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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】窓開閉機構、及びこれを用いた車両
(51)【国際特許分類】
   F41H 5/26 20060101AFI20240423BHJP
   E05F 11/14 20060101ALI20240423BHJP
   E05F 11/53 20060101ALI20240423BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240423BHJP
   B60J 1/14 20060101ALI20240423BHJP
   E06B 5/12 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
F41H5/26
E05F11/14
E05F11/53 A
B60J1/00 P
B60J1/14
E06B5/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020118715
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2021014979
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2019129844
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037224
【氏名又は名称】日本工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 芳仁
(72)【発明者】
【氏名】久保田 裕二
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-023193(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1184990(KR,B1)
【文献】実公昭46-027440(JP,Y1)
【文献】実公昭38-011515(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0048102(US,A1)
【文献】特開平10-217764(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0006681(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41H 5/26
E05F 11/14
E05F 11/53
B60J 1/00
B60J 1/14
E06B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の外面に設けられた開口部を窓により開閉する窓開閉機構において、
軸方向の一端側を前記窓に固定するとともに、前記軸方向における一部範囲に雄ねじ部を有する回転軸と、
前記回転軸の前記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有する軸送り部材と、
前記回転軸と、前記回転軸の前記雄ねじ部に前記雌ねじ部が螺合された前記軸送り部材とを、前記回転軸を固定した前記窓を前記車体の外側に位置させた状態で、前記車体に軸支する軸受け部材と、
前記軸受け部材に固定され、前記軸受け部材に軸支された前記軸送り部材の回転時に前記軸送り部材の前記軸方向の移動を規制する規制部材と、
前記車体の内側で前記回転軸の前記軸方向における他端側に固定され、前記車体の前記開口部の外側に位置する閉じ位置と、前記車体の開口部の外側から退避する開き位置との間で前記窓を回動させる開閉操作部材と、
前記車体の内側で前記軸送り部材に固定され、前記軸送り部材を正逆回転させたときに、前記窓の前記車体の外面に対峙する面で、且つ前記窓の外周縁に沿って配置されたシール材を前記車体の外面に圧接して変形させる第1の位置と、前記シール材の前記車体への圧接を解除する第2の位置との間で、前記回転軸及び前記回転軸を固定した前記窓を前記回転軸の軸方向に移動させる軸送り操作部材と、
を含むことを特徴とする窓開閉機構。
【請求項2】
請求項1に記載の窓開閉機構において、
前記開閉操作部材と前記車体の内面との間に跨って配置され、前記開閉操作部材の操作に伴う前記窓の開閉動作を補助する補助手段を有する
ことを特徴とする窓開閉機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の窓開閉機構において、
前記軸送り部材は、前記開閉操作部材による前記回転軸の正逆回転時に、前記回転軸とともに、前記回転軸の回転方向と同一方向に回転する
ことを特徴とする窓開閉機構。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の窓開閉機構において、
前記窓は、前記閉じ位置から前記開き位置まで回動させたときに前記車体の外面に設けた第1の当接部材に当接されるとともに、前記開き位置から前記閉じ位置まで回動させたときに前記車体の外面に設けられ、前記第1の当接部材とは異なる第2の当接部材に当接される
ことを特徴とする窓開閉機構。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の窓開閉機構において、
前記車体の外面には、前記開口部を挟んで前記回転軸と反対側の前記窓の移動軌跡の縁部に窓安全部材をさらに有する
ことを特徴とする窓開閉機構。
【請求項6】
請求項5に記載の窓開閉機構において、
前記窓安全部材は、前記窓が前記閉じ位置から前記開き位置に回動するときに、前記窓の側面が接触して衝撃を吸収する
ことを特徴とする窓開閉機構。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の窓開閉機構において、
前記窓は、前記第1の位置にあるとき、前記回転軸が軸支される位置とは異なる少なくとも1以上の位置において、前記第1の位置と第2の位置との間で移動する前記窓の移動軌跡上に位置する固定手段によって前記第2の位置への移動が規制される
ことを特徴とする窓開閉機構。
【請求項8】
請求項7に記載の窓開閉機構において、
前記固定手段は、前記車体の内部に設けた解除操作手段の操作により、前記窓の移動軌跡上から退避する
ことを特徴とする窓開閉機構。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の窓開閉機構において、
前記窓は、
前記回転軸の一端側を固定する窓枠と、
前記窓枠内に固定されるガラスと、
を有することを特徴とする窓開閉機構。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の窓開閉機構において、
前記開口部は、前記車体に乗車した人員が着座した状態で頭部を前記車体の外部に突出させることが可能で、且つ、前記人員が首を回して前記車体の後方を視認できる大きさに設定される
ことを特徴とする窓開閉機構。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の窓開閉機構において、
前記車体は、前記車体への昇降時に開閉されるドアである
ことを特徴とする窓開閉機構。
【請求項12】
車体と、
前記車体が有する開口部を開閉する窓と、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の窓開閉機構と、
を備えたことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の開口部を車体に配置された窓により開閉する窓開閉機構、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特殊な環境下で使用される車両(以下、特殊車両と称する)の中には、外部からの衝撃に耐える性能(以下、耐衝撃性)を要する車両がある。特に、爆風などの極めて強い衝撃にも耐え得る特殊車両の場合には、特に優れた耐衝撃性が必要となる。耐衝撃性は、例えば、車両全体の強度を向上させる、又は車両を構成する部品の強度を向上させることで達成される。しかしながら、車両全体の強度又は車両を構成する部品の強度を高めることは、車両を大型化させ、また、車両重量を増加させることになる。車両の大型化や、車両重量の増加は、車両全体、又は車両の可動部分の操作性を著しく悪化するという問題が生じる原因となる。一例として、操作機会の多いドアや窓を、耐衝撃性を考慮して大型化する、又はドアや窓の重量を増加させてしまうと、ドアや窓の操作時の負担が増大する。したがって、特殊車両では、開閉可能な窓を小型化する、又は開閉不可の窓とすることが一般的である。
【0003】
開閉可能な窓を小型化する方法として、例えばサイドドアの上部前側に開閉不能に固定された固定防弾ガラス部と、サイドドアの上部後側に開閉可能な可動防弾ガラス部とを有する構造の防弾ガラス構造が提案されている(特許文献1参照)。また、この他に、車両内部に位置するハンドルと、該ハンドルを車両内部に付勢する付勢手段と、車両外板の外側に配置され、ハンドルに固定される閉塞板とを有し、ハンドルを付勢手段の付勢に抗して車両外側に押圧し回転させることで、車両に設けた窓を閉塞板によって閉塞した閉塞状態と、該窓を開放する開放状態との間で回動させる構造の窓開閉機構が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2では、ハンドルを車両の外側に押圧し、回転させる操作のみで窓を開閉できる構造となっていることから、その操作性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-217764号公報
【文献】特開平11-23193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される防弾ガラス構造の場合、可動防弾ガラス部の面積を固定防弾ガラス部の面積の約半分又はそれ以下に設定していることから、窓を開けたときの開口部分の面積が小さく、車両外部の視認性が悪い。また、可動防弾ガラス部をスライドさせることで開閉する構成としていることから、可動防弾ガラス部とドアとの間の機密性が低く、また、耐衝撃性や耐候性も悪い。
【0006】
一方、特許文献2では、車両外板の車両外部側の面のうち、窓の周縁部に環状のシールを固定・配置し、閉塞板によって窓を閉塞したときに、閉塞板がシールを押圧することで、閉塞板と車両外板との間の機密性や耐候性を向上させることが可能である。その一方で、特許文献2に開示される窓は、発射装置の先端部を挿入するために設けられていることから、開放された窓における車両外部の視認性が悪い。
【0007】
また、開閉不可の窓の場合、特許文献1及び特許文献2と同様に、車両外部の視認性が悪いという問題がある。したがって、球面形状の窓を設置することで、車両外部の視認性を向上させることも考えられるが、近年の車両の小型化に逆行することになる。
【0008】
本発明は斯かる課題に応えるために為されたもので、車両外部に対する視認性を向上させつつ、優れた耐衝撃性や耐候性を確保し、また、容易な操作性を得ることができるようにした技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、本発明の窓開閉機構は、車体の開口部を前記車体に配置された窓により開閉する窓開閉機構において、軸方向の一端側を前記窓に固定するとともに、前記軸方向における一部範囲に雄ねじ部を有する回転軸と、前記回転軸の前記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有する軸送り部材と、前記回転軸と、前記回転軸の前記雄ねじ部に前記雌ねじ部が螺合された前記軸送り部材とを、前記回転軸を固定した前記窓を前記車体の外側に位置させた状態で、前記車体に軸支する軸受け部材と、前記軸受け部材に固定され、前記軸受け部材に軸支された前記軸送り部材の回転時に前記軸送り部材の前記軸方向の移動を規制する規制部材と、前記車体の内側で前記回転軸の前記軸方向における他端側に固定され、前記車体の前記開口部の外側に位置する閉じ位置と、前記車体の開口部の外側から退避する開き位置との間で前記窓を回動させる開閉操作部材と、前記車体の内側で前記軸送り部材に固定され、前記軸送り部材を正逆回転させたときに、前記窓の前記車体の外面に対峙する面で、且つ前記窓の外周縁に沿って配置されたシール材を前記車体の外面に圧接して変形させる第1の位置と、前記シール材の前記車両への圧接を解除する第2の位置との間で、前記回転軸及び前記回転軸を固定した前記窓を前記回転軸の軸方向に移動させる軸送り操作部材と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記開閉操作部材と前記車体の内面との間に跨って配置され、前記開閉操作部材の操作に伴う前記窓の開閉動作を補助する補助手段を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記軸送り部材は、前記開閉操作部材による前記回転軸の正逆回転時に、前記回転軸とともに、前記回転軸の回転方向と同一方向に回転することを特徴とする。
【0012】
ここで、前記窓は、前記閉じ位置から前記開き位置まで回動させたときに前記車体の外面に設けた第1の当接部材に当接されるとともに、前記開き位置から前記閉じ位置まで回動させたときに前記車体の外面に設けられ、前記第1の当接部材とは異なる第2の当接部材に当接されることが好ましい。
【0013】
また、前記車体の外面には、前記開口部を挟んで前記回転軸と反対側の前記窓の移動軌跡の縁部に窓安全部材をさらに有することを特徴とする。
【0014】
この場合、前記窓安全部材は、前記窓が前記閉じ位置から前記開き位置に回動するときに、前記窓の側面が接触して衝撃を吸収することが好ましい。
【0015】
また、前記窓は、前記第1の位置にあるとき、前記回転軸が軸支される位置とは異なる少なくとも1以上の位置において、前記第1の位置と第2の位置との間で移動する前記窓の移動軌跡上に位置する固定手段によって前記第2の位置への移動が規制されることを特徴とする。
【0016】
この場合、前記固定手段は、前記車体の内部に設けた解除操作手段の操作により、前記窓の移動軌跡上から退避することが好ましい。
【0017】
なお、前記窓は、前記回転軸の一端側を固定する窓枠と、前記窓枠内に固定されるガラスと、を有することが好ましい。
【0018】
また、前記開口部は、前記車体に乗車した人員が着座した状態で頭部を前記車体の外部に突出させることが可能で、且つ、前記人員が首を回して前記車体の後方を視認できる大きさに設定されることを特徴とする。
【0019】
また、前記車体は、前記車両への昇降時に開閉されるドアであることが好ましい。
【0020】
また、本発明の車両は、車体と、前記車体が有する開口部を開閉する窓と、上記記載の窓開閉機構と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、車両外部に対する視認性を向上させつつ、優れた耐衝撃性や耐候性を確保し、また、容易な操作性を得ることができるようにした技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一の実施形態の車両の概略の一例を示す概略図である。
図2図2(a)は、ドア本体の開口部が閉塞された状態のサイドドアをキャビンの外方から見た斜視図、図2(b)は、ドア本体の開口部が開放された状態のサイドドアをキャビンの外方から見た斜視図である。
図3図3(a)は、ドア本体の開口部が閉塞された状態のサイドドアをキャビンの内部から見た斜視図、図3(b)は、ドア本体の開口部が開放された状態のサイドドアをキャビンの内部から見た斜視図である。
図4】窓開閉機構を分解して示す斜視図である。
図5】開閉窓が解除位置にあるときの窓開閉機構の断面図である。
図6】(a)はラッチ近傍の構成を示す説明図、(b)は、(a)におけるA-A断面図である。
図7】ドア本体の開口部が閉塞された状態のサイドドアをキャビン内部から見た概略図である。
図8】開閉窓が圧接位置にあるときの窓開閉機構の断面図である。
図9】ラッチを解除位置に回動させたときのサイドドアをキャビン内部から見た概略図である。
図10】開閉窓が解除位置にあるときのサイドドアをキャビン内部から見た概略図である。
図11】開閉窓が開き位置にあるときのサイドドアをキャビン内部から見た概略図である。
図12】ドア本体の開口部が開放された状態のサイドドアをキャビン内部から見た概略図である。
図13】(a)はドア本体の開口部から人が頭をキャビン外部に突き出した状態を示す図、(b)はドア本体の開口部からキャビン外部に突き出した頭を、首を回した状態を示す図である。
図14】シール材のつぶし代を説明する断面図である。
図15】サイドドアの外面から離れた位置から放水を行う場合の位置を示す説明図である。
図16】開閉レバーの操作時の操作力の検証方法について説明する図である。
図17】レバーの長さと、操作力との関係を示すグラフである。
図18図18(a)は、別の実施形態におけるドア本体の開口部が閉塞された状態のサイドドアをキャビンの外方から見た斜視図、図18(b)は、別の実施形態におけるドア本体の開口部が開放された状態のサイドドアをキャビンの外方から見た斜視図である。
図19】別の実施形態における窓安全部材の断面図である。
図20】別の実施形態において、ドア本体の開口部が開放される途中における開閉窓と窓安全部材とが接触位置にあるときのサイドドアをキャビンの外方から見た側面図である。
図21図20の状態における窓安全部材近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<一の実施形態>
以下、本発明の一の実施形態について、図面を用いて説明する。図1に示すように、車両10は、図示を省略したシャシーの前端上部に配置されるキャビン15と、キャビン15の後方に配置される架台16とを含む。なお、架台16は、車両10の使用目的に合わせた装備類(架装物)を積載している。キャビン15の両側面には、サイドドア17が設けられる。サイドドア17は、キャビン15に乗り込む、又はキャビン15から降りる際に開閉される。なお、図1においては、キャビン15に対するサイドドア17の位置を表すことを前提にしていることから、ドアハンドルなどの記載は省略している。
【0024】
本実施形態では、サイドドアのドア本体に設けた開口部を閉塞した状態と、開放した状態とに切り替える開閉窓の窓開閉機構を例に挙げて説明している。しかしながら、サイドドアに設けた開口部に限定する必要はなく、船舶、航空機などの車体に設けられる開口部を閉塞した状態と、開放した状態とに切り替える開閉窓に、本発明の窓開閉機構を用いることも可能である。なお、車両の場合には、サイドドアに限定する必要はなく、車両の後方に設けられるドアや、車両の架台に設けられる開口部に用いてもよい。
【0025】
以下、キャビン15の左側に配置されるサイドドア17の構成について説明するが、キャビンの右側に配置されるサイドドアの構成も同様の構成である。また、以下では、車両の外部に対峙する面を外面、車両の内部に対峙する面を内面と称する。
【0026】
図2(a)は、開閉窓が閉塞した状態のサイドドアをキャビン外側から見た斜視図、図2(b)は、開閉窓を開放した状態のサイドドアをキャビン外側から見た斜視図である。また、図3(a)は、開閉窓が閉塞した状態のサイドドアをキャビン内部から見た斜視図、図3(b)は、開閉窓を開放した状態のサイドドアをキャビン内部から見た斜視図である。
【0027】
なお、詳細は後述するが、ドア本体21の開口部23を閉塞した状態とは、開閉窓22の内面に設けたシール材40がドア本体21に圧接されて開閉窓22とドア本体21との機密性が保持された状態を示す。また、ドア本体21の開口部23を開放した状態では、開閉窓22は、ドア本体21の開口部23の外側に位置していない開き位置で、開閉窓22の内面に設けたシール材40がドア本体21に圧接される。
【0028】
図2及び図3に示すように、サイドドア17は、ドア板(以下、ドア本体と称する)21と、開閉窓22とを有する。ドア本体21の材質は、鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなど、強度の高い金属である。ドア本体21は開口部23を有する。開口部23の大きさは、キャビン15の内部で座位にある人員がキャビン15の内部から頭部をキャビン15の外部に出し、首を回すことで車両10の後方を確認できる大きさである。開口部23の大きさは、一例として、縦250mm以上、横350mm以上に設定される。このとき、サイドドア17の横幅は1000mmである。
【0029】
ドア本体21は、外面の開口部23の上縁部にラッチ(請求項に記載の固定手段に相当)25を2箇所に有する。ラッチ25は、後述するロックレバー93とともにロック機構90を構成する。ロック機構90についての構造については、後述する。ラッチ25の材質は、鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなど、強度の高い金属、またはポリアセタール、ポリカーボネートなどの強度の高い合成樹脂である。ラッチ25は、後述するロックレバー93の回動操作によって、方向における窓枠31の移動軌跡上に位置して、窓枠31をドア本体21に押し付ける施錠位置と、窓枠31の方向における窓枠の移動軌跡上から退避する解錠位置との間で回動する。
【0030】
また、ドア本体21の外面の上端部には、開閉窓22の回動を規制するストッパ(請求項に記載の第1の当接部材に相当)26が設けられる。ストッパ26は、開き位置にある開閉窓22を閉じ位置へと回動させたときに、閉じ位置にある窓枠31の上縁部が当接され、開閉窓22が閉じ位置からさらに回動することを防止する。また、ドア本体21の外面の下端部には、ストッパ(請求項に記載の第2の当接部材に相当)27が設けられる。ストッパ27は、閉じ位置にある開閉窓22を開き位置へと回動させたときに、開き位置にある窓枠31の左下縁部が当接され、開閉窓22が開き位置からさらに回動することを防止する。なお、閉じ位置は、開閉窓22がドア本体21に設けた開口部23の外方に位置して、開閉窓22が開口部23を被覆するときの開閉窓22の位置である。また、開き位置は、開閉窓22がドア本体21に設けた開口部23の外方から退避して、開口部23を外部に露呈するときの開閉窓22の位置である。
【0031】
開閉窓22は、ドア本体21に回動自在に設けられる。開閉窓22は、後述する窓開閉機構50を構成する開閉レバー55の操作により、上述した閉じ位置と、開き位置との間で回動する。開閉窓22は、閉じ位置にあるとき、後述する窓開閉機構50を構成する軸送りレバー56の操作により、開閉窓22のドア本体21の外面に対峙する面の外周縁部に沿って配置されたシール材40(図4又は図5参照)をドア本体21の外面に圧接してシール材40を変形させることにより開閉窓の外周縁部とドア本体21の開口部23の周縁部との機密性を保持する圧接位置と、ドア本体21へのシール材40の圧接による変形を解除する解除位置との間で移動する。なお、ドア本体21へのシール材の40の圧接におけるつぶし代は、例えば2mm以上であることが好ましい。
【0032】
開閉窓22は、窓枠31及びガラス32を含む。窓枠31の材質は、鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなど、強の高い金属である。また、ガラス32の材質は、強化ガラス、又はポリカーボネート、アクリルなど耐衝撃性の高い透明な合成樹脂である。
【0033】
窓枠31は、内周面に環状のモール33を介してガラス32が取り付けられる。モール33は、ガラス32にかかる衝撃を緩衝する機能を有する。モール33の材質は、耐環境性の高いゴムや、クロロブレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、軟質性塩化ビニールなどの合成樹脂である。なお、窓枠31とガラス32とから開閉窓22を構成しているが、ガラスのみの開閉窓としてもよい。
【0034】
図4又は図5に示すように、窓枠31は、ドア本体21に対峙する面に、外周縁に沿った溝35を有する。溝35は、環状のシール材40の一部が入り込んだ状態で固定される。シール材40は、開閉窓22を圧接位置に移動させることでドア本体21の外面に圧接されて変形する。シール材40は、ドア本体21に圧接されて圧縮されることで、開閉窓22とドア本体21との機密性を保持し、同時に窓枠31にかかる衝撃を緩衝する。シール材40の材質は、例えばモール33の材質と同様に、耐環境性の高いゴムや、クロロブレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、軟質性塩化ビニールなどの合成樹脂である。なお、ドア本体21へのシール材40の圧接時のつぶし代は、例えば2mm以上であることが好ましい。なお、つぶし代とは、例えばシール材40が圧縮されたときの量(言い換えれば、元の状態のシール材の全長と、圧縮されたときのシール材の全長との差)である。
【0035】
図3に戻って、ドア本体21は、内面側に窓開閉機構50を構成する開閉レバー55、軸送りレバー56、ガススプリング57の他、ロック機構90を構成するロックレバー93を有する。
【0036】
図4又は図5に示すように、窓開閉機構50は、回転軸51、送りねじ(請求項に記載の軸送り部材に相当)52、ボス(請求項に記載の軸受け部材に相当)53、ピン(請求項に記載の規制部材に相当)54、開閉レバー(請求項に記載の開閉操作部材に相当)55、軸送りレバー(請求項に記載の軸送り操作部材に相当)56、ガススプリング(請求項に記載の補助手段に相当)57、2枚の固定板58,59などを含む。
【0037】
回転軸51は、軸方向(図4中x方向)の一端側に開閉窓22の窓枠31の外面に固定される固定板59に溶接などにより固定される。また、軸方向の他端側に開閉レバー55を固定する。回転軸51の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又は、ポリアセタール、ポリカーボネートなど、強度の高い合成樹脂である。回転軸51は、開閉レバー55が固定される端部から、固定板59に固定される端部に向けて、挿入部51a、挿通部51b、雄ねじ部51c、軸部51d及び固定部51eを備える。
【0038】
挿入部51aは、開閉レバー55の回転部55aに設けた開口55dに挿入される。挿入部51aは、軸方向の断面形状が略正方形状である。挿入部51aにおける軸方向に直交する断面(yz平面)の面積は、挿通部51bにおける軸方向に直交する断面の面積よりも小さく設定される。
【0039】
挿通部51bは、軸送りレバー56の回転部56aに設けた挿通孔56dに挿通される。雄ねじ部51cは、送りねじ52のねじ本体52a及びフランジ部52bの内周面に設けた雌ねじ部52cに螺合する。軸部51dは、挿通部51bの外径及び雄ねじ部のねじ径よりも大きい外径を有する。軸部51dは、ブッシュ75を介してボス53に軸支されることで、開閉窓22の回転軸として機能する。固定部51eは、固定板59の挿通孔59aに挿通された状態で固定板59に溶接などにより固定される。
【0040】
送りねじ52は、ねじ本体52aと、ねじ本体52aの一端側に設けられたフランジ部52bとを有する。送りねじ52の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又は、ポリアセタール、ポリカーボネートなど、強度の高い合成樹脂である。
【0041】
ねじ本体52a及びフランジ部52bに跨った内周面は、雌ねじ部52cを有する。なお、雌ねじ部52cは、回転軸51が有する雄ねじ部51cに螺合する。ねじ本体52aは、円筒形状であり、外周面に、全周に亘って溝部52dを有する。溝部52dは、ボス53の外周面に固定されるピン54の先端部が挿入される。フランジ部52bは、軸送りレバー56の回転部をボルト65などにより固定する。なお、符号52eは、ボルト65が螺合するねじ孔である。
【0042】
ここで、送りねじ52の回転に伴って移動する回転軸51の軸方向における移動量(軸送り量)は、例えば軸送りレバー56の回転量(送りねじ52の回転量)と、該送りねじ52の雌ねじ部52cのリード(回転軸51の雄ねじ部51cのリードと同一)とによって決定される。例えば軸送り量が6mm、上記リードが1mmであれば、軸送りレバー56の回転量は6回転となる。また、上記リードが3mmであれば、軸送りレバー56の回転量は2回転となる。さらに、上記リードが18mmであれば、軸送りレバー56の回転量は1/3回転となる。
【0043】
ボス53は、固定板68の開口部68aに挿通された状態で溶接などにより固定される。なお、固定板68は、ドア本体21にボルト69などにより固定される。なお、符号68bは、ボルト69が挿通される挿通孔、符号70は、ドア本体21に設けられ、ボルト69が螺合するねじ孔である。固定板68がドア本体21に固定された状態では、ボス53は、ドア本体21に設けた挿通孔71及び開閉窓22の窓枠31の挿通孔31aに各々挿通された状態で保持される。ボス53の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又は、ポリアセタール、ポリカーボネートなど、強度の高い合成樹脂である。
【0044】
ボス53は、円筒形状で、軸方向におけるボス53の一端側の内周面は、他端側の内周面に対して内径よりも大きく設定される。以下、内周面のうち、内径が大きい内周面を有する空間を大径部53a、内径が小さい内周面を有する空間を小径部53bと称する。大径部53a及び小径部53bには、各部の内径に合わせた外径を有するブッシュ75,76が各々挿入される。ここで、ボス53は、大径部53aが設けられる一端側の外周面に、一定角度間隔でピン54が挿入されるねじ孔77を有する。なお、ブッシュ75はブッシュ75a及びブッシュ75bに分かれており、ボス53の大径部53aの奥までブッシュ75aを挿入後、ボス53のねじ孔77と干渉しないように、ねじ孔77の直径より広い隙間75c(図5参照)を空け、ブッシュ75bを挿入する。隙間75cには、ボス53のねじ孔77に挿通されたピン54が挿入される。
【0045】
なお、ブッシュ75をブッシュ75a及びブッシュ75bの2部品としているが、例えば、1部品としてもよい。この場合、ブッシュの外周面に、ボス53に設けたねじ孔77に対応する貫通孔を一定角度間隔で設け、ピン54をボス53のねじ孔77に螺合するときにピン54の先端を貫通孔に挿通させる。この構成であっても、送りねじ52は、送りねじ52の軸方向に移動せずに回転させることができる。ここで、ボス53に設けられるねじ孔77と、ブッシュ76の外周面に設けた貫通孔とは、90°間隔で4箇所に設けられる。
【0046】
上述したブッシュ75,76のうち、大径部53aに挿入されるブッシュ75は、送りねじ52のねじ本体52aを挿通する。また、小径部53bに挿入されるブッシュ76は、回転軸51の軸部51dを挿通する。ここで、ブッシュ75は、ボス53の大径部53aに収納され、ブッシュ76はボス53の小径部53bに収納される。したがって、回転軸51及び送りねじ52は、回転軸51の雄ねじ部51cに送りねじ52の雌ねじ部52cが螺合した状態でボス53に各々軸支される。なお、ブッシュ75,76は、周動性・潤滑性に優れた無給油ブッシュである。
【0047】
ピン54は、ボス53の外周面に設けたねじ孔77に挿通された状態で固定される。この状態では、ピン54は、ボス53の大径部53aに収納されたブッシュ75の隙間75cに挿入される。さらに、ピン54の先端部は、送りねじ52のねじ本体52aの外周面に設けた溝部52dに挿入されている。その結果、ピン54は、ボス53に対する送りねじ52の相対位置が変化する、言い換えれば送りねじ52が軸方向に移動することを防止する。なお、ピン54の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又は、ポリアセタール、ポリカーボネートなど、強度の高い合成樹脂である。
【0048】
開閉レバー55は、開閉窓22を閉じ位置と開き位置との間で回動させる際に操作される。ここで、開閉レバー55の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又は、ポリアセタール、ポリカーボネートなど、強度の高い合成樹脂である。
【0049】
開閉レバー55は、回転部55a、操作部55b及び連結部55cを含む。回転部55aは、軸方向に沿った開口55dを有する。開口55dは、軸方向に直交する断面が略正方形状である。開口55dは、回転軸51の一端に設けた挿入部51aを挿入する。開閉レバー55は、回転軸51の挿入部51aを開口55dに挿入し、挿入部51aに抜け防止用の円板80を当接させた状態でボルト81などにより固定される。
【0050】
操作部55b及び連結部55cは、回転部55aの外周面から放線方向に突出した状態で設けられる。ここで、操作部55b及び連結部55cは、所定の角度を空けて設けられる。なお、所定の角度とは、窓開閉機構50の構造やサイドドア17の構造などに基づいて適宜設定される。操作部55bは、開閉窓22を閉じ位置と開き位置との間で回動させる際に把持される。ここで、操作部55bの長さは、開閉レバー55の操作力が人間工学による許容値(133N)以下となる長さに設定される。一例として、操作部55bの長さは、200mmである。連結部55cは、ガススプリング57のロッド57aに回動自在に連結される。
【0051】
軸送りレバー56は、開閉窓22を解除位置と圧接位置との間で移動させる際に操作される。ここで、軸送りレバー56の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又は、ポリアセタール、ポリカーボネートなど、強度の高い合成樹脂である。
【0052】
軸送りレバー56は、回転部56a及び操作部56bを有する。回転部56aは、送りねじ52の軸方向の一端側に設けられたフランジ部52bにボルト65などにより固定される。ここで、回転部56aは、中央に開口56cを有し、軸送りレバー56を送りねじ52に固定したときには、送りねじ52を螺合した回転軸51の挿通部51bが開口56cに挿通される。なお、符号56dはボルトが挿通される挿通孔である。
【0053】
操作部56bは、回転部56aの外周面から突出した状態で設けられる。ここで、操作部56bの長さは、軸送りレバー56の操作力が人間工学による許容値(133N)以下となる長さに設定される。一例として、なお、操作部56bの長さは、例えば100mmである。
【0054】
固定板58は、中央に回転軸51の軸部51dが挿通される挿通孔58aを有する。固定板58は、ボルト85が螺合するねじ孔58bを有する。固定板58は、窓枠31に溶接等により固定される。
【0055】
固定板59は、固定板58の外側に設けられる部材である。固定板59は、中央に回転軸51の固定部51eが挿通される挿通孔59aを有する。符号59bは、ボルト85が挿通される挿通孔である。固定板59は、挿通孔59aに回転軸51の固定部51eを挿通した状態で、溶接などにより回転軸51に固定される。
【0056】
これら固定板58,59は、ボルト85で固定される。固定板58は、窓枠31と固定され、固定板59は回転軸51と固定されるため、これら固定板58,59をボルト85で固定することで、窓枠31と回転軸51とが一体化され、回転軸51の回転に合わせて窓枠31が回転する。ここで、固定板58,59の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又は、ポリアセタール、ポリカーボネートなど、強度の高い合成樹脂である。
【0057】
なお、固定板58を窓枠31に固定し、固定板59を固定板58にボルト85により固定しているが、固定板58を窓枠31に溶接などにより固定せずに、固定板58を固定板59と窓枠31とで挟持した状態で、ボルトにより固定することも可能である。
【0058】
ガススプリング57は、ロッド57a、シリンダ57bを有する。ロッド57aは、シリンダ57bから突出した先端側を、開閉レバー55の連結部55cに軸支する。シリンダ57bは、ロッド57aが突出する一端側とは反対側の他端側を、ドア本体21に軸着する。ここで、ガススプリング57は、通常、ロッド57aを突出させる方向に付勢している。つまり、開閉レバー55にガススプリング57を連結することで、開閉窓22の開閉動作に対する操作者の負担を軽減している。
【0059】
なお、符号86は、ガススプリング57を衝撃から保護するカバーである。カバー86の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又は、ポリアセタール、ポリカーボネートなど、強度の高い合成樹脂である。
【0060】
次に、ロック機構90の構成について説明する。ロック機構90はドア本体21の上端部で、且つ開口部23の近傍の2箇所に配置される。
【0061】
図6(a)及び図6(b)に示すように、ロック機構90は、上述したラッチ25の他、回転軸91、ボス92、ロックレバー(請求項に記載の解除操作手段に相当)93などを含む。回転軸91は、ドア本体21の外面側の一端にラッチ25をねじ止め、又はピン止めし、また、ドア本体21の内面側の一端にロックレバー93を固定する。回転軸91の材質は、鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又はポリアセタール、ポリカーボネートなどの強度の高い合成樹脂である。なお、回転軸91は、ロックレバー93と一体の部材であってもよいし、個別の部材であってもよい。
【0062】
回転軸91は、ロックレバー93が固定される端部にフランジ部91aを有する。フランジ部91aは、回転軸91の軸方向における移動を規制する。
【0063】
ボス92は、円筒形状の部材である。ボス92の材質は、鋼、アルミニウム合金、チタンなどの強度の高い金属である。ボス92は、ドア本体21に溶接などにより固定される。ボス92は、内部空間にブッシュ94が挿入された状態で、回転軸91を保持する。ボス92の軸方向において、ラッチ25が位置する側の端面(上面)92aには、ピン92bが設けられる。ピン92bは、ラッチ25が解錠位置(図6(a)中二点鎖線で示す位置)から施錠位置(図6(a)中実線で示す位置)まで回動したとき、又は施錠位置から解錠位置まで回動したときに、ラッチ25の側面に当接され、ラッチ25の回動を防止する。
【0064】
ボス92は、上面92aから突出するプランジャ95を有する。プランジャ95は、プランジャ下部に配置されたばね(図示省略)により、ボス92の上面から突出する方向に付勢される。なお、プランジャ95は、ラッチ25が施錠位置に回動したときに、ラッチ25の底面に設けられた凹部25aに挿入される。また、プランジャ95は、ラッチ25が解錠位置に回動したときに、ラッチ25の底面に設けられた凹部25bに挿入される。なお、ラッチ25を解錠位置又は施錠位置において確実に停止させることができれば、ばね付勢されるプランジャの構成は設ける必要はない。
【0065】
ロックレバー93は、ラッチ25を施錠位置と解錠位置との間で回動させる際に操作される。なお、ロックレバー93の材質は、鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又はポリアセタール、ポリカーボネートなどの強度の高い合成樹脂である。
【0066】
ラッチ25は、回転軸91に対してドア本体21の外面側に位置する端部に固定される。ラッチ25の材質は、鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又はポリアセタール、ポリカーボネートなどの強度の高い合成樹脂である。ラッチ25は、ロックレバー93の操作を受けて、施錠位置と解錠位置との間で回動する。なお、ラッチ25が施錠位置に移動したときには、窓枠31の外面に設けた補強板100の外面に乗り上げて、窓枠31をドア本体21の外面に向けて押圧する。
【0067】
ラッチ25の底面には、凹部25a,25bが2箇所に設けられる。凹部25aは、ラッチ25が施錠位置にあるときに、プランジャ95が挿入される。凹部25bは、ラッチ25が解錠位置にあるときに、プランジャ95が挿入される。
【0068】
以下、窓の開閉動作について、図7から図12を用いて説明する。以下、開閉窓22が閉じている場合を初期の状態として説明する。開閉窓22が閉じているとき、開閉窓22は圧接位置にあり、また、2つのロック機構90は各々施錠状態にある。以下、図7及び図8中左側に位置するロック機構及びロック機構を構成する構成部材に対しては「~’」を付して説明する。2つのロック機構90、90’が施錠状態にあるとき、ロックレバー93,93’は、その長手方向が下方に傾斜した状態にある。まず、ロックレバー93、93’が操作される。この操作により、ロックレバー93は図7中C1方向に、ロックレバー93’は図7中D1方向にそれぞれ回動操作される。これらロックレバー93,93’の回動に合わせてラッチ25、25’がロックレバー93,93’と同方向に回動する。その結果、ロック機構90のラッチ25は施錠位置から解錠位置へと移動する。同時に、ロック機構90’のラッチ25’は施錠位置から解錠位置へと移動する。したがって、ラッチ25、25’による窓枠31のドア本体21への押圧が解除される。なお、ラッチ25,25’を施錠位置から解錠位置へ移動させたときには、各ロック機構90,90’のロックレバー93,93’は、長手方向が水平方向となる。このとき、図8に示すように、窓枠31の溝35に固定されたシール材40はドア本体21の外面に圧接されている。
【0069】
軸送りレバー56が図9中E1方向に操作されると、送りねじ52が軸送りレバー56と同一の方向(E1方向)に回転する。送りねじ52は、ボス53に固定されるピン54の先端部が、送りねじ52の溝部52dに挿入される。ピン54の先端部が送りねじ52の溝部52dに挿入されることで、送りねじ52は軸方向に回転するが、軸方向(x方向)には移動しない。その結果、送りねじ52が図9中E1方向に回転することで、送りねじ52に螺合する回転軸51を軸方向(図8中x方向)に移動させる。その結果、回転軸51を固定した開閉窓も、図8中x方向に移動する。その結果、シール材40のドア本体21への圧接が解除され、開閉窓22とドア本体との間に隙間が生じる(図5参照)。つまり、軸送りレバー56の回転によって開閉窓22が圧接位置から解除位置へと移動される。
【0070】
次に、開閉レバー55が図10中F1方向に操作されると、開閉レバー55を一端に固定する回転軸51が開閉レバー55と同一方向に回転する。上述したように、回転軸51は、他端側を開閉窓22の窓枠31に固定される。したがって、開閉レバー55が図10中F1方向に操作されると、開閉窓22が、回転軸51を回転中心として、図10中G1方向に回転し、開き位置まで回動する(図11参照)。ここで、E1方向、F1方向及びG1方向は、同一の方向であるが、対象となる部材が異なるので、異なる記号を用いている。
【0071】
ガススプリング57は、ロッド57aを開閉レバー55の連結部55cに連結する。開閉レバー55の操作によって開閉窓22を閉じ位置から開き位置へと回動させると、開閉レバー55の連結部55cは回転する。連結部55cの回転により、ガススプリング57は回動しながら、ロッド57aをシリンダ57bの内部に押し込む。ガススプリング57は、ロッド57aをシリンダ57bから突出させる方向に付勢しており、この付勢力は開閉レバー55に開閉窓22の開き位置への操作時に反力として作用する。したがって、開閉窓22を開き位置へと回動させるときに開閉レバー55の操作に伴う力は、上記付勢力よりも大きな力が必要となる。一方、開閉窓22を開き位置へと回動させるときには、開閉窓22の自重による力が、上記付勢力に抗して働く。上述したように、開閉窓22は、回転軸51を介して開閉レバー55に連結されることから、開閉窓22の自重による力は、開閉レバー55に作用する。ここで、開閉窓22を閉じ位置から開き位置へと回動させるときに開閉レバー55の操作に必要となる力は、ガススプリングの付勢力と、開閉窓22の自重による力の差である。つまり、開閉窓22を閉じ位置から開き位置へと回動させるときに開閉レバー55の操作に必要となる力は、最小限に抑えられる。なお、開閉レバー55を図10F1方向に操作した場合、回転軸51と送りねじ52とは螺合しているので、軸送りレバー56は開閉レバー55とともに回動する。
【0072】
図11に示すように、開閉レバー55の操作により開閉窓22が閉じ位置から開き位置へと回動すると、開閉窓22はストッパ37に当接され、その回動が停止される。これにより、ドア本体21に設けた開口部23が開放される。
【0073】
開閉窓22が開き位置へと回動した後、軸送りレバー56が図11中E2方向に操作される。なお、E2方向は、E1方向とは逆方向となる。軸送りレバー56を図11中E2方向に操作されると、送りねじ52が軸送りレバー56と同一方向に回転する。この回転により、送りねじ52に螺合する回転軸51が-x方向に移動する。回転軸51が-x方向に移動することに伴って、開閉窓22がドア本体21に向けて移動する。その結果、開閉窓22の窓枠31の内面の外周縁に設けたシール材40がドア本体21の外面に圧接され、圧縮される。これにより、開閉窓22が窓枠31の内面の外周縁に設けたシール材40がドア本体21の外面に圧接された状態でドア本体21に固定保持される。つまり、開閉窓22が開放した状態となる(図12参照)。
【0074】
また、ドア本体21の開口部23を開閉窓22により閉塞する場合には、ドア本体21の開口部23を開放する手順とは逆の手順で開閉レバー55、軸送りレバー56、ロックレバー93,93’が操作される。
【0075】
まず、軸送りレバー56が図12中E1方向に操作される。軸送りレバー56の図12中E1方向への操作により送りねじ52が軸送りレバー56と同一方向に回転する。送りねじ52の回転により、回転軸51がx方向に移動する。この移動により、開閉窓22の窓枠31の内面の外周縁に設けたシール材40の圧縮が解除、言い換えれば、ドア本体21の外面への圧接が解除される。
【0076】
次に、開閉レバー55が図11中F2方向に操作されると、回転軸51が回転する。回転軸51の回転に合わせて、開き位置にある開閉窓22が閉じ位置に(図11中G2方向に)回動する。このとき、ガススプリング57は、ロッド57aがシリンダ57bから突出する方向に付勢される。したがって、開閉レバー55が図11中F2方向に操作され、開閉窓22が開き位置から閉じ位置に向けて回動したときには、開閉レバー55を押し出す方向に(言い換えれば、開閉窓22が開き位置から閉じ位置に回動する方向)に、ガススプリング57の付勢力が加わる。一方、開閉窓22の自重による力は、反力として開閉レバー55に働く。ここで、開閉窓22を閉じ位置から開き位置へと回動させるときに開閉レバー55の操作に必要となる力は、ガススプリング57の付勢力と、開閉窓22の自重による力の差である。つまり、開閉窓22を開き位置から閉じ位置へと回動させるときに開閉レバー55の操作に必要となる力は、最小限に抑えられる。その結果、開閉窓22を開き位置から閉じ位置へ回動させる際の開閉レバー55の操作を容易にすることができる。
【0077】
そして、開閉窓22が開き位置から閉じ位置へと回動すると、ドア本体21の開口部23の上方に配置されたストッパ26に開閉窓22が当接し、開閉窓22の回動が停止される。なお、開閉レバー55を図11中F2方向に操作した場合には、軸送りレバー56は開閉レバー55とともに(図11中E2方向に)回動する。
【0078】
開閉窓22が閉じ位置に回動した後、軸送りレバー56が操作される。開閉窓22が閉じ位置あるとき、開閉窓22の位置は解除位置である。軸送りレバー56の図11中E1方向への操作により、送りねじ52は、軸送りレバー56と同一方向に回転する。送りねじ52の回転により、回転軸51が-x方向に移動する。この移動により、開閉窓22の窓枠31の内面の外周縁に設けたシール材40がドア本体21の外面に圧接され圧縮される。その結果、開閉窓22が圧接位置に保持され、ドア本体21の開口部23が閉塞した状態となる。
【0079】
最後に、ロックレバー93が図9中C2方向に、ロックレバー93’が図9中D2方向に各々操作される。ロックレバー93,93’が各々操作されることで、ラッチ25,25’が解錠位置から施錠位置に各々回動する。ラッチ25,25’は、回動する過程で、圧接位置及び解除位置間の開閉窓22の移動軌跡上に入り込み、窓枠31が有する補強板100に乗り上げる。ラッチ25,25’の回動時に窓枠31が有する補強板100に乗り上げることで、ラッチ25,25’は、補強板100を窓枠31に向けて各々押圧する。その結果、回転軸51の近傍、ラッチ25,25’の3箇所において、開閉窓22がドア本体21に圧接される(図7参照)。これにより、開閉窓22とドア本体21との機密性が保持される。
【0080】
このように、窓開閉機構50の開閉レバー55及び軸送りレバー56と、ロック機構90が有するロックレバー93の操作で、ドア本体21の開口部23を閉塞した状態と開放した状態との間で開閉させることが可能となる。
【0081】
以下、本実施形態の窓開閉機構50を有するサイドドア17に対して行った各種検証結果を記載する。
【0082】
<視認性の検証>
キャビン15の内部に設けたシートに着座した人員がサイドドア17の開口部23を介して車両10の後方を視認したときの視認しやすさ(以下、視認性と称する)の検証を行った。視認性の検証は、キャビン15の内部に設けたシート(図示省略)に着座する人員がサイドドア17の開口部23からキャビン15の外部に頭部に出すことができるか否か(図13(a)参照)、また、車両10の後方を視認できるか否か(図13(b)参照)の2項目の検証である。
【0083】
なお、視認性の検証では、サイドドア17の開口部23を模したモックアップを作成し、車両10の運転時における姿勢(着座姿勢)を再現して行った。開口部23の大きさと検証結果とをまとめた表を、表1に示す。なお、表1において、縦幅Hは、図13(b)に示す開口部23の上端部から、開き状態にある開閉窓22の上端部までの幅を示す。また、横幅Wは、開口部23の左端部から右端部までの幅を示す。なお、図13(b)中左側が車両10の前方であり、同図右側が車両10の後方である。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、開口部23の縦幅H及び横幅Wが、H=200mm、W=200mmの場合、頭部を開口部23の外部に出すことが困難であり、後方を視認することは困難であった。
【0086】
開口部23の縦幅H及び横幅Wが、H=250mm、W=250mmの場合、頭部を開口部の外部に出すことはできるが、振り向いて後方を視認することは困難であった。
【0087】
開口部23の縦幅H及び横幅Wが、H=250mm、W=350mmの場合、頭部を開口部23の外部に出すことができ、また、首を回して後方を視認することが可能であるとの結果が得られた。
【0088】
さらに、開口部23の縦幅H及び横幅WがH=400mm、W=800mmの場合、頭部を開口部23の外部に出すことができ、また、首を回して後方を視認することが容易に可能であるとの結果が得られた。
【0089】
ここで、産業総合研究所が発行した「日本人頭部寸法データベース2001」によると、青年群弾性の頭長の平均値は189.1mmとされている。同書によると、頭長は、眉間点から後頭点までの距離と定義されている。ここで、眉間点とは、耳眼面を水平にした状態で、鼻根の上方、左右の眉弓の間の部分で正中線上で最も前方に突出している点を指す。また、後頭点は、正中矢状面内で、眉間点から最も遠い後頭部の点を指す。
【0090】
つまり、車両10の運転時の姿勢(座位)で頭部を開口部23を介して車両10の外部に出す場合、開口部23に対して垂直に頭部を出すことができない。したがって、車両10の後方を確認するためには、頭長より大きい幅の開口部23が必要となる。上記検証では、開口部23の縦幅HがH=250mm以上、横幅WがW=350mm以上であれば、頭部を開口部23を介して車両の外部に出すことができ、また、後方を視認できるという結果を得ることができた。
【0091】
<防水性の検証>
ドア本体21の開口部23が閉塞した状態における開閉窓22とドア本体21との間の防水性の検証を行った。防水性の検証は、ドア本体21の開口部23が閉塞した状態において、サイドドア17の内部への水漏れが発生しないとされるシール材40のつぶし代を測定することである。図14に示すように、つぶし代Lは、圧縮される前のシール材40の全長L0と、圧縮されたシール材40の全長L1との差である。ドアに向けて移動させたときに、シール材40を圧縮させた距離である。図15に示すように、防水性の検証では、サイドドア17の外面から3m離れた位置から、開閉窓22の外周縁に向けて(図15中矢印の方向に)棒状放水を行った。なお、棒状放水における水圧は、水圧0.25MPa以上である。シール材40のつぶし代における防水性の検証結果をまとめた表を、表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表2に示すように、つぶし代LがC=0.5mmでは、多数の水滴が開閉窓の内面全体に付着するという結果が得られた。また、つぶし代LがL=1.5mmでは、小数の水滴が開閉窓の内面のうち、シール材の近傍に付着するという結果が得られた。
【0094】
また、つぶし代LがL=2mm以上(表では、L=2mm、又はL=5mm)では、水滴が開閉窓の内面に付着しないという結果が得られた。つまり、つぶし代Lが2mm以上となる場合に、水漏れが発生せず、防水性を確保することができる。
【0095】
<操作性の検証>
開閉レバー55及び軸送りレバー56の操作性の検証を行った。図16に示すように、開閉レバー55の操作性の検証は、例えば開閉レバー55の操作部55bにばねばかり120を固定し、ばねばかり120を引っ張りながら開閉レバー55を90°回動させる間に、ばねばかり120で測定される最大値(以下、最大操作力)を測定することである。なお、この検証では、開閉レバー55の長手方向と、ばねばかり120の長手方向とがなす角度が90°となるように、ばねばかり120が引っ張られる。なお、軸送りレバー56の操作性の検証も、開閉レバー55の操作性の検証と同一である。
【0096】
図17は、各レバーの操作部の長さと操作力との関係を示すグラフである。ここで、実線130は人間工学による許容値(133N)である。人間工学による許容値は、MIL規格「MIL-STD-1472G」によって規定されている。
【0097】
また、図17中符号131で示す点線は、開閉レバー55の操作部55bの長さと操作力との関係、図17中符号132で示す一点鎖線は、軸送りレバー56の操作部56bの長さと操作力との関係を示す。なお、これら関係は、シミュレーションなどの演算により算出された値である。これらが示すように、開閉レバー55、軸送りレバー56は、各々が有する操作部の長さが長くなればなるほど、操作時の操作力は減少していき、所定の間に収束している。
【0098】
ここで、本実施形態における開閉レバー55の操作部55bの長さは200mm、軸送りレバー56の操作部56bの長さは100mmである。上記検証では、開閉レバー55の操作部55bを操作したときの最大操作力(図17中マーク「■(塗りつぶしの四角形)」)は49N、軸送りレバー56の操作部56bを操作したときの最大操作力(図17中マーク「●(塗りつぶしの丸)」は59Nである。これら値は、計算上の値よりも低い値で、また、人間工学による許容値よりも低い値であることがわかった。
【0099】
<別の実施形態>
以下、本発明の別の実施形態について図18から図21を用いて説明する。なお、図18から図21に示す別の実施形態おいて、図1から図17に示した実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0100】
まず、窓安全部材150の構成について説明する。
【0101】
図18(a)は、別の実施形態におけるドア本体21の開口部23が閉塞された状態のサイドドア17Aをキャビン15の外方から見た斜視図、図18(b)は、別の実施形態におけるドア本体21の開口部23が開放された状態のサイドドア17Aをキャビン15の外方から見た斜視図である。図18に示すように、別の実施形態におけるサイドドア17Aは、ドア本体21の外面に窓安全部材150を有する。
【0102】
窓安全部材150は、ドア本体21の外面かつ窓枠31の移動軌跡の縁部であって、開口部23を挟んで回転軸51(図5参照)と反対側に配置される。窓安全部材150は、開閉窓22を閉じ位置(図18(a))から開き位置(図18(b))に回動する際に、窓枠31の側面と窓安全部材150のゴムクッション152(図19参照)とが接触することにより、開閉窓22の急な回動を抑制する。これにより、窓安全部材150は、開閉窓22の開閉中における開閉窓22と人との接触事故を防止する。
【0103】
図19は、別の実施形態における窓安全部材150の断面図である。窓安全部材150は、支持ピン151と、ゴムクッション152と、段付きスペーサー153と、スペーサー154と、ワッシャ155とを有する。支持ピン151は、ドア本体21と接続される。ゴムクッション152と、段付きスペーサー153と、スペーサー154と、ワッシャ155とは、支持ピン151の外周に周方向に配置される。
【0104】
支持ピン151は、ゴムクッション152を支持するものであり、頭部151aと、第1胴部151bと、第2胴部151cと、雄ねじ部151dとを有する。頭部151aは、ゴムクッション152と、段付きスペーサー153と、スペーサー154と、ワッシャ155とが、支持ピン151から抜け出ることを防止する。第1胴部151bは、周方向に段付きスペーサー153を配置してこれを支持する。第2胴部151cは、第1胴部より径が細く、周方向にスペーサー154を配置してこれを支持する。雄ねじ部151dは、支持ピン151をドア本体21にねじ止めして固定する。すなわち、支持ピン151は、窓安全部材150の軸である。支持ピン151の材質は、例えば、鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属である。
【0105】
ゴムクッション152は、円筒形状の部材であり、支持ピン151の第1胴部151bの外周に配置される。ゴムクッション152は、開閉窓22の開閉時に、窓枠31の側面と接触することにより、衝撃を吸収し、開閉窓22の回動の勢いを抑制する。ゴムクッション152の材質は、例えば、クロロブレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、軟質性塩化ビニールなどの耐環境性の高いゴムや合成樹脂等である。
【0106】
段付きスペーサー153は、支持ピン151を軸にゴムクッション152が回転し易くするように、ゴムクッション152にはめ込まれて、ゴムクッション152の内側に挿入される。段付きスペーサー153の材質は、例えば、鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又は、ポリアセタール、ポリカーボネートなどの強度の高い樹脂である。
【0107】
スペーサー154は、支持ピン151を軸に、ゴムクッション152とドア本体21との間に挿入され、ゴムクッション152の軸方向の位置を調節する部材である。スペーサー154の材質は、例えば、鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又は、ポリアセタール、ポリカーボネートなどの強度の高い樹脂である。
【0108】
ワッシャ155は、支持ピン151を軸にゴムクッション152が回転し易くするように、ゴムクッション152の軸方向の前後に挿入される。ワッシャ155の材質は、例えば、鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンなどの金属、又は、ポリアセタール、ポリカーボネートなどの強度の高い樹脂である。
【0109】
次に、図18から図21に示す別の実施形態における開閉窓22の動作について説明する。
【0110】
図20は、別の実施形態において、ドア本体21の開口部23が開放される途中における開閉窓22と窓安全部材150とが接触位置にあるときのサイドドア17Aをキャビン15の外方から見た側面図である。すなわち、図20は、図18(a)に示す状態から、図18(b)に示す状態に移行する途中の状態を示している。
【0111】
上述のとおり、窓安全部材150は、ドア本体21の外側の窓枠31の移動軌跡の縁部に配置される。このため、図20に示すとおり、開閉窓22を開閉する途中において、窓枠31の縁部は、窓安全部材150と接触する。
【0112】
図21は、図20の状態における窓安全部材150近傍の断面図である。図21に示すとおり、図20の状態において、窓枠31は、窓安全部材150のゴムクッション152に接触している。開閉窓22が閉じ位置から開き位置に回動するときは、開閉窓22が自身の重みや開閉の勢い等で急に回動する恐れがある。しかし、窓安全部材150のゴムクッション152には、上述のとおり、ゴムや樹脂等の柔軟性のある材質が用いられている。このため、開閉窓22の開閉途中で窓枠31がゴムクッション152に接触することで、衝撃が吸収され、開閉窓22の急な回動が抑制される。窓枠31がゴムクッション152に接触する際には、ゴムクッション152は、段付きスペーサー153及びワッシャ155とともに支持ピン151を軸に回転する。
【0113】
なお、窓安全部材150は、窓枠31がゴムクッション152に接触する際に、ゴムクッション152が若干つぶれる位置(つぶし代を有する位置)に配置されてもよい。この場合、ゴムクッション152がつぶれることで、開閉窓22の開閉時の衝撃をより多く吸収することができる。
【0114】
次に、図18から図21に示す別の実施形態の効果について説明する。
【0115】
図18から図21に示す別の実施形態では、図1から図17に示す一の実施形態と同様の効果を奏する。このため、図18から図21に示す別の実施形態においても、視認性の検証、防水性の検証、及び操作性の検証において、図13から図17並びに表1及び表2に示す検証結果と同様の検証結果が得られる。
【0116】
さらに、図18から図21に示す別の実施形態では、開閉窓22が回転軸51周りに回転する途中で窓枠31の側面が窓安全部材150のゴムクッション152に接触する。これにより、衝撃が吸収され、開閉窓22の急な回動が抑制される。このため、窓安全部材150を用いることで、窓枠31と人との接触事故を防止することができる。
【0117】
なお、窓安全部材150の設けられる位置や窓安全部材150の形状は、開閉窓22の開閉時の衝撃が吸収できる位置及び形状であれば、図18から図21に示したものには限られない。例えば、窓安全部材150は、ドア本体21の外側の窓枠31の移動軌跡の縁部であれば、図18及び図20に示した位置よりも下側に設けられてもよい。また、図19及び図21に示した窓安全部材150のゴムクッション152の形状は、円筒形状ではなく、三角柱や四角柱などの角柱状やドーナツ状等でもよい。また、窓安全部材150は、衝撃を吸収するゴムクッション152以外の構成は、一部省略されてもよく、ゴムクッション152が直接ドア本体21に設置されてもよい。
【0118】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0119】
10…車両;15…キャビン;16…架台;17,17A…サイドドア;21…ドア本体(ドア板);22…開閉窓;23…開口部;25,25’…ラッチ(固定手段);25a,25b…凹部;26…ストッパ(第1の当接部材);27…ストッパ(第2の当接部材);31…窓枠;31a…挿通孔;32…ガラス;33…モール;35…溝;37…ストッパ;40…シール材;50…窓開閉機構;51…回転軸;51a…挿入部;51b…挿通部;51c…雄ねじ部;51d…軸部;51e…固定部;52…送りねじ(軸送り部材);52a…本体;52b…フランジ部;52c…雌ねじ部;52d…溝部;52e…ねじ孔;53…ボス(軸受け部材);53a…大径部;53b…小径部;54…ピン(規制部材);55…開閉レバー(開閉操作部材);55a…回転部;55b…操作部;55c…連結部;55d…開口;56…軸送りレバー(軸送り操作部材);56a…回転部;56b…操作部;56c…開口;56d…挿通孔;57…ガススプリング(補助手段);57a…ロッド;57b…シリンダ;58…固定板;58a…挿通孔;58b…ねじ孔;59…固定板;59a…挿通孔;59b…挿通孔;65…ボルト;68…固定板;68a…開口部;68b…挿通孔;69…ボルト;70…ねじ孔;71…挿通孔;75…ブッシュ;75a…ブッシュ;75b…ブッシュ;75c…隙間;76…ブッシュ;77…ねじ孔;80…円板;81…ボルト;85…ボルト;86…カバー;90,90’…ロック機構;91…回転軸;91a…フランジ部;92…ボス;92a…上面(端面);92b…ピン;93,93’…ロックレバー(解除操作手段);94…ブッシュ;95…プランジャ;100…補強板;150…窓安全部材;151…支持ピン;151a…頭部;151b…第1胴部;151c…第2胴部;151d…雄ねじ部;152…ゴムクッション;153…段付きスペーサー;154…スペーサー;155…ワッシャ
図1
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