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特許7476897位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法及び配向ムラ欠陥検出装置
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  • 特許-位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法及び配向ムラ欠陥検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法及び配向ムラ欠陥検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/89 20060101AFI20240423BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20240423BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G01N21/89 H
G01N21/892 A
G02B5/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021532766
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2020025669
(87)【国際公開番号】W WO2021010157
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2019130811
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】増田 修
(72)【発明者】
【氏名】南條 崇
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-050393(JP,A)
【文献】特開2012-013848(JP,A)
【文献】特開2009-236825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G02B 5/30
G01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法であって、
下記ステップ(1)~(5)を有することを特徴とする位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法。
ステップ(1):クロスニコルに配置された第1偏光板及び第2偏光板の間に前記位相差フィルムを配置するときに、前記位相差フィルムの遅相軸が、前記第1偏光板又は第2偏光板のどちらかの吸収軸に対し、-10~10°(ただし、0°は除く)の範囲内になるように、前記第1偏光板及び第2偏光板か、又は前記位相差フィルムのいずれかを回転して配置するステップ。
ステップ(2):前記第1偏光板を介して前記位相差フィルムに検査光を照射するステップ。
ステップ(3):前記第2偏光板を介して前記位相差フィルムを撮影装置によって撮影し、輝度画像を得るステップ。
ステップ(4):撮影された前記輝度画像について、前記位相差フィルムの遅相軸に対して35~55°又は-55~-35°の範囲内の方向に、隣接する画素値間の差分を抽出処理しエッジ部分を強調した輝度画像を得るステップ。
ステップ(5):エッジ強調された前記輝度画像を、所定の閾値で二値化し、各画素を閾値以上の明画素と閾値よりも低い暗画素とを得て、当該明画素又は暗画素から配向ムラを検出するステップ。
【請求項2】
さらに、前記位相差フィルムの、隣接する画素値間の差分を抽出処理する方向に対して、70~120°の範囲内の斜め方向に、二値化された前記輝度画像に対して膨張処理を行い、当該斜め方向の成分を強調する画像処理を行うステップ(6)を有することを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法。
【請求項3】
さらに、前記膨張処理を行った後に、前記輝度画像に対して同方向に収縮処理を行うステップ(7)を有することを特徴とする請求項2に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法。
【請求項4】
さらに、前記収縮処理された前記輝度画像に対して、各画素領域の代表長さにより規定されるフィルター条件を満たすものを、当該方向の配向ムラ欠陥成分として抽出するステップ(8)を有することを特徴とする請求項3に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法。
【請求項5】
前記撮影装置のレンズ先端位置と前記位相差フィルムとの距離、及び当該位相差フィルム上の検査領域の長手方向の大きさから算出される前記レンズの画角θが、当該位相差フィルムの長手方向に対して、23°以内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法に用いる位相差フィルムの配向ムラ検出装置であって、
前記位相差フィルムを挟むようにクロスニコルに配置される第1偏光板及び第2偏光板と、
前記第1偏光板を介して前記位相差フィルムに検査光を照射する光源と、
前記第2偏光板を介して前記位相差フィルムを撮影して輝度画像を得る撮影装置と、
前記輝度画像から欠陥を検出する欠陥検出部とを備え、
前記欠陥検出部は、
クロスニコルに配置された第1偏光板及び第2偏光板の間に前記位相差フィルムを配置するときに、前記位相差フィルムの遅相軸が、前記第1偏光板又は第2偏光板のどちらかの吸収軸に対し、-10~10°(ただし、0°は除く)の範囲内になるように、前記第1偏光板及び第2偏光板か、又は前記位相差フィルムのいずれかを回転して配置し撮影された前記輝度画像について、前記位相差フィルムの遅相軸に対して35~55°又は-55~-35°の範囲内の方向に、隣接する画素値間の差分を抽出処理しエッジ部分を強調するエッジ検出回路と、
エッジ検出された前記輝度画像を、所定の閾値で二値化し、各画素を閾値以上の明画素と閾値よりも低い暗画素とにする二値化回路と、
を有することを特徴とする位相差フィルムの配向ムラ検出装置。
【請求項7】
前記欠陥検出部が、
前記位相差フィルムの、隣接する画素値間の差分を抽出処理する方向に対して、70~120°の範囲内の斜め方向に、前記二値化された前記輝度画像に対して膨張処理を行い、当該斜め方向の成分を強調する画像処理回路を有することを特徴とする請求項6に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置。
【請求項8】
前記欠陥検出部が、
前記膨張処理を行った後に、前記輝度画像に対して同方向に収縮処理を行う画像処理回路を有することを特徴とする請求項7に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置。
【請求項9】
前記欠陥検出部が、
前記収縮処理された輝度画像に対して、各画素領域の代表長さにより規定されるフィルター条件を満たすものを、当該方向の配向ムラ欠陥成分として抽出するフィルタリング回路を有すること特徴とする請求項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置。
【請求項10】
前記撮影装置のレンズ先端位置と前記位相差フィルムとの距離、及び当該位相差フィルム上の検査領域の長手方向の大きさから算出される前記レンズの画角θが、当該位相差フィルムの長手方向に対して、23°以内とすることを特徴とする請求項6から請求項9までのいずれか一項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法及び配向ムラ欠陥検出装置に関する。より詳しくは、位相差フィルムの配向ムラ欠陥の検出及び評価を、光学系を利用した定量評価によって行うことにより、作業者の負担を軽減し、評価結果の再現性を高めることができる位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法及びそれに用いる配向ムラ欠陥検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省電力、軽量、薄型といった特徴から液晶表示装置がテレビやパソコンのモニター等に広く用いられている。液晶表示装置は上記の利点と合わせて液晶セルや偏光板の屈折率異方性に起因する視野角依存性の問題を有している。この視野角依存性の問題を改善する代表的な方法として位相差フィルムを用いる方法がある。
【0003】
従来の位相差フィルムの製造において、厳重に管理されている製造工程であっても、フィルムの面品質を損なわせる欠陥の発生を完全に防ぐことは困難である。
【0004】
さらに、近年では液晶表示装置の薄型化に伴い、そこに使用される位相差フィルムに対しても薄膜化が要求されており、それに伴って、製造工程起因で発現する配向ムラ欠陥が顕著になった。
【0005】
このような欠陥を有するフィルムの市場への流出を防ぐためには、フィルムの欠陥検査が重要であり、配向ムラ欠陥の品質評価は、従来目視によってランク判定が行われてきた。しかしながら、このような目視による定性評価は、作業者の習熟度に評価結果が大きく依存してしまい、再現性が低く作業者が変わると結果が大きく変わることがある。また、信頼して評価できる人員が習熟者に限定されてしまうことによって、一部の作業者に工数が偏り、負担を大きくするなどの問題が生じていた。
【0006】
光学フィルムの欠陥検査としては、特許文献1及び2に開示されている欠陥検査方法及び検査装置が知られている。
【0007】
特許文献1では、透明又は半透明のフィルムシートを対象とし、搬送されるフィルムシートの一方の面に光源と、該光源とフィルムの間に第1の偏光板を配置し、他方の面にリニアアレイカメラと、該リニアアレイカメラとフィルムの間に第2の偏光板を配置して、第1の偏光板と第2の偏光板との偏光方向のずれ角度を±20°以内として、リニアアレイカメラから出力されるビデオ信号の中から異物起因の欠陥情報を検出する方法が提案されている。
【0008】
特許文献2では、3Dテレビに使用されるパターン化位相差フィルムを対象とし、フィルムを挟むようにクロスニコルに第1及び第2の偏光板を配置し、第1の偏光板を介してフィルムに検査光を照射する光源と、第2の偏光板を介してフィルムの透過光を撮影して輝度画像を得る撮影装置と、当該輝度画像から欠陥を検出する欠陥検出部とを備える。
【0009】
第1及び第2の偏光板は、いずれか一方の偏光透過軸がパターン化位相差フィルムが有する複数の位相差領域の内、いずれか一方の光学軸とほぼ平行となる状態とし、欠陥のないフィルムを撮影したときに輝度画像の「各輝度が消光状態近傍で同レベルとなるように」、一方の偏光透過軸を調整する、主に異物等による欠陥検査装置が提案されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1で提案された方法では、2枚の偏光板がクロスニコル状態から大きく外れすぎており、この状態では偏光板を透過する光源からの光量が大きく、フィルムの欠陥起因で生じる偏光状態の変化を捉えにくくなってしまい、取得するべき配向ムラの情報を取得できないという問題がある。
【0011】
また、特許文献2で提案された装置では、撮影された輝度画像が消光状態近傍で同レベルになるため、配向ムラを検出するための微小な偏光状態の変化を捉えられないという問題があった。さらに、撮影された輝度画像からパターン化位相差フィルムの異なる位相差領域の境界線を、画像処理により消去することが優先されているため、本来抽出したい欠陥部分までも消去してしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平11-30591号公報
【文献】特開2013-50393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、位相差フィルムの配向ムラ欠陥の検出及び評価を、光学系を利用した定量評価によって行うことにより、作業者の負担を軽減し、評価結果の再現性を高めることができる位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法及びそれに用いる配向ムラ欠陥検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、2枚の偏光板、光照射装置、撮影装置、及び欠陥検出部で構成される装置を用いて、特定のステップを有する配向ムラ欠陥検出方法を採用することで、位相差フィルムの配向ムラ欠陥の検出及び評価を光学系を利用した定量評価によって行うことにより、作業者の負担を軽減し、評価結果の再現性を高めることができる位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法が得られることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0016】
1.位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法であって、
下記ステップ(1)~(5)を有することを特徴とする位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法。
【0017】
ステップ(1):クロスニコルに配置された第1偏光板及び第2偏光板の間に前記位相差フィルムを配置するときに、前記位相差フィルムの遅相軸が、前記第1偏光板又は第2偏光板のどちらかの吸収軸に対し、-10~10°(ただし、0°は除く)の範囲内になるように、前記第1偏光板及び第2偏光板か、又は前記位相差フィルムのいずれかを回転して配置するステップ。
【0018】
ステップ(2):前記第1偏光板を介して前記位相差フィルムに検査光を照射するステップ。
【0019】
ステップ(3):前記第2偏光板を介して前記位相差フィルムを撮影装置によって撮影し、輝度画像を得るステップ。
【0020】
ステップ(4):撮影された前記輝度画像について、前記位相差フィルムの遅相軸に対して35~55°又は-55~-35°の範囲内の方向に、隣接する画素値間の差分を抽出処理しエッジ部分を強調した輝度画像を得るステップ。
【0021】
ステップ(5):エッジ強調された前記輝度画像を、所定の閾値で二値化し、各画素を閾値以上の明画素と閾値よりも低い暗画素とを得て、当該明画素又は暗画素から配向ムラを検出するステップ。
【0022】
2.さらに、前記位相差フィルムの、隣接する画素値間の差分を抽出処理する方向に対して、70~120°の範囲内の斜め方向に、二値化された前記輝度画像に対して膨張処理を行い、当該斜め方向の成分を強調する画像処理を行うステップ(6)を有することを特徴とする第1項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法。
【0023】
3.さらに、前記膨張処理を行った後に、前記輝度画像に対して同方向に収縮処理を行うステップ(7)を有することを特徴とする第2項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法。
【0024】
4.さらに、前記収縮処理された前記輝度画像に対して、各画素領域の代表長さにより規定されるフィルター条件を満たすものを、当該方向の配向ムラ欠陥成分として抽出するステップ(8)を有することを特徴とする第3項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法。
【0025】
5.前記撮影装置のレンズ先端位置と前記位相差フィルムとの距離、及び当該位相差フィルム上の検査領域の長手方向の大きさから算出される前記レンズの画角θが、当該位相差フィルムの長手方向に対して、23°以内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法。
【0026】
6.第1項から第5項のいずれか一項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法に用いる位相差フィルムの配向ムラ検出装置であって、
前記位相差フィルムを挟むようにクロスニコルに配置される第1偏光板及び第2偏光板と、
前記第1偏光板を介して前記位相差フィルムに検査光を照射する光源と、
前記第2偏光板を介して前記位相差フィルムを撮影して輝度画像を得る撮影装置と、
前記輝度画像から欠陥を検出する欠陥検出部とを備え、
前記欠陥検出部は、
クロスニコルに配置された第1偏光板及び第2偏光板の間に前記位相差フィルムを配置するときに、前記位相差フィルムの遅相軸が、前記第1偏光板又は第2偏光板のどちらかの吸収軸に対し、-10~10°(ただし、0°は除く)の範囲内になるように、前記第1偏光板及び第2偏光板か、又は前記位相差フィルムのいずれかを回転して配置し撮影された前記輝度画像について、前記位相差フィルムの遅相軸に対して35~55°又は-55~-35°の範囲内の方向に、隣接する画素値間の差分を抽出処理しエッジ部分を強調するエッジ検出回路と、
エッジ検出された前記輝度画像を、所定の閾値で二値化し、各画素を閾値以上の明画素と閾値よりも低い暗画素とにする二値化回路と、
を有することを特徴とする位相差フィルムの配向ムラ検出装置。
【0027】
7.前記欠陥検出部が、
前記位相差フィルムの、隣接する画素値間の差分を抽出処理する方向に対して、70~120°の範囲内の斜め方向に、前記二値化された前記輝度画像に対して膨張処理を行い、当該斜め方向の成分を強調する画像処理回路を有することを特徴とする第6項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置。
【0028】
8.前記欠陥検出部が、
前記膨張処理を行った後に、前記輝度画像に対して同方向に収縮処理を行う画像処理回路を有することを特徴とする第7項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置。
【0029】
9.前記欠陥検出部が、
前記収縮処理された輝度画像に対して、各画素領域の代表長さにより規定されるフィルター条件を満たすものを、当該方向の配向ムラ欠陥成分として抽出するフィルタリング回路を有すること特徴とする第項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置。
【0030】
10.前記撮影装置のレンズ先端位置と前記位相差フィルムとの距離、及び当該位相差フィルム上の検査領域の長手方向の大きさから算出される前記レンズの画角θを、当該位相差フィルムの長手方向に対して、23°以内とすることを特徴とする第6項から第9項までのいずれか一項に記載の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置。
【発明の効果】
【0031】
本発明の上記手段により、位相差フィルムの配向ムラ欠陥の検出及び評価を、光学系を利用した定量評価によって行うことにより、作業者の負担を軽減し、評価結果の再現性を高めることができる位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法及びそれに用いる配向ムラ欠陥検出装置を提供することができる。
【0032】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0033】
2枚の偏光板をクロスニコルに配置し位相差フィルムの遅相軸を偏光板の吸収軸に対して-10~10°(ただし、0°は除く)の範囲内になるように、前記偏光板か、又は前記位相差フィルムのいずれかを回転して配置することにより、遅相軸の変化に伴う偏光状態の変化を強調し、欠陥部分(配向ムラ欠陥)の検出精度を向上できるものと推察される。
【0034】
微分処理は、微分フィルターで画像のエッジ抽出(画像中の明るさが急に変化する部分を抽出することをエッジ抽出という。)を行う処理であるが、画像の場合は連続値ではないため、画素値間の差をとる(本発明でいう「差分」。)ことで微分の近似として扱う。
【0035】
上記欠陥部分のエッジを強調するため、当該微分処理の方向を前記位相差フィルムの遅相軸に対して35~55°又は-55~-35°の範囲内の方向に斜めに指定する。通常、位相差フィルムを製造する際には、延伸等によって遅相軸をある一方向に配向させるが、延伸時又は乾燥時にかかる幅手張力の不均一による微小な配向ムラが上記一方向以外にも蓄積するため、結果的に配向ムラの斜め成分を微分処理によって抽出しやすくすることで、配向ムラの検出精度を向上できるものと推察される。
【0036】
さらに、得られた輝度画像を二値化することは、欠陥部分とそれ以外の正常な領域を大まかに区別するためであり、膨張処理及び収縮処理は前記二値化された画像において、さらに欠陥部分を強調することによって、欠陥の検出精度をより向上できるものと推察される。
【0037】
前記収縮処理された前記輝度画像に対して、各画素領域の代表長さにより規定されるフィルター条件を満たすものを、当該方向の配向ムラ欠陥成分として抽出することにより、配向ムラ欠陥のみを検出することができ、以上の画像処理によって精度良く定量的な配向ムラ欠陥評価方法を提供することができるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】従来の配向ムラ欠陥の目視評価方法の概略を示す模式図
図2】検査に用いるカメラに装着されるレンズの画角を説明する模式図
図3A】所定の閾値で二値化した画像の具体例(元輝度画像)
図3B】所定の閾値で二値化した画像の具体例(二値化画像)
図4】画像処理のフローチャートと、処理画像の具体例
図5】本発明の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置の一例を示す模式図
図6】エッジ検出回路、二値化回路、画像処理回路及びフィルタリング回路を有する欠陥検出部を説明する概略図
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法は、前記ステップ(1)~(5)を有することを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0040】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、さらに、前記位相差フィルムの微分(差分)処理の方向に対して、70~120°の範囲内の斜め方向に、二値化された前記輝度画像に対して膨張処理を行い、当該斜め方向の成分を強調する画像処理を行うステップ(6)を有することが、欠陥部分を強調することで、精度良く定量的な配向ムラ欠陥評価を可能にする観点から、好ましい。
【0041】
さらに、前記膨張処理を行った後に、前記輝度画像に対して同方向に収縮処理を行うステップ(7)を有することが、欠陥部分を強調しノイズを低減することで、精度良く定量的な配向ムラ欠陥評価を可能にする観点から、好ましい。
【0042】
さらに、前記収縮処理された前記輝度画像に対して、各画素領域の代表長さにより規定されるフィルター条件を満たすものを、当該方向の配向ムラ欠陥成分として抽出するステップ(8)を有することが、配向ムラを特定し、精度良く定量的な配向ムラ欠陥評価を可能にする観点から、好ましい。
【0043】
前記撮影装置のレンズ先端位置と前記位相差フィルムとの距離、及び当該位相差フィルム上の検査領域の長手方向の大きさから算出される前記レンズの画角θは、当該位相差フィルムの長手方向に対して、23°以内であることが、好ましい。
これは、前記画角θを上記範囲に収める、すなわち、位相差フィルムとカメラの距離を上記画角θになるように保つことは、検査光の入射角依存性を低減し、検査領域の中央部と隅部での画像の濃淡差を均一にするためである。
【0044】
本発明の位相差フィルムの配向ムラ検出装置は、前記位相差フィルムを挟むようにクロスニコルに配置される第1偏光板及び第2偏光板と、前記第1偏光板を介して前記位相差フィルムに検査光を照射する光源と、前記第2偏光板を介して前記位相差フィルムを撮影して輝度画像を得る撮影装置と、前記輝度画像から欠陥を検出する欠陥検出部とを備え、前記欠陥検出部は、クロスニコルに配置される前記第1偏光板又は第2偏光板のどちらかの吸収軸に対し、前記位相差フィルムの遅相軸を-10~10°(ただし、0°は除く)の範囲内になるように、前記第1偏光板及び第2偏光板か、又は前記位相差フィルムのいずれかを回転して配置し撮影された前記輝度画像を、前記位相差フィルムの遅相軸に対して35~55°又は-55~-35°の範囲内の方向に微分(差分)処理しエッジ部分を強調するエッジ検出回路と、エッジ検出された前記輝度画像を、所定の閾値で二値化し、各画素を閾値以上の明画素と閾値よりも低い暗画素とにする二値化回路と、を有することを特徴とする。
【0045】
前記欠陥検出部が、前記位相差フィルムの微分(差分)処理の方向に対して、70~120°の範囲内の斜め方向に、前記二値化された前記輝度画像に対して膨張処理を行い、当該斜め方向の成分を強調する画像処理回路を有することが、精度良く定量的な配向ムラ欠陥評価を可能にする観点から、好ましい。
【0046】
また、前記欠陥検出部が、前記膨張処理を行った後に、前記輝度画像に対して同方向に収縮処理を行う画像処理回路を有することが、精度良く定量的な配向ムラ欠陥評価を可能にする観点から、好ましい。
【0047】
さらに、前記欠陥検出部が、前記収縮処理された輝度画像に対して、各画素領域の代表長さにより規定されるフィルター条件を満たすものを、当該方向の配向ムラ欠陥成分として抽出するフィルタリング回路を有することが、配向ムラを特定し、精度良く定量的な配向ムラ欠陥評価を可能にする観点から、好ましい。
【0048】
前記撮影装置のレンズ先端位置と前記位相差フィルムとの距離、及び当該位相差フィルム上の検査領域の長手方向の大きさから算出される前記レンズの画角θは、当該位相差フィルムの長手方向に対して、23°以内とすることが、作業効率良く定量的な配向ムラ欠陥評価を可能にする観点から、好ましい。
【0049】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0050】
≪本発明の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法の概要≫
本発明の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法は、下記ステップ(1)~(5)を有することを特徴とする。
【0051】
ステップ(1):クロスニコルに配置された第1偏光板及び第2偏光板の間に前記位相差フィルムを配置するときに、前記位相差フィルムの遅相軸が、前記第1偏光板又は第2偏光板のどちらかの吸収軸に対し、-10~10°(ただし、0°は除く)の範囲内になるように、前記第1偏光板及び第2偏光板か、又は前記位相差フィルムのいずれかを回転して配置するステップ。
【0052】
ステップ(2):前記第1偏光板を介して前記位相差フィルムに検査光を照射するステップ。
【0053】
ステップ(3):前記第2偏光板を介して前記位相差フィルムを撮影装置によって撮影し、輝度画像を得るステップ。
【0054】
ステップ(4):撮影された前記輝度画像を前記位相差フィルムの遅相軸に対して35~55°又は-55~-35°の範囲内の方向に微分(差分)処理しエッジ部分を強調した輝度画像を得るステップ。
【0055】
ステップ(5):エッジ強調された前記輝度画像を、所定の閾値で二値化し、各画素を閾値以上の明画素と閾値よりも低い暗画素とを得て、当該明画素又は暗画素から配向ムラを検出するステップ。
【0056】
ここで、「位相差フィルム」とは、液晶表示装置の視野角依存性の問題を改善する光学フィルムをいい、例えば、VA(Virtical Alignment)型液晶表示装置に用いる複屈折性を有する光学フィルムである。当該光学フィルムは、光学特性に基づく特定の機能を有する、透明な樹脂製のフィルムである。光学フィルムは、延伸等により形成され、正常に形成されていれば面内で均一な光学特性(複屈折性又は位相差性など)を有するが、実際には多少の不均一性が生じる。
【0057】
前記光学フィルムの位相差の値は、一般に、下記の式で定義することができる。
【0058】
即ち、光学フィルムの面内方向の位相差Ro及び厚さ方向の位相差Rtは、下記の式(1)及び(2)で表される。
【0059】
Ro=(nx-ny)×d ・・・(1)
Rt={(nx+ny)/2-nz}×d ・・・(2)
なお、式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。
【0060】
また、「遅相軸」とは、複屈折を起こすフィルム内を光が伝播するとき、位相が遅れ光の進行速度が最も遅くなる軸をいう。すなわち、面内の屈折率が最大となる方向をいう。「進相軸」とは、光の進行速度が最も速くなる軸をいい、面内の屈折率が最小となる方向をいう。
【0061】
位相差フィルムの面内遅相軸や進相軸は、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)により確認することができる。
【0062】
位相差フィルムのRo及びRtの測定は、以下の方法で行うことができる。
【0063】
1)位相差フィルムを23℃、55%RHの環境下で24時間調湿する。この位相差フィルムの平均屈折率をアッベ屈折計で測定し、厚さdを市販のマイクロメーターを用いて測定する。
【0064】
2)調湿後の位相差フィルムの、測定波長550nmにおけるリターデーションRo及びRtを、それぞれ自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller
Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定する。
【0065】
本発明に係る位相差フィルムは、例えばVAモード用として用いられる場合、測定波長550nm、23℃、55%RHの環境下で測定される面内方向の位相差Roは、20~120nmの範囲内であることが好ましく、30~100nmの範囲内であることがより好ましい。光学フィルムの厚さ方向の位相差Rtは、70~350nmの範囲内であることが好ましく、100~320nmの範囲内であることがより好ましい。
【0066】
なお、位相差は光学フィルムに照射する光の波長、測定を行う環境条件(温度及び湿度)などによって変動する値であるため、光学特性評価の目的や評価対象である光学フィルムの種類などに応じて、位相差が任意の値となるようにこれらの条件を設定することが望ましい。
【0067】
ここで「配向角」は、位相差フィルムを形成する分子が配向した配向方向が、所定の基準方向に対してなす角度を指し、通常は、位相差フィルムの面内遅相軸が所定の基準方向に対してなす角度に一致する。所定の基準方向とは、通常位相差フィルムの幅手方向であり延伸される方向をいう。本発明に係る「配向ムラ欠陥」とは、この配向角がフィルム面内のそれぞれ採取した部位(例えば、幅手方向に沿って複数採取した場合)において遅相軸の方向が基準方向からずれを伴うムラがある欠陥をいう。
【0068】
「偏光板」は、偏光素子の一種であり、通常偏光子と保護フィルムによって構成されている。偏光子は自然光(ランダム偏光)の中から取り出された特定の振動方向を持つ直線偏光に対し、その透過軸方位を回転させることで、入射した直線偏光の振動方向を変化させるために用いられる。「偏光子」は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
【0069】
「吸収軸」は、偏光子が光の振動を吸収する軸の方向をいい、通常偏光子の延伸方向に一致する角度を指す。
【0070】
「クロスニコルに配置された第1偏光板及び第2偏光板」とは、上記偏光子の「吸収軸」が第1偏光板及び第2偏光板の間で、90°方向に直交していることをいう。
【0071】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0072】
〔1〕位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法の構成
本発明の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法は、前記ステップ(1)~(5)を有し、より好ましくは前記(5)のステップに続いてステップ(6)、ステップ(7)及びステップ(8)を有することが好ましい。
【0073】
先ず従来の配向ムラ欠陥の目視評価方法について概略を説明する。
【0074】
図1は、従来の配向ムラ欠陥の目視評価方法10の概略を示す模式図である。
【0075】
位相差フィルム1の配向ムラ欠陥の評価は、下部にあるフラットLED照明2から発光される照射光Lを、第1偏光板3、位相差フィルム1及び第2偏光板4の順に透過させ、当該位相差フィルム1の配向ムラ欠陥を目視5で定性的に観察する方法である。この際、第1偏光板3及び第2偏光板4の吸収軸はクロスニコルになるように配置されていることから、照射光Lはそのままでは透過せず暗部となるが、評価者が位相差フィルム1を前記偏光板の吸収軸方向から少し回転させる(図中、矢印の傾斜方向6に傾ける。)ことによって、位相差フィルムの遅相軸の方向にしたがって照射光Lが偏光して透過光となり、目視5において配向ムラ欠陥があれば暗い領域として観察される。
【0076】
したがって、評価者の位相差フィルムの扱い方の習熟度や、配向ムラ欠陥に対する評価者の経験に基づくランク分けが、評価結果を左右するために、評価が属人的であり、かつ定性的な評価方法である。
【0077】
本発明の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法は、光学的な評価装置を用いて一定のステップによって前記欠陥を評価する方法であることから、評価が属人的ではなく、かつ定量的な評価を提供することができる。
【0078】
以下、本発明の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法について、各ステップの詳細を説明する。
【0079】
ステップ(1):クロスニコルに配置された第1偏光板及び第2偏光板の間に前記位相差フィルムを配置するときに、前記位相差フィルムの遅相軸が、前記第1偏光板又は第2偏光板のどちらかの吸収軸に対し、-10~10°(ただし、0°は除く)の範囲内になるように、前記第1偏光板及び第2偏光板か、又は前記位相差フィルムのいずれかを回転させて配置するステップ。
【0080】
クロスニコル状態の2枚の偏光板(第1偏光板及び第2偏光板)の間にフィルムを置いたとき、フィルムの遅相軸の向きが偏光板の吸収軸と同じ向きになるように置いても光は透過せず、何も観察できない。偏光板の吸収軸に対してフィルムをやや回転させると、フィルムを通過した光の偏光状態が位相差フィルムの遅相軸によって変化する(偏光の向きが若干変わる)ため、2枚目の偏光板を透過して光が届くようになる。
【0081】
今回の検査対象である配向ムラ欠陥は輝度変化が微小なため、偏光板又は位相差フィルムを回転させすぎると撮影装置であるカメラに届く光が強すぎて観察できない。検討の結果、位相差フィルムの遅相軸が、前記第1偏光板又は第2偏光板のどちらかの吸収軸に対し、-10~10°の範囲内になるように、前記第1偏光板及び第2偏光板か、又は前記位相差フィルムのいずれかを回転させたときが最も位相差ムラがはっきりと観察できたため、この範囲に規定するものである。
【0082】
実際の操作では、後述する図5の配向ムラ欠陥検出装置において、前記位相差フィルムは回転させずに、前記第1偏光板及び第2偏光板を回転させて、前記偏光板の吸収軸を前記位相差フィルムの遅相軸に対して傾けることが好ましい。
【0083】
ステップ(2):前記第1偏光板を介して前記位相差フィルムに検査光を照射するステップ。
【0084】
検査光を照射する照明装置としては、第1偏光板、位相差フィルム及び第2偏光板の順に検査光を透過させ、当該検査光を撮影するのに十分な面積が必要で、輝度はできる限り均一であることが好ましい。
【0085】
照明装置の光源は、特に限定されるものではないが、重水素ランプやハロゲンランプ、LED(Light Emitting Diode)ランプを光源としたファイバー型の光源、又は蛍光灯やLED、OLED(Organic Light Emitting Diode)を用いた面光源を用いることができる。好ましくは面光源(フラット面光源)であり、フラットLED照明を用いることが好ましい。
【0086】
検査光の光量は、検査機制御ソフト LabVIEW((National Instruments社製)上で管理しており、当該LabVIEW上で設定した輝度計算領域(例えば、80mm×60mm~400mm×300mm程度の矩形領域)の面内平均輝度を測定し、輝度値が128±10の範囲に収まるように光源の光量を調整することが、十分な評価用輝度画像を得る上好ましい。
また、前記輝度計算領域は、検査領域に対して入射角依存の影響で、検査領域の端部にいくほど暗くなってしまう現象が発生する。端部の暗い部分まで含んで前記面内平均輝度を128±10になるよう調整しようとすると、中央部が過度に明るくなってしまい、肝心のムラを検出できなくなってしまうため、前記輝度計算領域は前記検査領域よりも狭く設定することが好ましい。例えば、検査領域を長手400mm×幅手300mmとした場合、輝度計算領域は、長手90mm×幅手80mmに設定することが好ましい。
【0087】
ステップ(3):前記第2偏光板を介して前記位相差フィルムを撮影装置によって撮影し、輝度画像を得るステップ。
【0088】
撮影装置は、特に限定されるものではないが、エリア型若しくはラインセンサ型のCCDカメラを用いることができる。位相差フィルムの検査領域範囲を数回以内の撮影でカバーできる場合は、エリア型、それよりも広い範囲を撮影する必要がある場合はラインセンサ型を使用すると、撮影時間及び精度の面で好ましい。
【0089】
撮影装置であるカメラは、例えば、BASLER社製型式acA2500-14gm、及びレンズはAPACECOM社製型式H6X8-1.0-IIなどを用いることができる。
【0090】
検査領域は、カメラに装着されるレンズの画角、偏光板の大きさ及び位相差フィルムの大きさ、及び位相差フィルムとカメラに装着されるレンズとの距離などで決まってくる。撮影装置はサンプルを幅手方向に移動できる構成とすれば、複数回にわたり検査を実施すればどんな幅のサンプルでも測定可能となる。
【0091】
例えば、位相差フィルムとして長手450mmで幅手2500mmの試料に対して、検査領域を長手400mmで幅手300mmとした場合、複数回の撮影によって検査を実施すればよい。なお、前記長手方向の大きさは装置の検査領域によって固定される。前記幅手の大きさは位相差フィルムとして一般的な最大幅である。
【0092】
また、前記カメラに装着されるレンズの画角θは、詳細には前記撮影装置のレンズ先端位置と前記位相差フィルムとの距離、及び当該位相差フィルム上の検査領域の長手方向の大きさから算出されるが、画角θは当該位相差フィルムの長手方向に対して、23°以内であることが、作業効率良く定量的な配向ムラ欠陥評価を可能にする観点から、好ましい。
【0093】
図2は、検査に用いるカメラに装着されるレンズの画角θを説明する模式図である。
レンズ56の先端位置と位相差フィルム51の距離WD(ワーキングディスタンスの略、レンズの先端から被写体のピントが合った位置までの距離をいう。)を、例えば、本発明に係る配向ムラ欠陥検査装置50として、仮にWDを1150mmとした場合、カメラの撮影領域は位相差フィルム51の搬送方向51cに対して、位相差フィルムの長手長51aが450mm、幅手長51bが375mmであった場合は、レンズの画角θは22.14°になる。また、検査領域が長手長400mm、幅手長300mmの場合は、θは19.73°になる。いずれも計算によって求めることができる。
【0094】
ステップ(4):撮影された前記輝度画像を前記位相差フィルムの遅相軸に対して35~55°又は-55~-35°の範囲内の方向に微分(差分)処理しエッジ部分を強調した輝度画像を得るステップ。
【0095】
一般的な微分処理の目的は、前記撮影された輝度画像のエッジ部分を強調することである。微分処理は、微分フィルターで画像のエッジ抽出(画像中の明るさが急に変化する部分を抽出することをエッジ抽出という。)を行う処理であるが、画像の場合は連続値ではないため、画素値間の差をとる(本発明でいう「差分」。)ことで微分の近似として扱う。微分処理は検討段階でカーネル(行列ともいう。)と呼ばれるマトリックスを、35~55°の範囲内の方向に微分処理するときのカーネル、及び-55~-35°範囲内の方向に微分処理するときのカーネルを求め、使用することが好ましい。
【0096】
前記エッジとは画像内で明暗の領域として分かれている部分を指す。エッジを強調する場合、明暗の境界が伸びる方向に対して直交する方向に処理するのが理想である。配向ムラ欠陥は長手方向(もしくは幅手方向)に対して約45°の向きに沿って発現するが、この角度にはある程度ばらつきがあり、それに対応するため、前記微分処理の向きを位相差フィルムの遅相軸に対して35~55°の範囲に幅を持たせで行うことが好ましい。
【0097】
用いる微分処理用ソフトは限定されるものではないが、解析ソフト NI vision(National Instruments社製)を用いることが好ましい。
【0098】
ステップ(5):エッジ強調された前記輝度画像を、所定の二値化ソフト及び閾値で二値化し、各画素を閾値以上の明画素と閾値よりも低い暗画素とを得て、当該明画素又は暗画素から配向ムラを検出するステップ。
【0099】
撮影した画像において、配向ムラ欠陥は暗い領域として観察される。よって、二値化の際は画像内の暗く映る要素群を残したいので、閾値を設定しその閾値よりも輝度が低い要素のみ残すことを実施する。
【0100】
このとき、設定する閾値は目視で確認できるムラ部分がはっきり残るように確認しながら決定する。すなわち、閾値は経験的に値を決めればよい。
【0101】
二値化は具体的には、以下の方法によって行うことが好ましい。
【0102】
[a]撮影した輝度画像を、解析ソフト NI vision(National Instruments社製)を用いてパソコンに読み込む。当該輝度画像はピント、コントラスト、及び明るさの調整で変化するため、作為的にしないことが好ましい。
【0103】
[b]黒白の定義設定を行う。
【0104】
解析ソフト NI visionにて、Black Backgroundにレ点を入れると輝度値0を黒、輝度値255を白で表す。Black Backgroundにレ点を入れないと、輝度値0を白、輝度値255を黒で表す。
【0105】
[c]画像のノイズ除去
シェーディング処理を行う。シェーディング処理は画像内の輝度を平均化することで、ノイズを除去するものである。
【0106】
[d]バンドパスフィルターを適用する。
【0107】
例えば、バンドパスフィルター数値は20~100が推奨である。この設定値は初期の輝度画像に依存するので適宜最適に設定すること好ましい。
【0108】
[e]輝度画像の二値化を行う。
【0109】
設定で8bit化し、閾値を設定する。閾値は解析ソフト NI vision(National Instruments社製)にしたがって調整することが好ましい。
【0110】
この閾値は画像のコントラストで変わるので、固定するのではなく毎回評価者が設定することが好ましい。
【0111】
閾値が決まったら白黒画像にする。所定の閾値で二値化し、各画素を閾値以上の暗画素と閾値よりも低い明画素とを得て、当該明画素又は暗画素から配向ムラを検出する。
【0112】
図3は、所定の閾値で二値化した画像の具体例である。
【0113】
図3Aが撮影された元の輝度画像であり、その中で暗く見える暗画素部分が配向ムラ欠陥の候補である。この配向ムラ欠陥の候補が明確に残るように閾値を決定して暗画素として二値化したものが図3Bである。
【0114】
本発明の配向ムラ欠陥検出方法は、さらに以下のステップ(6)、ステップ(7)及びステップ(8)を有することが好ましい。
【0115】
ステップ(6):前記位相差フィルムの微分(差分)処理の方向に対して、70~120°の範囲内の斜め方向に、二値化された前記輝度画像に対して膨張処理を行い、当該斜め方向の成分を強調する画像処理を行うステップ。
【0116】
二値化した直後の画像は配向欠陥ムラ要素以外のノイズが多く残っているため、欠陥部分を強調するために膨張処理を実施し、膨張処理することによってノイズを低減しやすくする。ここで「膨張処理」とは、一般的に二値化された白黒の画像に対して処理が行われ、注目画素の周辺に1画素でも白い画素があれば白に置き換える処理を膨張(Dilation)という。後述する「収縮処理」とは、逆に周辺に1画素でも黒い画素があれば黒に置き換える処理を収縮(Erosion)という。
【0117】
当該配向欠陥ムラを残しつつノイズ除去するには、ムラが存在する方向に沿って処理するのが効果的である。これを微分処理の方向を基準として表すと、微分処理と直交する方向に処理することになる。なぜなら微分処理の方向はムラの存在する方向と直交する方向に実施するのが理想のためである。但し、ムラの方向もバラツキがあるため、このバラツキに対応するため、角度に幅を持たせ、微分(差分)処理の方向に対して、70~120°の範囲内の斜め方向に膨張処理を行うことが好ましい。
【0118】
ステップ(7):前記膨張処理を行った後に、前記輝度画像に対して同方向に収縮処理を行うステップ。
【0119】
膨張処理に続いて収縮処理を行うこともノイズをできるだけ除去するための処理であり、同様に微分処理の方向はムラの存在する方向と直交する方向に実施するため、ムラが存在する方向の角度に幅を持たせ、微分(差分)処理の方向に対して、70~120°の範囲内の斜め方向に収縮処理を行うことが好ましい。
【0120】
前記膨張処理及び収縮処理は、前記解析ソフト NI vision(National Instruments社製)を用いて行うことができる。
【0121】
ステップ(8):前記収縮処理された輝度画像に対して、各画素領域の代表長さにより規定されるフィルター条件を満たすものを、当該方向の配向ムラ欠陥成分として抽出するステップ。
【0122】
このステップは、フィルター処理、又はフィルタリングともいい、「各画素領域の代表長さにより規定されるフィルター条件」とは、配向ムラ欠陥の検出において経験上から求められる条件である。
【0123】
二値化した輝度画像から、例えば、形状が真円に近いものを除去したり(フィルター処理1)、長さが短い要素を除去したり(フィルター処理2)、面積が指定した範囲外のものを除去したり(フィルター処理3)するフィルタリングを行い、各画素領域の代表長さにより規定される当該フィルター条件を満たすものを、配向ムラ欠陥として検出する。
【0124】
具体的には、例えば、フィルター処理1として、ヘイウッド円形因子H:画素領域の周長を同面積の円周で除した商としたときに、1.5≦H≦5の範囲内にある画素領域のみ残すことが好ましい。なお、ヘイウッド円形因子Hは正円の場合は1である。
【0125】
さらにフィルター処理2として、配向ムラの長辺において特定の長さ以下の画素領域を除去することが好ましい。
【0126】
なお、フィルター処理2として、伸張因子L:画素領域の最大フェレー直径を当価長方形の短辺(フェレー)で除した商としたときに、4≦L≦13の範囲内にある画素領域のみ残して、配向ムラ欠陥を検出することが好ましい。
【0127】
前記フィルター処理において用いるフィルター処理ソフトは、限定されるものではないが前記解析ソフト NI vision(National Instruments社製)を用いて行うことができる。
【0128】
図4に、画像処理のフローチャートと、具体的な処理画像例を示す。
【0129】
(P1)位相差フィルムを撮影し輝度画像を取得、
(P2)輝度画像のシェーディング処理(画像内の輝度を平均化してノイズを除去)、
(P3)輝度画像の微分(差分)処理によるエッジ部分の強調
(P4)輝度画像の二値化、
(P5)二値化画像の強調処理(膨張及び収縮処理)、
(P6)二値化画像へのフィルター処理1(形状が真円に近い要素を除去)、
(P7)二値化画像へのフィルター処理2(長さが短い要素を除去)、
(P8)二値化画像へのフィルター処理3(面積が指定した範囲外の要素を除去)、
(P9)フィルター処理により二値化画像から配向ムラ欠陥のみを検出
【0130】
[2]位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置
本発明の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法に用いる位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置は、前記位相差フィルムを挟むようにクロスニコルに配置される第1偏光板及び第2偏光板と、前記第1偏光板を介して前記位相差フィルムに検査光を照射する光源と、前記第2偏光板を介して前記位相差フィルムを撮影して輝度画像を得る撮影装置と、前記輝度画像から欠陥を検出する欠陥検出部とを備え、前記欠陥検出部は、クロスニコルに配置される前記第1偏光板又は第2偏光板のどちらかの吸収軸に対し、前記位相差フィルムの遅相軸を-10~10°(ただし、0°は除く)の範囲内になるように、前記第1偏光板及び第2偏光板か、又は前記位相差フィルムのいずれかを回転して配置し撮影された前記輝度画像を、前記位相差フィルムの遅相軸に対して35~55°又は-55~-35°の範囲内の方向に微分(差分)処理しエッジ部分を強調するエッジ検出回路と、エッジ検出された前記輝度画像を、所定の閾値で二値化し、各画素を閾値以上の明画素と閾値よりも低い暗画素とにする二値化回路とを、有することを特徴とする。
【0131】
図5は、本発明の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置の一例を示す模式図である。
【0132】
本発明の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出装置50は、下部にあるフラットLED照明52から発光される照射光Lを、遮光板53、第1偏光板54、位相差フィルム51、遮光板53及び第2偏光板55の順に透過させ、当該位相差フィルム51の配向ムラ欠陥をレンズ56を装着したカメラ57にて撮影する装置である。この際、第1偏光板53及び第2偏光板54の吸収軸はクロスニコルになるように配置されていることから、照射光Lはそのままでは透過せず暗部となるが、位相差フィルム51を前記偏光板の吸収軸方向から少し回転させる(傾ける)ことによって、位相差フィルム51の遅相軸の方向によって照射光Lが偏光し、撮影した画像において配向ムラは暗い領域として撮影される。
【0133】
前記配向ムラ欠陥検出装置50において、位相差フィルム51を回転することはせず、前記第1偏光板54及び第2偏光板55を、位相差フィルムの遅相軸に対して、偏光板の吸収軸が-10~10°の範囲内になるように回転する機構(不図示)を有することが好ましい。
【0134】
また、各部の寸法は特に制限されるものではないが、例えば、評価用位相差フィルムは、長手方向に450mm、幅手方向に2000mmに切断した短冊状の試料を用いる。撮影装置は、撮影装置のレンズ先端位置と前記位相差フィルムとの距離、及び当該位相差フィルム上の検査領域の長手方向の大きさから算出される前記レンズの画角θを、当該位相差フィルムの長手方向に対して、23°以内とすることが好ましく、例えば、長手方向400mm、幅手方向300mmの領域を検査するため、図2で示す構成の検査装置を組み立てることが、検査効率の観点から好ましい。
【0135】
照明装置の光源は、特に限定されるものではないが、前述のとおり、重水素ランプやハロゲンランプ、LEDランプを光源としたファイバー型の光源、又は蛍光灯やLED、OLEDを用いた面光源を用いることができる。
【0136】
撮影装置は、特に限定されるものではないが、エリア型若しくはラインセンサ型のCCDカメラを用いることができる。位相差フィルムの測定対象範囲を数回以内の撮影でカバーできる場合は、エリア形、それよりも広い範囲を撮影する必要がある場合はラインセンサ形を使用すると、撮影時間、精度の面で好ましい。
【0137】
カメラ及びレンズの仕様例としては前述のとおりである。
【0138】
さらに、前記欠陥検出部が、前記位相差フィルムの微分(差分)処理の方向に対して、二値化された前記輝度画像に対して70~120°の範囲内の斜め方向に、膨張処理を行い、当該斜め方向の成分を強調する画像処理回路を有することが、好ましい。
【0139】
また、前記欠陥検出部が、前記膨張処理を行った後に、前記輝度画像に対して同方向に収縮処理を行う画像処理回路を有することが好ましい。
【0140】
さらに、前記欠陥検出部が、前記収縮処理された輝度画像に対して、各画素領域の代表長さにより規定されるフィルター条件を満たすものを、当該方向の配向ムラ欠陥成分として抽出するフィルタリング回路を有することが好ましい。
【0141】
図6は、エッジ検出回路、二値化回路、画像処理回路及びフィルタリング回路を有する欠陥検出部を説明する概略図である。
【0142】
[欠陥検出部]
欠陥検出部100の各構成について説明する。
【0143】
図6に示すとおり、欠陥検出部100は、制御部101、記録部102、通信部103、データ処理部104及び操作表示部105等を備え、バス106により各部が相互に通信可能に接続されている。
【0144】
制御部101は、欠陥検出部100の動作を統括制御するCPU(Central Processing Unit)101aと、CPU101aがプログラムを実行する際に各種データを一時的に格納するためのワークメモリーとして機能するRAM(Random Access Memory)101bと、CPU101aが読み出して実行するプログラムや固定データが記憶されたプログラムメモリー101cなどを備えている。プログラムメモリー101cは、ROMなどにより構成されている。
【0145】
記録部102は、撮影及び画像処理された画像データの他、画像処理回路で用いる各種閾値のデータ、照明装置52の照射条件データを格納、記録する。
【0146】
通信部103は、ネットワークI/F等の通信用のインターフェイスを備え、イントラネット等のネットワークを介して、操作表示部105から入力された測定条件を撮影調整装置120に送信する。また、通信部103は、撮影装置130から送られる画像データを受信する。
【0147】
データ処理部104は、通信部103により受信し、撮影装置130(レンズ56及びカメラ57)により撮影された輝度画像データから、画像処理を行う。
【0148】
データ処理部104は、本発明に係るステップ(4)~ステップ(8)に用いられる、各種処理回路を有する。
【0149】
データ処理部104は、シェーディング処理回路104aと、前記位相差フィルムの遅相軸に対して35~55°又は-55~-35°の範囲内の方向に微分(差分)処理しエッジ部分を強調するエッジ検出回路104b(ステップ(4))と、エッジ検出された前記輝度画像を、所定の閾値で二値化し、各画素を閾値以上の明画素と閾値よりも低い暗画素とにする二値化回路104c(ステップ(5))と、輝度画像に対して膨張処理又は収縮処理を行う画像処理回路104d(ステップ(6)及びステップ(7))と、前記収縮処理された輝度画像に対して、各画素領域の代表長さにより規定されるフィルター条件を満たすものを、当該方向の配向ムラ欠陥成分として抽出するフィルタリング回路104e(ステップ(8))とを有する。
【0150】
操作表示部105は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、LCDを覆うように設けられたタッチパネル、各種スイッチやボタン、テンキー及び操作キー群等(図示略)から構成されてもよい。操作表示部105は、ユーザーからの指示を受け付けその操作信号を制御部101に出力する。また、操作表示部105は、制御部101から出力される表示信号に従って、各種操作指示や設定情報を入力するための各種設定画面や各種処理結果等を表示する操作画面をLCD上に表示する。
【0151】
[外部出力装置]
データ処理装置100は、データ処理装置100と通信可能に接続される外部出力装置150を備えていてもよい。外部出力装置150は、一般的なPC(Personal Computer)であってもよいし、画像形成装置等であってもよい。また、外部出力装置150は、データ処理装置100の操作表示部105の代わりに操作表示部として機能してもよい。
【実施例
【0152】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0153】
[実施例1]
<評価用位相差フィルムの作製>
下記の方法に従って、評価用位相差フィルム101を作製した。
【0154】
(微粒子分散希釈液の調製)
10質量部のアエロジルR812(日本アエロジル社製、一次平均粒子径:7nm、見掛け比重50g/L)と、90質量部のエタノールとをディゾルバーで30分間撹拌混合した後、高圧分散機であるマントンゴーリンを用いて分散させて、微粒子分散液を調製した。
【0155】
得られた微粒子分散液に、88質量部のジクロロメタンを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合して、希釈した。得られた溶液をアドバンテック東洋社製ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW-PPS-1Nで濾過して、微粒子分散希釈液を得た。
【0156】
(インライン添加液の調製)
100質量部のジクロロメタンに、36質量部の前記作製した微粒子分散希釈液を撹拌しながら加えて30分間さらに撹拌した後、6質量部のセルロースアセテートプロピオネート(CAP:アセチル基置換度2.00、プロピオネート置換度0.60、重量平均分子量27万)を撹拌しながら加えて60分間さらに撹拌した。得られた溶液を、日本精線(株)製ファインメットNFで濾過して、インライン添加液を得た。濾材は、公称濾過精度20μmのものを用いた。
【0157】
(ドープの調製)
下記成分を密閉容器に投入し、加熱及び撹拌しながら完全に溶解させた。得られた溶液をリーフディスクフィルターを装着した濾過器にて、温度50℃で濾過して、主ドープを得た。濾材は、公称濾過精度20μmのものを用いた。
【0158】
〈主ドープの組成〉
セルロースアセテートプロピオネート(CAP:アセチル基置換度2.00、プロピオネート置換度0.60、重量平均分子量27万)
100質量部
可塑剤:糖エステル;BzSc(ベンジルスクロース:平均エステル置換度=5.5)
12質量部
ジクロロメタン 430質量部
メタノール 11質量部
100質量部の主ドープ1と、2.5質量部のインライン添加液とを、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi-Mixer、SWJ)で十分に混合して、ドープを
得た。
【0159】
(製膜工程)
得られたドープを、ベルト流延装置を用いてステンレスバンド支持体上に、ドープの液温度35℃、幅1950mmの条件で、最終膜厚が40μmとなる条件で均一に流延させた。ステンレスバンド支持体上で、得られたドープ膜中の有機溶媒を、残留溶媒量が100質量%になるまで蒸発させてウェブを形成した後、ステンレスバンド支持体からウェブを剥離した。得られたウェブを、110℃でさらに5分予備乾燥させて残留溶媒量を10質量%にした後、ウェブをテンターで、160℃の条件でTD方向の元幅に対して1.4倍に延伸し、下記所定の位相差を付与した。延伸速度は300%/minの速度で延伸した。
【0160】
テンターで延伸後、130℃で1分間緩和を行った後、乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。得られたフィルムを、2000mm幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径15.24cmコアに巻き取り、長さ4000m、乾燥膜厚40μmの評価用位相差フィルム101を得た。
上記位相差フィルム101の位相差は、前述の測定法によって測定した結果、Ro:50nm及びRt:120nmであった。
【0161】
<配向ムラ欠陥の評価>
図5で示した配向ムラ欠陥評価装置を用いて、下記ステップ(1)~(8)によって、上記作製した位相差フィルムの配向ムラ欠陥を検出し、評価した。
【0162】
なお、評価用位相差フィルムは、長手方向に450mm、幅手方向に2000mmの短冊状の試料に切断した。前記撮影装置のレンズ先端位置と前記位相差フィルムとの距離を1150mm、及び当該位相差フィルム上の検査領域の長手方向の大きさから算出される前記レンズの画角θを、20°に設定することによって、長手方向400mm、幅手方向300mmの検査領域にて、撮影を複数回行った。
【0163】
ステップ(1):クロスニコルに配置された第1偏光板及び第2偏光板の間に前記位相差フィルムを配置するときに、第1偏光板の偏光子の吸収軸に対して前記位相差フィルムの遅相軸が-7°になるように、第1偏光板及び第2偏光板を回転させて配置するステップ。
【0164】
表I記載の角度は、反時計回りがマイナス、時計回りがプラスの値である。
【0165】
ステップ(2):前記第1偏光板を介して前記位相差フィルムにフラットLED照明から検査光を照射するステップ。
【0166】
ステップ(3):前記第2偏光板を介して前記位相差フィルムを撮影装置(カメラ)によって撮影し、輝度画像を得るステップ。
【0167】
ステップ(4):撮影された前記輝度画像を前記位相差フィルムの遅相軸に対して40°の方向に微分(差分)処理しエッジ部分を強調をした輝度画像を得るステップ。
【0168】
ステップ(5):エッジ強調された前記輝度画像を、所定の閾値で二値化し、各画素を閾値以上の明画素と閾値よりも低い暗画素とを得て、当該明画素又は暗画素から配向ムラを検出するステップ。
【0169】
ステップ(6):前記位相差フィルムの微分(差分)処理の方向に対して、90°の斜め方向に、二値化された前記輝度画像に対して膨張処理を行い、当該斜め方向の成分を強調する画像処理を行うステップ。
【0170】
ステップ(7):前記膨張処理を行った後に、前記輝度画像に対して同方向に収縮処理を行うステップ。
【0171】
ステップ(8):前記収縮処理された前記輝度画像に対して、各画素領域の代表長さにより規定されるフィルター条件を満たすものを、当該方向の配向ムラ欠陥成分として抽出するステップ。
【0172】
(フィルタリング1)
ヘイウッド円形因子H:画素領域の周長を同面積の円周で除した商としたときに、1.5≦H≦5の範囲内にある画素領域のみ残した。
【0173】
(フィルタリング2)
伸張因子L:画素領域の最大フェレー直径を当価長方形の短辺(フェレーで除した商としたときに、4≦L≦13の範囲内にある画素領域のみ残した。
【0174】
[実施例2~8]
実施例1の評価条件において、表I記載の装置条件θ、θf及びθp(それぞれ角度を表す。)、及び画像処理条件(ステップ(4)、ステップ(5)、ステップ(6)、ステップ(7)、ステップ(8)-1:フィルタリング1及び(8)-2:フィルタリング-2に変えて、同様な評価を行い、実施例2~8とした。
ここで、θ:カメラに装着されているレンズの画角、θf:位相差フィルム遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度、及びθp:2枚の偏光版の吸収軸のなす角度、をそれぞれ表す。
【0175】
[比較例1~3]
図1の配向ムラ欠陥評価装置を用い、評価者として、評価経験1年以上(目視1)、評価経験半年以上1年未満(目視2)及び評価経験半年未満(目視3)の3名で、比較例1~3の評価を実施した。
【0176】
[比較例4]
特開平11-30591号公報段落[0113]~[0122]記載の実施例に準拠した評価を実施した。
【0177】
[比較例5]
特開2013-50393号公報段落[0098]~[0099]記載の実施例1に準拠した評価を実施した。
【0178】
≪評価≫
(1)煩雑性
煩雑性は1サンプルの評価にかける時間で判定した。
【0179】
◎:1分未満
〇:1分以上、5分未満
△:5分以上、10分未満
×:10分以上
〇~◎である場合、煩雑性が低く優れている評価方法であるとした。
【0180】
(2)検出精度
検査した位相差フィルムを用いて表示装置を組み立てた後に、品質評価したときの結果(顧客先評価結果)とフィルム状態での品質評価結果(自社内評価結果)との一致度合いで検出精度をランク分けした。
【0181】
◎:9~10サンプルの評価結果が一致
〇:6~8サンプルの評価結果が一致
△:3~5サンプルの評価結果が一致
×:0~2サンプルの評価結果が一致
検出精度は△以上が求められ、〇~◎であることが望ましい。
【0182】
以上の評価方法及び評価結果を表Iに示した。
【0183】
【表1】
【0184】
表Iの評価結果から、本発明の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法及び配向ムラ欠陥検出装置を用いることによって、位相差フィルムの配向ムラ欠陥評価の煩雑性及び検出精度が、目視評価に対して向上することが分かる。
【0185】
したがって、本発明によって、位相差フィルムの配向ムラ欠陥の検出、評価を光学系による定量評価を行うことにより、評価が属人的ではなく、より簡便に評価再現性を高めることができる位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法及び配向ムラ欠陥検出装置を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明の位相差フィルムの配向ムラ欠陥検出方法及び配向ムラ欠陥検出装置は、位相差フィルムの配向ムラ欠陥の検出、評価を光学系による定量評価で行うことが可能であり、評価が属人的ではなく、より簡便な位相差フィルムの配向ムラ欠陥の評価に好適に利用される。
【符号の説明】
【0187】
1 位相差フィルム
2 フラットLED照明
3 第1偏光板
4 第2偏光板
5 目視
6 傾斜方向
L 照射光
θ 画角
10 従来の配向ムラ欠陥の目視評価方法
50 配向ムラ欠陥検出装置
51 位相差フィルム
51a 長手長
51b 幅手長
52 フラットLED照明
53 遮光板
54 第1偏光板
55 第2偏光板
56 レンズ
57 カメラ
100 欠陥検出部
101 制御部
101a CPU
101b RAM
101c プログラムメモリー
102 記録部
103 通信部
104 データ処理部
104a シェーディング処理回路
104b エッジ検出回路
104c 二値化回路
104d 画像処理回路
104e フィルタリング回路
105 操作表示部
120 撮影調整装置
130 撮影装置
150 外部出力装置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6