(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240423BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240423BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
(21)【出願番号】P 2021524902
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2020022122
(87)【国際公開番号】W WO2020246546
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019106535
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019145428
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019146244
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰志
(72)【発明者】
【氏名】田中嶋 顕
(72)【発明者】
【氏名】坂上 滉樹
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009666(JP,A)
【文献】特開平11-249062(JP,A)
【文献】特表平09-506837(JP,A)
【文献】特表2014-506337(JP,A)
【文献】国際公開第2018/165126(WO,A1)
【文献】特表昭59-502122(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0157036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/08、5/30、27/01
B60K 35/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明装置(6)と、
前記照明装置(6)に照らされて表示光を出射する表示器(3)と、
前記表示光を反射する反射鏡(4)とを備え、
前記反射鏡(4)は、屈折率の異なる複数の樹脂膜を積層してなる反射層(41)と、粘着層(42)と、前記反射層(41)が前記粘着層(42)を介して接合する基材(43)とを備え
、
前記基材(43)及び前記粘着層(42)のうちの少なくともいずれか一方は、遮光性を有する、ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記基材(43)は、前記反射層(41)とは逆側の表面に、遮光性を有する遮光層(44)を備える、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記反射鏡(4)は、前記反射層(41)の反射軸方向(C)が前記表示器(3)から出射される前記表示光の偏光方向と略平行となる向きで配置される、請求項1
または請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記反射鏡(4)は、前記表示器(3)からの前記表示光に関する入射平面(D)が、鉛直面よりも水平面に近くなり、かつ前記反射層(41)の反射軸方向(C)が、前記入射平面(D)と直交する方向と略平行となる向きで配置される、請求項
3に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項5】
前記反射鏡(4)は、前記表示器(3)からの前記表示光に関する入射平面(D)が、水平面よりも鉛直面に近くなり、かつ前記反射層(41)の反射軸方向(C)が、前記入射平面(D)と直交する方向と略平行となる向きで配置される、請求項
3に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項6】
前記基材(43)は、前記粘着層(42)に接する第1表面(431)と、前記第1表面(431)の裏側の第2表面(432)とが非平行である、請求項1~
5のうちのいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のウインドシールドに液晶表示器からの表示光を投影してウインドシールドの前方に虚像を表示するヘッドアップディスプレイが知られている。この種のヘッドアップディスプレイでは、表示光を出射する出射口から太陽光などの外光が侵入するので、液晶表示器が外光で熱せられて破損することを防ぐ必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、筐体内に侵入した太陽光が平面鏡に反射して液晶表示器が熱せられることを防止するために、可視光を反射して赤外光を透過するコールドミラーを平面鏡に採用したヘッドアップディスプレイが開示されている。しかしながら、特許文献1のヘッドアップディスプレイでは、太陽光の可視光成分がコールドミラーを反射して液晶表示器に向かうことは防止できない。
特許文献2には、液晶表示器の前方に、ホットミラー(可視光を反射して赤外光を吸収)、位相差板、偏光板などを設けたヘッドアップディスプレイが開示されている。このようなヘッドアップディスプレイによれば、コールドミラーでカットできなかった太陽光の
可視光成分や赤外光によって液晶表示器が熱せられることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4841815号公報
【文献】特開2013-174855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のヘッドアップディスプレイでは、液晶表示器の前方に、ホットミラー、位相差板、偏光板などを追加する必要があるので、部品点数が増加するという課題がある。
【0006】
そこで、本開示は、部品点数を増やすことなく、外光に対する遮熱性が高められるヘッドアップディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの側面では、照明装置(6)と、
前記照明装置(6)に照らされて表示光を出射する表示器(3)と、
前記表示光を反射する反射鏡(4)とを備え、
前記反射鏡(4)は、屈折率の異なる複数の樹脂膜を積層してなる反射層(41)と、粘着層(42)と、前記反射層(41)が前記粘着層(42)を介して接合する基材(43)とを備え、
前記基材(43)及び前記粘着層(42)のうちの少なくともいずれか一方は、遮光性を有する、ヘッドアップディスプレイが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、部品点数を増やすことなく、外光に対する遮熱性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】一実施例によるヘッドアップディスプレイの内部構成を上側から示す斜視図である。
【
図1B】ヘッドアップディスプレイの車両搭載状態を車両側方視で概略的に示す図である。
【
図9】縦折タイプのヘッドアップディスプレイを示す内部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、
図1A等では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0011】
[ヘッドアップディスプレイの構成]
図1Aは、一実施例によるヘッドアップディスプレイ1の内部構成を上側から示す斜視図である。
図1Bは、ヘッドアップディスプレイ1の車両搭載状態を車両側方視で概略的に示す図である。なお、
図1Aでは、ヘッドアップディスプレイ1の一部の構成要素の図示は省略されている。
図1Aには、右手系で、互いに直交する3方向であるX方向、Y方向、及びZ方向が定義されている。以下では、形式上、Z方向を上下方向とし、正側を上側とし、負側を下側とする。
【0012】
ヘッドアップディスプレイ1は、車両のインストルメントパネル9内に搭載される。ヘッドアップディスプレイ1は、
図1AのY方向が車幅方向に略対応する向きで搭載されてよい。
【0013】
ヘッドアップディスプレイ1は、ケース2と、TFT(Thin Film Transistor)パネルユニット3(表示器の一例)と、反射鏡4と、凹面鏡5と、バックライトユニット6(照明装置の一例)とを含む。
【0014】
ケース2は、ヘッドアップディスプレイ1の筐体を形成する。ケース2は、ヘッドアップディスプレイ1の筐体の下部を形成するロアケースである。なお、ケース2は、
図1Aでは図示が省略されたアッパーケースと結合される。
【0015】
ケース2は、アルミ等のような伝熱性の高い材料により形成される。ケース2は、
図1Aに示すように、放熱部位21を含む。放熱部位21は、ケース2の外側表面(外部に露出する表面)に形成される。放熱部位21は、バックライトユニット6から発生する熱を放熱する機能を有する。放熱部位21は、ケース2外を流れる空気に熱を放出する。
【0016】
TFTパネルユニット3は、バックライトユニット6からの光をバックライトとして利用して、表示画像に応じた表示光を出射する表示器である。本実施例のTFTパネルユニット3は、ドットマトリクス型のTFT(Thin Film Transistor)パネルを備える。なお、表示画像は、任意であり、例えばナビゲーション情報や各種の車両情報等を表す画像であってよい。
【0017】
TFTパネルユニット3は、ケース2に固定される。例えば、TFTパネルユニット3は、
図1Aに示すように、X方向の両側の2箇所でネジ90により締結される。
【0018】
反射鏡4は、TFTパネルユニット3から出射される表示光を凹面鏡5に向けて反射する。
【0019】
凹面鏡5は、反射鏡4で反射された表示光を反射して、アッパーケース(図示せず)に設けられた出射口から出射させ、車両VCのウインドシールドWSに向かわせる。凹面鏡5は、ウインドシールドWSにおける表示光が当たる領域の上下位置が調整可能となるように、ケース2に対して回転可能に支持されてよい。
【0020】
図1Bに示すように、ウインドシールドWSに表示光が照射されると、車両VCを運転する運転者にとっては、ウインドシールドWSよりも前方に、当該照射によって得られた表示像(虚像表示)VIが見える。これにより、運転者は、前方風景と重畳させて表示像VIを視認でき、視線移動の少ない態様で車両情報等を把握でき、利便性及び安全性が向上する。
【0021】
バックライトユニット6は、TFTパネルユニット3の背後(Y方向の負側)に設けられる。バックライトユニット6は、TFTパネルユニット3と協動して、表示光を生成する。
【0022】
[反射鏡の構成]
つぎに、反射鏡4の構成について、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0023】
図2は、第1実施例の反射鏡4を示す断面図である。
図3は、反射鏡4の作用説明図である。
【0024】
図2に示すように、第1実施例の反射鏡4は、反射層41と、粘着層42と、粘着層42を介して反射層41が接合される基材43とを備える。反射層41は、TFTパネルユニット3及び凹面鏡5と向き合う。粘着層42及び基材43は、反射層41の背後に配置される。
【0025】
反射層41は、反射型偏光多層フィルムである。反射型偏光多層フィルムは、異なる屈折率のポリエステル系樹脂膜を数百層に積層したフィルムである。
【0026】
反射層41は、可視光Aの特定の偏光成分のみを反射するように、各膜の屈折率が調整されている。反射層41は、反射波長に対し波長選択性があり、赤外光Bを反射せずに通過させる。反射層41は、反射軸を有し、反射軸方向Cに平行な可視光Aの直線偏光成分を反射する。反射層41は、反射軸方向Cに垂直な可視光Aの直線偏光成分を反射せずに通過させる。
図3を参照して具体的に説明する。反射層41の反射軸方向Cが、入射平面D(入射光Eと反射光Fとがなす平面)と直交する方向と平行である場合、反射層41は、入射平面Dと平行な波成分である可視光AのP偏光G(図示せず)を透過する。また、反射層41は、入射平面Dと直交する波成分である可視光AのS偏光Hを反射する。
このような反射層41を備える反射鏡4によれば、外部から入射される太陽光などの外光のうち、赤外光Bを透過してTFTパネルユニット3への到達を阻止できる。また、反射層41は、外光に含まれる可視光Aのうち、S偏光Hのみを反射し、P偏光Gを透過させるので、TFTパネルユニット3の近傍に偏光膜付きのガラス板などを配置することなく、TFTパネルユニット3に向かう可視光を削減することができる。
【0027】
粘着層42は、アクリル系樹脂からなり、無色透明な透光性粘着層である。反射層41と粘着層42は一体の部材として供給され、その総厚は約60μmである。
【0028】
基材43は、反射層41を平面性、平坦性で良好に保持し、耐振動性、透明性を兼ね備えた部材であり、例えば、透明な無機ガラスが使用される。ヘッドアップディスプレイ1の反射鏡4として経済性及び剛性を考慮すると、厚みが、1.7~2.1mmの無機ガラスが適用される。
【0029】
[反射鏡の配置]
反射鏡4は、反射層41の反射軸方向CがTFTパネルユニット3から出射される表示光の偏光方向と略平行となる向きで配置される。このように反射鏡4を配置すると、TFTパネルユニット3に向かう可視光Aを削減しつつ、TFTパネルユニット3からの表示光の減衰を抑えて乗員の視点方向へ反射することができる。
【0030】
例えば、
図1Aに示す本実施例のヘッドアップディスプレイ1は、TFTパネルユニット3からの表示光を反射鏡4が横方向(鉛直方向よりも水平方向に近い方向)に反射させる、いわゆる横折タイプである。したがって、反射鏡4は、TFTパネルユニット3からの表示光に関する入射平面Dが、鉛直面よりも水平面に近くなり、かつ反射層41の反射軸方向Cが、入射平面Dと直交する方向と略平行となる向きで配置される。具体的には、反射層41の反射軸方向Cが縦方向(水平方向よりも鉛直方向に近い方向)となる向きで反射鏡4が配置される。
【0031】
TFTパネルユニット3から反射鏡4への表示光の入射角度は、30°~40°であることが望ましい。このようにすると、凹面鏡5とTFTパネルユニット3を近接した位置に配置できるので、ヘッドアップディスプレイ1を小型化できる。
【0032】
[反射鏡の他例]
つぎに、第2~第4実施例の反射鏡4B,4C,4Dについて、
図4~
図6を参照して説明する。ただし、第1実施例と共通の構成については、第1実施例と同じ符号を用いることにより、第1実施例の説明を援用する。
【0033】
図4は、第2実施例の反射鏡4Bを示す断面図である。
図5は、第3実施例の反射鏡4Cを示す断面図である。
図6は、第4実施例の反射鏡4Dを示す断面図である。
図7は、第5実施例の反射鏡4Eを示す断面図である。
図8は、第6実施例の反射鏡4Fを示す断面図である。なお、以下では、反射鏡4Fに関して「表側」とは、反射鏡4Fに対する光(例えばTFTパネルユニット3からの表示光)の入射側に対応する。
【0034】
前述した第1実施例の反射鏡4によれば、太陽光などの外光に含まれる赤外光Bや可視光AのP偏光GがTFTパネルユニット3に向かうことを防ぐので、外光に対する遮熱性が高められる。しかしながら、第1実施例の反射鏡4では、
図2に示すように、反射層41を透過した光(赤外光BやP偏光G)の一部が基材43の裏面で反射し、反射層41を再び透過してTFTパネルユニット3に向かう可能性がある。このような再透過光によるTFTパネルユニット3の温度上昇は、太陽光1,000W/m2にて、約10℃にも達する可能性がある。また、反射層41を透過した光が反射鏡4の保持部材を照射すると、保持部材の造形が表示画像に映り込む可能性がある。
【0035】
図4に示すように、第2実施例の反射鏡4Bは、基材43Bが遮光性を有する。遮光性を有する基材43Bは、無色透明でなく有色であり、例えば、黒色の樹脂板などで構成される。このような反射鏡4Bによれば、反射層41を透過した光が基材43Bで吸収されるので、反射鏡4Bによる遮熱効果を高めることができる。また、遮光性を有する基材43Bによれば、反射鏡4Bの保持部材の造形が表示画像に映り込むことも防止できる。
【0036】
図5に示すように、第3実施例の反射鏡4Cは、粘着層42Cが遮光性を有する。遮光性を有する粘着層42Cは、無色透明でなく有色であり、例えば、黒色の粘着剤などで構成される。このような反射鏡4Cによれば、第2実施例の反射鏡4Bと同様な効果が得られる。
【0037】
図6に示すように、第4実施例の反射鏡4Dは、基材43の裏面(反射層41とは逆側の表面)に遮光性を有する遮光層44を備える。遮光層44は、無色透明でなく有色のインクを印刷した印刷層、有色の粘着フィルムなどで構成される。このような反射鏡4Dによれば、第2実施例の反射鏡4Bと同様な効果が得られる。遮光層44を印刷層で構成する場合は、基材43と屈折率が近い黒色の油性インクやUV硬化インクで構成することが好ましい。また、遮光層44を粘着フィルムで構成する場合は、基材43と屈折率が近い粘着剤を介して貼り付けられる黒色の粘着フィルムで構成することが好ましい。このように構成することで、基材43と遮光層44との境界面での反射率が低下するので、反射層41を透過した光を遮光層44で確実に吸収できる。
【0038】
図7に示すように、第5実施例の反射鏡4Eは、第1実施例の反射鏡4に対して、基材43が基材43Eで置換された点が異なる。基材43Eは、第1実施例の反射鏡4の基材43に対して、断面形状が異なり、素材(材料)は同じである。具体的には、基材43Eは、粘着層42に接する第1表面431(すなわち表示光の入射側の表面)と、第1表面431の裏側の第2表面432とが非平行である。すなわち、基材43Eは、楔型の断面形状である。更に換言すると、基材43Eは、表示光の入射平面D(入射光Eと反射光Fとがなす平面)で切断した断面視(すなわち
図7に示すビュー)で、厚さが一定でない。
【0039】
図7に示す例では、第1表面431及び第2表面432はともに平面であり、なす角度がαである。なす角度αは、0よりも有意に大きく90度よりも有意に小さい角度であれば任意である。なす角度αは、後述する反射光R1の進行方向が所望の方向(TFTパネルユニット3に向かうことのない範囲内の所望の方向)となるように適合されてよい。
第5実施例の反射鏡4Eによれば、上述した第1実施例から第4実施例と同様、屈折率の異なる複数の樹脂膜を積層してなる反射層41を有することで、外部から入射される太陽光などの外光のうち、赤外光Bを透過してTFTパネルユニット3への赤外光Bの到達を阻止できる。また、反射層41は、外光に含まれる可視光Aのうち、S偏光Hのみを反射し、P偏光Gを透過させるので、TFTパネルユニット3の近傍に偏光膜付きのガラス板などを配置することなく、TFTパネルユニット3に向かう可視光を削減することができる。このようにして、第5実施例の反射鏡4Eによっても、上述した第1実施例から第4実施例と同様、部品点数を増やすことなく、外光に対する遮熱性が高めることができる。
【0040】
また、第5実施例の反射鏡4Eによれば、反射層41を透過した光(赤外光BやP偏光G)の一部が基材43の第2表面432で反射した場合でも、反射光R1は、
図7で模式的に示すように、S偏光Hと平行とならない。このような反射光R1は、S偏光Hと平行でないので、反射層41を再び透過した場合でも、上述したような再透過光としてTFTパネルユニット3に向かう可能性は、低い。従って、第5実施例の反射鏡4Eによれば、第2表面432で反射した反射光R1に起因した上述の不都合(例えばTFTパネルユニット3の温度上昇等)を低減できる。
【0041】
なお、第5実施例は、上述した第1実施例に対する上述した第2実施例から第4実施例の差分と組み合わせることができる。例えば、第2実施例の反射鏡4Bの基材43Bのように、基材43Eが遮光性を有してもよいし、第3実施例の反射鏡4Cのように、粘着層42が遮光性を有してもよいし、第4実施例の反射鏡4Dのように、基材43Eの第2表面432(裏面)に遮光層44を備えてもよい。
【0042】
また、第5実施例では、第2表面432は、平面状であるが、曲面状の部分を含んでもよい。また、第2表面432は、複数の平面の組み合わせにより実現されてもよい。この場合、複数の平面はすべて第1表面431に対して非平行であってもよいし、複数の平面のうちの1つだけが第1表面431に対して平行であってもよい。
【0043】
図8に示すように、第6実施例の反射鏡4Fは、第1実施例の反射鏡4に対して、反射層41が裏側に配置される点が主に異なる。すなわち、第1実施例の反射鏡4(第2実施例から第5実施例も同様)では、反射層41が基材43よりも表示光の入射側に配置されるのに対して、第6実施例の反射鏡4Fでは、基材43Fが反射層41よりも表示光の入射側に配置される。
【0044】
具体的には、第6実施例の反射鏡4Fは、表側から、表面層40Fと、基材43Fと、粘着層42Fと、反射層41とを含む。反射層41よりも表側の層は、透光性を有する。すなわち、表面層40F、基材43F、及び粘着層42Fは、透光性を有する。これにより、反射層41が裏側に配置される場合でも、上述した第1実施例から第5実施例の反射層41と同様の機能を実現できる。
【0045】
表面層40Fは、例えば、オーバーコートのような、コーティング(塗工)により形成されるコート層である。表面層40Fは、例えば、ポリイミド系や、アクリル系、エポキシ系等のような、各種透光性樹脂を膜状に塗布して形成されてよい。粘着層42Fは、無色透明な透光性粘着層であり、第1実施例の反射鏡4の粘着層42と同様であってよい。基材43Fは、例えば透明な無機ガラスにより形成されてもよい。この場合、基材43Fは、第1実施例の反射鏡4の基材43と同様の構成であってよい。
【0046】
第6実施例の反射鏡4Fによれば、上述した第1実施例から第5実施例と同様、屈折率の異なる複数の樹脂膜を積層してなる反射層41を有することで、外部から入射される太陽光などの外光のうち、赤外光Bを透過してTFTパネルユニット3への赤外光Bの到達を阻止できる。また、反射層41は、外光に含まれる可視光Aのうち、S偏光Hのみを反射し、P偏光Gを透過させるので、TFTパネルユニット3の近傍に偏光膜付きのガラス板などを配置することなく、TFTパネルユニット3に向かう可視光を削減することができる。このようにして、第6実施例の反射鏡4Fによっても、上述した第1実施例から第4実施例と同様、部品点数を増やすことなく、外光に対する遮熱性が高めることができる。
【0047】
また、第6実施例の反射鏡4Fによれば、反射層41が反射鏡4Fの最も表側に位置しないので、反射層41の損傷等の可能性(例えば組み付け時に物体が反射鏡4Fに当たった場合に生じうる損傷の可能性)を低減できる。すなわち、第6実施例の反射鏡4Fによれば、基材43Fや表面層40Fが、反射層41を保護する保護層として機能できる。
【0048】
なお、第6実施例では、基材43Fの表側に表面層40Fが設けられるので、基材43Fが表面層40Fにより保護されるが、これに限られない。すなわち、表面層40Fは省略されてもよい。
【0049】
[縦折タイプのヘッドアップディスプレイへの適用]
つぎに、前述した実施例の反射鏡4(反射鏡4B,4C,4Dを含む)を、いわゆる縦折タイプのヘッドアップディスプレイ1Gの反射鏡4Gに適用する場合について、
図3及び
図9を参照して説明する。
【0050】
図9は、縦折タイプのヘッドアップディスプレイ1Gを示す内部側面図である。
【0051】
図9に示す縦折タイプのヘッドアップディスプレイ1Gは、TFTパネルユニット3Gからの表示光を反射鏡4Gが縦方向(水平方向よりも鉛直方向に近い方向)に反射させる。したがって、反射鏡4Gは、TFTパネルユニット3Gからの表示光に関する入射平面Dが、水平面よりも鉛直面に近くなり、かつ反射層41の反射軸方向Cが、入射平面Dと直交する方向と略平行となる向きで配置される。具体的には、反射層41の反射軸方向Cが横方向(鉛直方向よりも水平方向に近い方向)となる向きで反射鏡4Gが配置される。このような反射鏡4Gの配置によれば、前述した横折タイプのヘッドアップディスプレイ1と同様の効果が得られる。
【0052】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0053】
例えば、上述した実施例では、凹面鏡5が設けられるが、凹面鏡5は省略されてもよい。
【0054】
以下、上述した実施例に関連して、以下の付記を開示する。
[付記1]
照明装置(6)と、
前記照明装置(6)に照らされて表示光を出射する表示器(3)と、
前記表示光を反射する反射鏡(4)とを備え、
前記反射鏡(4)は、屈折率の異なる複数の樹脂膜を積層してなる反射層(41)と、粘着層(42)と、前記反射層(41)が前記粘着層(42)を介して接合する基材(43)とを備える、ヘッドアップディスプレイ(1)。
【0055】
[付記2]
前記基材(43)及び前記粘着層(42)のうちの少なくともいずれか一方は、遮光性を有する、付記1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【0056】
[付記3]
前記基材(43)は、前記反射層(41)とは逆側の表面に、遮光性を有する遮光層(44)を備える、付記1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【0057】
[付記4]
前記遮光層(44)は、UV硬化されたインク又は黒色の油性インクにより形成される、付記3に記載のヘッドアップディスプレイ。
【0058】
[付記5]
前記反射鏡(4)は、前記反射層(41)の反射軸方向(C)が前記表示器(3)から出射される前記表示光の偏光方向と略平行となる向きで配置される、付記1から4のうちのいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【0059】
[付記6]
前記基材(43)は、前記反射層(41)よりも前記表示光の入射側に配置される、付記1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【0060】
[付記7]
前記反射鏡(4)は、前記反射層(41)の反射軸方向(C)が前記表示器(3)から出射される前記表示光の偏光方向と略平行となる向きで配置される、付記1から6のうちのいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【0061】
[付記8]
前記反射鏡(4)は、前記表示器(3)からの前記表示光に関する入射平面(D)が、鉛直面よりも水平面に近くなり、かつ前記反射層(41)の反射軸方向(C)が、前記入射平面(D)と直交する方向と略平行となる向きで配置される、付記7に記載のヘッドアップディスプレイ。
【0062】
この場合、前記表示器は、S偏光の表示光を出射し、前記反射鏡は、S偏光反射率がP偏光反射率よりも高くてよい。
【0063】
[付記9]
前記反射鏡(4)は、前記表示器(3)からの前記表示光に関する入射平面(D)が、水平面よりも鉛直面に近くなり、かつ前記反射層(41)の反射軸方向(C)が、前記入射平面(D)と直交する方向と略平行となる向きで配置される、付記7に記載のヘッドアップディスプレイ。
【0064】
この場合、前記表示器は、S偏光の表示光を出射し、前記反射鏡は、S偏光反射率がP偏光反射率よりも高くてよい。
【0065】
[付記10]
前記基材(43)は、前記粘着層(42)に接する第1表面(431)と、前記第1表面(431)の裏側の第2表面(432)とが非平行である、付記1~5及び7~9のうちのいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【符号の説明】
【0066】
1,1G ヘッドアップディスプレイ
2 ケース
3,3G TFTパネルユニット
4,4B,4C,4D,4E,4F,4G 反射鏡
5 凹面鏡
6 バックライトユニット
9 インストルメントパネル
21 放熱部位
41 反射層
42,42C,42F 粘着層43,43B,43E,43F 基材
44 遮光層
90 ネジ
A 可視光
B 赤外光
C 反射軸方向
D 入射平面
E 入射光
F 反射光
G P偏光
H S偏光