(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】熱音響装置
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
F25B9/00 311
F25B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2020149627
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 達磨
(72)【発明者】
【氏名】武井 智行
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-025340(JP,A)
【文献】特開2006-266571(JP,A)
【文献】特開2016-183767(JP,A)
【文献】国際公開第2006/030526(WO,A1)
【文献】特開2018-066501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱音響装置であって、
第1流体を介して供給される振動エネルギーを用いて温度勾配を生成するスタックと、
前記スタックの一端に配され、前記第1流体を介して冷却される第1熱交換器と、
前記スタックの他端に配され、前記スタックの前記他端近傍の前記第1流体の温度を一定に保つ第2熱交換器と、を備え、
前記第1熱交換器は、
第2流体が前記第1熱交換器に流入する入口配管と、
前記第2流体が前記第1熱交換器から流出する出口配管と、
前記第1熱交換器の側面の少なくとも一部を周方向に囲むように設けられており、前記入口配管に接続されており、前記第2流体が循環する第1流路部と、
前記第1流路部よりも前記一端から遠くの位置において、前記第1熱交換器の側面の少なくとも一部を周方向に囲むように設けられており、前記出口配管に接続されている第2流路部と、
前記第1流路部と前記第2流路部とを接続する1以上の分岐流路部と、を有する、熱音響装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱音響装置であって、
前記1以上の分岐流路部は、
第1分岐流路部と、
前記第1流路部内を前記第2流体が循環する方向において前記第1分岐流路部よりも前記入口配管の接続部分から遠い位置に設けられており、前記第2流体が流通する方向に垂直な断面の面積が前記第1分岐流路部と異なる第2分岐流路部と、を有する、熱音響装置。
【請求項3】
請求項2に記載の熱音響装置であって、
前記第2分岐流路部における前記断面の面積は、前記第1分岐流路部における前記断面の面積よりも大きい、熱音響装置。
【請求項4】
請求項2に記載の熱音響装置であって、
前記第2分岐流路部における前記断面の面積は、前記第1分岐流路部における前記断面の面積よりも小さい、熱音響装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載の熱音響装置であって、
前記第2分岐流路部は、前記第1流路部における前記第2流体の流通する方向に対する傾きが前記第1分岐流路部における前記傾きと異なり、
前記第1分岐流路部および前記第2分岐流路部における前記傾きは、いずれも90度以下である、熱音響装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の熱音響装置であって、
前記第1流路部は、前記スタックの前記一端を囲むように配置される、熱音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱音響効果に基づき、振動エネルギーを用いて温度勾配を生成するスタックを備える熱音響装置が知られている。特許文献1に記載の熱音響装置は、管内に設けられたスタックと、スタックの一端に配され温度勾配によって冷却される第1熱交換器(第2低温側熱交換器)と、スタックの他端に配されスタックの他端の温度を一定に保つ第2熱交換器(第2高温側熱交換器)とで構成するヒートポンプを備えている。第1熱交換器においては、冷却対象を冷却する流体の流路が、管の外周面を囲むように設けられている。流体と管との間で熱移動が起こり、流体が冷却される。冷却された流体によって、冷却対象が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-25340号公報
【文献】特開2019-173687号公報
【文献】特開2019-163924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、熱交換器においては、熱移動が起こる接触面を増加させることで、交換できるエネルギー量を大きくできる。しかし、流路内に配される熱交換器のフィンのスタックの軸方向の寸法を大きくすると、流路内の抵抗が大きくなる。その結果、熱音響現象が生じにくくなる。また、スタックの軸方向に管を取り巻く熱交換器の流路の幅を広げる態様も考えられるが、そのような態様において追加的に流路と接触することとなる管の部位は、スタックのうち最も低温となる一端よりも温度が高い部分が配されている部位である。このため、流体の熱交換の効率が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、熱音響装置が提供される。この熱音響装置は、第1流体を介して供給される振動エネルギーを用いて温度勾配を生成するスタックと、前記スタックの一端に配され、前記第1流体を介して冷却される第1熱交換器と、前記スタックの他端に配され、前記スタックの前記他端近傍の前記第1流体の温度を一定に保つ第2熱交換器と、を備える。前記第1熱交換器は、第2流体が前記第1熱交換器に流入する入口配管と、前記第2流体が前記第1熱交換器から流出する出口配管と、前記第1熱交換器の側面の少なくとも一部を周方向に囲むように設けられており、前記 入口配管に接続されており、前記第2流体が循環する第1流路部と、前記第1流路部よりも前記一端から遠くの位置において、前記第1熱交換器の側面の少なくとも一部を周方向に囲むように設けられており、前記出口配管に接続されている第2流路部と、前記第1流路部と前記第2流路部とを接続する1以上の分岐流路部と、を有する。
このような態様とすれば、第2流体は第1流路部を繰り返し循環するため、軸方向へ流路を長くすることなく、より多くの熱量を第1熱交換器と第2流体との間で移動させ、第2流路部から流出する第2流体によって、対象物を冷却することができる。そのため、熱音響装置のエネルギー変換の効率を向上できる。
(2)上記形態の熱音響装置において、前記1以上の分岐流路部は、第1分岐流路部と、前記第1流路部内を前記第2流体が循環する方向において前記第1分岐流路部よりも前記入口配管の接続部分から遠い位置に設けられており、前記第2流体が流通する方向に垂直な断面の面積が前記第1分岐流路部と異なる第2分岐流路部と、を有する、態様とすることもできる。
断面の面積を変えることによって、第1流路部を循環する第2流体と、第2流路部へ流入する第2流体と、の流量を変えることができる。そのため、各分岐流路部の断面の大きさは、所望した温度に応じて定めることができる。
(3)上記形態の熱音響装置において、前記第2分岐流路部における前記断面の面積は、前記第1分岐流路部における前記断面の面積よりも大きい、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、入口配管に近い第1分岐流路部からは、あまり冷却されていない流体が第1流路部から第2流路部へ少量、流入し、出口配管に近い第2分岐流路部からは、冷却された流体が第1流路部から第2流路部へ多量に流入する。これにより、所望した温度の流体を出口配管から流出することができる。
(4)上記形態の熱音響装置において、前記第2分岐流路部における前記断面の面積は、前記第1分岐流路部における前記断面の面積よりも小さい、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、入口配管に近い第1分岐流路部からは、あまり冷却されていない流体が第1流路部から第2流路部へ多量に流入し、出口配管に近い第2分岐流路部からは、冷却された流体が第1流路部から第2流路部へ少量、流入する。これにより、所望した温度の流体を出口配管から流出することができる。
(5)上記形態の熱音響装置において、前記第2分岐流路部は、前記第1流路部における前記第2流体部の流通する方向に対する傾きが前記第1分岐流路部における前記傾きと異なり、前記第1分岐流路部および前記第2分岐流路部における前記傾きは、いずれも90度以下である、態様とすることもできる。
傾きを変えることによって、第1流路部を循環する第2流体と第2流路部へ流入する第2流体との流量を変えることができる。そのため、各分岐流路部の傾きは、所望した温度に応じて定めることができる。
(6)上記形態の熱音響装置において、前記第1流路部は、前記スタックの前記一端を囲むように配置される、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、第2流体は、スタックの一端側における同一断面を循環する。すなわち、最も低温となるスタックの一端を囲むように第1流路部が配されるため、熱音響装置のエネルギー変換の効率を向上できる。
【0007】
本開示は、熱音響装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、熱音響装置用の熱交換器や、熱音響装置用の熱交換器を備えたヒートポンプ、それらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の熱音響装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】ヒートポンプの概略構成を示す説明図である。
【
図3】第1熱交換器のジャケットの概略構成を示す説明図である。
【
図4】第1流路部をスタックの軸方向に沿って見た場合の平面図である。
【
図5】
図3をV-Vの位置で切断して展開して示した場合の説明図である。
【
図6】他の実施形態における第1熱交換器の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.実施形態:
図1は、第1実施形態の熱音響装置TAの概略構成を示す説明図である。なお、
図1は、熱音響装置TAの各構成要素の形状を正確に示すものではない。熱音響装置TAは、ループ管型の熱音響装置である。熱音響装置TAは、熱源HSと冷却対象COとに接続されている。熱音響装置TAは、熱源HSから熱エネルギーを供給されて、冷却対象COを冷却することができる。
【0010】
熱音響装置TAは、原動機PMと、ヒートポンプHPと、ループ管LT1、LT2と、を備える。原動機PMの一端とヒートポンプHPの一端とは、ループ管LT1によって接続されている。原動機PMの他端とヒートポンプHPの他端とは、ループ管LT2によって接続されている。その結果、原動機PMと、ヒートポンプHPと、ループ管LT1、LT2とは、輪状の配管構造PAを構成している。この輪状の配管構造PA内には、第1流体FL1が満たされている。本実施形態において、第1流体FL1は、空気である。輪状の配管構造PAは、内部の第1流体FL1が、輪状の配管構造PA内を流通可能であるように構成されている。
【0011】
原動機PMは、熱源HSから熱エネルギーを供給されて、音波を発生させる(
図1の下段左部参照)。原動機PMは、第4熱交換器40と、第3熱交換器20と、スタック30と、を備える。
【0012】
図1において、第4熱交換器40と、スタック30と、第3熱交換器20と、が並ぶ方向を、Z軸方向として示す。また、Z軸方向に垂直な2方向であって互いに垂直な方向を、
図1において、X軸方向およびY軸方向として示す。
図2以降において示すX軸、Y軸、Z軸は、
図1において示したX軸、Y軸、Z軸と対応する。
【0013】
第4熱交換器40は、原動機PMの一端において、第1流体FL1を流通可能であるようにループ管LT1に接続されている。第4熱交換器40は、さらに、熱源HSに接続されている。本実施形態において、熱源HSは、例えば、抵抗加熱方式の棒状のヒータである。第4熱交換器40は、熱源HSから熱を供給されて、配管構造PA内の第1流体FL1であって、第4熱交換器40に接する第1流体FL1に、熱を付与する。
【0014】
第3熱交換器20は、原動機PMの他端において、第1流体FL1を流通可能であるようにループ管LT2に接続されている。第3熱交換器20は、図示しないチラーを備える。第3熱交換器20は、チラーによって温度を一定に保たれている。第3熱交換器20は、配管構造PA内の第1流体FL1であって、第3熱交換器20に接する第1流体FL1を、あらかじめ定められた範囲の温度に制御する。
【0015】
スタック30は、第4熱交換器40と第3熱交換器20との間の部位に設置されている。スタック30は、多数の貫通孔を備えている。それらの貫通孔は、第1流体FL1を流通させる流路32を構成する。スタック30は、第1流体FL1を流通可能であるように第4熱交換器40および第3熱交換器20と接続されている。スタック30は、温度勾配を形成されて、配管構造PA内に音波を発生させる。
【0016】
原動機PMは、以下のように動作する。第4熱交換器40によって加熱された第1流体FL1が、スタック30の一端38およびその近傍の部分に熱を与えることにより、スタック30の一端38の近傍が高温となる。第3熱交換器20によって、スタック30の他端39の近傍が、一端38の近傍に対して低温となる。その結果、スタック30に、温度勾配が形成される。すると、スタック30は、熱音響自励振動を起こし、配管構造PA内で定常波を発生させる。スタック30が発生させた音エネルギーは、ループ管LT1内の第1流体FL1を介して、原動機PMの一端からヒートポンプHPの一端に伝えられる(
図1の矢印K1参照)。
【0017】
図2は、ヒートポンプHPの概略構成を示す説明図である。なお、
図2は、ヒートポンプHPの各構成要素の形状を正確に示すものではない。ヒートポンプHPは、原動機PMから振動エネルギーである音波を供給されて、冷却対象COを冷却する(
図1の上段右部参照)。ヒートポンプHPは、第2熱交換器90と、第1熱交換器70と、スタック80と、を備える。
【0018】
第2熱交換器90は、ヒートポンプHPの一端において、第1流体FL1を流通可能であるようにループ管LT1に接続されている(
図1の上段右部参照)。第2熱交換器90は、図示しないチラーを備える。第2熱交換器90は、チラーによって流体を流通されて、温度を一定に保たれている。第2熱交換器90は、配管構造PA内の第1流体FL1であって、第2熱交換器90に接する第1流体FL1を、あらかじめ定められた範囲の温度に制御する。
【0019】
第2熱交換器90は、ジャケット93と、フィンモジュール94と、を備える(
図2の下段参照)。ジャケット93は、第3流体FL3を流通させる流路96を構成する環状の構造物である。ジャケット93は、チラーに接続され、チラーによって第3流体FL3を流通される。フィンモジュール94は、ジャケット93の中央の穴に配されている。フィンモジュール94は、多数のフィンを備えている。フィンモジュール94における隣り合うフィンの間隙は、第1流体FL1を流通させる流路92を構成する。フィンモジュール94は、ジャケット93との間で熱交換を行う。チラーによる第3流体FL3の流通によって、ジャケット93およびフィンモジュール94は、あらかじめ定められた範囲の温度に制御される。その結果、スタック80の他端88近傍の流路92を流れる第1流体FL1は、あらかじめ定められた範囲の温度に制御される。
【0020】
第1熱交換器70は、ヒートポンプHPの他端において、第1流体FL1を流通可能であるようにループ管LT2に接続されている(
図1の上段右部参照)。第1熱交換器70は、さらに、冷却対象COに接続されている。第1熱交換器70は、配管構造PA内の第1流体FL1であって、第1熱交換器70に接する第1流体FL1から熱を奪われて、冷却対象COから熱を奪う。その結果、冷却対象COが冷却される。第1熱交換器70の詳細な構成および機能については、後に説明する。
【0021】
第1熱交換器70は、ジャケット73と、フィンモジュール74と、を備える(
図2の上段参照)。ジャケット73は、ジャケット73内を流通する第2流体FL2を、冷却対象COとの間で循環させる。ジャケット73の詳細な構成および機能については後述する。フィンモジュール74は、ジャケット73の中央の穴に配されている。フィンモジュール74は、多数のフィンを備えている。フィンモジュール74における隣り合うフィンの間隙は、第1流体FL1を流通させる流路72を構成する。フィンモジュール74は、ジャケット73との間で熱交換を行う。フィンモジュール74のフィンが多いと第1流体FL1の振動において抵抗が大きくなるため、フィンの数は少なくてもよく、無くてもよい。
【0022】
スタック80は、第1熱交換器70と第2熱交換器90との間の部位に設置されている(
図1の上段右部および
図2参照)。スタック80は、管LT3に収容され、多数の貫通孔を備えている。それらの貫通孔は、第1流体FL1を流通させる流路82を構成する。スタック80は、第1流体FL1を流通可能であるように第1熱交換器70および第2熱交換器90と接続されている。スタック80は、ループ管LT1内の第1流体FL1を解して伝達される定常波の音波である振動エネルギーを用いて、温度勾配を生成する。
【0023】
ヒートポンプHPは、以下のように動作する。スタック80の流路82内において、第1流体FL1は定常波で振動する。第1流体FL1がスタック80の一端89の近傍から他端88の近傍に向かう向きに移動する際に、第1流体FL1は断熱膨張する。その結果、第1流体FL1の温度が低下する。第1流体FL1は、スタック80の他端88の近傍において、第1熱交換器70から熱を奪う。第1熱交換器70を介して、冷却対象COが冷却される。
【0024】
第1流体FL1がスタック80の他端88の近傍から一端89の近傍に向かう向きに移動する際に、第1流体FL1は断熱圧縮される。その結果、第1流体FL1の温度が上昇する。第1流体FL1は、スタック80の一端89の近傍において、第2熱交換器90に熱を与える。第2熱交換器90に与えられた熱は、第2熱交換器90のチラーを介して、外部に放出される。その結果、第1流体FL1の振動による熱の移動によって、スタック80の一端89の近傍は、冷却される。すると、第1熱交換器70を介して、冷却対象COが冷却される。
【0025】
図3は、第1熱交換器70のジャケット73の概略構成を示す説明図である。図示の便宜上、
図3において、フィンモジュール74は省略されている。第1熱交換器70は、入口配管75と出口配管79と第1流路部76と第2流路部78と第1分岐流路部77aと第2分岐流路部77bとを有する。
【0026】
入口配管75は、第2流体FL2が第1熱交換器70に流入する配管である。出口配管79は、第2流体FL2が第1熱交換器70から流出する配管である。
【0027】
第1流路部76は、第2流体FL2を流通させる流路26を構成する環状の構造物である。第1流路部76は、入口配管75に接続されている配管であり、第2流体FL2が循環する流路である。第1流路部76は、第1熱交換器70の側面の少なくとも一部を周方向に囲むように設けられている。本実施形態において、第1流路部76は、スタック80の一端89を囲むように配置される(
図2上段参照)。第1流路部76は、フィンモジュール74と接している。その結果、第1流路部76の壁およびフィンモジュール74を介して、フィンモジュール74内の第1流体FL1と第1流路部76内の第2流体FL2との間で熱交換が行われる。
【0028】
第2流路部78は、第2流体FL2を流通させる流路26を構成する環状の構造物である。第2流路部78は、出口配管79に接続されている配管であり、第1流路部76よりも一端89から遠くの位置において、第1熱交換器70の側面の少なくとも一部を周方向に囲むように設けられている(
図2上段参照)。本実施形態において、第2流路部78は、第1流路部76よりも一端89からスタック80と反対側に離れた位置に設けられている(
図2上段および
図3参照)。第2流路部78は、第1流体FL1を流通させるループ管LT2の壁およびフィンモジュール74から離れて設けられている。その結果、ループ管LT2内およびフィンモジュール74内の第1流体FL1と第1流路部76内の第2流体FL2との間で熱交換は行われない。
【0029】
分岐流路部77は、第1分岐流路部77aと第2分岐流路部77bとを有する。本実施形態において、第1分岐流路部77aと第2分岐流路部77bとを合わせて単に「分岐流路部77」と呼ぶ。分岐流路部77は、第1流路部76と第2流路部78とを接続する流路である。第2分岐流路部77bは、第1流路部76内を第2流体FL2が循環する方向において、第1分岐流路部77aよりも、第1流路部76と入口配管75との接続部分から遠い位置に設けられている。「入口配管75の接続部分から遠い位置」とは、入口配管75の接続部から、第1流路部76内を第2流体FL2が循環する方向に沿って計測される。
【0030】
図4は第1流路部76をスタック80の軸方向(Z軸方向)に沿って見た場合の平面図である。第2流体FL2は入口配管75から流入し、第1流路部76内を矢印K2の方向に循環する。本実施形態において、入口配管75は、第2流体FL2が第1流路部76の接線方向から流入する位置に設けられている。これにより、第1流路部76内において第2流体FL2が循環する流れが生成されやすくなる。
【0031】
図5は、
図3に示したジャケット73をV-Vの位置で切断して展開して示した説明図である。第1流路部76と、第2流路部78内を循環する第2流体FL2の流れは、
図5において、右方向への流れとして示される。図示の便宜上、出口配管79は、入口配管75の上方ではなく、第2流路部78の右端に点線で示されている。本実施形態において、第2分岐流路部77bは、第2流体FL2が流通する方向A2に垂直な断面の面積が第1分岐流路部77aと異なる。第2分岐流路部77bにおける断面の面積は、第1分岐流路部77aにおける第2流体FL2が流通する方向A1に垂直な断面の面積よりも大きい。第2分岐流路部77bにおける断面の面積を第1分岐流路部77aにおける断面の面積よりも大きくすることで、第2分岐流路部77bを介して第1流路部76から第2流路部78に流入する第2流体FL2の流量が、第1分岐流路部77aを介して第1流路部76から第2流路部78に流入する第2流体FL2の流量より多くなる。
【0032】
また、第1分岐流路部77aの第1流路部76における第2流体FL2の流通する方向に対する傾きおよび第2分岐流路部77bの第1流路部76における第2流体FL2の流通する方向に対する傾きは、いずれも90度以下である。第2分岐流路部77bにおける傾きd2は、第1分岐流路部77aにおける傾きd1よりも小さい。第2分岐流路部77bにおける傾きd2を第1分岐流路部77aにおける傾きd1より小さくすることで、第2分岐流路部77bを介して第1流路部76から第2流路部78に流入する第2流体FL2の流量が、第1分岐流路部77aを介して第1流路部76から第2流路部78に流入する第2流体FL2の流量より多くなる。
【0033】
本実施形態における第1熱交換器70は、入口配管75に接続され、第2流体FL2が循環する第1流路部76と出口配管79に接続される第2流路部78と、第1流路部76と第2流路部78とを接続する1以上の分岐流路部77と、を有する。このような態様とすれば、第2流体FL2は第1流路部76を繰り返し循環するため、スタック80の軸方向(Z軸方向)へ流路を長くすることなく、より多くの熱量を第1熱交換器70と第2流体FL2との間で移動させ、第2流路部78から流出する第2流体FL2によって、対象物を冷却することができる。そのため、熱音響装置のエネルギー変換の効率を向上できる。
【0034】
また、本実施形態において、第2分岐流路部77bは、第2流体FL2が流通する方向に垂直な断面の面積が第1分岐流路部77aと異なる。分岐流路部77の各断面の面積を変えることによって、第1流路部76を循環する第2流体FL2と、第2流路部78へ流入する第2流体FL2と、の流量を変えることができる。そのため、各分岐流路部77の断面の大きさは、所望した温度に応じて定めることができる。その結果、第2流路部78内の第2流体FL2の温度を所望の温度とすることができる。
【0035】
また、本実施形態において、第2分岐流路部77bの傾きd2は、第1分岐流路部77aの傾きd1と異なる。分岐流路部77の各傾きを変えることによって、第1流路部76を循環する第2流体FL2と、第2流路部78へ流入する第2流体FL2と、の流量を変えることができる。そのため、各分岐流路部77の傾きは、所望した温度に応じて定めることができる。その結果、第2流路部78内の第2流体FL2の温度を所望の温度とすることができる。
【0036】
また、第1流路部76は、スタック80の一端89を囲むように配置される。そのため第2流体FL2は、スタック80の一端89側における同一断面を循環する。すなわち、最も低温となるスタック80の一端89を囲むように第1流路部76が配されるため、熱音響装置の熱エネルギーの移動の効率を向上できる。
【0037】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態において、第2流路部78は、第1流路部76よりも一端89からスタック80と反対側に離れた位置に設けられている。すなわち、第1流路部76よりも+Z軸側に設けられている。これに限らず、第2流路部78は、第1流路部76よりも一端89からスタック80側(-Z軸側)に離れた位置に設けられていてもよく、第1流路部76の外周側に設けられていてもよい。
【0038】
(B2)
図6は、他の実施形態における第1熱交換器70の概略構成を示す平面図である。上記実施形態において、第1熱交換器70は、
図6に示すように、フィンモジュール74の代わりに、平行平板PPを備えていても良い。平行平板PPは、配管軸断面内で第1流路部76を形成する。また、第1熱交換器70は、フィンモジュール74を備え、フィンモジュール74内にフィンの一部として設けられている平行平板PPを備えていてもよい。これにより第1流路部76において第2流体FL2が循環する長さが延びるため、より多くの熱量を第1熱交換器70と第2流体FL2との間で移動させることができる。
【0039】
(B3)上記実施形態において、第1熱交換器70は、2つの分岐流路部77を有する。これに限らず、第1熱交換器70は、4つなど、3つ以上の分岐流路部77を備えていてもよい。また、第1熱交換器70は、分岐流路部77を1つのみ備えていてもよい。
【0040】
(B4)上記実施形態において、第2分岐流路部77bにおける断面の面積は、第1分岐流路部77aにおける断面の面積よりも大きい。これに限らず、第2分岐流路部77bにおける断面の面積は、第1分岐流路部77aにおける断面の面積よりも小さくてもよく、同じでもよい。また、上記実施形態において、第2分岐流路部77bにおける傾きd2は、第1分岐流路部77aにおける傾きd1よりも小さい。これに限らず、第2分岐流路部77bにおける傾きd2は、第1分岐流路部77aにおける傾きd1よりも大きくてもよく、同じでもよい。
【0041】
(B5)上記実施形態において、分岐流路部77は、流量調節バルブを備えていてもよい。この形態によって、第1熱交換器70は、第1流路部76を循環する第2流体FL2と、第2流路部78へ流入する第2流体FL2と、の流量を定めることができる。
【0042】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
20…第3熱交換器、30…スタック、32…流路、38…一端、39…他端、40…第4熱交換器、70…第1熱交換器、72…流路、73…ジャケット、74…フィンモジュール、75…入口配管、76…第1流路部、77…分岐流路部、77a…第1分岐流路部、77b…第2分岐流路部、78…第2流路部、79…出口配管、80…スタック、82…流路、88…他端、89…一端、90…第2熱交換器、92…流路、93…ジャケット、94…フィンモジュール、96…流路、CO…冷却対象、FL1…第1流体、FL2…第2流体、FL3…第3流体、HP…ヒートポンプ、HS…熱源、LT1、LT2…ループ管、PA…配管構造、PM…原動機、PP…平行平板、TA…熱音響装置