IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両 図1
  • 特許-車両 図2
  • 特許-車両 図3
  • 特許-車両 図4
  • 特許-車両 図5
  • 特許-車両 図6
  • 特許-車両 図7
  • 特許-車両 図8
  • 特許-車両 図9
  • 特許-車両 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20240423BHJP
   H02K 5/20 20060101ALI20240423BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240423BHJP
   B60K 6/405 20071001ALI20240423BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20240423BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20240423BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20240423BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20240423BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240423BHJP
【FI】
B60K6/40
H02K5/20
B60K6/48 ZHV
B60K6/405
F16H57/04
F16J15/06 H
F16J15/10 L
H02K9/19 Z
B60L3/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020177369
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068598
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】押田 学
(72)【発明者】
【氏名】内勢 英明
(72)【発明者】
【氏名】藤原 優哉
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-222354(JP,A)
【文献】特開2019-043427(JP,A)
【文献】特開2004-357432(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0067558(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0056413(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第110217094(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 5/20
B60K 6/48
B60K 6/405
F16H 57/04
F16J 15/06
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有し、当該複数の気筒が車両前後方向に配列されるように搭載された縦置きエンジンと、
前記縦置きエンジンに対して車両前後方向の後方に配置され、車両走行用の駆動力を発生可能なモータと、
車両前後方向において前記縦置きエンジンと前記モータとの間に設けられ、前記縦置きエンジンと前記モータとの間で衝撃トルクを緩和するダンパと、
前記モータを冷却するための冷却液を前記モータに循環させるための冷却液流路と、
を備え、
前記ダンパは、衝撃トルクを緩和するトルク緩和機構を収容するダンパケースを有し、
前記モータは、ロータおよびステータと潤滑油とを収容するモータケースを有し、
前記冷却液流路は、
前記ダンパケース内において前記冷却液を流通させるためのダンパ内流路と、
前記モータケース内において前記潤滑油と分離された状態で前記冷却液を流通させるためのモータ内流路と、
前記ダンパ内流路における冷却液出口と前記モータ内流路における冷却液入口との間を前記モータケース内で接続する冷却液配管と、
を有し、
前記ダンパ内流路は、前記冷却液出口に至る所定領域が車両前後方向に沿った第1方向に延びるように設けられており、
前記冷却液配管と前記冷却液出口との接続部において、前記冷却液配管の配管端面と前記冷却液出口の出口端面とが対向し、
前記第1方向において、前記配管端面と前記出口端面との間には、前記冷却液の流路を囲むようにそれぞれが環状に設けられ、互いに径が異なる第1シール部材と第2シール部材とが液密に介挿されており、
前記配管端面および前記出口端面のうちの一方である第1端面は、当該第1端面の他の部分よりも前記第1方向に向けて凹入した環状の第1凹部を有し、前記配管端面および前記出口端面のうちの他方である第2端面は、前記第1凹部よりも内側の部分において、当該第2端面の他の部分よりも前記第1方向に向けて凹入した環状の第2凹部を有し、
前記第1シール部材は、前記第1凹部の底面と前記第2端面の他の部分との間を液密にシールし、
前記第2シール部材は、前記第2凹部の底面と前記第1端面の他の部分との間を液密にシールする、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記第1方向に直交する方向を第2方向とするとき、
前記冷却液配管と前記冷却液出口との前記接続部を前記第1方向に沿った断面で断面視するとき、前記第1凹部および前記第2凹部の少なくとも一方は、前記第2方向に対向する2側面と前記底面とを有する溝部である、
車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両において、
前記冷却液配管と前記冷却液出口との前記接続部を前記第1方向に沿った断面で断面視するとき、前記配管端面と前記出口端面との間隙は、クランク状である、
車両。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の車両において、
前記第1端面において、前記第1凹部と当該第1端面における前記他の部分との間に段差を有し、
前記第2端面において、前記第2凹部と当該第2端面における前記他の部分との間に段差を有する、
車両。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両において、
変速機構と、当該変速機構を収容するミッションケースとを有し、前記モータに対して車両前後方向の後方に隣接配置されるとともに、前記モータに連結されたトランスミッションと、
入力された直流電力を交流電力に変換して前記モータに出力するインバータと、
をさらに備え、
前記車両のフロアパネルには、車室内に向けて膨出し、車両前後方向に延びるフロアトンネルが形成されており、
前記トランスミッションは、前記フロアトンネルの下方に配置されており、
前記インバータは、前記フロアトンネルの下方であって、且つ、前記ミッションケースの上部に取り付けられており、
前記ミッションケースの上部から前記モータケースの上部にかけての部分には、前記インバータと前記モータとを電気的に接続するための電気接続部が取り付けられており、
前記冷却液配管と前記冷却液出口との前記接続部は、前記ダンパケース内における車幅方向の側部に設けられている、
車両。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の車両において、
前記縦置きエンジンに接続され、当該縦置きエンジンから排出された排気ガスを車両後方に案内して排出する排気管をさらに備え、
前記排気管は、前記ダンパケースに対して車幅方向の一方の側方に配置され、
前記前記冷却液配管と前記冷却液出口との前記接続部は、前記ダンパケースにおける車幅方向の側部であって、前記排気管が配置されたのとは反対側に設けられている、
車両。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の車両において、
前記モータケースは、車幅方向における側方を覆うカバーを有し、
前記潤滑油は、前記カバー内に収容されており、
前記冷却液配管は、前記ダンパ内流路における前記冷却液出口との接続部から、前記モータ内流路における前記冷却液入口との接続部までの全体が、前記カバー内に収容されている、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、特に車両走行用の駆動源としてエンジンとモータとを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減などを目的として、車両走行用の駆動源としてエンジンに加えてモータを備えたハイブリッド車が普及してきている。車両走行用の駆動源としてのモータは、駆動時における発熱が大きいため、水などの冷却液で冷却することが必要となる。
【0003】
特許文献1には、トランスミッションのミッションケース内にモータが設けられた構造が開示されている。モータのステータを支持するリング状のステータ支持体には、2本の配管が接続されている。2本の配管は、モータを冷却するための冷却液を流通させるための配管である。
【0004】
ここで、モータにおいては、モータケース内にオイルが存在する。このため、モータケース内に冷却液を流通させるための配管を接続しようとする場合には、二重シール構造を採用することが必要となる。
【0005】
特許文献2には、コントロールバルブユニットとオイルポンプとの間で油の流通路を接続するための構造が開示されている。特許文献2の構造では、オイルポンプにおけるコントロールバルブとの接続面に径方向に間隔を空けて設けられた2条のリング溝が形成されている。そして、各リング溝にOリングが嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2011-525348号公報
【文献】特開2001-260674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両走行用の駆動源としてエンジンとモータとを備える車両として、車両前方からエンジン、ダンパ(エンジンとモータとの間での衝撃トルクを緩和するためのデバイス)、モータの順に配置した構造を採用する場合がある。このような構造を採用しようとする場合には、モータがフロアトンネルの入り口部分に配置されることとなるため、モータへ冷却液を導入するための流通路は、ダンパのダンパケース内を通じてモータのモータケース前端部に接続するように設けることが必要となる。
【0008】
即ち、モータケースの側部に冷却液配管を接続しようとすれば、配管や当該配管を接続するために用いられる締結部材などがモータケースの側方に突出することになってしまう。このような構造では、締結部材等が乗員の足元前方に位置することになり、車両の前突時の乗員の安全性を確保するという観点から採用することは困難である。
【0009】
また、ダンパケースから冷却液を導入し、モータに冷却液を案内する場合には、ダンパケースに設けられた車両前後方向に延びる冷却液流路(ダンパ内流路)に冷却液配管の一端を接続し、当該冷却液配管の他端をモータに接続することが必要となる。この場合には、冷却液配管は、ダンパケースとの接続部を含めてオイルが存在するモータケース内に配されることになる。この構造では、上記特許文献2に開示のように二重シール構造を採用することが必要となるが、シール部材同士の間に隔壁を設ける必要が生じる。
【0010】
しかしながら、ダンパケースと冷却液配管との接続部において、シール部材同士の間に隔壁を設けようとすると、その分だけ接続部のサイズが車幅方向に大きくなってしまい、当該接続部が側方に突出してしまうこととなる。よって、ダンパケースと冷却液配管との接続部における、シール部材同士の間に隔壁を設ける構造についても、車両の前突時の乗員の安全性を確保するという観点から採用することは困難である。
【0011】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、ダンパケースからモータに冷却液を案内する構造において、ダンパケースと冷却液配管との接続部における車幅方向のサイズを小さくすることができ、広い室内空間の実現と高い衝突安全性の確保が可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る車両は、複数の気筒を有し、当該複数の気筒が車両前後方向に配列されるように搭載された縦置きエンジンと、前記縦置きエンジンに対して車両前後方向の後方に配置され、車両走行用の駆動力を発生可能なモータと、車両前後方向において前記縦置きエンジンと前記モータとの間に設けられ、前記縦置きエンジンと前記モータとの間で衝撃トルクを緩和するダンパと、前記モータを冷却するための冷却液を前記モータに循環させるための冷却液流路と、を備える。
【0013】
前記ダンパは、衝撃トルクを緩和するトルク緩和機構を収容するダンパケースを有し、前記モータは、ロータおよびステータと潤滑油とを収容するモータケースを有する。また、前記冷却液流路は、前記ダンパケース内において前記冷却液を流通させるためのダンパ内流路と、前記モータケース内において前記潤滑油と分離された状態で前記冷却液を流通させるためのモータ内流路と、前記ダンパ内流路における冷却液出口と前記モータ内流路における冷却液入口との間を前記モータケース内で接続する冷却液配管と、を有する。
【0014】
前記ダンパ内流路は、前記冷却液出口に至る所定領域が車両前後方向に沿った第1方向に延びるように設けられており、前記冷却液配管と前記冷却液出口との接続部において、前記冷却液配管の配管端面と前記冷却液出口の出口端面とが対向し、前記第1方向において、前記配管端面と前記出口端面との間には、前記冷却液の流路を囲むようにそれぞれが環状に設けられ、互いに径が異なる第1シール部材と第2シール部材とが液密に介挿されている。そして、前記配管端面および前記出口端面のうちの一方である第1端面は、当該第1端面の他の部分よりも前記第1方向に向けて凹入した環状の第1凹部を有し、前記配管端面および前記出口端面のうちの他方である第2端面は、前記第1凹部よりも内側の部分において、当該第2端面の他の部分よりも前記第1方向に向けて凹入した環状の第2凹部を有し、前記第1シール部材は、前記第1凹部の底面と前記第2端面の他の部分との間を液密にシールし、前記第2シール部材は、前記第2凹部の底面と前記第1端面の他の部分との間を液密にシールする。
【0015】
上記態様に係る車両では、冷却液がダンパ内流路から冷却液配管を通りモータに導入されるように構成されている。このため、モータにおけるモータケースに対して直接冷却液を導入しようとする場合に比べて、モータにおける車幅方向の寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0016】
また、上記態様に係る車両では、冷却液配管とダンパケースにおける冷却液出口との接続部において、配管端面および出口端面のうちの一方(第1端面)に第1凹部を設け、配管端面および出口端面のうちの他方(第2端面)に第2凹部を設けている。そして、第1凹部の底面と第2端面の他の部分との対向部分に第1シール部材を配し、第2凹部の底面と第1端面の他の部分との対向部分に第2シール部材を配している。よって、第1シール部材を配する部分と第2シール部材を配する部分との間に隔壁を設けなくても、高いシール性能を確保することができる。
【0017】
従って、上記態様に係る車両では、ダンパケースと冷却液配管との接続部における車幅方向でのサイズを小さくすることができ、広い室内空間を実現することができるとともに高い衝突安全性の確保することができる。
【0018】
上記態様に係る車両において、前記第1方向に直交する方向を第2方向とするとき、前記冷却液配管と前記冷却液出口との前記接続部を前記第1方向に沿った断面で断面視するとき、前記第1凹部および前記第2凹部の少なくとも一方は、前記第2方向に対向する2側面と前記底面とを有する溝部であってもよい。
【0019】
上記態様に係る車両では、第1凹部および第2凹部の少なくとも一方を溝部としているので、当該溝部に挿入されるシール部材が冷却液配管の径方向に確実に保持される。よって、冷却液からの液圧がかかってもシール部材が変形あるいは移動してしまうのを抑制することができる。
【0020】
上記態様に係る車両において、前記冷却液配管と前記冷却液出口との前記接続部を前記第1方向に沿った断面で断面視するとき、前記配管端面と前記出口端面との間隙は、クランク状であってもよい。
【0021】
上記態様に係る車両では、配管端面と出口端面との間隙が、断面視でクランク状であるので、第1シール部材を配する部分と第2シール部材を配する部分との間に隔壁を設けなくても、高いシール性能を確保することができる。
【0022】
上記態様に係る車両において、前記第1端面において、前記第1凹部と当該第1端面における前記他の部分との間に段差を有してもよく、前記第2端面において、前記第2凹部と当該第2端面における前記他の部分との間に段差を有してもよい。
【0023】
上記態様に係る車両では、冷却液配管とダンパケースにおける冷却液出口との接続部において、第1シール部材を配する部分と第2シール部材を配する部分との間に段差が設けられているので、第1シール部材を配する部分と第2シール部材を配する部分との間に隔壁を設けなくても高いシール性能を確保することができる。
【0024】
上記態様に係る車両において、変速機構と、当該変速機構を収容するミッションケースとを有し、前記モータに対して車両前後方向の後方に隣接配置されるとともに、前記モータに連結されたトランスミッションと、入力された直流電力を交流電力に変換して前記モータに出力するインバータと、をさらに備えてもよい。そして、上記態様に係る車両において、前記車両のフロアパネルには、車室内に向けて膨出し、車両前後方向に延びるフロアトンネルが形成されてもよく、前記トランスミッションは、前記フロアトンネルの下方に配置されてもよく、前記インバータは、前記フロアトンネルの下方であって、且つ、前記ミッションケースの上部に取り付けられてもよい。また、上記態様に係る車両において、前記ミッションケースの上部から前記モータケースの上部にかけての部分には、前記インバータと前記モータとを電気的に接続するための電気接続部が取り付けられてもよく、前記冷却液配管と前記冷却液出口との前記接続部は、前記ダンパケース内における車幅方向の側部に設けられてもよい。
【0025】
上記態様に係る車両では、ミッションケースの上部にインバータが取り付けられ、ミッションケースの上部からモータケースの上部にかけての部分に電気接続部が取り付けられている。そして、上記態様に係る車両では、冷却液配管と前記冷却液出口との接続部が、ダンパケースにおける車幅方向の側部に設けられているので、インバータや電気接続部と前記接続部とが干渉することが防がれる。
【0026】
上記態様に係る車両において、前記縦置きエンジンに接続され、当該縦置きエンジンから排出された排気ガスを車両後方に案内して排出する排気管をさらに備えてもよい。そして、上記態様に係る車両において、前記排気管は、前記ダンパケースに対して車幅方向の一方の側方に配置されてもよく、前記前記冷却液配管と前記冷却液出口との前記接続部は、前記ダンパケースにおける車幅方向の側部であって、前記排気管が配置されたのとは反対側に設けられてもよい。
【0027】
上記態様に係る車両では、ダンパケースに対して車幅方向の一方の側方に排気管が配置され、ダンパケースの車幅方向の他方の側部に上記接続部が設けられているので、排気管と上記接続部との干渉が防がれる。
【0028】
上記態様に係る車両において、前記モータケースは、車幅方向における側方を覆うカバーを有してもよく、前記潤滑油は、前記カバー内に収容されていてもよく、前記冷却液配管は、前記ダンパ内流路における前記冷却液出口との接続部から、前記モータ内流路における前記冷却液入口との接続部までの全体が、前記カバー内に収容されていてもよい。
【0029】
上記態様に係る車両では、冷却液配管の全てがモータケースのカバー内に収容されているので、冷却液配管がモータケースの車幅方向側方に張り出すことがない。よって、モータケースの車幅方向のサイズを小さく抑えるのに有効である。
【発明の効果】
【0030】
上記の各態様に係る車両は、ダンパケースからモータに冷却液を案内する構造において、ダンパケースと冷却液配管との接続部における車幅方向のサイズを小さくすることができ、広い室内空間の実現と高い衝突安全性の確保が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る車両の構成を示す模式図である。
図2】車両におけるモータおよびその周辺構成を斜め上方から見た斜視図である。
図3】車両におけるモータおよびその周辺構成を斜め下方から見た斜視図である。
図4】車両におけるモータおよびその周辺構成を側方から見た側面図である。
図5】車両における冷却水経路を示す模式図である。
図6】(a)は、モータケースのカバーを取り外した状態でモータおよびダンパを示す斜視図であり、(b)は、冷却水配管を取り外した状態でモータおよびダンパを示す斜視図である。
図7図4のVII-VII線断面を示す断面図である。
図8図7のB部を拡大して示す断面図である。
図9】シール部材を図8の矢印Cの方向から見た平面図である。
図10】(a)は、変形例1に係るダンパケースと冷却水配管との間でのシール構造を示す断面図であり、(b)は、変形例2に係るダンパケースと冷却水配管との間でのシール構造を示す断面図であり、(b)は、変形例3に係るダンパケースと冷却水配管との間でのシール構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0033】
以下の説明で用いる図においては、「FR」が車両前方、「RE」が車両後方、「UP」が車両上方、「LO」が車両下方」をそれぞれ示す。
【0034】
1.車両1の概略構成
本実施形態に係る車両1の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0035】
図1に示すように、車両1は、車両走行用の駆動源としてエンジン10とモータ12とを備える。エンジン10およびモータ12は、車両1の前部に設けられたエンジンルーム1a内に搭載されている。エンジン10は、複数の気筒10aを有し、複数の気筒10aが車両1の前後方向に並ぶように縦置きで配置されている。即ち、本実施形態におけるエンジン10は、縦置きエンジンである。
【0036】
なお、本実施形態に係る車両1では、エンジン10として、ガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジンの何れを採用することも可能である。
【0037】
モータ12は、エンジン10に対して、車両1の前後方向における後方に配置されている。そして、モータ12の回転軸は、ダンパ11を介してエンジン10の出力軸に連結されている。エンジン10とモータ12とは、車両1の走行状況に応じて、一方あるいは両方が車両走行用の駆動力を発生する。なお、エンジン10とモータ12との間に設けられたダンパ11は、エンジン10とモータ12との間で衝撃トルクを緩和するためのデバイスである。
【0038】
車両1は、トランスミッション13、トランスファ14、プロペラシャフト15,16、デファレンシャルギヤ17,21、ドライブシャフト18,22、および車輪19,20,23,24も備える。トランスミッション13は、モータ12に連結されている。トランスミッション13は、モータ12からの駆動力に加えて、モータ12を通してエンジン10からの駆動力も入力されるようになっている。トランスミッション13は、走行状況に応じた比に変速してトランスファ14に出力する。
【0039】
なお、本実施形態に係る車両1では、トランスミッション13として、マニュアルトランスミッションあるいはオートマチックトランスミッションの何れを採用することも可能である。
【0040】
トランスファ14は、動力分割装置であって、トランスミッション13から出力された駆動力を前輪23,24への駆動力と後輪19,20への駆動力に分割するデバイスである。トランスファ14には、リア(R)プロペラシャフト15とフロント(F)プロペラシャフト16とが連結されている。
【0041】
なお、トランスファ14による駆動力の配分は、路面μ等に応じて比率が逐次変更されるようになっていてもよい。
【0042】
Rプロペラシャフト15は、トランスファ14から車両1の前後方向の後方に向けて延びるように設けられている。Rプロペラシャフト15の後端は、リア(R)デファレンシャルギヤ17に連結されている。Rデファレンシャルギヤ17からは、車幅方向の両側に向けてリア(R)ドライブシャフト18が延びている。Rドライブシャフト18の両端には、後輪19,20が取り付けられている。
【0043】
Fプロペラシャフト16は、トランスミッション13、モータ12、およびダンパ11の車幅方向の側方を通り、車両1の前後方向の前方に向けて延びるように設けられている。Fプロペラシャフト16の前端は、フロント(F)デファレンシャルギヤ21に連結されている。Fデファレンシャルギヤ21からは、車幅方向の両側に向けてフロント(F)ドライブシャフト22が延びている。Fドライブシャフト22の両端には、前輪23,24が取り付けられている。
【0044】
さらに、車両1は、バッテリ25と電力変換ユニット26とを備える。バッテリ25は、それぞれがリチウムイオンバッテリである複数のバッテリで構成されたバッテリモジュールである。バッテリ25には、電力変換ユニット26が接続されている。
【0045】
電力変換ユニット26は、インバータ27とDC-DCコンバータ28とを有する。インバータ27は、バッテリ25から入力された直流電力を交流電力に変換してモータ12に出力するデバイスである。DC-DCコンバータ28は、バッテリ25から入力された直流電力の電圧を変換(昇降圧)して車両1の各種負荷に出力するデバイスである。
【0046】
2.モータ12およびその周辺構造
車両1におけるモータ12およびその周辺構造について、図2から図4を用いて説明する。
【0047】
図2から図4に示すように、ダンパ11はダンパケース11aを有し、モータ12はモータケース12aを有し、トランスミッション13はミッションケース13aを有する。ダンパケース11aは、筒状の外殻部材であって、内部には衝撃トルクを緩和するトルク緩和機構(図示を省略。)を収容する。モータケース12aは、筒状の外殻部材であって、内部にロータおよびステータ(図示を省略。)を収容する。ミッションケース13aは、車両1の前後方向に長尺な筒状の外殻部材であって、内部に変速機構(図示を省略。)を収容する。
【0048】
ミッションケース13aの上部には、インバータ27が取り付けられている。図4に示すように、トランスミッション13は、フロアトンネル1dの下方に配置されている。そして、インバータ27も、フロアトンネル1dの下方に配置されている。
【0049】
なお、図4に示すように、車両1では、エンジンルーム1aと車室1eとがダッシュパネル1bで仕切られている。そして、車室1bの下部には、ダッシュパネル1bに連続するフロアパネル1cが設けられている。フロアトンネル1dは、車幅方向の中央領域において、車両1の上下方向の上方(車室1e側)に向けてフロアパネル1cの一部が膨出するとともに、車両1の前後方向に向けて延びるように設けられている。
【0050】
車両1では、モータ12の一部もフロアトンネル1dの下方に配置されている。
【0051】
図2および図4に示すように、ミッションケース13aの上部からモータケース12aの上部にかけての領域には、端子台29が取り付けられている。端子台29は、インバータ27とモータ12とを電気接続するための端子やバスバーを有する部材であって、電気接続部に該当する。
【0052】
図2および図3に示すように、DC-DCコンバータ28は、ミッションケース13aに対して車幅方向の一方(左方)の側方に離間し、且つ、ミッションケース13aの下部よりも車両1の上下方向の下方に配されている。
【0053】
ダンパケース11a、モータケース12a、およびミッションケース13aに対して、車幅方向の左方には、Fプロペラシャフト16が配設されている。Fプロペラシャフト16は、DC-DCコンバータ28よりもミッションケース13a等に近い領域に配置されている。
【0054】
図2および図3に示すように、ダンパケース11a、モータケース12a、およびミッションケース13aに対して、車幅方向の右方には、排気管30が配置されている。詳細な図示を省略しているが、排気管30は、エンジン10のエキゾーストマニホールドに接続されており、車両1の前後方向の後方に向けて延びるように設けられている。
【0055】
図3および図4に示すように、ミッションケース13aの下部には、オイルパン31が取り付けられている。オイルパン31は、トランスミッション13の作動油を貯留するための容器である。
【0056】
また、ダンパケース11aの下部からモータケース12aの下部にかけての領域には、オイルクーラ32が取り付けられている。オイルクーラ32は、モータケース12a内の潤滑油を冷却するためのデバイスであって、後述する冷却液との間での熱交換により潤滑油を冷却する熱交換器である。
【0057】
3.冷却液配管LN1~LN8の配設形態
車両1における冷却液配管LN1~LN8の配設形態について、図2から図5を用いて説明する。なお、本実施形態に係る車両1では、モータ12を冷却するための冷却液の一例として水を採用する。
【0058】
DC-DCコンバータ28には、冷却液配管LN1と冷却配管LN2が接続されている。図5に示すように、冷却液配管LN1は、冷却液用のポンプ34とDC-DCコンバータ28との間を接続するように設けられている。冷却液配管LN2は、DC-DCコンバータ28とインバータ27との間を接続するように設けられている。
【0059】
ダンパ11のダンパケース11aには、冷却液配管LN3、冷却液配管LN4、冷却液配管LN6、および冷却液配管LN7が接続されている。冷却液配管LN3は、一端がインバータ27に接続され、他端がダンパケース11aの配管接続部11bに接続されている。冷却液配管LN6は、一端がダンパケース11aの配管接続部11cに接続され、他端がモータ12におけるモータケース12aの配管接続部12bに接続されている。
【0060】
ダンパケース11aでは、配管接続部11bと配管接続部11cとを結ぶダンパ内流路11hが形成されている。そして、配管接続部11cが冷却液出口に該当する。
【0061】
冷却液配管LN7は、一端がモータケース12aの配管接続部12cに接続され、他端がダンパケース11aの配管接続部11dに接続されている。
【0062】
モータケース12aでは、配管接続部12bと配管接続部12cとを結び、モータケース12a内を冷却液が循環するようにモータ内流路12fが設けられている。そして、配管接続部12bが冷却液入口に該当する。
【0063】
冷却液配管LN4は、一端がダンパケース11aの配管接続部11eに接続され、他端がオイルクーラ32に接続されている。ダンパケース11aでは、配管接続部11dと配管接続部11eとの間を結ぶダンパ内流路11iが形成されている。
【0064】
冷却液配管LN5は、オイルクーラ32とラジエータ33とを接続するように設けられている。なお、本実施形態に係る車両1では、ラジエータ33はエンジン10の冷却液を冷却するためのラジエータであって、冷却液配管LN5は、エンジン10よりも車両1の前後方向の前方まで延びるように設けられている。
【0065】
冷却液配管LN8は、一端がラジエータ33に接続され、他端がポンプ34に接続されるように設けられている。
【0066】
図5に示すような冷却液の循環経路を備える車両1では、ポンプ34から送出された冷却液が、DC-DCコンバータ28およびインバータ27を経由することで、これらDC-DCコンバータ28およびインバータ27を冷却する。そして、インバータ27から導出された冷却液は、ダンパケース11aのダンパ内流路11hを通り、モータケース12a内のモータ内流路12fに送られる。モータ内流路12f内を流れる冷却液は、モータ12を冷却する。そして、モータケース12aから導出された冷却液は、ダンパケース11a内のダンパ内流路11iを通りオイルクーラ32へと送られる。
【0067】
オイルクーラ32では、モータ12の潤滑油との間での熱交換により潤滑油を冷却する。その後、冷却液は、ラジエータ33に送られて外気との熱交換により冷却される。
【0068】
4.ダンパケース11aおよびモータケース12aと冷却液配管LN6,LN7との接続形態
ダンパケース11aおよびモータケース12aと冷却液配管LN6,LN7との接続形態について、図6および図7を用いて説明する。
【0069】
図6(b)に示すように、ダンパケース11aにおける配管接続部11c、11dは、車両1の前後方向における後方に向けて開口されている。なお、ダンパケース11aには、上述のように、冷却液配管LN3,LN4も接続されるが、ダンパケース11aにおけるこれら冷却液配管LN3,LN4との配管接続部11b,11eは、車幅方向の左方に向けて開口されている。
【0070】
一方、モータケース12aにおける配管接続部12b、12cは、車幅方向の左方に向けて開口されている。
【0071】
図6(a)に示すように、冷却液配管LN6,LN7は、ダンパケース11aとの接続部から車両1の前後方向の後方に向けて延びるように配設されている。そして、冷却液配管LN6と冷却液配管LN7とは、車両1の上下方向に並ぶように配設されている。
【0072】
なお、図7に示すように、モータケース12aは、車幅方向の側方を覆うカバー12dを有する。そして、モータ12の潤滑油は、カバー12d内のオイル通路FLoを循環できるように収容されている。また、冷却液配管LN6,LN7(図7では、冷却液配管LN6のみを図示。)も、その全体がカバー12d内に収容されている。図6(a)では、モータケース12aについて、カバー12dを取り外した状態で示している。
【0073】
図6(a)、(b)に示すように、冷却液配管LN6,LN7とモータケース12aとの接続は、ボルト35,36の締結によりなされている。図7に示すように、冷却液配管LN6,LN7(図7では、冷却液配管LN6のみを図示。)は、モータケース12aにおけるカバー12d内に設けられた接続フランジ部12eに対して端面を突き合せた状態で接続されている。
【0074】
図7に示すように、ダンパケース11a内において、ダンパ内流路11hは、当該ダンパ内流路11hにおける冷却液の流れ方向において、配管接続部11bと配管接続部11cとの中間部分から配管接続部11cにかけての部分が、車両1の前後方向に沿う方向(第1方向)に延びるように形成されている。そして、ダンパケース11aと冷却液配管LN6との接続部において、ダンパケース11aと冷却液配管LN6との間には、シール部材37,38が介挿されている。即ち、ダンパケース11aと冷却液配管LN6との接続では、二重シール構造が採用されている。
【0075】
なお、図7では図示を省略しているが、ダンパケース11aと冷却液配管LN7との接続においても、二重シール構造が採用されている。これに対して、モータケース12aの接続フランジ部12eと冷却液配管LN6との接続では、ガスケットであるシール部材39でシールがなされている。これは、図6(a)を用いて説明したように、接続フランジ部12eへの冷却液配管LN6の接続は、ボルト35,36を用いた締結によりなされるため、二重シール構造を採用しなくても、冷却液と潤滑油との分離ができるためである。
【0076】
以上のように、冷却液配管LN6によりダンパ内流路11hとモータ内流路12fとが接続され、冷却液流通路FLoの一部が構成される。
【0077】
なお、図7では図示を省略しているが、ダンパケース11aと冷却液配管LN7との接続についても、同じ構造を以ってなされている。
【0078】
5.ダンパケース11aと冷却液配管LN6,LN7との接続形態の詳細
ダンパケース11aと冷却液配管LN6,LN7との接続形態の詳細について、図8および図9を用いて説明する。なお、図8でも、ダンパケース11aと冷却液配管LN6との接続部だけを図示し、ダンパケース11aと冷却液配管LN7との接続部の図示を省略しているが、ダンパケース11aと冷却液配管LN7との接続部は、図8に示すダンパケース11aと冷却液配管LN6との接続部分と同じ構造を有する。
【0079】
図8に示すように、ダンパケース11aの配管接続部(冷却液出口)11cと冷却液配管LN6との接続部において、配管接続部11cの端面11fと冷却液配管LN6を構成する管部材60の端面60gとは車両1の前後方向に対向している。なお、本実施形態では、管部材60の端面60gが第1端面に該当し、配管接続部11cの端面11fが第2端面に該当する。
【0080】
ダンパケース11aの端面11fには、当該端面11fの他の部分よりも車両1の前後方向における前方に向けて凹入した環状の凹部11gが形成されている。一方、管部材60の端面60gには、当該端面60gの他の部分よりも車両1の前後方向における後方に向けて凹入した環状の凹部(溝部)60fが形成されている。
【0081】
ダンパケース11aの端面11fに設けられた凹部11gの底面は、管部材60の端面60gにおける溝部60fが設けられていない部分(上記他の部分)に対して対向し、管部材60の端面60gに設けられた溝部60fの底面は、ダンパケース11aの端面11fにおける凹部11gが設けられていない部分(上記他の部分)に対して対向する。
【0082】
本実施形態では、ダンパケース11aの端面11fにおける凹部11gが、配管接続部11cの開口径方向において、内側に設けられている。また、管部材60の端面60gにおける溝部60fが、管部材60の径方向において、外側に設けられている。
【0083】
シール部材(第1シール部材)37は、管部材60の溝部60fに嵌まり込み、且つ、一部が車両1の前後方向における前方側に突出している。これより、シール部材37は、管部材60の溝部60fの底面およびダンパケース11aの端面11f(凹部11gを除く上記他の部分)に対して圧接されている。
【0084】
シール部材(第2シール部材)38は、ダンパケース11aの凹部11gに嵌まり込み、且つ、一部が車両1の前後方向における後方側に突出している。これより、シール部材38は、ダンパケース11aの端面11fにおける凹部11gの底面、および管部材60の端面60g(溝部60fを除く上記他の部分)に対して圧接されている。
【0085】
図8に示す断面において、ダンパケース11aの端面11fと管部材60の端面60gとの間隙G1は、クランク状に構成されている。換言すると、ダンパケース11aの端面11fは、凹部11gの底面と、端面11fにおける凹部11gを除く上記他の部分との間に段差が設けられている。同様に、管部材60の端面60gは、溝部60fの底面と、端面60gにおける溝部60fを除く上記他の部分との間に段差が設けられている。
【0086】
図9に示すように、ダンパケース11aと冷却液配管LN6,LN7との接続部では、第1シール部材であるシール部材37と、第2シール部材であるシール部材38,40が設けられている。シール部材37は、冷却液配管LN6が接続される配管接続部(冷却液出口)11cの開口回りに配置され、シール部材40は、冷却液配管LN7が接続される配管接続部(冷却液入口)11dの開口回りに配置される。
【0087】
シール部材37は、平面視において、略長円状の環状形状を有する。シール部材37は、当該シール部材37の内周の一部でシール部材38,40の外周の一部に当接または近接する。
【0088】
なお、本実施形態では、車両1の上下方向において、シール部材38とシール部材40との間の領域にはシール部材37が存在しない。これは、図6(a)で示した通り、冷却液配管LN6と冷却液配管LN7とは、ダンパケース11aとの接続部分において互いに連続するためである。このため、冷却液配管LN6と冷却液配管LN7とが、ダンパケース11aとの接続部分において互いに連続しない構造を採用する場合には、車両1の上下方向において、シール部材38とシール部材40との間の領域にシール部材37を介在させることが高いシール性を確保するという観点から望ましい。
【0089】
6.ダンパ11へのモータ12の組付け
本実施形態において、ダンパ11へのモータ12の組付けは、次のようになされる。
【0090】
(ステップ1)先ず、モータケース12aに対して冷却液配管LN6,LN7(管部材60)を取り付ける。具体的には、各冷却液配管LN6,LN7とモータケース12aの接続部12eとを、互いに間にシール部材39を介した状態で当接させ、ボルト35,36を示すことで取付けを行う。
【0091】
(ステップ2)次に、冷却液配管LN6,LN7(管部材60)の端面60gに形成された溝部60fにシール部材(第1シール部材)37を嵌め込み、配管接続部11c,11dの端面11f(配管接続部11dの端面は図示を省略。)に形成された凹部11g(配管接続部11dの端面に形成された凹部は図示を省略。)にシール部材(第2シール部材)38,40を嵌め込む。
【0092】
(ステップ3)次に、冷却液配管LN6,LN7が取り付けられたモータケース12aをダンパケース11aに取付ける。当該取付の際に、ダンパケース11aの配管接続部11c,11dと冷却液配管LN6,LN7の端面11cとが、シール部材37,38,40を挟んで押圧される。
【0093】
なお、ダンパケース11aへのモータケース12aの取付けにおいては、締結前に位置決めピンを用いて周方向および径方向の位置決めがなされている。よって、ダンパケース11aにおける配管接続部11c,11dの各開口と、冷却液配管LN6,LN7の各開口との位置が互いに一致する。これより、シール不良の発生が抑制される。
【0094】
ここで、本実施形態のように意義決めピンを用いて予め開口同士の位置を一致させる方法を採用しない場合には、シール部材を挟んだ状態でダンパケースの配管接続部と冷却液配管とを押圧し、当該状態で周方向あるいは径方向に位置調整することが必要となる。この場合には、間に挟まれたシール部材が配管接続部および冷却液配管のシール面に対して擦れることとなり、シール性の低下が懸念される。
【0095】
7.効果
本実施形態に係る車両1では、冷却液がダンパケース11aのダンパ内流路11hから冷却液配管LN6を通りモータケース12a内に導入されるように構成されている。また、モータケース12a内を循環した冷却液は、モータ内流路12fから冷却液配管LN7を通りダンパケース11a内に導入されるようになっている。このため、モータ12におけるモータケース12aに対して直接冷却液を出し入れしようとする場合に比べて、モータ12における車幅方向のサイズが大きくなるのを抑制することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る車両1では、冷却液配管LN6,LN7とダンパケース11aにおける配管接続部11c,11dとの接続部において、ダンパケース11aの端面11fに凹部11gを設け、管部材60の端面60gに溝部60fを設けている。そして、溝部60fの底面とダンパケース11aの端面11fとの対向部分にシール部材37を配し、凹部11gの底面と管部材60の端面60gとの対向部分にシール部材38,40を配している。よって、シール部材(第1シール部材)37を配する部分とシール部材(第2シール部材)38,40を配する部分との間に隔壁を設けなくても、高いシール性能を確保することができる。
【0097】
従って、本実施形態に係る車両1では、ダンパケース11aと冷却液配管LN6,LN7との接続部における車幅方向でのサイズを小さくすることができ、広い室内空間を実現することができるとともに高い衝突安全性の確保することができる。
【0098】
本実施形態に係る車両1では、管部材60の端面60gに溝部60fを形成することとしているので、当該溝部60fに挿入されるシール部材(第1シール部材)37が冷却液配管LN6,LN7の径方向に確実に保持される。よって、冷却液からの液圧がかかってもシール部材37が変形あるいは車幅方向に移動してしまうのを抑制することができる。
【0099】
本実施形態に係る車両1では、図8に示したように、ダンパケース11aの端面11fと管部材60の端面60gとの間隙G1が、断面視でクランク状であるので、シール部材(第1シール部材)37を配する部分とシール部材(第2シール部材)38,40を配する部分との間に隔壁を設けなくても、高いシール性能を確保することができる。
【0100】
本実施形態に係る車両1では、ダンパケース11aにおける配管接続部11c,11dと冷却液配管LN6,LN7との接続部において、図8に示したように、シール部材(第1シール部材)37を配する部分とシール部材(第2シール部材)38,40を配する部分との間に段差が設けられているので、シール部材37を配する部分とシール部材38,40を配する部分との間に隔壁を設けなくても高いシール性能を確保することができる。
【0101】
本実施形態に係る車両1では、ミッションケース13aの上部にインバータ27が取り付けられ、ミッションケース13aの上部からモータケース12aの上部にかけての部分に端子台(電気接続部)29が取り付けられている。そして、ダンパケース11aにおける配管接続部11c,11dと冷却液配管LN6,LN7との接続部が、ダンパケース11aに対して車幅方向の左方に設けられているので、インバータ27や端子台29と上記接続部との干渉が避けられる。
【0102】
本実施形態に係る車両1では、ダンパケース11aに対して車幅方向の右方に排気管30が配置され、ダンパケース11aの車幅方向の左方に上記接続部が設けられているので、排気管30と上記接続部との干渉が避けられる。
【0103】
本実施形態に係る車両1では、冷却液配管LN6,LN7の全てがモータケース12aのカバー12d内に収容されているので、冷却液配管LN6,LN7がモータケース12aの車幅方向側方に張り出すことがない。よって、モータケース12aの車幅方向のサイズを小さく抑えるのに有効である。
【0104】
以上のように、本実施形態に係る車両1は、ダンパケース11aとモータケース12aとの間で冷却液を案内する構造において、ダンパケース11aと冷却液配管LN6,LN7との接続部における車幅方向のサイズを小さくすることができ、広い室内空間の実現と高い衝突安全性の確保が可能である。
【0105】
[変形例1]
変形例1に係る車両について、図10(a)を用いて説明する。なお、本変形例に係る車両は、ダンパケース61aの端面61gの構造と、冷却液配管LN62を構成する管部材62の端面62fの構造とが上記実施形態との差異点である。以下では、当該差異点に絞って説明する。
【0106】
図10(a)に示すように、ダンパケース61aの配管接続部(冷却液出口)61cと冷却液配管LN62との接続部において、配管接続部61cの端面61gと冷却液配管LN62を構成する管部材62の端面62fとは車両の前後方向に対向している。本変形例では、配管接続部61cの端面61gが第1端面に該当し、管部材62の端面62fが第2端面に該当する。
【0107】
ダンパケース61aの端面61gには、当該端面61gの他の部分よりも車両の前後方向における前方に向けて凹入した環状の凹部(溝部)61fが形成されている。一方、管部材62の端面60fには、当該端面62fの他の部分よりも車両の前後方向における後方に向けて凹入した環状の凹部60gが形成されている。
【0108】
ダンパケース61aの端面61gに設けられた溝部61fの底面は、管部材62の端面62fにおける凹部62gが設けられていない部分(上記他の部分)に対して対向し、管部材62の端面62fに設けられた凹部62gの底面は、ダンパケース61aの端面61gにおける溝部61fが設けられていない部分(上記他の部分)に対して対向する。
【0109】
本変形例では、ダンパケース61aの端面61gにおける溝部61fが、配管接続部61cの開口径方向において、外側に設けられている。また、管部材62の端面62fにおける凹部62gが、管部材62の径方向において、内側に設けられている。
【0110】
シール部材(第1シール部材)63は、ダンパケース61aの溝部61fに嵌まり込み、且つ、一部が車両の前後方向における後方側に突出している。これより、シール部材63は、ダンパケース61aの端面61gにおける溝部61fの底面、および管部材62の端面62f(凹部62gを除く上記他の部分)に対して圧接されている。
【0111】
シール部材(第2シール部材)64は、管部材62の凹部62gに嵌まり込み、且つ、一部が車両の前後方向における前方側に突出している。これより、シール部材64は、管部材62の凹部62gの底面およびダンパケース61aの端面61g(溝部61fを除く上記他の部分)に対して圧接されている。
【0112】
図10(a)に示す断面において、ダンパケース61aの端面61gと管部材62の端面62fとの間隙G2についても、上記実施形態と同様にクランク状に構成されている。そして、ダンパケース61aの端面61gは、溝部61fの底面と、端面61gにおける溝部61fを除く上記他の部分との間に段差が設けられている。同様に、管部材62の端面62fは、凹部62gの底面と、端面62fにおける凹部62gを除く上記他の部分との間に段差が設けられている。
【0113】
本変形例に係る車両においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0114】
[変形例2]
変形例2に係る車両について、図10(b)を用いて説明する。なお、本変形例に係る車両は、ダンパケース65aの端面65gの構造と、冷却液配管LN66を構成する管部材66の端面66fの構造とが上記実施形態との差異点である。以下では、当該差異点に絞って説明する。
【0115】
図10(b)に示すように、ダンパケース65aの配管接続部(冷却液出口)65cと冷却液配管LN66との接続部において、配管接続部65cの端面65gと冷却液配管LN66を構成する管部材66の端面66fとは車両の前後方向に対向している。本変形例では、配管接続部65cの端面65っが第1端面に該当し、管部材66の端面66fが第2端面に該当する。
【0116】
ダンパケース65aの端面65gには、当該端面65gの他の部分よりも車両の前後方向における前方に向けて凹入した環状の凹部65fが形成されている。一方、管部材66の端面66fには、当該端面66fの他の部分よりも車両の前後方向における後方に向けて凹入した環状の凹部(溝部)66gが形成されている。
【0117】
ダンパケース65aの端面65gに設けられた凹部65fの底面は、管部材66の端面66fにおける溝部66gが設けられていない部分(上記他の部分)に対して対向し、管部材66の端面66fに設けられた溝部66gの底面は、ダンパケース65aの端面65gにおける凹部65fが設けられていない部分(上記他の部分)に対して対向する。
【0118】
本変形例では、ダンパケース65aの端面65gにおける凹部65fが、配管接続部65cの開口径方向において、外側に設けられている。また、管部材66の端面66fにおける溝部66gが、管部材66の径方向において、内側に設けられている。
【0119】
シール部材(第1シール部材)67は、ダンパケース65aの凹部65fに嵌まり込み、且つ、一部が車両の前後方向における後方側に突出している。これより、シール部材67は、ダンパケース65aの端面65gにおける凹部65fの底面、および管部材66の端面66f(溝部66gを除く上記他の部分)に対して圧接されている。
【0120】
シール部材(第2シール部材)68は、管部材66の溝部66gに嵌まり込み、且つ、一部が車両の前後方向における前方側に突出している。これより、シール部材68は、管部材66の溝部66gの底面およびダンパケース65aの端面65g(凹部65fを除く上記他の部分)に対して圧接されている。
【0121】
図10(b)に示す断面において、ダンパケース65aの端面65gと管部材66の端面66fとの間隙G3についても、上記実施形態と同様にクランク状に構成されている。そして、ダンパケース65aの端面65gは、凹部65fの底面と、端面65gにおける凹部65fを除く上記他の部分との間に段差が設けられている。同様に、管部材66の端面66fは、溝部66gの底面と、端面66fにおける溝部66gを除く上記他の部分との間に段差が設けられている。
【0122】
本変形例に係る車両においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0123】
[変形例3]
変形例3に係る車両について、図10(c)を用いて説明する。なお、本変形例に係る車両は、ダンパケース69aの端面69fの構造と、冷却液配管LN70を構成する管部材70の端面70gの構造とが上記実施形態との差異点である。以下では、当該差異点に絞って説明する。
【0124】
図10(c)に示すように、ダンパケース69aの配管接続部(冷却液出口)69cと冷却液配管LN70との接続部において、配管接続部69cの端面69fと冷却液配管LN70を構成する管部材70の端面70gとは車両の前後方向に対向している。本変形例では、管部材70の端面70gが第1端面に該当し、配管接続部69cの端面69fが第2端面に該当する。
【0125】
ダンパケース69aの端面69fには、当該端面69fの他の部分よりも車両の前後方向における前方に向けて凹入した環状の凹部(溝部)69gが形成されている。一方、管部材70の端面70gには、当該端面70gの他の部分よりも車両の前後方向における後方に向けて凹入した環状の凹部70fが形成されている。
【0126】
ダンパケース69aの端面69fに設けられた溝部69gの底面は、管部材70の端面70gにおける凹部70fが設けられていない部分(上記他の部分)に対して対向し、管部材70の端面70gに設けられた凹部70fの底面は、ダンパケース69aの端面69fにおける溝部69gが設けられていない部分(上記他の部分)に対して対向する。
【0127】
本変形例では、ダンパケース69aの端面69fにおける溝部69gが、配管接続部69cの開口径方向において、内側に設けられている。また、管部材70の端面70gにおける凹部70fが、管部材70の径方向において、外側に設けられている。
【0128】
シール部材(第1シール部材)71は、ダンパケース69aの溝部69gに嵌まり込み、且つ、一部が車両の前後方向における後方側に突出している。これより、シール部材71は、ダンパケース69aの端面69fにおける溝部69gの底面、および管部材70の端面70g(凹部70fを除く上記他の部分)に対して圧接されている。
【0129】
シール部材(第2シール部材)72は、管部材70の凹部70fに嵌まり込み、且つ、一部が車両の前後方向における前方側に突出している。これより、シール部材72は、管部材70の凹部70fの底面およびダンパケース69aの端面69f(溝部69gを除く上記他の部分)に対して圧接されている。
【0130】
図10(c)に示す断面において、ダンパケース69aの端面69fと管部材70の端面70gとの間隙G4についても、上記実施形態と同様にクランク状に構成されている。そして、ダンパケース69aの端面69fは、溝部69gの底面と、端面69fにおける溝部69gを除く上記他の部分との間に段差が設けられている。同様に、管部材70の端面70gは、凹部70fの底面と、端面70gにおける凹部70fを除く上記他の部分との間に段差が設けられている。
【0131】
本変形例に係る車両においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0132】
[まとめ]
上記実施形態および上記変形例1~3では、ダンパケース11,61,65,69の端面11g,61g,65g,69fおよび管部材60,62,66,70の端面60g,62f,66f,70gの一方(第1端面)に凹部11g,62g,,65f,70fを設け、他方(第2端面)に溝部60f,61f,66g,69gを設けている。ここで、上記実施形態および上記変形例1~3では、管部材60,62,66,70の開口径方向における内外の両方に側壁を有する形態を「溝部」とし、内外の一方に側壁を有し、他方に側壁を有さない形態を「凹部」としている。
【0133】
なお、上記実施形態および上記変形例1~3において、端面11f,62f,65g,70gに凹部11g,62g,,65f,70fを設けることにより、当該凹部11g,62g,,65f,70fが設けられた部分と凹部が設けられていない部分との間に段差が形成される。
【0134】
図8から図10に示したように、シール部材(第1シール部材)37,63,68,71とシール部材(第2シール部材)38,40,64,68,72とは、管部材60,62,66,70の開口径方向に隣り合うように配設されている(二重シール構造)。これにより、上記実施形態および上記変形例1~3では、ダンパケース11a,61a,65a,69aと冷却液配管LN6,LN7,LN62,LN66,LN70(管部材60,62,66,70)との間での高いシール性を確保することができる。
【0135】
なお、端面に溝部を設ける場合には、管部材の開口径方向における内外の両方に側壁が存在することとなるため、シール性を確保するのに優位となる。
【0136】
一方、端面に凹部(段差)を設ける場合には、管部材の開口径方向における内外の一方に側壁がないため、軽量化および小型化を図るのに優位となる。
【0137】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例1~3では、エンジン10として4気筒のエンジンを一例として採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、5気筒以上のエンジンや、V型の多気筒エンジン、さらにはW型の多気筒エンジンを採用することも可能である。
【0138】
また、上記実施形態および上記変形例1~3では、エンジン10およびモータ12で発生の駆動力を前輪23,24にも伝達する四輪駆動車を一例としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、FR車(フロントエンジン、リヤドライブ)に適用することも可能である。
【0139】
また、上記実施形態および上記変形例1~3におけるダンパ11,61,65,69として、ハイブリッド車用に採用される種々のダンパを用いることが可能である。例えば、所定のトルクを超えた場合にスリップする機能を有するリミッタ付きダンパを採用することもできる。
【0140】
また、上記実施形態および上記変形例1~3では、冷却液経路中のラジエータ33として、エンジン10の冷却液を冷却するために設けられたラジエータを共用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。エンジン10の冷却液を冷却するためのラジエータとは別個のラジエータを設けることとしてもよい。
【0141】
また、上記実施形態および上記変形例1~3では、モータ12を冷却するための冷却液の一例として水を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、モータケース12a内の潤滑油とは異なる種類の油を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0142】
1 車両
1d フロアトンネル
10 エンジン(縦置きエンジン)
11,61,65,69 ダンパ
11a,61a,65a,69a ダンパケース
11b~11e,61c,65c,69c 配管接続部
12 モータ
12a モータケース
12b,12c 配管接続部
12d カバー
37,63,67,71 シール部材(第1シール部材)
38,40,64,68,72 シール部材(第2シール部材)
60,62,66,70 管部材
LN6,LN7,LN62,LN66,LN70 冷却水配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10