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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】薬剤乳化器具
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20240423BHJP
   B01F 23/41 20220101ALI20240423BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
B01F23/41
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020186038
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075320
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山辺 康平
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-515594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0247985(US,A1)
【文献】特開2005-186026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
B01F 23/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれシリンジが接続される第1のシリンジ接続部及び第2のシリンジ接続部と、
それぞれ薬剤が入れられたバイアルが接続される第1のバイアル接続部及び第2のバイアル接続部と、
前記第1のバイアル接続部と前記第1のシリンジ接続部との間に接続された第1の流路切り換え部と、
前記第2のバイアル接続部と前記第2のシリンジ接続部との間に接続されると共に、前記第1の流路切り換え部と接続された第2の流路切り換え部と、
前記第1のシリンジ接続部と前記第2のシリンジ接続部との間に接続された乳化フィルタとを備え、
前記第1の流路切り換え部は、前記第1のシリンジ接続部が前記第1のバイアル接続部と接続される第1の接続状態と、前記第1のシリンジ接続部が前記第2の流路切り換え部と接続され前記第1のバイアル接続部と接続されない第2の接続状態とを有し、
前記第2の流路切り換え部は、前記第2のシリンジ接続部が前記第2のバイアル接続部と接続される第3の接続状態と、前記第2のシリンジ接続部が前記第1の流路切り換え部と接続され前記第2のバイアル接続部と接続されない第4の接続状態とを有する、薬剤乳化器具。
【請求項2】
前記乳化フィルタは、前記第1のシリンジ接続部と前記第1の流路切り換え部との間に配置されている、請求項1に記載の薬剤乳化器具。
【請求項3】
前記第1のバイアル接続部及び前記第2のバイアル接続部はそれぞれ、栓体に穿刺される移注針を有し、
前記移注針は、通気フィルタが設けられた通気路を有する、請求項1又は2に記載の薬剤乳化器具。
【請求項4】
前記第1のバイアル接続部と前記第2のバイアル接続部とを識別する識別表示をさらに備えている、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬剤乳化器具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の薬剤乳化器具と、第1のバイアル及び第2のバイアルとが位置決めされて包装された薬剤乳化キットであって、
前記第1のバイアルは、前記第1のバイアル接続部の延長線上に配置され、前記第2のバイアルは、前記第2のバイアル接続部の延長線上に配置されている、薬剤乳化キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤乳化器具に関し、特に注射用の乳化製剤の調製に用いる薬剤乳化器具に関する。
【背景技術】
【0002】
水性の薬剤と油性の薬剤とを懸濁、乳化して注射用の製剤を調製する場合がある。例えば、ワクチンの場合、免疫応答を促進するために水性のワクチン製剤と油性のアジュバントとを混合して乳化して使用する場合がある。少量の薬剤を乳化する方法として、2本のシリンジと、乳化用フィルタとを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。乳化用フィルタを挟んで水性の薬剤を入れたシリンジと油性の薬剤を入れたシリンジとを接続し、交互にポンピングを行うことにより両方の薬剤を混合して乳化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-186026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような方法により乳化を行うためには、移注針を取り付けたシリンジを用いてバイアルから薬液をシリンジに移注し、この後シリンジから移注針を取り外して乳化用フィルタに取り付けるという操作が必要になる。この場合、シリンジを乳化用フィルタに取り付ける際に、シリンジ内が開放系となるため、内容物のリークが生じる可能性がある。
【0005】
本開示の課題は、シリンジの付け換え操作をすることなく、バイアルに入れられた薬剤の乳化を行うことができる薬剤乳化器具を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の薬剤乳化器具の一態様は、それぞれシリンジが接続される第1のシリンジ接続部及び第2のシリンジ接続部と、それぞれ薬剤が入れられたバイアルが接続される第1のバイアル接続部及び第2のバイアル接続部と、第1のバイアル接続部と第1のシリンジ接続部との間に接続された第1の流路切り換え部と、第2のバイアル接続部と第2のシリンジ接続部との間に接続されると共に、第1の流路切り換え部と接続された第2の流路切り換え部と、第1のシリンジ接続部と第2のシリンジ接続部との間に接続された乳化フィルタとを備え、第1の流路切り換え部は、第1のシリンジ接続部が第1のバイアル接続部と接続される第1の接続状態と、第1のシリンジ接続部が第2の流路切り換え部と接続され第1のバイアル接続部と接続されない第2の接続状態とを有し、第2の流路切り換え部は、第2のシリンジ接続部が第2のバイアル接続部と接続される第3の接続状態と、第2のシリンジ接続部が第1の流路切り換え部と接続され第2のバイアル接続部と接続されない第4の接続状態とを有する。
【0007】
薬剤乳化器具の一態様は、第1の流路切り換え部及び第2の流路切り換え部を操作することにより、シリンジとバイアルとが接続された状態と、シリンジ同士が乳化フィルタを介して接続された状態とを切り換えることができる。このため、バイアル内の薬剤をシリンジ内に移した後、接続状態を切り換えてシリンジ間での薬剤の移動を繰り返すことにより、薬剤が乳化フィルタを通過して乳化を行うことができる。シリンジ内が開放系となることがなく、薬剤のリークを避けることができる。
【0008】
薬剤乳化器具の一態様において、乳化フィルタは、第1のシリンジ接続部と第1の流路切り換え部との間に配置されていてもよい。このような構成とすることにより、第1のバイアル接続部に接続されたバイアル内の液体を第1のシリンジ内に引き込んだ際にバイアル内の液体が乳化フィルタを確実に通過するようにできる。このため、例えば、乳化フィルタを疎水性とすると共に第1のバイアル内の液体を水性とすることにより、水性の液体を先に乳化フィルタを通過させてミスなくW/O系エマルジョンを作成することができる。また、乳化フィルタを親水性とすると共に第1のバイアル内の液体を油性とすることにより、油性の液体を先に乳化フィルタを通過させてミスなくO/W系エマルジョンを作成することができる。
【0009】
薬剤乳化器具の一態様において、第1のバイアル接続部及び第2のバイアル接続部はそれぞれ、栓体に穿刺される移注針を有し、移注針は、通気フィルタが設けられた通気路を有していてもよい。このような構成とすることにより、シリンジ内に気泡が入った場合の除去が容易となり、投与時に有効成分を所定量正確に投与できない事態を防止できる。
【0010】
薬剤乳化器具の一態様は、第1のバイアル接続部と第2のバイアル接続部とを識別する識別表示をさらに備えていてもよい。このような構成とすることにより、バイアルとバイアル接続部との対応を操作者が容易に理解できるため、バイアルの誤接続によるエマルジョンの形成ミスを生じにくくすることができる。
【0011】
薬剤乳化キットの一態様は、本開示の薬剤乳化器具と、第1のバイアル及び第2のバイアルとが位置決めされて包装され、第1のバイアルは、第1のバイアル接続部の延長線上に配置され、第2のバイアルは、第2のバイアル接続部の延長線上に配置されている。このような構成のキットとすることにより、正しいバイアルを正しいバイアル接続部に接続するように操作者を誘導することができるので、エマルジョンの形成ミスを生じにくくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の薬剤乳化器具によれば、シリンジの付け換え操作を行うことなく、薬剤の乳化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る薬剤乳化器具を示す模式図である。
図2】第1の流路切り換え部及び第2の流路切り換え部を示す斜視図である。
図3】移注針を示す斜視図である。
図4】移注針を示す断面図である。
図5】乳化フィルタの位置の変形例を示す模式図である。
図6】(a)~(e)は一実施形態に係る薬剤乳化器具の使用例を示す模式図である。
図7】気泡抜きの操作例を示す模式図である。
図8】薬剤乳化器具の変形例を示す模式図である。
図9】薬剤乳化器具のパッケージ例を示す平面図である。
図10】変形例に係る薬剤乳化器具の流路切り換え部を示す斜視図である。
図11】変形例に係る薬剤乳化器具の移注針を示す斜視図である。
図12】(a)及び(b)は変形例に係る薬剤乳化器具の使用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、一実施形態に係る薬剤乳化器具100にバイアル及びシリンジを取り付けた状態を示す。図1に示すように、一実施形態に係る薬剤乳化器具100は、互いに接続された3方弁である第1の流路切り換え部115及び第2の流路切り換え部116と、第1の流路切り換え部115を挟んで反対側に設けられた第1のバイアル接続部111及び第1のシリンジ接続部113と、第2の流路切り換え部116を挟んで反対側に設けられた第2のバイアル接続部112及び第2のシリンジ接続部114と、第1のシリンジ接続部113と第1の流路切り換え部115との間に設けられた乳化フィルタ117とを有している。
【0015】
第1の流路切り換え部115は、第1のシリンジ接続部113と接続された第1のポート131と、第1のバイアル接続部111と接続された第2のポート132と、第2の流路切り換え部116と接続された第3のポート133とを有する。第1の流路切り換え部115は、方向を変えることができるT字状の流路123を有しており、第1のポート131が第2のポート132と接続され第3のポート133と接続されない第1の接続状態と、第1のポート131が第3のポート133と接続され第2のポート132と接続されない第2の接続状態とを切り換えることができる。
【0016】
第2の流路切り換え部116は、第2のシリンジ接続部114と接続された第4のポート134と、第2のバイアル接続部112と接続された第5のポート135と、第1の流路切り換え部115の第3のポート133と接続された第6のポート136とを有する。第2の流路切り換え部116は、方向を変えることができるT字状の流路123を有しており、第4のポート134が第5のポート135と接続され第6のポート136と接続されない第3の接続状態と、第4のポート134が第6のポート136と接続され第5のポート135と接続されない第4の接続状態とを切り替えることができる。
【0017】
第1の流路切り換え部115及び第2の流路切り換え部116は、3つのポートの接続を切り換えることができる3方弁であればどのようなものでもよいが、例えば図2に示すような回転部を回転させることにより接続状態が切り換わる3方活栓とすることができる。図2に示す第1の流路切り換え部115及び第2の流路切り換え部116は、筒状の本体部125と、本体部125の開口部に挿入された回転部であるプラグ部126とを有している。プラグ部126の上部には本体部125の開口部よりも外径が大きいプラグキャップ127が形成されており、プラグキャップ127にはハンドル128が設けられている。ハンドル128を把持して回転させることにより回転部であるプラグ部126を回転させることができる。
【0018】
本体部125には、90°ずつ3方向にポートが設けられており、プラグ部126には内部を貫通するT字状の流路123が設けられている。このため、プラグ部126を回転させることにより、3つのポートのいずれか2つを接続した状態及び3つのポート全部を接続した状態を作り出すことができる。また、プラグ部126の回転範囲を制限することにより、所定の接続状態のみを作り出すようにすることもできる。
【0019】
本実施形態において、第1の流路切り換え部115は、第1のポート131と第2のポート132とが一直線上に設けられ、第3のポート133はハンドル128側から見た場合に、第1のポート131に対して反時計方向に90°ずれた位置に設けられている。第2の流路切り換え部116は、第4のポート134と第5のポート135とが一直線上に設けられ、第6のポート136はハンドル128側から見た場合に、第4のポート134に対して時計方向に90°ずれた位置に設けられている。このため、第3のポート133と第6のポート136とを接続した際に、第1の流路切り換え部115のハンドル128と第2の流路切り換え部116のハンドル128とが同じ側に配置され、操作が容易となる。
【0020】
また、本実施形態において、第3のポート133は外面に雄ネジ138を有するメスルアーコネクタであり、第6のポート136は、ロックカラー139を有するオスルアーコネクタである。このため、第3のポート133と第6のポート136とを容易に且つ強固に接続することができる。但し、第1の流路切り換え部115と第2の流路切り換え部116との接続はこのような方法に限らない。第1の流路切り換え部115と第2の流路切り換え部116との接続部は、接着又は溶着されて分離不能となっていてもよい。また、第1の流路切り換え部115の本体部125と第2の流路切り換え部116の本体部125との間が接続流路で接続されて2つの流路切り換え部が一体に形成されている構成とすることもできる。
【0021】
第1の流路切り換え部115の第2のポート132及び第2の流路切り換え部116の第5のポート135は、ロックカラー139を有するオスルアーコネクタであり、それぞれ第1のバイアル接続部111及び第2のバイアル接続部112が接続される。本実施形態において、第1のバイアル接続部111及び第2のバイアル接続部112は、バイアルに接続される移注針150である。
【0022】
移注針150は、薬剤が入れられたバイアルと接続できればどのようなものであってもよいが、例えば図3及び図4に示すような構成とすることができる。図3及び図4に示す移注針150は、バイアルの開口部をシールするゴム等からなる栓体214に穿刺される針151と、針151の基部に設けられたメスルアーコネクタ152と、針151を囲むカバー153とを有している。
【0023】
針151は、第1の開口部155とメスルアーコネクタ152とを接続する通液路161と、第1の開口部155よりも針151の先端側の第2の開口部156と接続された通気路162とを有している。通気路162は針151の基部において、通気フィルタ163を介して移注針150の外部と連通している。バイアル内部に液を注入したり、バイアル内部から液を抜き出したりする際に、通気フィルタ163及び通気路162により空気が出入りする。このため、バイアル内への液の注入及びバイアル内からの液の抜き出しを容易に行うことができる。
【0024】
カバー153は、バイアルのクリンプトップにより押し拡げられる舌片状部164を有し、バイアルの口部に外嵌するように形成されている。また、舌片状部164には、クリンプトップの下端部と係合する段差部165が形成されており、一旦バイアルに外嵌させると容易には外れない構成となっている。このようなバイアルの脱落防止機構を設けることにより、操作中のバイアルの脱落を生じにくくでき、操作者はシリンジの操作に集中することができるので、操作者の負担を軽減することができる。但し、脱落防止機構は、バイアルが脱落しないようにできればこのような構成に限らない。また、脱落防止機構は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0025】
本実施形態の移注針150は、メスルアーコネクタ152を有しており、オスルアーコネクタである第1の流路切り換え部115の第2のポート132及び第2の流路切り換え部116の第5のポート135と接続される。移注針150のメスルアーコネクタ152には雄ネジ158が設けられており、第2のポート132及び第5のポート135に設けられたロックカラー139を螺合させることができる。第1の流路切り換え部115と移注針150との接続部をルアーロック構造とすることにより、第1の流路切り換え部115及び第2の流路切り換え部116と移注針150とをしっかりと接続することができる。なお、移注針150は第1の流路切り換え部115及び第2の流路切り換え部116と分離可能になっていても、分離できないようになっていてもよい。分離できないようにする場合には、例えば、ロックカラー139と雄ネジ158とを接着又は溶着等すればよい。また、第1の流路切り換え部115及び第2の流路切り換え部116と移注針150との接続部はルアーロック構造である必要はなく、ロック機構を有さないコネクタにより接続されていてもよい。さらに、第1の流路切り換え部115及び第2の流路切り換え部116と移注針150とは、コネクタを介さずに接続されていてもよく、第1の流路切り換え部115及び第2の流路切り換え部116と移注針150とが一体に成型されていてもよい。
【0026】
本実施形態において、乳化フィルタ117は、オスルアーコネクタとメスルアーコネクタとを有するハウジングに収容されたフィルタユニット117Aとなっている。フィルタユニット117Aのオスルアーコネクタが、第1の流路切り換え部115の第1のポート131に接続されており、フィルタユニット117Aのメスルアーコネクタが第1のシリンジ接続部113となっている。フィルタユニット117Aのオスルアーコネクタと第1のポート131とは、分離可能であっても、分離不可能に接着又は溶着等がされていてもよい。フィルタユニット117Aと第1の流路切り換え部115の第1のポート131との接続部をルアーロック構造とすることもできる。また、乳化フィルタ117は独立したフィルタユニットではなく、第1の流路切り換え部115のハウジング内に組み込まれていてもよい。
【0027】
乳化フィルタ117は、第1の薬剤と第2の薬剤との乳化エマルジョンを形成できればどのようなものでもよく、例えば無機又は有機の多孔質膜とすることができる。中でも、孔径が0.05μm~20μm程度の多孔質ガラスフィルタ等が好ましい。水相の中に油滴が分散したO/W系エマルジョンを形成する場合には、親水性のフィルタを用いることができ、多孔質ガラスフィルタの場合、フィルタ表面を親水化処理することが好ましい。油相の中に水滴が分散したW/O系エマルジョンを形成する場合には、疎水性のフィルタを用いることができ、多孔質ガラスフィルタの場合フィルタ表面を疎水化処理することが好ましい。乳化フィルタ117のサイズは、処理する薬剤の量にもよるが、通常の注射薬の場合、直径5mm~10mm程度とすることができる。
【0028】
乳化フィルタ117を第1のシリンジ接続部113と第1の流路切り換え部115との間に設けることにより、第1のバイアル接続部111に接続されたバイアル内の液体が確実に乳化フィルタ117を先に通過するようにできる。W/O系エマルジョンを形成する場合には、第1のバイアル接続部111に水性の薬剤のバイアルを接続することにより、水性の薬剤を油性の薬剤よりも先に乳化フィルタ117を通過させることができる。O/W系エマルジョンを形成する場合には、第1のバイアル接続部111に油性の薬剤のバイアルを接続することにより、油性の薬剤を水性の薬剤よりも先に乳化フィルタ117を通過させることができる。このため、意図したエマルジョンを容易に作成することができる。
【0029】
しかし、乳化フィルタ117は、第1のシリンジ接続部113と第1の流路切り換え部115との間に限らず、第1のシリンジ接続部113と第2のシリンジ接続部114との間に位置するように配置できればよい。例えば、図5に示すように、第1の流路切り換え部115の第3のポート133と第2の流路切り換え部116の第6のポート136との間に配置することもできる。
【0030】
第1のシリンジ接続部113及び第2のシリンジ接続部114には、それぞれ第1のシリンジ221及び第2のシリンジ222を接続する。第1のシリンジ221及び第2のシリンジ222は、特に限定されないがロックカラーを有するシリンジが好ましい。シリンジのロックカラーをシリンジ接続部に設けられた雄ネジと螺合させることにより、操作中にシリンジが外れたりする事態を生じにくくすることができる。油による膨張が生じにくいラミネート加工されたガスケットを有するシリンジや、ガスケットの無い2ピースシリンジを用いることもできる。このようなシリンジを用いることにより耐油性及び摺動性を向上させることができる。
【0031】
本実施形態の薬剤乳化器具100は例えば以下のようにして使用することができる。まず、図6(a)に示すように、第1のバイアル接続部111に乾燥状態の水性の薬剤が入った第1のバイアル211を接続し、第2のバイアル接続部112に油性の薬剤が入った第2のバイアル212を接続する。また、第1のシリンジ接続部113に第1の薬剤の溶解液が入った第1のシリンジ221を接続し、第2のシリンジ接続部114に第2のシリンジ222を接続する。
【0032】
次に、図6(b)に示すように、第1の流路切り換え部115を第1の接続状態として、第1のシリンジ221内の溶解液を押し出し、第1のバイアル211内に移動させ、第1の薬剤を溶解させる。なお、第1の薬剤があらかじめ溶解されている場合は、薬剤の溶解操作は不要である。
【0033】
次に、図6(c)に示すように、第1の流路切り換え部115を第1の接続状態のまま、第1のバイアル211内の溶解させた第1の薬剤を第1のシリンジ221内に移動させる。
【0034】
次に、図6(d)に示すように、第2の流路切り換え部116を第3の接続状態として、第2のバイアル212内の第2の薬剤を第2のシリンジ222内に移動させる。
【0035】
次に、図6(e)に示すように、第1の流路切り換え部115を第2の接続状態とし、第2の流路切り換え部116を第4の接続状態とし、第1のシリンジ221と第2のシリンジ222とを交互にポンピングすることにより、混合された薬剤が乳化フィルタ117を通過して移動し、乳化される。
【0036】
以上においては、第1の薬剤をワクチン製剤等の水性とし、第2の薬剤をアジュバント等の油性とし、乳化フィルタ117を疎水性とし、水性の第1の薬剤が油性の第2の薬剤よりも乳化フィルタ117を先に通過するようにして、W/Oエマルジョンを形成する例を示した。しかし、第1の薬剤を油性、第2の薬剤を水性、乳化フィルタ117を親水性とし、O/Wエマルジョンを形成することもできる。この場合、油性の薬剤を入れたバイアルを第1のバイアル接続部111に接続し、水性の薬剤を入れたバイアルを第2のバイアル接続部112に接続すればよい。また、水性の薬剤を入れたバイアルを第1のバイアル接続部111に接続し、油性の薬剤を入れたバイアルを第2のバイアル接続部112に接続し、乳化フィルタ117を第2のシリンジ接続部114と第2の流路切り換え部116との間に接続してもよい。
【0037】
本実施形態の薬剤乳化器具100は、第1のシリンジ接続部113と第1のバイアル接続部111とが第1の流路切り換え部115を挟んで一直線上に設けられ、第2のシリンジ接続部114と第2のバイアル接続部112とが第2の流路切り換え部116を挟んで一直線上に設けられている。また、第1のシリンジ接続部113と第2のシリンジ接続部114とは隣接して並行に配置され、第1のバイアル接続部111と第2のバイアル接続部112とは隣接して並行に配置されている。このため、バイアルやシリンジが横方向に大きく拡がることがなく、操作性を向上させることができる。また、対応するシリンジとバイアルとが直線的に配置されるため、バイアルからシリンジへ薬剤を移動させる操作をイメージしやすくなり、操作が容易となる。また、2本のシリンジが同じ側に配置されるので、両手でのポンピングが容易となる。
【0038】
この場合、第1の流路切り換え部115が第1のバイアル接続部111と第2の流路切り換え部116とが接続された状態となったり、第1のバイアル接続部111、第1のシリンジ接続部113及び第2の流路切り換え部116の3方が同時に接続された状態となったりする必要はない。このため、このような接続状態が生じないような制限機構を設けることができる。例えば、図2に示すような3方活栓において、第1の流路切り換え部115のプラグ部126の回転範囲を90°に制限する回転制限機構を設け、第1の接続状態及び第2の接続状態のみを選択できるようにすることができる。第2の流路切り換え部116についても同様にして、第2の流路切り換え部116は第3の接続状態及び第4の接続状態のみを選択できるようにすることができる。このようにすれば、誤った接続状態で操作してしまうようなミスの発生を抑えることができる。
【0039】
また、第1の流路切り換え部115が第1の接続状態から第2の接続状態に切り換えられた後、再び第2の接続状態に戻らないようにし、第2の流路切り換え部が第3の接続状態から第4の接続状態に切り換えられた後、再び第3の接続状態に戻らないようにする戻止等を設けることもできる。戻止を設けることにより、シリンジ側に移動させた薬剤を再びバイアル側に戻してしまうような操作ミスを防ぐことができる。また、切り替える際に使用者にクリック感が生じ、使用者に第2又は第4の接続状態に移行したことを示すこともできる。
【0040】
第1の流路切り換え部115と第2の流路切り換え部116とは、それぞれ独立して接続状態の切り換えを行うことができるが、第1の流路切り換え部115と第2の流路切り換え部116とを連動させることもできる。例えば、図2に示すような3方活栓の場合、両方のプラグ部126にギアを設けてかみ合わせることにより、2つの流路切り換え部の接続状態を連動して切り換えられるようにできる。
【0041】
但し、第1の流路切り換え部115及び第2の流路切り換え部116の接続状態の切り換えの自由度を確保して気泡抜きの操作が容易にできるようにすることもできる。例えば、図7に示すように、第1の流路切り換え部115を第2の接続状態として第1のシリンジ接続部113と第2の流路切り換え部116とを接続し、第2の流路切り換え部116を第5のポート135と第6のポート136とが接続され、第4のポート134とは接続されない第5の接続状態とする。このような接続状態とすることにより、第1のシリンジ221及び流路内の気泡を容易に除去することができる。第1の流路切り換え部115及び第2の流路切り換え部116の接続状態を逆にすることにより、第2のシリンジ222側の気泡除去を行うこともできる。気泡が混入したまま乳化操作を行うと、気泡の分だけ体積が増加してしまい、乳化した薬剤の有効成分濃度が低下してしまい正確な量の有効成分を投与できなくなるおそれがある。気泡の除去を容易に行うことができる構成とすることにより、有効成分の投与量の変動を抑えることができる。
【0042】
バイアル接続部とシリンジ接続部とは直線状に配置されていなくてもよく、図8に示す変形例の薬剤乳化器具100Aのような配置とすることもできる。薬剤乳化器具100Aは、第1のバイアル接続部111と第2の流路切り換え部116とは、第1の流路切り換え部115を挟んで一直線上に配置され、第2のバイアル接続部112と第1の流路切り換え部115とは、第2の流路切り換え部116を挟んで一直線上に配置され、第1のシリンジ接続部113と第2のシリンジ接続部114とは隣接して並行に配置されている。
【0043】
この場合、第1の流路切り換え部115は第2のポート132と第3のポート133とが一直線上に配置され、第1のポート131が第2のポート132と第3のポート133とを結ぶ直線と直交する方向に配置された構成となる。また、第2の流路切り換え部116は第5のポート135と第6のポート136とが一直線上に配置され、第4のポート134が第2のポート132と第3のポート133とを結ぶ直線と直交する方向に配置された構成となる。この場合隣接する2つのポート同士を接続できればよいため、図2に示すような3方活栓においてプラグ部126に設ける内部流路をT字状ではなくL字状にすることができる。内部流路の構造を簡略化することにより流路切り換え部におけるデッドボリュームをさらに小さくすることができる。また、プラグ部126をどのように回転させても3つのポートが同時に接続された状態となることがないので、誤操作を生じにくくすることもできる。なお、図8のような構成においても、回転制限部や戻止を設けることができる。また、図8の配置においても、流路切り換え部をT字状の流路を有する3方活栓とすることもできる。
【0044】
本実施形態の薬剤乳化器具100を用いて乳化を行う際には、第1のバイアル接続部111に第1のバイアル211を接続し、第2のバイアル接続部112に第2のバイアル212を接続することが重要である。このため、第1のバイアル接続部111及び第2のバイアル接続部112を容易に識別できるように識別表示を設けることが好ましい。識別表示は、文字表示、記号表示及び色表示等どのようなものであってもよく、複数の表示が組み合わせられていてもよい。また、識別表示は、例えばバイアル接続部に接続されるべきバイアルや内容物を表示した貼付シールとすることができる。さらに、バイアル接続部側とバイアル側の両方に表示を行うことにより、誤接続を防止することができる。例えば、バイアル接続部側とバイアルに同様のシールを貼付すれば、バイアル接続部とバイアルとの組み合わせを使用者は容易に把握でき、誤操作を生じにくくすることができる。
【0045】
識別表示は、第1のバイアル接続部111及び第2のバイアル接続部112に直接設けなくてもよい。例えば、第1のバイアル接続部111が接続された第1の流路切り換え部115及び第2のバイアル接続部112が接続された第2の流路切り換え部116の少なくとも一方に何らかの表示を設けることによっても、第1のバイアル接続部111と第2のバイアル接続部112とを識別することができる。また、添付書類等に識別のための情報を記載することもできる。また、第1のバイアル接続部111には第2のバイアル212が取り付けられず、第2のバイアル接続部112には第1のバイアル211が取り付けられないように、バイアル接続部及びバイアルの形状を設定することも可能である。
【0046】
フィルタユニット117Aを一方のシリンジ接続ポートと一方の流路切り換え部との間に設ける場合には、フィルタユニット117A自体を識別表示とすることができる。この場合、どちらのバイアル接続ポートに接続したバイアルの薬液が先に乳化フィルタを通過するかが目視によりすぐにわかるため、2つのバイアル接続ポートを区別することができる。フィルタユニット117Aのハウジングに着色したり、記号表示を設けたりしてフィルタユニット117Aを目立つようにすれば、2つのバイアル接続ポートの区別がさらに容易となる。
【0047】
また、フィルタが独立したユニットではなく流路切り換え部等の内部に組み込まれている場合には、例えば、フィルタを有する部材の外面にシールを貼付したり、フィルタを有する部材を大型化したり長さ方向に長くしたり、フィルタを有する部材に色を付けたりしてフィルタを有する部材を目立たせたり、透明として外部からフィルタを確認できるようにしたり等行い、フィルタを使用者に認識させやすくし、バイアル接続部とバイアルとの組み合わせを使用者が容易に把握できるようにしてもよい。
【0048】
さらに、薬剤乳化器具とバイアルとを1つのパッケージに入れた薬剤乳化キットとする場合には、パッケージ内における各構成部材の配置を固定することにより、誤接続を生じにくくすることもできる。例えば、図9に示すように、パッケージ301内において、第1のバイアル接続部111の先に第1のバイアル211を配置し、第2のバイアル接続部112の先に第2のバイアル212を配置する。このようにすれば、第1のバイアル211を第1のバイアル接続部111に接続し、第2のバイアル212を第2のバイアル接続部112に接続するように使用者を誘導することができる。例えばクッション材302に各構成部材の形状にくり抜かれた凹部を設けることにより、各構成部材のパッケージ301内における配置を固定することができる。図9においては、バイアル接続部の延長線上にバイアルを配置したが、第1のバイアル211を第1のバイアル接続部111の近くに配置し、第2のバイアル212を第2のバイアル接続部112の近くに配置できればよい。また、パッケージに接続されるべきものどうしを表す矢印等の表示部を設けて使用者を誘導することもできる。
【0049】
誤操作を防ぐ観点からは、第1の流路切り換え部115及び第2の流路切り換え部116の接続状態を容易に把握できるようにすることが好ましい。図3に示す第1の流路切り換え部115及び第2の流路切り換え部116においては、ハンドル128が伸びる方向には流路が設けられておらず液が流れない。このため、ハンドル128にこの方向には液が流れないことを示す表示137Aを設け、他の3方向には液が流れることを示す表示137Bを設けている。図2においては表示137Aを文字表示としたが、記号表示としたり、色表示としたりすることもできる。また、表示137Bを矢印による記号表示としたが、文字表示としたり色表示としたりすることもできる。図2においては、ハンドル128を含むプラグキャップ127に表示を設ける例を示しているが、表示は他の位置に設けることもできる。
【0050】
図10に示すような、第1の流路切り換え部115A及び第2の流路切り換え部116Aを用いることもできる。第1の流路切り換え部115A及び第2の流路切り換え部116Aは基本的に同じものであり、ここでは第1の流路切り換え部115Aについて説明する。
【0051】
第1の流路切り換え部115Aは、開口部185aを有する本体部185を有し、本体部185には第1のポート191と第3のポート193とが開口部185aを挟んで互いに反対方向に突出して設けられている。開口部185aにはプラグ部186が回転可能に挿入されている。プラグ部186は、側壁の一カ所と一方の軸端とに開口するように軸内にL字状に設けられた軸内流路181と、軸内流路181の側壁の開口から90°ずれた位置から半周に亘って設けられた溝状の周面流路182とを有している。プラグ部186の開口が設けられた軸端は、第2のポート192として機能する。なお、第1の流路切り換え部115Aはどのような向きにおいても使用できるが、以下においては第2のポート192側が下側であるとして説明する。
【0052】
プラグ部186が第1の回転位置である場合には、軸内流路181の側壁の開口が第1のポート191と重なる位置となる。このため、第1のポート191と第2のポート192とが軸内流路181により接続され、第3のポート193は第1のポート191及び第2のポート192と接続されていない、第1の接続状態となる。プラグ部186を第1の回転位置から90°回転させて第2の回転位置とすると、周面流路182の両端部がそれぞれ第1のポート191及び第3のポート193と重なる。このため、第1のポート191と第3のポート193とが周面流路182により接続され、第2のポート192は第1のポート191及び第3のポート193と接続されていない、第2の接続状態となる。
【0053】
プラグ部186の軸端に設けられた第2のポート192には、図10に示すような移注針150Aが接続されており、第2のポート192に接続された移注針150Aを回転させるとプラグ部186も回転する。また、プラグ部186が第1の回転位置である場合には移注針150Aを第2のポート192から取り外すことができず、プラグ部186が第2の回転位置である場合には移注針150Aを第2のポート192から取り外すことが可能になっている。
【0054】
第1の流路切り換え部115Aにおいて、第2のポート192はメスルアーコネクタであり、移注針150Aに設けられたオスルアーコネクタ172が挿入される。第2のポート192であるプラグ部186の先端(下端)には凹部186aが設けられ、オスルアーコネクタ172の基端(下端)には凹部186aと係合する凸部172aが設けられている。凹部186a及び凸部172aは、連結回転機構として機能し、オスルアーコネクタ172を第2のポート192に挿入した状態では、移注針150Aとプラグ部186とは一体に回転する。
【0055】
また、第2のポート192は本体部185から下方に突出する筒状のポート外筒188を有している。ポート外筒188の突出高さは、開口部185aに挿入されたプラグ部186がポート外筒188から突出しないように調整されている。ポート外筒188の外面には、それぞれが1/4周に亘って延びる2つの外周溝188aが相対する位置に設けられている。
【0056】
外周溝188aには、移注針150A側に設けられた抜け止め凸部173aが係合する。抜け止め凸部173aが外周溝188aに沿って移動することにより、移注針150Aは90°回転させることができる。外周溝188aは、周方向の一端が、ポート外筒188の下端に達し、開口している。このため、第1の回転位置において係合している抜け止め凸部173aは、90°回転させて第2の回転位置とすると外周溝188aから下方に抜き取ることができる。移注針150A側の抜け止め凸部173aは、オスルアーコネクタ172を挟んで互いに両側に起立する2つの係合壁173の先端部に設けられている。
【0057】
外周溝188aは、ポート外筒188の上部から下端に向かって斜めに形成されている。このため、第1の回転位置から移注針150Aを回転させると、抜け止め凸部173aは外周溝188aに沿って下方に移動し、第2の回転位置において移注針150Aを第2のポート192から容易に取り外すことができる。
【0058】
移注針150Aとプラグ部186とが一体に回転する機構及び移注針150Aが第1の位置においては第2のポート192から取り外せず、第2の位置において第2のポート192から取り外せるようにする機構は、このような機構に限らずどのようなものであってもよい。
【0059】
図10においては、第1の接続状態から第2の接続状態に切り換えるために回転させる方向を示す表示197が本体部185の上面に設けられている。図10において、表示197を矢印による記号表示としたが、文字表示や色表示とすることもできる。また、表示箇所も本体部185に限られず、例えばプラグ部186の上端面に設けることもできる。
【0060】
第2の流路切り換え部116Aは、第1の流路切り換え部115Aと基本的に同一のものであり、第4のポート194と第5のポート195とを接続し、第6のポート196は接続しない第3の接続状態と、第4のポート194と第6のポート196とを接続し、第5のポート195は接続しない第4の接続状態とを切り換える。第1の流路切り換え部115Aの第3のポート193と第2の流路切り換え部116Aの第6のポート196とは、中継コネクタ198を介して接続されている。但し、第3のポート193と第6のポート196との接続方法はこのような方法に限られない。また、接着又は溶着等により第3のポート193と第6のポート196とが分離しないように接続することともできる。
【0061】
変形例に係る薬剤乳化器具100Bにおいては、図12に示すようにバイアルからシリンジに薬剤を移動させた後で、第1の流路切り換え部115Aを第1の接続状態から第2の接続状態に切り換え、第2の流路切り換え部116Aを第3の接続状態から第4の接続状態に切り換えると、バイアルを薬剤乳化器具100Bから取り外すことができる。このため、ポンピング操作の際の操作性が向上する。また、バイアルの有無によってポンピング操作をする接続状態になっているかどうかが直感的にわかるので、接続状態を切り換えずにポンピング操作をしてしまうような誤操作を生じにくくすることができる。
【0062】
また、第1の流路切り換え部115A及び第2の流路切り換え部116Aから移注針150Aを取り外すと、通常の方法ではプラグ部186を回転させることができなくなる。このため、接続状態を切り換えると、通常の方法では再び元に戻すことができない。これにより、誤操作を生じにくくすることができる。
【0063】
変形例に係る薬剤乳化器具100Bにおいては、乳化フィルタを組み込んだフィルタユニット117Aを第1の流路切り換え部115Aの第1のポート191と第1のシリンジ221との間に接続する例を示した。第1の流路切り換え部115Aの第3のポート193と第2の流路切り換え部116Aの第6のポート196との間に、乳化フィルタを配置してもよい。この場合、フィルタユニット117Aを連結コネクタとすることができる。また、乳化フィルタは、独立したフィルタユニットとして接続するのではなく、第1の流路切り換え部115Aのハウジング内に組み込むこともできる。
【0064】
変形例の薬剤乳化器具100Bにおいても、第1のバイアル接続部111に第1のバイアル211の接続を促し、第2のバイアル接続部112に第2のバイアル212の接続を促すように、各構成要素を配置してパッケージ化することができる。また、第1のバイアル接続部111と第2のバイアル接続部112との識別を容易にするための表示等を設けることもできる。
【0065】
本実施形態及び各変形例において、種々の構成部材同士を接続するコネクタは、ルアーテーパを有するルアーコネクタとすることができるが、ルアーコネクタに限らずどのようなものであってもよい。また、各構成部材同士は、コネクタを介して接続されていなくてもよい。但し、デッドボリュームを小さくする観点からは、各構成部材同士の間にチューブ等の他の部材が介在しないように接続することが好ましい。シリンジ接続部に接続されるシリンジはロックカラーを有することが好ましい。実施形態の一例として、シリンジ接続部が並列して配置されている形態や直列して配置されている形態を示したが、これに限るものではなき、例えば、各シリンジ接続部の延在方向が公差する角度が45度となるようにシリンジ接続部を構成してもよい。
【0066】
図面は概略図であり、寸法等適宜変更してもよい。例えば、内部流路に薬剤が残留しにくいようにするため流路切り換え部の内部に傾斜を付けたりすることもできる。また、内部流路に薬剤が残留したとしても微量となるように、内部流路のサイズを小さくしてもよく、特に活栓の流路分の薬剤は、最終的にシリンジに回収できないため、活栓の流路の体積は最小限であることが好ましい。このようにすることで、内部流路に滞留する分を見越して多めに薬剤を用意する必要がなくなり、余計なコストを抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示の薬剤乳化器具は、シリンジの付け換え操作をすることなく、バイアルに入れられた薬剤の乳化を行うことができ、医療分野等において有用である。
【符号の説明】
【0068】
100 薬剤乳化器具
100A 薬剤乳化器具
100B 薬剤乳化器具
111 第1のバイアル接続部
112 第2のバイアル接続部
113 第1のシリンジ接続部
114 第2のシリンジ接続部
115 第1の流路切り換え部
115A 第1の流路切り換え部
116 第2の流路切り換え部
116A 第2の流路切り換え部
117 乳化フィルタ
117A フィルタユニット
123 流路
125 本体部
126 プラグ部
127 プラグキャップ
128 ハンドル
131 第1のポート
132 第2のポート
133 第3のポート
134 第4のポート
135 第5のポート
136 第6のポート
137A 表示
137B 表示
138 雄ネジ
139 ロックカラー
150 移注針
150A 移注針
151 針
152 メスコネクタ
153 カバー
155 第1の開口部
156 第2の開口部
158 雄ネジ
161 通液路
162 通気路
163 通気フィルタ
164 舌片状部
165 段差部
172 オスコネクタ
172a 凸部
173 係合壁
173a 抜け止め凸部
181 軸内流路
182 周面流路
185 本体部
185a 開口部
186 プラグ部
186a 凹部
188 ポート外筒
188a 外周溝
191 第1のポート
192 第2のポート
193 第3のポート
194 第4のポート
195 第5のポート
196 第6のポート
197 表示
198 中継コネクタ
211 第1のバイアル
212 第2のバイアル
214 栓体
221 第1のシリンジ
222 第2のシリンジ
301 パッケージ
302 クッション材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12