(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ロータの製造装置、ロータの製造方法及びロータ
(51)【国際特許分類】
H02K 15/03 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
H02K15/03 H
(21)【出願番号】P 2020100186
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】原田 優
(72)【発明者】
【氏名】平松 律郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 智裕
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-060240(JP,A)
【文献】特開2007-236073(JP,A)
【文献】特開2007-282403(JP,A)
【文献】実公平05-010338(JP,Y2)
【文献】特開2007-267476(JP,A)
【文献】特開2014-121116(JP,A)
【文献】特開2016-144322(JP,A)
【文献】特開2016-226207(JP,A)
【文献】特開2017-175876(JP,A)
【文献】特開2014-072223(JP,A)
【文献】国際公開第2020/085092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコア(22)の磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石(23)を有するロータ(20)において、埋込状態にある前記永久磁石に対して前記ロータの外部から着磁を行う着磁装置(30)を含むロータの製造装置であって、
前記着磁装置は、前記ロータの軸方向一方側に配置され、前記永久磁石に着磁磁束を供給する着磁用コイル(33a,35a1,35a2)を有する第1着磁部(31)と、前記ロータの軸方向他方側に配置され、前記永久磁石に着磁磁束を供給する着磁用コイル(43a,45a1,45a2)を有する第2着磁部(41)とを含み、
前記第1及び第2着磁部は、外周面(32c,42c)に前記着磁用コイルが巻回態様にて装着されて前記着磁磁束を供給するための対向凸部(32b,42b)を有し、
前記対向凸部は、前記ロータの軸方向視で、前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位(25)と同等の形状をなしているとともに、前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位の大きさと同等に若しくは小さく構成されており、
前記着磁用コイルへの通電に基づく前記永久磁石の着磁に際し、同一の前記永久磁石の着磁においては前記ロータに対して軸方向に対向する前記第1及び第2着磁部が同極に励磁され、前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位(25)の軸方向両側から同極の着磁磁束を通して前記永久磁石を前記ロータの軸方向視で前記永久磁石の厚さ方向に磁化させるように構成され
ており、
前記径方向内側に凸の折返し形状をなす前記永久磁石は、前記ロータコアの周方向に互いに間隔を空けて複数設けられており、
前記第1及び第2着磁部のそれぞれにおいて、複数個の前記着磁用コイルは、周方向1個置きで巻回方向が同じ第1着磁用コイル同士を1本の導線で構成した第1系統と、前記各第1着磁用コイルの間において周方向1個置きで巻回方向が前記第1着磁用コイルと逆向きの第2着磁用コイル同士を1本の導線で構成した第2系統とで構成され、
前記第1及び第2着磁部のそれぞれにおいて、第1電源装置に接続される前記第1系統に通電することにより、前記ロータに対して軸方向に対向する前記第1及び第2着磁部の前記第1着磁用コイルが同極に励磁され、前記第1着磁用コイルの励磁に基づく前記着磁磁束により、周方向1個置きの前記永久磁石を同極の磁石となるように着磁を行う第1着磁工程と、
前記第1及び第2着磁部のそれぞれにおいて、第2電源装置に接続される前記第2系統に通電することにより、前記ロータに対して軸方向に対向する前記第1及び第2着磁部の前記第2着磁用コイルが同極に励磁され、前記第2着磁用コイルの励磁に基づく前記着磁磁束により、前記第1着磁工程にて着磁を行う各永久磁石の間において周方向1個置きの前記永久磁石を前記第1着磁工程にて着磁を行う各永久磁石とは異極の磁石となるように着磁を行う第2着磁工程と、を備え、
前記第1及び第2系統の通電に基づく前記第1及び第2着磁工程を分けて実施するように構成された、ロータの製造装置。
【請求項2】
ロータコア(22)の磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石(23)を有するロータ(20)において、埋込状態にある前記永久磁石に対して前記ロータの外部から着磁を行う着磁装置(30)を含むロータの製造装置であって、
前記着磁装置は、前記ロータの軸方向一方側に配置され、前記永久磁石に着磁磁束を供給する着磁用コイル(33a,35a1,35a2)を有する第1着磁部(31)と、前記ロータの軸方向他方側に配置され、前記永久磁石に着磁磁束を供給する着磁用コイル(43a,45a1,45a2)を有する第2着磁部(41)とを含み、
前記着磁用コイルへの通電に基づく前記永久磁石の着磁に際し、同一の前記永久磁石の着磁においては前記ロータに対して軸方向に対向する前記第1及び第2着磁部が同極に励磁され、前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位(25)の軸方向両側から同極の着磁磁束を通して着磁を行うように構成されており、
前記第1及び第2着磁部は、少なくとも一方側に前記ロータの軸嵌挿孔(22b)に挿入される挿入部(32d,42d)を有し、前記挿入部に対して前記着磁用コイルの励磁に基づく前記着磁磁束の一部が流れるように構成された、ロータの製造装置。
【請求項3】
前記第1及び第2着磁部は、外周面(32c,42c)に前記着磁用コイルが巻回態様にて装着されて前記着磁磁束を供給するための対向凸部(32b,42b)を有し、
前記対向凸部は、前記ロータの軸方向視で、前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位と同等に若しくは小さく構成された、請求項
2に記載のロータの製造装置。
【請求項4】
前記第1及び第2着磁部は、前記着磁用コイルを複数個備えるものであり、
複数個の前記着磁用コイルは、前記永久磁石の着磁する磁極毎に分離した第1及び第2系統として構成し、前記第1及び第2系統の通電に基づく着磁工程を分けて実施するように構成された、請求項
2又は請求項3に記載のロータの製造装置。
【請求項5】
前記着磁用コイルは、複数が周方向に並ぶコイル体(33,43)として構成され、
隣接の前記着磁用コイル間の渡り線(33d,43d)は、径方向内側位置に設定されている、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のロータの製造装置。
【請求項6】
前記着磁用コイルは、複数が周方向に並ぶコイル体(33,43)として構成され、
前記着磁用コイルを巻回構成する導線(33b,43b)の交差部(33e,43e)は、径方向内側位置に設定されている、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載のロータの製造装置。
【請求項7】
前記ロータは、前記永久磁石の着磁単位をブロックとし、軸方向に複数ブロック積み重ねて構成された、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のロータの製造装置。
【請求項8】
ロータコア(22)の磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石(23)を有するロータ(20)において、着磁装置(30)を用いて埋込状態にある前記永久磁石に対して前記ロータの外部から着磁を行うロータの製造方法であって、
前記着磁装置は、前記ロータの軸方向一方側に配置され、前記永久磁石に着磁磁束を供給する着磁用コイル(33a,35a1,35a2)を有する第1着磁部(31)と、前記ロータの軸方向他方側に配置され、前記永久磁石に着磁磁束を供給する着磁用コイル(43a,45a1,45a2)を有する第2着磁部(41)とを含む構成のものを用い、
前記第1及び第2着磁部は、少なくとも一方側に前記ロータの軸嵌挿孔(22b)に挿入される挿入部(32d,42d)を有し、前記挿入部に対して前記着磁用コイルの励磁に基づく前記着磁磁束の一部が流れるように構成されており、
前記着磁用コイルへの通電に基づく前記永久磁石の着磁に際し、同一の前記永久磁石の着磁においては前記ロータに対して軸方向に対向する前記第1及び第2着磁部が同極に励磁され、前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位(25)の軸方向両側から同極の着磁磁束を通して着磁を行う、ロータの製造方法。
【請求項9】
ロータコア(22)の磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石(23)を有するロータ(20)において、着磁装置(30)を用いて埋込状態にある前記永久磁石に対して前記ロータの外部から着磁を行うロータの製造方法であって、
前記着磁装置は、前記ロータの軸方向一方側に配置され、前記永久磁石に着磁磁束を供給する着磁用コイル(33a,35a1,35a2)を有する第1着磁部(31)と、前記ロータの軸方向他方側に配置され、前記永久磁石に着磁磁束を供給する着磁用コイル(43a,45a1,45a2)を有する第2着磁部(41)とを含む構成のものを用い、
前記第1及び第2着磁部は、外周面(32c,42c)に前記着磁用コイルが巻回態様にて装着されて前記着磁磁束を供給するための対向凸部(32b,42b)を有し、
前記対向凸部は、前記ロータの軸方向視で、前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位(25)と同等の形状をなしているとともに、前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位の大きさと同等に若しくは小さく構成されており、
前記着磁用コイルへの通電に基づく前記永久磁石の着磁に際し、同一の前記永久磁石の着磁においては前記ロータに対して軸方向に対向する前記第1及び第2着磁部が同極に励磁され、前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位(25)の軸方向両側から同極の着磁磁束を通して前記永久磁石を前記ロータの軸方向視で前記永久磁石の厚さ方向に磁化させる
ロータの製造方法であり、
前記径方向内側に凸の折返し形状をなす前記永久磁石は、前記ロータコアの周方向に互いに間隔を空けて複数設けられており、
前記第1及び第2着磁部のそれぞれにおいて、複数個の前記着磁用コイルは、周方向1個置きで巻回方向が同じ第1着磁用コイル同士を1本の導線で構成した第1系統と、前記各第1着磁用コイルの間において周方向1個置きで巻回方向が前記第1着磁用コイルと逆向きの第2着磁用コイル同士を1本の導線で構成した第2系統とで構成され、
前記第1及び第2着磁部のそれぞれにおいて、第1電源装置に接続される前記第1系統に通電することにより、前記ロータに対して軸方向に対向する前記第1及び第2着磁部の前記第1着磁用コイルが同極に励磁され、前記第1着磁用コイルの励磁に基づく前記着磁磁束により、周方向1個置きの前記永久磁石を同極の磁石となるように着磁を行う第1着磁工程と、
前記第1及び第2着磁部のそれぞれにおいて、第2電源装置に接続される前記第2系統に通電することにより、前記ロータに対して軸方向に対向する前記第1及び第2着磁部の前記第2着磁用コイルが同極に励磁され、前記第2着磁用コイルの励磁に基づく前記着磁磁束により、前記第1着磁工程にて着磁を行う各永久磁石の間において周方向1個置きの前記永久磁石を前記第1着磁工程にて着磁を行う各永久磁石とは異極の磁石となるように着磁を行う第2着磁工程と、を備え、
前記第1及び第2系統の通電に基づく前記第1及び第2着磁工程を分けて実施する、ロータの製造方法。
【請求項10】
請求項
8又は請求項
9に記載のロータの製造方法によって製造されるロータであって、
ロータコア(22)の磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石(23)を有し、着磁装置(30)を用いて埋込状態にある前記永久磁石に対して外部から着磁が行われて構成され、
前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位(25)の軸方向両側から同極の着磁磁束を通して着磁された前記永久磁石の着磁単位をブロックとし、軸方向に複数ブロック積み重ねて構成された、ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込状態にある永久磁石の着磁をロータの外部から行う埋込磁石型のロータの製造装置、ロータの製造方法及びロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、埋込磁石型(IPM型)のロータを用いる回転電機が周知である。埋込磁石型のロータは、永久磁石がロータコアの内部に埋め込まれる態様をなし、永久磁石によるマグネットトルクに加えて、永久磁石より径方向外側に位置する外側コア部にてリラクタンストルクを得る構成となっている。このような埋込磁石型のロータにおいては、埋込状態をなす未着磁の永久磁石を有したロータコアに対し、外径側から着磁装置にて着磁が行われているものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、埋込磁石型のロータをより高性能とするためには、永久磁石を略V又はU字の折返し形状として永久磁石の磁石表面とロータコアの外側コア部との拡大を図り、マグネットトルクとリラクタンストルクとをともに増大させることが一つの対策としてある。
【0005】
しかしながら、永久磁石の磁石表面とロータコアの外側コア部とをより大きくしようと、永久磁石の折返し部分である屈曲部をより径方向内側に位置させて深い折返し形状とすると、永久磁石の特に屈曲部及び屈曲部近辺が着磁装置から遠く離れることになる。そのため、特許文献1等にて開示されているようなロータコアの外径側から着磁する手法では、着磁装置から遠い部位となる永久磁石の屈曲部や屈曲部近辺が十分な磁力となるように着磁されるかが懸念されるところである。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ロータコアに埋込状態の永久磁石に対して高磁力で着磁し得るロータの製造装置、ロータの製造方法及びその着磁がなされたロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するロータの製造装置は、ロータコア(22)の磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石(23)を有するロータ(20)において、埋込状態にある前記永久磁石に対して前記ロータの外部から着磁を行う着磁装置(30)を含むロータの製造装置であって、前記着磁装置は、前記ロータの軸方向一方側に配置され、前記永久磁石に着磁磁束を供給する着磁用コイル(33a,35a1,35a2)を有する第1着磁部(31)と、前記ロータの軸方向他方側に配置され、前記永久磁石に着磁磁束を供給する着磁用コイル(43a,45a1,45a2)を有する第2着磁部(41)とを含み、前記着磁用コイルへの通電に基づく前記永久磁石の着磁に際し、同一の前記永久磁石の着磁においては前記ロータに対して軸方向に対向する前記第1及び第2着磁部が同極に励磁され、前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位(25)の軸方向両側から同極の着磁磁束を通して着磁を行うように構成された。
【0008】
上記課題を解決するロータの製造方法は、ロータコア(22)の磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石(23)を有するロータ(20)において、着磁装置(30)を用いて埋込状態にある前記永久磁石に対して前記ロータの外部から着磁を行うロータの製造方法であって、前記着磁装置は、前記ロータの軸方向一方側に配置され、前記永久磁石に着磁磁束を供給する着磁用コイル(33a,35a1,35a2)を有する第1着磁部(31)と、前記ロータの軸方向他方側に配置され、前記永久磁石に着磁磁束を供給する着磁用コイル(43a,45a1,45a2)を有する第2着磁部(41)とを含む構成のものを用い、前記着磁用コイルへの通電に基づく前記永久磁石の着磁に際し、同一の前記永久磁石の着磁においては前記ロータに対して軸方向に対向する前記第1及び第2着磁部が同極に励磁され、前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位(25)の軸方向両側から同極の着磁磁束を通して着磁を行う。
【0009】
上記ロータの製造装置及び上記ロータの製造方法によれば、ロータに埋込状態にある永久磁石の着磁に際し、同一の永久磁石の着磁において、ロータに対して軸方向に対向する第1及び第2着磁部が同極に励磁され、永久磁石の折返し形状の内側に位置するロータコアの部位の軸方向両側から同極の着磁磁束を通して着磁が行われる。これにより、折返し形状をなす永久磁石であっても径方向外側端部から径方向内側寄りの屈曲部まで全体に亘って着磁に好適な着磁磁束の供給が可能なため、永久磁石の全体に亘りより有用で十分な磁力の着磁を行うことが可能である。
【0010】
上記課題を解決するロータの製造装置及びロータの製造方法を用いて着磁がなされるロータは、ロータコア(22)の磁石収容孔(24)に埋込状態にて設けられ、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石(23)を有し、着磁装置(30)を用いて埋込状態にある前記永久磁石に対して前記ロータの外部から着磁が行われて構成されるロータ(20)であって、前記永久磁石の折返し形状の内側に位置する前記ロータコアの部位(25)の軸方向両側から同極の着磁磁束を通して着磁された前記永久磁石の着磁単位をブロックとし、軸方向に複数ブロック積み重ねて構成された。
【0011】
ロータの軸方向から着磁磁束を供給して永久磁石の着磁を行う場合、軸方向中間部分に位置する永久磁石の着磁が十分行えるか懸念されるが、上記ロータは、十分な着磁が行える永久磁石の着磁単位をブロックとして軸方向に複数ブロック積み重ねる構成であるため、軸方向に長い仕様のロータであっても十分な磁力の永久磁石を有するものとして提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】埋込磁石型のロータを有する回転電機の構成図。
【
図4】一実施形態の着磁装置の全体構成を説明するための説明図。
【
図5】同形態の着磁装置の全体構成を説明するための説明図。
【
図6】(a)(b)は着磁装置のコイル体の構成を説明するための説明図。
【
図7】同形態の着磁装置にて着磁された永久磁石を説明するための説明図。
【
図8】変更例の着磁装置の全体構成を説明するための説明図。
【
図9】変更例の着磁装置のコイル体の構成を説明するための説明図。
【
図10】着磁装置にて着磁された永久磁石を含む変更例のロータの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、ロータの製造装置、ロータの製造方法及びロータの一実施形態を説明する。
図1に示す本実施形態の回転電機Mは、埋込磁石型のブラシレスモータにて構成されている。回転電機Mは、略円環状のステータ10と、ステータ10の径方向内側空間にて回転可能に配置される略円柱状のロータ20とを備えている。
【0014】
ステータ10は、略円環状のステータコア11を備えている。ステータコア11は、磁性金属材料にて構成、例えば複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成されている。ステータコア11は、径方向内側に向かって延び周方向等間隔に配置される本実施形態では12個のティース12を有している。各ティース12は、互いに同一形状をなしている。ティース12は、先端部である径方向内側端部が略T型をなし、先端面12aがロータ20の外周面に倣った円弧状をなしている。ティース12には、巻線13が集中巻きにて巻装されている。巻線13は3相結線がなされ、
図1ようにそれぞれU相、V相、W相として機能する。そして、巻線13に対して電源供給がなされると、ロータ20を回転駆動するための回転磁界がステータ10にて生じるようになっている。このようなステータ10は、ステータコア11の外周面がハウジング14の内周面に対して固定されている。
【0015】
ロータ20は、回転軸21と、回転軸21が中心部に嵌挿される略円柱状のロータコア22と、ロータコア22の内部に埋め込まれる態様をなす本実施形態では8個の永久磁石23とを備えている。ロータコア22は、磁性金属材料にて構成、例えば複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成されている。ロータ20は、回転軸21がハウジング14に設けられる図示略の軸受に支持されることで、ステータ10に対して回転可能に配置されている。
【0016】
ロータコア22は、永久磁石23を収容するための磁石収容孔24を有している。磁石収容孔24は、ロータコア22の周方向等間隔に本実施形態では8個設けられている。各磁石収容孔24は、径方向内側に向かって凸の略V字の折返し形状をなし、互いに同一形状をなしている。また、磁石収容孔24は、ロータコア22の軸方向全体に亘り設けられている。
【0017】
ここで、本実施形態の永久磁石23は、磁石粉体を樹脂と混合した磁石材料を成型固化してなるボンド磁石よりなる。すなわち、永久磁石23は、ロータコア22の磁石収容孔24を成形型とし、固化前の磁石材料が射出成形により磁石収容孔24内に隙間なく充填され、充填後に磁石収容孔24内で固化されて構成されている。したがって、磁石収容孔24の孔形状は、永久磁石23の外形形状となる。本実施形態の永久磁石23に用いられる磁石粉体としては、例えばサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁石が用いられるが、他の希土類磁石等を用いてもよい。
【0018】
永久磁石23は、径方向内側に向かって凸の略V字の折返し形状をなしている。詳述すると、永久磁石23は、
図2に示すように、一対の直線部23aの径方向内側端部同士を屈曲部23bにて繋いだ形状をなしている。直線部23aの径方向外側端部23cは、ロータコア22の外周面22aの近くに位置している。永久磁石23は、一対の直線部23a及び屈曲部23bを含むV字経路のいずれにおいても厚さWmが一定に設定されている。永久磁石23は、ロータ20の軸中心O1を通る自身の周方向中心線Lsに対して線対称形状をなし、隣接の永久磁石23間におけるロータ20の軸中心O1を通る磁極境界線Ldに近接している。隣接の磁極境界線Ld間の角度、すなわちこの永久磁石23を含むロータ磁極部26の磁極開角度θmは、電気角で180°である。
【0019】
ここで、V字形状をなす永久磁石23の各直線部23aの内側面の延長線とロータコア22の外周面22aとの交点間を磁極ピッチLp、永久磁石23の周方向中心線Ls上でロータコア22の外周面22aから屈曲部23bの内側面までを埋込深さLmとすると、本実施形態の永久磁石23は、一例として磁極ピッチLpより埋込深さLmが大となるような深い折返し形状に設定されている。つまり、各直線部23a及び屈曲部23bの各内側面でなす本実施形態の永久磁石23の磁石表面23xは、周知の表面磁石型の磁石表面(図示略)よりも大きい設定となっている。なお、永久磁石23のこの折返し形状は一例であり、埋込深さLmが浅いものや屈曲部23bの大きい略U字の折返し形状のもの等、適宜変更可である。
【0020】
また、
図2及び
図3に示すように、永久磁石23は、埋込深さLmを大きい設定としていることで、屈曲部23bがロータコア22の中心部の回転軸21の嵌挿される軸嵌挿孔22bに近い径方向内側寄りに位置している。また、永久磁石23は、ロータコア22の軸方向全体に亘り設けられている。本実施形態のロータ20は、軸方向長さL1が短い設定のものであり、そのロータ20に組み込まれる永久磁石23は、側方視でロータ20の径方向に長い長方形状をなしている。
【0021】
ロータコア22の磁石収容孔24内で固化した永久磁石23は、
図4等に示す着磁装置30を用い、未着磁状態から本来の磁石として機能させるべくロータコア22の外部から着磁が行われる。着磁装置30及び着磁装置30を用いた着磁方法の詳細については後述する。永久磁石23は、ロータコア22の周方向に本実施形態では8個設けられており、周方向に交互に異極となるように着磁される。また、個々の永久磁石23においては、それぞれ自身の厚さ方向に磁化される。
【0022】
永久磁石23のV字の折返し形状の内側であり永久磁石23よりも径方向外側に位置するロータコア22の部位は、ステータ10と対向してリラクタンストルクを得るための外側コア部25として機能する。外側コア部25は、軸方向視でロータ20の中心部方向に1つの頂点を向けた略三角形状をなしている。そして、ロータ20は、永久磁石23と永久磁石23のV字形状の内側で囲まれる外側コア部25とを含む本実施形態では8極のロータ磁極部26として構成されている。各ロータ磁極部26は、
図1のように周方向に交互にそれぞれN極、S極として機能する。このようなロータ磁極部26を有するロータ20では、マグネットトルクとリラクタンストルクとが好適に得られるものとなる。
【0023】
次に、永久磁石23の着磁装置30及び着磁装置30を用いた永久磁石23の着磁方法を含むロータ20の製造装置及びロータ20の製造方法について説明する。
[着磁装置の構成]
本実施形態の着磁装置30について、
図4及び
図5を用いて説明する。なお、
図4及び
図5では、断面部分について適宜ハッチングを省略してある。また、コイル体33の着磁用コイル33a等、簡略化して図示してある。
【0024】
着磁装置30は、
図4及び
図5に示すように、装置上側部31と装置下側部41とを備え、着磁対象のロータ20の設置及び取出しを可能とすべく、装置上側部31と装置下側部41とが接離可能に構成されている。この場合、装置上側部31と装置下側部41とは、いずれか一方若しくは両方が接離動作を行う。
【0025】
装置上側部31は、磁性金属製の上側着磁ヨーク32と、上側着磁ヨーク32に一体的に装着されるコイル体33とを備えている。上側着磁ヨーク32は、着磁対象のロータ20より若干大径の円環板状のベース部32aと、ベース部32aの下面の周方向等間隔に8個の対向凸部32bとを備えている。各対向凸部32bは、着磁対象のロータ20の上側面に当接若しくは近接対向し、各ロータ磁極部26に対応して設けられている。各対向凸部32bには、それぞれの外周面32cにコイル体33の着磁用コイル33aが巻回態様をなして装着されている。コイル体33は、各対向凸部32bと同数の8個の着磁用コイル33aを備えている。
【0026】
各対向凸部32bは、ロータ20の軸方向視で、各ロータ磁極部26のV字の折返し形状をなす永久磁石23にて囲まれた外側コア部25と同等の形状をなしている(
図6(b)参照)。具体的には、各対向凸部32bは、ロータ20の中心部方向に1つの頂点を向けた略三角形状をなしており、各対向凸部32bの外周面32cは、同じく軸方向視で永久磁石23のV字内側の磁石表面23x及びロータコア22の外周面22aと一致するような周面形状にて構成されている。なお、各対向凸部32bは、各外側コア部25よりも若干小さく構成されていてもよい。これにより、各対向凸部32bから出入りする主たる着磁磁束は、永久磁石23の軸方向端面を直接的に通らずに外側コア部25から永久磁石23の磁石表面23xを通り、永久磁石23を厚さWm方向(
図2参照)に磁化させるものとなっている。
【0027】
図6(a)に示すように、コイル体33は、1本の導線33bを8箇所それぞれで所定回巻回させた各着磁用コイル33aを有して1系統として構成され、両端の一対の接続線33cが1つの電源装置34と接続されている。コイル体33は、上側着磁ヨーク32の周方向に沿うように略円環状をなし、周方向に並ぶ各対向凸部32bにそれぞれ装着される。コイル体33における各着磁用コイル33aは、周方向で交互に逆向きとなる巻回態様とされている。つまり、コイル体33は、電源装置34により通電がなされると、各着磁用コイル33a及び各着磁用コイル33aの巻回された各対向凸部32bが周方向で交互に異極となるように励磁される。各着磁用コイル33a及び各対向凸部32bにより着磁される各永久磁石23は、ロータ20の周方向において交互に異極の磁石となる。
【0028】
また、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、コイル体33において、周方向に隣接する各着磁用コイル33a間の渡り線33dは、隣接する各対向凸部32bの径方向内側の頂点部分間で渡るように設定されている。渡り線33dが極力短くし得る構成としている。さらに、各着磁用コイル33aを巻回構成する導線33bの交差部33eについても、各対向凸部32bの径方向内側の頂点部分に設定、すなわち各永久磁石23の屈曲部23bに対応して設定されている。各着磁用コイル33aにおける導線33bの交差部33eは着磁磁束の乱れを懸念する箇所であるため、万一着磁磁束に乱れが生じたとしても永久磁石23として最もステータ10から遠く影響の出難い屈曲部23bに設定されている。
【0029】
このように装置上側部31は構成されているが、装置下側部41についてもその装置上側部31と同一構成をなしている。すなわち、
図4から
図6に示すように、装置下側部41は、装置上側部31の上側着磁ヨーク32、コイル体33、電源装置34と対応して、ベース部42aの上面に8個の対向凸部42bを有する下側着磁ヨーク42と、8個の着磁用コイル43aを有するコイル体43と、コイル体43に通電する1つの電源装置44とを備えている。各対向凸部42bには、コイル体43の着磁用コイル43aが巻回態様をなして各外周面42cに装着されている。コイル体43は、周方向で交互に逆向きの巻回態様をなす各着磁用コイル43aが1本の導線43bにて1系統として構成され、一対の接続線43cを通じて電源装置44から通電がなされる。各着磁用コイル43aの渡り線43dはコイル体43の径方向内側に、各着磁用コイル43aにおける導線43bの交差部43eは各対向凸部42bの径方向内側の頂点部分にそれぞれ設定された同様の構成となっている。
【0030】
このような装置上側部31及び装置下側部41は、ロータ20の着磁の際において、着磁対象のロータ20の軸方向に対向して配置され、装置上側部31及び装置下側部41の各対向凸部32b,42b同士が軸方向に対向する位置関係となる。そして、各電源装置34,44による通電がなされると、装置上側部31及び装置下側部41で軸方向に対向する各対向凸部32b,42b及び各着磁用コイル33a,43a同士は、互いに同極にて励磁されるようになっている。
【0031】
[着磁装置を用いた永久磁石の着磁方法]
図4から
図6に示す上記構成の着磁装置30を用い、先ず、装置上側部31と装置下側部41とが互いに離間した開放状態の際に未着磁の永久磁石23を有するロータ20がその装置上側部31と装置下側部41との間に設置される。着磁対象のロータ20の設置後、装置上側部31と装置下側部41とが互いに近接され、着磁時に同極となる装置上側部31及び装置下側部41の各対向凸部32b,42bがロータ20の上側面と下側面とのそれぞれに当接若しくは近接対向とされる。
【0032】
次いで、装置上側部31及び装置下側部41の各電源装置34,44により各コイル体33,43に対して通電が行われる。装置上側部31及び装置下側部41のそれぞれの各対向凸部32b,42bは、各着磁用コイル33a,43aへの通電により周方向で交互に異極に励磁される。また、装置上側部31及び装置下側部41の互いに対向する各対向凸部32b,42b(各着磁用コイル33a,43a)同士については同極に励磁される。
【0033】
図4に示すように、装置上側部31及び装置下側部41の互いに対向する各対向凸部32b,42b同士が同極の例えばS極に励磁されると、外側コア部25内では永久磁石23の厚さWm(
図2参照)方向を含む軸直交方向に沿った着磁磁束が軸方向両側の各対向凸部32b,42bにそれぞれに向かう磁束の流れに変換される。これにより、永久磁石23は、磁石表面23x側がN極となるように着磁される。また、各対向凸部32b,42b同士がN極に励磁されると、図示略とするが、外側コア部25内では各対向凸部32b,42bのそれぞれからの軸方向に沿った着磁磁束が永久磁石23の厚さWm方向を含む軸直交方向に沿った磁束の流れに変換される。これにより、永久磁石23は、磁石表面23x側がS極となるように着磁される。
【0034】
また、各対向凸部32b,42bは、V字の折返し形状をなす各永久磁石23にて囲まれた外側コア部25と対応した形状をなしているため、各対向凸部32b,42bから出入りする着磁磁束は、永久磁石23の軸方向端面を直接的に通らず、外側コア部25内で軸方向から軸直交方向に磁束の向きが好適に変換されて永久磁石23の磁石表面23xを通る。そのため、永久磁石23は、厚さWm方向(
図2参照)に磁化され易い着磁態様となっている。さらに、各着磁用コイル33a,43aを巻回構成する導線33b,43bの交差部33e,43eは着磁磁束の乱れを懸念する箇所であるが、各対向凸部32b,42bの径方向内側の頂点部分、すなわち各永久磁石23において最もステータ10から遠く影響の出難い屈曲部23bに設定されているため、万一着磁磁束に乱れが生じたとしても、各永久磁石23の着磁への影響は小さく抑えられる。
【0035】
このように略V字の折返し形状をなす本実施形態のような永久磁石23であっても、径方向外側端部23cから径方向内側寄りの屈曲部23bまで全体に亘ってロータ20の軸方向に配置される着磁装置30から着磁に好適な着磁磁束の供給が可能なため、永久磁石23の全体に亘りより有用な着磁を行うことができるようになっている。特に本実施形態の永久磁石23のように、磁極ピッチLpより埋込深さLmが大となるような深い折返し形状となる程より有用である。
【0036】
したがって、従来一般的に行われているロータの径方向外側から着磁する手法を用いた永久磁石では、屈曲部やその近辺の磁力がより弱くなりがちとなるところ、
図7に示すように、本実施形態の着磁手法を用いて着磁された永久磁石23では、屈曲部23bやその近辺でも所望下限値を上回る十分な磁界強さにて着磁することが可能である。永久磁石23において着磁し難い屈曲部23bの上下方向中央部分23dにおいても、所望下限値を上回る磁界強さでの着磁が可能である。こうして、本実施形態の永久磁石23は、所望下限値を上回る磁界強さにて着磁される部位が90%を超える95%程度となり、永久磁石23の全体に亘り十分な磁力にて着磁することが可能である。
【0037】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ロータ20に埋込状態にある永久磁石23の着磁を着磁装置30を用いて外部から行う際、同一の永久磁石23の着磁においては、ロータ20に対して軸方向に対向する装置上側部31及び装置下側部41の各対向凸部32b,42bが各着磁用コイル33a,43aの通電に基づき同極に励磁される。このとき、永久磁石23の折返し形状の内側であって永久磁石23の径方向外側に位置するロータコア22の外側コア部25に対して軸方向両側から同極の着磁磁束が通されて永久磁石23の着磁が行われる。これにより、折返し形状をなす永久磁石23であっても径方向外側端部23cから径方向内側寄りの屈曲部23bまで全体に亘って着磁に好適な着磁磁束の供給ができるため、永久磁石23の全体に亘りより有用で十分な磁力の着磁を行うことができる。
【0038】
(2)各対向凸部32b,42bは、ロータ20の軸方向視で、永久磁石23の折返し形状の内側で永久磁石23の径方向外側に位置する外側コア部25と同等若しくは若干小さく構成されている。これにより、各対向凸部32b,42bから出入りする着磁磁束が、永久磁石23の軸方向端面を直接的に通らず外側コア部25内で軸方向から軸直交方向に磁束の向きが好適に変換されるため、永久磁石23を厚さWm方向に適切に磁化させることができる。
【0039】
(3)隣接の着磁用コイル33a,43a間の渡り線33d,43dは、コイル体33,43の径方向内側位置に設定されている。そのため、渡り線33d,43dを含むコイル体33,43を構成する導線33b,43bの長さを極力短くすることが可能である。導線33b,43bの長さが短くなれば、抵抗が小さくなって着磁時のコイル体33,43の発熱抑制に繋がり、着磁を含むロータ20の生産性向上に繋がる。
【0040】
(4)各着磁用コイル33a,43aを巻回構成する導線33b,43bの交差部33e,43eは、径方向内側位置に設定、すなわち各永久磁石23において最もステータ10から遠く影響の出難い屈曲部23bに設定されている。そのため、万一着磁磁束に乱れが生じたとしても、各永久磁石23の着磁への影響を小さく抑えることができる。
【0041】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・着磁装置30の各対向凸部32b,42bをロータ20の軸方向視で各外側コア部25と合わせた形状にて構成したが、対向凸部32b,42bの形状を外側コア部25の形状と一部合う形状、異なる形状してもよい。
【0042】
・
図8に示すように、上側着磁ヨーク32及び下側着磁ヨーク42の中心部にそれぞれ挿入突部32d,42dを設け、着磁対象のロータ20の中心部の軸嵌挿孔22bに各挿入突部32d,42dを挿入して着磁を行う構成としてもよい。各挿入突部32d,42dを設けることで、各挿入突部32d,42dに対して着磁用コイル33a,43aの励磁に基づく着磁磁束の一部が流れるようになるため、ロータ20の内径側を通る着磁磁束を増加することができる。これにより、ロータ20の内径側に位置する永久磁石23の屈曲部23b及び屈曲部23bの近辺の着磁をより効果的に行うことができる。
【0043】
また
図8の態様等において、
図9に示すように、装置上側部31及び装置下側部41のコイル体35,45を周方向1個置きで巻回方向が同じ第1着磁用コイル35a1,45a1同士を1本の導線35b1,45b1で構成した第1系統と、第2着磁用コイル35a2,45a2同士を1本の導線35b2,45b2で構成した第2系統に分離する。すなわち、着磁する永久磁石23の磁極毎に分離した2つの系統で構成される。第1系統には第1電源装置36a1,46a1が、第2系統には第2電源装置36a2,46a2がそれぞれ接続される。そして、第1系統による第1着磁工程と第2系統による第2着磁工程との2つの工程に分けて着磁が行われる。このようにすれば、上記各挿入突部32d,42dが各工程で1つの磁極として機能するため、ロータ20の内径側を通る着磁磁束を一層増加でき、永久磁石23の屈曲部23b及びその近辺の着磁を一層効果的に行うことができる。
【0044】
・隣接の着磁用コイル33a,43a間の渡り線33d,43dをコイル体33,43の径方向内側位置に設定したが、例えば径方向外側位置等、適宜変更してもよい。
・着磁用コイル33a,43aを巻回構成する導線33b,43bの交差部33e,43eを径方向内側位置に設定したが、例えば径方向外側位置等、適宜変更してもよい。
【0045】
・着磁装置30による永久磁石23の着磁はロータ20の軸方向から着磁磁束を供給して行うものであるため、軸方向に長い仕様のロータ20を着磁する場合、軸方向中間部分に位置する永久磁石23の着磁が十分行えるか懸念されるところである。このような場合、
図10に示すように、着磁装置30にて永久磁石23の十分な着磁が行えるロータ20の軸方向長さをL1までとした場合、軸方向長さをL1若しくはL1以下に設定した着磁単位のブロックで2段、3段・・・と、着磁済みの永久磁石23を有するロータコア22を軸方向に複数ブロック積み重ねて、軸方向長さがL1を超える軸方向長さL2のロータ20を構成することが可能である。軸方向長さがL1を超えるL2であってもブロック単位で永久磁石23に対して十分な着磁がなされるため、全体として十分な磁力の永久磁石23を有するロータ20として構成することができる。
【0046】
・着磁装置30を上側に配置される装置上側部31と下側に配置される装置下側部41とで構成したが、着磁装置30の配置構成はこれに限らない。装置上側部31及び装置下側部41を上下方向以外の水平方向や傾斜方向に並べて配置する構成としてもよい。
【0047】
・
図2及び
図7等にて示した永久磁石23の形状は一例であり、適宜変更してもよい。
・
図1等で示した回転電機Mの構成は一例であり、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0048】
20 ロータ、22 ロータコア、22b 軸嵌挿孔、23 永久磁石、24 磁石収容孔、25 外側コア部(ロータコアの部位)、30 着磁装置、31 装置上側部(第1着磁部)、32b 対向凸部、32c 外周面、32d 挿入部(挿入突部)、33 コイル体、33a 着磁用コイル、33b 導線、33d 渡り線、33e 交差部、35a1 第1着磁用コイル(着磁用コイル)、35a2 第2着磁用コイル(着磁用コイル)、41 装置下側部(第2着磁部)、42b 対向凸部、42c 外周面、42d 挿入部(挿入突部)、43 コイル体、43a 着磁用コイル、43b 導線、43d 渡り線、43e 交差部、45a1 第1着磁用コイル(着磁用コイル)、45a2 第2着磁用コイル(着磁用コイル)。