IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JVCケンウッドの特許一覧

<>
  • 特許-方向指示装置および方向指示システム 図1
  • 特許-方向指示装置および方向指示システム 図2
  • 特許-方向指示装置および方向指示システム 図3
  • 特許-方向指示装置および方向指示システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】方向指示装置および方向指示システム
(51)【国際特許分類】
   G09F 19/00 20060101AFI20240423BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240423BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240423BHJP
   H05B 47/10 20200101ALI20240423BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20240423BHJP
   H05B 45/20 20200101ALI20240423BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240423BHJP
【FI】
G09F19/00 Z
B64C39/02
F21S2/00 520
F21S2/00 660
H05B47/10
H05B45/10
H05B45/20
F21Y115:10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020141627
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037473
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】大山 実
(72)【発明者】
【氏名】田之上 洋
(72)【発明者】
【氏名】在原 康貴
(72)【発明者】
【氏名】小澤 和典
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-055897(JP,A)
【文献】特開2019-016513(JP,A)
【文献】特開2020-041970(JP,A)
【文献】特開2017-158037(JP,A)
【文献】特許第6675603(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0203470(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 19/00
B64C 39/02
F21S 2/00
H05B 47/10
H05B 45/10
H05B 45/20
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部を飛行可能にする飛行手段と、
前記本体部に取り付けられ、入射光束を反射して指示光束を出射する反射鏡と、
前記反射鏡の向きを可変にする反射鏡駆動機構と、
目標地点の三次元位置、前記本体部の三次元位置および入射光束の入射方向に基づいて、前記指示光束が前記目標地点に向けて出射する出射方向と前記入射方向の合成ベクトルの方向を算出し、前記反射鏡が前記算出した合成ベクトルの方向を向くように前記反射鏡駆動機構の動作を制御する方向指示制御装置と、を備えることを特徴とする方向指示装置。
【請求項2】
前記方向指示制御装置は、入射光束を投射する投光装置の三次元位置および前記本体部の三次元位置に基づいて、入射光束の前記入射方向を特定することを特徴とする請求項1に記載の方向指示装置。
【請求項3】
入射光束の前記入射方向を検出する入射光束検出部をさらに備え、
前記方向指示制御装置は、前記入射光束検出部の検出結果に基づいて入射光束の前記入射方向を特定することを特徴とする請求項1に記載の方向指示装置。
【請求項4】
入射光束および前記指示光束の少なくとも一方の光路上に設けられ、光強度の時間的な変調および光色の変調の少なくとも一方を行う光変調部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方向指示装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方向指示装置と、前記方向指示装置に向けて入射光束を投射する投光装置と、を備える方向指示システムであって、
前記方向指示装置は、入射光束を再帰反射させる再帰性反射部をさらに備え、
前記投光装置は、
入射光束を生成する光源部と、
前記再帰性反射部にて再帰反射された帰還光束の入射方向を検出する帰還光束検出部と、
前記光源部および前記帰還光束検出部の向きを可変にする投光駆動機構と、
前記帰還光束検出部の検出結果に基づいて、前記方向指示装置に向けて入射光束が投射されるように前記投光駆動機構の動作を制御する投光制御装置と、を備えることを特徴とする方向指示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向指示装置および方向指示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震や火災などの災害発生時に避難経路を示すための避難誘導装置が提案されている。避難誘導装置は、例えば、市街地や公園などに設置され、平常時には地図表示装置として機能し、災害時には避難すべき方向に光を照射して避難経路を案内する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-234250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
市街地等に設置することを目的とした避難誘導装置では、山岳地域や過疎地における避難誘導が困難である。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、山岳地域や過疎地においても利用可能な方向指示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の方向指示装置は、本体部と、本体部を飛行可能にする飛行手段と、本体部に取り付けられ、入射光束を反射して指示光束を出射する反射鏡と、反射鏡の向きを可変にする反射鏡駆動機構と、目標地点の三次元位置、本体部の三次元位置および入射光束の入射方向に基づいて、指示光束が目標地点に向けて出射するように反射鏡駆動機構の動作を制御する方向指示制御装置と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、方向指示システムである。方向指示システムは、ある態様の方向指示装置と、方向指示装置に向けて入射光束を投射する投光装置と、を備える。方向指示装置は、入射光束を再帰反射させる再帰性反射部をさらに備える。投光装置は、入射光束を生成する光源部と、再帰性反射部にて再帰反射された帰還光束の入射方向を検出する帰還光束検出部と、光源部および帰還光束検出部の向きを可変にする投光駆動機構と、帰還光束検出部の検出結果に基づいて、方向指示装置に向けて入射光束が投射されるように投光駆動機構の動作を制御する投光制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、山岳地域や過疎地においても利用可能な方向指示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る方向指示システムの使用態様を模式的に示す図である。
図2】方向指示装置の構成を模式的に示す図である。
図3】方向指示制御装置の機能構成を模式的に示すブロック図である。
図4】投光装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0011】
図1は、実施の形態に係る方向指示システム10の使用態様を模式的に示す図である。方向指示システム10は、方向指示装置11と、投光装置12とを備える。方向指示装置11は、空中を飛行するよう構成され、例えばドローンなどの無人飛行機により構成される。方向指示装置11には、投光装置12からの入射光束13が矢印Aで示されるように入射する。方向指示装置11は、入射光束13を目標地点16に向けて反射させ、目標地点16に向けて矢印Bで示されるように出射する指示光束14を生成する。
【0012】
方向指示システム10は、例えば山岳地域で使用され、登山者や遭難者に向けて山小屋などの目標地点16が存在する方向を指示する。図1の例では、目標地点16の一例である山小屋が稜線17の裏側に隠れており、登山者や遭難者は山小屋を直接視認することができない。本実施の形態によれば、上空から指示光束14を投射することで、方向指示装置11を視認可能な比較的広い範囲に存在する人に対して目標地点16の位置を案内することができる。
【0013】
図2は、方向指示装置11の構成を模式的に示す外観図である。方向指示装置11は、本体部20と、飛行手段22と、反射鏡24と、支持部25と、入射光束検出部26と、再帰性反射部27と、反射鏡駆動機構28と、光変調部29と、測位アンテナ30と、通信アンテナ32と、バッテリ34と、タンク36と、噴霧部38と、方向指示制御装置40と、を備える。
【0014】
飛行手段22は、本体部20を飛行可能にする。飛行手段22は、例えば、本体部20の上側に取り付けられる複数のプロペラを有する。複数のプロペラの動作を制御することで、本体部20の飛行を制御できる。なお、飛行手段22の具体的な構成は特に限定されず、プロペラ以外の構成を用いて本体部20を飛行可能にしてもよい。飛行手段22は、例えば本体部20を飛行または滞空させるための気球を有してもよい。
【0015】
反射鏡24は、本体部20の下側に取り付けられる。反射鏡24は、方向指示装置11に入射する入射光束13を反射し、指示光束14を出射させる。反射鏡24は、平坦面で構成され、指向性を有する入射光束13を反射して、指向性を有する指示光束14を出射させる。反射鏡24は、わずかに湾曲する凹面で構成されてもよく、指示光束14をわずかに集束させるよう構成されてもよい。反射鏡24は、可視光域の入射光束13を高反射率で反射可能な材料で構成される。反射鏡24の中央には支持部25が挿通する開口Oが設けられている。
【0016】
支持部25は、本体部20の下側に取り付けられる。支持部25は、反射鏡24の中央の開口Oに挿通され、支持部25の先端が反射鏡24よりも下方に位置する。支持部25の先端には、入射光束検出部26および再帰性反射部27が設けられる。支持部25は、入射光束検出部26および再帰性反射部27が反射鏡24によって遮られずに外部に向けて露出するように支持する。
【0017】
入射光束検出部26は、支持部25の先端に設けられ、反射鏡24よりも下方に位置する。入射光束検出部26は、入射光束13の入射方向を検出するよう構成される。入射光束検出部26は、本体部20に対する入射光束13の入射角度を検出するよう構成される。入射光束検出部26は、二次元の角度検出器であり、水平方向に沿った二方向の角度を検出する。入射光束検出部26は、例えば、入射光束13が入射するアパチャと、アパチャを通過した光束の位置を検出する二次元検出器とを備える。二次元検出器は、例えば、2×2のアレイ状に配置された複数のフォトディテクタを有し、複数のフォトディテクタのそれぞれで検出する光量に基づいて入射光束13の入射角度が検出される。入射光束検出部26として、例えば、特開2003-8515号に記載されるものを使用できる。なお、二次元検出器は、CCDセンサやCMOSセンサなどの撮像素子で構成されてもよい。
【0018】
再帰性反射部27は、入射光束13を再帰反射させ、矢印Aで示される入射光束13の入射方向とは逆方向に出射する帰還光束15を生成する。帰還光束15は、入射光束13を投射する投光装置12に向けて戻る。再帰性反射部27は、公知の再帰性反射部材で構成することができ、例えば、互いに直交する3枚の平面鏡を組み合わせた微細なコーナーキューブを2次元アレイ状に配置した部材を用いることができる。
【0019】
反射鏡駆動機構28は、本体部20の下側に取り付けられ、本体部20に対する反射鏡24の向きを可変にする。反射鏡駆動機構28は、反射鏡24の向きを2軸で調整可能であり、本体部20の上下方向に対する反射鏡24の法線の傾斜角と、反射鏡24の法線の傾斜方位(例えば東西南北の方位)とを調整可能とする。
【0020】
光変調部29は、本体部20の下側に取り付けられる。光変調部29は、入射光束13および指示光束14の光路と交差する位置に設けられる。光変調部29は、例えば、半球形状のカバーとして構成され、反射鏡24、支持部25、入射光束検出部26および再帰性反射部27を被覆するように設けられる。なお、光変調部29の形状は問わず、円筒状に構成されてもよいし、円錐状、角錐状または角柱状に構成されてもよい。光変調部29は、例えば、直方体形状を有してもよい。
【0021】
光変調部29は、入射光束13および指示光束14の光強度または光色を変調する。光変調部29は、入射光束13および指示光束14を変調することで、入射光束13および指示光束14を互いに判別できるようにする。光変調部29は、入射光束13および指示光束14の一方の光路のみと交差するように設けられてもよい。つまり、光変調部29は、入射光束13または指示光束14の少なくとも一方の光強度または光色を変調する。
【0022】
光変調部29の一例は、機械式または電気式のシャッタであり、シャッタの開状態と閉状態を交互に繰り返すことで、入射光束13および指示光束14の光強度を時分割で変調する。これにより、方向指示装置11から出射する指示光束14が明滅して視認されるようにする。光変調部29の別の一例は、カラーフィルタであり、特定の波長帯域の光を選択的に透過させることで光色を変調する。例えば、入射光束13が白色であり、光変調部29が緑色のフィルタである場合、指示光束14が緑色となる。これにより、入射光束13および指示光束14が異なる色で視認できるようにする。光変調部29は、光強度と光色の双方を変調するよう構成されてもよい。
【0023】
測位アンテナ30は、GNSS(Global Navigation Satellite System)などの衛星測位信号の受信部である。測位アンテナ30は、例えば本体部20の上側に取り付けられる。通信アンテナ32は、投光装置12と無線通信するための無線信号の送受信部である。通信アンテナ32は、例えば本体部20の下側に取り付けられる。
【0024】
バッテリ34は、方向指示装置11の動作に必要な電力を供給する。バッテリ34は、リチウムイオン電池などの充放電可能な二次電池で構成される。タンク36は、噴霧部38が噴射する物質を貯蔵する。タンク36は、パイプやバルブを介して噴霧部38と接続される。バッテリ34およびタンク36は、本体部20の内部に収容される。
【0025】
噴霧部38は、本体部20の下側に取り付けられ、指示光束14に向けて粒子状物質18を噴射するよう構成される。噴霧部38は、タンク36に蓄えられる物質を噴射する。噴霧部38は、例えば水などの液体を霧状にして噴射する。粒子状物質18は、液体でなくてもよく、固体の粒子(粉体)であってもよい。粒子状物質18の粒子径は、例えば0.1μm~1mm程度であり、1μm~100μm程度が好ましい。粒子状物質18を噴射することで、指示光束14を粒子状物質18によって散乱させることができ、指示光束14の視認性を高めることができる。例えば、指示光束14に沿って所定距離(例えば、2m~20m程度)にわたって粒子状物質18が噴射されることで、方向指示装置11から少なくとも所定距離までビーム状または棒状に延びる発光体が存在するかのように見せることができる。噴霧部38は、粒子状物質18を効率的に使用するため、指示光束14の通過領域に選択的に粒子状物質18を噴射することが好ましい。噴霧部38から粒子状物質18が噴射される範囲は、10度以下の立体角となるように狭い範囲に限定されることが好ましい。
【0026】
噴霧部38は、入射光束検出部26の検出結果に基づいて粒子状物質18の噴射を制御してもよく、入射光束検出部26に入射光束13が入射する場合にのみ粒子状物質18を噴射してもよい。噴霧部38は、間欠的に粒子状物質18を噴射してもよい。粒子状物質18を間欠的に噴射することで、指示光束14の視認性が高い状態と低い状態が交互に繰り返されるようにすることができ、指示光束14が明滅しているかのように見せることができる。これにより、方向指示装置11を視認したときに、入射光束13および指示光束14を互いに判別できるようにしてもよい。
【0027】
噴霧部38は、指示光束14の視認性が低いと考えられる状況において、粒子状物質18を噴射してもよい。噴霧部38は、方向指示装置11の周囲に飛散する粒子状物質の量が少ない場合、例えば、晴天で空気が澄んでいる場合に粒子状物質18を噴射してもよい。噴霧部38は、指示光束14の視認性が高いと考えられる状況において、粒子状物質18を噴射しなくてもよい。噴霧部38は、方向指示装置11の周囲に飛散する粒子状物質の量が多い場合、例えば、霧が発生している場合や、砂塵が舞っている場合には粒子状物質18を噴射しなくてもよい。
【0028】
噴霧部38は、本体部20の周囲に存在する粒子状物質を検出する粒子検出部(不図示)を有してもよい。粒子検出部は、例えば、噴霧部38が噴射する粒子状物質18と同程度のサイズの粒子状物質の量または濃度を検出する。粒子検出部は、例えば、本体部20の周囲に存在する粒子状物質に光を照射し、粒子状物質からの反射光または散乱光を計測することで粒子状物質を検出する。粒子検出部は、指示光束14を光源として利用し、粒子状物質による指示光束14の反射光または散乱光を計測することで粒子状物質を検出してもよい。粒子検出部として、視界センサ、温度センサ、湿度センサなどを用いてもよい。
【0029】
方向指示制御装置40は、方向指示装置11の動作を制御する。方向指示制御装置40は、本体部20に収容されている。方向指示制御装置40は、飛行手段22による飛行を制御し、方向指示装置11が所望の飛行地点に滞空するようにする。方向指示制御装置40は、方向指示装置11の三次元位置を測定し、方向指示装置11から目標地点16に向かう方向を算出する。方向指示制御装置40は、目標地点16に向けて指示光束14が投射されるように反射鏡駆動機構28を動作させる。
【0030】
図3は、方向指示制御装置40の機能構成を模式的に示すブロック図である。方向指示制御装置40は、測位部42と、通信部44と、飛行制御部46と、指示方向制御部48と、噴霧制御部50と、記憶部52とを含む。図示する各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0031】
測位部42は、測位アンテナ30が受信する衛星測位信号に基づいて本体部20の三次元位置を測定する。測位部42は、例えば本体部20の緯度、経度および高度を特定する。
【0032】
通信部44は、通信アンテナ32を通じて外部機器と無線通信する。通信部44は、目標地点16の三次元位置情報および方向指示装置11が飛行または滞空すべき飛行地点の三次元位置情報を取得する。通信部44は、投光装置12の三次元位置情報を取得してもよい。通信部44が取得する三次元位置情報は、記憶部52に保存される。なお、目標地点、飛行地点および投光装置の三次元位置情報は、飛行前に記憶部52にあらかじめ設定されることで取得されてもよい。通信部44は、方向指示装置11の飛行方向を指令するための指令情報を取得してもよい。通信部44は、方向指示装置11の現在位置情報、バッテリ34の残量情報、タンク36の残量情報などを外部機器に送信してもよい。通信部44は、方向指示装置11の現在位置情報を投光装置12に送信してもよい。
【0033】
飛行制御部46は、飛行手段22の動作を自律的に制御する。飛行制御部46は、例えば、所望の飛行地点との往復飛行や所望の飛行地点での滞空飛行が実現されるように飛行手段22の動作を制御する。飛行制御部46は、目標地点が複数設定される場合、複数の目標地点を巡回する飛行が実現されるように飛行手段22の動作を制御してもよい。飛行制御部46は、通信部44が取得する指令情報に基づいて、飛行手段22の動作を制御してもよい。
【0034】
指示方向制御部48は、反射鏡駆動機構28の動作を制御して反射鏡24の向きを制御する。指示方向制御部48は、入射光束13の入射方向(矢印A)および指示光束14の出射すべき方向(矢印B)を特定し、矢印Aおよび矢印Bの向きに基づいて反射鏡24の向きを算出する。反射鏡24において入射光束13の入射角と指示光束14の出射角は等しいため、反射鏡24の法線方向は、矢印Aおよび矢印Bの合成ベクトルの方向と一致する。指示方向制御部48は、このようなベクトル演算によって反射鏡24の法線方向を算出できる。
【0035】
指示方向制御部48は、入射光束検出部26の検出結果に基づいて、入射光束13の入射方向(矢印A)を特定する。指示方向制御部48は、方向指示装置11の三次元位置と投光装置12の三次元位置に基づいて入射光束13の入射方向(矢印A)を特定してもよい。指示方向制御部48は、方向指示装置11の三次元位置と目標地点16の三次元位置に基づいて指示光束14の出射すべき方向(矢印B)を特定する。
【0036】
指示方向制御部48は、本体部20の姿勢に応じた制御をしてもよい。指示方向制御部48は、本体部20の揺れや回転を各種センサ(不図示)を用いて検知し、本体部20の揺れや回転による指示光束14の投射方向のずれを相殺または緩和するように反射鏡駆動機構28の動作を制御してもよい。なお、本体部20の揺れや回転は、飛行制御部46によって自律的に抑制されることが好ましい。
【0037】
噴霧制御部50は、噴霧部38の動作を制御する。噴霧制御部50は、入射光束13が入射光束検出部26により検出され、周囲に飛散する粒子状物質の量が少ない場合、噴霧部38に粒子状物質18を噴射させてもよい。噴霧制御部50は、入射光束13が入射光束検出部26により検出されない場合や、周囲に飛散する粒子状物質の量が多い場合、噴霧部38が粒子状物質18を噴射しないようにしてもよい。
【0038】
図4は、投光装置12の構成を模式的に示す図である。投光装置12は、投光ユニット60と、投光駆動機構70と、測位アンテナ76と、通信アンテナ78と、投光制御装置80とを備える。
【0039】
投光ユニット60は、光源部62と、ビームスプリッタ66と、帰還光束検出部68とを含む。光源部62は、指向性を有する入射光束13を生成する。光源部62は、高指向性の光束を生成することが好ましく、平行光束を生成することがより好ましい。光源部62は、LEDなどの発光素子63と、発光素子63の出力光を平行化(コリメート)するレンズなどの光学素子64とを有する。光源部62が生成する入射光束13は、ビームスプリッタ66を通過して、方向指示装置11に向けて矢印Aで示される方向に投射される。
【0040】
帰還光束検出部68は、方向指示装置11にて再帰反射された帰還光束15を検出する。帰還光束15は、入射光束13が投射される矢印Aの方向とは逆方向に投光ユニット60に入射し、ビームスプリッタ66にて反射された後、帰還光束検出部68に入射する。帰還光束検出部68は、帰還光束15の入射方向を検出するよう構成される。帰還光束検出部68は、入射光束13の投射方向(矢印A)に対する帰還光束15の入射方向の角度ずれを検出する。帰還光束15のわずかな角度ずれを検出することで、入射光束13が方向指示装置11に向けて正確に投射されている否かを評価できる。帰還光束検出部68は、二次元の角度検出器で構成され、例えば、入射光束検出部26と同様に構成されることができる。
【0041】
投光駆動機構70は、投光ユニット60の仰角θおよび方位角φを可変にし、投光ユニット60から投射される入射光束13の向きを可変にする。投光駆動機構70は、光源部62、ビームスプリッタ66および帰還光束検出部68の仰角θおよび方位角φを一体的に調整する。仰角θは、水平方向に対する角度である。方位角φは、鉛直方向の軸まわりの回転角であり、例えば東西南北の方位を指定する角度である。
【0042】
投光駆動機構70は、粗動機構72と、微動機構74とを有する。粗動機構72は、投光ユニット60を仰角θを0度~90度の範囲で可変にし、投光ユニット60の方位角φを0度~360度の範囲で可変にする。粗動機構72は、方向指示装置11の三次元位置に基づいて動作し、方向指示装置11が飛行する場所に向けて入射光束13が投射されるようにする。微動機構74は、投光ユニット60の向きを微調整するためのものであり、帰還光束検出部68が検出する帰還光束15の入射方向の角度ずれに基づいて動作する。微動機構74は、入射光束13が反射鏡24の中央付近に入射するように入射光束13の投射方向を微調整する。
【0043】
測位アンテナ76は、GNSSなどの衛星測位信号の受信部である。測位アンテナ76は、投光装置12の三次元位置を特定するために用いられる。なお、測位アンテナ76は、投光装置12に設けられなくてもよい。例えば、投光装置12が固定式の装置であり、投光装置12の位置が不変である場合には測位アンテナ76を設けなくてもよい。通信アンテナ78は、方向指示装置11と無線通信するための無線信号の送受信部である。
【0044】
投光制御装置80は、投光装置12の動作を制御する。投光制御装置80は、測位アンテナ76を用いて投光装置12の三次元位置を測定する。投光制御装置80は、通信アンテナ78を通じて方向指示装置11と無線通信し、方向指示装置11の三次元位置情報を取得する。投光制御装置80は、方向指示装置11の三次元位置と投光装置12の三次元位置に基づいて入射光束13の投射方向を算出する。投光制御装置80は、算出した方向に入射光束13が投射されるように投光ユニット60および投光駆動機構70を動作させる。投光制御装置80は、入射光束検出部26の検出結果に応じて入射光束13の投射方向が微調整されるように投光駆動機構70を動作させ、方向指示装置11に向けて正確に入射光束13が投射されるようにする。
【0045】
つづいて、方向指示システム10の使用方法を例示する。方向指示システム10は、例えば、登山中に遭難した遭難者を近くの山小屋などの避難場所に誘導するために使用できる。まず、方向指示装置11に目標地点および飛行地点の三次元位置情報が設定される。方向指示装置11には、投光装置12の三次元位置情報が設定されてもよい。方向指示装置11は、離陸して設定された飛行地点に向けて飛行する。方向指示装置11は、設定された飛行地点に到達すると、方向指示装置11の現在位置を投光装置12に送信する。方向指示装置11は、方向指示装置11の位置を定期的に投光装置12に送信してもよい。
【0046】
投光装置12は、方向指示装置11から受信した方向指示装置11の現在位置に基づいて、入射光束13の投射方向を算出し、算出した方向に向けて入射光束13を投射する。投光装置12は、方向指示装置11から再帰反射される帰還光束15に基づいて、方向指示装置11に継続的に入射光束13が投射されるように入射光束13の投射方向を微調整する。
【0047】
方向指示装置11は、方向指示装置11の現在位置、投光装置12の位置および目標地点の位置に基づいて反射鏡24の向きを調整し、目標地点に向けて指示光束14が投射されるようにする。方向指示装置11は、光変調部29を用いて入射光束13および指示光束14の少なくとも一方を変調し、指示光束14が入射光束13とは異なる態様で投射されるようにする。方向指示装置11は、指示光束14の視認性を高めるために指示光束14に向けて粒子状物質18を噴射してもよい。
【0048】
方向指示装置11の飛行地点は、遭難者の場所がいずれであっても視認できる可能性が高い場所となるように設定される。例えば、避難場所がある山の頂上付近や尾根付近ではなく、谷間などの山の斜面から離れた位置に設定される。この場合、方向指示装置11の飛行地点は、目標地点からある程度離れていることが想定され、例えば、目標地点から数百m~数km程度離れていることが想定される。したがって、方向指示装置11が投射する指示光束14は必ずしも目標地点まで到達せず、指示光束14が目標地点をサーチライトのように照らす状況とはなりにくい。
【0049】
方向指示装置11から投射される指示光束14は、方向指示装置11から少なくとも所定距離(例えば2m~20m程度)にわたって延びるビーム状または棒状の発光体として視認される。遭難者は、ビーム状または棒状の発光体の延びる方向によって避難すべき方向の目安を付けることができる。遭難者から見たときの目標地点が山の稜線などで隠れている場合、稜線の裏側に向けて延びる発光体が視認できるため、稜線の向こうに避難場所があることを推定できる。したがって、本実施の形態によれば、方向指示装置11の飛行地点の周囲の数百m~数km程度の広い範囲に存在する遭難者に対して避難誘導を実現できる。また、複数の遭難者が互いに異なる場所に存在する場合であっても、一つの方向指示装置11を用いて複数の遭難者を同時に避難誘導することができる。
【0050】
本実施の形態によれば、方向指示装置11が光源を備えず、投光装置12から投射される入射光束13を反射して指示光束14を投射するため、方向指示装置11の重量や消費電力量を低減できる。その結果、方向指示装置11の飛行時間や飛行性能が制限されることを防ぐことができ、方向指示装置11を様々な場所で長時間にわたって連続使用できる。
【0051】
方向指示装置11は、複数の飛行地点を巡回するように設定されてもよい。複数の飛行地点を巡回することで、方向指示装置11を視認可能となる場所を広げることができ、より広範囲に存在する遭難者に対して避難誘導を実現できる。また、複数の方向指示装置11を同時に使用し、複数の方向指示装置11を異なる飛行地点で滞空させることで、より広範囲の遭難者に対して避難誘導できるようにしてもよい。複数の方向指示装置11は、同じ目標地点に向けて指示光束14を投射してもよいし、互いに異なる目標地点に向けて指示光束14を投射してもよい。例えば、避難場所に向けて緑色の指示光束14を投射する第1方向指示装置と、危険箇所に向けて赤色の指示光束14を投射する第2方向指示装置とを組み合わせて使用してもよい。
【0052】
方向指示装置11は、山岳地域での使用に限られず、任意の場所で利用されてもよい。方向指示装置11は、市街地や平地で利用されてもよい。方向指示装置11は、災害時や遭難時の避難誘導ではなく、登山者に対する経路案内や大規模イベントでの経路案内のために利用されてもよい。方向指示装置11は、陸上で利用されてもよいし、水上で利用されてもよい。例えば、ボートやヨットを利用する海や湖での遭難者に対して避難誘導をしてもよいし、海や湖に設定される遠泳コースの経路案内をしてもよい。
【0053】
方向指示装置11は、地上または水上(例えば船)から延びる係留線で接続されてもよい。この場合、係留線を介して方向指示装置11に電力が供給されてもよいし、係留線を介して方向指示装置11と有線で通信してもよい。
【0054】
方向指示装置11は、スピーカを有し、音声で避難誘導するよう構成されてもよい。方向指示装置11は、音声で指示光束14の意味を説明してもよい。例えば、「光が延びる方向に避難してください」といった音声を出力してもよい。その他、「緑色が延びる方向に避難してください」「赤色が延びる方向に近づかないでください」などの指示光束14の色の意味合いを説明する音声を出力してもよい。
【0055】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態に示す各構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
10…方向指示システム、11…方向指示装置、12…投光装置、13…入射光束、14…指示光束、15…帰還光束、16…目標地点、20…本体部、22…飛行手段、24…反射鏡、26…入射光束検出部、27…再帰性反射部、28…反射鏡駆動機構、29…光変調部、40…制御装置、60…投光ユニット、62…光源部、68…帰還光束検出部、70…投光駆動機構、80…投光制御装置。
図1
図2
図3
図4