(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】治療支援装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20240423BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240423BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240423BHJP
A61N 5/067 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
G01N21/64 F
A61B10/00 E
A61B10/00 T
A61N5/067
(21)【出願番号】P 2020175600
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】石川 亮宏
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-167046(JP,A)
【文献】特開2014-221117(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045516(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/230178(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/038806(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/00
G01N 21/64
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の体内に投与された蛍光物質を含む薬剤に所定の波長帯の治療光を照射することに基づいて、がん細胞を死滅させる治療において、前記薬剤に前記治療光を照射する照射部と、
前記治療光の照射により励起された前記薬剤の前記蛍光物質が発する蛍光を検出する蛍光検出部と、
治療時間中における第1時間範囲内において前記蛍光検出部により検出された蛍光信号の変化度合いを取得する変化取得部と、
少なくとも前記変化取得部が取得した前記第1時間範囲内における前記蛍光信号の変化度合いが所定の変化度合範囲内に収まったことに基づいて、前記治療の進行が定常状態であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記治療の進行が定常状態であると判定された場合に前記治療が定常状態であることに関わる所定の動作の制御を行う動作制御部とを備える、治療支援装置。
【請求項2】
前記変化取得部は、前記蛍光信号の変化度合いとして、前記蛍光検出部により検出された前記第1時間範囲内における前記蛍光信号の変化速度である第1変化速度を取得し、
前記判定部は、前記第1変化速度が前記所定の変化度合範囲としての変化速度範囲内に収まったことに基づいて、前記治療の進行が定常状態であると判定する、請求項1に記載の治療支援装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1変化速度がゼロ近傍になったことに基づいて、前記治療の進行が定常状態であると判定する、請求項2に記載の治療支援装置。
【請求項4】
前記第1時間範囲は、前記治療時間中における現在の時間を含み、
前記変化取得部は、前記第1変化速度と
、前記治療時間中における前記第1時間範囲以前の時間を含む第2時間範囲内において、前記蛍光検出部により検出された前記蛍光信号の変化速度である第2変化速度とを算出しており、
前記判定部は、前記第1変化速度と前記第2変化速度との比較に基づいて、前記治療の進行が定常状態であるか否かを判定する、請求項2または3に記載の治療支援装置。
【請求項5】
前記第2時間範囲は、前記第1時間範囲が含まれる前記治療時間中において、前記第1時間範囲と離間した時間範囲である、請求項4に記載の治療支援装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記第1変化速度が前記所定の変化度合範囲としての前記変化速度範囲内に収まり、前記第1変化速度と前記第2変化速度との比が所定の速度比範囲内に収まったことに基づいて、前記治療の進行が定常状態であると判定する、請求項4または5に記載の治療支援装置。
【請求項7】
前記判定部により前記治療の進行が定常状態であると判定された場合に、前記動作制御部の制御により行われる前記所定の動作は、前記治療の進行が定常状態であることをユーザに通知する動作を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の治療支援装置。
【請求項8】
前記第1時間範囲内における前記蛍光信号の変化度合いを表示する表示部をさらに備え、
前記治療の進行が定常状態であることをユーザに通知する動作は、前記判定部により前記治療の進行が定常状態であると判定される前後で、前記表示部における前記蛍光信号の変化度合いを示す表示の表示方法を変更する動作を含む、請求項7に記載の治療支援装置。
【請求項9】
前記判定部により前記治療の進行が定常状態であると判定された場合に、前記動作制御部の制御により行われる前記所定の動作は、前記照射部による前記治療光の照射を停止する動作を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の治療支援装置。
【請求項10】
前記蛍光検出部により検出された前記蛍光信号を解析する解析部と、
前記照射部による前記治療光の照射の制御を行う制御部とをさらに備え、
前記解析部は、前記変化取得部と、前記判定部と、前記動作制御部とを含み、
前記動作制御部は、前記判定部により前記治療の進行が定常状態であると判定された場合に、前記所定の動作として、前記制御部を介して前記照射部による前記治療光の照射を停止する制御を行う、請求項1~9のいずれか1項に記載の治療支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の体内に投与された蛍光物質を含む薬剤に所定の波長帯の治療光を照射することに基づいて、がん細胞を死滅させる治療(光免疫療法)の支援または治療を行う治療支援装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、蛍光を検出する蛍光検出部と、蛍光検出部により出力された蛍光信号に基づいて蛍光画像を生成する蛍光画像生成部とを備える治療支援装置が開示されている。蛍光検出部は、光免疫療法による治療のために被検体の体内に投与された薬剤の蛍光物質から発せられる蛍光を検出している。上記特許文献1に記載の治療支援装置は、蛍光画像生成部により生成された治療前の蛍光画像および治療時の蛍光画像を出力するように構成されている。上記特許文献1に記載の治療支援装置では、医師などのユーザは、治療前の蛍光画像と治療時の蛍光画像とを比較することによって、検出された蛍光の変化により、がん細胞に対する治療の進行を確認する。
【0004】
また、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1に記載されたような従来の治療支援装置は、光免疫療法による治療の進行を確認するために、蛍光画像とともに、蛍光信号値の変化を取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、医師などのユーザは、治療前の蛍光画像と治療時の蛍光画像との比較、または、取得した蛍光信号値の変化から光免疫療法による治療の進行具合を判断しなければならない。しかしながら、治療中においても、蛍光物質を含む薬剤が血流により治療部位に新たに運ばれてくるため、検出される蛍光信号値が完全にゼロになることはない。したがって、蛍光画像や蛍光信号値の変化から光免疫療法による治療の終了を容易に判断することは困難である。そのため、光免疫療法による治療の終了を医師などのユーザが容易に判断することが可能な治療支援装置が望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、光免疫療法による治療の終了を医師などのユーザが容易に判断することが可能な治療支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一の局面における治療支援装置は、被検体の体内に投与された蛍光物質を含む薬剤に所定の波長帯の治療光を照射することに基づいて、がん細胞を死滅させる治療において、薬剤に治療光を照射する照射部と、治療光の照射により励起された薬剤の蛍光物質が発する蛍光を検出する蛍光検出部と、治療時間中における第1時間範囲内において蛍光検出部により検出された蛍光信号の変化度合いを取得する変化取得部と、少なくとも変化取得部が取得した第1時間範囲内における蛍光信号の変化度合いが所定の変化度合範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であるか否かを判定する判定部と、判定部により治療の進行が定常状態であると判定された場合に治療が定常状態であることに関わる所定の動作の制御を行う動作制御部とを備える。なお、「定常状態」とは、治療時間(治療光の照射時間)の経過によって、被検体の体内に投与された蛍光物質を含む薬剤に所定の波長帯の治療光を照射することに基づいて、がん細胞を死滅させる治療(光免疫療法による治療)が進行したことにより、被検体の体内に投与された薬剤の蛍光物質が発する蛍光(蛍光信号値)の変化が少なくなり、治療が十分に行われたとみなされる状態である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一の局面による治療支援装置は、変化取得部により治療時間中における第1時間範囲内において蛍光検出部により検出された蛍光信号の変化度合いを取得する。そして、少なくとも変化取得部により取得した第1時間範囲内における蛍光信号の変化度合いが、所定の変化度合範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定部により判定された場合には、治療が定常状態であることに関わる所定の動作の制御が動作制御部により行われる。これにより、医師などのユーザは、動作制御部により所定の動作が実行されることにより、治療が十分に行われたとみなされる状態(定常状態)になったことを認識することができる。その結果、被検体の体内に投与された蛍光物質を含む薬剤に所定の波長帯の治療光を照射することに基づいて、がん細胞を死滅させる治療(光免疫療法による治療)の終了を医師などのユーザが容易に判断することが可能な治療支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態による治療支援装置の全体構成を示したブロック図である。
【
図6】蛍光信号値の時間変化の一例を示した第1図である。
【
図7】変化速度および変化度の算出を説明するための図である。
【
図8】治療時間t0において第1実施形態による治療支援装置の表示部に表示される表示画像の一例を示した図である。
【
図9】治療時間t1において第1実施形態による治療支援装置の表示部に表示される表示画像の一例を示した図である。
【
図10】治療時間t2において第1実施形態による治療支援装置の表示部に表示される表示画像の一例を示した図である。
【
図11】治療時間t11において第1実施形態による治療支援装置の表示部に表示される表示画像の一例を示した図である。
【
図12】治療時間t12において第1実施形態による治療支援装置の表示部に表示される表示画像の一例を示した図である。
【
図13】蛍光信号値の時間変化の他の一例を示した図である。
【
図14】治療時間T2において第1実施形態による治療支援装置の表示部に表示される表示画像の一例を示した図である。
【
図15】本発明の第2実施形態による治療支援装置の全体構成を示したブロック図である。
【
図16】治療時間t11において第2実施形態による治療支援装置の表示部に表示される表示画像の一例を示した図である。
【
図17】本発明の第1変形例による治療支援装置の全体構成を示したブロック図である。
【
図18】本発明の第2変形例による治療支援装置の全体構成を示したブロック図である。
【
図19】本発明の第3変形例による治療支援装置の全体構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1~
図14を参照して、第1実施形態による治療支援装置100の構成について説明する。
【0013】
(治療支援装置の構成)
第1実施形態による治療支援装置100は、光免疫療法における治療の支援を行う装置である。具体的には、治療支援装置100は、
図1に示すように、がん患者101に対して、治療光(励起光)を照射して、がん患者101の体内に投与された薬剤102の蛍光物質により放射される蛍光を検出するように構成されている。また、治療支援装置100は、光免疫療法による治療の支援に加えて、薬剤102の蛍光物質に応じた特定の波長帯の光である治療光を照射し続けることにより、光免疫療法による治療も行うことができるように構成されている。すなわち、第1実施形態の治療支援装置100は、光免疫療法による治療装置でもある。なお、がん患者101は、特許請求の範囲の「被検体」の一例である。また、がん患者101は、人間以外の動物であってもよい。
【0014】
治療支援装置100は、
図1に示すように、照射部10と、光検出部20と、画像収集部30と、記憶部40とを備える。
【0015】
(照射部の構成)
照射部10は、がん患者101の体内に投与された蛍光物質を含む薬剤102に所定の波長帯の治療光を照射することに基づいて、がん細胞を死滅させる治療(光免疫療法による治療)において、薬剤102に治療光を照射するように構成されている。すなわち、照射部10は、光免疫療法における治療において、がん患者101の体内に投与された蛍光物質を含む薬剤102に治療光(励起光)を照射するように構成されている。照射部10は、
図1に示すように、治療光光源11と、複数の治療用プローブ12とを含む。
【0016】
治療光光源11は、薬剤102に含まれた蛍光物質を励起させる特定の波長帯の治療光(励起光)を照射するように構成されている。治療光光源11は、半導体レーザー(LD:Laser Diode)、または、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などを含む。
【0017】
治療用プローブ12は、がん患者101の体内に挿入されるとともに、がん患者101の体内において治療光を照射するように構成されている。治療用プローブ12は、治療光光源11からの光を導光する光ファイバを含む。治療用プローブ12は、デュフューザなどのがん患者101の体内に挿入されるガラスなどの透明な部材により形成された筒状のガイド(図示せず)に沿って、がん患者101の体内の治療箇所である位置(治療部位)に向かって挿入される。
【0018】
医師などのユーザは、MRI(Magnetic Resonance Image)、X線CT(Computed Tomography)、または、超音波エコーなどにより、がんの位置を事前に把握しておく。そして、医師などのユーザは、超音波エコーなどにより、がんの位置を確認しながら、治療用プローブ12をがん患者101の体内に挿入する。治療用プローブ12は、がん患者101の体内において、治療光光源11からの治療光を導光して照射するように構成されている。これにより、薬剤102の蛍光物質が治療光により励起される。
【0019】
治療支援装置100は、治療用プローブ12によって、がん患者101の体内において、薬剤102に含まれた蛍光物質を励起させる特定の波長帯の光である治療光を照射し続けることにより、がん細胞を死滅させる治療(光免疫療法)を行うことが可能である。
【0020】
ここで、光免疫療法では、治療光の照射の前にがん患者101(
図1参照)の体内に薬剤102(
図1参照)を投与する。薬剤102は、蛍光を発する蛍光物質と、抗体とを含む。薬剤102の蛍光物質は、治療光が照射されることにより、励起して蛍光を発する物質であり、治療光が照射され続けることにより、光化学反応を起こす物質である。蛍光物質は、たとえば、IRDye(登録商標)700DXなどの化学物質である。
【0021】
光免疫療法による治療の際には、照射部10により、がん患者101に投与された薬剤102の蛍光物質の種類に応じた治療光が、がん患者101の治療部位(がん細胞)に対して照射される。
【0022】
なお、照射部10により、治療の際に照射される治療光は、可視光の一部から近赤外光の領域である600nm以上2500nm以下の波長領域において、治療に用いられる薬剤102の蛍光物質が光化学反応を起こす波長帯の光であり、治療に用いられる薬剤102の蛍光物質の種類に応じて異なる。たとえば、薬剤102の蛍光物質にIRDye700DXが用いられる場合には、照射部10は、光免疫療法による治療の際に、波長のピーク位置が600nm以上700nm以下の光、たとえば、波長のピーク位置が690nm程度の非熱性赤色光(近赤外光)を照射する。
【0023】
(光検出部の構成)
光検出部20は、治療光と、蛍光とを検出するように構成されている。光検出部20は、
図1に示すように、レンズ21と、プリズム22とを備える。また、光検出部20は、蛍光検出部23と、治療光検出部24とを含む。
【0024】
レンズ21は、薬剤102の蛍光物質が発する蛍光と、照射部10により照射される治療光を含む可視光とが入射するように構成されている。レンズ21に入射した蛍光および治療光を含む可視光は、レンズ21により収束され、プリズム22に入射する。
【0025】
また、プリズム22は、入射した光を分離するように構成されており、レンズ21に入射した蛍光および治療光を含む可視光は、プリズム22によって分離される。プリズム22によって分離された蛍光は、蛍光検出部23において結像するように構成されている。また、プリズム22によって分離された治療光を含む可視光は、治療光検出部24において結像するように構成されている。
【0026】
蛍光検出部23は、治療光の照射により励起された薬剤102の蛍光物質が発する蛍光を検出するように構成されている。蛍光検出部23は、プリズム22によって分離された薬剤102の蛍光物質が発する蛍光に基づいて画像を撮像する撮像素子を含む。撮像素子は、蛍光を光電変換し、電気信号に変換する。撮像素子は、たとえば、CMOS(Complementary metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、または、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサなどである。
【0027】
すなわち、蛍光検出部23は、治療光の照射により励起された薬剤102の蛍光物質が発する蛍光を検出し、検出した蛍光に基づく蛍光画像71(
図2参照)を取得(撮像)するように構成されている。なお、蛍光画像71は、薬剤102の蛍光物質が発する蛍光の分布状態(蛍光の分布71a)を表す画像である。
【0028】
蛍光検出部23は、光学フィルタの波長選択性により、薬剤102の蛍光物質により放射される蛍光の波長帯を含めた領域の光を選択的に検出するように構成されている。蛍光検出部23は、たとえば、薬剤102の蛍光物質にIRDye700DXが用いられる場合には、光学フィルタの波長選択性により700nm以上の波長の光に基づいて、蛍光を検出し、蛍光画像71を撮像するように構成されている。なお、IRDye700DXは、波長600nm以上700nm以下の光によって励起して、波長700nmまたは770nm程度にピークを有する光を蛍光として発する。
【0029】
治療光検出部24は、治療光を含む可視光を検出するように構成されている。治療光検出部24は、プリズム22によって分離された治療光を含む可視光を検出して、検出した治療光を含む可視光に基づいて画像を撮像する撮像素子を含む。撮像素子は、治療光を含む可視光を光電変換し、電気信号に変換する。撮像素子は、たとえば、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサなどである。
【0030】
治療光検出部24は、光学フィルタの波長選択性により、照射部10(治療用プローブ12)により照射される治療光の波長帯を含めた領域の光を選択的に検出するように構成されている。治療光検出部24は、光免疫療法による治療の際に、波長600nm以上700nm以下の光、たとえば、波長のピーク位置が690nm程度の非熱性赤色光が照射される場合には、光学フィルタの波長選択性により治療光の波長帯と可視光の波長帯とを含む400nm以上700nm以下の波長の光に基づいて、治療光を含む可視光を検出して、可視光画像72(
図3参照)を撮像するように構成されている。すなわち、可視光画像72は、治療光の検出に基づく画像(治療光画像)を含む。また、可視光画像72は、治療光および可視光の波長帯の光に基づいて撮像されるカラー画像である。
【0031】
(画像収集部の構成)
画像収集部30(
図1参照)は、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ、または、画像処理用に構成されたFPGA(Field-Programmable Gate Array)などを含む。
【0032】
画像収集部30には、蛍光検出部23により検出された蛍光信号と、治療光検出部24により検出された治療光を含む可視光の信号とが電気信号として入力されるように構成されている。すなわち、蛍光検出部23により撮像された蛍光画像71(
図2参照)の画像データと、治療光検出部24により撮像された可視光画像72(
図3参照)の画像データとが電気信号として入力されるように構成されている。画像収集部30は、時系列に基づいて、蛍光信号および治療光を含む可視光の信号(蛍光画像71および可視光画像72のデータ)を収集するように構成されている。画像収集部30は、後述する制御部60の制御によって、蛍光信号の収集または停止を行うとともに、可視光の信号の収集または停止を行うように構成されている。
【0033】
(記憶部の構成)
記憶部40(
図1参照)は、光検出部20(蛍光検出部23)が検出した蛍光の蛍光信号を記憶(保存)するように構成されている。また、記憶部40は、光検出部20(治療光検出部24)が検出した治療光を含む可視光の信号を記憶(保存)するように構成されている。記憶部40は、画像収集部30により収集された蛍光信号および治療光を含む可視光の信号(蛍光画像71および可視光画像72のデータ)などを記憶(保存)できるように構成されている。記憶部40は、たとえば、画像収集部30により時系列に基づいて収集された蛍光信号および治療光を含む可視光の信号(蛍光画像71および可視光画像72のデータ)を、撮像日時などのタイムスタンプとともに記憶(保存)する。
【0034】
記憶部40は、たとえば、不揮発性のメモリ、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、または、SSD(Solid State Drive)などを含む。これにより、記憶部40は、光検出部20(蛍光検出部23)が検出した蛍光の蛍光信号および光検出部20(治療光検出部24)が検出した治療光を含む可視光の信号を長期的に保存(格納)可能に構成されている。なお、記憶部40は、治療支援装置100外部のネットワークにより接続されたネットワーク上のデータベースを含んでもよい。
【0035】
また、治療支援装置100は、
図1に示すように、PC(Personal Computer)50と、制御部60と、表示部70と、操作部81と、操作部82とを備える。
【0036】
(PCの構成)
PC50(
図1参照)は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含むコンピュータである。なお、PC50は、特許請求の範囲の「解析部」の一例である。
【0037】
PC50は、画像収集部30により収集された蛍光信号および治療光を含む可視光の信号(蛍光画像71および可視光画像72のデータ)の解析を行うように構成されている。すなわち、PC50は、蛍光検出部23により検出された蛍光信号(蛍光信号値)を解析するように構成されている。PC50は、時系列ごとに蛍光信号値を解析するように構成されている。また、PC50は、治療光検出部24により検出された治療光を含む可視光の信号値を解析するように構成されている。
【0038】
PC50は、機能的な構成として、変化取得部51と、判定部52と、動作制御部53とを含む。すなわち、PC50は、プログラムを実行することによって、変化取得部51、判定部52および動作制御部53として機能する。また、変化取得部51、判定部52および動作制御部53は、PC50中のソフトウェアとしての機能ブロックであり、ハードウェアとしてのPC50の指令信号に基づいて機能するように構成されている。
【0039】
変化取得部51は、後述するように、治療時間中における時間範囲Q内において蛍光検出部23により検出された蛍光信号の変化度合いを算出(取得)する。なお、時間範囲Qは、特許請求の範囲の「第1時間範囲」の一例である。
【0040】
また、変化取得部51は、蛍光信号の変化度合いとして、蛍光検出部23により検出された時間範囲Q(
図7参照)内における蛍光信号の変化速度である変化速度v1を算出(取得)する。なお、変化速度v1は、特許請求の範囲の「第1変化速度」の一例である。
【0041】
また、第1実施形態では、変化取得部51は、変化速度v1と、時間範囲R(
図7参照)内において、蛍光検出部23により検出された蛍光信号の変化速度である変化速度v2とを算出している。時間範囲Rは、特許請求の範囲の「第2時間範囲」の一例であり、変化速度v2は、特許請求の範囲の「第2変化速度」の一例である。
【0042】
判定部52は、少なくとも変化取得部51が算出(取得)した時間範囲Q内における蛍光信号の変化度合いが所定の変化度合範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であるか否かを判定する。
【0043】
具体的には、判定部52は、変化速度v1が所定の変化度合範囲としての変化速度範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定する。第1実施形態では、判定部52は、変化速度v1がゼロ近傍になったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定する。たとえば、判定部52は、後述するように、変化速度v1が、変化速度範囲であるゼロ近傍(0±0.20)の範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定する。なお、所定の変化度合範囲(変化速度範囲)は、医師などのユーザにより変更可能である。
【0044】
さらに、判定部52は、変化速度v1と変化速度v2との比較に基づいて、治療の進行が定常状態であるか否かを判定する。第1実施形態では、判定部52は、変化速度v1が所定の変化度合範囲としての変化速度範囲内に収まり、変化速度v1と変化速度v2との比が所定の速度比範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定する。具体的には、変化速度v1と変化速度v2との比(変化速度v1/変化速度v2)である変化度Xが、設定された閾値以下になった場合に、判定部52は、治療の進行が定常状態であると判定する。変化度X(変化速度v1/変化速度v2)に対して、設定される閾値は、1近傍の値である。設定される閾値は、たとえば、0.9~0.95程度である。なお、変化度X(変化速度v1/変化速度v2)に対して、設定される閾値は、医師などのユーザにより変更可能である。また、判定部52が、治療の進行が定常状態であると判定する所定の速度比範囲として、変化度X(変化速度v1/変化速度v2)に対して、上限値と下限値とを設定するようにしてもよい。
【0045】
動作制御部53は、判定部52により治療の進行が定常状態(治療が十分に行われたとみなされる状態)であると判定された場合に治療が定常状態であることに関わる所定の動作の制御を行うように構成されている。
【0046】
判定部52により治療の進行が定常状態であると判定された場合に、動作制御部53の制御により行われる所定の動作は、治療の進行が定常状態であることを医師などのユーザに通知する動作を含む。
【0047】
第1実施形態では、動作制御部53による制御により、治療の進行が定常状態であることを医師などのユーザに通知する動作として、判定部52により治療の進行が定常状態であると判定される前後で、表示部70における蛍光信号の変化度合いを示す表示75(
図8~
図12参照)の表示方法を変更する動作を行うように構成されている。
【0048】
また、第1実施形態では、治療支援装置100は、判定部52により治療の進行が定常状態であると判定された場合に、動作制御部53の制御によって、所定の動作として、照射部10による治療光の照射を停止する動作を行うように構成されている。動作制御部53は、判定部52により治療の進行が定常状態であると判定された場合に、所定の動作として、制御部60を介して照射部10による治療光の照射を停止する制御を行う。
【0049】
なお、第1実施形態では、治療支援装置100は、医師などのユーザによる設定の変更により、判定部52により治療の進行が定常状態であると判定された場合に、照射部10による治療光の照射を停止する動作を行わないようにすることも可能である。すなわち、判定部52の判定に基づいて、照射部10による治療光の照射を自動的に停止させるモード(自動停止モード)と、医師などのユーザの操作(手動)により照射部10による治療光の照射を停止させるモード(手動停止モード)とを切り替え可能に構成されている。なお、自動停止モード中であっても、医師などのユーザの操作(手動)により照射部10による治療光の照射を停止させることは可能である。
【0050】
なお、治療の進行が定常状態であると判定された場合に、動作制御部53の制御により行われる所定の動作は、判定部52が、治療の進行が定常状態(治療が十分に行われたとみなされる状態)であると判定した際に、PC50(動作制御部53)から送信される指令信号に基づいて、実行される。
【0051】
(制御部の構成)
制御部60は、CPU、ROMおよびRAMなどが搭載された制御基板(回路基板)含む。制御部60は、治療支援装置100全体を制御するように構成されている。なお、制御部60およびPC50は、一体的に構成されてもよい。
【0052】
制御部60は、照射部10による治療光の照射の制御を行うように構成されている。制御部60は、治療光光源11の点灯および消灯(治療光の照射の開始および照射の停止)の制御を行うように構成されている。また、制御部60は、医師などのユーザが、制御部60の操作部81またはPC50の操作部82による操作を行うことにより、治療光の照射の開始および治療光の照射の停止(治療光の照射のON・OFFの切り替え)などの制御を行えるように構成されている。
【0053】
(表示部の構成)
表示部70(
図1参照)は、たとえば、液晶ディスプレイ、または、有機ELディスプレイなどにより構成されている。表示部70は、たとえば、HDMI(登録商標)等の映像インターフェースによりPC50と、制御部60とに接続される。
【0054】
表示部70は、蛍光画像71(
図2参照)を表示するように構成されている。蛍光画像71は、薬剤102の蛍光物質が発する蛍光の分布状態を表す画像である。医師などのユーザは、蛍光画像71中の蛍光の分布71aにより、がん細胞に結合した蛍光物質を含む薬剤102の集積を確認することが可能である。蛍光画像71は、たとえば、0~255の256段階(階調)の画素値(輝度値)によって、治療部位からの蛍光の強度(蛍光信号値)を表すように構成されている。すなわち、蛍光画像71において、比較的明るい(輝度値の高い)領域は蛍光の強度が強い領域であって、比較的暗い(輝度値の低い)領域は蛍光の強度が弱い領域を示している。
【0055】
また、表示部70は、可視光画像72(
図3参照)を表示するように構成されている。可視光画像72は、治療光および可視光に基づいた画像であり、可視光に加えて、治療用プローブ12の挿入箇所からがん患者101の体外に漏れ出た治療光と、がん患者101の体を透過した治療光とが撮像されている。医師などのユーザは、可視光画像72により、がん患者101に挿入された治療用プローブ12の位置と、治療用プローブ12から照射される治療光とを確認可能である。
【0056】
また、表示部70は、蛍光検出部23が収集した蛍光画像71(
図2参照)と、可視光画像72(
図3参照)とを重ね合わせた合成画像73(
図4および
図5参照)を表示可能に構成されている。これにより、医師などのユーザは、表示部70に表示された蛍光の分布71a、治療用プローブ12の位置および治療光の位置を同時に確認可能である。なお、合成画像73は、PC50によって、画像収集部30が収集した蛍光画像71の画像データと、可視光画像72の画像データとを重ね合わせることにより生成される。
【0057】
また、表示部70には、蛍光画像71と、可視光画像72または合成画像73とが同時に並べて表示されてもよい。さらに、表示部70は、蛍光画像71、可視光画像72および合成画像73のうちいずれか1つの画像を切り替えて表示するようにしてもよい。
【0058】
また、第1実施形態では、表示部70は、後述するように時間範囲Q内における蛍光信号の変化度合いを表示するように構成されている。
【0059】
表示部70は、後述するように蛍光信号値の時間変化を示す画像74(
図8参照)および蛍光信号の変化度合いを示す表示75(
図8参照)を表示するように構成されている。なお、蛍光信号値の時間変化を示す画像74および蛍光信号の変化度合いを示す表示75(変化速度表示75a、変化速度表示75bおよび変化度表示75c)は、特許請求の範囲の「表示部における蛍光信号の変化度合いを示す表示」の一例である。
【0060】
表示部70に表示される蛍光信号の変化度合いを示す表示75(変化速度表示75a、変化速度表示75bおよび変化度表示75c)は、判定部52により治療の進行が定常状態であると判定される前後において、治療の進行が定常状態であることを医師などのユーザに通知する動作として、動作制御部53による制御(動作制御部53からの指令信号)により、表示方法が変更される。
【0061】
(操作部の構成)
操作部81および82(
図1参照)は、治療支援装置100の操作を行うためのユーザインターフェースである。操作部81および82は、たとえば、リモコン、タッチパネル、キーボード、または、マウスなどを含む。また、操作部81または操作部82としてのタッチパネルを表示部70に設けてもよい。すなわち、操作部81または操作部82と、表示部70とを一体的に構成してもよい。
【0062】
操作部81は、制御部60による治療支援装置100の制御に関する操作を受け付けるように構成されている。制御部60による治療支援装置100の制御に関する操作とは、治療光の照射の開始および停止(治療光の照射のON・OFFの切り替え)のための操作、蛍光の検出(蛍光信号の収集)の開始および停止のための操作、治療光を含む可視光の検出(可視光の信号の収集)の開始および停止のための操作などを含む。
【0063】
また、操作部82は、蛍光信号および治療光を含む可視光の信号(蛍光画像71および可視光画像72のデータ)の解析を行うPC50への操作を受け付けるように構成されている。操作部82は、たとえば、蛍光信号を選択的に取得する関心領域(ROI:Region Of Interest)73a(
図5参照)の設定を行うための操作を受け付けるように構成されている。なお、蛍光信号を選択的に取得する関心領域73aの設定を行うための操作は、操作部81により受け付けるように構成されてもよい。また、操作部81または操作部82の少なくとも一方は、判定部52の判定に基づいて、照射部10による治療光の照射を自動的に停止させるモード(自動停止モード)と、医師などのユーザの操作(手動)により照射部10による治療光の照射を停止させるモード(手動停止モード)とを切り替えるための操作(モード設定変更操作)を受け付けるように構成されている。
【0064】
(変化取得部による変化速度および変化度の算出)
次に、
図6および
図7を参照して、変化取得部51による変化速度v1、変化速度v2および変化度Xの算出について説明する。
【0065】
光免疫療法による治療において蛍光信号値は、一般的に、
図6に示すように、減衰曲線を描くように時間変化する。すなわち、蛍光信号値は、治療時間が進むにつれて低下する。なお、
図6の縦軸は、蛍光信号値であり、横軸は治療時間(治療光の照射時間)である。すなわち、
図6は、治療時間t0~t12における蛍光信号値の変化を示したグラフである。
【0066】
第1実施形態において、変化取得部51は、時間範囲Q(
図7参照)あたりの変位D(
図7参照)から変化速度v1(変位D/時間範囲Q)を算出する。時間範囲Qは、治療時間中における現在の時間を含む。時間範囲Qは、たとえば、現在の時間から数秒(1~3秒)程度前までの時間である。一例として、時点t2時点における時間範囲Qは、
図7に示すように、治療時間t2の数秒(1~3秒)程度前の時間から治療時間t2までの時間である。また、医師などのユーザは、操作部82の操作などによって、時間範囲Qの範囲(時間幅)の設定を変更することが可能である。
【0067】
また、変化取得部51は、時間範囲R(
図7参照)あたりの変位W(
図7参照)から変化速度v2(変位W/時間範囲R)を算出する。時間範囲Rは、時間範囲Qが含まれる治療時間中の時間範囲Q以前の時間を含む。第1実施形態では、時間範囲Rは、時間範囲Qが含まれる治療時間中において、時間範囲Qと離間した(オーバーラップしない)時間範囲である。時間範囲Rは、たとえば、現在より時間間隔P前の時間から数秒(1~3秒)程度前の時間から、現在より時間間隔P前の時間までの時間範囲である。一例として、治療時間t2時点における時間範囲Rは、
図7に示すように、治療時間t2から時間間隔P前の時間である治療時間t1から数秒(1~3秒)程度前の時間から、治療時間t1までの時間範囲である。時間間隔Pは、たとえば、60秒程度である。また、医師などのユーザは、操作部82の操作などによって、時間範囲Rの範囲(時間幅)および時間間隔Pの範囲(時間幅)の設定を変更することが可能である。
【0068】
(PCおよび制御部による制御)
変化取得部51(PC50)は、所定の時間間隔毎に、画像収集部30が収集する蛍光信号値(蛍光信号強度)を取得することにより、蛍光信号(蛍光信号値)の変化を解析している。これにより、変化取得部51(PC50)は、蛍光信号値の時系列に沿った変化を取得するように構成されている。治療支援装置100の変化取得部51(PC50)は、制御部60(PC50)が、蛍光信号を蛍光画像71として表示部70に表示するために、0から255の階調(256階調)に処理している場合においては、0から255までの256段階の階調の画素値(輝度値)の変化に基づいて、蛍光信号値の変化を算出する。第1実施形態では、変化取得部51(PC50)は、設定された関心領域73a内における蛍光信号値の平均値から変化速度v1および変化速度v2を算出している。
【0069】
なお、変化取得部51(PC50)は、蛍光検出部23が検出した領域の全体(蛍光画像71の全体)における蛍光信号値(蛍光信号強度)の平均値から変化速度v1およびv2を算出してもよい。また、変化取得部51(PC50)は、関心領域73a内における蛍光信号値(蛍光信号強度)の最大値または最小値から変化速度v1およびv2の各々を算出してもよいし、蛍光検出部23が検出した領域の全体(蛍光画像71の全体)における蛍光信号値(蛍光信号強度)の最大値または最小値から変化速度v1およびv2の各々を算出してもよい。さらに、変化取得部51(PC50)が、変化速度v1およびv2を算出するための蛍光信号値(蛍光信号強度)は、1つの領域(関心領域73a)において検出した蛍光信号でも複数の領域(関心領域73a)において検出した蛍光信号でもよく、蛍光検出部23のイメージセンサの1つの画素(受光素子)が検出した蛍光信号でも複数の画素が検出した蛍光信号でもよい。
【0070】
また、
図8~
図12に示すように、表示部70には、光検出部20(蛍光検出部23)により検出される蛍光信号値(蛍光信号強度)の時間変化を示す画像74が表示される。すなわち、表示部70には、蛍光信号値の変化を治療の際の時系列(治療時間)に沿って示したグラフ(蛍光信号値の時間変化を示す画像74)が表示される。なお、第1実施形態では、PC50は、蛍光画像71(
図2参照)、可視光画像72(
図3参照)、合成画像73(
図4および
図5参照)、蛍光信号値の時間変化を示す画像74(
図8参照)または蛍光信号の変化度合いを示す表示75(
図8参照)の少なくともいずれかに基づいて、表示部70に表示される画像を生成可能に構成されている。また、PC50とは、独立したハードウェアとして、GPUやFPGAなどのプロセッサを含むコンピュータを画像合成部として設け、合成画像73の生成および表示部70に表示される画像を生成するように構成してもよい。
【0071】
図8に示すように、治療時間t0(治療開始時)においては、変化速度v1、変化速度v2および変化度Xは、算出されていない。そのため、表示部70における蛍光信号の変化度合いを示す表示75(変化速度表示75a、変化速度表示75bおよび変化度表示75c)には、変化速度v1、変化速度v2および変化度Xの各々の値は、表示されていない。
【0072】
治療時間t1においては、
図9に示すように、時間範囲Q内における変化速度v1が、変化取得部51により算出されている。また、治療時間t1は、治療時間t0からちょうど時間間隔P経過した時点であるので、時間範囲R内における変化速度(変化速度v2)は、まだ算出されていない。そのため、変化速度表示75aには、変化取得部51により算出された変化速度v1の値『58.40』が表示されるが、変化速度表示75bおよび変化度表示75cには、それぞれ変化速度v2の値および変化度Xの値が表示されていない。なお、変化速度v1のみが算出されている場合、変化度表示75cにおける変化度Xの値として、変化速度v1の値を表示してもよい。
【0073】
治療時間t2においては、
図10に示すように、時間範囲Q内における変化速度v1と、時間範囲R内における変化速度v2とが変化取得部51により算出される。これにより、変化速度表示75aには、変化取得部51により算出された変化速度v1の値『24.00』が表示されるとともに、変化速度表示75bには、変化速度v2の値『58.40』が表示される。そして、変化取得部51が、変化速度v1と、変化速度v2とに基づいて、変化度Xを算出する。これにより、変化度表示75cには、変化取得部51により算出された変化度Xの値『0.41』が表示される。
【0074】
治療時間t11においては、
図11に示すように、時間範囲Q内における変化速度v1と、時間範囲R内における変化速度v2とが変化取得部51により算出される。これにより、変化速度表示75aには、変化取得部51により算出された変化速度v1の値『0.20』が表示されるとともに、変化速度表示75bには、変化速度v2の値『0.22』が表示される。そして、変化取得部51が、変化速度v1と、変化速度v2とに基づいて、変化度Xを算出する。これにより、変化度表示75cには、変化取得部51により算出された変化度Xの値『0.91』が表示される。
【0075】
次に、治療時間t12において、PC50(判定部52)は、変化速度v1が所定の変化度合範囲としての変化速度範囲内(ゼロ近傍)に収まり、変化速度v1と変化速度v2との比が所定の速度比範囲内(1近傍)に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態(治療が十分に行われたとみなされる状態)であると判定する。そして、PC50(判定部52)による判定結果に基づいて、治療が定常状態であることに関わる所定の動作の制御を行うための指令信号が、動作制御部53から送信される。そして、PC50は、動作制御部53の指令信号に基づいて、変化速度表示75a、変化速度表示75bおよび変化度表示75cの表示方法の変更(表示画像の変更)の制御を行っている。また、制御部60は、動作制御部53(PC50)から送信された指令信号を受信し、照射部10による治療光の照射の停止の制御を行っている。なお、医師などのユーザによる設定変更によって、医師などのユーザの操作(手動)により照射部10による治療光の照射を停止させるモード(手動停止モード)に切り替えられている場合には、照射部10による治療光の照射の停止の制御は、動作制御部53(PC50)により行われず、蛍光信号の変化度合いを示す表示75(変化速度表示75a、変化速度表示75bおよび変化度表示75c)の表示方法の変更(表示画像の変更)の制御のみが行われる。
【0076】
具体的には、治療時間t12においては、
図12に示すように、変化取得部51により算出された変化速度v1の値『0.19』が、変化速度表示75aに表示されるとともに、動作制御部53の制御(動作制御部53からの指令信号)に基づいて、変化速度表示75aの表示(表示画像)が変更される。第1実施形態では、
図12に示すように、変化速度表示75aの文字色と、背景色とを判定部52により治療の進行が定常状態であると判定される前の表示(
図11参照)から変更している。
【0077】
また、治療時間t12においては、
図12に示すように、変化取得部51により算出された変化速度v2の値『0.20』が、変化速度表示75bに表示されるとともに、動作制御部53の制御(動作制御部53からの指令信号)に基づいて、変化速度表示75bの表示(表示画像)が変更される。第1実施形態では、
図12に示すように、変化速度表示75bの文字色と、変化速度表示75bの背景色とを判定部52により治療の進行が定常状態であると判定される前の表示(
図11参照)から変更している。
【0078】
また、第1実施形態では、
図12に示すように、変化取得部51により算出された変化度Xの値『0.95』が、変化度表示75cに表示されるとともに、動作制御部53の制御(動作制御部53からの指令信号)に基づいて、変化度表示75cの表示(表示画像)が変更される。第1実施形態では、
図12に示すように、変化度Xの文字色と、変化度Xの背景色とを判定部52により治療の進行が定常状態であると判定される前の表示(
図11参照)から変更している。
【0079】
このように、第1実施形態では、変化速度表示75a、変化速度表示75bおよび変化度表示75cの表示の変更(表示画像の変更)は、変化速度v1が所定の変化度合範囲としての変化速度範囲内(ゼロ近傍)に収まり、変化速度v1と変化速度v2との比が所定の速度比範囲内(1近傍)に収まった際に同時に行われる。そして、表示方法の変更の制御とともに、動作制御部53の制御(動作制御部53からの指令信号)に基づいて、制御部60による照射部10による治療光の照射の停止の制御が行われる。
【0080】
なお、変化速度表示75a、変化速度表示75bおよび変化度表示75cの表示の変更は、たとえば、変化速度v1、変化速度v2および変化度Xの各々の値の文字色を黒から赤に変更するように、文字色の変更のみを行うようにしてもよいし、背景色のみを変更してもよい。
【0081】
また、蛍光信号値の時間変化は、
図6のように、減衰曲線を描くように時間変化する場合以外に、
図13に示すように、蛍光信号値の変化が一時的に停滞した(少なくなった)後、再び、蛍光信号値が減衰するように変化する場合も有る。なお、
図13の縦軸は、蛍光信号値であり、横軸は治療時間(治療光の照射時間)である。すなわち、
図13は、治療時間T0~T12における蛍光信号値の変化を示したグラフである。
【0082】
このような場合、時間範囲Q内における変化(変化速度v1)のみで、光免疫療法による治療の進行を判定する場合には、蛍光信号値の変化が途中で一時的に停滞する(少なくなる)区間(
図13の治療時間T2~T3参照)に時間範囲Qが重なった際に、光免疫療法による治療の進行が定常状態(治療が十分に行われたとみなされる状態)となったと判定する場合がある。
【0083】
一方、第1実施形態においては、変化速度v1に加えて、時間範囲Q内における変化速度v1(蛍光信号値の変位D/時間範囲Q)と、時間間隔P前の時間範囲R内における変化速度v2(蛍光信号値の変位W/時間範囲R)との比である変化度X(変化速度v1/変化速度v2)によっても、光免疫療法による治療の進行を判定している。
図13に示すように、治療途中において、蛍光信号値の変化が一時的に停滞する(少なくなる)ことにより、時間範囲Q内における変化速度v1がゼロ近傍になった場合(
図14参照)においても、変化速度v2が変化速度v1と同程度の変化速度(ゼロ近傍)でない場合には、変化度Xが1近傍の値である0.95以下とならない。
【0084】
第1実施形態では、光免疫療法による治療の進行が一時的に停滞した(少なくなった)場合においても、変化速度v2が変化速度v1と同程度の変化速度(ゼロ近傍)になり、かつ、変化度Xが1近傍の値である0.95以下になるまでは、
図14に示すように、蛍光信号の変化度合いを示す表示75(変化速度表示75a、変化速度表示75bおよび変化度表示75c)の表示方法が変更されることなく、照射部10による治療光の照射が停止されることもない。これにより、第1実施形態では、光免疫療法による治療の進行(蛍光信号値の変化)が一時的に停滞している(少ない)際に、判定部52により治療の進行が定常状態であると判定された場合に治療が定常状態であることに関わる所定の動作として、蛍光信号の変化度合いを示す表示75(変化速度表示75a、変化速度表示75bおよび変化度表示75c)の表示方法の変更および照射部10による治療光の照射の停止が行われることを抑制可能である。
【0085】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0086】
第1実施形態では、治療支援装置100は、変化取得部51により治療時間中における時間範囲Q(第1時間範囲)内において蛍光検出部23により検出された蛍光信号の変化度合いを算出(取得)する。そして、少なくとも変化取得部51により算出(取得)した時間範囲Q内における蛍光信号の変化度合いが、所定の変化度合範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定部52により判定された場合には、治療が定常状態であることに関わる所定の動作の制御が動作制御部53により行われる。これにより、医師などのユーザは、動作制御部53により所定の動作が実行されることにより、治療が十分に行われたとみなされる状態(定常状態)になったことを認識することができる。その結果、がん患者101(被検体)の体内に投与された蛍光物質を含む薬剤102に所定の波長帯の治療光を照射することに基づいて、がん細胞を死滅させる治療(光免疫療法による治療)の終了を医師などのユーザが容易に判断することができる。
【0087】
また、上記第1実施形態による治療支援装置100では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0088】
また、第1実施形態の治療支援装置100では、上記のように、変化取得部51は、蛍光信号の変化度合いとして、蛍光検出部23により検出された時間範囲Q(第1時間範囲)内における蛍光信号の変化速度である変化速度v1(第1変化速度)を算出(取得)する。そして、判定部52は、変化速度v1が変化速度範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定する。これにより、判定部52は、変化速度v1が変化速度範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定するので、変化速度v1が正(プラス)の一定の閾値以下となったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定する場合と異なり、設定した上限値と下限値との間(変化速度範囲)に時間範囲Q内における変化速度v1が収まったことに基づいて治療の進行が定常状態であると判定することができる。したがって、治療途中に蛍光信号値が一時的に増加したことに起因して変化速度v1がマイナス方向に大きく変化している場合において、治療の進行が定常状態であると判定されてしまうことを抑制することができる。
【0089】
また、第1実施形態の治療支援装置100では、上記のように、判定部52は、変化速度v1(第1変化速度)がゼロ近傍になったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定する。これにより、判定部52は、変化速度v1がゼロ近傍になったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定するので、変化速度v1が正(プラス)の一定の閾値以下となったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定する場合と異なり、時間範囲Q内における変化速度v1が、プラス方向およびマイナス方向のどちらの方向にも小さくなったことに基づいて治療の進行が定常状態であると判定することができる。したがって、治療途中に蛍光信号値が一時的に増加したことに起因して変化速度v1がマイナス方向に大きく変化している場合において、治療の進行が定常状態であると判定されてしまうことをより抑制することができる。
【0090】
また、第1実施形態の治療支援装置100では、上記のように、変化取得部51は、変化速度v1(第1変化速度)と、時間範囲Q(第1時間範囲)が含まれる治療時間中の時間範囲Q以前の時間を含む時間範囲R(第2時間範囲)内において、蛍光検出部23により検出された蛍光信号の変化速度である変化速度v2(第2変化速度)とを算出(取得)する。そして、判定部52は、変化速度v1と変化速度v2との比較に基づいて、治療の進行が定常状態であるか否かを判定する。これにより、時間範囲Q内における変化速度v1と、時間範囲Qが含まれる治療時間中の時間範囲Q以前の時間を含む時間範囲R内における変化速度v2との比較に基づいて、治療の進行が定常状態であるか否かを判定するので、過去の蛍光信号値の変化(変化速度v2)と、現在の蛍光信号値の変化(変化速度v1)との比較から治療の進行が定常状態であるか否かを判定することができる。したがって、判定部52は、蛍光信号値の変化が停滞している状態(蛍光信号値の変化が少ない状態)が継続しているか否かを判定することができる。その結果、治療途中において、蛍光信号値の変化が一時的に停滞する(少なくなる)ことに起因して時間範囲Q内における変化速度v1が一時的に低下する場合において、治療の進行が定常状態であると判定してしまうことを抑制することができる。
【0091】
また、第1実施形態の治療支援装置100では、上記のように、時間範囲R(第2時間範囲)は、時間範囲Q(第1時間範囲)が含まれる治療時間中において、時間範囲Qと離間した時間範囲である。これにより、時間範囲Rと時間範囲Qとがオーバーラップする場合と異なり、時間範囲Q内における変化速度v1(第1変化速度)および時間範囲R内における変化速度v2(第2変化速度)を算出(取得)するためのデータ量の増加を抑制しながら、より広い時間範囲(より長い治療時間)の蛍光信号の変化を算出(取得)することができる。その結果、より広い時間範囲(より長い治療時間)の蛍光信号の変化を容易に算出(取得)することができる。
【0092】
また、第1実施形態の治療支援装置100では、上記のように、判定部52は、変化速度v1(第1変化速度)が変化速度範囲内に収まり、変化速度v1と変化速度v2(第2変化速度)との比が所定の速度比範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定する。これにより、判定部52が、変化速度v1に加えて、変化速度v1と変化速度v2との比が所定の速度比範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であるか否かを判定するので、過去の蛍光信号値の変化(変化速度v2)と、現在の蛍光信号値の変化(変化速度v1)との比から治療の進行が定常状態であるか否かを判定することができる。したがって、判定部52は、蛍光信号値の変化が停滞している状態が継続しているか否かを容易に判定することができる。その結果、治療途中において、蛍光信号値の変化が一時的に停滞することに起因して時間範囲Q内における変化速度v1が一時的に低下する場合において、治療の進行が定常状態であると判定してしまうことをより抑制することができる。
【0093】
また、第1実施形態の治療支援装置100では、上記のように、判定部52により治療の進行が定常状態であると判定された場合に、動作制御部53の制御により行われる所定の動作は、治療の進行が定常状態であることを医師などのユーザに通知する動作を含む。これにより、動作制御部53の制御により行われる所定の動作によって、治療の進行が定常状態であることを医師などのユーザに通知するので、医師などのユーザは、治療が十分に行われたとみなされる状態(定常状態)になったことを通知によって容易に認識することができる。
【0094】
また、第1実施形態の治療支援装置100では、上記のように、治療の進行が定常状態であることを医師などのユーザに通知する動作は、判定部52により治療の進行が定常状態であると判定される前後で、表示部70における蛍光信号の変化度合いを示す表示の表示方法を変更する動作を含む。これにより、判定部52により治療の進行が定常状態であると判定される前後で、表示部70における蛍光信号の変化度合いを示す表示75(変化速度表示75a、変化速度表示75bおよび変化度表示75c)の表示方法が変更される。その結果、医師などのユーザは、表示部70における蛍光信号の変化度合いを示す表示75を視認することにより、治療が十分に行われたとみなされる状態(定常状態)になったことを容易に認識することができる。
【0095】
また、第1実施形態の治療支援装置100では、上記のように、判定部52により治療の進行が定常状態であると判定された場合に、動作制御部53の制御により行われる所定の動作は、照射部10による治療光の照射を停止する動作を含む。これにより、判定部52により治療の進行が定常状態であると判定された場合に、動作制御部53の制御により照射部10による治療光の照射が停止されるので、治療が十分に行われたとみなされる状態(定常状態)となった際に、治療光の照射を自動的に停止させて、治療を終了することができる。
【0096】
また、第1実施形態の治療支援装置100では、上記のように、蛍光検出部23により検出された蛍光信号を解析するように構成されているPC50(解析部)と、照射部10による治療光の照射の制御を行うように構成されている制御部60とを備える。そして、PC50は、変化取得部51と、判定部52と、動作制御部53とを含む。また、動作制御部53は、判定部52により治療の進行が定常状態であると判定された場合に、所定の動作として、制御部60を介して照射部10による治療光の照射を停止する制御を行う。これにより、制御部60が動作制御部53を含む場合と比べて、制御部60の複雑化を抑制することができる。
【0097】
[第2実施形態]
図15および
図16を参照して、第2実施形態による治療支援装置200(
図15参照)の構成について説明する。判定部52が、変化速度v1が所定の変化度合範囲としての変化速度範囲内(ゼロ近傍)に収まり、変化速度V1と変化速度v2との比が所定の速度比範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であるか否かを判定する第1実施形態とは異なり、第2実施形態では、判定部252(
図15参照)は、変化速度v1と変化速度v2との比(比較)には基づかずに、変化速度v1に基づいて、治療の進行が定常状態であるか否かを判定する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0098】
第2実施形態による治療支援装置200では、PC250は、機能的な構成として、変化取得部51と、判定部252と、動作制御部53とを含む。すなわち、PC250は、プログラムを実行することによって、変化取得部51、判定部252および動作制御部53として機能する。また、変化取得部51、判定部252および動作制御部53は、PC250中のソフトウェアとしての機能ブロックであり、ハードウェアとしてのPC250の指令信号に基づいて機能するように構成されている。
【0099】
判定部252は、変化速度v1が所定の変化度合範囲としての変化速度範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定する。第2実施形態では、判定部252は、変化速度v1がゼロ近傍になったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定する。たとえば、判定部252は、変化速度v1が、変化速度範囲であるゼロ近傍(0±0.20)の範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定する。なお、所定の変化度合範囲(変化速度範囲)は、医師などのユーザにより変更可能である。
【0100】
第2実施形態による治療支援装置100では、治療時間t11において、判定部252(PC250)は、変化速度v1が所定の変化度合範囲としての変化速度範囲内(ゼロ近傍)に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態(治療が十分に行われたとみなされる状態)であると判定する。そして、判定部252(PC250)による判定結果に基づいて、治療が定常状態であることに関わる所定の動作の制御を行うための指令信号が、動作制御部53から送信される。
【0101】
PC250は、動作制御部53の指令信号に基づいて、変化速度表示75aの表示方法の変更の制御を行っている。また、制御部60は、動作制御部53(PC250)から送信された指令信号を受信し、照射部10による治療光の照射の停止の制御を行っている。なお、医師などのユーザによる設定変更によって、医師などのユーザの操作(手動)により照射部10による治療光の照射を停止させるモード(手動停止モード)に切り替えられている場合には、第1実施形態と同様に、照射部10による治療光の照射の停止の制御は行われず、変化速度表示75aの表示方法の変更(表示画像の変更)の制御のみが行われる。
【0102】
治療時間t11においては、
図16に示すように、変化取得部51により算出された変化速度v1が、ゼロ近傍(0±0.20)の範囲に収まったことにより、変化取得部51により算出された変化速度v1の値『0.20』が、変化速度表示75aに表示されるとともに、動作制御部53の制御(動作制御部53からの指令信号)に基づいて、変化速度表示75aの表示が変更される。第2実施形態では、
図16に示すように、変化速度表示75aの文字色と、背景色とをゼロ近傍(0±0.20)の範囲に収まる前の表示(
図10参照)から変更している。なお、変化速度表示75aの表示の変更は、たとえば、変化速度v1の値の文字色を黒から赤に変更するように、文字色の変更のみを行うようにしてもよいし、背景色のみを変更してもよい。そして、表示方法の変更の制御とともに、動作制御部53の制御(動作制御部53からの指令信号)に基づいて、照射部10による治療光の照射の停止の制御が行われる。
【0103】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0104】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、がん患者101(被検体)の体内に投与された蛍光物質を含む薬剤102に所定の波長帯の治療光を照射することに基づいて、がん細胞を死滅させる治療(光免疫療法による治療)の終了を医師などのユーザが容易に判断することができる。
【0105】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0106】
たとえば、上記第1および第2形態では、変化取得部51が、蛍光検出部23により検出された時間範囲Q(第1時間範囲)内における蛍光信号の変化速度である変化速度v1(第1変化速度)を算出(取得)し、判定部52(判定部252)が、変化速度v1が変化速度範囲内に収まったことに基づいて、光免疫療法による治療の進行が定常状態であると判定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、変化取得部が、第1時間範囲内における蛍光信号の加速度または変位量を算出してもよい。この場合、変化取得部により算出された加速度または変位量が所定の範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定部が判定する。
【0107】
また、上記第1および第2実施形態では、変化取得部51が、蛍光信号の変化度合いとして、蛍光検出部23により検出された時間範囲Q(第1時間範囲)内における蛍光信号の変化速度である変化速度v1(第1変化速度)を算出する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、変化取得部は、治療時間中における第1時間範囲内において蛍光検出部により検出された蛍光信号の変化度合いを、蛍光検出部により検出された蛍光信号の変化を示したグラフまたは表などから取得するようにしてもよい。
【0108】
また、上記第1および第2実施形態では、判定部52(判定部252)は、変化速度v1(第1変化速度)がゼロ近傍になったことに基づいて、光免疫療法による治療の進行が定常状態であると判定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、判定部は、第1変化速度が設定された閾値以下になったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定してもよい。
【0109】
また、上記第1実施形態では、判定部52が、変化速度v1(第1変化速度)が変化速度範囲内に収まり、変化速度v1と変化速度v2(第2変化速度)との比が所定の速度比範囲内に収まったことに基づいて、光免疫療法による治療の進行が定常状態であるか否かを判定と判定する例を示し、上記第2実施形態では、判定部252が、変化速度v1と変化速度v2との比(比較)には基づかずに、変化速度v1に基づいて、治療の進行が定常状態であるか否かを判定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、判定部は、第1変化速度が変化速度範囲内に収まり、第1変化速度と第2変化速度との比が所定の速度比範囲内に収まったことに基づいて、光免疫療法による治療の進行が定常状態であるか否かを判定するモードと、第1変化速度と第2変化速度との比(比較)には基づかずに、第1変化速度に基づいて、治療の進行が定常状態であるか否かを判定するモードとを切り替え可能にしてもよい。
【0110】
また、上記第1および第2実施形態では、時間範囲R(第2時間範囲)は、時間範囲Q(第1時間範囲)が含まれる治療時間中において、時間範囲Qと離間した時間範囲である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1時間範囲と第2時間範囲とがオーバーラップしても(一部重なっても)よい。
【0111】
また、上記第1実施形態では、判定部52は、変化速度v1(第1変化速度)が変化速度範囲内に収まり、変化速度v1と変化速度v2(第2変化速度)との比が所定の速度比範囲内に収まったことに基づいて、光免疫療法による治療の進行が定常状態であると判定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、判定部は、第1変化速度および第2変化速度が、各々に設定された所定の変化速度範囲内に収まったことに基づいて、治療の進行が定常状態であると判定してもよい。
【0112】
また、上記第1および第2実施形態では、判定部52(判定部252)により治療の進行が定常状態であると判定された場合に、動作制御部53の制御により行われる所定の動作は、光免疫療法による治療の進行が定常状態であることをユーザに通知する動作を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、判定部により治療の進行が定常状態であると判定された場合に、動作制御部の制御により行われる所定の動作は、治療の進行が定常状態であることをユーザに通知する動作を含まずに、照射部10による治療光の照射を停止する動作のみを含んでもよい。
【0113】
また、上記第1および第2実施形態では、治療の進行が定常状態であることを医師などのユーザに通知する動作は、判定部52(判定部252)により治療の進行が定常状態であると判定される前後で、表示部70における蛍光信号の変化度合いを示す表示75の表示方法を変更する動作を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、治療支援装置にスピーカなどを備え、治療の進行が定常状態であることをユーザに通知する動作が、音(音声)により通知する動作を含むようにしてもよい。すなわち、視覚的通知以外の通知により、治療の進行が定常状態であることを通知してもよい。
【0114】
また、上記第1および第2実施形態では、判定部52(判定部252)により治療の進行が定常状態であると判定された場合に、動作制御部53の制御により行われる所定の動作は、照射部10による治療光の照射を停止する動作を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、判定部により治療の進行が定常状態であると判定された場合に、動作制御部の制御により行われる所定の動作は、照射部による治療光の照射を停止する動作を含まずに、光免疫療法による治療の進行が定常状態であることをユーザに通知する動作のみを含んでもよい。
【0115】
また、上記第1および第2実施形態では、PC50または250(解析部)が、機能的な構成(ソフトウェア的構成)として、変化取得部51、判定部52(判定部252)および動作制御部53を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、変化取得部、判定部および動作制御部の各々が、解析部とは別個の独立したハードウェア(演算回路)として構成されていてもよい。
【0116】
また、上記第1および第2実施形態では、ハードウェアとしてのPC50または250(解析部)が、機能的な構成(ソフトウェア的構成)として、動作制御部53を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、動作制御部は、解析部および制御部のそれぞれに設けられてもよい。たとえば、
図17に示す第1変形例による治療支援装置300のように、PC350(解析部)に、表示部70における蛍光信号の変化度合いを示す表示の表示方法を変更する動作を制御する動作制御部353を設け、制御部360に、照射部10による治療光の照射を停止する動作を制御する動作制御部361を設けてもよい。
【0117】
また、上記第1および第2実施形態では、ハードウェアとしてのPC50または250(解析部)が、機能的な構成(ソフトウェア的構成)として、変化取得部51、判定部52(判定部252)および動作制御部53を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、解析部および制御部が同一のハードウェア(演算回路)として一体的に構成され、一体的に構成された解析部および制御部が、変化取得部、判定部および動作制御部を、機能的な構成(ソフトウェア的構成)として含んでもよい。
【0118】
また、上記第1および第2実施形態では、光検出部20が、蛍光検出部23と、治療光検出部24とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図18に示す第2変形例による治療支援装置400のように、光検出部420は、蛍光検出部23のみを含むように構成されてもよい。これにより、治療支援装置400(光検出部420)の装置構成を簡素化可能である。
【0119】
また、上記第1および第2実施形態では、照射部10(治療用プローブ12)が、がん患者101の体内において治療光の照射を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図19に示す第3変形例による治療支援装置500のように、照射部510によって、がん患者101の体外から治療光の照射を行うように構成されてもよい。なお、照射部510は、半導体レーザー(LD:Laser Diode)、または、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などの光源を含む。
【0120】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0121】
(項目1)
被検体の体内に投与された蛍光物質を含む薬剤に所定の波長帯の治療光を照射することに基づいて、がん細胞を死滅させる治療において、前記薬剤に前記治療光を照射する照射部と、
前記治療光の照射により励起された前記薬剤の前記蛍光物質が発する蛍光を検出する蛍光検出部と、
治療時間中における第1時間範囲内において前記蛍光検出部により検出された蛍光信号の変化度合いを取得する変化取得部と、
少なくとも前記変化取得部が取得した前記第1時間範囲内における前記蛍光信号の変化度合いが所定の変化度合範囲内に収まったことに基づいて、前記治療の進行が定常状態であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記治療の進行が定常状態であると判定された場合に前記治療が定常状態であることに関わる所定の動作の制御を行う動作制御部とを備える、治療支援装置。
【0122】
(項目2)
前記変化取得部は、前記蛍光信号の変化度合いとして、前記蛍光検出部により検出された前記第1時間範囲内における前記蛍光信号の変化速度である第1変化速度を取得し、
前記判定部は、前記第1変化速度が前記所定の変化度合範囲としての変化速度範囲内に収まったことに基づいて、前記治療の進行が定常状態であると判定する、項目1に記載の治療支援装置。
【0123】
(項目3)
前記判定部は、前記第1変化速度がゼロ近傍になったことに基づいて、前記治療の進行が定常状態であると判定する、項目2に記載の治療支援装置。
【0124】
(項目4)
前記第1時間範囲は、前記治療時間中における現在の時間を含み、
前記変化取得部は、前記第1変化速度と、前記第1時間範囲が含まれる前記治療時間中における前記第1時間範囲以前の時間を含む第2時間範囲内において、前記蛍光検出部により検出された前記蛍光信号の変化速度である第2変化速度とを算出しており、
前記判定部は、前記第1変化速度と前記第2変化速度との比較に基づいて、前記治療の進行が定常状態であるか否かを判定する、項目2または3に記載の治療支援装置。
【0125】
(項目5)
前記第2時間範囲は、前記第1時間範囲が含まれる前記治療時間中において、前記第1時間範囲と離間した時間範囲である、項目4に記載の治療支援装置。
【0126】
(項目6)
前記判定部は、前記第1変化速度が前記所定の変化度合範囲としての前記変化速度範囲内に収まり、前記第1変化速度と前記第2変化速度との比が所定の速度比範囲内に収まったことに基づいて、前記治療の進行が定常状態であると判定する、項目4または5に記載の治療支援装置。
【0127】
(項目7)
前記判定部により前記治療の進行が定常状態であると判定された場合に、前記動作制御部の制御により行われる前記所定の動作は、前記治療の進行が定常状態であることをユーザに通知する動作を含む、項目1~6のいずれか1項に記載の治療支援装置。
【0128】
(項目8)
前記第1時間範囲内における前記蛍光信号の変化度合いを表示する表示部をさらに備え、
前記治療の進行が定常状態であることをユーザに通知する動作は、前記判定部により前記治療の進行が定常状態であると判定される前後で、前記表示部における前記蛍光信号の変化度合いを示す表示の表示方法を変更する動作を含む、項目7に記載の治療支援装置。
【0129】
(項目9)
前記判定部により前記治療の進行が定常状態であると判定された場合に、前記動作制御部の制御により行われる前記所定の動作は、前記照射部による前記治療光の照射を停止する動作を含む、項目1~8のいずれか1項に記載の治療支援装置。
【0130】
(項目10)
前記蛍光検出部により検出された前記蛍光信号を解析する解析部と、
前記照射部による前記治療光の照射の制御を行う制御部とをさらに備え、
前記解析部は、前記変化取得部と、前記判定部と、前記動作制御部とを含み、
前記動作制御部は、前記判定部により前記治療の進行が定常状態であると判定された場合に、前記所定の動作として、前記制御部を介して前記照射部による前記治療光の照射を停止する制御を行う、項目1~9のいずれか1項に記載の治療支援装置。
【符号の説明】
【0131】
10、510 照射部
23 蛍光検出部
50、250、350 PC(解析部)
51 変化取得部
52、252 判定部
53、353、361 動作制御部
60、360 制御部
70 表示部
75 蛍光信号の変化度合いを示す表示
75a 変化速度表示(蛍光信号の変化度合いを示す表示)
75b 変化速度表示(蛍光信号の変化度合いを示す表示)
75c 変化度表示(蛍光信号の変化度合いを示す表示)
100、200、300、400、500 治療支援装置
101 がん患者(被検体)
102 薬剤
Q 時間範囲(第1時間範囲)
R 時間範囲(第2時間範囲)
X 変化度(第1変化速度と前記第2変化速度との比)
v1 変化速度(第1変化速度)
v2 変化速度(第2変化速度)