(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ガス分離システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20240423BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20240423BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240423BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20240423BHJP
C10L 3/10 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D63/02
B01D61/58
B01D71/64
C10L3/10
(21)【出願番号】P 2021512129
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2020014656
(87)【国際公開番号】W WO2020203994
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2019068933
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 智英
(72)【発明者】
【氏名】福田 叙彦
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-000949(JP,A)
【文献】特開2018-171596(JP,A)
【文献】特開2016-163868(JP,A)
【文献】特開2018-126729(JP,A)
【文献】特開2015-066484(JP,A)
【文献】特表2013-534863(JP,A)
【文献】特開平9-124514(JP,A)
【文献】特開2007-254572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 63/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットを備え、CO
2及びCH
4を含む原料ガスからCH
4富化ガスを製造するために用いられるガス分離システムであって、
各ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
第1ガス分離膜ユニットのガス入口に連結する原料ガス供給ラインと、
原料ガス供給ラインに介在配置した圧縮手段と、
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを連結する第1連結ラインと、
第1連結ラインの途中に介在配置されている第2圧縮手段と、
第2ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と原料ガス供給ラインとを連結する第2連結ラインと、を有し、
第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性P’
CO2/P’
CH4が30以上であって、
CH
4の回収率が98%以上であり、第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口から排出された非透過ガス中のCO
2含量が5モル%以下であり、第2ガス分離膜ユニットに送り込むガスの圧力が、第1ガス分離膜ユニットに送り込むガスの圧力より高く、且つ、第2ガス分離膜ユニットに供給される時間当たりガス量が、第1ガス分離膜ユニットに供給される時間当たり原料ガス量に対し、50%以下となるようになされて
おり、第1ガス分離膜ユニットの膜面積S1と第2ガス分離膜ユニットの膜面積S2との比率はS1/S2が1以上14以下である、ガス分離システム。
【請求項2】
第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口に連結し、該排出口から非透過ガスをシステム外に取り出すための第1取り出しラインと、第2ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口に連結し、該排出口から透過ガスをシステム外に取り出すための第2取り出しラインと、を有している、請求項1に記載のガス分離システム。
【請求項3】
原料ガスがバイオガスである、請求項1又は2に記載のガス分離システム。
【請求項4】
原料ガス中のCH
4が40体積%以上80体積%以下であり、CO
2が20体積%以上
60体積%以下である、請求項1~3の何れか1項に記載のガス分離システム。
【請求項5】
第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットにおけるガス分離膜が、ポリイミドからなる中空糸膜である、請求項1~4の何れか1項に記載のガス分離システム。
【請求項6】
ガス分離システムを用いてCO
2及びCH
4を含む原料ガスからCH
4富化ガスを製造する方法であって、
ガス分離システムとして、
第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットを備え、
各ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
第1ガス分離膜ユニットのガス入口に連結する原料ガス供給ラインと、
原料ガスの供給ラインに介在配置した圧縮手段と、
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを連結する第1連結ラインと、
第1連結ラインの途中に介在配置されている第2圧縮手段と、
第2ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と原料ガス供給ラインとを連結する第2連結ラインと、を有し、
第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性P’
CO2/P’
CH4が30以上であるガス分離システムを用い、
CH
4の回収率が98%以上であり、第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口から排出される非透過ガス中のCO
2含量が5モル%以下であり、第2ガス分離膜ユニットに送り込むガスの圧力が、第1ガス分離膜ユニットに送り込むガスの圧力より高く、且つ、第1ガス分離膜ユニットの時間当たり透過ガス量が、第1ガス分離膜ユニットに供給される時間当たり原料ガス量に対し、50%以下となるようにガス分離システムを運転
し、第1ガス分離膜ユニットの膜面積S1と第2ガス分離膜ユニットの膜面積S2との比率はS1/S2が1以上14以下である、CH
4富化ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素(CO2)及びメタン(CH4)を含む原料ガスから、複数のガス分離膜ユニットを用いてCH4富化ガスを製造するガス分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
CO2及びCH4を含む原料ガスを各ガスに分離する方法として、膜に対するこれらのガスの透過速度の差を利用した膜分離法が知られている。この方法では通常、非透過ガスを回収することにより、目的ガスである高純度のCH4富化ガスを得ることができる。原料ガスに含まれるCO2及びCH4の膜に対する単位膜面積・単位時間・単位分圧差あたりの透過体積である透過速度は、P'CO2 及びP'CH4(単位は、×10-5cm3(STP)/(cm2・sec・cmHg))で表すことができる。また、CO2及びCH4の膜のガス分離選択性はこれら透過速度の比、P'CO2 / P'CH4(高透過性ガスの透過速度/低透過性ガスの透過速度)で表すことができる。
【0003】
一般に、ガス分離膜は、ガス選択透過性を有するガス分離膜を、少なくともガス入口、透過ガス排出口、非透過ガス排出口が備えられている容器内に収容してなるガス分離膜モジュールとして使用されている。ガス分離膜は、そのガス供給側とガス透過側の空間が隔離されるように、容器内に装着されている。ガス分離システムにおいては、所要の膜面積とするために、一般に複数のガス分離膜モジュールを並列に組み合わせたガス分離膜ユニットとして使用される。ガス分離膜ユニットを構成する複数のガス分離膜モジュールは、ガス入口、非透過ガス排出口、透過ガス排出口を共用するため、ガス分離膜ユニットは、実質的に膜面積が大きいガス分離膜モジュールとして作用する。
【0004】
目的とするCH
4を高純度かつ高回収率で回収するために、ガス分離膜ユニットを多段階に備えたガス分離システムを用いる方法として、例えば
図3に示すような2段の分離システム10’が従来用いられている。
図3のシステム10’は、2つのガス分離膜ユニット11’、12’を備えたガス分離システムである。このガス分離システム10’では、原料となる混合ガスが第1ガス分離膜ユニット11’に供給され、該第1ガス分離膜ユニット11’からの非透過ガスが第2ガス分離膜ユニット12’に供給され、第2ガス分離膜ユニット12’からの非透過ガスが製品ガスとして回収される。第2ガス分離膜ユニット12’からの透過ガスは再度原料ガスと合流して第1ガス分離膜ユニット11’に供給される。
一方、CH
4分離とは異なり、透過ガスを製品ガスとして取り出す用途において、第1ガス分離膜ユニットの透過ガスを2段目において分離する2段のガス分離システムも提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
非透過ガスを2段目に送る
図3のガス分離システム10’では、CH
4回収率を高めながら製品ガスであるCH
4富化ガス中のCO
2濃度を低減させようとすると、原料ガス流量に対する第2ガス分離膜ユニット12’からの戻りガス流量(つまり第2ガス分離膜ユニット12’からの透過ガス流量)の割合が増加してしまい、結果としてシステム10’全体のガス流量が増加するために、システム10’全体として圧縮動力を高める必要があった。これに対し、原料ガス流量に対する第2ガス分離膜ユニット12’からの透過ガス流量の割合を低減させようとすると、第1ガス分離膜ユニット11’及び第2ガス分離膜ユニット12’の膜面積を増大させざるを得なかった。このために、
図3に示す従来のCH
4分離用ガス分離システム10’では、膜面積を低減させようとする場合、圧縮動力を増加させざるを得ず、圧縮動力の抑制と膜面積の低減とを両立させることが困難であった。
【0007】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るガス分離システムを提供することにある。
【0008】
本発明は、第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットを備え、CO2及びCH4を含む原料ガスからCH4富化ガスを製造するために用いられるガス分離システムであって、
各ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
第1ガス分離膜ユニットのガス入口に連結する原料ガス供給ラインと、
原料ガス供給ラインに介在配置した圧縮手段と、
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを連結する第1連結ラインと、
第2ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と原料ガス供給ラインとを連結する第2連結ラインと、を有し、
第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性P'CO2 / P'CH4が30以上であって、
CH4の回収率が98%以上であり、第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口から排出された非透過ガス中のCO2含量が5モル%以下であり、且つ、第2ガス分離膜ユニットに供給される時間当たりガス量が、第1ガス分離膜ユニットに供給される時間当たり原料ガス量に対し、60%以下となるようになされている、ガス分離システムを提供するものである。
【0009】
また本発明は、ガス分離システムを用いてCO2及びCH4を含む原料ガスからCH4富化ガスを製造する方法であって、
ガス分離システムとして、
第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットを備え、
各ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
第1ガス分離膜ユニットのガス入口に連結する原料ガス供給ラインと、
原料ガスの供給ラインに介在配置した圧縮手段と、
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを連結する第1連結ラインと、
第2ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と原料ガス供給ラインとを連結する第2連結ラインと、を有し、
第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性P'CO2 / P'CH4が30以上であるガス分離システムを用い、
CH4の回収率が98%以上であり、第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口から排出される非透過ガス中のCO2含量が5モル%以下であり、且つ、第1ガス分離膜ユニットの時間当たり透過ガス量が、第1ガス分離膜ユニットに供給される時間当たり原料ガス量に対し、60%以下となるようにガス分離システムを運転する、CH4富化ガスの製造方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一の実施形態であるメタン分離用ガス分離システムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明のガス分離システムに用いられるガス分離膜ユニットを構成するモジュールの一例の構造を示す模式図である。
【
図3】
図3は、従来のメタン分離用ガス分離システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。まず、
図1及び
図2に基づき、本発明の好ましい実施形態であるガス分離システム10及びこれを用いてCH
4富化ガスを製造する本発明の好ましい実施態様について説明する。
図1に示すように、本実施形態のガス分離システム10は、2つのガス分離膜ユニットである第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12を備えている。各ガス分離膜ユニット11,12としては、例えば、
図2に示すとおり、中空糸膜等からなり、ガス選択透過性を有するガス分離膜30をケーシング31内に収容してなるモジュール40を用いることができる。ガス分離膜ユニット11,12におけるガス分離膜はいずれも、CO
2の透過速度P'
CO2(cm
3(STP)/(cm
2・sec・cmHg))がCH
4の透過速度P'
CH4(cm
3(STP)/(cm
2・sec・cmHg))よりも高いものである。
【0012】
本実施形態の各ガス分離膜ユニット11及び12は、
図2に示すガス分離膜モジュール40を1本用いたものであるか、或いは、このモジュール40を複数本並列してなるものである。モジュール40におけるケーシング31は、対向する二面が開口して開口部32を形成している。この開口部32は、ガス分離膜30をケーシング31内に挿入するためのものであり、ガス分離膜30の開口部ではない点に留意すべきである。ガス分離膜30は、この開口部32を通じてケーシング31内に収容される。ガス分離膜30が多数本の中空糸膜が長手方向を一致するように束ねてなる中空糸膜束から構成される場合、該ガス分離膜30はその収容状態において、ケーシング31の各開口部32の付近において中空糸膜の各端部が開口するように、ケーシング31内に収容される。
【0013】
ガス分離膜30がケーシング31内に収容された状態においては、中空糸膜の延びる方向であるY方向の両端部の位置において、ガス分離膜30が管板33,34によってケーシング31の内壁に固定されている。ケーシング31の各開口部32は、蓋体35,36によって閉塞されている。蓋体35にはガス入口37が設けられている。一方、蓋体36には非透過ガス排出口38が設けられている。分離対象となる混合ガスは、蓋体35のガス入口37からモジュール内(すなわちユニット内)に導入される。導入されたガスのうち、ガス分離膜30を透過したガスは、ケーシング31に設けられた透過ガス排出口39からモジュール外(すなわちユニット外)に排出される。一方、ガス分離膜30を透過しなかった非透過ガスは、蓋体36の非透過ガス排出口38からモジュール外(すなわちユニット外)に排出される。また、場合によっては、ケーシング31にパージガスの供給口(図示せず)を設けてもよい。以上、
図2の分離膜モジュールを例に挙げて説明したが、当然ながら、本発明は他の構成の分離膜モジュールにも応用可能であり、例えば、シェルフィード型のモジュールやスパイラル型モジュールにも応用できる。
【0014】
図1に戻ると、同図に示す通り、第1ガス分離膜ユニット11と、第2ガス分離膜ユニット12とが直列に接続されている。具体的には、第1ガス分離膜ユニット11と、第2ガス分離膜ユニット12とは、第1ガス分離膜ユニット11の透過ガス排出口11bと、第2ガス分離膜ユニット12のガス入口12aとを第1連結ライン14によって連結することで接続されている。
【0015】
また第1ガス分離膜ユニット11のガス入口11aには、原料である混合ガス源(図示せず)からの原料ガスを第1ガス分離膜ユニット11へ供給するための原料ガス供給ライン16が連結されている。一方、第2ガス分離膜ユニット12の非透過ガス排出口12cには、第2ガス分離膜ユニット12の非透過ガスを第1ガス分離膜ユニット11へ供給するための第2連結ライン18が連結されている。第2連結ライン18は、原料ガス供給ライン16における第1圧縮手段21の吐出し側及び吸込み側のいずれに連結していてもよいが、システムの所要圧縮動力を抑制させる観点から、吐出側に連結していることが好ましい。
【0016】
第1圧縮手段21が原料ガス供給ライン16の途中に介在配置されている。第1圧縮手段21は、原料ガスを加圧して、第1ガス分離膜ユニット11に供給する目的で設置されている。但し、ガス分離システムが原料ガスとして油田などから送出される等して圧力を有するガスを分離する場合は、第1ガス分離膜ユニット11に供給される原料ガスを加圧するための第1圧縮手段21を原料ガス供給ライン16に設けなくとも、原料ガスの分離を行うことが可能である。
また第2圧縮手段22が第1連結ライン14の途中に介在配置されている。第2手段22は、第1ガス分離膜ユニット11の透過ガス排出口11bから排出された透過ガスを加圧して、第2ガス分離膜ユニット12に供給する目的で設置されている。第1圧縮手段21及び第2圧縮手段22としては圧縮機を用いることができる。
【0017】
システム10は、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガス排出口11cに連結し、該排出口11cから非透過ガスをシステム外に取り出すための第1取り出しライン15と、第2ガス分離膜ユニット12の透過ガス排出口12bに連結し、該排出口12bから透過ガスをシステム外に取り出すための第2取り出しライン19と、をそれぞれ有している。
【0018】
以上の構成を有する本実施形態のガス分離システム10の動作について説明する。分離対象となる原料ガスは、混合ガス源(図示せず)から原料ガス供給ライン16を通じて第1ガス分離膜ユニット11に供給される。
【0019】
原料ガスは、分離対象となるCO2及びCH4を少なくとも含むものである。加圧された状態の原料ガスが第1ガス分離膜ユニット11に供給されると、ガス分離膜に対する透過速度の相違に起因して、ガス分離膜を透過したガスである透過ガスと、ガス分離膜を透過しなかったガスである非透過ガスとに分離される。上述したように、第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12におけるガス分離膜はいずれも、CH4の透過速度P'CH4に比してCO2の透過速度P'CO2が大きい。第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガス排出口11cから排出される非透過ガスは、原料ガスに比べてCH4が濃縮されたものである。該非透過ガスは、非透過ガス排出口11cから排出され、第1取り出しガスライン15を通じてシステム外へ取り出される。一方、第1ガス分離膜ユニット11からの透過ガスは、原料ガスに比べてCO2が濃縮されたものである。該透過ガスは、透過ガス排出口11bから排出され、第1連結ライン14を通じて第2ガス分離膜ユニット12に供給され、第2ガス分離膜ユニット12の透過ガス排出口12bから排出された更に二酸化炭素が濃縮されたガスがシステム外に取り出される。また、第2ガス分離膜ユニット12の非透過ガスは、再度非透過ガス排出口12cから第2連結ライン18を通り、原料ガス供給ライン16に導入されて、原料ガスと合流して第1ガス分離膜ユニット11に供給される。
【0020】
本実施形態のガス分離システム10は、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガス排出口11cから排出される非透過ガス中のCO2含量が5モル%以下である。更に非透過ガス中のCH4純度を高めるため、非透過ガス中のCO2含量は3モル%以下であることが特に好ましい。非透過ガス中のCH4純度は95モル%以上であることが好ましく、97モル%以上であることがより好ましい。
【0021】
更に、本実施形態においては、CH4の回収率が98%以上であり、98.5%以上であることが特に好ましい。CH4の回収率は第1ガス分離膜ユニット11に導入される単位時間当たりの原料ガス中のCH4の量に対する第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガス排出口11cから単位時間当たり排出される非透過ガス中のCH4の量として算出される。回収率は標準状態における体積を基準とした割合である。CH4の回収率を高めることは、温室効果ガスであるCH4のシステム外への排出量を低減させることによる温暖化防止の点からも好ましい。回収率は、膜面積や消費エネルギーの観点からは低い方が好ましいが、CH4ガスのロスを抑えるために高回収率が要望される。
【0022】
本実施形態において、第2ガス分離膜ユニット12に供給されるガスの流量(F2)(時間当たりのガス量、単位Nm3/h)の、第1ガス分離膜ユニット11に供給されるガスの流量(F1)に対する比率(以下「供給流量比(F2/F1)」ともいう)が、60%以下となるようになされている。これにより、本実施形態のシステム10では、第2ガス分離膜ユニット12の供給流量を一定以下のものとして、この流量に依存するシステム全体の流量を抑制し、当該流量に依存するシステム全体の圧縮動力を抑制できる。特に本実施形態のように第1連結ライン14の途中に介在配置されている第2圧縮手段22を用いている場合にはこの第2圧縮手段22の圧縮動力を大きく削減できる。システムの所要圧縮動力をより一層抑制する観点から、より好ましくは、供給流量比(F2/F1)は50%以下である。供給流量比(F2/F1)は低ければ低いほどよいが、通常は、10%以上又は20%以上である。
【0023】
本実施形態では、第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12それぞれについて、ガス分離選択性P'CO2 / P'CH4が特定値であることを特徴の一つとしている。具体的には第1ガス分離膜ユニット11のガス分離選択性(P'CO2 / P'CH4)1及び第2ガス分離膜ユニット12のガス分離選択性(P'CO2 / P'CH4)2はいずれも30以上であり、これにより第2圧縮手段22の圧縮動力を削減でき、製品ガス中のCO2ガス量を低減しつつ膜面積の低減と圧縮動力の抑制とを両立させることができるという利点がある。第1ガス分離膜ユニット11のガス分離選択性(P'CO2 / P'CH4)1及び第2ガス分離膜ユニット12のガス分離選択性(P'CO2 / P'CH4)2は35以上であることがより好ましい。第1ガス分離膜ユニット11のガス分離選択性(P'CO2 / P'CH4)1及び第2ガス分離膜ユニット12のガス分離選択性(P'CO2 / P'CH4)2は、通常120以下であることがガス分離膜ユニットの製造容易性の点で好ましい。
【0024】
第1ガス分離膜ユニット11の膜面積S1と第2ガス分離膜ユニットの膜面積S2との比率はS1/S2が1以上14以下であることがF2/F1を上記の範囲としやすいために好ましく、2以上12以下であることがより好ましい。
【0025】
本実施形態において、2つのユニットを構成する第1ガス分離膜ユニット11のガス分離選択性(P'CO2 / P'CH4)1及び第2ガス分離膜ユニット12のガス分離選択性(P'CO2 / P'CH4)2は同一であってもよく異なっていてもよい。また第1ガス分離膜ユニット11のCO2の透過速度P'CO2
1及び第2ガス分離膜ユニット12のCO2の透過速度P'CH4
2は、同一であってもよく異なってもよい。
【0026】
逆に、第1ガス分離膜ユニットのCO2の透過速度P'CO2
1が、第2ガス分離膜ユニットで用いるガス分離膜のCO2の透過速度P'CO2
2に比べて高いことは、システム全体の効率を大きく損なわず膜モジュール本数を低減できる点で好ましい。
【0027】
第1ガス分離膜ユニットのCO2の透過速度P'CO2
1が、第2ガス分離膜ユニットで用いるガス分離膜のCO2の透過速度P'CO2
2に比べて高い場合、上記の観点から、両者の透過速度の比P'CO2
2 / P'CO2
1は0.7以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
【0028】
上述したガス分離選択性P'CO2/ P'CH4(P'CO2 / P'CH4
1及びP'CO2/ P'CH4
2)並びにCO2の透過速度P'CO2(P'CO2
1及びP'CO2
2)は、それぞれ、運転時の各ガス分離膜ユニットにおける温度条件におけるガス分離選択性P'CO2 / P'CH4及びCO2の透過速度P'CO2であればよい。
【0029】
運転時においてユニット間でガス透過速度及び/又はガス分離選択性を異ならせる方法としては、ユニット間で使用するガス分離膜の種類を異ならせる方法が挙げられる。ユニット間でガス分離膜の種類を異ならせるには、ユニット間で(1)異なる化学組成を有する分離膜を用いる(2)同一の化学組成を有する分離膜であるが、製膜の条件、熱処理の温度といった製造条件が異なる分離膜を用いる(3)同一の化学組成および製造条件の分離膜であるが、コーティングその他の表面処理の条件が異なる分離膜を用いる等を行えばよい。
【0030】
なお、同一のガス分離膜を用いた場合であっても、その運転温度を相対的に低く設定した場合には運転温度を相対的に高く設定した場合に比べ、ガス透過速度が低くなることが、一般的に知られている。
このことに基づき、各ユニットの運転温度を異ならせて、2つのユニット間の透過速度を上記の関係としてもよい。例えば、第1ガス分離膜ユニット11よりも第2ガス分離膜ユニット12の運転温度を高くして、第1ガス分離膜ユニット11のCO2の透過速度P'CO2
1よりも第2ガス分離膜ユニット12のP'CO2
2を高めてもよい。また、第2ガス分離膜ユニット12よりも第1ガス分離膜ユニット11の運転温度を高くして、第2ガス分離膜ユニット12のCO2の透過速度P'CO2
2よりも第1ガス分離膜ユニット11のP'CO2
1を高めてもよい。2つのユニットの運転温度を異ならせる場合、運転温度の差は5℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることが特に好ましい。
【0031】
なお第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニットの運転温度は、特に限定されず、例えば室温以上80℃以下である。
【0032】
第1ガス分離膜ユニット11のガス分離選択性(P'CO2/ P'CH4)1及び第2ガス分離膜ユニット12のガス分離選択性(P'CO2/ P'CH4)2の比率(P'CO2 / P'CH4)1/(P'CO2 / P'CH4)2は、モジュール本数を抑えながらCH4回収率を高くするために、例えば0.2以上1.1以下であることが好ましく、0.2以上1以下であることがより好ましい。
【0033】
原料ガスにおけるCH4及びCO2の割合としては限定されるものではないが、本発明のガス分離システム及びガス分離方法は例えば、CH4及びCO2の合計100体積%中、CH4が40体積%以上80体積%以下、またCO2が20体積%以上60体積%以下程度の原料ガス等の分離に利用できる。原料ガス中、二酸化炭素(CO2)及びメタン(CH4)は、二酸化炭素(CO2)の体積割合がメタン(CH4)よりも大きくてもよく、二酸化炭素(CO2)の体積割合がメタン(CH4)よりも小さくてもよい。原料ガス中のCH4及びCO2の合計割合としては、95体積%以上であることが好ましく、98体積%以上であることがより好ましい。このような原料ガスとしてはバイオガスが挙げられる。バイオガスとは、有機性廃棄物が嫌気性微生物の働きによってメタン発酵することで発生するガスをいう。バイオガスには、下水汚泥の嫌気性発酵により発生する消化ガス、及び、ごみの埋立処分場から発生するランドフィルガスが挙げられる。前記の有機性廃棄物としては、前記の下水汚泥や埋め立てごみのほか、乳牛や豚などの糞尿や、食品残渣などが挙げられる。原料ガスが天然ガスであることも本発明のガス分離システムが好適に使用できる点で好ましい。
【0034】
各ガス分離膜ユニット11,12におけるガス分離膜は、供給される混合ガスや目的とする製品ガスの種類に応じて適宜選択できる。ガス分離膜としては、当該技術分野においてこれまで用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。例えばシリコーン樹脂、ポリブタジエン樹脂などのゴム状ポリマー材料、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、セルロースなどのガラス状ポリマー材料、及びゼオライトなどのセラミックス材料が挙げられる。またガス分離膜は、均質膜、均質層と多孔質層とからなる非対称膜、微多孔質膜などいずれであってもよい。ガス分離膜のケーシング内への収納形態も、プレートアンドフレーム型、スパイラル型、中空糸型などいずれであってもよい。特に好適に用いられるガス分離膜は、芳香族ポリイミドの中空糸ガス分離膜である。中空糸ガス分離膜は均質層の厚さが10nm以上200nm以下であり、多孔質層の厚さが20μm以上200μm以下の非対称構造を有することが好ましい。中空糸膜の内径は30μm以上500μm以下程度であることが好ましい。
【0035】
1つのガス分離膜ユニット内に備えられているガス分離膜モジュールは1本であってもよく、あるいは複数本であってもよい。1つのガス分離膜ユニット内に2本以上のガス分離膜モジュールが備えられているときは、これらがユニット内で並列に接続されていることが好ましい。各ガス分離膜ユニットがガス分離膜モジュールを複数本備えている場合、該ガス分離膜モジュールの本数を変更することでユニット内の膜面積を容易に調整することができる。
【0036】
更に、エネルギー効率等の点から、一般に、中空糸膜からなる第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12に送り込むガスの圧力は0.2MPaG~2.0MPaGであることが好ましく、第2ガス分離膜ユニット12に送り込むガスの圧力が、第1ガス分離膜ユニット11に送り込むガスの圧力より若干(0~0.3MPaG程度)高い方が好ましい。
【0037】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、第1連結ライン14に第2圧縮手段22を介在配置させていた。しかし、第2圧縮手段22を配置する代わりに、又はそれに加えて、真空ポンプ等により第2ガス分離膜ユニット12の透過側空間を大気圧以下に設定すると、圧縮動力を更に低減できる点等から好ましい。
【0038】
また、上記各実施形態では各ガス分離膜ユニットの一例として、中空糸膜を有するガス分離膜ユニットを用いたが、これに代えて他の形態のガス分離膜ユニットを用いてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0040】
〔実施例1-1~1-5〕
図1に示すガス分離システム10を用いて、二酸化炭素及びメタンを含む混合ガスの分離を行った。同システム10における第1圧縮手段21としては圧縮機を用いた。混合ガスは、組成はCO
240体積%、CH
460体積%のものを用いた。第1及び第2ガス分離膜ユニット11,12を構成するモジュールとして、P'
CO2が9.62×10
-5cm
3(STP)/(cm
2・sec・cmHg)、P'
CH4が0.16×10
-5cm
3(STP)/(cm
2・sec・cmHg)、ガス分離選択性P'
CO2 / P'
CH4が61.91である、ポリイミド中空糸膜から構成されるガス分離膜をケース内に収容するガス分離膜モジュールを複数本並列に接続して用いた。第1及び第2ガス分離膜ユニット11,12の運転温度は35℃であった。
【0041】
第1ガス分離膜ユニット11を構成するガス分離膜モジュールの本数を70本に設定し、第2ガス分離膜ユニット12を構成するガス分離膜モジュールの本数を表1に示す値に設定した。混合ガスは、流量500Nm3/h、圧力1MPaGの状態で第1ガス分離膜ユニット11に供給させ、第1ガス分離膜ユニット11の透過ガスを圧力1.1MPaGの状態で、第2ガス分離膜ユニット12に供給し、第2ガス分離膜ユニット12の非透過ガスを第1ガス分離膜ユニット11に帰還させた。第1ガス分離膜ユニット11の透過ガス排出口における透過ガス圧力及び第2ガス分離膜ユニット12の透過ガス排出口における透過ガス圧力は0.03MPaGであった。この条件で、各ユニットへの供給流量を表1に示す。また、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガスの組成、CH4の回収率(Rcv.、%)、各ユニットの透過ガス及び非透過ガスの流量、供給流量比(F2/F1)並びに第2圧縮手段22の圧縮動力、総圧縮動力(圧縮手段21、22の圧縮動力の和)を表1に示す。
【0042】
〔実施例2-1~2-5〕
第1ガス分離膜ユニット11のガス分離膜モジュールの本数を80本に設定し、第2ガス分離膜ユニット12を構成するガス分離膜モジュールの本数を表1に示す値に設定した以外は実施例1-1と同様にした。各ユニットへの供給流量を表1に示す。また、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガスの組成、CH4の回収率(Rcv.、%)、各ユニットの透過ガス及び非透過ガスの流量、供給流量比(F2/F1)、第2圧縮手段22の圧縮動力並びに総圧縮動力を表1に示す。
【0043】
〔実施例3-1~3-6〕
第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12を構成するモジュールとして、P'CO2が8.49×10-5cm3(STP)/(cm2・sec・cmHg)、P'CH4が0.16×10-5cm3(STP)/(cm2・sec・cmHg)、ガス分離選択性P'CO2 / P'CH4が54.63である、ポリイミド中空糸膜から構成されるガス分離膜をケース内に収容するガス分離膜モジュールを複数本並列に接続して用いた。これらの点以外は、実施例2-1と同様にした。第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガスの組成、CH4の回収率(Rcv.、%)、各ユニットの透過ガス及び非透過ガスの流量、供給流量比(F2/F1)、第2圧縮手段22の圧縮動力並びに総圧縮動力を表1に示す。
【0044】
〔比較例1-1~1-5、2-1~2-5、3-1~3-6、4-1~4-4、5-1~5-2〕
第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12を構成するモジュールとして、P'CO2が4.51×10-5cm3(STP)/(cm2・sec・cmHg)、P'CH4が0.16×10-5cm3(STP)/(cm2・sec・cmHg)、ガス分離選択性P'CO2 / P'CH4が29.00である、ポリイミド中空糸膜から構成されるガス分離膜をケース内に収容するガス分離膜モジュールを複数本並列に接続して用いた。また、第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12のガス分離膜モジュールの本数を表2に記載の本数に設定した。それらの点以外は実施例1-1と同様とした。各ユニットへの供給流量を表2に示す。また、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガスの組成、CH4の回収率(Rcv.、%)、各ユニットの透過ガス及び非透過ガスの流量、供給流量比(F2/F1)、第2圧縮手段22の圧縮動力並びに総圧縮動力を表2に示す。
【0045】
〔比較例6-1~6-5〕
図3に示すガス分離システム10’を用いた。第1及び第2ガス分離膜ユニット11’,12’を構成するモジュールとして、P'
CO2が9.62×10
-5cm
3(STP)/(cm
2・sec・cmHg)、P'
CH4が0.16×10
-5cm
3(STP)/(cm
2・sec・cmHg)、ガス分離選択性P'
CO2 / P'
CH4が61.91である、ポリイミド中空糸膜から構成されるガス分離膜をケース内に収容するガス分離膜モジュールを複数本並列に接続して用いた。第1ガス分離膜ユニット11’を構成するガス分離膜モジュールの本数を表3に示す値に設定した。第2ガス分離膜ユニット12’を構成するガス分離膜モジュールの本数は70本とした。混合ガスは、流量500Nm
3/h、圧力1MPaGの状態で第1ガス分離膜ユニット11’に供給させ、第1ガス分離膜ユニット11’の非透過ガスを、第2ガス分離膜ユニット12’に供給し、第2ガス分離膜ユニット12’の透過ガスを第1ガス分離膜ユニット11’に帰還させた。第1ガス分離膜ユニット11’の透過ガス排出口における透過ガス圧力及び第2ガス分離膜ユニット12の透過ガス排出口における透過ガス圧力は0.03MPaGであった。各ユニットへの供給流量を表3に示す。また、第2ガス分離膜ユニット12の非透過ガスの組成、CH
4の回収率(Rcv.、%)、各ユニットの透過ガス、非透過ガスの流量並びに第1圧縮手段21’の圧縮動力を表3に示す。
【0046】
〔比較例7-1~7-5〕
第1ガス分離膜ユニット11’のガス分離膜モジュールの本数を80本に設定し、第2ガス分離膜ユニット12’のモジュール本数を表3に示す値とした以外は比較例6-1と同様にした。各ユニットへの供給流量を表3に示す。また、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガスの組成、CH4の回収率(Rcv.、%)、並びに、第1圧縮手段21’の圧縮動力を表3に示す。
【0047】
〔比較例8-1~8-2〕
第1及び第2ガス分離膜ユニット11’,12’を構成するモジュールとして、P'CO2が8.49×10-5cm3(STP)/(cm2・sec・cmHg)、P'CH4が0.16×10-5cm3(STP)/(cm2・sec・cmHg)、ガス分離選択性P'CO2 / P'CH4が54.63である、ポリイミド中空糸膜から構成されるガス分離膜をケース内に収容するガス分離膜モジュールを複数本並列に接続して用いた。第1ガス分離膜ユニット11’及び第2ガス分離膜ユニット12’のモジュール本数を表3に示す値とした。これらの点以外は、比較例6-1と同様にした。第2ガス分離膜ユニット12の非透過ガスの組成、CH4の回収率(Rcv.、%)、並びに、第1圧縮手段21’の圧縮動力を表3に示す。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
表1に示すように、各実施例では、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガスにおけるCO2濃度が5mol%以下であり、CH4の回収率が98%以上であり第2ガス分離膜ユニットに供給される時間当たり透過ガス量(F2)が、第1ガス分離膜ユニットに供給される時間当たり原料ガス量(F1)に対し、60%以下となるようになされている。表1の各実施例のガス分離システムでは、第1及び第2ガス分離膜ユニットモジュールの合計モジュール本数が少なくなっても、圧縮動力の増加が抑制されていることが判る。
【0052】
一方、表2に示すように、第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性P'CO2 / P'CH4が30未満である場合、例えば実施例1-1と比較例1-1との比較や実施例2-1と比較例2-1との比較からわかる通り、実施例1-1及び実施例2-1とそれぞれ同じモジュール本数を用いても、これらの比較例1-1及び比較例2-1では第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガス中のCO2濃度が5モル%超と高くなっていることが判る。
また表2の比較例1-1~1-5では、モジュール本数の低減に伴って第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス中のCH4ガス純度が大幅に低下し、F2/F1(第2圧縮手段22の圧縮動力)が増加している。これに対し、表1の実施例1-1~1-5では、モジュール本数の低減に伴う第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス中のCH4ガス純度の低下や、F2/F1(第2圧縮手段22の圧縮動力)の増加が大幅に抑制されている。表1の実施例2-1~2-5と表2の比較例2-1~2-5との比較からも同様のことが判る。
また、表2の比較例3-1~5-2の結果から、第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性P'CO2 / P'CH4が30未満である場合、モジュール本数を大幅に増加させることで第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス中のCH4ガス純度は高めることができるが、F2/F1が高くなり、それにより第2圧縮手段22の圧縮動力が大きくなってしまうことが判る。
【0053】
また表3に示す結果から明らかなとおり、
図3のシステムでは、例えば実施例1-1~1-5に対応するガス分離膜の分離選択性及び膜面積条件を採用した各比較例6-1~6-5では、第2ガス分離膜ユニット12の非透過ガスにおけるCO
2濃度が大きく、製品である第2ガス分離膜ユニット12の非透過ガス中のCH
4純度が低下することが判る。また比較例6-1~6-5の条件において、第1ガス分離膜ユニット11の膜面積を小さくすると、圧縮動力が大きくなり、製品純度が下がることが判る。
更に、例えば実施例2-1~2-5と同様のガス分離膜の分離選択性及び膜面積条件を採用した各比較例7-2~7-5、及び、実施例3-1~3-6と同様のガス分離膜の分離選択性及び膜面積条件を採用した各比較例8-1及び8-2でも同様に、第1ガス分離膜ユニット11の膜面積を小さくすると、圧縮動力が大きくなり、製品純度が下がることが判る。
【0054】
〔実施例4-1~4-17〕
CO2/CH4の体積比を下記表4に示すように変更し、また各ユニットのモジュール本数を表4に示すように変更した以外は実施例1-1と同様にした。各ユニットへの供給流量を表4に示す。また、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガスの組成、CH4の回収率(Rcv.、%)、各ユニットの透過ガス及び非透過ガスの流量、供給流量比(F2/F1)、第2圧縮手段22の圧縮動力並びに総圧縮動力を表4に示す。
【0055】
【0056】
表4に示すように、原料のCO2/CH4の体積比に関わらず、本発明により、CH4の高回収率及び高純度を達成しつつ、従来のガス分離システムに比べて膜面積を低減する場合に所要圧縮動力の増加が抑制されていることが判る。
【0057】
〔実施例5-1~5-6〕
第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12のガス分離膜モジュールの本数を表5に記載の本数に設定した以外は実施例1-1と同様とした。各ユニットへの供給流量を表5に示す。また、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガスの組成、CH4の回収率(Rcv.、%)、各ユニットの透過ガス及び非透過ガスの流量、供給流量比(F2/F1)、第2圧縮手段22の圧縮動力並びに総圧縮動力を表5に示す。
【0058】
〔実施例6-1~6-7、7-1~7-7〕
第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12のガス分離膜モジュールの本数を表5に記載の本数に設定した以外は実施例3-1と同様とした。各ユニットへの供給流量を表5に示す。また、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガスの組成、CH4の回収率(Rcv.、%)、各ユニットの透過ガス及び非透過ガスの流量、供給流量比(F2/F1)、第2圧縮手段22の圧縮動力並びに総圧縮動力を表5に示す。
【0059】
〔実施例8-1~8-11〕
第1及び第2ガス分離膜ユニット11,12を構成するモジュールとして、P'CO2が6.79×10-5cm3(STP)/(cm2・sec・cmHg)、P'CH4が0.16×10-5cm3(STP)/(cm2・sec・cmHg)、ガス分離選択性P'CO2 / P'CH4が43.70である、ポリイミド中空糸膜から構成されるガス分離膜をケース内に収容するガス分離膜モジュールを複数本並列に接続して用いた。第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12のガス分離膜モジュールの本数を表5に記載の本数に設定した。その点以外は実施例1-1と同様にした。各ユニットへの供給流量を表5に示す。また、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガスの組成、CH4の回収率(Rcv.、%)、各ユニットの透過ガス及び非透過ガスの流量、供給流量比(F2/F1)、第2圧縮手段22の圧縮動力並びに総圧縮動力を表5に示す。
【0060】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によればCH4の高回収率及び高純度を達成しつつ、従来のガス分離システムに比べて所要圧縮動力を抑制しながら膜面積を低減できる、メタン分離用ガス分離システム及びメタン富化ガスの製造方法が提供される。