ローラー対33は、繰り出された用紙Sをさらに搬送路39上を搬送方向下流に搬送させる。タイミングローラー対34は、搬送される用紙Sを二次転写ローラー27と中間転写ベルト21との接触位置である二次転写位置271に送り出すタイミングをとる。
【0039】
定着部40は、定着ローラーと加圧ローラーを圧接させて定着ニップを確保すると共にヒーターにより定着ローラーを加熱して定着に必要な温度を維持する。
【0040】
制御部50は、外部の端末装置からのプリントジョブを受信すると、プリントジョブに含まれる画像データをY~K色用の画像信号に変換し、露光部11に配された各色用のレーザダイオード(不図示)を駆動するための駆動信号を生成する。生成された駆動信号により露光部11からY色用のレーザービームLy、M色用のレーザービームLm、C色用のレーザービームLc、K色用のレーザービームLkがそれぞれ出射され、感光体ドラム1Y~1Kが露光走査される。
【0041】
この露光走査を受ける前に、感光体ドラム1Y~1Kは、除電部6Y~6Kによる除電(除電工程)後に、帯電部2Y~2Kにより一様に帯電されており(帯電工程)、レーザービームLy~Lkの露光により(露光工程)、感光体ドラム1Y~1Kの周面に静電潜像が形成される。感光体ドラム1Y~1Kは、マイナス(負)極性に帯電する帯電特性を有しており、帯電部2Y~2Kにより感光体ドラム1Y~1Kがマイナス帯電され、レーザービームLy~Lkにより画像の形成されるべき部分が露光される。
【0042】
感光体ドラム1Y~1K上の静電潜像は、対応する現像部3Y~3Kによりトナーで現像される(現像工程)。
【0043】
現像部3Yは、ハウジング80内にY色用の現像剤、ここではキャリアとY色用のトナーを含む2成分現像剤(不図示)が収容されてなる。ハウジング80内には、感光体ドラム1Yに対向し、ハウジング80に開けられた開口800から露出した周面部分815に担持した現像剤で感光体ドラム1Y上の静電潜像にトナーを供給して静電潜像を顕像化させる現像ローラー81Yと、現像ローラー81Yに現像剤を供給する供給スクリュー82と、ハウジング80内で現像剤を撹拌させつつ攪拌後の現像剤を供給スクリュー82に搬送する撹拌スクリュー83、84を含む。
【0044】
Y色用のトナーは、帯電極性がマイナスのものが用いられ、いわゆる反転現像方式になっており、バインダ樹脂にシリカなどの外添剤が添加されたものが用いられている。他の現像部3M、3C、3Kについても、現像ローラー81M、81C、81K以外の部材については符号が省略されているが、現像部3Yと基本的に同じ構成であり、ハウジング80に収容されている現像剤の色が異なっている。
【0045】
現像工程を経て感光体ドラム1Y~1K上に形成されたY~K色のトナー像は、感光体ドラム1Y~1Kの一次転写位置261において、一次転写ローラー26Y~26Kと感光体ドラム1Y~1K間に作用する静電力により中間転写ベルト21上に一次転写される(一次転写工程)。
【0046】
感光体ドラム1Y~1Kへの各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト21上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行される。中間転写ベルト21上に多重転写された各色トナー像は、中間転写ベルト21の周回走行により二次転写位置271に移動する。
【0047】
上記作像動作のタイミングに合わせて、給紙部30からは、タイミングローラー対34を介して用紙Sが給送されて来ており、その用紙Sは、二次転写ローラー27と中間転写ベルト21の間に挟まれて搬送され、二次転写ローラー27と中間転写ベルト21間に作用する静電力により、中間転写ベルト21上の各色トナー像が二次転写位置271で一括して用紙S上に二次転写される(二次転写工程)。
【0048】
二次転写位置271を通過した用紙Sは、定着部40に搬送され、定着ニップを通過する際に、トナー像が加熱、加圧されて用紙Sに定着され(定着工程)、定着後、排出ローラー対40aを介して機外に排出される。
【0049】
感光体ドラム1Y~1K上のトナー像のうち、中間転写ベルト21に一次転写されずに感光体ドラム1Y~1K上に残ったトナー(転写残トナー)は、クリーニング部4Y~4Kに配されたゴム製のクリーニングブレード41Y、41M、41C、41Kにより除去される。
【0050】
転写残トナーが除去された後の感光体ドラム1Y~1Kの周面には、潤滑剤供給部5Y~5Kにより潤滑剤が塗布される。塗布された潤滑剤は、感光体ドラム1Y~1Kの回転により、その周方向に沿って帯電部2Y~2Kや現像部3Y~3Kなどの各部の位置を通過した後、クリーニング部4Y~4Kに至り、クリーニングブレード41Y~41Kの、感光体ドラム1Y~1Kとの接触部分に供給される。
【0051】
これにより、クリーニングブレード41Y~41Kと感光体ドラム1Y~1K間の摩擦が低減され、クリーニングブレード41Y~41Kの早期の摩耗を防止して、クリーニング性を長期に亘って向上することができ、感光体ドラム1Y~1Kの周面の磨耗の抑制により長寿命化を実現できる。また、感光体ドラム1Y~1K上において感光体ドラム1Y~1Kの周面と現像後のトナー像のトナー粒子との間に潤滑剤被膜が介在することにより、転写性についても長期に亘って向上することができる。
【0052】
次に、現像部3Y~3Kの現像ローラー81Y~81Kおよび潤滑剤供給部5Y~5Kの構成を説明するが、現像ローラー81Y~81Kは、基本的に同じ構成なので、現像ローラー81Yについて説明し、現像ローラー81M~81Kについては説明を省略する。同様に、潤滑剤供給部5Y~5Kは、基本的に同じ構成なので、潤滑剤供給部5Yについて説明し、潤滑剤供給部5M~5Kについては説明を省略する。
【0053】
〔2〕現像部の現像ローラーの構成
図2は、現像部3Yの現像ローラー81Yが現像剤Dを担持する様子を示す模式図である。現像ローラー81Yの回転軸と感光体ドラム1Yの回転軸130のそれぞれの軸方向は、ここではZ軸方向に平行になっている。
【0054】
同図に示すように現像ローラー81Yは、円筒形の現像スリーブ810と、現像スリーブ810の内部に軸方向に沿って挿通された円柱状のマグネット体811を含む。
【0055】
マグネット体811は、複数の磁極、例えばN1、S1、N2、S2、N3の形成された部分が周方向に順に並ぶように設けられてなり、回転不可となるように軸方向の端部がハウジング80に固定されている。各磁極は、軸方向に沿って延在されている。
【0056】
現像スリーブ810は、ハウジング80の開口800を介して、断面円形の感光体ドラム1Yに臨む周面部分815を有し、矢印B方向に回転自在にハウジング80に保持され、静止しているマグネット体811の周りを、マグネット体811の磁力により、現像スリーブ810の外周面に現像剤Dを保持(担持)しつつ回転する。
【0057】
現像ローラー81Yと供給スクリュー82と攪拌スクリュー83、84(
図1)が同時に回転すると、攪拌スクリュー83、84から供給スクリュー82を経て現像スリーブ810に現像剤Dが供給される。
【0058】
具体的には、供給スクリュー82から供給される現像剤Dは、マグネット体811の磁極N1(キャッチ極)の磁力によって、現像スリーブ810の外周面に担持される。現像スリーブ810の外周面上に担持された現像剤Dは、現像スリーブ810の回転により、ハウジング80の天壁801の内面に設けられた規制部材85と現像スリーブ810の外周面との間の隙間を通過する際にその通過量を規制され、磁極S1の位置を通過して、感光体ドラム1Yの現像位置135に一定量が搬送される。現像位置135では、感光体ドラム1Yの周面131と現像スリーブ810の外周面との間に一定の隙間(現像ギャップ)、例えば1~2mmが設けられている。
【0059】
現像位置135まで搬送された現像剤Dは、現像位置135において磁極N2の磁力によってブラシの穂立ち87を形成し、その現像剤Dの穂立ち87が感光体ドラム1Y上の静電潜像にトナーを運ぶことで現像が行われる。現像位置135が現像剤Dの穂立ち87が形成される穂立ち位置になる。ここでは、現像剤Dの穂立ち87の先端が感光体ドラム1Yの周面131を摺擦するようにして静電潜像にトナーが供給される。
【0060】
現像位置135を通過した現像剤Dは、磁極S2を通過後、リリース極である磁極N3の位置を通過するときにマグネット体811の磁力から開放されて、ハウジング80の底壁802に落下する。底壁802に落下した現像剤Dは、攪拌スクリュー83、84に回収されて、攪拌スクリュー83、84による攪拌、搬送後、供給スクリュー82を経て現像ローラー81Yに再度、供給される。これにより、現像剤がハウジング80内を循環搬送される。
【0061】
ハウジング80の天壁801には、
図3の拡大図に示すように現像ローラー81Yとの間の隙間Gaからハウジング80内の空間を浮遊するトナー粒子Tが破線の矢印Iで示すようにハウジング80の開口800を介して外に飛翔して飛散するのを防止するためのトナー飛散防止用シールとして上シール821が設けられている。上シール821は、感光体ドラム1Yの現像位置135よりも感光体ドラム1Yの回転方向下流側の空間139に配置されている。
【0062】
ハウジング80の底壁802には、現像ローラー81Yとの間の隙間からトナー粒子がハウジング80の開口800を介して外に飛翔して飛散するのを防止するための下シール822が設けられている。
【0063】
上シール821と下シール822は、例えば0.1~0.2mm程度の薄い平板状のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタンなどの樹脂からなるフィルムである。上シール821と下シール822は、開口800のZ軸方向一端から他端までの間に亘って長尺状に形成されており、上シール821、下シール822の基端部は、ハウジング80の天壁801、底壁802に接着などで固着されている。上シール821の先端825は、感光体ドラム1Yの周面131とは非接触であり、一定、例えば0.5~1mm程度の隙間が設けられている。下シール822の先端も感光体ドラム1Yの周面131とは非接触になっている。なお、現像性に影響を与えないのであれば、下シール822の先端を感光体ドラム1Yの周面131に接触させる構成をとり得る。上シール821の先端825も感光体ドラム1Yの周面131とは非接触であるが、これに代えて接触する構成としても良い。しかし、上シール821については、上シール821の先端825が感光体ドラム1Yの回転方向に対してカウンター方向で接触してしまうため、非接触のほうが好ましい。
【0064】
また、板状体のトナー飛散防止用シールを、上シール821に代えて、現像剤Dを収容するハウジング80の天壁801を、感光体ドラム1Yの表面に接触させない範囲で感光体ドラム1Yの付近(上記のように例えば0.5~1mm程度)まで延長し、その延長した部分自体をトナー飛散防止用シールとしてもよい。この構成の場合、ハウジング80の一部(延長した部分)がトナー飛散防止用シールになり、ハウジング80とトナー飛散防止用シールとが同じ素材になる。装置構成に応じてトナー飛散防止用シールを、ハウジング80とは別の素材、例えば樹脂フィルムからなる上シール822として設けたり、ハウジング80の天壁801を延長した部分として設けたりすることができる。
【0065】
図2に戻って、感光体ドラム1Yは、ドラムモーター19の回転駆動力で回転し、現像ローラー81Yは、現像モーター89の回転駆動力で回転する。ここでドラムモーター19の回転駆動力は、減速機構を介して感光体ドラム1Yに伝達される。
【0066】
図4は、減速機構5の構成例を示す概略断面図である。同図に示すように減速機構5は、感光体ドラム1Yの軸部8の一端に嵌められた大径のギア5aと、ドラムモーター19の軸部191に嵌められた小径のギア5bとが歯合してなる。ギア5aは、ギア5bよりも歯数が多くなっている。円筒形の感光体ドラム1Yの軸部8の両端部が軸受3を介して装置本体1aのフレーム2に回転自在に支持されており、ギア5bに対するギア5aのギア比に応じてドラムモーター19の回転速度が減速された状態でドラムモーター19の回転駆動力が感光体ドラム1Yに伝達される。
【0067】
なお、同図では示していないが、感光体ドラム1M、1C、1Kの軸部のそれぞれにもギア5aと歯数が同じギアが嵌め込まれており、ギア5aから感光体ドラム1M、1C、1Kの軸部の各ギアにドラムモーター19の回転駆動力が順次、伝達されるようになっている。つまり、一つのドラムモーター19が感光体ドラム1Y~1Kの駆動源になり、感光体ドラム1Y~1Kのそれぞれが所定のシステム速度で同速回転する。
【0068】
同様に、現像モーター89の回転駆動力は、現像ローラー81M、81C、81Kにも伝達される。つまり、一つの現像モーター89が現像ローラー81Y~81Kの駆動源になっており、現像ローラー81Y~81Kが所定の一定速度で同速回転する。なお、感光体ドラム1Y~1Kのそれぞれごとに駆動源としてのドラムモーター19を設ける構成をとることもでき、同様に現像ローラー81Y~81Kのそれぞれごとに駆動源としての現像モーター89を設ける構成をとることもできる。
【0069】
〔3〕潤滑剤供給部の構成
潤滑剤供給部5Yは、
図2に示すように感光体ドラム1Yの周囲においてクリーニング部4Yよりもドラム回転方向Aの下流側かつ帯電部2Yよりもドラム回転方向Aの上流側に配置されている。
【0070】
潤滑剤供給部5Yは、ブラシローラー101Y(掻取ローラー)と、固形潤滑剤102と、圧縮バネ103と、均しブレード104を備える。
【0071】
ブラシローラー101と固形潤滑剤102と均しブレード104とクリーニングブレード41Yおよびこれらを収容するハウジング190は、感光体ドラム1Yの回転軸130の軸方向に沿って長尺状であり、その長さが感光体ドラム1Y上における画像形成領域の主走査方向の幅(印字幅)よりも長くなっている。この長さの関係は、現像部3Yの現像ローラー81Yや上シール821、下シール822などの各部材およびこれらを収容するハウジング80もハウジング80の開口800も同じである。
【0072】
ブラシローラー101Yは、金属製の導電性材料、ここでは鉄製の芯金111の周面に、導電性の多数本のブラシ毛からなるブラシ繊維112が設けられてなり、ブラシモーター109の駆動力で回転する。
【0073】
ここで、ブラシモーター109の回転駆動力は、潤滑剤供給部5M、5C、5Kのブラシローラー101M、101C、101K(
図1)にも伝達される。つまり、一つのブラシモーター109がブラシローラー101Y~101Kの駆動源になっている。なお、ブラシローラー101Y~101Kのそれぞれごとにブラシモーター109を設ける構成をとることもできる。また、ブラシローラー101Yと現像ローラー81Yが一つ(共通)の駆動源、例えば駆動モーターで回転駆動を行う構成をとることもできる。ブラシローラー101M~10Kと現像ローラー81M~81Kについても同様である。また、ブラシローラー101Y~101Kと現像ローラー81Y~81Kの全てが共通の駆動源、例えば駆動モーターで回転駆動を行う構成をとることもできる。上記の内、各色のブラシローラーと各色の現像ローラーとが色毎にそれぞれ共通の駆動源で回転駆動する構成は、コストダウンと本開示で提案する制御の簡略化、及びその他の制御との両立(モノクロモードでK色のみ駆動させる場合や、各色ごとに条件調整を行う場合等)の面で特に好適である。
【0074】
ブラシローラー101Yは、感光体ドラム1Yと固形潤滑剤102との間に介在し、ブラシ繊維112の、感光体ドラム1Yの周面131に対向する部分が感光体ドラム1Yの周面131に当接して感光体ドラム1Yの周面131に潤滑剤を塗布(供給)する。ブラシローラー101が感光体ドラム1Yの周面131と接触する位置106が感光体ドラム1Yにおける潤滑剤の塗布位置になる。ブラシローラー101Yの回転方向は、塗布位置106においてドラム回転方向と同方向(矢印Eで示す方向)になっている。
【0075】
ブラシ繊維112は、ここでは直毛ブラシが用いられているが、ループブラシでもよい。ブラシの材質としてはポリエステルを用いているが、アクリルでもよいし、他の材質を用いてもよい。
【0076】
固形潤滑剤102は、金属石鹸の粉体を溶融成型したものであり、脂肪酸金属塩からなり、ここではステアリン酸亜鉛が用いられている。
【0077】
このステアリン酸亜鉛は、離型性が高く(純水接触角が高いことに相当)、摩擦係数が小さいことが特徴であり、転写性、クリーニング性が高いことから、潤滑剤として好適であるが、これに限られることもない。
【0078】
例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅、ステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸金属塩、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸銅、オレイン酸マグネシウムなどのオレイン酸金属塩、パルチミン酸亜鉛、パルチミン酸銅、パルチミン酸マグネシウムなどのパルチミン酸金属塩、リノール酸亜鉛などのリノール酸金属塩、リシノール酸亜鉛、リシノール酸リチウムなどのリシノール酸金属塩などを潤滑剤に用いることもできる。
【0079】
圧縮バネ103は、固形潤滑剤102をブラシローラー101に押圧させるための付勢力を付与するものであり、ドラム軸方向に沿って間隔をおいて複数個が配置されている。
【0080】
ブラシローラー101に押圧された固形潤滑剤102は、ブラシローラー101の回転によってブラシ繊維112の各ブラシ毛により掻き取られる。つまり、ブラシ繊維112が固形潤滑剤102を掻き取る掻き取り部として機能する。
【0081】
掻き取られた潤滑剤は、ブラシローラー101の回転によって感光体ドラム1Yの塗布位置106まで搬送されて、感光体ドラム1Yに供給される。
【0082】
均しブレード104は、ポリウレタンゴムからなり、ブラシローラー101よりもドラム回転方向下流の位置に配置される。均しブレード104の先端が感光体ドラム1Yの周面131にカウンター方向に当接して、感光体ドラム1Yに供給された潤滑剤を感光体ドラム1Yの周面131上で均して均一の厚みの潤滑剤の被膜を形成させる。
【0083】
〔4〕制御部の構成
図5は、制御部50の構成を示すブロック図である。
【0084】
同図に示すように制御部50は、通信インターフェース(I/F)部51と、CPU(Central Processing Unit)52と、ROM(Read Only Memory)53と、RAM(Random Access Memory)54と、タイマー55を備え、それぞれが相互に通信を行うことができる。
【0085】
通信I/F部51は、ネットワーク、例えばLANと接続するためのLANカード、LANボードといったインターフェースであり、ネットワークを介して接続される外部の端末装置と通信を行う。
【0086】
CPU52は、外部の端末装置などからネットワークを介してプリントジョブを受信すると、ROM53から必要なプログラムを読み出し、作像部10、中間転写部20、給紙部30、定着部40を制御して、受信したプリントジョブを円滑に実行させる。また、CPU52は、回転制御部521を含む。
【0087】
タイマー55は、後述の時間Ua、Ubなどの計時に用いられる。
【0088】
ここで、同図に示すバイアス電源部88は、現像ローラー81Y~81Kに供給される現像バイアス電圧を出力する電源部である。現像バイアス電圧は、感光体ドラム1Y~1Kの表面電位と現像ローラー81Y~81Kの電位との差で現像時における現像ローラー81Y~81Kから感光体ドラム1Y~1Kに単位時間当たりに移動するトナー粒子の量を決める電圧であり、その電圧値が予め決められている。バイアス電源部88は、画像形成ジョブごとにジョブに実行開始から終了までの間に亘って現像バイアスを現像ローラー81Y~81Kに供給する。
【0089】
回転制御部521は、感光体ドラム1Y~1Kと現像ローラー81Y~81Kとブラシローラー101Y~101Kの回転と停止を制御する。この制御は、ドラムモーター19と現像モーター89とブラシモーター109の回転駆動と停止の制御により行われる。以下、感光体ドラム1Y~1K、帯電部2Y~2K、現像ローラー81Y~81K、ブラシローラー101Y~101Kを再現色別で特に区別する必要がないときは、その符号を省略して、感光体ドラム1、帯電部2、現像ローラー81、ブラシローラー101という。
【0090】
〔5〕回転制御部の制御内容
図6は、プリントジョブAの実行開始から終了後、待機時を経て次のプリントジョブBを開始する場合における回転制御部521の制御内容を示すタイミングチャートである。なお、同図では、現像バイアスの供給(ON)とその停止(OFF)のタイミングも併せて示されている。
【0091】
同図に示すようにプリントジョブAの実行指示があると(時点t1)、感光体ドラム1の回転駆動を開始する。時点t1から所定時間Ua(例えば0.5秒)経過時に現像ローラー81とブラシローラー101の回転駆動を開始する(時点t2)。また、時点t2に現像バイアスの供給を開始する。
【0092】
ここで、感光体ドラム1の回転開始から遅れて現像ローラー81の回転を開始するのは、感光体ドラム1が帯電部2によって所定の電位に安定した後、所望の電位関係で現像ローラー81の駆動を行うためである。また、現像ローラー81の回転時間を少しでも短くして、ハウジング80に収容されている現像剤Dへの撹拌搬送による負担を減らそうとするためである。上記より、感光体ドラム1の駆動開始より、現像ローラー81の駆動開始は所定時間遅れて設定される必要がある。なお、画質に特に影響を与えないような場合には、感光体ドラム1と現像ローラー81を同時に回転開始する構成としても良い。
【0093】
また、感光体ドラム1の回転開始から遅れてブラシローラー101の回転を開始するのは、ブラシローラー101の回転時間を少しでも短くして、固形潤滑剤からの余分な掻き取りを減らそうとするためであるが、感光体ドラム1とブラシローラー101を同時に回転開始しても良い。
【0094】
感光体ドラム1、現像ローラー81、ブラシローラー101が回転しつつ現像バイアスが供給されている状態でプリントの前処理91、例えば感光体ドラムの除電などが実行される。前処理91が終了すると、電子写真方式による帯電、露光、現像、転写、定着の各工程を順番に実行して用紙Sに画像をプリントするプリント動作92が行われる。プリント動作92が終了すると、後処理93、例えばプリント後の除電などが実行される。後処理93が終了すると、現像ローラー81とブラシローラー101の回転を停止させる(時点t3)。これと同時に現像バイアスの供給も停止させる。
【0095】
そして、時点t3から所定時間Ub(例えば1秒)経過時に感光体ドラム1の回転を停止させる(時点t4)。この時点t4での感光体ドラム1の回転停止とは、実際に感光体ドラム1の回転が停止している状態、つまりドラムモーター19の回転軸が停止している状態をいう。時点t4がプリントジョブAの終了時になり、以後、プリントジョブBの開始時t7までの間が待機時(非画像形成時)になる。
【0096】
ここで、感光体ドラム1の回転停止に先立って現像ローラー81とブラシローラー101の回転を停止するのは、上記の現像剤Dへの負担と余分な潤滑剤の掻き取りを減らすためであるが、感光体ドラム1と現像ローラー81とブラシローラー101を同時に回転停止しても良い。また、感光体ドラム1の回転停止後、現像ローラー81とブラシローラー101の一方を先に停止させ、他方をその後に停止させるとしても良い。
【0097】
感光体ドラム1の回転停止(時点t4)から所定時間Uc(例えば1秒)経過時に、感光体ドラム1を停止させたまま、現像ローラー81とブラシローラー101の再回転を開始させる(時点t5)。この時点t5では、現像バイアスの供給は停止したままとする。
【0098】
現像ローラー81とブラシローラー101の再回転の開始(時点t5)から所定時間Ud(例えば5秒)経過時に現像ローラー81とブラシローラー101の再回転を終了させる(時点t6)。これにより感光体ドラム1と現像ローラー81とブラシローラー101が停止状態になる。この所定時間Udは、現像ローラー81とブラシローラー101の両方が1回転以上、回転するのに要する時間として予め決まっている。
【0099】
この後、次のプリントジョブBの開始指示があると(時点t7)、感光体ドラム1の回転駆動を開始し、時点t7から所定時間Ua経過時に現像ローラー81とブラシローラー101の回転駆動の開始と現像バイアスの供給を開始する(時点8)。以後、プリントジョブAと同じ動作が実行される。
【0100】
このように待機時に、感光体ドラム1を停止させたまま現像ローラー81とブラシローラー101の再回転を実行するのは、上記の「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように感光体ドラムへの潤滑剤の供給が不安定になることを防止するためである。
【0101】
すなわち、
図3に示すようにトナー飛散防止用の上シール821を配する現像部3Yにおいて現像ローラー81Yの矢印B方向の回転により、現像ローラー81Yの周囲の空間には、現像ローラー81Yの回転方向と同方向に流れようとする空気の流れが生じる。この空気の流れに乗ってハウジング80内を浮遊するトナー粒子Tが開口800から外に飛翔しようとすると、その前方に配された上シール821に当たって遮られる。
【0102】
上シール821に遮られたトナー粒子Tは、開口800から外に出られず、現像ローラー81Yの周囲を浮遊して再度、ハウジング80内に戻るものもあれば、上シール821の内面829(開口800に面する側の面)に付着するものもある。
【0103】
上シール821の内面829に付着したトナー粒子Tの数が増えて多くのトナー粒子Tが蓄積された状態で、画像形成ジョブの終了に伴う感光体ドラム1Y~1Kの停止時に生じる振動、例えばドラムモーター19の停止時に生じる振動や、減速機構5のギア5aと5bのバックラッシによる遊びの分、ドラムモーター19の停止に遅れて感光体ドラム1Y~1Kが惰性で動くことによる振動が現像部3Yのハウジング80を介して上シール821に伝わると、上シール821に蓄積されていたトナー粒子Tがトナー塊となって落下することがある。
【0104】
図7(a)は、上シール821の内面829に蓄積しているトナー粒子T(黒丸で示す)のトナー塊Tbが落下した様子を模式的に示す図である。
図7(a)では、落下したトナー塊Tbに含まれるトナー粒子Tのうち、トナー粒子Tn1が現像剤Dの穂立ち87の上に乗っており、トナー粒子Tn2が感光体ドラム1Yの周面131上であるが現像位置135で穂立ち87の現像剤Dに接する位置に落下しており、トナー粒子Tn3が現像位置135から回転方向下流側に所定長さ(例えば10mm程度)までの周面部分136上に乗っていることが判る。
【0105】
上シール821は、現像位置135よりも装置本体1aの上下方向における上方に位置しており、上シール821の長手方向(Z軸方向)に、トナー粒子Tの蓄積量が多い箇所と少ない箇所とにばらつきが生じる。このため、上シール821から落下したトナー粒子Tの量は、感光体ドラム1Yの周面131上においてドラム軸方向に多い箇所と少ない箇所にばらつくことになる。
【0106】
落下したトナー粒子Tn1、Tn2、Tn3をこのまま何もせずに次の画像形成ジョブにより感光体ドラム1Yの回転が開始され、感光体ドラム1Y上のトナー粒子Tn1~Tn3が一次転写の開始前に一次転写位置261を通過した後、潤滑剤供給部5Yのブラシローラー101Y(
図2)に運ばれると、ブラシローラー101Yや固形潤滑剤102に付着する。なお、ブラシローラー101Yに至る途中にクリーニングブレード41Yがあるが、落下したトナー粒子Tn1~Tn3の量は転写残トナーよりもかなり多いことが通常である。この多量のトナー粒子がクリーニングブレード41Yに突入すると、転写残トナーのクリーニングを行うクリーニングブレード41Yでは、クリーニングできずにクリーニングブレード41Yと感光体ドラム1Yの周面131との当接部分をすり抜けることが生じ、ブラシローラー101Yに至ってしまう。
【0107】
長期間に亘ってブラシローラー101Yや固形潤滑剤102へのトナー粒子の付着が少しずつ増えていく。このトナー粒子Tの付着量もブラシローラー101Yの回転軸方向に多い箇所と少ない箇所にばらつく。やがてブラシローラー101Yのブラシ繊維112に固着したり固形潤滑剤102のブラシ繊維112との接触面を覆ったりしてトナー粒子で汚染されるようになると、感光体ドラム1Yへの潤滑剤の供給量がドラム軸方向に多い箇所と少ない箇所にばらついて、潤滑剤の供給が不安定になる。
【0108】
本願発明者は、落下したトナー粒子Tのうち、現像剤Dの穂立ち87に接する位置に落下したトナー粒子Tn1、Tn2については、
図7(b)に示すように感光体ドラム1Yを停止したまま現像ローラー81Yを回転させることで、現像剤Dの穂立ち87に含まれるキャリア粒子に磁力で引き付けて穂立ち87に取り込ませることで、現像剤Dの一部として回収できることを実験から見出した。
【0109】
一方で、感光体ドラム1Yの周面部分136に落下したトナー粒子Tn3については、現像剤Dの穂立ち87から離れておりキャリア粒子の磁力では引き寄せられないことから、現像ローラー81Yを回転させても現像剤Dの穂立ち87に取り込めずに残ってしまうことが判った。
【0110】
現像剤Dの穂立ち87に取り込めなかったトナー粒子Tn3が感光体ドラム1Yの回転開始によりブラシローラー101Yに運ばれると、上記同様に感光体ドラム1Yへの潤滑剤の供給が不安定に繋がることになる。
【0111】
ここで、上記のようにクリーニングブレード41Yをトナー粒子Tn3がすり抜けることは、トナー粒子Tn3の量が転写残トナーよりも多い場合に生じ易いが、トナー粒子Tn3の感光体ドラム1Yの周面131への付着力(以下、「トナー付着力」という。)が強くなった場合も生じ易くなる。トナー付着力が強くなると、クリーニングブレード41Yの負荷が増してトナー粒子Tn3を掻き取れずにすり抜けを許してしまい易いからである。このトナー付着力は、トナー粒子Tn3が感光体ドラム1Yの周面131に付着した時点からの放置時間が長くなると上がり易いことが判っている。
【0112】
トナー粒子Tn3が感光体ドラム1Yの周面131に付着するのは、感光体ドラム1Y~1Kの停止時であるから、この放置時間とは、
図6の所定時間Ucに相当するといえる。つまり、所定時間Ucが例えば数時間や数日に相当する長い時間であれば、それだけトナー付着力が増すことになるので、所定時間Ucはできるだけ短い時間、上記例では1秒と極めて短い時間が予め決められている。
【0113】
本願発明者は、現像ローラー81Yの回転で取り込めずに感光体ドラム1Y上に残ったトナー粒子Tn3が感光体ドラム1Yの回転開始によりブラシローラー101Yに運ばれた場合でも、トナー粒子Tn3のブラシ繊維112への固着を防止できれば、感光体ドラム1Yへの潤滑剤の供給が不安定になることを回避できると考えた。
【0114】
具体的には、潤滑剤が離型性を有する点に着目し、トナー粒子Tn3がブラシローラー101Yに至る前に、ブラシ繊維112の表面に多くの潤滑剤を蓄積させておけば、ブラシローラー101Yに運ばれて来たトナー粒子Tn3は、ブラシ繊維112の表面に多く蓄積された潤滑剤を介してブラシ繊維112に引っ付くことになる。
【0115】
つまり、トナー粒子Tn3とブラシ繊維112の表面との間に離型性が高い潤滑剤が介在するので、ブラシ繊維112の表面に直にトナー粒子Tn3が付く場合よりもブラシ繊維112からトナー粒子Tn3が外れ易くなり、ブラシ繊維112の表面への固着が少なくなるはずである。
【0116】
本願発明者は、試行錯誤を重ねたところ、感光体ドラム1Yを停止したままブラシローラー101Yを回転させれば、ブラシ繊維112の表面に多くの潤滑剤を蓄積できることを見出した。
【0117】
図8(a)は、通常のプリントジョブの実行中に感光体ドラム1Yとブラシローラー101Yの両方が回転している状態を示している。ブラシローラー101が固形潤滑剤102から掻き取った潤滑剤J(白丸で示す)は、感光体ドラム1Yの塗布位置106でブラシ繊維112から感光体ドラム1Yに移動する。これにより、感光体ドラム1Yの塗布位置106を通過したブラシ繊維112の表面にはあまり潤滑剤Jが残っていない。このようにブラシ繊維112の表面に潤滑剤Jが少ない状態でトナー粒子Tn3がブラシローラー101Yに至ると、ブラシ繊維112にトナー粒子Tn3が取り込まれ易く、ブラシ繊維112への固着に至り易くなる。
【0118】
これに対し、
図8(b)のように待機時に感光体ドラム1Yを停止させたままブラシローラー101Yを回転させると、ブラシローラー101が固形潤滑剤102から掻き取った潤滑剤Jは、感光体ドラム1Yに塗布位置106に至るが、感光体ドラム1Yが回転していないので、ブラシ繊維112に付いたまま塗布位置106を通過して、ブラシ繊維112の表面に溜まり、潤滑剤Jの層が形成されたようになる。
【0119】
この状態で次のプリントジョブ開始により感光体ドラム1Yの回転が開始されることでトナー粒子Tn3がブラシローラー101Yに至ると、
図8(c)のようにブラシ繊維112に蓄積された潤滑剤Jを介してブラシ繊維112に付着、つまり直にブラシ繊維112に付着することが防止される。
【0120】
潤滑剤Jは、離型性を有し、この離型性によりトナー粒子Tn3のブラシ繊維112へ付着力が弱くなってブラシ繊維112の表面から外れ易くなる。このため、
図8(d)に示すようにブラシ繊維112のブラシ毛が感光体ドラム1Yの周面131から離れた瞬間にブラシ毛の姿勢が変化したときに生じる振動や遠心力によりトナー粒子Tn3がブラシ繊維112の表面から外れる。ブラシ繊維112の表面から外れたトナー粒子Tn3は、自重で落下して、ハウジング190内の底面に設けられた受け部192(
図2)に回収される。これにより、長期間に亘ってトナー粒子Tn3のブラシ繊維112や固形潤滑剤102への固着を防止できるという効果がある。本願発明者は、この効果を実験により確認している。
【0121】
〔6〕回転制御処理の内容
図9は、回転制御部521の制御内容を示すフローチャートであり、プリントジョブの実行の度に実行される。なお、当該処理開始時には、感光体ドラム1と現像ローラー81とブラシローラー101が停止しているものとする。
【0122】
同図に示すようにプリントジョブの実行指示を受け付けると(ステップS1)、感光体ドラム1の回転を開始する(ステップS2)。
【0123】
感光体ドラム1の回転開始から(
図6:時点t1)、所定時間Ua経過時に現像ローラー81とブラシローラー101の回転駆動を開始する(ステップS3)(
図6:時点t2)。また、現像バイアスの供給も開始する(ステップS4)。
【0124】
そして、後処理93が終了すると(ステップS5で「Yes」)、現像ローラー81とブラシローラー101の回転を停止させる(ステップS6)(
図6:時点t3)。これと同時に現像バイアスの供給も停止させる(ステップS7)。時点t3から所定時間Ub経過時に感光体ドラム1の回転を停止させる(ステップS8)(
図6:時点t4)。これによりプリントジョブが終了し、以後、待機時に入る。感光体ドラム1の回転停止時に生じる振動の影響を受けて上シール821からトナー粒子Tの落下が生じることがある。
【0125】
待機時において感光体ドラム1の回転停止から所定時間Uc経過時に、感光体ドラム1の回転を停止させたまま現像ローラー81とブラシローラー101の再回転を開始させる(ステップS9)(
図6:時点t5)。
【0126】
感光体ドラム1を停止したまま現像ローラー81を再回転することにより、上シール821から落下したトナー粒子Tn1、Tn2(
図7(a))は、現像剤Dの穂立ち87に取り込まれて回収される。また、感光体ドラム1を停止したままブラシローラー101を再回転することにより、ブラシ繊維112の表面に潤滑剤Jが多く蓄積された状態になり、現像剤Dの穂立ち87で取り込めなかったトナー粒子Tn3(
図7(a))が、次に感光体ドラム1の回転開始によりブラシローラー101まで運ばれても、ブラシ繊維112の表面から離脱し易くなって固着にまで至ることを防止できる。
【0127】
そして、現像ローラー81とブラシローラー101の再回転の開始(時点t5)から所定時間Ud経過時に現像ローラー81とブラシローラー101の再回転を終了させる(ステップS10)(
図6:時点t6)。この後、次のプリントジョブの予約があると(ステップS11で「Yes」)、ステップS1に戻り、ステップS1以降の処理を実行する。
【0128】
このようにステップS1からS10までの一連の処理の実行中(
図6の時点t1~t8)に次のジョブの予約が入っても、ステップS8~S10(
図6の時点t4~t8)の処理を優先して実行し、その後に予約のジョブを実行する。優先する処理が終了されるまで、予約されたプリントジョブの実行を待たせる待ち制御が行われる。また、次のプリントジョブの予約がなければ(ステップS11で「No」)、当該処理を終了する。
【0129】
以上説明したように本実施の形態では、待機時に感光体ドラム1を停止したまま現像ローラー81とブラシローラー101を回転することにより、上シール821から落下したトナー粒子Tがブラシローラー101を汚染することを防止できる。
【0130】
本開示は、画像形成装置に限られず、感光体ドラムなどの感光回転体と、現像ローラーと、ブラシローラーなどの掻取ローラーの回転制御を実行する回転体の回転制御方法であるとしても良い。また、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしてもよい。さらに、本開示に係るプログラムは、例えば磁気テープ、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、DVD-ROM、DVD-RAM、CD-ROM、CD-R、MO、PDなどの光記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。
【0131】
〔7〕変形例
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
【0132】
(1)上記実施の形態では、待機時において現像ローラー81とブラシローラー101の再回転を同時に行う例として、再回転の開始(
図6:時点t5)から終了(
図6:時点t6)までを同時並行かつ同じ時間だけ回転する構成を説明した。この上記例は、制御を簡略化できること、及び制御動作にかかる時間を短縮化できることで好ましいが、ブラシローラー101と現像ローラー81の回転タイミングはこれに限られない。
【0133】
例えば、現像ローラー81とブラシローラー101の再回転を同時に開始した後、現像ローラー81とブラシローラー101のうち一方を他方よりも先に停止させる制御を、再回転を同時に行う制御に含むとすることもできる。また、現像ローラー81の再回転の開始から終了までの時間とブラシローラー101の再回転の開始から終了までの時間との一部が重なっている制御を含むとすることもできる。
【0134】
また、再回転を同時に行うことに代えて、別々に行う構成、具体的には現像ローラー81とブラシローラー101を交互に回転と停止を切り替える制御とすることもできる。
【0135】
現像ローラー81とブラシローラー101のうち、一方を停止しつつ他方を第1の所定時間だけ再回転させ、その後、他方を停止しつつ一方を第2の所定時間だけ再回転させる構成が考えられる。第1と第2の所定時間を同じ時間としたり異なる時間としたりすることもできる。現像ローラー81とブラシローラー101の回転と停止の交互の切り替えを複数回、繰り返す制御を行うこともできる。
【0136】
(2)上記実施の形態では、プリントジョブ終了時に感光体ドラム1と現像ローラー81とブラシローラー101の回転を全て停止し、その後、待機時に現像ローラー81とブラシローラー101を再回転させる構成例を説明したが、これに限られない。画像形成の終了に伴う感光体ドラム1の停止後、現像ローラー81とブラシローラー101を回転状態とする構成であれば良い。この構成には、例えば、プリントジョブ(画像形成)の終了に伴って感光体ドラム1を停止させるが、現像ローラー81とブラシローラー101の回転をそのまま継続して、待機時において感光体ドラム1を停止したまま現像ローラー81とブラシローラー101を回転状態とする構成も含まれる。
【0137】
また、現像ローラー81とブラシローラー101の再回転時には、現像ローラー81への現像バイアスの供給を停止するとしたが、これに限られず、現像バイアスの供給を行うとしても良い。
【0138】
(3)上記実施の形態では、待機時での現像ローラー81とブラシローラー101の再回転における回転方向や回転速度について特に言及しておらず、プリントジョブにおける画像形成時と同じ回転速度、同じ回転方向とする構成例としたが、これに限られない。
【0139】
例えば、現像ローラー81について、画像形成時の回転速度を基準速度としたとき、待機時での再回転では回転速度を基準速度よりも低速に切り替える制御をとることもできる。現像ローラー81の回転速度を速くするよりも遅くした方が、ハウジング80内を流動する現像剤Dに含まれるトナーとキャリアが相互に衝突したりトナーやキャリアがハウジング80の内面に衝突したりすることによる現像剤Dへの機械的な負荷を抑制できるからある。
【0140】
また、例えば、ブラシローラー101について、画像形成時の回転速度を基準速度としたとき、待機時での再回転では回転速度を基準速度よりも低速に切り替える制御をとることもできる。ブラシローラー101の回転速度を速くするよりも遅くした方が、ブラシ繊維211が感光体ドラム1の周面131を摺擦する際のストレスを抑制できるからである。なお、現像ローラー81とブラシローラー101の一方または両方について、再回転時の回転速度を画像形成時の基準速度よりも速くする構成をとることも可能である。
【0141】
さらに、プリント条件、例えば用紙Sとして厚紙を通紙する場合、普通紙を通紙する場合よりも、感光体ドラム1、現像ローラー81、ブラシローラー101、中間転写ベルト21、定着部40の定着ローラーなどの回転部材の回転速度と用紙Sの搬送速度とを、普通紙に対する基準のシステム速度よりも一定速度だけ遅くした低速に切り替える構成では、待機時の再回転における現像ローラー81とブラシローラー101の回転速度を、厚紙に対する低速に切り替える構成をとることができる。これに代えて、例えば現像ローラー81とブラシローラー101の一方をシステム速度のままにして他方を低速に切り替えるとしても良い。システム速度と低速との2段階の切り替え構成では、この低速が最低速度になる。また、例えば3段階以上の切り替えが可能な構成の場合、そのうちの最低速度を再回転時の回転速度に用いることもできる。
【0142】
プリント条件に応じて回転速度を切り替える制御を元々実行している構成において、その切り替え制御を代用することで、待機時の再回転のために新たな制御を追加する必要がなくなる。上記では、プリント条件を普通紙と厚紙の例を説明したが、これに限られない。例えば、カラー画像形成とモノクロ画像形成のいずれを実行するかをプリント条件として、モノクロ画像形成の場合には基準速度、カラー画像形成の場合には基準速度よりも遅い低速に切り替える構成の場合、再回転時の回転速度を、カラー画像形成の場合の低速に切り替える制御をとることもできる。
【0143】
さらに、例えば、現像ローラー81とブラシローラー101の回転方向を画像形成時の正転とは逆方向の逆転に切り替え可能な構成において、待機時での再回転の際、逆転の方がトナー粒子Tn1やTn2の取り込み性が良くなったりブラシ繊維112への潤滑剤の蓄積性が向上したりするような場合には、現像ローラー81とブラシローラー101の回転方向を逆転に切り替える制御をとることもできる。再回転の際、現像ローラー81とブラシローラー101のうち一方を正転、他方を逆転させる構成をとることもできる。
【0144】
(4)上記実施の形態では、待機時において現像ローラー81とブラシローラー101の再回転に必要とされる所定時間Udを、現像ローラー81とブラシローラー101の両方が1回転以上、回転するのに要する時間としたが、これに限られない。
【0145】
現像ローラー81について、落下トナーTn1やTn2を現像剤Dの穂立ち87で取り込むことができると想定される回転数、例えば半回転や2/3回転に要する時間を再回転に必要な所定時間とすることもできる。なお、時間に代えて、例えば現像ローラー81の回転角(°)で制御することもできる。現像ローラー81の回転角を検出するエンコーダー(不図示)を設け、エンコーダーの検出結果から現像ローラー81の回転角が所定角(360°、180°、90°など)に至るまで回転させる制御を行えば実現できる。
【0146】
ブラシローラー101についても同様に、ブラシ繊維112に潤滑剤を必要な量、蓄積できると想定される回転数、例えば3/4回転や2回転などに要する時間を再回転に必要な所定時間とすることもできる。現像ローラーと同様に、回転時間に代えて回転角(°)で制御することもできる。装置構成に適した所定時間を予め実験などから決めることができる。
【0147】
(5)上記実施の形態では、プリントジョブが終了する度に現像ローラー81とブラシローラー101の再回転を繰り返し実行するとしたが、これに限られない。
【0148】
例えば、プリンター1の設置場所における周辺環境に応じて現像ローラー81とブラシローラー101の再回転の要否を判断し、不要と判断した場合には現像ローラー81とブラシローラー101の再回転を実行せず(禁止する)構成をとることもできる。
【0149】
周辺環境には、装置周辺の湿度が含まれる。低湿環境の場合、高湿環境よりもトナー粒子Tn3のトナー付着力が弱くなる。これは、空気中の水分含有量が少ない低湿環境では、トナー粒子Tn3と感光体ドラムの周面131との間に介在する水分が高湿環境よりも少なくなり、この水分が少ない分、水分の表面積を狭めようとする表面張力の働きによる、トナー粒子Tn3を感光体ドラム1の周面131にくっ付ける力が小さくなるためと考えられる。
【0150】
トナー粒子Tn3のトナー付着力が弱いほど、クリーニングブレードで掻き取られ易くなるので、例えば、作像ユニット10Yにおいて、次のプリントジョブの開始により感光体ドラム1Yが回転した場合に、感光体ドラム1Yの周面131に付着しているトナー粒子Tn3は、クリーニングブレード41Yで掻き取られてしまい、クリーニングブレード41Yをすり抜けてブラシローラー101Yに至ることが少なくなる。他の作像ユニット10M~10Kについても同様である、
ブラシローラー101Y~101Kに至るトナー粒子の数が少ないことは、ブラシ繊維112に固着するトナー粒子の数が少なくなることに等しく、感光体ドラム1Y~1Kへの潤滑剤の供給が安定し易くなる。つまり、低湿環境において感光体ドラムへの潤滑剤の安定供給が可能であれば、待機時における現像ローラー81とブラシローラー101の再回転を実行しない制御を取り得ることになる。
【0151】
図10は、本変形例に係る回転制御処理のフローチャートであり、
図9に示す回転制御処理のフローチャートと異なる部分のみを抜き出して示している。具体的には、ステップS8とS9の間にステップS21とS22を実行する。
【0152】
ステップS21では、装置周辺の湿度(環境湿度)を検出する。この検出は、装置本体1aに設置された湿度検出センサー(不図示)により行われる。そして、ステップS22では、検出された環境湿度が閾値th1未満か否かを判断する。閾値th1は、低湿環境とこれよりも湿度が高い環境の境界として例えば相対湿度で15~50%の範囲内の値であり、現像ローラーとブラシローラーの再回転の実行要否を判断するのに適した値が予め実験などで決められる。
【0153】
環境湿度の検出値が閾値th1以上と判断すると(ステップS22で「No」)、ステップS9に進む。この場合、低湿環境ではないので、現像ローラー81とブラシローラー101の再回転が必要と判断され、ステップS9、S10で現像ローラー81とブラシローラー101の再回転が実行される。
【0154】
一方、環境湿度の検出値が閾値th1未満と判断すると(ステップS22で「Yes」)、ステップS11に進む。この場合、低湿環境になるので、現像ローラー81とブラシローラー101の再回転が不要と判断され、ステップS9、S10をスキップして(実行せず)、S11に進む。現像ローラー81とブラシローラー101の再回転を実行するステップS9、S10をスキップすることは、この再回転の実行を禁止したことといえる。
【0155】
現像ローラー81とブラシローラー101の再回転が不要と判断した場合にこれを実行しないことで、現像剤Dへの機械的な負荷の抑制や固形潤滑剤102の不要な掻き取り防止を図ることができる。
【0156】
上記では、環境湿度について説明したが、装置周辺の温度(環境温度)についても上記同様に温度変化によりトナー付着力の大小が生じる場合、環境温度と閾値との大小関係から現像ローラーとブラシローラーの再回転の実行要否を判断することもできる。具体的に、環境温度が温度検出センサー(不図示)で検出され、検出された環境温度が閾値未満の場合、現像ローラーとブラシローラーの再回転の実行を禁止する。
【0157】
(6)上記実施の形態では、トナー飛散防止用の上シール821を現像位置135よりも上方に位置する構成例を説明したが、トナーが感光体ドラム1に落下/付着する経路としては、これに限られない。例えば、現像ローラー81の軸方向両端部にもトナー飛散防止用シールとして端部シールが設けられている構成も一般的であり、また、この構成にも待機時における現像ローラー81とブラシローラー101の再回転の制御を適用できる。
【0158】
図11を例に挙げて構成の一例を説明する。この変形例では、樹脂フィルムからなる上シール821に代えて、ハウジング80の天壁801が感光体ドラム1に接近する位置まで延長された樹脂板821が上シールになり、下シール822は、上記同様の樹脂フィルムによって構成され、現像ローラー81の軸方向両端部のそれぞれに端部シール881が設けられている。
【0159】
具体的に
図11(a)は、本変形例に係る現像部3Yを正面から見た概略正面図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示す端部シール881(同図右側)のα-α線における断面図である。
図11(a)を参照して、現像ローラー81Y上における現像剤Dの穂立ち87の形成領域875は、ここでは、感光体ドラム1Yの感光層が形成されている領域の内側に形成されている。
【0160】
現像ローラー81Yの穂立ち形成領域875のごく近傍(例えば0.5mm程度)の領域まで、穂立ち形成領域875を挟んで現像ローラー81Yの軸方向一方端と他方端の端部シール881のそれぞれが現像ローラー81Yの軸方向中央部に向かって延出されている。端部シール881は、上記の樹脂フィルム(PETまたはポリウレタン等)によって構成されており、厚みが例えば0.5~1mmの長方形状になっている。
【0161】
図11(b)を参照して、端部シール881は、樹脂板821と下シール822との間を跨るように形成され、且つ感光体ドラム1Yの周面131と非接触か軽圧接の接触形態にて形成される。また、現像ローラー81Yの軸方向端部の前面(感光体ドラム1に臨む周面部分)を覆うように、且つ現像ローラー81Yに対して非接触で構成される。端部シール881の軸方向外側は図示していないが、ハウジング80の開口800における軸方向端部側の空間を覆うようにして閉空間を構成している。
【0162】
端部シール881の上端部がハウジング80の天壁801に接着され、端部シール881の下端部がハウジング80の底壁802に接着されている。下シール822もハウジング80の底壁802に接着されている。現像ローラー81Yと感光体ドラム1Yは離間状態となっているが、現像剤Dの穂立ち87が感光体ドラム1Yの周面を摺刷するように構成されている。
【0163】
この端部シール881も上記の上シール821同様に、ハウジング80内で浮遊しているトナー粒子のうち、現像ローラー81Yの回転に伴う空気流に乗って開口800の、現像ローラー81Yの軸方向一端側の空間から外に飛翔しようとするトナー粒子を受け止める。このため、
図11(b)に示すように端部シール881の内面885で受け止められたトナー粒子Tが端部シール881の内面885に付着して蓄積されることが生じる。
【0164】
端部シール881の内面885に蓄積されたトナー粒子Tの塊が感光体ドラム1Yの停止時に伴う振動で落下する際、
図11(a)に示す破線の矢印888のように真下に落下するトナー粒子Tもあれば、空気流の方向によっては、破線の矢印889のように感光体ドラム1Yに近づきながら斜め下方に向かって落下するトナー粒子Tも存在する。
【0165】
この斜め下方に落下したトナー粒子には、
図7(a)と同様に現像剤の穂立ち87に乗るトナー粒子Tn1や、感光体ドラム1Yの周面131上であるが穂立ち87を形成する現像剤に接した位置に付いたトナー粒子Tn2や、感光体ドラム1Yの周面131上であり穂立ち87から離れた位置に落下して感光体ドラム1Yの周面131に付いたトナー粒子Tn3が含まれることがある。
【0166】
このようなトナー粒子Tn1~Tn3についても、上記の待機時の回転制御、つまり感光体ドラム1を停止したまま現像ローラー81とブラシローラー101の再回転を実行することで、長期に亘る感光体ドラム1への潤滑剤の安定供給を実現できる。
【0167】
なお、上記では、2個の端部シール881のうち、
図11(a)に示す右側の端部シール881について説明したが、同図左側の端部シール881についても右側の端部シール881と同じ構成になっているので、ここでは説明を省略する。また、上記では、トナー飛散防止用シールとしての下シール822をハウジング80とは別の部材として樹脂フィルムで形成する例を説明したが、これに限られない。
図11(c)に示すようにハウジング80の一部、すなわちハウジング80の底壁802を感光体ドラム1に接近する位置まで延長してなる樹脂板822を下シールとして用いる構成をとることもできる。
【0168】
(7)上記実施の形態では、
図2に示すように断面円形の感光体ドラム1Yの回転軸130に直交する仮想水平線(破線)13aに対して、感光体ドラム1Yの回転軸130を中心にドラム回転方向(矢印A方向)に角度θを有する仮想直線(破線)13bが感光体ドラム1Yの周面131と交わる位置を感光体ドラム1Yの現像位置135としたとき、角度θが約15°になっている構成例を説明したが、これに限られない。感光体ドラム1Yの現像位置135と上シール821とが次のような位置関係を有する構成に本開示は適用できる。
【0169】
すなわち、感光体ドラム1Yと上シール821とが、感光体ドラム1Yの現像位置135からドラム回転方向下流側の周面部分136(
図7(a))に、感光体ドラム1Yの停止時の振動に伴って上シール821に蓄積されたトナー粒子Tが落下するような位置関係を有することである。この関係を有する構成であれば、角度θの大きさが例えば0°の装置、30°の装置、45°の装置、-15°の装置または-30°の装置など異なる角度θの装置に適用できる。このことは、端部シール882についても同様であり、また、作像ユニット10Yに限られず、他の作像ユニット10M~10Kについても同様である。
【0170】
(8)上記実施の形態では、感光体ドラム1Y~1Kの回転停止時に生じた振動により上シール821からトナーTが落下する場合の例を説明したが、これ以外にも上シール821または端部シール882からトナーTが落下することが生じる。
【0171】
例えば、画像形成の終了に伴う感光体ドラム1Y~1Kの停止の際に現像部3Y~3Kが感光体ドラム1Y~1Kから離間する構成がある。この離間の際の現像部3Y~3Kの移動時の振動で上シール821または端部シール882からトナーTが落下することがある。この離間は、現像部3Y~3Kを感光体ドラム1Y~1Kに対して遠近方向に移動自在に装置本体1aのフレームに支持し、モーターやソレノイドの駆動力で現像部3Y~3Kを感光体ドラム1Y~1Kに対する画像形成時の位置とこれよりも遠ざかる離間位置とに切り替えることで行われる。
【0172】
また、画像形成の終了に伴って中間転写ベルト21が感光体ドラム1Y~1Kと同時に停止する構成において中間転写ベルト21の停止時に生じる振動が感光体ドラム1Y~1Kや装置本体1aのフレームを介して現像部3Y~3Kのハウジング80に伝わって上シール821または端部シール882からトナーTが落下することがある。
【0173】
さらに、画像形成の終了に伴って現像ローラー81Y~81Kが感光体ドラム1Y~1Kと同時に停止または少し遅れて停止する構成では、現像ローラー81Y~81Kの停止時の振動がハウジング80に伝わって上シール821や端部シール882からトナーTが落下することもあり得る。また、画像形成の終了に伴う感光体ドラム1Y~1Kの停止時の際に、他の回転部材、例えば現像部3Y~3Kの供給スクリュー82や攪拌スクリュー83、84の停止時における振動が上シール821や端部シール882に伝わることも生じ得る。
【0174】
(9)上記実施の形態では、本開示に係る画像形成装置をタンデム型カラープリンターに適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーの画像形成を実行する機能、モノクロの画像形成を実行する機能に関わらず、感光回転体の周面に潤滑剤を塗布する構成であれば、例えば複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等に適用できる。
【0175】
また、上記実施の形態では、感光回転体を感光体ドラムとする構成例を説明したが、ドラム状に限られず、例えばベルト状のものなどであっても良い。
【0176】
さらに、中間転写ベルト21を有する中間転写方式の構成例を説明したが、これに限られない。例えば、中間転写体を有しない構成、つまり感光体ドラム上のトナー像を直に転写位置で記録用のシートに転写する構成にも適用できる。
【0177】
また、固形潤滑剤102から潤滑剤を掻き取る掻取ローラーとしてブラシローラーを用いる構成例を説明したが、ブラシに限られず、例えば周面がスポンジからなるスポンジローラーを用いることもできる。スポンジが潤滑剤を掻き取る掻取部として機能する。
【0178】
上記の各部材の材料、大きさ、形状、個数、数値などが上記のものに限られないことはいうまでもなく、装置構成に応じて適した材料、大きさなどが決められる。
【0179】
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本開示は、感光回転体上の静電潜像を現像してトナー像を形成する画像形成装置に適用できる。
【符号の説明】
【0181】
1Y、1M、1C、1K 感光体ドラム
5Y、5M、5C、5K 潤滑剤供給部
11 露光部
19 ドラムモーター
80 ハウジング
81Y、81M、81C、81K 現像ローラー
87 現像剤の穂立ち
89 現像モーター
101Y、101M、101C、101K ブラシローラー
102 固形潤滑剤
109 ブラシモーター
112 ブラシ繊維
135 現像位置
136 感光体ドラムの現像位置から回転方向下流側に所定長さまでの周面部分
139 感光体ドラムの現像位置よりも回転方向下流側の空間
521 回転制御部
800 ハウジングの開口
821 上シール
881 端部シール
D 現像剤
T トナー粒子