(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】半導体接触器、半導体接触器用状態監視装置及び半導体接触器の状態監視方法
(51)【国際特許分類】
H03K 17/725 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
H03K17/725 E
H03K17/725 D
(21)【出願番号】P 2021022318
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】米澤 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】町田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】田口 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】石橋 広脩
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169145(JP,A)
【文献】特公平6-81022(JP,B2)
【文献】特開昭58-47329(JP,A)
【文献】特開2020-137352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K17/00
H03K17/72-17/735
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と、
第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間の電流経路に直列に挿入され
、相互に逆並列に接続された複数のサイリスタと、
前記
複数のサイリスタをオン又はオフさせる制御回路と、
前記第1端子と前記第2端子との間の電圧を測定する電圧測定回路と、
前記電圧測定回路により前記
複数のサイリスタのオン状態で測定された前記電圧
が所定の電圧範囲の上限値を超えた場合、前記
複数のサイリスタの劣化と判定する処理部と、を備える、半導体接触器。
【請求項2】
前記処理部は、前記電圧測定回路により前記複数のサイリスタのオン状態で測定された前記電圧が前記電圧範囲の下限値よりも低下した場合、前記複数のサイリスタの短絡故障又は温度の異常上昇と判定する、請求項1に記載の半導体接触器。
【請求項3】
前記電流経路に流れる電流を測定する電流測定回路を更に備え、
前記処理部は、前記電流測定回路により前記複数のサイリスタのオン状態で測定された前記電流が所定の電流範囲にあり、且つ、前記電圧測定回路により前記複数のサイリスタのオン状態で測定された前記電圧が前記電圧範囲の上限値を超えた場合、前記複数のサイリスタの劣化と判定する、請求項1又は2に記載の半導体接触器。
【請求項4】
前記処理部は、前記電流測定回路により前記複数のサイリスタのオン状態で測定された前記電流が前記電流範囲の上限値を超え、且つ、前記電圧測定回路により前記複数のサイリスタのオン状態で測定された前記電圧が前記電圧範囲の上限値を超えた場合、前記複数のサイリスタの過電流異常と判定する、請求項3に記載の半導体接触器。
【請求項5】
第1端子と第2端子との間の電流経路に直列に挿入され
、相互に逆並列に接続された複数のサイリスタと、前記
複数のサイリスタをオン又はオフさせる制御回路とを有する半導体接触器の状態を監視する半導体接触器用状態監視装置であって、
前記第1端子と前記第2端子との間の電圧を測定する電圧測定回路により前記
複数のサイリスタのオン状態で測定された前記電圧
が所定の電圧範囲の上限値を超えた場合、前記
複数のサイリスタの劣化と判定する処理部を備える、半導体接触器用状態監視装置。
【請求項6】
第1端子と第2端子との間の電流経路に直列に挿入され
、相互に逆並列に接続された複数のサイリスタと、前記
複数のサイリスタをオン又はオフさせる制御回路とを有する半導体接触器の状態を監視する方法であって、
電圧測定回路は、前記第1端子と前記第2端子との間の電圧を測定し、
処理部は、前記電圧測定回路により前記
複数のサイリスタのオン状態で測定された前記電圧
が所定の電圧範囲の上限値を超えた場合、前記
複数のサイリスタの劣化と判定する、半導体接触器の状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体接触器、半導体接触器用状態監視装置及び半導体接触器の状態監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイリスタを主回路の開閉素子として採用した通称ソリッドステートコンタクタと呼ばれる半導体接触器が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、サイリスタなどのスイッチング素子からなる主開閉回路と、主開閉回路の点弧回路と、点弧回路に操作入力を出力する操作回路とを備える無接点接触器の異常を検出する異常検出装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この異常検出装置は、点弧回路への操作入力が有り、且つ、スイッチング素子の入出力電極間の電圧が有るとき、主開閉回路の開放異常と判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-125898号公報
【文献】特開平5-76123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の異常検出技術は、スイッチング素子の入出力電極間の電圧の有無を検知することによって、半導体接触器に実際に発生した開放異常等の故障を検出する方式のため、半導体接触器の故障の発生を未然に防止することが難しかった。
【0005】
本開示は、故障発生の未然防止に有益な半導体接触器、半導体接触器用状態監視装置及び半導体接触器の状態監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、
第1端子と、
第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間の電流経路に直列に挿入され、相互に逆並列に接続された複数のサイリスタと、
前記複数のサイリスタをオン又はオフさせる制御回路と、
前記第1端子と前記第2端子との間の電圧を測定する電圧測定回路と、
前記電圧測定回路により前記複数のサイリスタのオン状態で測定された前記電圧が所定の電圧範囲の上限値を超えた場合、前記複数のサイリスタの劣化と判定する処理部と、を備える、半導体接触器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、半導体接触器の故障発生の未然防止に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の半導体接触器の構成例を示す図である。
【
図2】第2実施形態の半導体接触器の構成例を示す図である。
【
図3】第3実施形態の半導体接触器及び半導体接触器用状態監視装置の構成例を示す図である。
【
図4】第4実施形態の半導体接触器及び半導体接触器用状態監視装置の構成例を示す図である。
【
図5】半導体スイッチング素子の両端に発生する電圧とその半導体スイッチング素子に流れる電流との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施形態の半導体接触器及び半導体接触器用状態監視装置について図面を参照して説明する。
【0010】
各実施形態の半導体接触器は、交流が流れる配線に直列に挿入され、当該配線を開閉する開閉器である。半導体接触器は、サイリスタやトライアックなどの半導体スイッチング素子を主回路の開閉素子として備え、ソリッドステートコンタクタとも称される。各実施形態の半導体接触器用状態監視装置は、半導体接触器の状態を監視する装置であり、その具体例として、半導体接触器の異常を検出する機能を有する異常検出ユニットが挙げられる。
【0011】
図1は、第1実施形態の半導体接触器の構成例を示す図である。
図1に示す半導体接触器101は、サイリスタ21,22を主回路20の開閉素子として備える開閉器である。半導体接触器101は、例えば、主端子11、主端子12、制御端子13、制御端子14、主回路20、制御回路30、電圧測定回路40、処理部50及びメモリ60を備える。
【0012】
主端子11は、第1端子の一例であり、配線81の一端に接続される。配線81の他端は、例えば、電源側に接続される。主端子12は、第2端子の一例であり、配線82の一端に接続される。配線82の他端は、例えば、負荷側に接続される。
【0013】
主回路20は、主端子11と主端子12との間の電流経路23に直列に挿入され、相互に逆並列に接続された複数のサイリスタ21,22を有する。サイリスタ21,22は、それぞれ、ゲート、カソード及びアノードの三端子を有する半導体スイッチング素子である。
【0014】
なお、主回路20の半導体スイッチング素子は、サイリスタに限られず、トライアック、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの他のスイッチング素子でもよい。
【0015】
制御回路30は、主回路20のサイリスタ21,22をオン又はオフさせる回路である。制御回路30は、例えば、不図示の外部電源から一対の制御端子13,14を介して入力される制御電圧Vcの有無に従って、サイリスタ21,22のオン又はオフを制御する。
【0016】
制御回路30は、例えば、制御電圧Vcが入力されると、サイリスタ21,22をオン状態にする。これにより、配線81,82及び電流経路23が導通し、交流が配線81,82及び電流経路23に流れる。一方、制御回路30は、例えば、制御電圧Vcの入力が停止すると、サイリスタ21,22をオフ状態にする。これにより、配線81,82及び電流経路23の導通が遮断され、交流が配線81,82及び電流経路23に流れなくなる。制御回路30によるサイリスタ21,22の点弧方式は、ゼロクロス点弧方式でも非ゼロクロス点弧方式でもよい。
【0017】
例えば、制御電圧Vcが制御回路30に入力されると、制御電圧がサイリスタ21,22の制御電極(具体的には、ゲート)に制御回路30により印加される。ゼロクロス点弧方式の場合、制御電圧がサイリスタ21,22の制御電極に印加されと、サイリスタ21,22の主電極間(具体的には、アノードとカソードとの間)の電圧(極間電圧)がゼロ電圧近傍になってから、サイリスタ21,22はオンする。これにより、サイリスタ21,22のオン時の電流立ち上がり速度が遅いため、ノイズの発生を抑制できる。これに対し、非ゼロクロス点弧方式の場合、制御電圧がサイリスタ21,22の制御電極に印加されたタイミングで、サイリスタ21,22はオンする。これにより、配線81,82に電流を速やかに流し始めることができる。
【0018】
一方、例えば、制御回路30への制御電圧Vcの入力が停止すると、サイリスタ21,22の制御電極への制御電圧の印加が制御回路30により遮断される。上記のいずれの点弧方式でも、サイリスタ21,22の制御電極への制御電圧の印加が遮断されると、サイリスタ21,22に流れる電流がゼロ近傍になってから、サイリスタ21,22はオフする。
【0019】
電圧測定回路40は、主端子11と主端子12との間の電圧(以下、"電圧V"とも称する)を測定する回路である。電圧Vは、主回路20の両端電圧(サイリスタ21,22の主電極間の電圧)に相当する。電圧測定回路40は、電圧Vの測定結果を処理部50に出力する。電圧測定回路40は、例えば、測定された電圧Vの大きさを表すアナログの電圧測定信号を処理部50に出力する。
【0020】
処理部50は、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vの変化を監視する回路であり、その具体例として、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが挙げられる。処理部50の機能は、メモリに記憶されたプログラムによって、プロセッサが動作することにより実現される。処理部50は、FPGA(Field Programmable Gate Array)によって形成されてもよい。
【0021】
処理部50は、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vの変化を監視し、その変化が漸増か否かを判定する。サイリスタ21,22の劣化が進行すると、サイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vが漸増する現象が現れる。つまり、サイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vの漸増は、サイリスタ21,22の開放異常等の故障の兆候とみなすことができる。処理部50は、電圧Vが故障前に漸増する現象を利用して、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vの変化が漸増の場合、サイリスタ21,22の劣化と判定する。これにより、サイリスタ21,22が開放異常等の故障が実際に発生する前段階でサイリスタ21,22の劣化を把握可能となるので、半導体接触器101のサイリスタ21,22の故障発生の未然防止に貢献できる。
【0022】
処理部50は、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vの変化が漸増の場合、サイリスタ21,22の劣化を出力部51から通知してもよい。このような劣化通知を受けることで、ユーザ又は外部装置は、サイリスタ21,22の劣化を認知でき、例えば、半導体接触器101の交換を促すことができる。処理部50は、電気信号、音、光、表示又はそれらのいずれかの組み合わせによって、サイリスタ21,22の劣化を通知してもよい。
【0023】
処理部50は、サイリスタ21,22の劣化判定の結果をメモリ60に保存してもよい。これにより、サイリスタ21,22の劣化判定の結果を、メモリ60を参照することで把握することができる。処理部50は、サイリスタ21,22の劣化判定の結果を時系列にメモリ60に保存してもよい。これにより、サイリスタ21,22の劣化判定の経緯を、メモリ60を参照することで把握することができる。
【0024】
処理部50は、サイリスタ21,22がオン状態かオフ状態かのオンオフ情報を、サイリスタ21,22をオン又はオフさせる制御回路30から入手してもよい。例えば、処理部50は、サイリスタ21,22がオン状態であることを表す情報が制御回路30から入力されている期間に電圧測定回路40から入力される電圧Vの測定結果を、サイリスタ21,22の劣化判定に利用する。
【0025】
処理部50は、電圧Vが電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定されるごとに増加する場合、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vの変化が漸増と判断できる。よって、処理部50は、電圧Vが電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定されるごとに増加する場合、サイリスタ21,22の劣化と判定してもよい。
【0026】
処理部50は、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で前回測定された電圧Vに比べて、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で今回測定された電圧Vが大きい場合、電圧Vの変化が漸増と判断できる。よって、処理部50は、このような場合、サイリスタ21,22の劣化と判定してもよい。処理部50は、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vを、メモリ60に蓄積することで、過去に測定された電圧Vをメモリ60から参照できる。
【0027】
処理部50は、電圧Vの一周期を超える測定周期(例えば、電圧Vの一周期の整数倍の周期)で電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vの変化が漸増の場合、サイリスタ21,22を劣化と判定してもよい。これにより、処理部50は、電圧Vが漸増か否かを高精度に判断できる。
【0028】
処理部50は、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vが漸増し所定の電圧範囲(以下、"電圧範囲A"とも称する)から外れた場合、サイリスタ21,22の劣化と判定してもよい。電圧範囲Aがサイリスタ21,22の劣化特性に応じて適切に設定されることで、サイリスタ21,22の劣化の判定精度が向上する。
【0029】
処理部50は、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vの変化が減少の場合、サイリスタ21,22の短絡故障又は温度の異常上昇と判定してもよい。電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vの減少は、サイリスタ21,22の短絡故障又は温度の異常上昇とみなすことができるからである。例えば、処理部50は、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vが漸減し電圧範囲Aから外れた場合、サイリスタ21,22の短絡故障又は温度の異常上昇と判定してもよい。
【0030】
処理部50は、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vの実効値又は平均値を算出してもよい。処理部50は、算出された実効値又は平均値が漸増し電圧範囲Aの上限値から外れた場合、サイリスタ21,22の劣化と判定してもよい。電圧Vの大きさを表す数値として好適な実効値又は平均値を電圧Vの漸増か否かの判定に利用することで、サイリスタ21,22の劣化の判定精度が向上する。同様に、処理部50は、算出された実効値又は平均値が漸減し電圧範囲Aの下限値から外れた場合、サイリスタ21,22の短絡故障又は温度の異常上昇と判定してもよい。電圧Vの大きさを表す数値として好適な実効値又は平均値を電圧Vの漸減か否かの判定に利用することで、サイリスタ21,22の短絡故障又は温度の異常上昇の判定精度が向上する。
【0031】
第1実施形態は、負荷電流が大きく変動しない場合に特に有効である。
【0032】
図2は、第2実施形態の半導体接触器の構成例を示す図である。第2実施形態において、上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図2に示す第2実施形態の半導体接触器102は、電流測定回路70を更に備える点で、
図1に示す第1実施形態の半導体接触器101と異なる。
【0033】
図2において、電流測定回路70は、電流経路23に流れる電流(以下、"電流I"とも称する)を測定する回路である。電流Iは、サイリスタ21,22に流れる電流に相当する。電流測定回路70は、電流Iの測定結果を処理部50に出力する。電流測定回路70は、例えば、測定された電流Iの大きさを表すアナログの電流測定信号を処理部50に出力する。
【0034】
処理部50は、電流測定回路70によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電流Iが所定の電流範囲にあり、且つ、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vの変化が漸増の場合、サイリスタ21,22の劣化と判定してもよい。これにより、定常時の電流Iが所定の電流範囲(以下、"電流範囲B"とも称する)内で変化するシステムであれば、処理部50は、電流Iが変化しても、サイリスタ21,22の劣化を高精度に判定できる。
【0035】
処理部50は、電流測定回路70によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電流Iが電流範囲Bを超え、且つ、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vが電圧範囲Aを超えた場合、サイリスタ21,22の過電流異常と判定してもよい。電流Iの上昇に伴って、サイリスタ21,22の電圧降下は大きくなるので、電圧Vも上昇する。したがって、処理部50は、電流Iが電流範囲Bを超え且つ電圧Vが電圧範囲Aを超える上記の条件が成立した場合、サイリスタ21,22に過電流が流れたと判定できる(過電流異常と判定できる)。
【0036】
第2実施形態は、負荷電流が大きく変動する場合に特に有効である。
【0037】
図3は、第3実施形態の半導体接触器及び半導体接触器用状態監視装置の構成例を示す図である。第3実施形態において、上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図3に示す第3実施形態は、状態監視装置201が処理部50及びメモリ60を備える点で、
図1に示す第1実施形態と異なる。
【0038】
図3に示す状態監視装置201は、半導体接触器用状態監視装置の一例であり、半導体接触器103の状態を監視する装置である。半導体接触器103は、主端子11、主端子12、制御端子13、制御端子14、主回路20、制御回路30及び電圧測定回路40を備える。状態監視装置201は、処理部50及びメモリ60を備える。
【0039】
電圧測定回路40は、電圧Vの測定結果を、半導体接触器103とは別体の状態監視装置201に内蔵される処理部50に、外部配線を介して出力する。
【0040】
電圧測定回路40は、半導体接触器103ではなく、状態監視装置201に備えてもよい。この場合、電圧測定回路40は、主回路20の両端(サイリスタ21,22の両端)を図示のようにモニタすることで電圧Vを測定してもよいし、配線81,82に接続された一対のモニタ線(不図示)を介して、電圧Vを測定してもよい。
【0041】
図4は、第4実施形態の半導体接触器及び半導体接触器用状態監視装置の構成例を示す図である。第4実施形態において、上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図4に示す第4実施形態は、状態監視装置201が処理部50及びメモリ60を備える点で、
図2に示す第2実施形態と異なる。
【0042】
図4に示す状態監視装置201は、半導体接触器用状態監視装置の一例であり、半導体接触器104の状態を監視する装置である。半導体接触器104は、主端子11、主端子12、制御端子13、制御端子14、主回路20、制御回路30、電圧測定回路40及び電流測定回路70を備える。状態監視装置201は、処理部50及びメモリ60を備える。
【0043】
電圧測定回路40は、電圧Vの測定結果を、半導体接触器104とは別体の状態監視装置201に内蔵される処理部50に、外部配線を介して出力する。電流測定回路70は、電流Iの測定結果を、半導体接触器104とは別体の状態監視装置201に内蔵される処理部50に、外部配線を介して出力する。
【0044】
図5は、サイリスタ21,22等の半導体スイッチング素子の両端に発生する電圧Vとその半導体スイッチング素子に流れる電流Iとの関係の一例を示す図である。半導体スイッチング素子が過電流や熱ストレスによって劣化すると、半導体スイッチング素子のチップの剥離や損傷などによって、電圧Vは、増加し、電圧V-電流Iの特性カーブは、右側にシフトする(例えば、カーブC1参照)。また、半導体スイッチング素子に過電流が流れると、電流Iの増加による電圧Vの増加によって、半導体スイッチング素子の動作点は、特性カーブに沿って上方に移動する(例えば、動作点P1参照)。また、半導体スイッチング素子の短絡故障又は温度(例えば、半導体スイッチング素子のジャンクション温度)の異常上昇が生じると、電圧Vは、減少し、電圧V-電流Iの特性カーブは、左側にシフトする(例えば、カーブC2参照)。
【0045】
したがって、処理部50は、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vが漸増し電圧範囲Aの上限値(例えば、1V)を超えた場合、サイリスタ21,22の劣化と判定してもよい。これにより、電流測定回路70を利用しなくても、サイリスタ21,22の劣化を簡易に判定できる。また、処理部50は、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vが漸減し電圧範囲Aの下限値(例えば、0.5V)よりも低下した場合、サイリスタ21,22の短絡故障又は温度の異常上昇と判定してもよい。これにより、電流測定回路70を利用しなくても、サイリスタ21,22の短絡故障又は温度の異常上昇を簡易に判定できる。
【0046】
また、処理部50は、電流測定回路70によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電流Iが電流範囲Bにあり、且つ、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vの変化が漸増し電圧範囲Aの上限値(例えば、1V)を超えた場合、サイリスタ21,22の劣化と判定してもよい。これにより、サイリスタ21,22の劣化を高精度に判定できる。例えば、電流範囲Bは、1A以上10A以下の範囲である。
【0047】
また、処理部50は、電流測定回路70によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電流Iが電流範囲Bの上限値を超え、且つ、電圧測定回路40によりサイリスタ21,22のオン状態で測定された電圧Vが電圧範囲Aの上限値を超えた場合、サイリスタ21,22の過電流異常と判定してもよい。これにより、サイリスタ21,22の過電流異常を高精度に判定できる。例えば、電流範囲Bの上限値は、10Aであり、電圧範囲Aの上限値は、1Vである。
【0048】
以上、実施形態を説明したが、本開示の技術は上記実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0049】
11,12 主端子
13,14 制御端子
20 主回路
21,22 サイリスタ
23 電流経路
30 制御回路
40 電圧測定回路
50 処理部
60 メモリ
70 電流測定回路
81,82 配線
101,102,103,104 半導体接触器
201 状態監視装置