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特許7476875流通管理方法、流通管理システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】流通管理方法、流通管理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240423BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240423BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06T7/00 300F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021205677
(22)【出願日】2021-12-20
(62)【分割の表示】P 2020088588の分割
【原出願日】2012-03-02
(65)【公開番号】P2022037150
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2011047240
(32)【優先日】2011-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】石山 塁
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-146570(JP,A)
【文献】特開2005-088962(JP,A)
【文献】特開2004-167421(JP,A)
【文献】登録実用新案第3164301(JP,U)
【文献】特開平07-318490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 ー 99/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
データベースへの登録対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量であって、前記農林水産物の照合領域に対応する部分が開口している開口部を有しているラベルが添付された前記農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量を取得し、
前記ラベルが添付された照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像を取得し、
前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量を抽出し、
前記登録対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量と、前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量と、が一致するか否かを判定し、
前記判定の結果を出力する、
農林水産物の流通管理方法。
【請求項2】
前記農林水産物が、メロン、いちご、りんご、レモン、なし、みかん、生花、魚介類、木材の少なくともいずれか一つである、
請求項1に記載の流通管理方法。
【請求項3】
前記判定の結果が一致を示す場合、前記農林水産物の関連情報をさらに出力する、
請求項1または請求項2に記載の流通管理方法。
【請求項4】
前記関連情報は、前記農林水産物の生産情報または流通情報を含む、
請求項3に記載の流通管理方法。
【請求項5】
前記ラベルは、前記登録対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量と、前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量との照合に用いない情報のみが記載されている、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の流通管理方法。
【請求項6】
データベースへの登録対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量であって、前記農林水産物の照合領域に対応する部分が開口している開口部を有しているラベルが添付された前記農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量を取得する第1の取得手段と、
前記ラベルが添付された照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像を取得する第2の取得手段と、
前記第2の取得手段によって取得された画像から、前記照合領域の表皮パターンの画像の特徴量を抽出する出手段と、
前記第1の取得手段によって取得された特徴量と、前記出手段によって抽出された特徴量と、が一致するか否かを判定する判定手段と、
前記判定の結果を出力する出力手段と、
を有する農林水産物の流通管理システム。
【請求項7】
前記判定の結果が一致を示す場合に、前記農林水産物の関連情報をさらに出力する、
請求項6に記載の流通管理システム。
【請求項8】
前記関連情報は、前記農林水産物の生産情報または流通情報を含む、
請求項7に記載の流通管理システム。
【請求項9】
前記ラベルは、前記第1の取得手段によって取得された特徴量と、前記出手段によって抽出された特徴量との照合に用いない情報のみが記載されている、
請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の流通管理システム。
【請求項10】
データベースへの登録対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量であって、前記農林水産物の照合領域に対応する部分が開口している開口部を有しているラベルが添付された前記農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量を取得する処理と、
前記ラベルが添付された照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像を取得する処理と、
前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量を抽出する処理と、
前記登録対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量と、前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量と、が一致するか否かを判定する処理と、
前記判定の結果を出力する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流通管理方法、流通管理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者や小売業者等は、農林水産物の安全性やの生産地の等のこだわり等の意識が高まっている。しかしながら、小売店の店頭におかれる農林水産物が、いずれの生産地、生産者や卸売業者から出荷されたものであるのか、消費者や小売業者では、それを知る手段がなかった。
【0003】
すなわち、従来の農林水産物の流通システムにおいては、生産者と消費者との間に多数の中間業者(数次の卸売り店等)が介在している。このように生産者と消費者との間に多数の中間業者が介在していることに起因して、農林水産物が消費者の手に渡る際には、当該農林水産物の個体情報(当該農林水産物の生産地、生産者名、品種、栽培方法、収穫日、品質情報等)が正確に伝えられることは困難であった。
【0004】
そこで、消費者等が農産物の個体情報を容易に知ることができる農産物の個体情報入手システムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
特許文献1の技術は、例えば、メロンのような農産物に識別子であるID番号を付与することにより、これらメロンの生産に係る者(生産農家或は農業協同組合)以外の者(例えば、消費者)が上記ID番号に基づいて当該メロンに係る個体情報を入手自在とするものである。このために、農産物には、ID番号を記載したラベル(シール或はステッカー)が貼付される。
【0006】
また、別途設けた中立の機関(例えば、データベース法人)に備えられたコンピュータシステムに、農産物に関する個体情報を、上記ID番号とともに記憶させ、データベースを構築している。生産者は、このコンピュータシステムに、上記ID番号を送信するとともに、当該農産物の個体情報である、生産地と、生産者名と、品種と、栽培方法と、収穫日と、品質情報(糖度等)とを送信する。
【0007】
小売業者の店舗や消費者の自宅等には少なくとも1台のコンピュータを設置するとともに、一般公衆回線を介して上記コンピュータシステムと通信自在に接続している。そして、小売業者の店舗や消費者は、コンピュータから、農産物に貼付されているラベルに記載されているID番号をコンピュータシステムに送信することにより、そのID番号によって特定される農産物に関する個体情報を入手することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3355366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のような農林水産物にラベル(シール或はステッカー)を貼付して、或いは、包装材等によって個体を識別する方法では、故意にラベル(以下、ラベルと包装材を含めてラベルと称す)を農林水産物から剥がし、あるいは複製・模造し、他の同様な農林水産物に貼付添付されると、農林水産物の出荷元などの偽装を防ぐことができなかった。
【0010】
また、ラベルのような貼付物に代えて、ICタグのようなものを農林水産物に埋め込むことも考えられるが、農林水産物に傷を与えるなど、商品価値が低下してしまう。また、ICタグを用いるので、システム全体として高価となる課題があった。
【0011】
そこで、本発明は上記課題に鑑みて発明されたものであって、その目的はICタグなどの特別な装置が不要で、農林水産物の流通管理ができる流通管理方法、流通管理装置及び流通管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、コンピュータが、データベースに登録されている農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像であって、前記農林水産物の照合領域に対応する部分が開口している開口部を有しているラベルが添付された前記農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量を抽出し、前記ラベルが添付された照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像を取得し、前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量を抽出し、前記登録されている農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量と、前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量と、が一致するか否かを判定し、前記判定の結果を出力する、農林水産物の流通管理方法である。
【0013】
本発明の一態様は、農林水産物の照合領域に対応する部分が開口している開口部を有しているラベルが添付された農林水産物の前記照合領域の表皮パターンの画像が登録されているデータベースと、前記データベースに登録されている表皮パターンの画像の特徴量を抽出する第1の抽出手段と、前記ラベルが添付された照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された画像から、前記照合領域の表皮パターンの画像の特徴量を抽出する第2の抽出手段と、前記第1の抽出手段によって抽出された特徴量と、前記第2の抽出手段によって抽出された特徴量と、が一致するか否かを判定する判定手段と、前記判定の結果を出力する出力手段と、を有する農林水産物の流通管理システムである。
【0014】
本発明の一態様は、データベースに登録されている農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像であって、前記農林水産物の照合領域に対応する部分が開口している開口部を有しているラベルが添付された前記農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量を抽出する処理と、前記ラベルが添付された照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像を取得する処理と、前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量を抽出する処理と、前記登録されている農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量と、前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像の特徴量と、が一致するか否かを判定する処理と、前記判定の結果を出力する処理と、をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ICタグなどの特別な装置が不要で、農林水産物の流通管理ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明の実施の形態のブロック図である。
図2図2は照合領域を説明するための図である。
図3図3は照合領域を説明するための図である。
図4図4は真贋判定に用いられるラベルを説明するための図である。
図5図5は照合領域を説明するための図である。
図6図6は流通管理システムの実施例のブロック図である。
図7図7は照合領域の表皮パターンの画像の一例を示す図である。
図8図8は照合領域の表皮パターンの画像特徴の一例を示す図である。
図9図9は照合端末装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の形態のブロック図である。
【0019】
本発明の実施の形態は、生産者又は流通業者から生産又は出荷される農林水産物の所定の照合領域の表皮パターンの画像を撮像する第1の撮像部1と、第1の撮像部1で撮像された画像から、前記照合領域の表皮パターンの画像特徴を抽出する第1の画像特徴抽出部2と、抽出された農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像特徴が記憶される記憶部3と、照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンを撮像する第2の撮像部4と、第2の撮像部4で撮像された画像から、前記照合領域の表皮パターンの画像特徴を抽出する第2の画像特徴抽出部5と、記憶されている表皮パターンの画像特徴と、前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像特徴とを照合し、前記照合対象の農林水産物が前記生産者又は流通業者から生産又は出荷された農林水産物か否かを判定する判定部6とを有する農林水産物の流通管理システムである。
【0020】
本発明は、農林水産物の表皮パターンが、個体によって異なることを利用し、その農林水産物農林水産物の照合を行うものである。従って、本発明が適用される農林水産物は、農林水産物の表皮パターンが特徴的なものであれば、特に限定されないが、表皮パターンが特徴的な農林水産物としては、例えば、メロン、いちご、りんご、レモン、なし、みかん、生花、魚介類、木材などがある。また、農林水産物の表皮パターンには、例えば、メロンの表面紋様や、いちごの表面の種の粒、生花の葉脈、魚の鱗、木材の木目や年輪等がある。尚、以下の説明においては、農林水産物としてメロンを例にして説明する。
【0021】
また、生産者又は流通業者とは、生産に係る者(生産農家或は農業協同組合)や、流通過程において農林水産物の品質管理を行う者などを含む概念である。
【0022】
また、照合領域とは、農林水産物農林水産物に対して照合を行うための、農林水産物の表皮の一部の領域をいう。照合領域の位置は問わないが、後述する照合処理の負荷等を考慮すると、画像の位置や向きの基準となるもの周辺の領域を照合領域とするのが好ましい。
【0023】
照合領域の設定位置の例としては、農林水産物農林水産物に貼付されるラベル(例えば、地域団体商標の付されたラベルや、生産者を示すラベル等)を基準に照合領域を設定する方法がある。例えば、図2に示すように、メロンに貼付されたラベル10を基準とし、その下位の位置にラベル10の大きさと同じ大きさの照合領域を設定する。このように照合領域を設定すれば、ラベル10は通常同一のものが使用されるので、ラベル10を基準とすることにより、照合領域の位置(上下左右)を確実に識別することができる。尚、上記の例は一例であり、これに限られない。例えば、商標ラベル10の縦横の倍数の範囲を照合領域とすることもできるし、照合領域の設定位置を、図3に示す如く、ラベル10を中心するように設定することもできる。更に、農林水産物に直接貼付されるものだけではなく、農林水産物が透明な包装物で包装された状態で、その包装物に貼付されたラベルを基準としても良い。
【0024】
また、照合領域の設定方法の他の方法としては、図4に示す如く、ラベルに表皮パターンが透けて見える透明部11を設け、その透明部11の範囲を照合領域とすることもできる。尚、透明部11の位置は、文字等が記載された上でも下でもかまわない。また、透明部11の代わりに、開口部であっても良い。更に、イチゴ等は、一部が透明又は開口された窓付きのパックなどにイチゴ等を詰め、透明又は開口された窓の部分を照合領域に設定しても良い。
【0025】
上述した照合領域の位置の設定は、ラベル等の基準にしたが、農林水産物自体に基準となるものを設定し、これを基準とした所定の範囲を照合領域としても良い。例えば、農林水産物の「ヘタ」、「へそ」、「茎」等である。へたを基準として照合領域を設定した例を、図5に示す。
【0026】
次に、各部の構成について説明する。
【0027】
撮像部1は、生産に係る者(生産農家或は農業協同組合)や、流通過程において農林水産物の品質管理を行う者側に存在し、生産者等により、農林水産物の照合領域を撮像するものである。撮像部1は、農林水産物の照合領域を撮像する為の特別の装置を設けても良いが、CCDやCMOS等を備えたデジタルカメラや、携帯電話等でもかまわない。また、撮像された画像のファイル形式も問わず、JPEG等で良い。
【0028】
画像特徴抽出部2は、撮像部1で撮像された画像から照合領域の表皮パターンの画像特徴を抽出するものである。画像特徴の抽出は、画像の輝度値、特徴点、2値化画像の線の変曲点、交点、端点及び中心点など、指紋の画像特徴の抽出技術を用いることができる。このようにして抽出された画像特徴は、記憶部3に記憶される。尚、記録部3に記録(登録)された農林水産物を、以下、登録農林水産物と記載する。
【0029】
更に、登録農林水産物の画像特徴に対して、その農林水産物の生産地や、生産者名、品種、栽培方法、収穫日、品質情報(糖度等)、食べ頃等の生産情報や、出荷場所や出荷日等の流通情報等と関連付けて記憶させても良い。このようにすることにより、照合された農林水産物の履歴情報も取得できる。
【0030】
撮像部4及び画像特徴抽出部5は、消費者等の農林水産物の照合を行う側に存在し、撮像部1及び画像特徴抽出部2と同様な構成である。
【0031】
判定部6は、画像特徴抽出部5で抽出された、照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像特徴と、記憶部3に記憶されている照合領域の表皮パターンの画像特徴とを照合し、一致するものがある場合、照合対象の農林水産物が前記生産者又は流通業者から生産又は出荷された農林水産物であると判定する。ここで、画像特徴の照合方法であるが、例えば、表皮パターンの線の端点、交点、角を特徴点(イチゴの表皮パターンのような場合には、表皮の斑点の中心を特徴点とする)とし、特徴点の配置を照合し、同じ位置(ある閾値以内の範囲)にある特徴点の組数が所定数以上である場合同一と判定する。このような照合技術は、既存の指紋照合の技術を用いることができる。
【0032】
以上の如く、本実施の形態によれば、特別なタグが不要で、農林水産物の真贋判定を行うことができ、農林水産物の生産者や卸業者から正規に出荷される農林水産物の流通管理を行うことができ、すり替えなどの偽装を防止することができる。
【0033】
また、農林水産物の表皮パターンの画像に対して、その農林水産物の生産地や、生産者名、品種、栽培方法、収穫日、品質情報(糖度等)、食べ頃等の生産情報や、出荷場所や出荷日等の流通情報等と関連付けて記憶させておけば、消費者側でその農林水産物の履歴情報も知ることができる。
【0034】
以下に、上述した実施の形態における流通管理システムの具体的な実施例を述べる。尚、以下の説明では、農林水産物としてメロンを例にして説明する。
【0035】
図6は流通管理システムの実施例のブロック図である。
【0036】
図6に示されるごとく、流通管理システムは、メロンの生産側に設置される画像特徴抽出装置100と、照合を行う照合サーバ200と、消費者の携帯電話300とを備える。
【0037】
画像特徴抽出装置100は、撮像部101と、画像特徴抽出部102と、送信部103とを有する。尚、撮像部101及び画像特徴抽出部102は、上述した撮像部1及び画像特徴抽出部2と同様な構成である。送信部103は、画像特徴抽出部102で抽出されたメロンの照合領域の画像特徴と、そのメロンの生産情報(生産地、生産者名、品種、栽培方法、収穫日、品質情報等)とを送信する。
【0038】
照合サーバ200は、データベース201と、画像特徴抽出部202と、判定部203とを有する。画像特徴抽出部202及び判定部203は、上述した画像特徴抽出部5及び判定部6と同様な構成である。データベース201には、生産者側の画像特徴抽出装置100から送信された各メロンの表皮パターンの画像特徴とそのメロンの生産情報とが関連付けて記憶される。
【0039】
携帯電話300は、撮像部301と、送受信部302とを有する。撮像部301は、上述した撮像部4と同様な構成である。送信部302は、撮像部301で撮像されたメロンの照合領域の表皮パターンの画像を、照合サーバ200に送信する。また、照合サーバ200からの判定結果を受信する。
【0040】
次に、上記構成における動作を説明する。
【0041】
まず、メロンの表皮パターンの画像特徴の登録動作について説明する。
【0042】
生産者は、図2に示すようなラベル10をメロンに貼付するとともに、撮像部101により、ラベル10を基準とする照合領域を含むメロンの表皮パターンを撮影する。このとき、ラベル10の天地が逆にならないよう撮影する。図7は、生産者により、撮像部101を用いて撮影されたメロンの表皮パターンの画像である。
【0043】
画像特徴抽出部102は、撮像されたメロンの表皮パターンの画像から、照合領域の画像特徴を抽出する。ここでは、画像特徴は、ラベル10を基準にし、照合領域を判定し、照合領域の表皮パターンの画像特徴を抽出する。抽出した画像特徴の一例を、図8に示す。図8は、照合領域の表皮パターンを所定の閾値を基準に二値化したものである。
【0044】
また、生産者は、撮影したメロンの生産情報(生産地、生産者名、品種、栽培方法、収穫日、品質情報等)を、画像特徴抽出装置100に入力する。そして、送信部103は、メロンの画像特徴とそのメロンの生産情報とを照合サーバ200に送信する。
【0045】
照合サーバ200では、生産者の画像特徴抽出装置100からのメロンの画像特徴とそのメロンの生産情報とを、データベース201に登録する。
【0046】
続いて、照合処理の動作について説明する。
【0047】
消費者は、照合対象となるメロンの照合を行うため、携帯電話300の撮像部301により、ラベル10を基準とした照合領域を含むメロンの表皮パターンを撮像する。撮像された画像は、送受信部302により、照合サーバ200に送信される。
【0048】
照合サーバ200の画像特徴抽出装置202は、送られてきた画像から、上述した方法と同様な方法により、照合領域の表皮パターンの画像特徴を抽出する。そして、抽出した画像特徴を判定部203に出力する。
【0049】
判定部203では、受信した画像特徴と、データベース201に登録されている画像特徴と照合し、一致するものがあれば、その画像特徴と関連付けられている生産情報を読み出し、携帯電話300に送信する。一方、照合の結果、一致するものない場合には、真贋対象のメロンは偽装したものであることを通知する。
【0050】
携帯電話300では、照合サーバ200から真贋判定の結果を受信し、消費者に報知する。
【0051】
このように、本実施例では、消費者が特別の機材を持たなくても、農林水産物の照合することができ、照合の結果、その農林水産物の生産情報も取得することができる。
【0052】
尚、上述した実施例では、初めに農林水産物の画像特徴を抽出する画像特徴抽出部102を、生産者側の装置に設置する構成としたが、照合サーバ200の画像特徴抽出部202と兼ねることもできる。この場合、生産者側からは、農林水産物の照合領域の画像を送信するように構成する。
【0053】
また、上述した実施例では、照合サーバ200を設け、各消費者側が通信により、照合処理を行ったが、データベース201のような農林水産物の表皮パターンの画像が登録されているデータベースから、農林水産物の表皮パターンの画像を予めダウンロードしておき、通信を介さずに照合処理を行っても良い。このよう照合端末装置は、図9に示す如く、生産者等に登録される登録農林水産物の表皮パターンの画像特徴を記憶する記憶部300と、撮像部301と、画像特徴抽出部302と、判定部303と、表示部304とを備える。撮像部301と、画像特徴抽出部302と、判定部303は、上述した撮像部と、画像特徴抽出部と、判定部と同様な構成であり、表示部304は判定部303の判定結果や、同一と判定された場合のその登録農林水産物の生産情報等が表示される。
【0054】
また、上述した説明からも明らかなように、画像特徴抽出部や判定部をハードウェアで構成することも可能であるが、コンピュータプログラムにより実現することも可能である。この場合、プログラムメモリに格納されているプログラムで動作するプロセッサによって、上述した実施の形態及び実施例と同様の機能、動作を実現させる。
【0055】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0056】
[付記1] 生産者又は流通業者から生産又は出荷される農林水産物の所定の照合領域の表皮パターンの画像を撮像する第1の撮像手段と、
前記第1の撮像手段で撮像された画像から、前記照合領域の表皮パターンの画像特徴を抽出する第1の画像特徴抽出手段と、
前記抽出された農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像特徴が記憶される記憶手段と、
照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンを撮像する第2の撮像手段と、
前記第2の撮像手段で撮像された画像から、前記照合領域の表皮パターンの画像特徴を抽出する第2の画像特徴抽出手段と、
前記記憶されている表皮パターンの画像特徴と、前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像特徴とを照合し、前記照合対象の農林水産物が前記生産者又は流通業者から生産又は出荷された農林水産物か否かを判定する判定手段と
を有する農林水産物の流通管理システム。
【0057】
[付記2] 前記照合領域が、生産者又は流通業者によって農林水産物に貼付されるラベルを基準とした所定の範囲である
付記1に記載の農林水産物の流通管理システム。
【0058】
[付記3] 前記ラベルには、前記照合領域の位置の識別ができる識別情報が付されている
付記2に記載の農林水産物の流通管理システム。
【0059】
[付記4] 前記ラベルは、前記照合領域が透明な透明部、又は、前記照合領域が開口している開口部を有している
付記2又は付記3に記載の農林水産物の流通管理システム。
【0060】
[付記5] 前記農林水産物が、メロン、いちご、りんご、レモン、なし、みかん、生花、魚介類、木材の少なくともいずれか一つである
付記1から付記4のいずれかに記載の農林水産物の流通管理システム。
【0061】
[付記6] 生産者又は流通業者から生産又は出荷された農林水産物と、照合対象の農林水産物とを照合する照合サーバであって、
農林水産物の所定の照合領域の表皮パターンの画像特徴が記憶される記憶手段と、
照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像を受信し、受信した画像から、前記照合領域の表皮パターンの画像特徴を抽出する画像特徴抽出手段と、
前記記憶されている表皮パターンの画像特徴と、前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像特徴とを照合し、前記照合対象の農林水産物が前記生産者又は流通業者から生産又は出荷された農林水産物か否かを判定する判定手段と
を有する照合サーバ。
【0062】
[付記7] 農林水産物の所定の照合領域の表皮パターンの画像特徴を抽出する画像特徴抽出手段を有する画像特徴抽出装置。
【0063】
[付記8] 前記照合領域の表皮パターンの画像特徴を、照合サーバに送信する送信手段を有する
付記7に記載の画像特徴抽出装置。
【0064】
[付記9] 生産者又は流通業者から生産又は出荷された農林水産物と、照合対象の農林水産物とを照合する照合端末装置であって、
農林水産物の所定の照合領域の表皮パターンの画像特徴が記憶された記憶手段と、
撮像された照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像から、前記照合領域の表皮パターンの画像特徴を抽出する画像特徴抽出手段と、
前記記憶されている表皮パターンの画像特徴と、前記照合対象の農林水産物の照合領域の表皮パターンの画像特徴とを照合し、前記照合対象の農林水産物が前記生産者又は流通業者から生産又は出荷された農林水産物か否かを判定する判定手段と、
前記判定結果を表示する表示手段と
を有する照合端末装置。
【0065】
[付記10] 農林水産物に貼付されるラベルであって、
農林水産物の真贋を判定するための照合領域を定める基準となるラベル。
【0066】
[付記11] 前記ラベルは、前記照合領域が透明な透明部、又は、前記照合領域が開口している開口部を有している
付記10に記載の農林水産物のラベル。
【0067】
[付記12] 生産者又は流通業者から出荷される農林水産物の所定照合領域の表皮パターンの画像特徴を予め記憶し、
照合対象の農林水産物の前記照合領域の表皮パターンを撮像し、前記照合領域の表皮パターンの画像特徴を取得し、
前記記憶されている表皮パターンの画像特徴と、前記照合対象の農林水産物の表皮パターンの画像特徴とを照合し、前記照合対象の農林水産物が前記生産者又は流通業者から出荷された農林水産物か否かを判定する
農林水産物の流通管理方法。
【0068】
[付記13] 前記照合領域が、生産者又は流通業者によって農林水産物に貼付されるラベルを基準とした所定の範囲である
付記12に記載の農林水産物の流通管理方法。
【0069】
[付記14] 前記ラベルには、前記照合領域の位置の識別ができる識別情報が付されている
付記13に記載の農林水産物の流通管理方法。
【0070】
[付記15] 前記ラベルは、前記照合領域が透明又は開口している
付記13又は付記14に記載の農林水産物の流通管理方法。
【0071】
[付記16] 前記農林水産物が、メロン、いちご、りんご、レモン、なし、みかん、生花、魚介類、木材の少なくともいずれか一つである
付記12から付記15のいずれかに記載の農林水産物の流通管理方法。
【0072】
[付記17] 生産者又は流通業者から生産又は出荷される農林水産物の真贋を判定するプログラムであって、
前記プログラムは、
照合対象の農林水産物の所定の照合領域の表皮パターンから得られた前記照合領域の表皮パターンの画像特徴を取得する処理と、
前記照合対象の農林水産物の表皮パターンの画像特徴と、予め記憶された、生産者又は流通業者から出荷される農林水産物の前記照合領域の表皮パターンの画像特徴とを照合し、前記照合対象の農林水産物が前記生産者又は流通業者から出荷された農林水産物か否かを判定する処理と
を情報処理装置に実行させるプログラム。
【0073】
以上好ましい実施の形態及び実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形し実施することが出来る。
【0074】
本出願は、2011年3月4日に出願された日本出願特願2011-047240号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0075】
1 第1の撮像部
2 第1の画像特徴抽出部
3 記憶部
4 第2の撮像部
5 第2の画像特徴抽出部
6 判定部
10 ラベル
11 透明部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9