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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】トレー型紙容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/24 20060101AFI20240423BHJP
   B65D 21/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B65D5/24 H
B65D21/02 410
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020169877
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061743
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】古▲瀬▼ 清人
(72)【発明者】
【氏名】猪又 暢之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正幸
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3198161(JP,U)
【文献】登録実用新案第3104100(JP,U)
【文献】特開2010-260621(JP,A)
【文献】特開2019-172339(JP,A)
【文献】特開平06-293334(JP,A)
【文献】実開平06-012330(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/24
B65D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙層と内面樹脂層を有する積層体からなる1枚のブランクシートより成形されるトレー型紙容器であって、
ブランクシートは、紙層に必要な打ち抜きを施した後に全面に内面樹脂層を形成して、しかる後に所定の形状に打ち抜いたものであり、
ブランクシートは、正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状の底面板を有し、底面板の引き伸ばされていない4辺には、それぞれ山折罫線を介して長方形状のコーナー板が連設されており、
底面板の他の辺には、それぞれ山折罫線を介して逆台形形状の側面板が連設され、各側面板には谷折罫線を介してフランジ部が連設されており、
各コーナー板と、側面板およびフランジ部との間には紙層が打ち抜かれて内面樹脂層のみの部分が存在し、
成形に当たっては、各側面板の先端部とフランジ部が、各コーナー板の内側に折り込まれて、それぞれの先端同士が重ならないように成形されており、
トレー型紙容器を積み重ねた時のトレー型紙容器同士の間隔(Sp)が、
6mm<Sp<20mmであることを特徴とするトレー型紙容器。
【請求項2】
コーナー板の底辺の長さをC、側面板の高さをHsとした時、
C<25mmであり、かつHs<60mmであることを特徴とする請求項1に記載のトレー型紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品類等を収納するためのトレー型紙容器に関し、特に平坦なフランジ部を有し、蓋材による密封性に優れ、さらに積み重ね適性にも優れたトレー型紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境を保全しようとする意識の高まりから、海洋汚染の原因となっているプラスチック容器を、再生産可能な資源であり、しかも生分解性を有する紙を主材料として用いた紙容器に代替する試みが種々なされている。トレー型の容器についても従来のプラスチック製のトレーを紙容器で代替する試みがなされている。
【0003】
トレー型の容器は、単にトレーとして用いる用途と、開口部を蓋材で密封して保存容器として用いる用途とに大別される。後者の場合、蓋材をシールし易いように、開口部の周縁に水平なフランジ部を設けることが一般的である。
【0004】
プラスチック容器の場合には、水平でかつ平坦なフランジ部を形成することは容易であるが、紙容器の場合、フランジ部に繋ぎ目やしわや段差が生じ易いため平坦なフランジ部を安定的に形成することは、容易ではなかった。
【0005】
出願人の出願になる特許文献1に記載されたトレー容器用ブランクは、従来のトレー型紙容器において、立壁同士が接続するコーナー部において、フランジ部付け根部分にピンホールができ易く、液もれが生じる場合があったのを改善したものである。
【0006】
特許文献1に記載されたトレー容器用ブランクは、問題の生じる可能性のあるコーナー部に小突起を設けることにより、従来のコーナー部におけるピンホール対策には、効果を発揮するものとなったが、フランジ部に紙の重なりに基づく段差が存在するため、蓋材とフランジ部との間に紙の厚さに基づく隙間が生じる可能性が残っていた。
【0007】
一方、充填機において、トレー型紙容器に内容物を充填する際、ブランク容器を積み重ねたスタックから、一つづつ順次切り離して、取り出して充填するが、この時紙容器のスタック適性が悪いと、充填機においてトラブルが生じる。
【0008】
スタックにおける問題点としては、容器の積み重ね性が悪く、スタックピッチ(積み重ねた紙容器の間隔)が広すぎると、多くの紙容器を積み重ねることができず、スタックの補充が頻繁に必要となる問題がある。またスタックピッチが狭すぎると、取り出しに失敗する確率が高くなる。また切り離しに要する力が強すぎると、同様に取り出しに失敗する確率が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-255546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は、紙を主材料とするトレー型紙容器において、スタックした際のスタックピッチが適切であり、かつ切り離しも円滑にできるため、充填機適性が良好なトレー型紙容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、紙層と内面樹脂層を有する積層体からなる1枚のブランクシートより成形されるトレー型紙容器であって、ブランクシートは、紙層に必要な打ち抜きを施した後に全面に内面樹脂層を形成して、しかる後に所定の形状に打ち抜いたものであり、ブランクシートは、正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状の底面板を有し、底面板の引き伸ばされていない4辺には、それぞれ山折罫線を介して長方形状のコーナー板が連設されており、底面板の他の辺には、それぞれ山折罫線を介して逆台形形状の側面板が連設され、各側面板には谷折罫線を介してフランジ部が連設されており、各コーナー板と、側面板およびフランジ部との間には紙層が打ち抜かれて内面樹脂層のみの部分が存在し、成形に当たっては、各側面板の先端部とフランジ部が、各コーナー板の内側に折り込まれて、それぞれの先端同士が重ならないように成形されており、トレー型紙容器を積み重ねた時のトレー型紙容器同士の間隔(Sp)が、6mm<Sp<20mmであることを特徴とするトレー型紙容器である。
【0012】
本発明に係るトレー型紙容器は、積み重ねた時のトレー型紙容器同士の間隔(スタックピッチ、Sp)が、6mm<Sp<20mmとなるようにしたことにより、充填機における積載効率が向上する。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、コーナー板の底辺の長さをC、側面板の高さをHsとした時、C<25mmであり、かつHs<60mmであることを特徴とする請求項1に記載のトレー型紙容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るトレー型紙容器は、ブランクシートの形状を検討することにより、4辺のフランジ部同士が重ならないようにしたため、成型後のフランジ部に積層体の重なりに基づく段差が生じず、蓋材の密封性が高まる。
【0015】
また、紙層に必要な打ち抜きを施した後に、全面に内面樹脂層を形成して、しかる後に所定の形状に打ち抜いたブランクシートを用いているため、成型後のトレー型紙容器において水漏れの心配がない。
【0016】
本発明に係るトレー型紙容器は、積み重ねた時のトレー型紙容器同士の間隔(スタックピッチ、Sp)が、6mm<Sp<20mmとなるようにしたことにより、充填機における積載効率が向上した。また、積み重ねた時に、紙容器同士が点接触し、面接触することがないため、紙容器同士が付着して取り出しエラーになることを防止できる。
【0017】
請求項2に記載の発明のように、コーナー板の底辺の長さCを25mm未満、側面板の高さHsを60mm未満とした場合には、本発明の特徴を十分に生かすことができる実用性の高いトレー型紙容器となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明に係るトレー型紙容器の斜視図であり、蓋材をシールしていない状態を示したものである。
図2図2は、図1に示したトレー型紙容器を積み重ねた状態を示した斜視説明図である。
図3図3は、図1に示したトレー型紙容器の平面説明図である。
図4図4は、図3のコーナー部分の拡大図であり、トレー型紙容器を積み重ねた時に接触する点(Cp)の説明図である。
図5図5は、図1に示したトレー型紙容器のブランクシートの平面説明図である。
図6図6は、図5に示したブランクシートのコーナー部分の拡大図である。
図7図7は、図3のA-A´断面を示した断面説明図である。
図8図8は、図6のB-B´断面を示した断面説明図である。
図9図9は、比較例2に用いた従来のトレー型紙容器のブランクシートである。
図10図10は、比較例2に用いた従来のトレー型紙容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照しながら、本発明に係るトレー型紙容器について詳細に説明する。図1は、本発明に係るトレー型紙容器1の斜視図であり、蓋材をシールしていない状態を示したものである。図2は、図1に示したトレー型紙容器1を積み重ねた状態を示した斜視説明図である。図3は、図1に示したトレー型紙容器1の平面説明図である。図4は、図3のコーナー部分の拡大図であり、トレー型紙容器1を積み重ねた時に接触する点(Cp)の説明図である。また、図5図1に示したトレー型紙容器1のブランクシートBLの平面説明図であり、図6は、そのコーナー部分の拡大図である。また、図7は、図3のA-A´断面を、図8は、図6のB-B´断面をそれぞれ示した断面説明図である。
【0020】
本発明に係るトレー型紙容器1は、図5に示したような、紙層3と内面樹脂層4とを有する積層体2からなる1枚のブランクシート(BL)より成形されるトレー型紙容器である。ブランクシートは、紙層3に必要な打ち抜きを施した後に全面に内面樹脂層4を形成して、しかる後に所定の形状に打ち抜いたものである。ブランクシートは、正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状の底面板5を有し、底面板5の引き伸ばされていない4辺には、それぞれ山折罫線e、f、g、hを介して長方形状のコーナー板6が連設されている。
【0021】
通常容器の外側に当たる紙層には印刷表示が行われ、積層体の表面側となる。従って紙層側が山となる折罫線が山折罫線であり、紙層側が谷となる折罫線が谷折罫線である。図5において山折罫線は点線で表示され、谷折罫線は一点鎖線で表示されている。なお図5は、ブランクシートを内面側から見た状態を示している。
【0022】
底面板5の他の辺には、それぞれ山折罫線a、b、c、dを介して逆台形形状の側面板7が連設され、各側面板には谷折罫線i、j、k、lを介してフランジ部8が連設されている。
【0023】
各コーナー板6と、側面板7およびフランジ部8との間には紙層3が打ち抜かれて内面樹脂層4のみの部分が存在する。成形に当たっては、各側面板7の先端部とフランジ部8が、各コーナー板6の内側に折り込まれて、それぞれの先端同士が重ならないように成形される。
【0024】
4辺のフランジ部8同士が重ならないようにしたことにより、成型後のフランジ部8が平坦な仕上りとなり、段差がないため、蓋材10をシールする際にピンホールの発生等がなく、密封性が高まった。
【0025】
また、紙層3に必要な打ち抜きを施した後に、全面に内面樹脂層4を形成して、しかる後に所定の形状に打ち抜いたブランクシートを用いているため、成型後のトレー型紙容器において内面樹脂層4は底面からフランジ部まで連続して存在するため、水漏れが生じる心配がない。
【0026】
図6は、ブランクシート(BL)のコーナー部分の拡大図であり、コーナー板6の底辺の長さC、側面板7の高さHsの説明図である。図2に示したようにトレー型紙容器1を積み重ねた時のトレー型紙容器同士の間隔(スタックピッチSp)は、数1に示した計算式から算出されるが、コーナー板6の底辺の長さCと側面板7の高さHsのみによって決定されることが分かっている。
【数1】
【0027】
表1は、Cの値を5mmから27.5mmまで2・5mm間隔で変化させ、Hsの値を20mmから80mmまで5mm間隔で変化させた時のSpの値を計算したものである。図中網掛した部分は、Spの値が6mmから20mmの範囲に収まっていることを示している。
【0028】
【表1】
【0029】
Spの値が6mmから20mmの範囲であれば、充填機における適性が良好であることが経験的に分かっており、6mmより小さいと取り出しエラーが生じる恐れがある。逆に20mmより大きい場合には積載効率が悪化するため、容器を頻繁に補充する必要が生じる。また、容器高さとスタックピッチの関係では、Sp<容器高さ×0.4であることが好ましい。
【0030】
本発明に係るトレー型紙容器の場合、積み重ねた時に図2図4に示したように紙容器同士が接触するのは、8角形の角のコーナー板側面部とフランジ部の内側のCpにおいてのみであり、しかも点接触である。従って積み重ねた時に紙容器同士が密着せず、取り出しエラーが生じることがない。
【0031】
紙層3の材質については、特に制約はないが、一般的に紙容器に用いられる各種板紙、コートボール紙、カートン原紙、カップ原紙等が使用できる。
【0032】
内面樹脂層4に用いられる材質としては、トレー型紙容器の使用用途に応じて選択が可能であり、例えば電子レンジ加熱が必要な場合であれば、高温耐性を有するポリプロピレン(PP)樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等を用いる。高温耐性が不要な場合であれば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などの一般的にシーラントとして用いられる合成樹脂を単体または組み合わせて用いることができる。
【0033】
以下実際に、コーナー板6の底辺の長さCと側面板7の高さHsを、変化させた時のスタック適性を確認した。
【0034】
<実施例1>
坪量260g/mのカップ原紙にフランジ部重なり部の上側に当たる部分を窓抜き後、用紙の内面側に内面樹脂層を貼り合わせた後、ブランクシートを打ち抜いた。内面樹脂層としては、厚さ40μmのポリエチレン樹脂フィルムを用いた。コーナー板の底辺の長さCを12.5mm、側面板の高さHsを40mmとした。この時、容器高さは、33.2mmであった。ブランクシートを製函してトレー容器を作製し、40個積み上げたところ、スタックピッチSpは12.5mmであり、Sp値および容器高さに対するSp値の比率ともに高くなく、積載効率は良好であった。また、積み重ねたトレーが傾くことはなかった。充填機上では、積み重ねた状態からのトレーの切り離しは容易に行うことができた。
【0035】
<実施例2>
坪量260g/mのカップ原紙にフランジ部重なり部の上側に当たる部分を窓抜き後、用紙の内面側に内面樹脂層を貼り合わせた後、ブランクシートを打ち抜いた。内面樹脂層としては、ポリエチレン15μm/PET12μm/ポリエチレン30μmの3層フィルムを用いた。コーナー板の底辺の長さCを15mm、側面板の高さHsを50mmとした。この時、容器高さは、41.0mmであった。ブランクシートを製函してトレー容器を作製し、40個積み上げたところ、スタックピッチSpは16mmであり、Sp値および容器高さに対するSp値の比率ともに高くなく、積載効率は良好であった。また、積み重ねたトレーが傾くことはなかった。充填機上では、積み重ねた状態からのトレーの切り離しは容易に行うことができた。
【0036】
<比較例1>
坪量260g/mのカップ原紙にフランジ部重なり部の上側に当たる部分を窓抜き後、用紙の内面側に内面樹脂層を貼り合わせた後、ブランクシートを打ち抜いた。内面樹脂層としては、厚さ40μmのポリエチレン樹脂フィルムを用いた。コーナー板の底辺の長さCを10mm、側面板の高さHsを70mmとした。ブランクシートを製函してトレー容器を作製し、40個積み上げたところ、スタックピッチSpは31mmであり、Sp値自体が高く、積載効率が悪かった。なお、積み重ねたトレーが傾くことはなかった。また充填機上では、積み重ねた状態からのトレーの切り離しは容易に行うことができた。
【0037】
<比較例2>
坪量320g/mのカップ原紙の内面側に内面樹脂層を貼り合わせた後、図9に示したような従来型の紙トレーのブランクシートを打ち抜いた。内面樹脂層には厚さ40μmのポリプロピレン樹脂を用いた。製函時の形状は図10に示す通りである。側面板の高さHs=35.5mmに対し、容器高さは35.0mmである。このトレーを40個スタックしたところ、スタックピッチは20mmとなり、積載効率が悪かった。また、積み重ねたトレー間では傾きが見られ、充填機上におけるトレー切り離しが困難であった。
【符号の説明】
【0038】
1・・・トレー型紙容器
BL・・・ブランクシート
A・・・長辺の長さ
B・・・短辺の長さ
C・・・コーナー板の底辺の長さ
Hs・・・側面板の高さ
Sp・・・スタックピッチ
Cp・・・接触点
2・・・積層体
3・・・紙層
4・・・内面樹脂層
5・・・底面板
6・・・コーナー板
7・・・側面板
8・・・フランジ部
10・・・蓋材
a~h・・・山折罫線
i~l・・・谷折罫線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10