IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

<>
  • 特許-高周波電源装置 図1
  • 特許-高周波電源装置 図2
  • 特許-高周波電源装置 図3
  • 特許-高周波電源装置 図4
  • 特許-高周波電源装置 図5
  • 特許-高周波電源装置 図6
  • 特許-高周波電源装置 図7
  • 特許-高周波電源装置 図8
  • 特許-高周波電源装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】高周波電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240423BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20240423BHJP
   H01F 30/08 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 A
H01F30/10 S
H01F30/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021011930
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115369
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】安田 尚樹
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-051556(JP,A)
【文献】特開昭48-073057(JP,A)
【文献】特開昭51-109714(JP,A)
【文献】特開平04-322108(JP,A)
【文献】特開2015-023720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0036439(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H01F 30/10
H01F 30/08
H02M 3/00
H02M 1/08
H03K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
プラズマ生成用の誘導コイル及びコンデンサを含むLC共振回路と、
前記直流電源から供給される直流電力をスイッチングして前記LC共振回路に与える半導体素子を含むスイッチング回路と、
前記LC共振回路に含まれる1次コイル、及び、前記半導体素子をオン/オフさせるために当該半導体素子に接続される2次コイルを有するトランスとを備え、
前記トランスは、前記1次コイル及び前記2次コイルを同軸上に有する同軸構造で形成され、
前記LC共振回路は、前記誘導コイル及び前記コンデンサとともにループ回路を形成する複数の前記1次コイルを含み、複数の前記1次コイルに対してそれぞれ並列に接続される複数の抵抗体を有する、自励発振方式の高周波電源装置。
【請求項2】
前記トランス及び前記抵抗体の形状がU字状である、請求項1記載の自励発振方式の高周波電源装置。
【請求項3】
絶縁性を有する放熱器をさらに備え、
前記放熱器は、前記トランス及び前記抵抗体の両方に接触する、請求項1又は2記載の自励発振方式の高周波電源装置。
【請求項4】
前記トランス及び前記抵抗体が、互いに対向して平行に延び、
前記放熱器は、前記トランス及び前記抵抗体の間に位置する、請求項3記載の自励発振方式の高周波電源装置。
【請求項5】
前記抵抗体は、可変抵抗器である、請求項1から4のいずれかに記載の自励発振方式の高周波電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自励発振方式の高周波電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自励発振方式の高周波電源の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1で開示されている高周波電源装置のトランスは、1次コイル及び2次コイルが同軸構造になるように形成される。また、高周波電源装置の半導体は、トランスを介して印加される電圧によって駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-51556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の高周波電源装置では、トランスの構造上、1次コイル及び2次コイルの巻数比の調整が難しいことから、トランスに流れる電流を適切に設定するための構成を別に設けることが好ましい。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、トランスに過剰な電流が流れるのを抑制しつつ、そのトランスに適切な電流を流すことができる高周波電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、直流電源と、LC共振回路と、スイッチング回路と、トランスとを備える自励発振方式の高周波電源装置である。前記LC共振回路は、プラズマ生成用の誘導コイル及びコンデンサを含む。前記スイッチング回路は、前記直流電源から供給される直流電力をスイッチングして前記LC共振回路に与える半導体素子を含む。前記トランスは、前記LC共振回路に含まれる1次コイル、及び、前記半導体素子をオン/オフさせるために当該半導体素子に接続される2次コイルを有する。前記トランスは、前記1次コイル及び前記2次コイルを同軸上に有する同軸構造で形成され、前記LC共振回路は、前記1次コイルに対して並列に接続される抵抗体を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、トランスが有する1次コイルに対して、抵抗体が並列に接続されるため、トランスに過剰な電流が流れるのを抑制しつつ、そのトランスに適切な電流を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の高周波電源装置の構成例を示す回路図である。
図2】本実施形態のトランスの内部構成について説明するための概略図である。
図3】本実施形態のMOSFETの周辺の構成例を示す部分平面図の一例である。
図4図3のA-A断面を示す断面図である。
図5図3のB-B断面を示す断面図である。
図6】本実施形態のMOSFETの周辺の構成例を示す部分平面図の他の例である。
図7】LC共振回路の構成例を示す回路図の一例である。
図8】本実施形態のMOSFETの周辺の構成例を示す部分平面図のさらに他の例である。
図9図1の高周波電源装置の全体構成を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.高周波電源装置の電気的構成
図1は、本実施形態の高周波電源装置の構成例を示す回路図である。この高周波電源装置は、例えば誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置などの分析装置に適用可能であり、直流電源1、バイパスコンデンサ2、スイッチング回路3、インピーダンス変換回路4及びLC共振回路5などを備えた自励発振方式の高周波電源装置である。
【0010】
直流電源1は、スイッチング回路3の直流電圧を設定し、LC共振回路5に供給される高周波電力を決定する。バイパスコンデンサ2は、直流電源1とスイッチング回路3の間に配置され、低インピーダンスの高周波電流経路を確保する。
【0011】
LC共振回路5には、誘導コイル51と、その誘導コイル51に接続されたコンデンサ52とが含まれる。このLC共振回路5に含まれる誘導コイル51はプラズマ生成用であり、誘導コイル51に対し、直流電源1からスイッチング回路3を介して高周波電力を供給することにより、プラズマトーチ(図示せず)にプラズマを生成することができる。
【0012】
インピーダンス変換回路4には、2つのコイル41、42と、これらのコイル41、42間に直列に接続されたコンデンサ43とが含まれる。スイッチング回路3とインピーダンス変換回路4との間には、インピーダンス変換回路4のコイル41、42及びコンデンサ43を含むループが形成されている。また、インピーダンス変換回路4とLC共振回路5との間には、インピーダンス変換回路4のコンデンサ43、並びに、LC共振回路5の誘導コイル51及びコンデンサ52を含むループが形成されている。
【0013】
スイッチング回路3は、半導体素子を含む構成であり、その半導体素子を介して直流電源1に接続されている。この例では、4つのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)31(31a、31b、31c、31d)を含むブリッジ回路によりスイッチング回路3が構成されている。スイッチング回路3は、ハーフブリッジ型又はフルブリッジ型のブリッジ回路により構成されている。ただし、スイッチング回路3に含まれる半導体素子は、MOSFETに限られるものではない。また、スイッチング回路3は、ハーフブリッジ型又はフルブリッジ型に限られるものではない。
【0014】
MOSFET31aのドレイン電極と、MOSFET31bのソース電極との間には、直流電源1及びバイパスコンデンサ2が接続されている。また、MOSFET31aのソース電極と、MOSFET31bのドレイン電極とは、配線35により接続されており、その配線35の途中部にインピーダンス変換回路4のコイル41が接続されている。
【0015】
MOSFET31cのドレイン電極と、MOSFET31dのソース電極との間には、直流電源1及びバイパスコンデンサ2が接続されている。また、MOSFET31cのソース電極と、MOSFET31dのドレイン電極とは、配線36により接続されており、その配線36の途中部にインピーダンス変換回路4のコイル42が接続されている。
【0016】
各MOSFET31a、31b、31c、31dのゲート電極には、ゲート駆動回路32(32a、32b、32c、32d)が接続されている。したがって、MOSFET31は、ゲート駆動回路32によって、所定のタイミングでオン状態又はオフ状態に切り替えられることとなる。これにより、直流電源1から供給される直流電力をスイッチングしてLC共振回路5に与えることができる。
【0017】
各ゲート駆動回路32a、32b、32c、32dには、互いに並列に接続されたコイル33(33a、33b、33c、33d)及びコンデンサ34(34a、34b、34c、34d)が備えられている。ゲート駆動回路32に備えられるコイル33は、各トランスの2次コイルを構成しており、MOSFET31をオン/オフ(スイッチング)させるために、MOSFET31の制御端子(ゲート電極、ソース電極)に接続されている。各トランスの1次コイルは、LC共振回路5に含まれるコイル53(53a、53b、53c、53d)により構成されている。
【0018】
このように、本実施形態では、1対のコイル53及びコイル33により構成されるトランスが、各MOSFET31に対応付けて設けられており、各MOSFET31に対してフィードバック電圧を供給することができるようになっている。
【0019】
また、本実施形態において、コイル(1次コイル)53及びコイル(2次コイル)33によってトランスが構成されることから、1次コイル53に過剰な電流が流れると、2次コイル33にも過剰な電流が流れ、MOSFET31に悪影響が生じる可能性がある。
【0020】
本実施形態では、トランスに流れる電流を適切に設定するための構成として、各トランス、具体的には、各1次コイル53a、53b、53c、53dに対して、抵抗体54(54a、54b、54c、54d)が並列に接続される。また、並列に接続されるコイル53及び抵抗体54が、誘導コイル51及びコンデンサ52に対して直列に接続される。
【0021】
抵抗体54は、抵抗値を有する電気伝導体である。つまり、抵抗体54については、抵抗値を有する電流流路とも言える。抵抗体54としては、たとえば、金属板及び抵抗素子等が挙げられる。
【0022】
このように、トランスの1次コイル53に対して、抵抗体54を並列に接続することで、トランスに過剰な電流が流れるのを抑制しつつ、そのトランスに適切な電流を流すことができる。
【0023】
2.トランスの内部構成
図2は、本実施形態のトランス6の内部構成について説明するための概略図である。トランス6は、LC共振回路5に備えられた1次コイル53と、ゲート駆動回路32に備えられた2次コイル33とにより構成されている。
【0024】
本実施形態では、トランス6がセミリジッド同軸ケーブルにより構成されている。セミリジッド同軸ケーブルは、線状の中心導体61と、その中心導体61の外側を覆う筒状の絶縁体62と、その絶縁体62の外側を覆う筒状の外部導体63とを同軸上に備えている。トランス6の1次コイル53は外部導体63により構成されており、2次コイル33は中心導体61により構成されている。
【0025】
これにより、トランス6は、1次コイル53及び2次コイル33を同軸上に有する同軸構造となっており、トランス6を湾曲又は屈曲した場合であっても、1次コイル53及び2次コイル33が互いに平行に配置された状態が維持される。ただし、トランス6の1次コイル53が中心導体61により構成され、2次コイル33が外部導体63により構成されていてもよい。
【0026】
3.MOSFETの周辺の構成
図3は、本実施形態のMOSFET31の周辺の構成例を示す部分平面図の一例である。また、図4は、図3のA-A断面を示す断面図である。また、図5は、図3のB-B断面を示す断面図である。
【0027】
また、図3~5では、MOSFET31a等のうちのいずれかのMOSFET31の周辺の構成のみが示されているが、各MOSFET31の周辺の構成についても同様の構成を採用することができる。
【0028】
本実施形態では、スイッチング回路3、インピーダンス変換回路4及びLC共振回路5などの各回路が基板10に実装されている。各回路に含まれる部品は、パターン配線11及びパターン配線12により互いに電気的に接続されている。プラズマ生成用の誘導コイル51に流れる電流は非常に大きいため、パターン配線11の幅が小さいと発熱が多くなりすぎて許容できない。そのため、パターン配線11としては、幅広のパターンを用いることが好ましい。なお、基板10は1枚であってもよいし、2枚以上に分割されていてもよい。
【0029】
各トランス6は、U字状に形成されている。U字状とは、トランス6の両端部60a及び60bが互いに近接するように湾曲又は屈曲された形状を意味しており、半円状などの実質的にU字状に形成された他の形状も含む概念である。セミリジッド同軸ケーブルにより構成されたトランス6は、外部導体63の外側に保護被覆を有しておらず、外部導体63が剥き出しの状態となっており、各トランス6の1次コイル53はパターン配線11に接続されている。一方、トランス6の2次コイル33の入力端(IN)及び出力端(OUT)と、MOSFET31の制御端子(ゲート電極301、ソース電極302)との間は、基板10におけるパターン配線11側とは反対側の面で、パターン配線12により電気的に接続されている。
【0030】
また、本実施形態では、トランス6をU字状に形成することにより、充分なフィードバック電圧を生成できるだけの長さを確保しつつ、トランス6の2次コイル33の入力端(IN)及び出力端(OUT)と、MOSFET31の制御端子(ゲート電極301、ソース電極302)との間のパターン配線12を短くして、パターンインダクタンスによるフィードバック電圧の減衰を抑えることができる。また、トランス6の1次コイル53及び2次コイル33を平行に配置することにより、1次コイル53及び2次コイル33の結合度が大きくなる。
【0031】
これらの構造上の工夫により、トランス6を介して十分なフィードバック電圧をMOSFET31に供給することができる。つまり、トランス6を介して、十分な電流を各MOSFET31に供給することができる。
【0032】
このように、フィードバック電圧を大きくすることができるため、本実施形態では、各MOSFET31の制御端子に直流バイアス電圧を供給する必要がなくなる。すなわち、本実施形態のようにスイッチング回路3の半導体素子がMOSFET31により構成されている場合には、各MOSFET31のゲート電圧の振幅を大きくすることができ、各MOSFET31のゲート電極に直流バイアス電圧を供給する必要がなくなる。
【0033】
さらに、図1に示すように、各MOSFET31の制御端子に対して、2次コイル33と並列にコンデンサ34を接続することにより、各MOSFET31のゲート・ソース間容量のばらつきや変動の影響を小さくすることができる。また、非線形なゲート充電特性を有する各MOSFET31の制御端子の電圧が、よりリニアに変化するようになるため、負荷のインダクタンスに起因するスイッチング波形のリンギングが抑制され、高い電源効率を実現することができる。
【0034】
また、本実施形態では、各抵抗体54は、図3及び図5に示すように、パターン配線11に接続されている。トランス6は、1次コイル53及び2次コイル33を同軸上に有する同軸構造に形成されることから、巻数比の調整による、1次コイル53及び2次コイル33における電流の大きさの調整が難しいが、たとえば、抵抗体54を抵抗値の異なる他の抵抗体54に取り換えるだけで、1次コイル53及び2次コイル33の電流の大きさを簡単に調整することができる。
【0035】
また、抵抗体54は、同じ材料の電気伝導体であっても電流流路の長さが異なれば、抵抗値が異なる。具体的に、同じ材料の電気伝導体であっても電流流路の長い電気伝導体の方が抵抗値が大きい。したがって、所定の材料の電気伝導体において、抵抗体54の電流経路が長くなるほど、その抵抗体54の抵抗値が大きくなる。
【0036】
本実施形態のように、抵抗体54が、トランス6と同様のU字状に形成されるのであれば、たとえば、抵抗体54の端部540aの及び540bの接続位置が近くても十分な抵抗値を確保することができる。
【0037】
さらに、抵抗体54は、同じ材料の電気伝導体であっても電流流路の断面積が異なれば、抵抗値が異なる。具体的に、同じ材料の電気伝導体であっても電流流路の断面積が小さい電気伝導体の方が抵抗値が大きい。したがって、所定の材料の電気伝導体において、抵抗体54の電流経路の断面積が大きくなるほど、その抵抗体54の抵抗値が大きくなる。
【0038】
これらのことから、抵抗体54の抵抗値は、材料及び形状によって設定される。なお、本実施形態において、抵抗体54の抵抗値が、1次コイル53の寄生抵抗の値より極端に小さい場合、抵抗体54に流れる電流の大きさが増加する。つまり、1次コイル53に流れる電流が極端に小さくなる。この場合、MOSFET31の駆動に必要とされる電圧(電流)が、そのMOSFET31に供給されなくなる可能性がある。
【0039】
本実施形態では、図3~5に示すように、抵抗体54は、トランス6と同様のU字状に形成されるが、MOSFET31の駆動に必要とされる最低限の電圧以上の電圧が供給されるのであれば、抵抗体54の材料及び形状は、特に限定されない。
【0040】
また、図3~5に示すように、本実施形態では、トランス6及び抵抗体54は、互いに対向して平行に延び、絶縁性の放熱器20は、トランス6及び抵抗体54の間に位置し、かつ、トランス6及び抵抗体54に接触している。
【0041】
すなわち、トランス6及び抵抗体54の各々は、互いに平行な面F1、F2において、湾曲又は屈曲されており、これらの面F1、F2で放熱器20に接触している。
【0042】
4.放熱器及びLC共振回路の変形例
図3~5に示すように、基板10上において対を成すトランス6及び抵抗体54のそれぞれに対して、それぞれ異なる放熱器20が接触していてもよいし、図6に示すように、1つの放熱器20が対を成すトランス6及び抵抗体54の各々に接触していてもよい。なお、図6は、本実施形態のMOSFET31の周辺の構成例を示す部分平面図の他の例である。また、図6では、具体的に、MOSFET31a等のうちの2つのMOSFET31の周辺の構成を示す。
【0043】
また、図7に示すLC共振回路5のように、抵抗体54は、複数の1次コイル53に対して、並列に接続されてもよい。たとえば、図7に示すように、2つの1次コイル53に対して、抵抗体54が並列に接続される場合、MOSFET31の周辺は、図8に示すように構成することができる。なお、図7は、LC共振回路5の構成例を示す回路図の一例である。また、図8は、本実施形態のMOSFET31の周辺の構成例を示す部分平面図のさらに他の例である。さらに、図8では、具体的に、MOSFET31a等のうちの2つのMOSFET31の周辺の構成を示す。
【0044】
これらのことから、本実施形態では、基板10上において放熱器20が設けられるのであれば、少なくとも1つの放熱器20で、各トランス6及び各抵抗体54を冷却することができる。
【0045】
放熱器20は、例えば窒化アルミニウム製のブロックにより構成されている。ただし、熱伝導率が高く、絶縁性の材料であれば、窒化アルミニウム以外の材料により放熱器20が形成されていてもよい。
【0046】
本実施形態では、トランス6が同軸ケーブルにより構成されていることから、トランス6の外表面が円周面となる。したがって、放熱器20におけるトランス6との接触面が平面からなる場合に、同軸ケーブルの極一部にしか放熱器20が接触せず、放熱が不十分となる可能性がある。そこで、トランス6と放熱器20との接触部の周辺に、例えばサーマルグリスを塗布したり、放熱器20におけるトランス6との接触面をトランス6の外表面に対応する凹面にしたりすることにより、放熱器20とトランス6との接触面積を増加させることが好ましい。このことは、抵抗体54にも同様のことが言える。
【0047】
5.高周波電源装置の全体構成
図9は、図1の高周波電源装置の全体構成を示した概略断面図である。この高周波電源装置は、中空状の筐体100内に各種部品を備えた構成を有している。筐体100には、ケーブルを挿通させるための挿通孔などは形成されているが、それ以外に開口部は形成されておらず、筐体100内はほぼ密閉状態となっている。すなわち、筐体100には、筐体100内に空気を吸い込むための吸気口や、筐体100内の空気を排出するための排出口などは形成されていない。
【0048】
筐体100内の空間は、1つ又は複数の区画壁101により区画されている。スイッチング回路3、インピーダンス変換回路4及びLC共振回路5などの各回路が実装された基板10は、例えば区画壁101により保持されている。これにより、スイッチング回路3、LC共振回路5及びトランス6などの各種部品が筐体100内に収容されている。
【0049】
ただし、LC共振回路5に含まれる誘導コイル51については、筐体100内に収容されておらず、プラズマスタンド(図示せず)の内部に配置されている。筐体100内の基板10と筐体100外の誘導コイル51とは、例えば銅板などの電気伝導体により接続されており、誘導コイル51とプラズマスタンドとの間は、例えばフッ素樹脂などの絶縁体で仕切られている。
【0050】
基板10には、筐体100内に設けられた放熱器23が取り付けられている。放熱器23は、例えば水冷方式であり、冷媒が流れる本体部21と、本体部21から突出する複数枚の放熱フィン22とを備えている。放熱器23は、主として基板10に実装したMOSFET31を冷却する。その本体部21を、例えば基板10に直接接触させて、基板10及び基板10に実装された部品を冷却することもできる。しかし、基板10の絶縁材料を経由した放熱となるため不十分である。
【0051】
このため、筐体100内には、上述の基板10及び放熱器23以外に、空冷ファン40が設けられている。空冷ファン40は、例えば区画壁101により保持されており、基板10における放熱器23側とは反対側の面に対向している。これにより、空冷ファン40が回転駆動された場合には、その空冷ファン40から基板10に対して筐体100内の空気が吹き付けられる。
【0052】
区画壁101により区画された筐体100内の空間は、筐体100内の空気を循環させるための循環路102を構成している。すなわち、空冷ファン40の吹出口401から吹き出された空気は、循環路102の途中に設けられた基板10及び放熱器23に晒された後、吸込口402から空冷ファン40に吸い込まれ、再び吹出口401から吹き出されるようになっている。
【0053】
放熱器23に備えられた複数枚の放熱フィン22は、それぞれ循環路102における空気の流通方向に沿って延びるように、互いに間隔を隔てて平行に配置されている。このように、循環路102の途中に放熱器23(放熱フィン22)が配置されることにより、筐体100内の空気を空冷ファン40により放熱器23に導きながら循環させることができる。
【0054】
このように、本実施形態では、誘導コイル51を除くLC共振回路5、スイッチング回路3及びトランス6といった部品を筐体100内に収容し、かつ、筐体100内の空気を空冷ファン40で循環させることにより、装置外の空気が装置内に流入しにくくなる。したがって、装置内の部品が装置外の空気により汚染されるのを防止することができる。
【0055】
また、筐体100内の部品が水冷方式の放熱器23で冷却されるとともに、空冷ファン40により筐体100内で循環させる空気が、水冷方式の放熱器23で冷却されながら循環するため、高い冷却効率を実現することができる。したがって、装置外の空気が装置内に流入しにくい構成であっても、装置内の部品を良好に冷却することができる。
【0056】
6.その他の変形例
以上の実施形態では、誘導コイル51を有するLC共振回路5が、誘導コイル51に対してコンデンサ52が直列に接続された直列共振回路により構成される場合について説明した。しかし、このような構成に限らず、誘導コイル51に対してコンデンサ52が並列に接続された並列共振回路によりLC共振回路5が構成されていてもよい。
【0057】
トランス6は、セミリジッド同軸ケーブルにより構成されるものに限らず、他の同軸ケーブルにより構成されていてもよい。保護被覆を有する同軸ケーブルをトランス6として用いる場合には、保護被覆を取り除いて使用することが好ましい。ただし、同軸ケーブルを用いるような構成に限らず、トランス6の1次コイル53及び2次コイル33を同軸上に配置するだけの構成であってもよい。
【0058】
また、抵抗体54として、高周波電源装置に備えられた部品、具体的には、電気的に接続可能な部品、すなわち、電気伝導性及び抵抗値を有する部品が用いられても良い。
【0059】
たとえば、高周波電源装置が汎用の金属筐体のファンを備え、抵抗体54として、その汎用の金属筐体のファンが用いられる場合、ファンから吹き出さされる空気に放熱器20が晒されるように設置すれば、放熱器20の冷却効率を向上させることができる。
【0060】
また、複数の基板10において、各種回路は同じように構成されても、部品の品質等の違いによって、トランス6に流れる電流の値が僅かに異なることがある。抵抗体54として、可変抵抗器が用いられるのであれば、トランス6に流れる電流が本来の値と異なる電流であっても、抵抗体54を取り換えることなく適宜にトランス6に流れる電流を調整することができる。つまり、高周波電源装置の製造において、一定の品質を保つのが容易になる。
【0061】
本発明に係る高周波電源装置は、ICP発光分析装置に限らず、プラズマを利用して分析を行う他の分析装置にも適用可能である。また、本発明に係る高周波電源装置は、分析装置に限らず、プラズマを利用する他の各種装置(例えば、プラズマCVD用の高周波発振回路など)にも適用可能である。
【0062】
7.態様
上述した実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0063】
(第1項)一態様に係る自励発振方式の高周波電源装置は、
直流電源と、
プラズマ生成用の誘導コイル及びコンデンサを含むLC共振回路と、
前記直流電源から供給される直流電力をスイッチングして前記LC共振回路に与える半導体素子を含むスイッチング回路と、
前記LC共振回路に含まれる1次コイル、及び、前記半導体素子をオン/オフさせるために当該半導体素子に接続される2次コイルを有するトランスとを備え、
前記トランスは、前記1次コイル及び前記2次コイルを同軸上に有する同軸構造で形成され、
前記LC共振回路は、前記1次コイルに対して並列に接続される抵抗体を有してもよい。
【0064】
第1項に記載の自励発振方式の高周波電源装置によれば、トランスの1次コイルに対して、抵抗体を並列に接続することで、トランスに過剰な電流が流れるのを抑制しつつ、そのトランスに適切な電流を流すことができる。
【0065】
(第2項)第1項に記載の自励発振方式の高周波電源装置において、
前記トランス及び前記抵抗体の形状がU字状であってもよい。
【0066】
第2項に記載の自励発振方式の高周波電源装置によれば、充分なフィードバック電圧を生成できるだけの長さを確保しつつ、トランスの2次コイルの入力端及び出力端と、半導体素子との間の配線を短くして、パターンインダクタンスによるフィードバック電圧の減衰を抑えることができる。また、抵抗体の端部の接続位置が近くても十分な抵抗値を確保することができる。
【0067】
(第3項)第1項又は第2項に記載の自励発振方式の高周波電源装置において、
絶縁性を有する放熱器をさらに備え、
前記放熱器は、前記トランス及び前記抵抗体の両方に接触してもよい。
【0068】
第3項に記載の自励発振方式の高周波電源装置によれば、トランス及び抵抗体からの発熱が放熱器を介して放熱されるため、高い放熱効率を実現することができる。
【0069】
(第4項)第3項に記載の自励発振方式の高周波電源装置において、
前記トランス及び前記抵抗体が、互いに対向して平行に延び、
前記放熱器は、前記トランス及び前記抵抗体の間に位置してもよい。
【0070】
第4項に記載の自励発振方式の高周波電源装置によれば、少なくとも1つの放熱器でトランス及び抵抗体を冷却することができる。
【0071】
(第5項)第1項から第4項のいずれかに記載の自励発振方式の高周波電源装置において、
前記抵抗体は、可変抵抗器であってもよい。
【0072】
第5項に記載の自励発振方式の高周波電源装置によれば、抵抗体を取り換えることなくトランスに流れる電流を調整することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 直流電源
3 スイッチング回路
5 LC共振回路
6 トランス
20 放熱器
31 MOSFET
33 2次コイル
51 誘導コイル
52 コンデンサ
53 1次コイル
54 抵抗体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9