(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20240423BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20240423BHJP
F21S 43/20 20180101ALI20240423BHJP
F21S 45/00 20180101ALI20240423BHJP
F21S 45/50 20180101ALI20240423BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240423BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20240423BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20240423BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240423BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240423BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20240423BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20240423BHJP
H01L 33/58 20100101ALI20240423BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240423BHJP
【FI】
G09F9/30 349C
F21S43/14
F21S43/20
F21S45/00
F21S45/50
F21V5/00 320
F21V5/00 510
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21V23/00 150
G02B5/00
G02B5/00 B
G09F9/00 335E
G09F9/33
H01L33/00 L
H01L33/58
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020207579
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石原 匡
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一久
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-099393(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167832(WO,A1)
【文献】特開平05-088622(JP,A)
【文献】特開2002-055632(JP,A)
【文献】特開2005-275178(JP,A)
【文献】国際公開第2019/186795(WO,A1)
【文献】特開2019-101101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0252949(US,A1)
【文献】特開平10-268800(JP,A)
【文献】特開2015-184509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q1/00-1/56
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
F21V1/00-15/04
19/00-19/06
G02B5/00-5/136
G09F9/00-9/46
H01L33/00
33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光して表示を行なう表示部を備え、
前記表示部は、鉛直線に沿う状態又は鉛直線に対し傾斜した状態で配置され、かつ自身の厚み方向における一方の面を基板前面として有する基板と、前記基板前面に配置された複数の光源とを備え、
前記表示部は、複数の前記光源のそれぞれを上方から覆う庇をさらに備え、
前記基板前面に沿って水平方向に延びる方向を前記光源の幅方向とし、前記幅方向における各光源の両側の面をそれぞれ側面とした場合、
各庇は、
各光源の上方に隣接する本体部と、
前記本体部から前記光源の前面よりも前方へ拡張された前方拡張部と、
前記本体部から前記光源の前記側面よりも前記幅方向における両側方へ拡張された一対の側方拡張部とを備え、
前記基板前面には、複数の回路構成部材を備えてなる回路部が設けられ、
複数の回路構成部材のうちの一部の回路構成部材は、前記庇として、各光源を上方から覆う箇所に配置されている表示装置。
【請求項2】
前記庇の骨格部分は基材により構成されており、
前記基材は透明な樹脂材料により形成され、
前記基材には光拡散材が分散されている請求項
1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記庇の骨格部分は基材により構成されており、
前記前方拡張部及び両側方拡張部のそれぞれにおける前記基材の上面には、反射抑制層が形成されている請求項
1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記本体部からの前記前方拡張部の前方への拡張長さは、太陽光が前記前方拡張部に遮られて前記光源に直接到達しない値に設定されている請求項1~
3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記本体部からの各側方拡張部の側方への拡張長さは、太陽光が前記側方拡張部に遮られて前記光源に直接到達しない値に設定されている請求項1~
4のいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と、基板前面に配置された複数の光源とを有する表示部を備え、表示部の各光源を発光させることで表示を行なう表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用の光学装置が記載されている。この光学装置は、基板、複数の光源、複数のレンズ部材、複数の反射板、及び複数の導光体を備えている。
基板は水平に配置されている。複数の光源は基板の下面に配置されており、下方へ光を発する。複数のレンズ部材は、上記基板よりも車両前方において、互いに上下方向へ列をなすように配置されている。これらのレンズ部材により表示部が構成されている。各反射板は、対応するレンズ部材の車両後方に配置されている。各導光体は、各光源と各反射板との間に配置されている。
【0003】
上記光学装置によると、導光体は、光源が発した光を、対応する反射板に導く。導光体から出射された光は、反射板で反射されて、レンズ部材を透過する。そのため、光源の作動を制御することで、文字、画像等を表示部で表示することが可能である。
【0004】
ここで、光源が発光していないときに、光学装置に対し斜め上方から照射した太陽光がレンズ部材に直接照射すると、太陽光がレンズ部材で反射する。車両の前方からは、反射した太陽光が見え、レンズ部材が明るく見える。発光していない光源が発光しているかのように見える現象、いわゆる疑似発光が起こるおそれがある。
【0005】
また、光源が発光しているときに、太陽光がレンズ部材に直接照射すると、上記と同様に、レンズ部材が明るく見える。ただし、光源からの光が透過するレンズ部材と、透過しないレンズ部材との間で明るさのコントラストが小さく、レンズ部材の明るい現象が、太陽光の照射によるものか、光源の発光によるものかを区別することが難しい。光源の発光によりレンズ部材が明るくなっていることを判りやすくするには、光源をより明るく発光させる、すなわち、光源の明るさを上げて、コントラストを大きくする必要がある。反面、光源で消費される電力が多くなる。
【0006】
そこで、上記光学装置では、複数の遮光部材が設けられている。遮光部材はレンズ部材の上側に配置されており、同レンズ部材から車両前方へ突出している。上記光学装置によれば、遮光部材により、レンズ部材に対する太陽光の直射が抑えられる。そのため、上記疑似発光を起こりにくくして視認性を向上させ、消費電力を低減することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記光学装置では、光源よりも車両前方にレンズ部材、反射板及び導光体が配置されている。そのため、光源からの光がレンズ部材を透過する方向、表現を替えると、表示部の厚み方向に光学装置が大型化する。さらに、遮光部材がレンズ部材よりも車両前方に突出しているため、光学装置がより大型化する。その結果、光学装置の車両に対する搭載性が低下する。こうした問題は、上記光学装置が車両以外のものに搭載された場合にも同様に起り得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する表示装置は、発光して表示を行なう表示部を備え、前記表示部は、鉛直線に沿う状態又は鉛直線に対し傾斜した状態で配置され、かつ自身の厚み方向における一方の面を基板前面として有する基板と、前記基板前面に配置された複数の光源とを備え、前記表示部は、複数の前記光源のそれぞれを上方から覆う庇をさらに備え、前記基板前面に沿って水平方向に延びる方向を前記光源の幅方向とし、前記幅方向における各光源の両側の面をそれぞれ側面とした場合、各庇は、各光源の上方に隣接する本体部と、前記本体部から前記光源の前面よりも前方へ拡張された前方拡張部と、前記本体部から前記光源の前記側面よりも前記幅方向における両側方へ拡張された一対の側方拡張部とを備える。
【0010】
上記の構成によれば、庇は、対応する光源を上方から覆っている。光が視認される箇所であるレンズ部材が、光源から離れた箇所に配置される特許文献1とは異なり、光源が視認される。各光源の前方に、レンズ部材、反射板及び導光体が配置されない。また、庇はレンズ部材から前方へ突出してない。
【0011】
従って、レンズ部材、反射板及び導光体が無く、庇がレンズ部材から突出していない分、特許文献1に比べ、表示部の厚み方向における表示装置の寸法が小さくなる。
上記表示装置において、前記基板前面には、複数の回路構成部材を備えてなる回路部が設けられ、複数の回路構成部材のうちの一部の回路構成部材は、前記庇として、各光源を上方から覆う箇所に配置されていることが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、基板前面に配置された複数の回路構成部材によって回路部が構成される。また、複数の回路構成部材のうち、各光源を上方から覆う箇所に配置された回路構成部材は、庇としても機能する。そのため、回路構成部材とは別に庇を設けなくてもすむ。
【0013】
上記表示装置において、前記庇の骨格部分は基材により構成されており、前記基材は透明な樹脂材料により形成され、前記基材には光拡散材が分散されていることが好ましい。
上記の構成によれば、庇の下方の光源が発した光の色合成を光拡散材によって補助することが可能である。
【0014】
上記表示装置において、前記庇の骨格部分は基材により構成されており、前記前方拡張部及び両側方拡張部のそれぞれにおける前記基材の上面には、反射抑制層が形成されていることが好ましい。
【0015】
表示装置に対し斜め上方から照射された太陽光が、前方拡張部及び両側方拡張部に当たって反射された場合、その一部は、同庇が太陽光を遮る対象となる光源ではなく、同庇の上方に位置する他の光源に照射するおそれがある。
【0016】
このとき、上記他の光源が発光していないと、上記のように、反射して照射した太陽光によって明るくなる。上記他の光源で疑似発光が起こる。
また、上記他の光源が発光により明るくなっていることを判りやすくするために、同光源をより明るく発光させると、消費電力が増大する。
【0017】
これに対し、上記の構成によれば、照射した太陽光が反射する現象が、前方拡張部及び両側方拡張部のそれぞれにおける反射抑制層によって抑制される。従って、太陽光が上記他の光源に照射することが抑制される。発光していない光源の疑似発光が抑制される。また、発光している光源をより明るく発光させなくてもすむ。
【0018】
上記表示装置において、前記本体部からの前記前方拡張部の前方への拡張長さは、太陽光が前記前方拡張部に遮られて前記光源に直接到達しない値に設定されていることが好ましい。
【0019】
本体部からの前方拡張部の前方への拡張長さが、上記の条件を満たすように設定されることで、太陽光が斜め上前方から光源に直接照射することが抑制される。
上記表示装置において、前記本体部からの各側方拡張部の側方への拡張長さは、太陽光が前記側方拡張部に遮られて前記光源に直接到達しない値に設定されていることが好ましい。
【0020】
本体部からの側方拡張部の側方への拡張長さが、上記の条件を満たすように設定されることで、太陽光が斜め上側方から光源に直接照射することが抑制される。
【発明の効果】
【0021】
上記表示装置によれば、擬似発光によるコントラストの低下を防ぐことで視認性を確保でき、消費電力を低減することが可能である。また、表示部の厚み方向における装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】表示装置の第1実施形態を示す図であり、同表示装置が車両に搭載された状態を示す部分側面図。
【
図2】第1実施形態の表示装置が車両に搭載された状態を示す部分平面図。
【
図3】第1実施形態の表示装置において、本体部からの前方拡張部の前方への拡張長さを説明する部分側面図。
【
図4】第1実施形態の表示装置において、本体部からの各側方拡張部の側方への拡張長さを説明する部分正面図。
【
図5】表示装置の第2実施形態を示す図であり、同表示装置が車両に搭載された状態を示す部分側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、表示装置の第1実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。なお、
図2及び
図4では、後述する充填層46、アウタパネル47及びトップコート層48の図示が省略されている。この点は、後述する第3実施形態を示す
図6についても同様である。
【0024】
図1及び
図2に示すように、車両10の外装部、例えば、前面部、後面部、側面部等には、表示装置20が搭載されている。第1実施形態では、表示装置20は車両10の前面部10Fに搭載されている。
【0025】
表示装置20は、発光して表示を行なう表示部21を備えている。表示部21は、基板22及び複数の光源25を備えている。
基板22は、鉛直線VLに沿う状態で、すなわち鉛直状態で配置されている。また、基板22は、自身の厚み方向を前後方向としており、同方向における一方の面を基板前面22Fとして有している。なお、各図においては、表示装置20の位置関係を説明するために、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」を記載している。これらは、方向を示している。第1実施形態では、これらの方向は、車両10の方向と合致している。「左」、「右」は、車両10の前進時の「左」、「右」と一致するものとする。
【0026】
各光源25は、発光ダイオード(LED)のチップによって構成されている。各光源25は、発光部26と、発光部26の前面に積層された封止部27とを備えており、全体として矩形の板状をなしている(
図4参照)。発光部26には、LED素子、及びLED素子を制御するIC等が実装されている。封止部27は、透明なエポキシ樹脂等、透明な樹脂材料によって形成されており、発光部26を埃、水等から保護する機能を担っている。
【0027】
ここで、基板前面22Fに沿って水平方向に延びる方向を光源25の幅方向とし、同幅方向における光源25の両側の面をそれぞれ側面25Sとする。
複数の光源25は、基板前面22Fにおいて、上下方向に互いに離間した状態で配置されている(
図1参照)。また、複数の光源25は、図示はしないが、上記幅方向に互いに離間した状態で配置されている。このように、表示部21は、LEDマトリクスパネルと同様の構成を採っており、複数の光源25のそれぞれの作動を制御することで、文字、数字、図形、記号等を用いた情報の表示が可能である。
【0028】
表示装置20は、さらに、各光源25を上方から覆う庇30を備えている。各庇30の骨格部分は、基材35によって構成されている。基材35は、ポリカーボネート樹脂(PC)等の透明な樹脂材料によって形成されている。基材35には、光拡散材(図示略)が分散されている。光拡散材としては、基材35とは異なる屈折率を有する粒子を用いることができる。例えば、ガラスビーズ、樹脂粉末等が、光拡散材として用いられる。
【0029】
各庇30は、本体部31、前方拡張部32、一対の側方拡張部33、及び一対の連結拡張部34を備えている。
図2~
図4に示すように、庇30毎の本体部31は、基板22の基板前面22Fから前方へ突出している。庇30毎の本体部31は、対応する光源25の上方に隣接している。庇30毎の前方拡張部32は、本体部31から光源25の前面25Fよりも前方へ拡張されている。庇30毎の一対の側方拡張部33は、本体部31から光源25の側面25Sよりも上記幅方向における両側方へ拡張されている。庇30毎の一対の連結拡張部34のそれぞれは、前方拡張部32と側方拡張部33の間に位置し、両者を連結している(
図2参照)。
【0030】
基材35の下面35Bは、水平な面又は水平に近い傾斜面によって構成されている。下面35Bは、庇30の直下に位置する光源25の上面25Tから僅かな間隙Gだけ上方へ離間している。
【0031】
前方拡張部32及び両連結拡張部34における基材35の上面35T(
図3参照)は、本体部31から前方への突出長が下方ほど長くなるように、鉛直線VL及び水平面HPの両者に対し一定の角度で傾斜している。これは、車両10の前方の人が、表示装置20を見上げた場合に、庇30の直上の光源25を見えるようにするためである。表現を変えると、上面35Tが、より正確には、同上面35T上の後述する反射抑制層45が、庇30の直上の光源25を見る際の妨げとならないようにするためである。
【0032】
本体部31からの前方拡張部32の前方への拡張長さをL1とする。また、本体部31からの各側方拡張部33の側方への拡張長さをL2とする。拡張長さL1,L2は、それぞれ太陽光SLが庇30に遮られて光源25に直接到達しない値に設定されている。この設定は、次の条件が満たされるようになされている。
【0033】
条件:日中の照度の高い時間帯でも、光源25の発光状態が見やすいこと。
照度とは、物体の表面を照らす光の明るさを表す物理量、すなわち、光に照らされた面における明るさの度合をいう。照度は、カンデラを単位として表される。
【0034】
屋外を走行する車両10の外装部、第1実施形態では前面部10Fに搭載される表示装置20には太陽光SLが直接照射する。太陽光SLが、発光していない光源25に直接照射すると、その光源25が疑似発光する。発光している光源25と発光していない光源25との間で、明るさのコントラストが小さくなり、光源25が発光しているか発光していないかを区別することが難しくなる。発光している光源25をより明るく発光させることで視認性を確保することが可能であるが、電力消費量が多くなる問題がある。
【0035】
ここで、
図3及び
図4に示すように、車両10の外部の人が見た太陽の位置の地平線に対しなす角度、表現を変えると、太陽光SLが水平面HPに対しなす角度を太陽高度Hとすると、地表照度は太陽高度Hに応じて異なる。また、太陽高度Hは、季節及び時間帯によって異なる。太陽高度Hは、一日の中では正午に最大となる。太陽高度Hは、季節の中では夏至に最大(50度以上)となり、冬至に最小(50度以下)となる。仮に、夏至の正午の地表照度を13万カンデラとすると、冬至の正午の地表照度は、1.6万カンデラとなり、光源25で反射する太陽光SLが少なくなる。一応の目安として、太陽高度Hが45度以上のときに、太陽光SLが光源25に直接照射しないように庇30によって遮られれば、光源25の疑似発光を効果的に抑制できるものと考えられる。
【0036】
太陽高度Hと、光源25の上下方向の長さAと、庇30及び光源25の間の間隙Gと、拡張長さL1,L2との間には次の関係式が成り立つ。
tanH=(A+G)/L1
tanH=(A+G)/L2
上記関係式をそれぞれ変形すると、次の(式1)及び(式2)が得られる。
【0037】
L1=(A+G)/tanH・・・(式1)
L2=(A+G)/tanH・・・(式2)
例えば、A=2.0mm、G=0.2mm、H=45度とする。本体部31からの前方への拡張長さL1、及び本体部31からの側方への拡張長さL2は、ともに2.2mmとなる。拡張長さL1,L2が上記値(2.2mm)に設定されると、太陽高度Hが45度以上のときには、太陽光SLが光源25に直接照射しない。
【0038】
なお、太陽高度Hが45度よりも小さい場合には、45度以上の場合よりも地表に到達する太陽光SLが弱いので、疑似発光が起きても目立たず、問題になりにくい。
図1及び
図3に示すように、基材35の上面35Tのうち、少なくとも前方拡張部32、両側方拡張部33及び両連結拡張部34における上面35Tには、反射抑制層45が形成されている。反射抑制層45は、本体部31における基材35の上面35Tに対しては、形成されてもよいし、形成されなくてもよい。反射抑制層45は、照射された太陽光SLの反射を抑制する機能を有するものであればよい。第1実施形態では、反射抑制層45は、反射抑制塗料を基材35の上面35Tに塗布することによって形成されている。
【0039】
上記基板22よりも前方には、充填層46を介して、アウタパネル47及びトップコート層48が設けられている。
アウタパネル47は、透明な樹脂材料によって形成されている。充填層46は、基板22、全ての光源25及び全ての庇30と、アウタパネル47との間を隙間無く埋めた状態で形成されている。充填層46は、可視光の透過性能の高い材料によって形成されている。この条件を満たす材料として、例えば、透明な樹脂材料が用いられる。前記樹脂材料はアウタパネル47と屈折率の近いものであることが望ましい。屈折率差を小さくすることで、アウタパネル47と充填層46との界面での反射を抑制することが可能である。また、可視光を透過するものであることを条件に、透明な樹脂材料に対し光分散剤を分散させたものが用いられて、充填層46が形成されてもよい。
【0040】
トップコート層48は、アウタパネル47の前面に形成されており、表示装置20の最前面に位置している。トップコート層48は、例えば、反射抑制材料をアウタパネル47の前面又は裏面に塗布することによって形成されている。また、トップコート層48として可変透過膜が用いられてもよい。
【0041】
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
太陽光SLが表示装置20に対し斜め上方から照射されると、その太陽光SLは、庇30によって遮られる。すなわち、
図1及び
図3に示すように、第1実施形態では、本体部31からの前方拡張部32の前方への拡張長さL1が、上記(式1)を満たしている。そのため、太陽高度Hが45度以上のときに、すなわち、水平面HPに対し45度以上の角度で、表示装置20に対し、斜め上前方から太陽光SLが照射すると、その太陽光SLは前方拡張部32によって遮られる。太陽光SLが斜め上前方から光源25に直接照射することが抑制される。
【0042】
また、
図2及び
図4に示すように、第1実施形態では、本体部31からの各側方拡張部33の側方への拡張長さL2が、上記(式2)を満たしている。そのため、太陽高度Hが45度以上のときに、すなわち、水平面HPに対し45度以上の角度で、表示装置20に対し、斜め上側方から太陽光SLが照射すると、その太陽光SLは側方拡張部33によって遮られる。太陽光SLが斜め上側方から光源25に直接照射することが抑制される。
【0043】
発光していない光源25が疑似発光しにくくなることで、発光している光源25の明るさと、発光していない光源25の明るさとのコントラストが大きくなり、視認性が向上する。また、光源25を発光させるのに必要な電力が少なくてすむ。
【0044】
特に、車両10が、バッテリを電源とする電気自動車の場合には、消費電力を少なくし、バッテリにかかる負担を軽くできる。
ここで、表示装置20に対し斜め上方から照射される太陽光SLの一部は庇30の上面に当たる。この太陽光SLが庇30の上面で仮に反射すると、反射した太陽光SLが、表示装置20を見ている人の目に入るおそれがある。この場合、反射された太陽光SLが眩しく見え、表示部21の視認性が損なわれるおそれがある。
【0045】
この点、第1実施形態では、庇30の上面での太陽光SLの反射が、反射抑制層45によって抑制される。従って、反射された太陽光SLが眩しく見えるといった上記現象が抑制され、表示部21の視認性が損なわれることが起こりにくい。従って、この点でも視認性の向上を図ることができる。
【0046】
さらに、各庇30における基材35が透明な樹脂材料により形成されており、この基材35に光拡散材が分散されている。基材35の下面には、上面35Tとは異なり反射抑制層45が形成されていない。そのため、庇30の下方の光源25が発した光の色合成を光拡散材によって補助することが可能である。
【0047】
ところで、第1実施形態では、上記庇30が、基板前面22Fから前方へ突出していて、光源25を直接上方から覆っている。光が視認される箇所であるレンズ部材が、光源(基板)から離れた箇所に配置される特許文献1とは異なり、光源25が視認される。第1実施形態では、各光源25の前方に、レンズ部材、反射板及び導光体が配置されていない。また、庇30はレンズ部材から前方へ突出してない。
【0048】
従って、これらのレンズ部材、反射板及び導光体が無く、庇30がレンズ部材から突出していない分、第1実施形態では、特許文献1に比べ、表示部21の厚み方向における表示装置20の寸法が小さくなる。車両10の前面部10Fでは、表示装置20の搭載スペースが小さいが、第1実施形態の表示装置20であれば上記搭載スペースに搭載することが可能又は容易である。このように、第1実施形態によると、車両10の前面部10Fに対する表示装置20の搭載性が向上する。
【0049】
第1実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・第1実施形態では、表示装置20において太陽光SLが直接照射される箇所である最前面に、反射抑制材料からなるトップコート層48が形成されている。そのため、表示装置20の最前面での太陽光SLの反射をトップコート層48によって抑制し、日中、屋外での太陽光SLの反射による視認性の低下を抑制できる。
【0050】
・第1実施形態では、表示部21とアウタパネル47との間に充填層46が設けられているため、ゴミ、埃、虫、水等が表示部21へ入り込むのを抑制できる。
・充填層46が設けられることで、アウタパネル47と基板22との間に空気の層ができない。空気の層ができる場合に比べ、熱伝導が良好となる。そのため、光源25が通電に伴い発した熱を、素早く拡散させることができる。その結果、光源25が熱から受ける影響を小さくできる。
【0051】
・第1実施形態では、前方拡張部32及び両連結拡張部34が、後方ほど上下方向の厚みが増すように形成されている。
そのため、前方拡張部32及び両連結拡張部34の上下方向の厚みが均一であり、その厚みが、庇30の前端部の厚みと同一である場合に比べ、前方拡張部32及び両連結拡張部34の強度を高めることができる。
【0052】
・第1実施形態では、庇30が光源25毎の上方に配置されているにすぎず、同庇30が光源25の側方に配置されていない。そのため、庇が光源の側方に配置されるものに比べ、水平方向の視野角を広くできる。
【0053】
・第1実施形態では、特許文献1とは異なり、反射板及び導光体を用いていないため、より少ない部品点数で表示装置20を構成できる。
・1つの庇によって、全ての光源25に太陽光SLが直接照射しないようにするには、同庇を前方に大きく突出させる必要がある。これに対し、第1実施形態では、光源25毎に庇30を設けている。そのため、庇30の前方への突出長を抑えつつ、各光源25に太陽光SLが直接照射するのを抑制し、視認性の向上を図ることができる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、表示装置20の第2実施形態について、
図5を参照して説明する。
第2実施形態の表示装置20は、車両10の外装部において水平面HPに対し傾斜した箇所、例えば、ボンネット等に搭載されている。
【0055】
表示装置20の基板22は、水平面HPに対し傾斜した状態、第2実施形態では35度程度傾斜した状態で車両10の外装部に取付けられている。
基板22の前後方向は、鉛直線VL及び水平面HPの両者に対し傾斜しており、車両10の前後方向と異なる。基板22の上下方向は、鉛直線VL及び水平面HPの両者に対し傾斜しており、車両10の上下方向と異なる。
【0056】
そこで、基板22における各方向と、車両10における各方向とを区別するために、
図5では、「前」、「後」、「上」、「下」は、基板22の「前」、「後」、「上」、「下」を示している。また、
図5では、「(前)」、「(後)」、「(上)」、「(下)」は、車両10の「前」、「後」、「上」、「下」を示している。
【0057】
光源25毎の庇30が、本体部31、前方拡張部32、一対の側方拡張部33、及び一対の連結拡張部34を備えている点は、第1実施形態と同様である。
庇30毎の本体部31は、基板前面22Fであって、各光源25の上方に隣接した箇所から前方へ突出している。上述したように基板22が傾斜していることから、本体部31もまた鉛直線VL及び水平面HPの両者に対し傾斜している。
【0058】
庇30毎の前方拡張部32は、本体部31から光源25の前面25Fよりも前方へ拡張されている。庇30毎の両側方拡張部33は、図示はしないが、本体部31から光源25の側面25Sよりも両側方へ拡張されている。
【0059】
前方拡張部32及び両連結拡張部34における基材35の上面35Tは、水平な面又は水平に近い前下がりの傾斜面によって構成されている。
前方拡張部32及び両連結拡張部34における基材35の下面35Bは、後方ほど低くなるように、水平面HPに対し傾斜している。これは、車両10の外部(前方)の人が、表示装置20を見おろした場合に、光源25が見えるようにするためである。表現を変えると、表示装置20を前方から見おろした場合に、下面35Bが光源25を見る際の妨げとならないようにするためである。なお、上記下面35Bが水平面HPとなす角を上反角D1とする。例えば、表示装置20が、地表から1メートルの高さの箇所で車両10の外装部に搭載されているものとする。この表示装置20を、車両10から例えば前方へ5メートル離れた箇所において、2メートルの高さから見る場合を想定する。上反角D1は、次の(式3)により求められる。
【0060】
D1=atan(1000/5000)≒11.3・・・(式3)
上記(式3)から、第2実施形態では、上反角D1が、例えば12度程度に設定される。
【0061】
上面35T及び下面35Bが上記のように形成されていることから、前方拡張部32及び両連結拡張部34のそれぞれの上下方向の厚みは後方ほど大きくなる。
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第2実施形態において第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0062】
従って、第2実施形態によると、表示装置20が車両10の外装部のうち傾斜した箇所に搭載されるものの、表示装置20が鉛直な状態で搭載される第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0063】
第2実施形態によると、上記以外にも、次の作用及び効果が得られる。
・表示装置20に対し斜め上方から照射された太陽光SLが庇30の上面で反射された場合、その一部は、同庇30が太陽光SLを遮る対象となる光源25ではなく、同庇30の上方に位置する他の光源25に照射するおそれがある。この場合にも、上述した、太陽光SLが光源25に直接照射する場合と同様の現象が起り得る。すなわち、発光していない光源25で疑似発光が起こるおそれがある。また、光源25が明るい現象が、太陽光SLの照射によるものか、光源25の発光によるものかを区別することが難しい。発光により明るくなっていることを判りやすくするために、上記光源25をより明るく発光させる必要がある。
【0064】
この点、第2実施形態では、庇30の上面に照射した太陽光SLが反射する現象が反射抑制層45によって抑制される。従って、太陽光SLが上記他の光源25に照射することが抑制される。発光していない光源25の疑似発光が抑制される。また、発光している光源25をより明るく発光させなくてもすむ。
【0065】
(第3実施形態)
次に、表示装置20の第3実施形態について、
図6を参照して説明する。
上記第1実施形態では説明を省略したが、
図6に示すように基板前面22Fには、複数の光源25の作動を制御する回路部51が設けられている。回路部51は、複数の回路構成部材を備えている。複数の回路構成部材のうちの1つは、ノイズ吸収用のコンデンサ52によって構成されている。コンデンサ52は、庇30として、各光源25を上方から覆う箇所に配置されている。なお、コンデンサ52に代えて、インダクタ、ダイオード等の回路構成部材が庇30として用いられてもよい。
【0066】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第3実施形態において第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第3実施形態によると、第1実施形態と同様の作用及び効果が得られるほか、次の効果が得られる。
【0067】
・基板前面22Fに配置された複数の回路構成部材は、回路部51を構成する。また、複数の回路構成部材のうち、各光源25を上方から覆う箇所に配置されたコンデンサ52は、庇30としても機能する。そのため、回路構成部材とは別に庇30を設けなくてもすむ。
【0068】
・コンデンサ52として熱容量の大きなものを用いることで、通電に伴い光源25で発生した熱を伝導吸収することが可能である。光源25の発熱に伴う表示部21の全体の昇温を緩和できる。
【0069】
なお、上述した各実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。各実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0070】
<庇30について>
・庇30の基材35の下面35Bに、同下面に照射された光を拡散反射させるための光拡散反射構造が設けられてもよい。例えば、基材35の下面35Bが粗面化されることによって、上記光拡散反射構造が形成されてもよい。粗面化する方法としては、エッチング、レーザ光照射、ブラスト加工等が挙げられる。このようにしても、透明な樹脂材料からなる基材35に光拡散材を分散させた上記各実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0071】
・第1及び第2実施形態において、庇30は、遮光機能を有するものであればよく、不透明な樹脂材料によって形成されてもよい。
・第1実施形態において、各庇30の基材35の下面35Bが、第2実施形態と同様に、後方ほど低くなるように傾斜させられてもよい。
【0072】
・
図6に示すように、上下方向に隣り合う光源25の間隔が、第1及び第2実施形態よりも広くされてもよい。
・
図6に示すように、庇30の上面が水平な面又は水平に近い傾斜面によって構成されてもよい。
【0073】
・第1及び第2実施形態において、各庇30は、本体部31が光源25の上面25Tに接触した状態で配置されてもよい。
・第3実施形態において、ヒートシンクが、庇30として、各光源25を上方から覆う箇所に設けられてもよい。
【0074】
<上記以外の事項について>
・第1及び第2実施形態において、アウタパネル47の前面又は裏面には、通電状態に応じて光の透過率が可変される透過率可変層が設けられてもよい。透過率可変層は、光源25の発光時には透過率が上がるように、また光源25の非発光時には透過率が下がるように、通電制御される。この通電制御により、光源25の非発光時における車両外観上の見栄えを向上させることが可能である。
【0075】
・第1~第3実施形態において、充填層46、アウタパネル47及びトップコート層48の少なくとも1つが省略されてもよい。
・第1及び第2実施形態において、連結拡張部34が省略されてもよい。
【0076】
・LEDとは異なる発光素子が光源25として用いられてもよい。
<適用対象について>
・上記表示装置は、車両10の外装部のうち、前面部10Fとは異なる箇所、例えば、側面部、後面部等に搭載されてもよい。
【0077】
・上記表示装置は、車両10以外の乗物に搭載される表示装置や、乗物以外の移動体に搭載される表示装置にも適用可能である。
・上記表示装置は、移動体以外にも、屋外に設置される固定物に搭載される表示装置にも適用可能である。該当する固定物としては、例えば、道路に設置される道路標識が挙げられる。道路標識としては、案内標識、警戒標識、規制標識、指示標識等がある。
【0078】
案内標識は、道路利用者に、目的地あるいは通過地への方向、距離等の情報を提供する道路標識である。
案内標識の1つに、トンネル内の壁面であって出口の手前に設置されるものが含まれる。一般に、車両がトンネルから抜け出る際には急激に周りが明るくなる。出口付近に設置された表示装置の光源に太陽光が照射されると、表示内容が見えにくくなる。そのため、本発明の表示装置が、トンネルの出口付近に設置される案内標識の表示装置として用いられることにより、視認性を向上させることができる。
【0079】
警戒標識は、道路の状況、走行上支障となる箇所等を予告する道路標識である。
規制標識は、車両を運転する上での規制を表示する道路標識である。
指示標識は、車両が走行しているときの路面に対しての主な規制を表示する道路標識である。
【0080】
上記以外に該当する固定物としては、看板、屋外広告等が挙げられる。看板は、告知、通知、宣伝、広告等のために用いられ、通常は板状をなす。看板は、例えば、同看板を掲示する場所に存在する店舗や会社の名称を掲示したり、一般の広告を表示したりする。また、看板に順路、避難路、注意喚起等が表示される場合もある。さらに、店舗が提供するメニュー、例えば飲食店において出される料理のメニュー等を表示する看板も上記固定物に含まれる。本発明の表示装置は、上記固定物における表示装置として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0081】
20…表示装置
21…表示部
22…基板
22F…基板前面
25…光源
25F…前面
25S…側面
30…庇
31…本体部
32…前方拡張部
33…側方拡張部
35…基材
35T…上面
45…反射抑制層
51…回路部
52…コンデンサ(回路構成部材)
L1,L2…拡張長さ
SL…太陽光
VL…鉛直線