IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両外装品の取付部における止水構造 図1
  • 特許-車両外装品の取付部における止水構造 図2
  • 特許-車両外装品の取付部における止水構造 図3
  • 特許-車両外装品の取付部における止水構造 図4
  • 特許-車両外装品の取付部における止水構造 図5
  • 特許-車両外装品の取付部における止水構造 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】車両外装品の取付部における止水構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240423BHJP
   B60R 19/24 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B62D25/08 L
B60R19/24 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020196543
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085062
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久間 陽一
(72)【発明者】
【氏名】三崎 利次
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-081775(JP,A)
【文献】実開平05-035551(JP,U)
【文献】特開2008-296557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B60R 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側壁を構成する第1パネルと第2パネルのそれぞれの一側端部に形成される各パネルのフランジ部が重ね合わされるフランジ接合部に、車両外装品の取付孔を有する車両外装品の取付部における止水構造であって、
前記フランジ接合部の前記第1パネルと前記第2パネルとの間に前記取付孔の周囲を囲うように塗布されるシーラと、
前記取付孔の平面視において前記取付孔と前記シーラとの間に、前記第1パネルと前記第2パネルの何れか一方から他方に向かって突出して前記取付孔の周囲に形成される止水ビードと、
を備えることを特徴とする車両外装品の取付部における止水構造。
【請求項2】
前記止水ビードは、前記フランジ部同士を重ね合わせたときに、前記止水ビードの頂部と相手側のパネルとが当接して、前記止水ビードの前記取付孔側及び反対側において、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に隙間が形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両外装品の取付部における止水構造。
【請求項3】
前記止水ビードは、前記フランジ部の開放端側を除いて前記取付孔の周囲に円弧状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両外装品の取付部における止水構造。
【請求項4】
前記車両外装品は、リヤバンパーであり、前記リヤバンパーの両側から車体前方にそれぞれ延びる前端部は、該前端部と車体の後側壁との間に設けられるバンパーブラケットを介して後側壁に取り付けられ、前記取付孔は、前記バンパーブラケットを後側壁に取り付けるクリップが挿入される貫通孔であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両外装品の取付部における止水構造。
【請求項5】
前記取付孔が形成される前記各パネルの前記フランジ部は、車体のリヤホイールハウスを構成する部位に設けられることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の車両外装品の取付部における止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両外装品、例えば、バンパーの車体への取付部における止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用バンパーの車体への固定構造として、例えば、特許文献1には、車体の両側壁に取り付けられるバンパー固定具(特許文献1の符号10)にリヤバンパーを係止して、このバンパー固定具を介してリヤバンパーを車体に取り付ける構造が示されている。バンパー固定具の車体への取り付けは、バンパー固定具に形成されたクリップが車体側に形成された取付孔に挿入されることで取り付けられる。そして、このクリップが挿入される車体側の取付孔の周囲に、パッキングPが設けられる構造が示されている(特許文献1の図6等)。
【0003】
一方、車体構造として、インナーパネル部材とアウターパネル部材とのフランジ部を重ね合わせて接合して閉断面構造とすることが多く採用されている。そして、合わせ面から車室内側へ雨水等が侵入しないように、合わせ面にシーラを塗布してシールする構造が採用されている。
【0004】
例えば、特許文献2には、フランジ部を重ね合わせてスポット溶接で接合される第1パネル部材および第2パネル部材のうち、スポットの打点を避けた一方のパネル部材のフランジ部の基部内面に、該フランジ部に沿って連続して延びる段差部を形成し、この段差部内にフランジ部間をシールするスポットシーラを塗布する構造が示されている。スポット溶接の打点をかわした地点でシールを行うようにして、スポット溶接の熱でスポットシーラが溶けないようにしたことが示されている(特許文献2の要約等)。
【0005】
また、特許文献3には、ボディパネルの端部とホイールハウスパネルの端部とが重ね合わされて接合される部分において、ホイールハウスパネルの端縁に対してボディパネルの端縁が突出するように重ねられている部分では、ボディパネルの裏側からシーラが塗布され、ボディパネルの端縁に対してホイールハウスパネルの端縁が突出するように重ねられている部分では、ボディパネルの表側からシーラが塗布され、シーラが裏側から塗布されている部位と表側から塗布されている部位との境界位置に、ホイールハウスパネルとボディパネル間に表側と裏側とに連通した状態でシーラが溜まる空間が形成される構造が示されている。空間を介して裏側から塗布されたシーラと表側から塗布されたシーラとが、連続するようになり、シール性の低下が防止されることが示されている(特許文献3の要約等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-125977号公報
【文献】特開2004-203132号公報
【文献】特開2013-169939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1~3の何れにおいても、車両外装品としてのバンパー等を車体に取り付けるためのクリップが挿入される取付孔が、インナーパネル部材とアウターパネル部材とを重ね合わされて接合されるフランジ部分に形成される構造については示されていない。
【0008】
しかも、この取付孔から、車室内側へと雨水等が侵入しないようにするために、インナーパネル部材とアウターパネル部材との間に止水のためにシーラを塗布すること、及びこのシーラが車両外装品の取付孔から漏れ出ることを防止することは示されていない。
【0009】
一方、車体の溶組時においてインナーパネル部材とアウターパネル部材との間には、雨水等の侵入を防ぐため溶組シーラが塗布される。塗装工程で焼き付けが行われる前には、流動性が大きいため、溶組された車体が前後左右方向に荷重を受けた場合、重ね合わせ面に微少のズレや隙間が生じ、重ね合わせのフランジ部に形成された外装品の取付孔から、この溶組シーラがはみ出す虞れがあり、それによってシーラによる重ね合わせ面間のシール性能が悪化する問題がある。
【0010】
そこで、上記課題に鑑み、本発明の少なくとも一つの実施形態は、インナーパネルとアウターパネルとの間に塗布されるシーラが、両パネルの合わせ面に形成される車両外装品の取付孔からはみ出して、合わせ面間のシール性が低下しないようにする車両外装品の取付部における止水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)前述した目的を達成するために発明されたものであり、本発明の少なくとも一つの実施形態は、車体の側壁を構成する第1パネルと第2パネルのそれぞれの一側端部に形成される各パネルのフランジ部が重ね合わされるフランジ接合部に、車両外装品の取付孔を有する車両外装品の取付部における止水構造であって、前記フランジ接合部の前記第1パネルと前記第2パネルとの間に前記取付孔の周囲を囲うように塗布されるシーラと、前記取付孔の平面視において前記取付孔と前記シーラとの間に、前記第1パネルと前記第2パネルの何れか一方から他方に向かって突出して前記取付孔の周囲に形成される止水ビードと、を備えることを特徴とする。
【0012】
このような構成(1)によれば、止水ビードによってシーラが取付孔からはみだして漏れ出ることを防止できる。その結果、取付孔から車室内側へと雨水等が侵入しないように塗布されるシーラによるシール性が確保される。
【0013】
特に、車体の溶組時においてインナーパネルとアウターパネルとの間に塗布されて、雨水等の侵入を防ぐ溶組シーラは、溶接工程で塗布された後、塗装工程で焼き付けが行われる前には流動性が大きいため、溶組された車体が前後左右方向に荷重を受けた場合、重ね合わせ面に微少のズレや隙間が生じ、フランジ接合部に形成された外装品の取付孔からはみ出す恐れがある。しかし、前述の止水ビートによって、このようなシーラの漏れの不具合が抑制される。
【0014】
(2)幾つかの実施形態では、前記止水ビードは、前記フランジ部同士を重ね合わせたときに、前記止水ビードの頂部と相手側のパネルとが当接して、前記止水ビードの前記取付孔側及び反対側において、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に隙間が形成される。
【0015】
このような構成(2)によれば、止水ビードの頂部と相手側のパネルとが当接することによって、重ね合わせのフランジ部が互いに面接触から線接触になるように接触部の面積が小さくなることで、接触部の面圧が増大するのでシーラの取付孔への流動が防止される。さらに、取付孔からシーラの塗布側への雨水等の侵入が防止される。
【0016】
さらに、止水ビードの前記取付孔側及び反対側において、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に隙間が形成されることによってシール性が確保される。すなわち、止水ビードの取付孔側においては隙間が形成されることによって、取付孔から侵入した雨水等がフランジ部の開放端側から外部に排出されやすくなる。
【0017】
また、止水ビードの前記取付孔側とは反対側のフランジ部においては、隙間が形成されることによって、シーラが溜められるシール隙間が確保されるのでシール性が確保される。つまり、車体の溶組時に、第1パネルと第2パネルとの重ね合わせによってシール隙間が潰されてシーラが溜められなくなること防止できる。
【0018】
(3)幾つかの実施形態では、前記止水ビードは、前記フランジ部の開放端側を除いて前記取付孔の周囲に円弧状に形成される。
【0019】
このような構成(3)によれば、止水ビードをフランジ部の開放端側を除いて取付孔の周囲に円弧状に形成されるので、止水ビードによってシーラが取付孔から漏れ出ることを効果的に抑えることができる。
【0020】
(4)幾つかの実施形態では、前記車両外装品は、リヤバンパーであり、前記リヤバンパーの両側から車体前方にそれぞれ延びる前端部は、該前端部と車体の後側壁との間に設けられるバンパーブラケットを介して後側壁に取り付けられ、前記取付孔は、前記バンパーブラケットを後側壁に取り付けるクリップが挿入される貫通孔である。
【0021】
このような構成(4)によれば、リヤバンパーの前端部は、バンパーブラケットを介して車体の後側壁に取り付けられるように構成されており、このバンパーブラケットを後側壁に取り付けるクリップが挿入される貫通孔に対して止水効果が発揮される。
【0022】
(5)幾つかの実施形態では、前記取付孔が形成される前記各パネルの前記フランジ部は、車体のリヤホイールハウスを構成する部位に設けられる。
【0023】
このような構成(5)によれば、取付孔が形成される各パネルのフランジ部は、車体のリヤホイールハウスを構成する部位に設けられるので、路面から跳ね返る雨水等に曝される機会が多いが、上述した止水構造によって、リヤホイールハウスを構成する部位に設けられる取付孔であっても、止水機能が効果的に得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、インナーパネルとアウターパネルとの間に塗布されるシーラが、合わせ面に形成されるバンパー等の外装品の取り付けに用いる取付孔からはみ出してシール性が悪化することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る車両外装品取付部の止水構造が適用されるリヤバンパーの前端部における取り付け状態の概要を示し、車体の左後側壁を車両左後方から見た斜視図である。
図2図1のリヤホイールハウスに最も近い位置の取付孔の部分を車体側方から見た拡大側面図である。
図3図1のリヤホイールハウスに最も近い位置の取付孔の部分におけるパネルの重ね合わせ状態を示す拡大斜視図である。
図4図2におけるA―A線断面図である。
図5図2におけるB―B線断面図である。
図6】目印ビードの他の実施形態を示し、図5に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、実施形態として記載されている、または図面に示されている構成部品の相対的配置等は、本発明の範囲をこれらに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、説明中の上下前後左右の方向は、運転席から乗員が前方を見た方向で定義するものとする。各図中において、「FR」は前方、「LH」は左方、「UPR」は上方を示す。
【0027】
図1~5を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、車両外装品であるリヤバンパー1の車体3への取付部のうち、リヤバンパー1の車体両側の前端部5における取付部の概要を示す。図1は、車体3の左側の後側壁7を車両左後方から見た斜視図である。
【0028】
図1に示すように、車体3の後側壁7は、左右においてそれぞれ、板金製のサイドインナーパネル(第1パネル)9とサイドアウターパネル(第2パネル)11とをスポット溶接で接合して閉断面状に形成されている。
【0029】
そして、図1に示すように、後輪が収納されるリヤホイールハウス13の開口縁部15から車体後方で斜め上方に向かって、後側壁7にリヤバンパー1の前端部5を取り付けるクリップ17が挿入される取付孔19が、複数個、所定間隔をあけて穿設されている。
【0030】
この複数個の取付孔19の内、最も下側の取付孔191は、リヤホイールハウス13の開口縁部15に位置され、後述するようにサイドインナーパネル9のフランジ部21aとサイドアウターパネル11のフランジ部21bとが重ね合わされるフランジ接合部21に形成されている。また、複数個の取付孔19の内、最も下側の取付孔191以外は、サイドアウターパネル11に形成されている。
【0031】
リヤバンパー1は、図1に示すように、車幅方向に延びる本体部24と、その本体部24の延び方向の両端部から車両前方に延びる前端部5とを有している。本体部24は車体3の後端部において車幅方向に延びるリヤバンパービーム(不図示)に固定されており、前端部5は、車体3の後端部から左右の後側壁7に回り込んでいる。
【0032】
図1に示すように、複数の取付孔19が穿設された後側壁7とリヤバンパー1の前端部5との間には、バンパーブラケット25が介在され、リヤバンパー1の前端部5は、このバンパーブラケット25を介して後側壁7に取り付けられる。
【0033】
バンパーブラケット25は、複数の取付孔19が並設される方向に延びる帯状の長手形状を有し、硬質の樹脂材料によって形成され、バンパーブラケット25の本体部分には、バンパーブラケット25をサイドアウターパネル11に取り付けるためのクリップ17が挿入されるクリップ孔27が、取付孔19に対応して複数箇所形成されている。
【0034】
なお、クリップ17については、バンパーブラケット25とは別部品のクリップ17を挿入して取り付けるのに代えて、図4に示すように、バンパーブラケット25にクリップ部29が一体的に形成されてもよい。
【0035】
クリップ17をクリップ孔27及び取付孔19に押し込むことで、クリップ17の弾性変形によってクリップ17が取付孔19に係合して、バンパーブラケット25が後側壁7に取り付けられる。なお、バンパーブラケット25に一体的にクリップ部29が形成されている場合には、バンパーブラケット25を押し込むこととで、クリップ部29の弾性変形によってバンパーブラケット25が取付孔19に係合して、バンパーブラケット25が後側壁7に取り付けられる。
【0036】
また、図1に示すように、バンパーブラケット25には、バンパー係合部31が設けられ、そのバンパー係合部31に、リヤバンパー1の前端部5の裏面側に設けられた複数の爪等からなる係合片33が係合することで、リヤバンパー1の前端部5がバンパーブラケット25に取り付けられる。
【0037】
なお、バンパーブラケット25へのリヤバンパー1の前端部5の係合については、バンパー係合部31と係合片33とによる係合に限るものではなく、クリップ止め等の手段によってバンパーブラケット25に係合してもよい。
【0038】
次に、以上説明したリヤバンパー1の前端部5の取り付け構造において、複数の取付孔19のうち、後輪が収納されるリヤホイールハウス13に最も近い位置の取付孔191に対する止水構造について説明する。
【0039】
図2には、リヤホイールハウス13に最も近い位置の取付孔191の部分を車体側方から見た拡大側面図を示す。取付孔191の部分におけるサイドインナーパネル9のフランジ部21a(図1のP1部分)と、サイドアウターパネル11のフランジ部21b(図1のP2部分)とが接合された状態を示す。
【0040】
また、図3には、リヤホイールハウス13に最も近い位置の取付孔191の部分におけるサイドインナーパネル9のフランジ部21aと、サイドアウターパネル11のフランジ部21bとの拡大斜視図を示し、図1のP1部分とP2部分とが重ね合わされ接合される前の状態を示す。
【0041】
また、図4、5には、図1のP1部分とP2部分とが接合され、さらにバンパーブラケット25のリヤホイールハウス13に最も近い位置のクリップ孔27のP3部分が取り付けられた状態の断面図を示す。なお、図4には、バンパーブラケット25にさらにリヤバンパー1の前端部5が係合された状態を示す。
【0042】
リヤホイールハウス13の開口縁部15は、サイドインナーパネル9とサイドアウターパネル11のそれぞれの一側端部に形成される各パネルのフランジ部21a、21bが重ね合わされるフランジ接合部21によって形成されている。
【0043】
取付孔191は、サイドインナーパネル9のフランジ部21aに形成されるインナーパネル取付孔191aと、サイドアウターパネル11のフランジ部21bに形成されるアウターパネル取付孔191bと、によって構成され、インナーパネル取付孔191aとアウターパネル取付孔191bとが重なって形成される。
【0044】
図2図3に示すように、サイドインナーパネル9のフランジ部21aの方が、フランジ端部がサイドアウターパネル11のフランジ部21bよりもリヤホイールハウス13内に突出している関係を有する。また、インナーパネル取付孔191aも、アウターパネル取付孔191bも同形の四角形状の貫通孔であるが、インナーパネル取付孔191aの方がアウターパネル取付孔191bよりも大きい開口面積に形成されている。
【0045】
図2、4、5に示すように、フランジ接合部21の各パネルのフランジ部21a、21bの間の隙間(図4のQ部分)には、止水用のシーラ35が塗布される。また、図2に示すように、シーラ35は、取付孔191の周囲を囲うように塗布され、円弧状に塗布されている。
【0046】
シーラ35は、車外の雨水等が、特に、路面から跳ね返る雨水等が、リヤホイールハウス13の開口縁部15に設けられる取付孔191からサイドインナーパネル9とサイドアウターパネル11とのフランジ接合部21に侵入し、さらにサイドインナーパネル9とサイドアウターパネル11との間の隙間内に侵入して車室内側に侵入することを防止している。
【0047】
また、このシーラ35は、スポット溶接により車体の溶組時においてサイドインナーパネル9とサイドアウターパネル11との間に塗布される溶組シーラであり、溶組シーラは溶接工程で塗布された後に、塗装工程で焼き付けが行われる前においては流動性が大きい。このため、溶組された車体のフランジ接合面が前後左右方向に荷重を受けた場合、重ね合わせ面に微少のズレや隙間が生じ、フランジ接合部21に形成された取付孔191からはみ出して漏れる虞れがある。
【0048】
そこで、図2に示す側面図及び図4に示す断面図のように、取付孔191の平面視において(図2の側面図において)、取付孔191を中心として放射方向において、取付孔191とシーラ35との間のフランジ接合部21に、サイドインナーパネル9からサイドアウターパネル11に向かって突出して取付孔191の周囲を囲むように止水ビード37が設けられている。なお、止水ビード37は、サイドアウターパネル11からサイドインナーパネル9に向かって突出していてもよい。
【0049】
以上のように、止水ビード37の設置によってシーラ35が取付孔191からはみだして漏れ出ることが防止される。その結果、塗布されるシーラ35のシール性が確保され、取付孔191から車室内側への雨水等の侵入が抑えられる。
【0050】
また、止水ビード37は、図2図3のように、フランジ部21a、21bの開放端側を除いて取付孔191の周囲に円弧状に形成されているので、これによって、シーラ35が取付孔191からはみだして漏れ出ることが防止されるばかりではなく、取付孔191から車室内側に侵入する雨水等の侵入も抑えることができる。
【0051】
さらに、この止水ビード37は、図4、5に示すように、フランジ部21a、21b同士を重ね合わせて接合したときに、止水ビード37の頂部と相手側のパネルとが当接して、止水ビード37の取付孔191側と、取付孔191側とは反対側とにおいて、サイドインナーパネル9とサイドアウターパネル11との間に隙間S1、S2を形成する。
【0052】
止水ビード37の頂部と相手側のパネルとが当接して、重ね合わせのフランジ部が互いに面接触から線接触になるように接触部の面積が小さくなることで、接触部の面圧が増大してシール性が確保される。
【0053】
すなわち、接触面圧が増大することで、シーラ35の取付孔191からの流出、及び取付孔191からシーラ35の塗布側への雨水等の侵入が防止されてシーラ35のシール性が確保される。
【0054】
また、止水ビード37の取付孔191側及び取付孔191とは反対側において、サイドインナーパネル9とサイドアウターパネル11との間に隙間S1、S2が形成されることによってシール性が確保される。
【0055】
すなわち、止水ビード37の取付孔191側においては、図4、5に示すように、隙間S1が確保されることによって、取付孔191から侵入する雨水等がフランジ接合部21の開放端側から又は取付孔191から外部に排出されて、排水性が向上するのでフランジ接合部21のシーラ35側に侵入しにくくなるからである。
【0056】
また、止水ビード37の取付孔191の反対側においては、図4、5のQ部分に示すように、隙間S2が形成されることによって、シーラ35が溜められるシール隙間が確保されるのでシール性が確保される。つまり、車体の溶組時に、サイドインナーパネル9とサイドアウターパネル11との重ね合わせによってシール隙間が潰されてシーラ35が保持され難くなることを防止できる。
【0057】
図2、4、5に示すように、溶組時において、シーラ35を塗布する際に、塗布する位置及び範囲の目印として、目印ビード39が円弧状に形成されている。この目印ビード39は、サイドアウターパネル11からサイドインナーパネル9側に突出した断面形状を有して形成されている。
【0058】
目印ビード39の取付孔191側を、目印ビード39に沿ってシーラ35を塗布することで、所定の位置及び範囲に安定してシーラ35を塗布できる。また、目印ビード39によって、シーラ35をサイドインナーパネル9とサイドアウターパネル11との間に形成される隙間S2に保持できるようになるため、シーラ35によるシール性が安定して得られる。
【0059】
また、目印ビード39の他の実施形態を図6に示す。図6は、図5に対応する断面図である。図6の目印ビード41は、図4図5に示した目印ビード39とは逆方向に突出した断面形状であり、サイドアウターパネル11から車体外側に向かって突出した断面形状を有している。すなわち、サイドアウターパネル11のサイドインナーパネル9側には凹溝が形成される。
【0060】
このような図6に示す他の実施形態の目印ビード41の場合には、目印ビード41の凹溝内にシーラ35を塗布することで、所定の位置及び範囲に安定してシーラ35が塗布される。また、目印ビード41の凹溝内にシーラ35が保持されることによって、シーラ35をサイドインナーパネル9とサイドアウターパネル11との隙間S2内に保持できるようになるため、シール性がさらに安定して得られる。
【0061】
なお、目印ビード39、41については、サイドアウターパネル11でなくサイドインナーパネル9側に凹状又は凸状の目印ビードを設けてもよい。さらに、ビード形状に限るものではなく、溶組時において、シーラ35を塗布する際に、塗布する位置及び範囲の目印となればよく、着色マーク等の目印でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、インナーパネルとアウターパネルとの間に塗布されるシーラが、合わせ面に形成されるバンパー等の外装品の取り付けに用いる取付孔からはみ出してシール性が悪化することを防止できるので、車両外装品の取付部における止水構造への利用に適している。
【符号の説明】
【0063】
1 リヤバンパー(車両外装品)
3 車体
5 リヤバンパー前端部
7 後側壁(車体の側壁)
9 サイドインナーパネル(第1パネル)
11 サイドアウターパネル(第2パネル)
13 リヤホイールハウス
15 リヤホイールハウスの開口縁部
17 クリップ
19、191 取付孔
191a インナーパネル取付孔
191b アウターパネル取付孔
21 フランジ接合部
21a、21b フランジ部
25 バンパーブラケット
29 クリップ部
35 シーラ
37 止水ビード
39、41 目印ビード
S1、S2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6