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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/231 20240101AFI20240423BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B60K35/231
G02B27/01
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020164704
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056771
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】濱田 一成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠樹
【審査官】中野 裕之
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/23
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光投影手段からの表示光を反射鏡で反射させて反射透光部材に投影し、前記反射透光部材を透過する実景に重ねて前記反射透光部材に反射された表示光により虚像を生成して表示するとともに、車両の利用者に対し、赤外光照射手段からの赤外光を照射し、前記利用者を撮像手段で撮像する車両用表示装置であって
記表示光投影手段、前記反射鏡及び前記撮像手段を収容する筐体と、前記筐体に形成された開口部に配設され、前記表示光及び前記赤外光が通過する透光部材とを備え、
前記透光部材の周縁部には、可視光を遮光する遮光部が設けられ、
前記撮像手段は、前記遮光部に対応して設けられ、
前記遮光部の少なくとも前記撮像手段が対応する部分には、赤外光を透過させる赤外光透過部が設けられていることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記赤外光照射手段を収容し、
前記赤外光照射手段は、前記遮光部に対向して設けられ、
前記赤外光透過部は、前記遮光部の前記赤外光照射手段が対向する部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
表示光投影手段からの表示光を反射鏡で反射させて反射透光部材に投影し、前記反射透光部材を透過する実景に重ねて前記反射透光部材に反射された表示光により虚像を生成して表示するとともに、車両の利用者に対し、赤外光照射手段からの赤外光を照射し、前記利用者を撮像手段で撮像する車両用表示装置であって
記表示光投影手段、前記反射鏡及び前記撮像手段を収容する筐体と、前記筐体に形成された開口部に配設され、前記表示光及び前記赤外光が通過する透光部材とを備え、
前記透光部材の周縁部には、可視光を遮光する遮光部及び可視光を遮光しない透光部が設けられ、
前記撮像手段は、前記透光部に対応して設けられ、
前記撮像手段と前記透光部との間には、可視光を遮光して赤外光を透過させる遮蔽部材が設けられていることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項4】
前記筐体は、前記赤外光照射手段を収容し、
前記赤外光照射手段は、前記透光部に対向して設けられ、
前記遮蔽部材は、前記赤外光照射手段と前記透光部との間に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、前記筐体において前記車両の車幅方向一端側に設けられ、前記赤外光照射手段は、前記筐体において前記車両の車幅方向他端側に設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記遮蔽部材は、前記透光部と略平行に設けられていることを特徴とする請求項又は請求項に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記遮蔽部材は、前記筐体に保持されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記遮光部には、前記遮蔽部材と重なり合い、前記透光部材の外側から内側に向けて色が薄くなる重合部が設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項9】
前記遮光部は、前記透光部材に黒色の印刷層が形成されて設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントウインドシールドやコンバイナ等に虚像を表示するとともに、利用者を撮像可能なヘッドアップディスプレイ装置等の車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントウインドシールドやコンバイナ等の反射透光部材を透過する実景(車両前方の風景)に重ねて、その反射透光部材に反射された表示光により虚像を生成して表示するヘッドアップディスプレイ装置は、車両の運転者等の利用者の視線移動を極力抑えつつ、利用者が所望する情報を虚像により提供することによって、安全で快適な車両運行に寄与する。
【0003】
また、ヘッドアップディスプレイ装置には、利用者に赤外光を照射して利用者を撮像し、その撮像画像に基づいて利用者の状態把握に供するものがある。
【0004】
例えば特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、表示手段から発せられる可視光をコンバイナ部材にて利用者に向けて反射して表示像を結像してなるもので、利用者に向けて赤外線を照射する赤外光照射手段と、表示手段から発せられる可視光をコンバイナ部材に向けて反射し、利用者及びコンバイナ部材にて反射される赤外線を透過するミラー部材と、ミラー部材を透過する赤外線を感受して利用者をそれぞれ異なる方向から撮像する複数の撮像手段と、撮像手段によって撮像された画像に基づいて利用者の目の位置を算出する画像処理手段とを備え、利用者の目の位置を精度良く算出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-126984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置のように、撮像手段を反射鏡(ミラー部材)の裏側(反射鏡に対して利用者及びコンバイナ部材の側と反対側)に設置する場合には、反射鏡が可視光を反射して赤外光を透過させるものでなければならず、その製造コストが高額になるという問題があった。
【0007】
そこで、例えば撮像手段を反射鏡の裏側ではない位置に設置しようとすると、ハウジングの外部からハウジングの開口部を通して撮像手段の存在が目立ち、車両用表示装置の商品性が低下するという新たな問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、反射鏡が赤外光を透過させる必要がなく、撮像手段の存在も目立たない車両用表示装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、表示光投影手段からの表示光を反射鏡で反射させて反射透光部材に投影し、前記反射透光部材を透過する実景に重ねて前記反射透光部材に反射された表示光により虚像を生成して表示するとともに、車両の利用者に対し、赤外光照射手段からの赤外光を照射し、前記利用者を撮像手段で撮像する車両用表示装置であって、前記表示光投影手段、前記反射鏡及び前記撮像手段を収容する筐体と、前記筐体に形成された開口部に配設され、前記表示光及び前記赤外光が通過する透光部材とを備え、前記透光部材の周縁部には、可視光を遮光する遮光部が設けられ、前記撮像手段は、前記遮光部に対応して設けられ、前記遮光部の少なくとも前記撮像手段が対応する部分には、赤外光を透過させる赤外光透過部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
前記筐体は、前記赤外光照射手段を収容し、前記赤外光照射手段は、前記遮光部に対向して設けられ、前記赤外光透過部は、前記遮光部の前記赤外光照射手段が対向する部分に設けられていてもよい。このとき、前記撮像手段は、前記筐体において前記車両の車幅方向一端側に設けられ、前記赤外光照射手段は、前記筐体において前記車両の車幅方向他端側に設けられてもよい。
【0011】
あるいは、本発明は、表示光投影手段からの表示光を反射鏡で反射させて反射透光部材に投影し、前記反射透光部材を透過する実景に重ねて前記反射透光部材に反射された表示光により虚像を生成して表示するとともに、車両の利用者に対し、赤外光照射手段からの赤外光を照射し、前記利用者を撮像手段で撮像する車両用表示装置であって、前記表示光投影手段、前記反射鏡及び前記撮像手段を収容する筐体と、前記筐体に形成された開口部に配設され、前記表示光及び前記赤外光が通過する透光部材とを備え、前記透光部材の周縁部には、可視光を遮光する遮光部及び可視光を遮光しない透光部が設けられ、前記撮像手段は、前記透光部に対応して設けられ、前記撮像手段と前記透光部との間には、可視光を遮光して赤外光を透過させる遮蔽部材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
前記筐体は、前記赤外光照射手段を収容し、前記赤外光照射手段は、前記透光部に対向して設けられ、前記遮蔽部材は、前記赤外光照射手段と前記透光部との間に設けられていてもよい。このとき、前記赤外光照射手段は、前記筐体において前記車両の車幅方向一端側に設けられ、前記撮像手段は、前記筐体において前記車両の車幅方向他端側に設けられてもよい。
【0013】
前記遮蔽部材は、前記透光部と略平行に設けられても、また、前記筐体に保持されてもよく、前記遮光部には、前記遮蔽部材と重なり合い、前記透光部材の外側から内側に向けて色が薄くなる重合部が設けられてもよい。
【0014】
前記遮光部は、前記透光部材に黒色の印刷層が形成されて設けられてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両用表示装置において反射鏡が赤外光を透過させる必要がなく、撮像手段の存在も目立たないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】発明を実施するための形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が設けられた車両を示す説明図である。
図2図1のヘッドアップディスプレイ装置の外観を示す説明図である。
図3図1のヘッドアップディスプレイ装置を平面視で示す説明図である。
図4】発明を実施するための形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の他の例を示す説明図である。
図5図4のヘッドアップディスプレイ装置の内部構造を示す説明図である。
図6】発明を実施するための形態に係るヘッドアップディスプレイ装置のさらに他の例を示す説明図である。
図7図6のヘッドアップディスプレイ装置を平面視で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係る車両用表示装置としてのヘッドアップディスプレイ装置(HUD)1は、車両2のフロントウインドシールド3の下方にあるインストルメントパネル4の内部に設けられ、フロントウインドシールド3の一部に可視光である表示光Lを投影する。表示光Lは、フロントウインドシールド3に反射されて虚像Vを生成し、ステアリングホイール5の後方の図示を略す運転席に座る運転者Dにフロントウインドシールド3を透過する実景に重ねて虚像Vを視認させる。
【0019】
また、HUD1は、運転者Dの状態をモニターするDMS(ドライバーモニタリングシステム)の機能を持ち、運転者Dに赤外光Lを照射して運転者Dを撮像する。
【0020】
詳細には、HUD1は、黒色のABS樹脂等により成形されて外光の侵入が防止されたハウジング6に覆われて外部と区画され、ハウジング6にはポリカーボネート等からなる透明なカバーガラス(透明部材)7が取り付けられた開口部8が形成されている。ハウジング6の内部には、表示器ユニット9と、平面鏡10と、凹面鏡11と、赤外光照射ユニット12と、カメラ13とが保持・収容されている。
【0021】
開口部8に配設されるカバーガラス7は、図2に示すように、下方に凸に湾曲した四辺形板状を呈し、その周縁部(四辺の周辺部)には全周にわたって可視光を遮光する不可視部としての遮光部14が設けられている。遮光部14は、ポリカーボネート等の透明な基材に対し、当該基材の裏面(または表面)に黒色の印刷層が形成されてなる。
【0022】
表示器ユニット9は、光源及び液晶パネル等からなる表示器15が設けられ、表示器15から可視光である映像光(表示光L)を投影表示する。平面鏡10は、平面部分を有するように成形されたガラスにアルミニウム等の金属や誘電体多層膜を蒸着してなり、可視光を単純に反射する。凹面鏡11は、凹面部分を有するように成形されたポリカーボネート等の樹脂にアルミニウム等の金属を蒸着してなり、可視光を拡大して反射する。
【0023】
赤外光照射ユニット12は、図3に示すように、ハウジング6においてカバーガラス7の下方で遮光部14に対向(対応)するように、車両2の車幅方向中央側に設けられている。遮光部14の赤外光照射ユニット12が対向(対応)する部分には、赤外光を透過させる赤外光透過部16が設けられ(遮光部14のうち、赤外光透過部16の部分は、可視光を遮蔽して赤外光を透過させる黒色の印刷層からなり、それ以外の部分は、可視光及び赤外光を遮蔽する黒色の印刷層からなる。)、赤外光照射ユニット12は、発光ダイオードからなる光源が発する赤外光(近赤外線)を赤外光透過部16を通してフロントウインドシールド3に向けて照射する。
【0024】
一方、カメラ13は、ハウジング6においてカバーガラス7の下方で赤外光透過部16に対向(対応)するように、車両2の車幅方向中央側、かつ、赤外光照射ユニット12の前方に設けられ、赤外照射ユニット12から照射される波長帯の赤外光に感度を有する撮像素子、及び、赤外光を透過してその撮像素子に結像させ得るレンズを備えて近赤外線画像を撮影する。また、ここでのカメラ13は遮光部14に対向(対応)して設けられている。
【0025】
赤外光照射ユニット12及びカメラ13は、いずれも、平面鏡10や凹面鏡11の裏側(平面鏡10又は凹面鏡11に対してフロントウインドシールド3の側と反対側)でなく、かつ、平面鏡10からフロントウインドシールド3までの表示光Lの光路と重ならない位置に設けられている。なお、本例の場合、ここでの詳細図示は省略するが、ハウジング6は、車幅方向と略直交(交差)する一対の周壁部を有しており、これら一対の周壁部のうち車両を左右に2等分する仮想中心ラインに近い側に位置する一周壁部(一方の周壁部)のやや内側となるハウジング6の空所に赤外光照射ユニット12及びカメラ13を設けた構成としている。なお、ここでのハウジング6は、4つの周壁部を備え、図1で図示された概ね車幅方向に沿う2つの周壁部は、前記一対の周壁部の各々の端部同士を繋ぐ立壁として構成される。
【0026】
HUD1において、表示器ユニット9からの表示光Lは、平面鏡10で反射され、次いで、凹面鏡11で拡大して反射され、カバーガラス7の遮光部14に囲まれた透明な中央部(透光領域)17を通過してフロントウインドシールド3に投影される。フロントウインドシールド3に投影された表示光Lは、運転者Dの側に拡大して反射され、虚像Vを生成してフロントウインドシールド3を透過する実景に重ねて運転者Dに表示する。
【0027】
一方、赤外光照射ユニット12からの赤外光Lは、カバーガラス7の遮光部14の赤外光透過部16を通過してフロントウインドシールド3に投影され、フロントウインドシールド3で運転者Dの側に反射されて運転者Dを照射する。そして、運転者Dに反射されると赤外光Lの一部は逆の経路を辿り、赤外光透過部16を通過してカメラ13に入射した赤外光Lにより運転者Dが撮像される。この撮像は、虚像Vの表示中、定期的又は不定期的に行われ、その撮像画像に基づいて運転者Dのモニタリングが行われる。
【0028】
本実施の形態に係るHUD1は、表示器ユニット9からの表示光Lを平面鏡10及び凹面鏡11で反射させてフロントウインドシールド3に投影し、フロントウインドシールド3を透過する実景に重ねてフロントウインドシールド3に反射された表示光Lにより虚像Vを生成して表示するとともに、車両2の運転者Dに対し、赤外光照射ユニット12からの赤外光Lを照射し、運転者Dをカメラ13で撮像するもので、表示器ユニット9、平面鏡10、凹面鏡11及びカメラ13を備えるとともに、表示器ユニット9、平面鏡10、凹面鏡11及びカメラ13を収容するハウジング6と、ハウジング6に形成された開口部8に配設され、表示光L及び赤外光Lが通過するカバーガラス7とを備え、カバーガラス7の周縁部には、可視光を遮光する遮光部14が設けられ、カメラ13(赤外光照射ユニット12及びカメラ13)は、遮光部14に対向(対応)して設けられ、遮光部14のカメラ13(赤外光照射ユニット12及びカメラ13)が対向(対応)する部分には、赤外光Lを透過させる赤外光透過部16が設けられているので、カバーガラス7の周縁部に対向したカメラ13が受光する赤外光Lについて、その光路上にない平面鏡10及び凹面鏡11は、赤外光Lを透過させる必要がなく、製造コストを抑制することができる。
【0029】
また、HUD1の外観上、カメラ13(赤外光照射ユニット12及びカメラ13)は可視光を遮光する遮光部14に覆われるので、カメラ13(赤外光照射ユニット12及びカメラ13)の存在も目立たない。
【0030】
遮光部14は、カバーガラス7に黒色の印刷層が形成されて設けられているので、遮光部14を備えるカバーガラス7の製造が容易であり、カメラ13は、ハウジング6において車両2の車幅方向中央側に設けられているので、車両2の運転席側のサイドウインドからの外光が入り難く、カメラ13に強い外光が入って運転者Dのモニターに支障を来たす可能性を低減させることができる。
【0031】
図4は、本実施の形態に係る他のHUD18を示す。HUD18の各部のうちHUD1と同様な部分には、HUD1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0032】
HUD18において、カバーガラス7の周縁部には、可視光を遮光する遮光部14及び可視光を遮光しない透光部19が設けられている(遮光部14の一部(HUD1の赤外光透過部16の部分)を抜くように透光部19が設けられている。)。赤外光照射ユニット12及びカメラ13は、その透光部19に対向(対応)して設けられ、赤外光照射ユニット12及びカメラ13と透光部19との間には、図5に示すように、可視光を遮光して赤外光を透過させる不可視部材としての遮蔽片20が設けられている(図5において、αは赤外光照射ユニット12の照射範囲、βはカメラ13の画角を示す。)。
【0033】
詳しくは、カバーガラス7は、ハウジング6の表面近くに形成された凹部21に両面テープ22で貼着され、遮蔽片20は、ハウジング6において凹部21の内側に形成された凹部23に両面テープ24で貼着されて保持されている。遮蔽片20は、例えば黒色樹脂製のシート材等からなり、その形状及び配置から、透光部19と略平行に設けられている。なお、ここでの詳細図示は省略するが、カバーガラス7は、その周縁部分が両面テープ22と対向している凹部21の載置部に載置(保持)され、遮蔽片20は、その周縁部分が両面テープ24と対向している凹部23の載置部に載置(保持)され、凹部23は凹部21よりも一段低い位置に設けられる構成としている。
【0034】
遮光部14には、遮蔽片20と重なり合い、カバーガラス7の外側から内側に向けて(図5においては、左右外側(両面テープ22の側)から内側(透光部19の側)に向けて)色が薄くなる重合部25が設けられている。重合部25は、例えば、カバーガラス7の外側から内側に向けて黒色をグラデーションのように濃淡を変化させて形成してもよいし、カバーガラス7の外側から内側に向けて黒色のドットの密度が低くなるように網点印刷で形成してもよい。
【0035】
このHUD18は、表示器ユニット9からの表示光Lを平面鏡10及び凹面鏡11で反射させてフロントウインドシールド3に投影し、フロントウインドシールド3を透過する実景に重ねてフロントウインドシールド3に反射された表示光Lにより虚像Vを生成して表示するとともに、車両2の運転者Dに対し、赤外光照射ユニット12からの赤外光Lを照射し、運転者Dをカメラ13で撮像するもので、表示器ユニット9、平面鏡10、凹面鏡11及びカメラ13を備えるとともに、表示器ユニット9、平面鏡10、凹面鏡11及びカメラ13を収容するハウジング6と、ハウジング6に形成された開口部8に配設され、表示光L及び赤外光Lが通過するカバーガラス7とを備え、カバーガラス7の周縁部には、可視光を遮光する遮光部14及び可視光を遮光しない透光部19が設けられ、カメラ13(赤外光照射ユニット12及びカメラ13)は、透光部19に対向(対応)して設けられ、カメラ13(赤外光照射ユニット12及びカメラ13)と透光部19との間には、可視光を遮光して赤外光を透過させる遮蔽片20が設けられているので、カバーガラス7の周縁部に対向(対応)して設けられるカメラ13が受光する赤外光Lについて、その光路上にない平面鏡10及び凹面鏡11は、赤外光Lを透過させる必要がなく、製造コストを抑制することができる。
【0036】
また、HUD18の外観上は、カメラ13(赤外光照射ユニット12及びカメラ13)が可視光を遮光する遮蔽片20に覆われるので、カメラ13(赤外光照射ユニット12及びカメラ13)の存在も目立たない。特に、遮蔽片20が黒色の樹脂製であれば、可視光を遮蔽し赤外光を透過する印刷よりも赤外光の透過率が高く可視光の透過率が低いので、カメラ13(赤外光照射ユニット12及びカメラ13)の高い隠蔽性とカメラ13による効果的な撮影とを両立させることができる。
【0037】
遮蔽片20は、透光部19と略平行に設けられている。一方、一般に、カバーガラス7は、その表面で反射した太陽光が運転者Dに向かわないように設計されているので、透光部19と略平行な遮蔽片20で反射された太陽光も、運転者Dに向かわないようにすることができる。ここでは、遮蔽片20は、ハウジング6に載置(保持)されているので、遮蔽片20をカバーガラス7に固定すると生じるおそれがあるカバーガラス7の変形を予防することができる。
【0038】
さらに、遮光部14には、遮蔽片20と重なり合い、カバーガラス7の外側から内側に向けて色が薄くなる重合部25が設けられているので、部材や設置位置が異なる遮光部14と遮蔽片20との境界をぼかして目立たなくすることができ、HUD18の商品性を向上させることができる。
【0039】
図6及び図7は、本実施の形態に係るさらに他のHUD26を示す。HUD26の各部のうちHUD1と同様な部分には、HUD1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0040】
HUD26において、カバーガラス7の周縁部には、可視光を遮光する遮光部14が設けられ、遮光部14には、車両2の車幅方向一端側(外側)及び他端側(中央側)に赤外光Lを透過させる赤外光透過部16が設けられている。そして、カメラ13は、車両2の車幅方向一端側に設けられた赤外光透過部16に対向し、赤外光照射ユニット12は、車両2の車幅方向他端側に設けられた赤外光透過部16に対向している。
【0041】
このHUD26によれば、カメラ13は、ハウジング6において車両2の車幅方向一端側に設けられ、赤外光照射ユニット12は、ハウジング6において車両2の車幅方向他端側に設けられているので、赤外光照射ユニット12から出射してカバーガラス7で反射された赤外光Lは、車幅方向の反対側にあるカメラ13に入りにくく、撮像画像において照明光による迷光の発生を抑制することができる。
【0042】
以上、本発明を実施するための形態について例示したが、本発明の実施形態は上述したものに限られず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更等してもよい。
【0043】
例えば、上記実施の形態では、車両のフロントウインドシールドを反射透光部材として表示光を投影したが、フロントウインドシールドに代えてコンバイナを用いてもよく、カメラがハウジングに収容されていれば、赤外光照射ユニットはハウジングの外部(例えば車両のハンドルの奥にあるステアリングコラム上)に設けてもよい。さらには、不可視部14の全体(全てのエリア)を赤外光透過部16としてもよい。要は、不可視部14の少なくともカメラ13が対向(対応)する部分には、赤外光を透過させる赤外光透過部16が設けられていればよい。
【0044】
また、遮光部は、印刷によらずに塗装や多色成型その他の方法により形成してもよく、カバーガラスや遮蔽片は、溶着その他の方法によりハウジングに固定してもよく、遮蔽片は、印刷により着色してもよいし、カバーガラスにオプティカルボンディング等の方法により接着してもよい。カバーガラスは、透明ではなく暗色(半透過性)の部材により構成されていてもよい。
【0045】
さらに、HUD26では複数の赤外光透過部16を設け、各赤外光透過部16に対向するようにカメラ13及び赤外光照射ユニット12を離して配置したが、その配置も車幅方向の一端側と他端側に限られるものではなく、赤外光透過部16の一方又は全てをHUD18の透光部19及び遮蔽片20の組み合わせに変更してもかまわない。
【符号の説明】
【0046】
1 ヘッドアップディスプレイ装置(車両用表示装置)
2 車両
3 フロントウインドシールド(反射透光部材)
6 筐体(ハウジング)
7 カバーガラス(透光部材)
9 表示光投影手段(表示器ユニット)
10 平面鏡(反射鏡)
11 凹面鏡(反射鏡)
12 赤外光照射ユニット(赤外光照射手段)
13 カメラ(撮像手段)
14 遮光部
16 赤外光透過部
19 透光部
20 遮蔽片(遮蔽部材)
25 重合部
D 運転者(利用者)
表示光
赤外光
V 虚像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7