(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】配線固定具及び配線固定方法
(51)【国際特許分類】
E04B 9/00 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
E04B9/00 G
E04B9/00 H
(21)【出願番号】P 2020193273
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 幸宏
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-107014(JP,A)
【文献】特開2008-150890(JP,A)
【文献】特開2013-060801(JP,A)
【文献】特開平11-275746(JP,A)
【文献】特開2020-021723(JP,A)
【文献】特開2012-122270(JP,A)
【文献】特開平11-196525(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0069529(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00- 9/36
H02G 3/00- 3/04
H02G 3/22- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吊り部材を介して建物躯体の上部構造に互いに間隔を開けて設置された複数の野縁受けと、前記複数の野縁受けに固定された複数の野縁と、前記複数の野縁の下面に取り付けられた天井ボードと、を有する吊り天井構造の天井裏において、前記天井ボードに設置する電気機器のための1又は複数本の配線の末端部を、前記天井ボードの取り付け前に固定するための配線固定具であって、
前記複数の野縁受けのうち、前記電気機器の設置予定位置を挟んだ一対の野縁受けの間を掛け渡すように巻き回された呼び線と、
前記呼び線に前記末端部を固定するための固定構造と、を備え、
前記呼び線は、前記設置予定位置の直上を通るように巻き回され、
前記固定構造は、前記末端部を前記設置予定位置の直上となるように固定する
ことを特徴とする配線固定具。
【請求項2】
前記一対の野縁受けは、前記設置予定位置を挟んだ両側に位置する直近の野縁受けであることを特徴とする請求項1に記載の配線固定具。
【請求項3】
前記呼び線は、前記一対の野縁受けに対して直交する向きに巻き回されるように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線固定具。
【請求項4】
前記固定構造は、前記末端部を束ねる結束部材を含み、前記結束部材によって結束された部位を前記呼び線に引っ掛けて固定するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の配線固定具。
【請求項5】
前記固定構造は、前記末端部に固定されたコネクタ部材を含み、前記コネクタ部材と前記配線によって形成される閉ループに前記呼び線を通して固定するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の配線固定具。
【請求項6】
吊り部材を介して建物躯体の上部構造に互いに間隔を開けて設置された複数の野縁受けと、前記複数の野縁受けに固定された複数の野縁と、前記複数の野縁の下面に取り付けられた天井ボードと、を有する吊り天井構造の天井裏において、前記天井ボードに設置する電気機器のための1又は複数本の配線の末端部を、前記天井ボードの取り付け前に固定するための配線固定方法であって、
前記電気機器の設置予定位置を特定する特定工程と、
前記複数の野縁受けのうちの前記設置予定位置を挟んだ一対の野縁受けの間に呼び線を巻き回す巻き回し工程と、
固定構造を用いて前記末端部を前記呼び線に固定する固定工程と、を備え、
前記巻き回し工程は、前記呼び線が前記設置予定位置の直上を通るように巻き回され、
前記固定工程は、前記末端部が前記設置予定位置の直上となるように固定される
ことを特徴とする配線固定方法。
【請求項7】
前記巻き回し工程は、前記設置予定位置を挟んだ両側に位置する直近の野縁受けに前記呼び線が巻き回されるように構成されることを特徴とする請求項6に記載の配線固定方法。
【請求項8】
前記巻き回し工程は、前記一対の野縁受けに対して直交する向きに前記呼び線を巻き回されるように構成されることを特徴とする請求項6又は7に記載の配線固定方法。
【請求項9】
前記固定構造は、前記末端部を束ねる結束部材を含み、
前記固定工程は、前記結束部材によって結束された部位を前記呼び線に引っ掛けて固定するように構成されることを特徴とする請求項6から請求項8の何れか1項に記載の配線固定方法。
【請求項10】
前記固定構造は、前記末端部に固定されたコネクタ部材を含み、
前記固定工程は、前記コネクタ部材と前記配線によって形成される閉ループに前記呼び線を通して固定するように構成されていることを特徴とする請求項6から請求項8の何れか1項に記載の配線固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線固定具及び配線固定方法に係り、特に吊り天井構造の天井裏における配線固定具及び配線固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般事務所ビル、商業施設、病院などの居室や、工場などでも天井を敷設する建物において、電気設備の照明器具であるダウンライト、非常照明、防災設備である自動火災報知設備の熱感知器や煙感知器など小さな外形の設備機器を、天井下から見えがかるように設置することが多い。従来工法であるがその汎用性から、軽量鉄骨天井下地として天井板である石膏ボードの下地に野縁、それに直交する形で野縁受けを組み、野縁受けハンガーにて上階スラブ下から吊った吊りボルトで天井下地とする天井が一般的である。この天井の場合、建築工事として下地だけを先に吊って敷設した後に、設備工事として電気ケーブルや通信ケーブルなどを敷設する。その後の工程で石膏ボード天井板を建築工事側で施工し、一旦天井板ですべて天井を塞ぐ。その後、設備工事にて天井板の所定位置を開口し、天井下地施工時に敷設した天井内の電気ケーブルや通信ケーブルと天井下に見えがかりで設置される設備機器を、天井下から結線しながら取り付ける。
【0003】
特許文献1には、天井裏に配置されたケーブルの位置を室内側から特定するための被探知具に関する技術が開示されている。この技術の被探知具は、野縁に形成された配線穴に天井裏から挿入されて仮固定される仮固定部と、仮固定部に対して先端側に配置され、磁石を保持する保持部と、仮固定部に対して後端側に配置されケーブルが取り付けられる取り付け部とを備えている。検知具は、配線穴に仮固定された状態から室内に引っ張られた場合に、配線穴を通過可能に構成されている。このような構成によれば、磁石によって室内側からは配線穴の位置を特定することができる。さらに、配線穴に仮固定された被探知具が室内側に引き出されることにより、ケーブルを配線穴に通すことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、配線穴を野縁に設けることを前提としている。しかしながら、天井に設けられる電気機器(設備機器)は、必ずしも野縁の位置に取り付けされるとは限らない。また、電気機器が埋め込み型の照明機器である場合等には、取り付け位置と重なっている野縁を切断して、取り付けスペースを確保することもある。この場合、野縁の幅寸法よりも大きな外形の設備機器であると、配線穴が野縁に設置できなくなる。また、天井板に密着する野縁に配線穴を開設すると、配線穴と天井板開口とが厳密に一致する必要もあり、野縁に別な部材で配線を抱かせて仮固定することも不可能である。このように、特許文献1の技術は、天井裏における野縁の配置に制約されることなく、電気機器の任意の設置予定位置において天井裏に配線の末端部を固定することに対して課題がある。
【0006】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたもので、天井に設置される電気機器の配線を、天井裏において設置予定位置の近くに固定しておくことが可能な配線固定具及び配線固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、第1の開示は、複数の吊り部材を介して建物躯体の上部構造に互いに間隔を開けて設置された複数の野縁受けと、複数の野縁受けに固定された複数の野縁と、複数の野縁の下面に取り付けられた天井ボードと、を有する吊り天井構造の天井裏において、天井ボードに設置する電気機器のための1又は複数本の配線の末端部を、天井ボードの取り付け前に固定するための配線固定具に適用される。配線固定具は、複数の野縁受けのうち、電気機器の設置予定位置を挟んだ一対の野縁受けの間を掛け渡すように巻き回された呼び線と、呼び線に末端部を固定するための固定構造と、を備える。そして、呼び線は、設置予定位置の直上を通るように巻き回され、固定構造は、末端部を設置予定位置の直上となるように固定するように構成される。
【0008】
第2の開示は、第1の開示において、更に以下の特徴を有している。
一対の野縁受けは、設置予定位置を挟んだ両側に位置する直近の野縁受けである。
【0009】
第3の開示は、第1又は第2の開示において、更に以下の特徴を有している。
呼び線は、一対の野縁受けに対して直交する向きに巻き回されるように構成される。
【0010】
第4の開示は、第1から第3の開示の何れか1つの開示において、更に以下の特徴を有している。
固定構造は、末端部を束ねる結束部材を含み、結束部材によって結束された部位を呼び線に引っ掛けて固定するように構成されている。
【0011】
第5の開示は、第1から第3の開示の何れか1つの開示において、更に以下の特徴を有している。
固定構造は、末端部に固定されたコネクタ部材を含み、コネクタ部材と配線によって形成される閉ループに呼び線を通して固定するように構成されている。
【0012】
また、上記の課題を解決するため、第6の開示は、吊り部材を介して建物躯体の上部構造に互いに間隔を開けて設置された複数の野縁受けと、複数の野縁受けに固定された複数の野縁と、複数の野縁の下面に取り付けられた天井ボードと、を有する吊り天井構造の天井裏において、天井ボードに設置する電気機器のための1又は複数本の配線の末端部を、天井ボードの取り付け前に固定するための配線固定方法に適用される。配線固定方法は、電気機器の設置予定位置を特定する特定工程と、複数の野縁受けのうちの設置予定位置を挟んだ一対の野縁受けの間に呼び線を巻き回す巻き回し工程と、固定構造を用いて末端部を呼び線に固定する固定工程と、を備える。巻き回し工程は、呼び線が設置予定位置の直上を通るように巻き回される。また、固定工程は、末端部が設置予定位置の直上となるように固定される。
【0013】
第7の開示は、第6の開示において、更に以下の特徴を有している。
巻き回し工程は、設置予定位置を挟んだ両側に位置する直近の野縁受けに呼び線が巻き回されるように構成される。
【0014】
第8の開示は、第6又は第7の開示において、更に以下の特徴を有している。
巻き回し工程は、一対の野縁受けに対して直交する向きに呼び線を巻き回されるように構成される。
【0015】
第9の開示は、第6から第8の何れか1つの開示において、更に以下の特徴を有している。
固定構造は、末端部を束ねる結束部材を含む。固定工程は、結束部材によって結束された部位を呼び線に引っ掛けて固定するように構成される。
【0016】
第9の開示は、第6から第8の何れか1つの開示において、更に以下の特徴を有している。
固定構造は、末端部に固定されたコネクタ部材を含む。固定工程は、コネクタ部材と配線によって形成される閉ループに呼び線を通して固定するように構成される。
【発明の効果】
【0017】
本開示の配線固定具及び配線固定方法によれば、天井ボードの取り付け前の吊り天井構造の天井裏において、天井ボードに設置する電気機器の配線の末端部が、当該電気機器の設置予定位置の直上に位置するように固定される。このため、本開示によれば、天井ボードの取り付け後に電気機器の配線の末端部を設置予定位置に開けた開口から容易に引き出すことができる。また、配線固定具の呼び線は、野縁受けに巻き回されている。このため、本開示の配線固定具の構造によれば、野縁の配置に影響されることなく、天井ボードの任意の設置予定位置において、電気機器の配線の末端部を設置予定位置の直上に固定することが可能となる。なお、2011年の東日本大震災以降に普及したLED照明に代表されるように、天井下の見えがかり設備機器は小型化している。例えばダウンライトが白熱灯であり、その器具外径が150mm程度ある場合、天井ボードに後から開設した孔の天井下から作業者の手を天井裏へ差し入れて仮固定したケーブルを探ることができた。しかし、近年の小型化したLEDダウンライト器具では、例えば天井ボード開口が60mm程度となり手を差し入れることが不能となるので、電気機器の配線の末端部を設置予定位置の直上に固定することは非常に重要である。
【0018】
特に、第2及び第7の開示によれば、呼び線は、設置予定位置を挟んだ両側に位置する直近の野縁受けに巻き回される。これにより、巻き回された呼び線のたるみや位置ずれを抑制することが可能となる。
【0019】
また、第3及び第8の開示によれば、呼び線は、一対の野縁受けに対して直交する向きに巻き回される。このような巻き回し構造によれば、呼び線の位置ずれによってたるみが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態に係る配線固定具が適用される吊り天井構造の概略を示す図である。
【
図2】照明機器の設置位置において吊り天井構造を野縁受けに垂直な鉛直面で切断した断面の模式図である。
【
図3】天井ボードへ電気機器を設置する際の課題について説明するための図である。
【
図4】天井裏に設置された配線固定具の構成を説明するための斜視図である。
【
図5】天井裏に設置された配線固定具の構成を鉛直下方から見た図である。
【
図6】天井ボードが取り付けられた後の開口の周辺を水平方向から見た断面図である。
【
図7】配線固定具を用いた配線固定方法における特定工程を説明するための図である。
【
図8】配線固定具を用いた配線固定方法における巻き回し工程を説明するための図である。
【
図9】配線固定具を用いた配線固定方法における固定工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この開示が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この開示に必ずしも必須のものではない。
【0022】
実施の形態.
1.軽量鉄骨天井の概略構造
図1は、実施の形態に係る配線固定具が適用される吊り天井構造の概略を示す図である。この吊り天井構造100は、例えば鉄骨造の建物における軽量鉄骨天井の構造である。なお、
図1では、室内側から見た吊り天井構造100の一部を抜粋して図示している。吊り天井構造100は、吊りボルト8、ハンガー10、野縁受け12、野縁14、及び天井ボードを備えている。
【0023】
吊りボルト8は、建物躯体の上部構造(上部スラブ)Hから吊り下げられる。吊りボルト8は、例えば上部構造Hに設けられたインサートに取り付けられている。
図1に示す例では、4本の吊りボルト8が図示されている。
【0024】
各吊りボルト8の下端には、それぞれハンガー10が取り付けられている。ハンガー10は、野縁受け12を支持する。つまり、吊りボルト8及びハンガー10は、野縁受け12を上部構造Hから吊るすための吊り部材として機能する。
【0025】
野縁受け12は、野縁14を支持するためのものである。野縁受け12は、互いに平行となるように、所定の間隔を開けて複数本設置される。
図1では2本の野縁受け12を図示している。
【0026】
野縁14は、天井ボード16を支持するためのものである。野縁受け12には、複数本の野縁14が、図示しないクリップ材を用いて取り付けられている。複数本の野縁14は、野縁受け12の長手方向に対して直交する向きで、互いに間隔を開けて平行に設置されている。
図1では、4本の野縁14を図示している。
【0027】
天井ボード16は、室内側の空間の天井面を構成するものである。天井ボード16は、例えば石膏ボードである。天井ボード16は、吊り天井構造100の全体を覆うように、複数の野縁14の下面側に取り付けられる。
図1では、吊り天井構造100に取り付けられた天井ボード16の一部を模式的に図示している。以下の説明では、天井ボード16によって仕切られた上方の空間を「天井裏A1」と表記し、下方の空間を「室内空間A2」と表記する。
【0028】
天井ボード16には、照明機器や火災報知機等の電気機器が設置される。
図1には、その一例として、天井ボード16に設置されている埋め込み型の照明機器18を示している。
図2は、照明機器の設置位置において吊り天井構造を野縁受けに垂直な鉛直面で切断した断面の模式図である。この図に示すように、照明機器18の設置位置には、天井ボード16に開口161が設けられている。開口161は、照明機器18を埋め込み固定するためのものである。吊り天井構造100の天井裏A1には、照明機器18のための配線W1が設置位置の近くまで引き回されている。照明機器18を設置する電気工事を行う場合、作業者は、設置予定位置に開口161を開ける。そして、作業者は、当該開口161から配線W1を引き出して照明機器18へと接続した後、照明機器18を開口161に設置する。
【0029】
2.実施の形態に係る配線固定具の特徴
天井ボード16へ電気機器を設置する場合、以下の課題が生じる可能性がある。
図3は、天井ボードへ電気機器を設置する際の課題について説明するための図である。天井ボード16へ設置する電気機器の中には、天井ボード16の開口161の口径が比較的小さいものがある。例えば、LEDダウンライトや熱感知器には、開口161の口径が60Φ程度のものがある。このような小径の開口161の場合、作業者が開口161から手を挿し入れて配線W1を引き出すことができないことが考えられる。このような場合、例えば作業者が天井裏A1に進入して配線W1を開口161へ通す等の追加の作業が必要となる。元来、軽天と呼ばれる軽量鉄骨天井下地である天井では、天井に人が乗ることを想定した十分な強度を有していない場合があり、作業に困難が伴うおそれがある。そして、天井下での設備器具設置作業者とは別の作業者が必要となり、人工が増大して施工原価を押し上げるという不具合がある。
【0030】
そこで、本出願の発明者は、天井裏A1において配線W1の末端部を開口161の近くに仮固定しておくための配線固定具を考案した。
図4は、天井裏に設置された配線固定具の構成を説明するための斜視図である。また、
図5は、天井裏に設置された配線固定具の構成を鉛直下方から見た図である。なお、配線固定具20は、天井ボード16の取り付け前に取り付けられる。配線固定具20は、呼び線22と、固定構造24と、を備えている。
【0031】
呼び線22は、一対の野縁受け12の間を掛け渡すように巻き回された番線である。呼び線22は、電気機器の設置予定位置162の水平方向座標と重なるように(つまり設置予定位置162の直上を通るように)巻き回される。ここでは、設置予定位置162を挟んだ両側の直近の一対の野縁受け12の間を、野縁14と平行になる方向(つまり、野縁受け12に対して直交する方向)に巻き回されている。
【0032】
固定構造24は、呼び線22に配線W1の末端部を仮固定するためのものである。固定構造24は、例えば、複数の配線W1の末端部を束ねる結束部材である。このような結束部材は、絶縁テープや結束バンドが例示される。固定構造24は、電気機器の設置予定位置162の直上の位置で、配線W1の末端部を呼び線22に固定する。ここでは、例えば、固定構造24によって結束された部位を呼び線22に挟むことによって仮固定する。
【0033】
固定構造24は、例えば、配線W1の末端部に取り付けられるコネクタ部材でもよい。この場合、実際に結線される配線W1は渡り配線でも2本以上あり、例えばコネクタ部材がワゴと呼ばれる差込コネクタであれば、シースから表面材を削除して剥いたあと末端で2本となった配線W1とコネクタ部材の間に形成される閉ループに呼び線22を通すことで配線W1の末端部を呼び線22に仮固定する構成でもよい。
【0034】
天井下に見えがかる電気機器の設置は、天井ボード16が取り付けられた後に行われる。
図6は、天井ボードが取り付けられた後の開口の周辺を水平方向から見た断面図である。この図に示すように、上述した配線固定具20によれば、設置予定位置162の直上に配線W1の末端部が固定されている。このため、作業者は、開口161を開けて配線W1を室内空間A2へと容易に引き出すことが可能となる。
【0035】
また、本実施の形態の配線固定具20によれば、呼び線22が一対の野縁受け12の間を掛け渡すように巻き回される。
図5に例示したように、野縁14は、設置予定位置162の重なる場合に切断される可能性がある。これに対して、野縁受け12は、野縁14及び天井ボード16を支持する構造部材であるため、設置予定位置162の重なることを理由に切断されることはない。このため、本実施の形態の配線固定具20によれば、呼び線22を確実に設置することができるので、配線W1の末端部を設置予定位置162の直上に安定して仮固定することが可能となる。
【0036】
3.配線固定具を用いた配線固定方法
次に、配線固定具20を用いた配線固定方法について説明する。配線固定方法による配線W1の末端部の仮固定は、天井ボード16の取り付け前の段階で行われる。配線固定方法では、特定工程と、巻き回し工程と、固定工程と、が順に行われる。
【0037】
図7は、配線固定具を用いた配線固定方法における特定工程を説明するための図である。特定工程では、電気機器の設置予定位置162を特定する。ここでは、室内空間A2において、天井下地である野縁受け12を吊り、野縁12をクリップ等で野縁受け14に固定して設置したところの天井ボード16を貼る前に、電気機器の設置予定位置の地墨を出して水平座標系の位置P1を特定する。そして、特定された位置P1から鉛直上方に向かって墨出しレーザなどを用いて軽天下地へ墨出しを行うことによって設置予定位置162を特定する。
【0038】
図8は、配線固定具を用いた配線固定方法における巻き回し工程を説明するための図である。次の巻き回し工程では、複数の野縁受け12のうちの設置予定位置162を挟んだ一対の野縁受け12の間に、配線固定具20の呼び線22を巻き回す。この際、呼び線22は、巻き回された設置予定位置162の直上を横切るように(つまり呼び線22の水平方向位置が設置予定位置162と重なるように)巻き回される。なお、呼び線22のたるみや緩みを抑制する観点からは、設置予定位置162の両側の直近の野縁受け12に巻き回すことが好ましい。また、巻き回す向きについても、野縁受け12の長手方向に対して直交する向きにすることで、呼び線22の位置ずれによるたるみや緩みを抑制することができる。
【0039】
図9は、配線固定具を用いた配線固定方法における固定工程を説明するための図である。次の固定工程では、固定構造24を用いて配線W1の末端部を呼び線22に固定する。この際、配線W1の末端部が設置予定位置162の直上となる位置で固定する。固定構造24に限定はない。例えば、固定構造24として結束部材を用いる場合、先ず複数の配線W1の末端部を結束部材で束ねる。そして、結束部材によって形成される複数の配線W1の末端部の束の根本部を呼び線22に引っ掛ける。
【0040】
このような配線固定具20を用いた配線固定方法によれば、天井ボード16を取り付ける前において、設置予定位置162の直上に配線W1の末端部を仮固定することが可能となる。これにより、作業者は、天井ボード16を取り付けた後に、開口161を開けて配線W1を室内空間A2へと容易に引き出すことが可能となる。
【0041】
4.変形例
本実施の形態の吊り天井構造に適用される配線固定具は、以下のように変形した態様を採用してもよい。
【0042】
配線固定具20における呼び線22の巻き回し構造は、上記のものに限られない。すなわち、呼び線22の巻き回し構造は、少なくとも設置予定位置162を挟んで向かい合う一対の野縁受け12に巻き回されていれば、その巻き回し方法及び構造に限定はない。
【0043】
配線固定具20における固定構造24は、上記のものに限られない。すなわち、固定構造24は、少なくとも配線W1の末端部を設置予定位置162の直上に固定できるのであれば、その固定方法及び構造に限定はない。
【符号の説明】
【0044】
8 吊りボルト
10 ハンガー
12 野縁受け
14 野縁
16 天井ボード
18 照明機器
20 配線固定具
22 呼び線
24 固定構造
100 吊り天井構造
161 開口
162 設置予定位置