(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】磁気検出システム
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20240423BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240423BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20240423BHJP
【FI】
G01R33/02 B
G01R33/02 Q
H02J50/10
H02J50/90
(21)【出願番号】P 2021045315
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大林 和良
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-060390(JP,A)
【文献】特開2018-025847(JP,A)
【文献】特開2020-091719(JP,A)
【文献】特開2016-127775(JP,A)
【文献】特表2016-537941(JP,A)
【文献】特開2020-022340(JP,A)
【文献】国際公開第2020/078982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
H02J 50/10
H02J 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電システム(100)から電磁誘導によって電力を受電する受電システム(200)を備える移動体(202)で用いられる磁気検出システム(300)であって、
地面(105)に配置された磁気源(20)からの磁気源磁束(φW20)
が含まれ、送電システムが前記電力を送電する際に発生させる送電コイル磁束(φW40)を含み得る磁束
を第1磁束(φW1)として検出
する位置に設けられた第1磁束測定部(311)と、
前記送電コイル磁束を第2磁束として測定する第2磁束測定部(312)と、
前記
第1,第2磁束測定部が測定した磁束か
ら前記磁気源磁束を検出する信号処理部(320)と、
を備え
、
前記信号処理部は、前記第2磁束測定部が測定した第2磁束(φW2)が予め定めた大きさ未満の場合に、前記磁気源磁束を検出するよう第1磁束測定部の動作を制御する、磁気検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気検出システムであって、
前記信号処理部は、前記第2磁束が予め定められた値(φW0)未満の期間に、前記第1磁束測定部を動作させ、前記第2磁束が予め定められた値以上の期間では、前記第1磁束測定部の動作を停止させることで前記磁気源磁束を検出する、磁気検出システム。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気検出システムであって、
前記信号処理部は、前記第2磁束がゼロクロスするゼロクロス点を算出し、前記ゼロクロス点を中心として予め定められた範囲(Z)の期間を前記第2磁束が予め定められた値未満となる期間とする、磁気検出システム。
【請求項4】
送電システム(100)から電磁誘導によって電力を受電する受電システム(200)を備える移動体(202)で用いられる磁気検出システム(300)であって、
地面(105)に配置された磁気源(20)からの磁気源磁束(φW20)が含まれ、送電システムが前記電力を送電する際に発生させる送電コイル磁束(φW40)を含み得る磁束を第1磁束(φW1)として検出する位置に設けられた第1磁束測定部(311)と、
前記送電コイル磁束を第2磁束として測定する第2磁束測定部(312)と、
前記第1,第2磁束測定部が測定した磁束から前記磁気源磁束を検出する信号処理部(321)と、
を備え、
前記信号処理部は、前記第2磁束測定部が測定した第2磁束(φW2)を用い
て、前記第1磁束測定部が測定した前記第1磁束
から前記送電コイル磁束の影響を除く補正を行なって前記磁気源磁束を求める、磁気検出システム。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気検出システムであって、
前記第2磁束測定部は、前記第1磁束測定部が前記磁気源磁束及び前記送電コイル磁束を測定できるときに、前記磁気源磁束を測定できず、前記送電コイル磁束のみを測定できる位置に配置されており、
前記信号処理部は、前記第1磁束と前記第2磁束の差分(ΔφW)を用いて、前記磁気源磁束を算出する、磁気検出システム。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気検出システムであって、
前記信号処理部は、前記第1磁束の極大値と、前記第1磁束測定部が前記送電コイル磁束を検出しなかったときの第1レファレンス値(φW1m)と、前記第2磁束の極大値と、前記第2磁束測定部が前記送電コイル磁束及び前記磁気源磁束のいずれをも検出しなかったときの第2レファレンス値(φW2m)と、を用いて、前記第1磁束測定部と前記第2磁束測定部の感度(G)を補正し、補正後の前記第1磁束と前記第2磁束の差分(φh)を用いて、前記磁気源磁束を算出する、磁気検出システム。
【請求項7】
請求項1
または請求項4に記載の磁気検出システムであって、
前記
第1磁束測定部を2つ備え、
2つの前記
第1磁束測定部は、前記移動体の幅方向の異なる位置に設けられており、
更に、2つの前記
第1磁束測定部が測定した磁束の差分から前記磁気源に対し前記移動体が幅方向にどれだけずれているかを算出する
位置検出部を備える、磁気検出システム。
【請求項8】
請求項7に記載の磁気検出システムであって、
2つの前記第1磁束測定部は、いずれも、前記磁気源磁束
が含まれ、前記送電システムが前記電力を送電する際に発生させる送電コイル磁束(φW40)
を含み得る磁束を測定する、磁気検出システム。
【請求項9】
請求項1
または請求項4に記載の磁気検出システムであって、
更に、前記
第1磁束測定部が第1のタイミングで測定した磁束(φW201)と、第2のタイミングで測定した磁束(φW202)と、前記第1のタイミングから前記第2のタイミングまでの前記移動体の動きを用いて、前記磁気源に対する前記移動体の幅方向の位置を算出する
位置検出部を備える、磁気検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の運転支援等のために、道路に磁気マーカを敷設し、車両側のMI素子等の磁気センサで磁気変化を検出することで車両の幅方向の位置ズレを検出するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、磁気センサを用いて、磁気マーカの磁束を検出しているが、非接触給電システムが稼働すると、非接触給電システムの送電コイルから磁束が発生し、この磁束は、磁気マーカの磁束よりも大きいため、磁気センサが道路の磁気マーカを検出できなくなる、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、送電システム(100)から電磁誘導によって電力を受電する受電システム(200)を備える移動体(202)で用いられる磁気検出システム(300)が提供される。この磁気検出システムは、地面(105)に配置された磁気源(20)からの磁気源磁束(φW20)が含まれ、送電システムが前記電力を送電する際に発生させる送電コイル磁束(φW40)を含み得る磁束を第1磁束として検出する位置に設けられた第1磁束測定部(311)と、前記送電コイル磁束を第2磁束として測定する第2磁束測定部(312)と、前記第1,第2磁束測定部が測定した磁束から前記磁気源磁束を検出する信号処理部(320~323)と、を備え、前記信号処理部は、前記第2磁束測定部が測定した第2磁束(φW2)が予め定めた大きさ未満の場合に、前記磁気源磁束を検出するよう第1磁束測定部の動作を制御する。
また、本開示の他の形態によれば、送電システムから電磁誘導によって電力を受電する受電システムを備える移動体で用いられる磁気検出システムが提供される。この磁気検出システムは、地面に配置された磁気源からの磁気源磁束が含まれ、送電システムが前記電力を送電する際に発生させる送電コイル磁束を含み得る磁束を第1磁束として検出する位置に設けられた第1磁束測定部と、前記送電コイル磁束を第2磁束として測定する第2磁束測定部と、前記第1,第2磁束測定部が測定した磁束から前記磁気源磁束を検出する信号処理部と、を備え、前記信号処理部は、前記第2磁束測定部が測定した第2磁束を用いて、前記第1磁束測定部が測定した前記第1磁束から前記送電コイル磁束の影響を除く補正を行なって前記磁気源磁束を求める。
これらの形態によれば、非接触給電システムが稼働している状態でも磁気源の磁束を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】道路に埋設された送電コイルと磁気源とを示す平面図である。
【
図3】車両から見た、磁気源磁束が達する範囲、送電コイル磁束が達する範囲と、第1磁束センサ部と、第2磁束センサ部の位置関係の一例を示す説明図である。
【
図5】磁束センサ部と第1磁束測定部の構成を示す説明図である。
【
図6】磁束センサ部と第2磁束測定部の構成を示す説明図である。
【
図7】磁気源磁束と、送電コイル磁束と、検出パルスを示す説明図である。
【
図8】第1磁束測定部や第2磁束測定部が、磁気源磁束のみ、送電コイル磁束のみ、磁気源磁束と送電コイル磁束の両方の合計磁束、を測定したときを示す説明図である。
【
図9】信号処理部が実行する磁束検出処理工程を示す説明図である。
【
図10】第1磁束と、第2磁束を示す説明図である。
【
図11】第1実施形態の変形例の第1磁束測定部を示す説明図である。
【
図12】第2実施形態における車両から見た、磁気源磁束が達する範囲、送電コイル磁束が達する範囲と、第1磁束センサ部と、第2磁束センサ部の位置関係の一例を示す説明図である。
【
図13】磁気源検出装置の構成を示す説明図である。
【
図14】信号処理部が実行する磁束検出処理工程を示す説明図である。
【
図15】第1磁束と、第2磁束と、差分を示す説明図である。
【
図16】第3実施形態における車両から見た、磁気源磁束が達する範囲、送電コイル磁束が達する範囲と、第1磁束センサ部を示す説明図である。
【
図17】
図16から一定時間経過後における磁気源磁束が達する範囲、送電コイル磁束が達する範囲と、第1磁束センサ部を示す説明図である。
【
図18】磁気源検出装置の構成を示す説明図である。
【
図19】信号処理部が実行する磁束検出処理工程を示す説明図である。
【
図22】第4実施形態における信号処理部の構成を示す説明図である。
【
図23】第4実施形態における信号処理部が実行する磁束検出処理工程を示す説明図である。
【
図24】第4実施形態における第1磁束と第2磁束を示す説明図である。
【
図25】第5実施形態の磁気源と車両を示す説明図である。
【
図26】道路に埋設された送電コイルと磁気源とを示す説明図である。
【
図27】第6実施形態の磁気源と車両を示す説明図である。
【
図28】第6実施形態の磁気源検出装置を示す説明図である。
【
図29】第7実施形態の磁気源と車両を示す説明図である。
【
図30】第1磁気センサ部を1つのみ備える実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
・第1実施形態:
図1は、走行中給電システム500を示す説明図である。
図2は、道路105に埋設された送電コイル40と磁気源20とを示す平面図である。走行中給電システム400は、道路105側の送電システム100と、移動体である車両202側の受電システム200とを備える。走行中給電システム400は、車両202の走行中に送電システム100から車両202に給電することが可能なシステムである。車両202は、例えば、電気自動車やハイブリッド車として構成される。
図1において、x軸方向は車両202の進行方向、すなわち、前後方向を示し、y軸方向は車両202の幅方向、すなわち、車両202の進行方向に対する左右方向を示し、z軸方向は鉛直上方向、すなわち、高さ方向を示す。
【0008】
道路105側の送電システム100は、道路105に沿って並べられた複数の送電用のコイル40(以下「送電コイル40」とも呼ぶ。)と、複数の送電コイル40のそれぞれに交流電圧を供給する複数の送電回路30と、複数の磁気源20と、複数の送電回路30に直流電圧を供給する電源回路10と、給電側制御部16と、を備えている。
【0009】
複数の送電コイル40は、道路105の地表から所定の深さに、x方向に沿って設置されている。道路105の送電コイル40の内側には、磁気源20が埋設されている。本実施形態では、磁気源20は、点状の磁気源であり、例えば、磁石により形成されている。
図2に示す例では、磁気源20は、送電コイル40の内側に配置されているが、道路105に沿って配置されていれば、送電コイル40の内側以外の位置に配置されていてもよい。また、磁気源20は送電コイル40毎に配置するのではなく、数個のコイルに対し1個の割合で配置されていてもよい。送電回路30は、電源回路10から供給される直流電圧を高周波の交流電圧に変換して送電コイル40に印加する回路であり、図示しないインバータ回路、共振回路を含んでいる。なお、インバータ回路と共振回路に加え、フィルタ回路を備えても良い。電源回路10は、直流の電力を送電回路30に供給する回路である。例えば、電源回路10は、商用電源から供給される交流を整流して直流を出力するAC/DCコンバータ回路として構成される。なお、電源回路10が出力する直流は、完全な直流でなくてもよく、ある程度の変動(リップル)を含んでいても良い。
【0010】
車両202は、バッテリ210と、補機バッテリ215と、受電側制御部220と、受電回路230と、受電コイル240と、DC/DCコンバータ回路260と、インバータ回路270と、モータジェネレータ280と、補機290と、磁気源検出装置300と、位置検出部600と、を備えている。受電コイル240は、受電回路230に接続されており、受電回路230の出力には、バッテリ210と、DC/DCコンバータ回路260の高圧側と、インバータ回路270と、が接続されている。DC/DCコンバータ回路260の低圧側には、補機バッテリ215と、補機290とが接続されている。インバータ回路270には、モータジェネレータ280が接続されている。
【0011】
受電コイル240は、送電コイル40との間の電磁誘導によって誘導起電力を生じる装置である。受電回路230は、受電コイル240から出力される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、整流回路にて生成した直流の電圧を、バッテリ210の充電に適した電圧に変換するDC/DCコンバータ回路と、を含んでいる。受電回路230から出力される直流電圧は、バッテリ210の充電や、インバータ回路270を介したモータジェネレータ280の駆動に利用することができる。また、受電回路230から出力される直流電圧は、DC/DCコンバータ回路260を用いて降圧することで、補機バッテリ215の充電や、補機290の駆動にも利用可能である。また、受電コイル240を複数個、設置する構成であってもよい。受電コイル240を複数設置することで、車両202の位置ずれに対し、ロバストな最適設計が可能になる。また、受電コイル240を複数設置した際は、受電回路230を多相化してもよい。多相化することで、受電回路230をひとつにすることができ、車両202の搭載スペースを抑制できる。
【0012】
バッテリ210は、モータジェネレータ280を駆動するための比較的高い直流電圧、例えば数百Vの電圧を出力する2次電池である。モータジェネレータ280は、3相交流モータとして動作し、車両202の走行のための駆動力を発生する。モータジェネレータ280は、車両202の減速時にはジェネレータとして動作し、電力を回生する。インバータ回路270は、モータジェネレータ280がモータとして動作するとき、バッテリ210の電力を3相交流に変換してモータジェネレータ280に供給する。インバータ回路270は、モータジェネレータ280がジェネレータとして動作するとき、モータジェネレータ280が回生した3相交流を直流に変換してバッテリ210に供給する。
【0013】
DC/DCコンバータ回路260は、バッテリ210の出力を、バッテリ210の出力電圧より低い電圧、例えば12Vに変換して補機バッテリ215及び補機290に供給する。補機バッテリ215は、補機290を駆動するための2次電池であり、その電圧は比較的低い。補機290は、車両202の各種センサ、インパネ表示や電動パワーステアリング装置、ヘッドライト、ウインカ、ワイパー等の周辺装置や車両202の様々なアクセサリーを含む。
【0014】
受電側制御部220は、車両202内のインバータ270他、各部を制御する。受電側制御部220は、走行中非接触給電を受ける際には、受電回路230を制御して受電を実行する。
【0015】
磁気検出システムである磁気源検出装置300は、道路105に埋設された磁気源20を検出する。位置検出部600は、磁気源検出装置300からの信号を受けて、磁気源20(道路105)に対する車両202の位置を検出し、車両202が磁気源20からずれ、道路105に沿って走行していない場合には、車両202の運転者に対し、車両202が道路105に沿って走行していない旨の警告を発する。警告は、例えば、車両202のインストルメントパネルへの表示や音声や警報音により行われる。なお、位置検出部600は、車両202の運転者に対し道路105に沿って走行するためのコースを指示してもよい。また、車両202が自動運転車である場合には、位置検出部600は、自動運転の制御装置(図示せず)に対し、磁気源20(道路105)に対する車両202の位置を通知し、車両202が道路105に沿って走行するように指示してもよい。
【0016】
図3は、車両202から見た、磁気源20の磁気源磁束φW20が達する範囲A1、送電コイル40の送電コイル磁束φW40が達する範囲A2と、磁気源検出装置300の第1磁束センサ部311と、第2磁束センサ部312の位置関係の一例を示す説明図である。磁気源検出装置300は、第1磁束センサ部311と、第2磁束センサ部312と、信号処理部320とを備える。なお、
図3では、第1磁束センサ部311と、第2磁束センサ部312が検知可能な予め定められた大きさの磁束が到達する範囲を範囲A1、A2としている。この範囲A1、A2は、それぞれのセンサの周波数などに対する感度に依存している。磁気源検出装置300は、車両202に搭載されており、磁気源20及び送電コイル40は道路105に埋設されているため(
図1、2参照)、車両202が+x方向に移動すると、磁気源20の磁束が達する範囲A1及び送電コイル40の磁束磁気が達する範囲A2は、磁気源検出装置300に対して、相対的に-x方向に移動する。
図3に示す状態では、2つの磁束センサ部311、312は、いずれも、範囲A1、A2の両方範囲に入っている。そのため、2つの磁束センサ部311、312は、いずれも、磁気源20の磁気源磁束φW20と送電コイル40の送電コイル磁束φW40の両方を合わせた磁束を検知する。送電コイル磁束φW40の振幅の大きさは、磁気源磁束φW20の大きさよりも大きい。なお、磁束センサ部311、312は、後述するように、高周波を用いて磁束を測定するため、磁気源磁束φW20は、一定の大きさの振幅を有する交流として測定される。そのため、送電コイル磁束φW40は、磁気源磁束φW20を検知する際のノイズとなる。
【0017】
信号処理部320は、第1磁束センサ部311が検出した第1磁束φW1と、第2磁束センサ部312が検出した第2磁束φW2とから磁気源磁束φW20を取得し、位置検出部600に送る。位置検出部600は、磁気源磁束φW20から、道路105の幅方向に対する車両202の位置を検出する。例えば、位置検出部600は、磁気源磁束φ20の最大値が、所定時間に亘って漸減していれば、車両202が磁気源磁束φ20から遠ざかるように、道路105の幅方向にずれるように移動していると判断する。逆に、磁気源磁束φ20が、所定時間に亘って漸増していれば、車両202が磁気源磁束φ20に近づくように移動していると判断する。位置ズレ警報部610は、車両202が、道路105の幅方向に対して大きくズレている場合や、車両202の移動に伴って、ズレが大きくなっている場合には、車両202の運転者に警報を発する。また、車両202が自動運転機能を搭載している場合には、磁気源磁束φ20が最大値となるように舵を制御してもよい。本実施形態では、位置検出部600は、磁気源磁束φ20の最大値を用いたが、磁気源磁束φ20の実効値、平均値等の代表値を用いてもよい。
【0018】
図4に示すように、磁気源検出装置300は、磁束センサ部311、312と、信号処理部320と、を備える。信号処理部320は、第1磁束測定部330と、第2磁束測定部340と、第2磁束判定部350と、を備える。第1磁束測定部330は、第1磁束センサ部311が受ける第1磁束φW1を測定する。但し、第1磁束測定部330は、後述するように、信号Saにより活性化されて動作可能になったときのみ第1磁束φW1を測定する。第2磁束測定部340は、第2磁束センサ部312が受ける第2磁束φW2を測定する。第2磁束判定部350は、第2磁束φW2の大きさに応じて第1磁束測定部330に対し、信号Saを発信する。本実施形態では、第2磁束φW2が、予め定められた閾値φW0以下の場合には、第2磁束判定部350が発信する信号Saは、第1磁束測定部330を動作させ、予め定められた閾値を超える場合には、第1磁束測定部330の動作を停止させる信号である。本実施形態では、第1磁束センサ部311が測定した第1磁束φW1は、第2磁束φW2が小さいとき、すなわち、送電コイル磁束φW40が小さいときの磁束であるため、第1磁束φW1は、ほぼ磁気源磁束φW20となる。
【0019】
図5は、磁束センサ部311と第1磁束測定部330の構成を示す説明図である。第1磁束測定部330は、パルス発生回路331と、サンプルホールド回路334とを備える。パルス発生回路331は、マルチバイブレータ回路332と、波形整形回路333とを備える。
【0020】
マルチバイブレータ回路332は、第1インバータI21、第2インバータI22と、抵抗器R21と、コンデンサC21とを備える。第1インバータI21の出力は、第2インバータI22に入力に接続されるとともに、抵抗器R21を介して第1インバータI21に入力されている。第2インバータI22の出力は、コンデンサC21に接続され、コンデンサC21の他端子は、第1インバータI21の入力に接続されている。マルチバイブレータ回路332は、例えば数MHzのパルスを発生させる。第1インバータI21、第2インバータI22の駆動電流、コンデンサC21の容量、抵抗器R21の電気抵抗値を変えることで、マルチバイブレータ回路332が発生させるパルスの周波数を所望の周波数にできる。
【0021】
波形整形回路333は、コンデンサC22と、抵抗器R22と、インバータI23と、を備える。コンデンサC22の一端は、マルチバイブレータ回路332の出力P1に接続され、他端は、抵抗器R22により電源Vddにプルアップされている。また、コンデンサC22の他端は、インバータI23に入力されている。インバータI23は、波形整形後のパルスを検出パルスDpとして出力端子P2に出力する。また、波形整形回路333を設けることで、後述する磁束センサ部311を流れる電流によりマルチバイブレータ回路332が影響を受けることを抑制できる。
【0022】
磁束センサ部311は、ワイヤW11と、ワイヤW11の周りに巻かれた検出コイルL11と、ワイヤW11と直列に接続された抵抗器R11とを備える。磁束センサ部311の一端は、波形整形回路333のインバータI23の出力端子P2に接続され、他端は、グラウンドに接地されている。ワイヤW11には、パルス発生回路331が発生させるパルスのパルス電圧に応じてパルス電流が流れる。このとき、検出コイルL11には、外部磁場に対応した減衰振動電圧が誘起される。
【0023】
サンプルホールド回路334は、遅延回路335と、サンプルホールド部336とを備える。遅延回路335は、抵抗器R31と、コンデンサC31とを備える。抵抗器R31の一端は、出力端子P2に接続され、他端は、コンデンサC31の一端と接続されている。コンデンサC31の他端は、グラウンドに接地されている。遅延回路335は、抵抗器R31の電気抵抗値と、コンデンサC31の容量と、により定まる遅延時間Δtだけ遅延した信号を出力する。
【0024】
サンプルホールド回路334は、電子スイッチSW1、SW2、コンデンサC32と、抵抗器R32、R33と、ボルテージフォロアを構成するオペアンプオペアンプA31と、を備える。コンデンサC32は、検出コイルL11と並列に接続されている。検出コイルL11の一端とコンデンサC32の一端との間には、2つの電子スイッチSW1、SW2が直列に接続されている。電子スイッチSW1は、パルス発生回路331の出力するパルスDpがオンになると、オン(導通状態)となり、パルスDpがオンになってから、遅延回路335による遅延時間Δtの経過後にオフ(非導通状態)となる。遅延時間Δttは、バルスDpのオン時間の約1/2に設定されている。バルスDpのオン時間の約1/2は、ワイヤW11の電流を遮断してから検出コイルL11に減衰振動電圧の最大の電圧が現れるまでの時間である。電子スイッチSW2は、外部信号Saに応じてオンにされている時には、電子スイッチSW1とオペアンプA31とを接続し、オフにされている時には、オペアンプA31の入力をグラウンドに接地してコンデンサC32の電荷を放電させる。抵抗器R32、R33は、電源Vddとグラウンドとの間に直列に接続されている。コンデンサC32の他端は、2つの抵抗器R32、R33の間に接続されている。コンデンサC32の一端は、ボルテージフォロアを構成するオペアンプA31の2つの入力のうちの一方に入力されている。
【0025】
スイッチSW2が信号Saによりオンになっていると、サンプルホールド回路334は、パルス発生回路331の出力に合わせて以下のように動作する。パルス発生回路331の出力であるパルスDpのオン・オフにより、磁束センサ部311のワイヤW1に交番電流が流れ、外部磁場に対応した滅衰振動電圧がコイルL11に生じる。これに合わせてスイッチSW1がオン・オフし、オンの期間では、コイルL11 に生じた滅衰振動電圧によりコンデンサC32 が充電され、オペアンプA31の出力端子P4の電圧は、減衰振動電圧と共に上昇する。遅延回路335による遅延時間の経過後、スイッチSW1は、オフ(非導通状態)となる。この結果、コンデンサC32の電荷は保持され、ボルテージフォロワを構成しているオペアンプA31の出力端子P4の電圧も維持される。電子スイッチSW2が信号Saによりオンにされている場合、以下のように動作する。電子スイッチSW1がオンになる期間では、検出コイルL11の誘起電圧がコンデンサC32に印加される。次に、出力端子P2のパルスが立ち下がるとワイヤW11に電流が流れなくなるとともに、電子スイッチSW1は、遅延回路335により所定の遅延時間Δt遅れてオフとなる。
【0026】
所定の遅延時間Δtは、ワイヤW11の電流を遮断してから検出コイルL11に減衰振動電圧の最大の電圧が現れるまでの時間(バルスDpのオン時間の約1/2)と一致させている。そのため、電子スイッチSW1は、この最大電圧が現れるタイミングに略一致してオフとなる。一方、コンデンサC32には、電子スイッチSW1がオフとなる直前の検出コイルL11の電圧が保持される。オペアンプA31は、検出コイルL11の電圧を直流電圧に変換することにより、外部磁界の大きさに対応する電圧を出力端子P4に出力し、次のパルスにより該電圧が新たに更新されるまでその電圧をホールドして出力し続ける。
【0027】
電子スイッチSW2が信号Saによりオフにされている場合、検出コイルL11の誘起電圧がコンデンサC32に印加されない。その結果、オペアンプA31の一方の端子の入力電圧は、抵抗器R32と抵抗器R33の抵抗分割により決まる一定の電圧となるため、オペアンプA31の出力電圧は、ゼロとなる。
【0028】
図6は、磁束センサ部312と第2磁束測定部340の構成を示す説明図である。第2磁束測定部340は、パルス発生回路341と、サンプルホールド回路344とを備える。第2磁束測定部340の第1磁束測定部330と同じ構成については、符号を第1磁束測定部330の構成に付した符号に10を加え、説明を省略する。また、図示を簡略化している。第2磁束測定部340は、第1磁束測定部330と比較すると、電子スイッチSW1と直列に接続される電子スイッチSW2を備えていない点で相違する。なお、電子スイッチSW2を備え、第2磁束測定部340の動作中は、電子スイッチSW2が常時オンにされている構成であってもよい。
【0029】
図7は、磁気源20が発生させる磁気源磁束φW20と、送電コイル40が発生させる送電コイル磁束φW40と、検出パルスDpを示す説明図である。車両202の速度はせいぜい120km/hであり、送電コイル40の電圧の変化は、数十kHzであるため、送電コイル40の電圧の1サイクルの間では、送電コイル40と車両202の相対的位置はほとんど変わらない。そのため送電コイルは飛び石の様に離散的に配置されていても、数サイクルの間では、第1磁束測定部330や第2磁束測定部340が測定する送電コイル磁束φW40は、波高値がほぼ一定となるサインカーブとなる。また、第1磁束測定部330や第2磁束測定部340が測定する磁気源磁束φW20の大きさは、ほぼ一定となる。なお、検出パルスDpは数MHzであるが、
図7では、図示の都合上、検出パルスDpの波形は、数MHzよりも粗くなっている。
【0030】
図8は、第1磁束測定部330や第2磁束測定部340が磁気源磁束φW20のみ、送電コイル磁束φW40のみ、磁気源磁束φW20と送電コイル磁束φW40の両方を合わせた合計磁束φWsを測定したときを示す説明図である。磁気源磁束φW20のグラフは、大きさがほぼ同じ周期的なパルスのグラフとなる。また、送電コイル磁束φW40のグラフは、パルスの頂点を結ぶ包絡線E40がサインカーブとなるグラフである。合計磁束φWsのグラフは、磁気源磁束φW20のグラフと送電コイル磁束φW40のグラフとを加算したグラフであり、送電コイル磁束φW40のグラフの包絡線E40がゼロクロスする点を含む期間Zにおいて、φWsの絶対値は、φW0以下を満たしている。車両202が
図2に示した道路を走行していれば、第1磁束センサ部311も第2磁束センサ部12も、
図3に示したように、領域A1およびA2の両方に属する位置に存在することになり、磁気源20と送電コイル40との両者からの合計磁束φWsに晒されることになる。そこで、本実施形態では、上述した構成を用いて、送電コイル40による送電コイル磁束φW40の影響を抑制して磁気源20からの磁気源磁束φW20を以下のように検出する。
【0031】
図4から
図6に示したハードウェア構成では、第2磁束センサ部312を用いて、第2磁束測定部340が合成磁束φWsを第2磁束φW2として検出し、第2磁束判定部350が、第2磁束φW2が閾値φW0未満であるかを判定する。第2磁束測定部340が測定した第2磁束φW2は、正のピークを連続した包絡線として測定されているから、これを閾値φW0と、コンパレータを用いて比較することにより、両者の大小を判定することは容易である。この判定結果に従って、第2磁束判定部350は信号Saを出力する。この信号Saにより、期間Zの間だけ、第1磁束測定部330は、第1磁束φW1を測定する。この期間Zでは、送電コイル40により発生する送電コイル磁束φW40は所定未満(φW0未満)なので、第1磁束測定部330が測定した第1磁束φW1は、磁気源20により生じた磁気源磁束φW20となる。第1磁束測定部330は、
図4に示すように、期間Zにおいて測定した磁束φW1(磁気源磁束φW20)の大きさに対応した信号を位置検出部600に出力し、位置ズレ警告部610による判断に供している。
【0032】
こうした磁気源20からの磁気の測定を、
図4から
図6に示したハードウェア構成を利用して、コンピュータ(CPU)が行なう場合を、信号処理部320が実行する磁束検出処理として説明すれば、以下のようになる。
図9は、信号処理部320が実行する磁束検出処理工程を示す説明図である。ステップS100では、信号処理部320は、第2磁束測定部340を用いて第2磁束φW2を測定する。ここで、第2磁束φW2とは、第2磁束測定部340が測定した磁束であり、磁気源磁束φW20のみ、送電コイル磁束φW40のみ、磁気源磁束φW20と送電コイル磁束φW40の両方を合わせたの合計磁束φWsのいずれかである。
【0033】
ステップS110では、信号処理部320は、第2磁束判定部350を用いて第2磁束φW2の絶対値|φW2|が値φW0以下か否かを判定する。|φW2|が値φW0以下の場合には、信号処理部320は、第2磁束φW2は送電コイル磁束φW40が発生する磁束がほぼセロとなる期間と判断し、処理をステップS120に移行し、第2磁束判定部350から発生する信号Saを活性化し、第1磁束測定部330を動作させる。一方、|φW2|が値φW0を超える場合には、第2磁束φW2は磁気源磁束φW20と送電コイル磁束φW40の両方を合わせたの合計磁束φWsであると判断し、処理をステップS130に移行し、信号Saを不活性化し、第1磁束測定部330の動作を停止させる。
【0034】
ステップS120では、信号処理部320は、第1磁束測定部330を用いて第1磁束φW1を測定する。ステップS120では、第1磁束測定部330は、磁気源磁束φW20のみ、送電コイル磁束φW40のみ、磁気源磁束φW20と送電コイル磁束φW40の両方を合わせたの合計磁束φWsのいずれかを第1磁束φW1として測定するが、|φW2|が値φW0以下であるので、第1磁束測定部330は、磁気源磁束φW20のみを測定することになる。一方、ステップS130では、信号Saにより第1磁束測定部330の動作が停止されているので、第1磁束測定部330による第1磁束φW1の測定がスキップされる。
【0035】
図10は、第1磁束φW1と、第2磁束φW2を示す説明図である。
図10からわかるように、第1磁束φW1は、第2磁束φW2の絶対値|φW2|がφW0以下となる期間Zの間のみ測定される。この期間Zでは、送電コイル磁束φW40がほぼゼロであるので、第1磁束φW1は、磁気源20の磁気源磁束φW20と等しい。従って、磁気源磁束φW20のみを検出・測定できる。
【0036】
以上、第1実施形態によれば、信号処理部320は、第2磁束測定部340が測定した第2磁束φW2が予め定められた値未満の期間に、第1磁束測定部330を動作させ、第2磁束φW2が予め定められた値以上の期間では、第1磁束測定部330の動作を停止させることで磁気源20からの磁気源磁束φW20のみを検出することができる。
【0037】
図11は、第1実施形態の変形例の第1磁束測定部337を示す説明図である。第1実施形態の磁束測定部330は、サンプルホールド部336に電子スイッチSW1と直列の電子スイッチSW2を備えているが、第1磁束測定部337は、パルス発生回路331の出力端子P2と、磁束センサ部311との間に電子スイッチSW3を備える点で相違する。電子スイッチSW3は、信号Saが活性化されている場合、出力端子P2とノードN1とを接続し、信号Saが不活性化されている場合、ノードN1をグラウンドに接地する。この変形例によれば、信号Saが不活性化されている場合、検出パルスDpが、磁束センサ部311や遅延回路335、サンプルホールド部338に供給されず、ノードN1は、グラウンドの電位となる。その結果、信号Saが不活性化されている場合、オペアンプA31の出力電圧は、ゼロとなる。その結果、信号Saが活性化されている場合のみ、磁気源磁束φW20を検出することができる。
【0038】
・第2実施形態:
図12は、第2実施形態における車両202から見た、磁気源磁束φW20が達する範囲A1、送電コイル磁束φW40が達する範囲A2と、磁気源検出装置301の第1磁束センサ部311と、第2磁束センサ部312の位置関係の一例を示す説明図である。第2実施形態では、第1磁束センサ部311と、第2磁束センサ部312とが、磁気源磁束φW20が達する範囲A1の大きさよりも離間して配置されている点で、第1実施形態と相違する。
図12に示す例では、第1磁束センサ部311が範囲A1と範囲A2に両方に入るとき、第2磁束センサ部312は、範囲A2には入るが、範囲A1には入らない。なお、車両202が道路105に沿って走行している場合、車両202と磁気源20との位置関係によっては、第2磁束センサ部312が範囲A1と範囲A2に両方に入り、第1磁束センサ部311が、範囲A2には入るが、範囲A1には入らないこともある。
【0039】
信号処理部321は、第1磁束センサ部311が検出した第1磁束φW1と、第2磁束センサ部312が検出した第2磁束φW2とから磁気源磁束φW20を取得し、位置検出部600に送る。以下の構成は、第1実施形態と同様である。
【0040】
図13は、磁気源検出装置301の構成を示す説明図である。磁気源検出装置301は、第1磁束センサ部311と、第2磁束センサ部312と、信号処理部321と、を備える。信号処理部321は、第1磁束測定部330と、第2磁束測定部340と、差分算出部351と、を備える。第1磁束測定部330に入力される信号Saは、電子スイッチSW2をオンにする信号である。第1磁束測定部330は、電子スイッチSW2を備えない構成であってもよい。差分算出部351は、第1磁束φW1と第2磁束φW2のどちらが大きいか判定するとともに、第1磁束測定部330が測定した第1磁束φW1と、第2磁束測定部340が測定した第2磁束φW2の差分を取得する。第1磁束φW1と第2磁束φW2のうち、大きい方は、磁気源磁束φW20と送電コイル磁束φW40の両方の磁束を合わせたφWsであり、小さい方は、送電コイル磁束φW40のみ含む。そのため、信号処理部321は、第1磁束φW1と第2磁束φW2の差分ΔφWを算出することにより、磁気源磁束φW20を取得できるまた、信号処理部321は、例えば、第1磁束φW1がプラスとなる位相において、差分ΔφWがプラスの場合には、第1磁束φW1に磁気源磁束φW20が含まれ、マイナスの場合には、第2磁束φW2に磁気源磁束φW20が含まれていると判断できる。
【0041】
図14は、信号処理部321が実行する磁束検出処理工程を示す説明図である。ステップS200では、信号処理部321は、第1磁束測定部330を用いて第1磁束φW1を測定する。ステップS210では、信号処理部321は、第2磁束測定部340を用いて第2磁束φW2を測定する。信号処理部321は、ステップS200とステップS210について、同時に行うことが好ましいが、どちらを先に行ってもよい。第1磁束φW1と第2磁束φW2の一方は、送電コイル磁束φW40に加え、磁気源磁束φW20を含むが、他方は、送電コイル磁束φW40を含み、磁気源磁束φW20を含まない。
【0042】
ステップS220では、信号処理部321は、差分算出部351を用いて第1磁束φW1と第2磁束φW2の差分ΔφWを算出するとともに、第1磁束φW1と第2磁束φW2のどちらに磁気源磁束φW20が含まれているかを判断する。
【0043】
図15は、第1磁束φW1と、第2磁束φW2と、差分ΔφWを示す説明図である。第1磁束φW1は、磁気源磁束φW20と送電コイル磁束φW40とを含んでいるため、送電コイル磁束φW40しか含んでいない第2磁束φW2に比べて、振幅が大きい。第1磁束φW1と第2磁束φW2の差分ΔφWは、ほぼ同じ振幅となっている。第1磁束φW1がプラスのとき、差分ΔφWもプラスであるため、第1磁束φW1は、磁気源磁束φW20と送電コイル磁束φW40とを含んでいることがわかる。
【0044】
以上、第2実施形態によれば、第2磁束センサ部312は、第1磁束センサ部311が磁気源磁束φW20及び送電コイル磁束φW40の両方を合わせた合計磁束φWsを測定できるときに、磁気源磁束φW20を測定できず、送電コイル磁束φW40のみを測定できる位置に配置されているので、信号処理部321は、第1磁束φW1と第2磁束φW2の差分ΔφWを用いて、磁気源磁束φW20を検出できる。
【0045】
・第3実施形態:
図16は、第3実施形態における車両202から見た、磁気源磁束φW20が達する範囲A1、送電コイル磁束φW40が達する範囲A2と、磁気源検出装置302の第1磁束センサ部311を示す説明図である。
図17は、
図16から一定時間経過後における車両202から見た、磁気源磁束φW20が達する範囲A1、送電コイル磁束φW40が達する範囲A2と、磁気源検出装置302の第1磁束センサ部311を示す説明図である。第3実施形態では、磁気源検出装置302は、第1磁束センサ部311を備えるが、第2磁束センサ部312を備えない点で相違する。
【0046】
信号処理部322は、第1磁束センサ部311が検出した第1磁束φW1から磁気源磁束φW20を取得し、位置検出部600に送る。以下の構成は、第1実施形態と同様である。
【0047】
図18は、磁気源検出装置302の構成を示す説明図である。磁気源検出装置302は、第1磁束センサ部311と、信号処理部322と、を備える。信号処理部322は、第1磁束測定部330と、包絡線算出部352と、ゼロクロス点算出部353と、磁気源磁束取得部354と、を備える。包絡線算出部352は、第1磁束測定部330が測定した第1磁束φW1の包絡線E1を算出する。ゼロクロス点算出部353は、包絡線E1のゼロクロス点を算出する。磁気源磁束取得部354は、包絡線E1のゼロクロス点を中心とした範囲Zにおける第1磁束φW1を取得し、磁気源磁束φW20とする。
【0048】
図19は、信号処理部322が実行する磁束検出処理工程を示す説明図である。ステップS300では、信号処理部322は、第1磁束測定部330を用いて磁束φW1を測定する。ステップS310では、信号処理部322は、包絡線算出部352を用いて磁束φW1の包絡線E1を算出する。ステップS320では、信号処理部322は、ゼロクロス点算出部353を用いて、包絡線E1のゼロクロス点Pxを算出する。ステップS330では、信号処理部322は、磁気源磁束取得部354を用いて、ゼロクロス点Pxを含む範囲Zにおける第1磁束φW1を、磁気源磁束φW20として取得する。
【0049】
図20は、
図16の状態における第1磁束φW1を示している。
図16の状態では、第1磁束センサ部311は、磁気源磁束φW20が達する範囲A1に存在しないため、ゼロクロス点Pxを含む範囲Zにおける第1磁束φW1はほぼゼロであり、ステップS330で取得される磁気源磁束φW20もほぼゼロとなる。
【0050】
図21は、
図17の状態における第1磁束φW1を示している。
図17の状態では、第1磁束センサ部311は、磁気源磁束φW20が達する範囲A1に存在する。そのため、ゼロクロス点Pxを含む範囲Zにおける第1磁束φW1は、ほぼ磁気源磁束φW20の大きさとなる。
【0051】
以上、第3実施形態によれば、磁気源検出装置300は、1つの第1磁束測定部330のみを備える構成であっても、第1磁束測定部330が測定した第1磁束φW1を用いて、磁気源磁束φW20を取得することができる。なお、このゼロクロスが来る時間周期は、送電コイル40の周波数で決定されるため、この周波数が固定であれば、次のゼロクロスポイントが来る時間を予測して計測あるいは信号処理の準備することが可能である。また送受電間の共振状態の変化に基づき周波数を可変する場合も、共振状態は徐々に変化するため、この周波数を急変させることはなく、前回のゼロクロスポイント時間間隔から次のゼロクロス時間を予測して計測あるいは信号処理の準備することも可能である。
【0052】
・第4実施形態:
図22は、第4実施形態における信号処理部323の構成を示す説明図である。第4実施形態の信号処理部323は、第1磁束測定部330と、第2磁束測定部340と、ゲイン算出部355と、補正後差分算出部356と、磁気源磁束取得部357と、を備える。ゲイン算出部355は、第1磁束測定部330が測定した第1磁束φW1と、第2磁束測定部340が測定した第2磁束φW2とを用いて、ゲインGを算出する。ゲインGは、第1磁束測定部330の感度と、第2磁束測定部340の感度の違いを補正するために用いられる。補正後差分算出部356は、第1磁束測定部330と、第2磁束測定部340との感度を考慮して、第1磁束φW1と第2磁束φW2の補正後差分φhを算出する。磁気源磁束取得部357は、補正後差分φhから磁気源磁束φW20を算出し、取得する。
【0053】
図23は、第4実施形態における信号処理部323が実行する磁束検出処理工程を示す説明図である。ステップS400では、信号処理部323のゲイン算出部355は、第1磁束測定部330が測定した第1磁束φW1の極大値φW1pと、第1レファレンス値である極小値φW1mを取得する。ここで、極大値φW1p、極小値φW1mとは、
図24に示すように、それぞれ、第1磁束φW1のプラス側における包絡線E1+の極大値、極小値を意味する。極小値φW1mは、第1磁束測定部330が送電コイル磁束φW40を検出しなかったときの値である。
【0054】
図23のステップS410では、信号処理部323のゲイン算出部355は、第2磁束測定部340が測定した第2磁束φW2の極大値φW2pと、第2レファレンス値である極小値φW2mを取得する。ここで、極大値φW2p、極小値φW2mとは、
図24に示すように、それぞれ、第2磁束φW2のプラス側における包絡線E2+の極大値、極小値を意味する。極小値φW2mは、第2磁束測定部340が磁気源磁束φW20及び送電コイル磁束φW40を検出しなかったときの値である。
【0055】
図23のステップS420では、信号処理部323のゲイン算出部355は、ゲインGを以下の式で算出し、第1磁束測定部330の感度と第2磁束測定部340の感度の違いを算出する。なお、感度は、第1磁束測定部330、第2磁束測定部340の磁束に対する感度の他、第1磁束センサ部311と、磁気源20、送電コイル40との距離、第2磁束センサ部312と、磁気源20、送電コイル40との距離にも依存する。ゲイン算出部355は、第1磁束測定部330、第2磁束測定部340に、極大値φW1p、極小値φW1m、極大値φW2p、極小値φW2mを、例えば10回測定したときの平均値を用いてゲインGを算出する。なお、ゲイン算出部355は、第1磁束測定部330、第2磁束測定部340が測定した2回から15回のいずれかの回数の極大値φW1p、極小値φW1m、極大値φW2p、極小値φW2mの測定結果の平均値を用いてもよい。
G=(φW1p-φW1m)/(φW2p-φW2m)
【0056】
ステップS430では、信号処理部323の補正後差分算出部356は、第1磁束測定部330の感度と第2磁束測定部340の感度とを考慮した補正後差分φhを以下の式により算出する。
φh=φW1-G×(φW2-φW2m)
【0057】
ステップS440では、磁気源磁束取得部357は、補正後差分φhを磁気源磁束φ20として取得する。
【0058】
以上、第4実施形態によれば、信号処理部323は、第1磁束測定部330の感度と第2磁束測定部340の感度の差をゲインとして算出し、磁気源磁束φ20を取得することができる。また、信号処理部323は、第1磁束センサ部311、第2磁束センサ部312と、磁気源20、送電コイル40との距離を考慮して、磁気源磁束φ20を取得することができる。
【0059】
・第5実施形態:
図25は、第5実施形態の磁気源21と車両202を示す説明図である。
図26は、道路105に埋設された送電コイル40と磁気源21とを示す説明図である。第1実施形態から第4実施形態では、磁気源20は、道路105に埋設された点状の磁石により形成されているが、第5実施形態の磁気源21は、道路105の進行方向に沿った線状の磁気源であり、例えば、電線で形成されている。すなわち、電線に電流を流すことで電線の周囲に磁場・磁界が発生し、磁束が生じる。この磁束を磁気源磁束として利用する。なお、第5実施形態では、磁気源21を電線で形成したが、例えば、磁気源21を磁気テープにより形成してもよい。同様に、磁気源検出装置300は、磁気源21の磁気源磁束を検出・測定できる。
【0060】
以上、第5実施形態によれば、道路105に埋設される磁気源21は、道路105の進行方向に沿った線状の磁気源であってもよい。
【0061】
第5実施形態において、第1のタイミングで磁気源磁束φW201を測定し、その後、車両202を例えば、+y方向に移動させた後の第2のタイミングで磁気源磁束φW202を測定してもよい。この場合、磁気源磁束φW202の方が磁気源磁束φW201よりも大きければ、車両202の+y方向の移動により、車両202は、磁気源20に近づいたと言え、逆に、磁気源磁束φW202の方が磁気源磁束φW201よりも小さければ、車両202の+y方向の移動により、車両202は、磁気源20から遠ざかったと言える。したがって、y方向への移動前後の2つのタイミングで磁気源磁束φW201を測定し、その大きさを比較することで、車両202が磁気源20に近づく動きをしたのか、あるいは、磁気源20から遠ざかる動きをしたのか、を判断できる。したがって、位置検出部600は、2つのタイミングにおける磁束と、2つのタイミング間の車両202の動きを用いて、磁気源20に対する車両202の位置を検出できる。
【0062】
第5実施形態において、磁気源検出装置300の中に、第1磁気センサ部311と第2磁気センサ部312が搭載されているが、第2磁気センサ部312を磁気源検出装置300と分離、あるいは第2磁気センサ部312の信号を他方へ利用するなどの方法で共用化することも可能である。
【0063】
・第6実施形態:
図27は、第6実施形態の磁気源20と車両202を示す説明図である。第5実施形態では、車両202は、第2磁気センサ311を1つ備える構成であったが、第6実施形態では、車両202は、車両202の幅方向(y方向)の異なる位置に、右第1磁気センサ部311rと、左第1磁気センサ部311lを備える点で相違する。
【0064】
図28は、第6実施形態の磁気源検出装置300を示す説明図である。磁気源検出装置300は、磁束センサ部311r、311l、312と、信号処理部320と、を備える。信号処理部320は、右第1磁束測定部330rと、左第1磁束測定部330lと第2磁束測定部340と、第2磁束判定部350と、を備える。右第1磁束測定部330rは、右第1磁束センサ部311rが受ける第1磁束φW1rを測定する。左第1磁束測定部330lは、左第1磁束センサ部311lが受ける第1磁束φW1rを測定する。但し、2つの第1磁束測定部330r、330lは、後述するように、信号Saにより活性化されて動作可能になったときのみ第1磁束φW1r、φW1lを測定する。第2磁束測定部340は、第2磁束センサ部312が受ける第2磁束φW2を測定する。第2磁束判定部350は、第2磁束φW2の大きさに応じて2つの第1磁束測定部330r、330lに対し、信号Saを発信する。本実施形態では、第2磁束φW2が、予め定められた閾値φW0以下の場合には、第2磁束判定部350が発信する信号Saは、2つの第1磁束測定部330r、330lを動作させ、予め定められた閾値を超える場合には、2つの第1磁束測定部330r、330lの動作を停止させる信号である。本実施形態では、2つの第1磁束センサ部311r、311lが測定した第1磁束φW1r、φW1lは、第2磁束φW2が小さいとき、すなわち、送電コイル磁束φW40が小さいときの磁束であるため、第1磁束φW1r、φW1lは、ほぼ磁気源磁束φW20となる。
【0065】
2つの第1磁気センサ部311r、311lが測定した2つの第1磁束φW1rとφW1lの差が極小となるとき、磁気源20は、2つの第1磁気センサ部311r、311lのほぼ中間にあり、第1磁束φW1rが第1磁束φW1lよりも大きいときは、磁気源20は、第1磁気センサ部311lよりも第1磁気センサ部311rに近い位置にあって車両202は、磁気源20に対し、+y方向にずれており、逆に、第1磁束φW1lが第1磁束φW1rよりも大きいときは、磁気源20は、第1磁気センサ部311rよりも第1磁気センサ部311lに近い位置にあって車両202は、磁気源20に対し、ーy方向にずれていると言える。位置検出部600は、第1磁束φW1rと第1磁束φW1lの大きさを比較することにより、両202が、磁気源20に対し、磁気源20上にあるか、あるいは、+y方向あるいは、ーy方向にずれているかを判断できる。
【0066】
・第7実施形態:
図29は、第7実施形態の磁気源20と車両202を示す説明図である。第7実施形態では、車両202は、第2磁気センサ部312を備えない点で相違する。第7実施形態では、2つの第1磁束測定部330r、330lは、活性化されており、第1磁束φW1r、φW1lを測定する。第1磁束φW1r、φW1lには、送電コイル磁束φW40が同等に含まれると考えられるため、第1磁束φW1rとφW1lの差分を取れば、送電コイル磁束φW40が相殺できる。したがって、第7実施形態においても、第6実施形態と同様に、2つの第1磁気センサ部311r、311lが測定した2つの第1磁束φW1rとφW1lの差が極小となるとき、磁気源20は、2つの第1磁気センサ部311r、311lのほぼ中間にあり、第1磁束φW1rが第1磁束φW1lよりも大きいときは、磁気源20は、第1磁気センサ部311lよりも第1磁気センサ部311rに近い位置にあって車両202は、磁気源20に対し、+y方向にずれており、逆に、第1磁束φW1lが第1磁束φW1rよりも大きいときは、磁気源20は、第1磁気センサ部311rよりも第1磁気センサ部311lに近い位置にあって車両202は、磁気源20に対し、ーy方向にずれていると言える。位置検出部600は、第1磁束φW1rと第1磁束φW1lの大きさを比較することにより、両202が、磁気源20に対し、磁気源20上にあるか、あるいは、+y方向あるいは、ーy方向にずれているかを判断できる。
【0067】
図30は、第1磁気センサ部311を1つのみ備える実施形態である。第5実施形態と同様に、第1のタイミングで磁気源磁束φW201を測定し、その後、車両202を例えば、+y方向に移動させた後の第2のタイミングで磁気源磁束φW202を測定する。この場合、磁気源磁束φW202の方が磁気源磁束φW201よりも大きければ、車両202の+y方向の移動により、車両202は、磁気源20に近づいたと言え、逆に、磁気源磁束φW202の方が磁気源磁束φW201よりも小さければ、車両202の+y方向の移動により、車両202は、磁気源20から遠ざかったと言える。したがって、y方向への移動前後の2つのタイミングで磁気源磁束φW201を測定し、その大きさを比較することで、車両202が磁気源20に近づく動きをしたのか、あるいは、磁気源20から遠ざかる動きをしたのか、を判断できる。したがって、位置検出部600は、2つのタイミングにおける磁束と、2つのタイミング間の車両202の動きを用いて、磁気源20に対する車両202の位置を検出できる。
【0068】
上記第6実施形態から第8実施形態において、磁気源20を用いたが、第5実施形態と同様に、道路105の進行方向に沿った線状の磁気源21を用いてもよい。
【0069】
上記各実施形態において、送電コイル40は、道路105に埋設されているとしたが、送電コイル40は、道路105の他、駐車場の地面など、車両202が走行し、または駐停車できる場所に埋設されていてもよい。
【0070】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
10…電源回路、16…給電側制御部、20…磁気源、21…磁気源、30…送電回路、40…送電コイル、100…送電システム、105…道路、200…受電システム、202…車両、210…バッテリ、215…補機バッテリ、220…受電側制御部、230…受電回路、240…受電コイル、260…DC/DCコンバータ回路、270…インバータ回路、280…モータジェネレータ、290…補機、300…磁気源検出装置、301…磁気源検出装置、302…磁気源検出装置、311…第1磁束センサ部、312…第2磁束センサ部、320…信号処理部、321…信号処理部、322…信号処理部、323…信号処理部、330…第1磁束測定部、331…パルス発生回路、332…マルチバイブレータ回路、333…波形整形回路、334…サンプルホールド回路、335…遅延回路、336…サンプルホールド部、337…第1磁束測定部、338…サンプルホールド部、340…第2磁束測定部、341…パルス発生回路、344…サンプルホールド回路、350…第2磁束判定部、351…差分算出部、352…包絡線算出部、353…ゼロクロス点算出部、354…磁気源磁束取得部、355…ゲイン算出部、356…補正後差分算出部、357…磁気源磁束取得部、400…走行中給電システム、500…走行中給電システム