(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
A61B3/10 100
(21)【出願番号】P 2020115837
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】大谷 尚平
(72)【発明者】
【氏名】久野 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 倫全
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼谷 愛
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸弘
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-118456(JP,A)
【文献】国際公開第2018/135175(WO,A1)
【文献】特開2016-202249(JP,A)
【文献】特開2011-092702(JP,A)
【文献】特開2019-193883(JP,A)
【文献】特開2018-171141(JP,A)
【文献】特開2019-150532(JP,A)
【文献】特開2013-153879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底に照射された測定光と、参照光と、による干渉信号を検出するOCT光学系を有し、前記干渉信号に基づいて、前記眼底のOCTデータを取得する眼底撮影装置であって、
前記眼底の観察画像を取得する観察画像取得手段と、
前記観察画像に含まれる黄斑部および乳頭部を、前記OCT光学系により撮影される前記OCTデータの撮影範囲内へと誘導するための誘導処理であって、前記黄斑部および前記乳頭部の
両方を含む解析対象と、前記解析対象の解析に必要な領域サイズを考慮して前記撮影範囲内に設定された適正位置と、を合わせるための誘導処理を実行する制御手段と、
前記黄斑部および前記乳頭部の両方が解析対象として含まれる前記OCTデータを解析処理し、黄斑部及び乳頭部に対する解析結果を得る解析処理手段と、を備え、
前記制御手段は、前記OCT光学系の測定光軸が、被検眼の黄斑部と乳頭部の中心よりも黄斑側であって、かつ、黄斑部から外れた位置に配置されるように、前記誘導処理を実行することを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項2】
請求項1の眼底撮影装置において、
前記制御手段は、前記誘導処理として、前記解析対象を前記適正位置へと誘導するためのガイド情報を出力させることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項3】
請求項1または2の眼底撮影装置において、
前記OCT光学系により撮影される前記OCTデータの前記撮影範囲を調整する調整手段を備え、
前記制御手段は、前記解析対象を前記撮影範囲内へ誘導するために、前記誘導処理として、前記調整手段を制御し、前記撮影範囲を調整することを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの眼底撮影装置において、
前記観察画像は、前記OCT光学系によって撮影可能な、前記眼底のOCT断層画像であることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの眼底撮影装置において、
前記黄斑部または前記乳頭部のいずれか一方を撮影した第1OCTデータを取得する第1撮影モードと、前記黄斑部および前記乳頭部の双方を撮影した第2OCTデータを取得する第2撮影モードと、を設定可能な設定手段を備え、
前記制御手段は、前記設定手段によって前記第2撮影モードが設定された場合に、前記解析対象と前記適正位置とを合わせるための前記誘導処理を実行することを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの眼底撮影装置において、
前記制御手段は、前記乳頭部と前記適正位置とを合わせるための前記誘導処理を実行することを特徴とする眼底撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の眼底のOCTデータを取得する眼底撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)の構成と、眼底カメラ光学系の構成と、を備えた複合型の眼底撮影装置が知られている。例えば、特許文献1では、眼底の黄斑部と乳頭部をともに撮影した、広域のOCTデータを取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような広域のOCTデータは、黄斑部および乳頭部の少なくともいずれかが含まれない(あるいは、一部が欠けた)状態の画像として得られることがある。これらは解析や診断に不適切なため、再度の撮影を行う必要が生じていた。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、被検眼の撮影を効率よく進めることができる眼底撮影装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 被検眼の眼底に照射された測定光と、参照光と、による干渉信号を検出するOCT光学系を有し、前記干渉信号に基づいて、前記眼底のOCTデータを取得する眼底撮影装置であって、
前記眼底の観察画像を取得する観察画像取得手段と、
前記観察画像に含まれる黄斑部および乳頭部を、前記OCT光学系により撮影される前記OCTデータの撮影範囲内へと誘導するための誘導処理であって、前記黄斑部および前記乳頭部の両方を含む解析対象と、前記解析対象の解析に必要な領域サイズを考慮して前記撮影範囲内に設定された適正位置と、を合わせるための誘導処理を実行する制御手段と、
前記黄斑部および前記乳頭部の両方が解析対象として含まれる前記OCTデータを解析処理し、黄斑部及び乳頭部に対する解析結果を得る解析処理手段と、を備え、
前記制御手段は、前記OCT光学系の測定光軸が、被検眼の黄斑部と乳頭部の中心よりも黄斑側であって、かつ、黄斑部から外れた位置に配置されるように、前記誘導処理を実行することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】正面観察画像における適正位置の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
本開示に係る眼科撮影装置の実施形態を説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0010】
本実施形態の眼底撮影装置は、光干渉断層計の構成を備えたOCT装置である。例えば、眼底撮影装置は、被検眼の眼底に照射された測定光と、参照光と、による干渉信号を検出するOCT光学系を有し、干渉信号に基づいて、眼底のOCTデータを取得する。なお、眼底撮影装置は、さらに、眼底カメラの構成(眼底カメラ光学系)を有し、眼底画像を取得してもよい。また、眼底撮影装置は、さらに、走査型レーザ検眼鏡の構成(SLO光学系)を有し、SLO正面画像を取得してもよい。
【0011】
<観察画像取得手段>
本実施形態の眼底撮影装置は、観察画像取得手段(例えば、制御部300)を備えてもよい。観察画像取得手段は、被検眼における眼底の観察画像(眼底観察画像)を取得する。観察画像取得手段は、OCT光学系により撮影されたOCTデータを、眼底観察画像として取得してもよい。この場合は、OCTデータとして、2次元OCT断層画像を取得してもよいし、3次元OCT断層画像を取得してもよいし、3次元OCT断層画像に基づくOCT正面画像を取得してもよい。また、観察画像取得手段は、眼底カメラ光学系により撮影された眼底観察画像を取得してもよい。この場合は、赤外光による赤外眼底画像を取得してもよい。また、観察画像取得手段は、SLO光学系により撮影された眼底観察画像(すなわち、SLO正面画像)を取得してもよい。
【0012】
<検出手段>
本実施形態の眼底撮影装置は、検出手段(例えば、制御部300)を備えてもよい。検出手段は、観察画像取得手段により取得された眼底観察画像から、黄斑部または乳頭部の少なくともいずれかを含む解析対象を検出する。検出手段は、種々の画像処理の手法を利用して、解析対象を検出してもよい。一例としては、特徴点抽出方法、相関関数を用いる方法、フーリエ変換を用いる方法、等を利用してもよい。
【0013】
検出手段は、黄斑部、乳頭部、等の解析対象を直接的に検出してもよい。例えば、検出手段は、予め記憶部に記憶された、解析対象の組織的な特徴(一例として、形状、輝度、等)を利用することにより、解析対象を検出してもよい。また、例えば、検出手段は、血管等を検出し、その検出結果に基づいて、黄斑部、乳頭部、等の解析対象を間接的に検出してもよい。一例としては、血管の伸長方向から黄斑部や乳頭部の位置を予測して検出してもよい。また、例えば、検出手段は、左右眼情報を利用することで、黄斑部や乳頭部の位置を予測して検出してもよい。
【0014】
<調整手段>
本実施形態の眼底撮影装置は、調整手段を備えてもよい。調整手段は、OCT光学系により撮影されるOCTデータの撮影範囲を調整する。例えば、調整手段は、OCT光学系において測定光を走査させる走査手段(例えば、光スキャナ234)であってもよい。また、例えば、調整手段は、被検眼の視線を注視させるための光源(例えば、固視灯)であってもよい。また、例えば、調整手段は、被検眼に対して撮影手段(例えば、撮影部200)を駆動させるための駆動手段であってもよい。一例としては、被検眼に対して撮影手段を左右方向、上下方向、および前後方向に移動させるための駆動手段(例えば、駆動部105)であってもよい。また、一例としては、被検眼に対して撮影手段を左右方向および上下方向に傾斜(旋回)させるための駆動手段であってもよい。
【0015】
<設定手段>
本実施形態の眼底撮影装置は、設定手段(例えば、制御部300)を備えてもよい。設定手段は、黄斑部または乳頭部のいずれか一方を撮影した第1OCTデータを取得する第1撮影モードと、黄斑部および乳頭部の双方を撮影した第2OCTデータを取得する第2撮影モードと、を設定可能である。例えば、設定手段は、操作者が操作手段(例えば、モニタ104)を操作することで入力される信号に基づき、第1撮影モードまたは第2撮影モードのいずれかを設定してもよい。また、例えば、設定手段は、被検眼を撮影するための撮影プログラムに基づき、第1撮影モードまたは第2撮影モードのいずれかを設定してもよい。
【0016】
<制御手段>
本実施形態の眼底撮影装置は、制御部(例えば、制御部300)を備えてもよい。制御部は、眼底観察画像に含まれる黄斑部および乳頭部を、OCT光学系により撮影されるOCTデータの撮影範囲内へと誘導するための誘導処理であって、解析対象と適正位置とを合わせるための誘導処理を実行する。なお、解析対象は、黄斑部および乳頭部の少なくともいずれかであってもよい。また、適正位置は、解析対象の解析に必要な領域サイズを考慮して撮影範囲内に設定された位置であってもよい。これにより、被検眼の撮影が効率よく進められ、黄斑部や乳頭部が撮影範囲内に含まれないことによる再撮影の可能性が低減される。
【0017】
なお、OCTデータの解析内容に応じて、解析対象の解析に必要な領域サイズは変更されてもよい。すなわち、OCTデータの解析内容に応じて、適正位置は変更されてもよい。例えば、適正位置は、黄斑部や乳頭部が位置すると予測される位置に設定されてもよい。この場合、適正位置は、実験やシミュレーション等の結果に基づいて予測(記憶)された位置に設定されてもよい。また、この場合、適正位置は、予め取得した被検眼毎に異なる眼軸長に基づいて予測された位置に設定されてもよい。また、例えば、適正位置は、検出手段の検出結果に基づいて設定されてもよい。この場合、適正位置は、眼底観察画像から検出された黄斑部や乳頭部の位置に設定されてもよい。また、この場合、適正位置は、眼底観察画像から検出された黄斑部や乳頭部から所定の距離だけ離れた位置に設定されてもよい。
【0018】
制御部は、誘導処理として、解析対象を適正位置へと誘導するためのガイド情報を出力させてもよい。例えば、ガイド情報を利用することで、解析対象と目標位置とのずれを解消させ、解析対象が適正位置へ容易に合わせられる。
【0019】
例えば、制御部は、表示手段を制御し、表示手段にガイド情報を表示させてもよい。また、例えば、制御部は、音声発生手段(一例として、スピーカ)を制御し、音声発生手段にガイド情報を音声として発生させてもよい。また、例えば、制御部は、報知手段(一例として、ランプ)を制御し、報知手段の点灯や点滅によりガイド情報を表してもよい。なお、制御部は、これらを組み合わせた制御を実行してもよいし、これらとは異なる制御を実行してもよい。
【0020】
なお、ガイド情報は、検者の動作を誘導するための情報であってもよい。例えば、被検眼の視線を注視させる固視灯の位置の変更、被検眼に対する撮影手段(例えば、撮影部200)の移動、被検者の顔の傾きや位置の調整、等を検者に促すための情報が挙げられる。また、ガイド情報は、被検者の動作を誘導するための情報であってもよい。例えば、被検者に視線の移動を促すための情報(一例としては、視線を移動させる旨を表した音声の発生)が挙げられる。また、ガイド情報は、固視灯の移動量と移動方向との少なくともいずれかを示す情報であってもよい。また、ガイド情報は、撮影手段の移動量と移動方向との少なくともいずれかを示す情報であってもよい。もちろん、ガイド情報は、これらの情報の組み合わせでもよいし、これらの情報とは異なる情報であってもよい。
【0021】
制御部は、検出手段の検出結果に基づき、誘導処理として、黄斑部および乳頭部の少なくともいずれかを含む解析対象を適正位置へと誘導するためのガイド情報を出力させてもよい。すなわち、制御部は、検出手段の検出結果に基づき、表示手段、音声発生手段、報知手段、等の少なくともいずれかを制御して、ガイド情報を出力させてもよい。これにより、黄斑部や乳頭部と適正位置とのずれが容易に解消され、黄斑部や乳頭部が適正位置へ容易に合わせられる。
【0022】
制御部は、誘導処理として、解析対象を適正位置に一致させるための目標位置を表す指標を、眼底観察画像に重畳表示させてもよい。この場合、制御部は、表示手段(例えば、モニタ104)の表示を制御し、黄斑部の適正位置に相当する所定の位置に、黄斑部の目標位置を表す指標を表示させてもよい。また、この場合、制御部は、表示手段の表示を制御し、乳頭部の適正位置に相当する所定の位置に、乳頭部の目標位置を表す指標を表示させてもよい。つまり、このような指標が、前述のガイド情報として利用されてもよい。もちろん、制御部は、このような指標を表示させるとともに、前述のガイド情報を出力させてもよい。これによって、黄斑部や乳頭部と目標位置とのずれが把握され、黄斑部や乳頭部が適正位置へ容易に合わせられる。
【0023】
なお、OCTデータを解析する解析内容に応じて、表示手段に表示される指標のサイズは変更されてもよい。例えば、指標の表示サイズが大きいほど、解析対象を適正位置に一致させる際の許容範囲が広く設けられる。また、例えば、指標の表示サイズが小さいほど、解析対象を適正位置に一致させる際の許容範囲が狭く設けられる。つまり、OCTデータの解析内容毎に異なる許容範囲に応じた指標が表示されてもよい。
【0024】
制御部は、解析対象をOCT光学系により撮影されるOCTデータの撮影範囲内へと誘導するために、誘導処理として、調整手段を制御し、撮影範囲を調整してもよい。例えば、制御部は、OCT光学系における測定光を走査する走査手段を制御し、測定光の走査条件を自動的に調整することによって、OCTデータの撮影範囲を調整してもよい。また、例えば、制御部は、光源(固視灯)を制御して、光源の点灯および消灯と、光源の点灯位置と、を自動的に変更することにより被検眼の視線方向を変化させ、OCTデータの撮影範囲を調整してもよい。また、例えば、制御部は、被検眼に対して撮影手段を移動あるいは傾斜させるための駆動手段を制御し、被検眼と撮影手段との相対的な位置関係を自動的に調整することによって、OCTデータの撮影範囲を調整してもよい。これらの少なくともいずれかの制御により、解析対象はOCTデータの撮影範囲内へ自動的に配置され、結果として、解析対象と目標位置とのずれが解消し、各々の部位が撮影範囲内へ適切に配置される。
【0025】
なお、制御部は、解析対象としての乳頭部と、乳頭部の解析に必要な領域サイズを考慮した適正位置と、を合わせるように、各々の誘導処理を実行してもよい。すなわち、制御部は、乳頭部を適正位置へと誘導するためのガイド情報を出力してもよい。また、制御部は、乳頭部を適正位置に一致させるための目標位置を表す指標を、眼底観察画像に重畳表示してもよい。また、制御部は、乳頭部をOCT光学系により撮影されるOCTデータの撮影範囲内へ誘導するために、調整手段を制御してもよい。
【0026】
制御部は、設定手段により第2撮影モードが設定された場合に、解析対象と適正位置とを合わせるための誘導処理を実行してもよい。例えば、黄斑部および乳頭部を一度に撮影する第2撮影モードでは、黄斑部と乳頭部をいずれも所定の撮影範囲内におさめる必要があり、これらの部位が含まれない(あるいは、一部が欠けた)状態になりやすい。このため、特に第2撮影モードでは、解析対象と適正位置とを合わせるような誘導処理が、被検眼の撮影の効率化に効果的である。
【0027】
もちろん、制御部は、設定手段により第1撮影モードが設定された場合にも、解析対象と適正位置とを合わせるための誘導処理を実行してもよい。より詳細には、第1撮影モードにて黄斑部を撮影する際には、黄斑部と適正位置とを合わせるための誘導処理を実行してもよい。また、第1撮影モードにて乳頭部を撮影する際には、乳頭部と適正位置とを合わせるための誘導処理を実行してもよい。
【0028】
本実施形態の眼底撮影装置は、OCT光学系と眼底カメラ光学系とを備えた複合型装置であってもよい。複合型装置では、OCT光学系における測定光の走査範囲(すなわち、撮影範囲)が、眼底カメラ光学系における撮影範囲に制限される。一般的には、その画角が40°~45°に制限される。このため、被検眼の視線を正面方向に向けた状態では、眼底観察画像の中央に黄斑部が位置し、眼底観察画像の周辺に乳頭部が位置する。なお、被検眼毎に黄斑部と乳頭部の位置関係は異なるため、乳頭部はその一部が画像から欠けることもある。
【0029】
例えば、被検眼の視線を固視灯位置の移動により誘導し、眼底観察画像の中央に、黄斑部と乳頭部の間を配置することで、眼底観察画像に黄斑部と乳頭部をおさめることが行われる。しかしながら、被検眼の視線が上手く誘導されない場合、黄斑部と乳頭部の位置関係により固視灯位置の移動だけでは不十分な場合、等は、適切なOCTデータを得ることができない。
【0030】
そこで、制御手段は、上述したような誘導処理を実行し、眼底観察画像に含まれる黄斑部および乳頭部を、OCT光学系により撮影されるOCTデータの撮影範囲内へ誘導して、解析対象と適正位置とを合わせる。例えば、この状態において、OCT光学系における測定光を所定の走査パターン(一例として、ラスタスキャン等)で走査させることで、適切なOCTデータが得られる。結果として、被検眼の撮影が効率よく進められ、再撮影の可能性が低減される。
【0031】
<実施例>
本実施形態における眼底撮影装置の一実施例について説明する。眼底撮影装置は、いわゆる光干渉断層計の構成を備えた、OCT装置であってもよい。OCT装置は、タイムドメインOCTを基本構成としてもよい。また、OCT装置は、フーリエドメインOCTを基本構成としてもよい。なお、フーリエドメインOCTは、スペクトルドメインOCT、波長掃引式OCT、等であってもよい。
【0032】
図1は、OCT装置1の外観図である。OCT装置1は、基台101、移動台102、操作部103、モニタ104、駆動部105、検出部106、顔支持部110、撮影部200、制御部300、等を備える。
【0033】
操作部103は、撮影部200を操作するための信号を入力する。例えば、操作部103を傾倒させると、基台101に対して移動台102を左右方向(X方向)および前後方向(Z方向)の少なくともいずれかの方向へ移動させるための移動信号が入力される。また、例えば、操作部103の図示なきノブを回転させると、基台101に対して撮影部200を上下方向(Y方向)へ移動させるための移動信号が入力される。
【0034】
モニタ104は、被検眼EのOCTデータ、OCTデータの解析結果、等を画面に表示する。例えば、OCTデータは、OCT断層画像、OCT正面画像、等でもよい。例えば、OCTデータの解析結果は、網膜厚情報、網膜厚情報に基づいて生成される網膜厚マップ画像、網膜厚情報に基づいて算出される解析チャート、等でもよい。また、モニタ104は、操作部103を兼ねたタッチパネルとして機能する。つまり、モニタ104の操作によっても、撮影部200を移動させるための移動信号が入力される。
【0035】
駆動部105は、撮影部200を左右方向、上下方向、および前後方向へ移動させる。例えば、駆動部105は、スライド機構である。一例として、スライド機構は、モータ、ギヤ、ガイドレール、等を有してもよい。
【0036】
検出部106は、撮影部200の位置を検出する。例えば、検出部106は、可変抵抗器である。もちろん、検出部106は、可変抵抗器に限らず、光センサ、位置センサ、距離センサ、等の少なくともいずれかであってもよい。検出部106の検出結果は、制御部300へと出力される。
【0037】
顔支持部110は、被検者の顔を支持する。顔支持部110は、額当て111と、顎台112と、を有する。額当て111には、被検者の額が当接される。顎台112には、被検者の顎が載置される。顎台112には、検出器113が設けられる。
【0038】
検出器113は、被検者の顎が顎台112に載置されたか否かを検出する。例えば、検出器113は荷重センサである。もちろん、検出器113は、荷重センサに限らず、光センサ、圧力センサ、超音波センサ、等の少なくともいずれかであってもよい。検出器113の検出結果は、制御部300へと出力される。
【0039】
<撮影部>
図2は、撮影部200における内部の概略図である。撮影部200の内部には、アライメント指標投影光学系210、前眼部撮影光学系220、OCT光学系230、観察光学系240、固視誘導光学系250、顔撮影光学系260、等が収納される。
【0040】
<アライメント指標投影光学系>
アライメント指標投影光学系210は、被検眼Eの角膜に向けてアライメント指標を投影する。アライメント指標投影光学系210は、第1投影光学系210aおよび第2投影光学系210bを備える。第1投影光学系210aは、被検眼Eの角膜に向けて、無限遠のアライメント指標を投影する。第1投影光学系210aは、光源211、コリメータレンズ212、等を備える。例えば、光源211は、近赤外光を発する。例えば、光源211は、撮影光軸を中心としてリング状に配置される。例えば、コリメータレンズ212は、光源211からの光を平行光束にする。第2投影光学系210bは、被検眼Eの角膜に向けて、有限遠のアライメント指標を投影する。第2投影光学系210bは、光源213等を備える。例えば、光源213は、近赤外光を発する。例えば、光源213は、撮影光軸を中心に、光源211とは異なる位置で、リング状に配置される。なお、第2投影光学系210bによる光は、被検眼Eに対して撮影部をアライメントするためのアライメント光として用いられるとともに、被検眼Eの前眼部を照明するための前眼部照明光としても用いられる。
【0041】
<前眼部撮影光学系>
前眼部撮影光学系220は、被検眼Eの前眼部を撮像する。前眼部撮影光学系220は、撮像素子221等を備える。例えば、撮像素子221は、光源213によって照明された前眼部を撮像する。なお、撮像素子221は、角膜に投影されたアライメント指標を検出するための撮像素子を兼ねており、前眼部とともにアライメント指標を撮像する。
【0042】
<OCT光学系>
OCT光学系230は、被検眼Eに照射された測定光と参照光による干渉信号を検出する。OCT光学系230は、カップラー231、光源232、測定光学系233、光スキャナ234、対物光学系235、検出器236、参照光学系237、等を備える。カップラー231には、光源232、測定光学系233、検出器236、および参照光学系237が、光ファイバで接続されている。
【0043】
OCT光学系230は、カップラー231によって、光源232から出射した光を、測定光と参照光に分割する。例えば、測定光は、光ファイバを通過した後に空気中へ出射され、測定光学系233、光スキャナ234、および対物光学系235を介して、眼底に導かれる。また、例えば、測定光は、眼底にて反射されると、同様の経路を経て光ファイバに戻される。例えば、参照光は、光ファイバを通過して、参照光学系237に導かれる。また、例えば、参照光は、参照光学系237が有する図示なき参照ミラーに反射されると、同様の経路を経て光ファイバに戻される。OCT光学系230は、測定光と参照光の合成による干渉信号(干渉光)を、検出器236に受光させる。検出器236が検出した干渉信号は、制御部300に送信される。
【0044】
<観察光学系>
観察光学系240は、眼底カメラ光学系として用いられ、眼底を撮影することにより、眼底画像を取得する。例えば、観察光学系240は、赤外光によって赤外眼底画像を取得し、可視光によってカラー眼底画像を取得する。また、例えば、観察光学系240は、所定の励起光によって蛍光眼底画像を撮影する。なお、観察光学系240は、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)の構成を有し、眼底のSLO正面画像を取得してもよい。
【0045】
<固視誘導光学系>
固視誘導光学系250は、被検眼Eの視線方向を誘導する。固視誘導光学系250は、被検眼Eに呈示する固視灯を有する。例えば、固視灯は、測定光軸L上と、測定光軸Lを中心とした同一円周上と、に配置される。固視灯の呈示位置を二次元的に変更させることで、被検眼Eの視線が複数の方向に誘導され、結果的に、被検眼Eの撮影部位が変更される。
【0046】
<制御部>
制御部300は、各部の制御処理と、演算処理と、を行う電子回路を有する処理装置(プロセッサ)である。制御部300は、一般的なCPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、OCT装置1における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、眼底撮影装置1の動作を制御するための各種プログラムが記憶される。なお、制御部300は、便宜上、眼底撮影装置1にて得られた各種画像の画像処理を行うものとする。換言すれば、制御部300が画像処理部を兼用する。
【0047】
制御部300には、操作部103、モニタ104、駆動部105、検出部106、各々の光学系が備える光源や撮像素子、記憶部301、等が電気的に接続される。記憶部301は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる、非一過性の記憶媒体であってもよい。例えば、記憶部301は、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等でもよい。例えば、記憶部301は、OCTデータを得るための設定に係る情報、検出器236に検出された干渉信号を処理することで得られるOCTデータ、等を記憶してもよい。
【0048】
<制御動作>
眼底撮影装置1の制御動作を説明する。
【0049】
<被検眼と撮影部のアライメント調整>
検者は、被検者へ、顔を顔支持部110に乗せるように指示を出す。制御部300は、被検者の顔が顎台112に載置されたことを検出し、被検眼Eと撮影部200とのアライメント調整を自動的に開始してもよい。
【0050】
制御部300は、固視誘導光学系250を制御し、被検眼Eの視線を注視させるための固視灯を点灯させる。また、制御部300は、アライメント指標投影光学系210を制御し、光源211および光源213を点灯させ、被検眼Eの角膜にアライメント指標を投影する。また、制御部300は、前眼部撮影光学系220を制御し、被検眼Eを撮像素子221にて撮影する。これにより、被検眼Eのアライメント指標像を含む前眼部観察像が得られ、モニタ104に表示される。
【0051】
制御部300は、アライメント指標像を利用して、被検眼Eの角膜頂点と、OCT光学系230の測定光軸Lと、におけるずれの方向および量を検出する。また、制御部300は、被検眼Eに対して撮影部200を移動させることで、ずれを解消し、角膜頂点と測定光軸Lとを一致させる。
【0052】
<撮影モードと走査条件の設定>
検者は、被検眼Eの撮影モードおよび測定光の走査条件を設定する。検者は、モニタ104を操作し、撮影モードを選択するための選択スイッチを操作する。例えば、眼底の黄斑部を撮影する黄斑撮影モード、眼底の乳頭部を撮影する乳頭撮影モード、黄斑部と乳頭部をともに撮影する網膜撮影モード、等のいずれかを選択する。制御部300は、選択された撮影モードに応じて、測定光の走査条件を設定する。例えば、走査条件として、走査位置(撮影位置)、走査部位(撮影部位)、走査パターン、等の少なくともいずれかを設定する。本実施例では、網膜撮影モードを選択することによって、黄斑部および乳頭部を撮影の対象とした縦9mm×横12mm領域のラスタースキャンが設定される。
【0053】
<観察画像の取得>
検者は、被検眼Eを撮影して、眼底の観察画像を取得する。例えば、被検眼Eの観察画像としては、3次元OCT断層画像、または、3次元OCT断層画像に基づくOCT正面画像、のいずれかを選択可能であってもよい。本実施例では、観察画像としてOCT正面画像が選択される。
【0054】
検者は、モニタ104を操作し、被検眼Eの観察を開始するための開始スイッチを操作する。制御部300は、被検眼Eの視線を正面方向に向けるため、測定光軸L上の固視灯を点灯させる。また、制御部300は、OCT光学系230を制御し、OCT光学系230が備える各々の光学部材(一例として、図示なき参照ミラー)を、被検眼Eの眼底が撮影されるように予め設定された位置に配置する。また、例えば、制御部300は、測定光の走査により検出された干渉信号のスペクトル強度を積算する。これにより、観察画像としてのOCT正面画像(以下、正面観察画像400)が得られ、モニタ104に表示される。
【0055】
<乳頭目標指標の表示>
図3は、正面観察画像400の一例である。本実施例では、被検眼Eの視線が正面方向にあるため、正面観察画像400の中央に黄斑部mが位置する。制御部300は、正面観察画像400に、撮影範囲401、固視灯位置402、乳頭目標指標403、等を電気的に重畳表示させる。撮影範囲401は、OCT光学系230による測定光の走査範囲を表している。撮影範囲401は、設定された走査パターンに基づき、大きさや形状が変化される。固視灯位置402は、被検眼Eに呈示している固視灯の位置を表している。例えば、測定光軸L上に配置された固視灯であれば、正面観察画像400の中心位置Cに表示される(
図3)。例えば、測定光軸Lを中心とした同一円周上に配置された固視灯であれば、中心位置Cの周辺に表示される。乳頭目標指標403は、正面観察画像400に含まれる乳頭部tを移動させる目標位置を表している。
【0056】
ここで、眼底撮影装置1では、被検眼Eを撮影(キャプチャ)した3次元OCT断層画像に基づき、撮影画像としてのOCT正面画像(以下、正面撮影画像)が得られる。また、3次元OCT断層画像に基づいて、眼底の網膜厚を解析した解析結果が得られるとともに、網膜厚を2次元的に色分けした網膜厚マップ画像が生成される。本実施例では、正面撮影画像の撮影範囲401内に、黄斑部mおよび乳頭部tをおさめることで、黄斑部mと乳頭部tとに対する解析結果が得られるとともに、黄斑部mと乳頭部tとを含む網膜マップ画像が生成される。
【0057】
図4は、正面観察画像400における特徴部位の適正位置(適正範囲)の一例である。制御部300は、撮影範囲401内に、特徴部位の解析に必要な解析領域のサイズを考慮した適正位置を設定する。制御部300が設定する解析領域は、予め記憶部301に記憶されている。例えば、正面観察画像400において、黄斑部mが位置すると予測された領域が、黄斑部mの解析領域として記憶されている。一例としては、正面観察画像400を左右方向に2分割した一方の領域が、黄斑部mの解析領域として記憶されている。制御部300は、このような黄斑部mの解析領域を、黄斑部が配置される適正位置R1として設定する。適正位置R1は、黄斑部mの解析に適した所定の手法によって解析される。また、例えば、正面観察画像400において、乳頭部tが位置すると予測された領域が、乳頭部tの解析領域として記憶されている。一例としては、正面観察画像400を左右方向に2分割した他方の領域が、乳頭部tの解析領域として設定されている。制御部300は、このような乳頭部tの解析領域を、乳頭部が配置される適正位置R2として設定する。適正位置R2は、乳頭部tの解析に適した所定の手法によって解析される。
【0058】
なお、このような解析領域の分割数は異なっていてもよいし、解析の対象とされる領域数が異なっていてもよい。また、このような解析領域は、互いの領域サイズが異なっていてもよい。また、このような解析領域は、一部が重複してもよい。つまり、黄斑部mの解析領域(適正位置R1)と乳頭部tの解析領域(適正位置R2)の一部が重複してもよい。
【0059】
しかしながら、正面観察画像400において、撮影範囲401から黄斑部mおよび乳頭部tの少なくとも一部が外れていると、黄斑部mおよび乳頭部tが各々の適正位置に位置せず、適切な解析結果を得ることができなくなる。例えば、OCT光学系により測定光を縦9mm×横12mm領域で走査させ、正面観察画像400の中央に黄斑部mが位置するとき、正面観察画像400の周辺の乳頭部tは、一部が撮影範囲401から外れた状態となる場合がある。
【0060】
このため、制御部300は、正面観察画像400に、特徴部位を適正位置へ移動させるための目標位置を表す指標を重畳表示させる。本実施例では、乳頭部tを移動させるための乳頭目標指標403を、適正位置R2に相当する位置に重畳表示させる。乳頭部tと乳頭目標指標403とを一致(略一致)させることにより、撮影範囲401に黄斑部mおよび乳頭部tをおさめ、黄斑部mおよび乳頭部tを各々の適正位置に配置することができる。
【0061】
<乳頭部と乳頭目標指標の位置合わせ>
図5は、正面観察画像400の一例である。検者は、正面観察画像400における乳頭部tを、乳頭目標指標403に一致させる。例えば、被検者の顔の角度や被検眼Eの視線方向を変更するように、被検者に指示を出してもよい。また、例えば、測定光軸L上に配置された固視灯の点灯から、測定光軸Lを中心とした同一円周上に配置された固視灯の点灯に切り換え、被検眼Eの視線方向を変化させてもよい。また、例えば、操作部103を操作して、撮影部200を移動させてもよい。これによって、正面観察画像400の撮影範囲401内に乳頭部tが誘導され、適正位置R2内に乳頭部tが配置される。また、同時に、撮影範囲401内に黄斑部mも誘導され、適正位置R1内に黄斑部mが配置される。
【0062】
このとき、制御部300は、正面観察画像400の乳頭部tを画像処理(例えば、特徴点抽出方法)にて検出し、乳頭部tと乳頭目標指標403とが一致したか否かを判定した判定結果を報知してもよい。例えば、制御部300は、正面観察画像400における輝度を算出し、予め記憶部301に記憶された乳頭部の輝度と略一致する部分を、乳頭部tと検出してもよい。また、例えば、制御部300は、検出した乳頭部tと乳頭目標位置403とのずれ量に基づき、これらが一致したか否かを判定してもよい。例えば、制御部300は、乳頭部tと乳頭目標指標403とが一致した際には、乳頭目標指標403の表示色を変更してもよい。もちろん、乳頭部tと乳頭目標指標403とが一致した旨のメッセージを、音声として発生させたり、モニタ104に表示させたりしてもよい。
【0063】
<撮影画像の取得>
検者は、モニタ104を操作し、被検眼Eの撮影を開始するための開始スイッチを操作する。制御部300は、OCT光学系230を制御し、被検眼Eにおける眼底の撮影条件を最適化する。例えば、光路長調整、フォーカス調整、ポラライザ調整、等を行い、所望の特徴部位(ここでは、黄斑部mおよび乳頭部t)を、高感度・高解像度で撮影可能にする。また、制御部300は、OCT光学系230を制御し、測定光を走査パターンに基づいて走査させることにより、眼底の3次元OCT断層画像を取得する。
【0064】
<撮影画像の解析>
なお、3次元OCT断層画像は、前述のように乳頭部tを乳頭目標指標403に合わせて撮影したことで、黄斑部mおよび乳頭部tをいずれも含む画像として得られる。制御部300は、3次元OCT断層画像において、黄斑部mを適正位置R1から検出し、黄斑部mに対する網膜厚の解析値を算出してもよい。同様に、3次元OCT断層画像において、乳頭部tを適正位置R2から検出し、乳頭部tに対する網膜厚の解析値を算出してもよい。例えば、解析値は、セクション毎の基本統計量を求めた値でもよい。例えば、基本統計量は、代表値(平均値、中央値、最頻値、最大値、最小値、等)、散布度(分散、標準偏差、変動係数、等)等でもよい。また、制御部300は、3次元OCT断層画像に基づいて、黄斑部mおよび乳頭部tの網膜厚の分布を表す網膜マップ画像を生成してもよい。また、制御部300は、3次元OCT断層画像に基づき、干渉信号のスペクトル強度をXY方向の各点について積算した正面撮影画像を生成してもよい。制御部300は、3次元OCT断層画像、解析値、網膜マップ画像、正面撮影画像、等を記憶部301に記憶させてもよい。
【0065】
もちろん、制御部300は、黄斑部mおよび乳頭部tの網膜厚とは異なる情報を得るための解析を行ってもよい。例えば、黄斑部mおよび乳頭部tの形状に関する情報を得るための解析を行ってもよい。この場合には、3次元OCT断層画像に基づいて、黄斑部mおよび乳頭部tの少なくともいずれかに対する形状の解析値を算出してもよい。一例としては、面積、体積、サイズ、解析パラメータ(乳頭部tのC/D比、等)、等の少なくともいずれかが算出されてもよい。
【0066】
以上、説明したように、例えば、本実施例における眼底撮影装置は、眼底の観察画像を取得し、観察画像に含まれる黄斑部および乳頭部の少なくともいずれかを含む解析対象を、OCT光学系により撮影されるOCTデータの撮影範囲内へ誘導するための誘導処理であって、解析対象と適正位置とを合わせるための誘導処理を実行する。これによって、被検眼の撮影を効率よく進め、再撮影の可能性を低減させることができる。
【0067】
また、例えば、本実施例における眼底撮影装置は、誘導処理として、黄斑部および乳頭部の少なくともいずれかを含む解析対象を適正位置へと誘導するためのガイド情報を出力させる。検者は、ガイド情報を利用することで、黄斑部や乳頭部を適正位置へ容易に合わせることができる。
【0068】
また、例えば、本実施例における眼底撮影装置は、誘導処理として、黄斑部および乳頭部の少なくともいずれかを含む解析対象を適正位置に一致させるための目標位置を表す指標を、観察画像に重畳表示させる。検者は、このような指標から黄斑部や乳頭部と適正位置とのずれを把握して、黄斑部や乳頭部を適正位置へと容易に合わせることができる。
【0069】
また、例えば、本実施例における眼底撮影装置は、黄斑部または乳頭部のいずれか一方を撮影する第1撮影モードと、黄斑部および乳頭部の双方を撮影する第2撮影モードと、を設定可能である。例えば、特に、第2撮影モードでは、黄斑部と乳頭部をいずれも所定の撮影範囲内におさめる必要があり、これらの部位が含まれない(あるいは、一部が欠けた)状態になりやすい。このため、第2撮影モードが設定された場合には、黄斑部および乳頭部の少なくともいずれかを含む解析対象と適正位置とを合わせるようにすることで、被検眼の撮影を効率よく進めることができる。
【0070】
<変容例>
なお、本実施例では、正面観察画像400に、乳頭部tを移動させるための乳頭目標指標403を重畳表示させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、正面観察画像400に、乳頭部tを乳頭目標指標403へと誘導させるためのガイドマークを、乳頭目標指標403とともに重畳表示させてもよい。この場合、制御部300は、乳頭部tと乳頭目標指標403とのずれに基づいて、撮影部200を移動させるためのガイドマークを表示させてもよい。また、この場合、制御部300は、乳頭部tと乳頭目標指標403とのずれに基づいて、固視灯位置402を移動させる(言い換えると、固視灯の点灯位置を変更させる)ためのガイドマークMを重畳表示させてもよい。以下、固視灯位置402の移動を例に挙げて、これについて説明する。
【0071】
図6は、正面観察画像400の一例である。
図6(a)は、固視灯位置402を移動させる前の状態を示している。
図6(a)は、固視灯位置402を移動させた後の状態を示している。例えば、被検眼Eの視線は、測定光軸L上に配置された固視灯を注視しており、正面観察画像400の中心位置Cに、固視灯位置402が表示される。制御部300は、正面観察画像400から乳頭部tを検出し、乳頭部tと乳頭目標指標403とのずれの量および方向を算出する。また、制御部300は、乳頭部tと乳頭目標指標403とのずれに基づき、固視灯位置402を移動させる量および方向を算出する。さらに、制御部300は、固視灯位置402を移動させる量および方向に基づき、測定光軸Lを中心として同一円周上に配置された固視灯位置のうち、もっとも近い位置に、ガイドマークMを表示させる。
【0072】
検者は、モニタ104を操作して、正面観察画像400に重畳されたガイドマークMを選択する(一例として、ガイドマークMのクリック操作)。制御部300は、ガイドマークMの位置へと固視灯位置402を移動させる。また、制御部300は、測定光軸L上の固視灯を消灯させ、測定光軸Lの周辺における該当の固視灯を点灯させる。例えば、これによって、被検眼Eの視線方向が変更されると、乳頭部tが乳頭目標指標403に一致するように誘導され、黄斑部mおよび乳頭部tが撮影範囲401内におさめられる。
【0073】
本実施例における眼底撮影装置は、このように、観察画像から黄斑部または乳頭部の少なくともいずれかを含む解析対象を検出し、検出結果に基づいて、誘導処理として、黄斑部および乳頭部の少なくともいずれかを含む解析対象を適正位置へと誘導するためのガイド情報を出力させてもよい。検者は、ガイド情報を利用することで、黄斑部や乳頭部と適正位置とのずれを容易に解消させ、黄斑部や乳頭部を適正位置へ容易に合わせることができる。
【0074】
なお、本実施例では、検者が手動で乳頭部tを乳頭目標指標403へと誘導する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、制御部300が自動で乳頭部tを乳頭目標指標403へと誘導してもよい。この場合、制御部300は、乳頭部tと乳頭目標指標403とのずれに基づき、OCT光学系230による測定光の走査範囲(撮影範囲)を自動で調整する。
【0075】
例えば、制御部300は、OCT光学系230における測定光の走査位置や走査方向を変更するため、光スキャナ234の走査を制御してもよい。また、例えば、制御部300は、固視誘導光学系250における固視灯の呈示位置を変更するため、光源の点灯および消灯を制御してもよい。また、例えば、制御部300は、被検眼Eに対して撮影部200を上下方向および左右方向の少なくともいずれかの方向へ移動させるため、駆動部105の駆動を制御してもよい。また、例えば、制御部300は、被検眼Eに対して撮影部200を上下方向および左右方向の少なくともいずれかの方向へ傾斜(旋回)させるため、図示なき駆動部の駆動を制御してもよい。制御部300は、OCT光学系230による測定光の撮影範囲を、これらのいずれかまたは組み合わせによって調整し、乳頭部tを乳頭目標指標403へと誘導してもよい。
【0076】
本実施例における眼底撮影装置は、このように、OCT光学系により撮影されるOCTデータの撮影範囲を調整することで、観察画像における黄斑部および乳頭部を、OCTデータの撮影範囲内へと誘導してもよい。このために、黄斑部や乳頭部と適正位置とのずれは自動的に解消され、黄斑部や乳頭部が撮影範囲内へ適切に配置される。
【0077】
なお、本実施例では、正面観察画像400に対して、予め適正位置(適正位置R1およびR2)が設定されている構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、正面観察画像400から黄斑部mを検出し、黄斑部mから所定の画素だけ離れた領域を、乳頭部tの適正位置R2として設定してもよい。また、本実施例では、正面観察画像400から乳頭部tを検出することにより、乳頭部tの適正位置R2を設定してもよい。この場合には、正面観察画像400の輝度に基づいて、乳頭部tが検出されてもよい。また、この場合には、網膜層を解析した解析結果に基づいて、乳頭部tが検出されてもよい。より詳細には、網膜層が検出されない領域が乳頭部tとして検出されてもよい。また、本実施例では、被検眼Eの眼軸長を取得し、眼軸長に基づいて予測された乳頭部tの位置を、乳頭部tの適正位置として設定してもよい。この場合には、被検眼Eの眼軸長を、眼軸長測定装置等を用いて測定し、入力するようにしてもよい。
【0078】
なお、本実施例においては、正面観察画像400として、観察光学系240により撮影された眼底画像を用いる構成としてもよい。すなわち、眼底カメラ光学系による赤外眼底画像、SLO光学系によるSLO正面画像、等のいずれかを用いる構成としてもよい。
【0079】
また、本実施例においては、正面観察画像400に、黄斑部mを移動させる目標位置を表す指標を重畳表示させる構成としてもよい。もちろん、黄斑部mに対する目標位置の指標と、乳頭部tに対する乳頭目標指標403と、をいずれも重畳表示させる構成としてもよい。
【0080】
また、本実施例においては、眼底の黄斑部mを撮影する黄斑撮影モードにて、OCT光学系230による測定光の走査範囲内(つまり、撮影範囲内)に黄斑部mを誘導するために、黄斑部mの目標位置を表す指標を重畳表示させてもよい。同様に、眼底の乳頭部tを撮影する乳頭撮影モードにて、測定光の走査範囲内に乳頭部tを誘導するために、乳頭部tの乳頭目標指標403を重畳表示させてもよい。例えば、これらの撮影モードにおいても、黄斑部mまたは乳頭部tを目標位置まで誘導し、予め設定された適正位置に一致させることによって、効率よく撮影および解析を行うことができる。
【0081】
なお、本実施例では、観察画像としてOCT正面画像(正面観察画像400)が選択された場合を例示したが、OCT断層画像が選択された場合にも、同様に、乳頭目標指標を重畳表示させる構成であってもよい。
【0082】
図7は、OCT断層画像500の一例である。OCT断層画像500には、撮影範囲501、乳頭目標指標503、等が電気的に重畳表示される。被検眼Eに呈示している固視灯の位置(固視灯位置)は、OCT断層画像500とは別に表示されてもよい。なお、
図7(a)は、OCT断層画像500が傾いていない状態を示し、
図7(b)は、OCT断層画像500が傾いた状態を示している。
【0083】
検者は、OCT断層画像500における乳頭部tを、乳頭目標指標503に合わせるように、撮影部200を移動または傾斜させたり、固視灯の呈示位置を変更したりしてもよい。あるいは、制御部300が、乳頭部tを乳頭目標指標503に合わせるように、撮影部200を移動または傾斜させたり、固視灯の呈示位置を変更したりしてもよい。もちろん、撮影部200の移動または傾斜と、固視灯の呈示位置の変更と、がともに行われてもよい。これによって、撮影範囲501に黄斑部mおよび乳頭部tをおさめ、黄斑部mおよび乳頭部tを、各々の適正位置に配置させることができる。
【0084】
なお、例えば、OCT断層画像500において、網膜層が傾斜して撮影されていると、黄斑部mおよび乳頭部に対する適切な解析結果を得られない場合がある。このため、OCT断層画像500には、網膜層が傾斜した程度を表す指標504が表示されてもよい。例えば、制御部300は、OCT断層画像500から網膜層を検出し、さらに、網膜層の線形近似式(直線近似式)の傾きを算出することによって、これに基づく指標504を表示してもよい。もちろん、網膜層の傾きの算出は、線形近似式を用いた方法に限定されない。例えば、網膜層の傾きは、網膜層の輝度分布に基づいて算出されてもよい。
検者あるいは制御部300は、乳頭部tを乳頭目標指標503に合わせるとともに、網膜層の傾きがなくなるように、撮影部200を移動または傾斜させたり、固視灯の呈示位置を変更したりしてもよい。
【0085】
本実施例における眼底撮影装置は、このように、観察画像としてOCT断層画像を取得し、OCT断層画像に含まれる黄斑部および乳頭部の少なくともいずれかの解析対象と、適正位置と、を合わせてもよい。例えば、OCT断層画像を用いることで、被検者の顔が撮影部に対して傾斜すること等により生じる網膜層の傾きを把握し、黄斑部や乳頭部を撮影範囲内へ適切におさめることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 眼底撮影装置
104 モニタ
200 撮影部
230 OCT光学系
300 制御部
400 正面観察画像
403 乳頭目標指標
500 OCT断層画像
503 乳頭目標指標