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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】非接触給電システムおよび受電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20240423BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20240423BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240423BHJP
   B60L 53/122 20190101ALI20240423BHJP
   B60L 53/20 20190101ALI20240423BHJP
   B60L 53/37 20190101ALI20240423BHJP
   B60L 53/39 20190101ALI20240423BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20240423BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240423BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20240423BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240423BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240423BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20240423BHJP
【FI】
H02J50/80
B60L5/00 B
B60L50/60
B60L53/122
B60L53/20
B60L53/37
B60L53/39
B60L58/10
B60M7/00 X
H01F38/14
H02J7/00 301D
H02J50/12
H04B5/48
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2022010961
(22)【出願日】2022-01-27
(65)【公開番号】P2022127588
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2021024832
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】柴沼 満
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和行
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 侑生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英介
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-159683(JP,A)
【文献】国際公開第2009/014125(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 - 50/90
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H04B 5/00 - 5/79
B60M 1/00 - 7/00
B60L 5/00 - 5/42
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H01F 38/14
H01F 38/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から受電装置に非接触で給電が行なわれる非接触給電システムであって、
送電用の1次側コイル(112)及び1次側コンデンサ(114,114b,114c)で構成される1次側共振回路(110)と、
予め定めた動作周波数の交流電力を前記1次側共振回路に印加する交流電源装置(130,130J)と、
を有する送電装置(100,100J)と、
前記1次側コイルと磁気的に結合される受電用の2次側コイル(212)、及び、2次側コンデンサ(214,214e)で構成される2次側共振回路(210)と、
前記2次側共振回路から出力される電力を利用する負荷装置(240)と、
を有する受電装置(200)と、
を備え、
前記1次側共振回路は、給電を停止する際に、前記1次側コイルに流れる電流を予め定めた待機電流が流れるように、前記1次側共振回路の入力インピーダンスを大きくするインピーダンス可変素子を有し、
前記受電装置は、前記1次側コイルに前記待機電流が流れることで発生する磁束を増幅する磁束増幅回路(220,220f)を有し、
前記送電装置は、前記磁束増幅回路で増幅された磁束により発生する、前記1次側コイルの電圧の変化、前記1次側コイルの電流の変化、もしくは前記1次側コイルの近傍における磁界の変化を検出する1次側検出回路(120)を有す、
非接触給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電システムであって、
前記1次側検出回路の検出値が一定値以上に増加した場合に、前記インピーダンス可変素子により前記入力インピーダンスを小さくして、給電を開始する、非接触給電システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の非接触給電システムであって、
前記1次側コンデンサはキャパシタンスが可変な可変コンデンサで構成され、
前記インピーダンス可変素子は前記1次側コンデンサで構成される、
非接触給電システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記磁束増幅回路は、増幅用コイル(222)と増幅用コンデンサ(224)による短絡共振回路によって構成される、非接触給電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の非接触給電システムであって、
前記2次側共振回路は、前記2次側共振回路の端子間を接続する短絡スイッチ回路(216)を有し、
前記短絡共振回路は、前記短絡スイッチ回路により、直列に接続された前記2次側コイル及び前記2次側コンデンサが短絡されることで、前記2次側コイル及び前記2次側コンデンサが前記増幅用コイル及び前記増幅用コンデンサとして構成される、
非接触給電システム。
【請求項6】
請求項4に記載の非接触給電システムであって、
前記負荷装置は、
前記2次側共振回路から出力される交流電力を直流電力に変換する整流回路(242)と、
前記整流回路から出力される直流電力が蓄電されるバッテリ(244)と、
を有し、
非接触給電システムは、さらに、前記2次側共振回路と前記整流回路との間に設けられたイミタンスフィルタ(230)を備え、
前記短絡共振回路は、前記2次側共振回路の前記2次側コイル及び前記2次側コンデンサと、前記イミタンスフィルタを構成するインダクタ(232)及びコンデンサ(236)と、で構成される、
非接触給電システム。
【請求項7】
請求項6に記載の非接触給電システムであって、
さらに、前記整流回路と前記バッテリとの間に双方向DCDCコンバータ(246)を備え、
前記2次側共振回路及び前記イミタンスフィルタを前記短絡共振回路とする場合、前記バッテリの出力電圧を変換して、予め定めた値以上の電圧が前記整流回路に向けて出力するように、前記双方向DCDCコンバータを動作させる、非接触給電システム。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記2次側コンデンサ(214e)は、キャパシタンスが可変な可変コンデンサで構成され、
前記短絡共振回路を動作させる場合、前記2次側共振回路の前記2次側コイルと前記2次側コンデンサとが前記動作周波数で共振するように、前記2次側コンデンサのキャパシタンスを調整する、非接触給電システム。
【請求項9】
請求項8に記載の非接触給電システムであって、
前記短絡共振回路を動作させない場合、前記2次側共振回路の前記2次側コイルと前記2次側コンデンサとが前記動作周波数で共振する場合に設定される前記2次側コンデンサのキャパシタンスからずらす、非接触給電システム。
【請求項10】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記磁束増幅回路(220f)は、増幅用コイル(222)と、前記増幅用コイルに前記動作周波数の交流電流を供給するパルス生成回路(226)と、から構成され、
前記受電装置は、さらに、前記1次側コイルに前記待機電流が流れることで発生する磁束を検出する2次側検出回路(260)を備え、
前記2次側検出回路の検出値が一定値以上に増加した場合、前記パルス生成回路から前記増幅用コイルに前記交流電流が供給される、非接触給電システム。
【請求項11】
請求項10に記載の非接触給電システムであって、
前記負荷装置は、
前記2次側共振回路から出力される交流電力を直流電力に変換する整流回路(242g)と、
前記整流回路から出力される直流電力が蓄電されるバッテリ(244)と、
を有し、
前記整流回路は、同期整流回路で構成され、
前記磁束増幅回路は、前記増幅用コイルとして前記2次側コイルが用いられ、前記パルス生成回路として前記整流回路が用いられて構成される、非接触給電システム。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の非接触給電システムであって、
さらに、前記2次側共振回路と前記負荷装置との間に設けられたイミタンスフィルタ(230)を備え、
前記2次側検出回路は、前記イミタンスフィルタの出力端子間電圧、もしくは、前記イミタンスフィルタのコンデンサ(236)の端子間電圧を用いて、前記1次側コイルに前記待機電流が流れることで発生する磁束を検出する、非接触給電システム。
【請求項13】
請求項12に記載の非接触給電システムであって、
前記2次側共振回路の前記2次側コイル及び前記2次側コンデンサと、前記イミタンスフィルタを構成するインダクタ(232)及びコンデンサ(236)と、で短絡共振回路が構成される、非接触給電システム。
【請求項14】
請求項10から請求項13までのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記パルス生成回路は、前記増幅用コイルに流れる電流と、前記増幅用コイルの巻き線の巻数との積が、給電時に前記2次側コイルに流れる電流と、前記2次側コイルの巻き線の巻数との積以下となるように、前記増幅用コイルに前記交流電流を流す、
非接触給電システム。
【請求項15】
送電装置から受電装置に非接触で給電が行なわれる非接触給電システムであって、
送電用の1次側コイル(112)及び1次側コンデンサ(114)を含む1次側共振回路(110)と、
予め定めた動作周波数の交流電力を前記1次側共振回路に供給する交流電源装置(130)と、
前記1次側コイルまたは前記1次側コイルの近傍に設けられる送電装置被検出部(150)と、を有する送電装置(100)と、
前記1次側コイルと磁気的に結合される受電用の2次側コイル(212)、及び、2次側コンデンサ(214)を含む2次側共振回路(210)と、
前記2次側共振回路から出力される電力を利用する負荷装置(240)と、
起動用コイル(222k)、および前記起動用コイルに前記動作周波数の交流電流を供給するパルス生成回路(226)を含む起動回路(220k)と、
前記送電装置被検出部を検出するための送電装置検出部(260k)と、を有する受電装置(200)と、を備え、
前記起動回路は、前記送電装置検出部が前記送電装置被検出部を検出した場合に、前記パルス生成回路から前記起動用コイルに前記交流電流を供給し、
前記送電装置は、供給された前記交流電流により前記起動用コイルで生じた磁束によって発生する、前記1次側コイルの電圧の変化、前記1次側コイルの電流の変化、もしくは前記1次側コイルの近傍における磁界の変化を検出する1次側検出回路(120)を有する、
非接触給電システム。
【請求項16】
請求項15に記載の非接触給電システムであって、
前記1次側共振回路は、さらに、前記1次側共振回路の入力インピーダンスを可変にするためのインピーダンス可変素子を有し、
前記インピーダンス可変素子は、前記1次側検出回路の検出値が一定値以上である場合に、前記入力インピーダンスを小さくして給電を開始する、
非接触給電システム。
【請求項17】
請求項16に記載の非接触給電システムであって、
前記インピーダンス可変素子は、前記1次側コンデンサであり、
前記1次側コンデンサは、キャパシタンスが可変な可変コンデンサを含む、
非接触給電システム。
【請求項18】
請求項15から請求項17までのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記負荷装置は、
前記2次側共振回路から出力される交流電力を直流電力に変換する整流回路(242g)と、
前記整流回路から出力される直流電力が蓄電されるバッテリ(244)と、を有し
前記整流回路は、同期整流回路で構成され、
前記起動回路は、前記起動用コイルとして前記2次側コイルが用いられ、前記パルス生成回路として前記同期整流回路が用いられる、
非接触給電システム。
【請求項19】
請求項15から請求項18までのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記パルス生成回路は、前記起動用コイルに流れる電流と前記起動用コイルの巻き線の巻数との積が、給電時に前記2次側コイルに流れる電流と前記2次側コイルの巻き線の巻数との積以下となるように、前記起動用コイルに前記交流電流を流す、
非接触給電システム。
【請求項20】
請求項15から請求項19までのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置被検出部は、二次元コードであり、
前記送電装置検出部は、前記二次元コードを読み取り可能な二次元コードリーダを含む、
非接触給電システム。
【請求項21】
請求項15から請求項19までのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置被検出部は、磁気マーカであり、
前記送電装置検出部は、前記磁気マーカから発生する磁束を検出可能な磁気マーカ検出器を含む、
非接触給電システム。
【請求項22】
請求項15から請求項19までのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置被検出部は、前記送電装置の少なくとも一部分であり、
前記送電装置検出部は、前記一部分の画像を撮像するカメラを含む、
非接触給電システム。
【請求項23】
請求項15から請求項19までのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置被検出部は、RFタグであり、
前記送電装置検出部は、前記RFタグを検出可能なRFリーダを含む、
非接触給電システム。
【請求項24】
請求項1から請求項23までのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置は、複数の前記1次側コイルを備え、
前記複数の1次側コイルは、一方向に沿った直線状、または前記一方向と前記一方向に交差する交差方向との面状のいずれかで配列される、
非接触給電システム。
【請求項25】
請求項24に記載の非接触給電システムであって、
前記2次側コイルの前記一方向に沿った幅は、前記1次側コイルの前記一方向に沿った幅よりも長い、
非接触給電システム。
【請求項26】
送電装置から送電される電力を非接触で受電する受電装置(200)であって、
送電装置(100)に備えられる送電用の1次側コイル(112)と磁気的に結合される受電用の2次側コイル(212)、及び、2次側コンデンサ(214)を含む2次側共振回路(210)と、
前記2次側共振回路から出力される電力を利用する負荷装置(240)と、
前記1次側コイルに予め定めた待機電流が流れることで発生する磁束を増幅する磁束増幅回路(220,220f)と、を備える、
受電装置。
【請求項27】
送電装置から送電される電力を非接触で受電する受電装置(200)であって、
送電装置(100)に備えられる送電用の1次側コイル(112)と磁気的に結合される受電用の2次側コイル(212)、及び、2次側コンデンサ(214)を含む2次側共振回路(210)と、
前記2次側共振回路から出力される電力を利用する負荷装置(240)と、
起動用コイル(222k)、および前記起動用コイルに予め定められた動作周波数の交流電流を供給するパルス生成回路(226)を含む起動回路(220k)と、
前記1次側コイルまたは前記1次側コイルの近傍に設けられる送電装置被検出部(150)を検出し、前記送電装置被検出部を検出した場合に、前記パルス生成回路から前記起動用コイルに前記交流電流を供給させる送電装置検出部(260k)と、を備える、
受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触給電システムおよび受電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電側である1次側から受電側である2次側に誘導により非接触で電力を供給する非接触給電システムが種々提案されている。例えば、特許文献1には、双方向無線通信を用いたハンドシェイクにより、送電装置と受電装置との間の位置合わせ、及び、送電装置と受電装置との間の給電開始手続きを行ない、送電装置から受電装置への給電を自動的に実行する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-88178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、双方向無線通信を用いたハンドシェイクは、実際に給電が開始されるまでの手続きに時間を要する傾向にあり、高速な応答性の点で課題がある。この高速な応答性の課題は、例えば、走行中の車両に対して給電を行なうシステムにおいて、特に顕著となる。また、双方向無線通信を用いたハンドシェイクの実行には、複雑な信号処理を実行するための回路を用いた設備が必要となるため、このような設備の簡略化も望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、送電装置から受電装置に非接触で電力が供給される非接触給電システムが提供される。この非接触給電システムは、送電用の1次側コイル(112)及び1次側コンデンサ(114)で構成される1次側共振回路(110)と、予め定めた動作周波数の交流電力を前記1次側共振回路に印加する交流電源装置(130)と、を有する送電装置(100)と、前記1次側コイルと磁気的に結合される受電用の2次側コイル(212)、及び、2次側コンデンサ(214)で構成される2次側共振回路(210)と、前記2次側共振回路から出力される電力を利用する負荷装置(240)と、を有する受電装置(200)と、を備える。前記1次側共振回路は、給電を停止する際に、前記1次側コイルに流れる電流を予め定めた待機電流が流れるように、前記1次側共振回路の入力インピーダンスを大きくするインピーダンス可変素子を有し、前記受電装置は、前記1次側コイルに前記待機電流が流れることで発生する磁束を増幅する磁束増幅回路(220,220f)を有し、前記送電装置は、前記磁束増幅回路で増幅された磁束により発生する、前記1次側コイルの電圧の変化、前記1次側コイルの電流の変化、もしくは前記1次側コイルの近傍における磁界の変化を検出する1次側検出回路(120)を有す。
この形態の非接触給電システムによれば、送電装置では、1次側検出回路によって、受電装置の存在を検出することができるので、送電側と受電側との間での通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置から受電装置への給電を行なうことができる。
【0006】
本開示の第二の形態によれば、送電装置から受電装置に非接触で給電が行なわれる非接触給電システムが提供される。この非接触給電システムは、送電用の1次側コイル(112)及び1次側コンデンサ(114)を含む1次側共振回路(110)と、予め定めた動作周波数の交流電力を前記1次側共振回路に供給する交流電源装置(130)と、前記1次側コイルまたは前記1次側コイルの近傍に設けられる送電装置被検出部(150)と、を有する送電装置(100)と、前記1次側コイルと磁気的に結合される受電用の2次側コイル(212)、及び、2次側コンデンサ(214)を含む2次側共振回路(210)と、前記2次側共振回路から出力される電力を利用する負荷装置(240)と、起動用コイル(222k)、および前記起動用コイルに前記動作周波数の交流電流を供給するパルス生成回路(226)を含む起動回路(220k)と、前記送電装置被検出部を検出するための送電装置検出部(260k)と、を有する受電装置(200)と、を備える。前記起動回路は、前記送電装置検出部が前記送電装置被検出部を検出した場合に、前記パルス生成回路から前記起動用コイルに前記交流電流を供給する。前記送電装置は、供給された前記交流電流により前記起動用コイルで生じた磁束によって発生する、前記1次側コイルの電圧の変化、前記1次側コイルの電流の変化、もしくは前記1次側コイルの近傍における磁界の変化を検出する1次側検出回路(120)を有する。
この形態の非接触給電システムによれば、送電装置では、待機電流を流すことなく、1次側検出回路によって受電装置の存在を検出することができるので、送電側と受電側との間での通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置から受電装置への給電を行なうことができる。
【0007】
本開示の他の形態によれば、送電装置から送電される電力を非接触で受電する受電装置(200)が提供される。この受電装置は、送電装置(100)に備えられる送電用の1次側コイル(112)と磁気的に結合される受電用の2次側コイル(212)、及び、2次側コンデンサ(214)を含む2次側共振回路(210)と、前記2次側共振回路から出力される電力を利用する負荷装置(240)と、前記1次側コイルに予め定めた待機電流が流れることで発生する磁束を増幅する磁束増幅回路(220,220f)と、を備える。
この形態の受電装置によれば、受電装置の存在を検出することができる1次側検出回路を備える送電装置と、送電側と受電側との間での通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置から受電装置への給電を行なうことができる。
【0008】
本開示の第二の形態によれば、送電装置から送電される電力を非接触で受電する受電装置(200)が提供される。この受電装置は、送電装置(100)に備えられる送電用の1次側コイル(112)と磁気的に結合される受電用の2次側コイル(212)、及び、2次側コンデンサ(214)を含む2次側共振回路(210)と、前記2次側共振回路から出力される電力を利用する負荷装置(240)と、起動用コイル(222k)、および前記起動用コイルに予め定められた動作周波数の交流電流を供給するパルス生成回路(226)を含む起動回路(220k)と、前記1次側コイルまたは前記1次側コイルの近傍に設けられる送電装置被検出部(150)を検出し、前記送電装置被検出部を検出した場合に、前記パルス生成回路から前記起動用コイルに前記交流電流を供給させる送電装置検出部(260k)と、を備える。
この形態の受電装置によれば、1次側検出回路によって受電装置の存在を検出することができる送電装置と、送電装置に待機電流を流さなくても、送電側と受電側との間での通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置から受電装置への給電を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の非接触給電システムの概略構成図。
図2】1次側検出回路の動作の様子を示す説明図。
図3A】1次側検出回路の変形例を示す説明図。
図3B】変形例での1次側検出回路の動作の様子を示す説明図。
図4A】1次側検出回路の変形例を示す説明図。
図4B】変形例での1次側検出回路の動作の様子を示す説明図。
図5】第2実施形態の非接触給電システムの概略構成図。
図6】第3実施形態の非接触給電システムの概略構成図。
図7】第4実施形態の非接触給電システムにおける受電装置の概略構成図。
図8】第5実施形態の非接触給電システムにおける受電装置の概略構成図。
図9】第5実施形態の受電装置の変形例を示す説明図。
図10】第5実施形態の受電装置の変形例を示す説明図。
図11】第6実施形態の非接触給電システムにおける受電装置の概略構成図。
図12】第7実施形態の非接触給電システムにおける受電装置の概略構成図。
図13】第8実施形態の非接触給電システムにおける受電装置の概略構成図。
図14】第9実施形態の非接触給電システムにおける受電装置の概略構成図。
図15】第10実施形態の車両用非接触給電システムの概略構成図。
図16】直線状に配列された複数の1次コイルから受電装置への給電状態を示す第一の説明図。
図17】直線状に配列された複数の1次コイルから受電装置への給電状態を示す第二の説明図。
図18】面状に配列された複数の1次コイルから受電装置への給電状態を示す説明図。
図19】第11実施形態の非接触給電システムの概略構成図。
図20】第11実施形態での受電装置の変形例を示す説明図。
図21】第9実施形態での送電装置の変形例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
図1に示すように、第1実施形態の非接触給電システムは、送電装置100と、送電装置100から非接触で電力が供給される受電装置200と、を備えている。
【0011】
送電装置100は、1次側共振回路110と、1次側検出回路120と、交流電源装置130と、を備えている。1次側共振回路110は、共振による誘導によって受電装置200への電力の供給を実行する回路である。
【0012】
1次側共振回路110は、1次側コイル112と、1次側コイル112に直列に接続された1次側コンデンサ114と、を有している。1次側コイル112に印加された電力を共振させるための共振コンデンサである。1次側コンデンサ114には、キャパシタンスの大きさが可変可能な可変コンデンサ、具体的には、与えられる制御入力、本例では、制御電圧Vcに応じてキャパシタンスC1が変化する可変コンデンサが用いられている。1次側共振回路110は、送電用の1次側コイル112と、後述する受電装置200の2次側共振回路210に含まれる受電用の2次側コイル212との間が磁気的に結合された共振結合の状態において、2次側コイル212に交流電力を送電する回路である。
【0013】
交流電源装置130は、予め定められた動作周波数の交流電力を1次側共振回路110に印加する装置である。交流電源装置130は、外部電源の交流電力を直流電力に変換する電源装置や、電源装置から供給される直流電力を動作周波数の交流電力に変換するインバータ等を含む装置として構成される。なお、インバータの出力には、フィルタが設けられる場合もある。なお、以下では、交流電源装置130が1次側共振回路110に印加する交流電圧をV1、交流電流をI1、動作周波数をf0、動作角周波数をω0(=2π・f0)として説明する。
【0014】
1次側検出回路120は、検出回路124と、C制御回路126と、を有している。検出回路124は、1次側コイル112の端子間に発生する1次側コイル電圧VL1の増加の有無を検出することで、送電装置100から受電可能な状態の受電装置200の有無を検出する。なお、1次側コイル電圧VL1の増加は、後述する磁束増幅回路220によって発生する。C制御回路126は、検出信号Sdに応じた制御電圧Vcを出力して、1次側コンデンサ114のキャパシタンスC1を制御する。なお、1次側検出回路120の動作は、磁束増幅回路220の動作とともに、後で説明を加える。
【0015】
検出信号Sdの状態が「検出」を示すアクティブ状態の場合には、キャパシタンスC1は、1次側共振回路110の入力インピーダンスZ1(V1/I1)が小さな状態となって、給電用の大きなコイル電流が1次側コイル112に流れるような値に設定される。この設定は、給電用のキャパシタンスに対応する制御電圧Vcが1次側コンデンサ114の制御入力とされることによって実行される。一方、検出信号Sdの状態が「非検出」を示す非アクティブ状態の場合には、キャパシタンスC1は、1次側共振回路110の入力インピーダンスZ1が大きな状態となって、待機用の小さなコイル電流が1次側コイル112に流れるような値に設定される。この設定は、待機用のキャパシタンスC1に対応する制御電圧Vcが1次側コンデンサ114の制御入力とされることによって実行される。なお、以下では、検出信号Sdの状態がアクティブ状態の場合を「給電時」、非アクティブ状態の場合を「非給電時」とも呼ぶ。また、供給用の大きなコイル電流を「給電電流」、待機用の小さなコイル電流を「待機電流」とも呼ぶ。
【0016】
ここで、入力インピーダンスZ1は、簡易的にはZ1=j[ω0・L1-1/(ω0・C1)]で表される。L1は1次側コイル112の自己インダクタンスである。従って、入力インピーダンスZ1を小さくするには、[ω0・L1-1/(ω0・C1)]の絶対値が予め定めたインピーダンスとなるようなキャパシタンスC1に設定すればよい。また、入力インピーダンスZ1を大きくするには、予め定めた待機電流に対応するインピーダンスとなるように、キャパシタンスC1を、入力インピーダンスZ1を小さくする場合に比べて小さくすればよい。以上のことから、上記したように、入力インピーダンスZ1を小さくする場合にはキャパシタンスC1を給電用のキャパシタンスに設定し、入力インピーダンスZ1を大きくする場合にはキャパシタンスC1を待機用のキャパシタンスに設定している。なお、この説明からわかるように、1次側コンデンサ114は入力インピーダンスZ1を変化させる「インピーダンス可変素子」に相当する。
【0017】
受電装置200は、電子機器や電気自動車等のように、電力を利用して作動する種々の装置に搭載される。受電装置200は、2次側共振回路210と、磁束増幅回路220と、負荷装置240と、を備えている。
【0018】
2次側共振回路210も、1次側共振回路110と同様に、直列に接続された2次側コイル212と、共振コンデンサとしての2次側コンデンサ214と、を有している。2次側共振回路210は、2次側コイル212と1次側コイル112との間が磁気的に結合された共振結合の状態において、2次側コイル212に誘導された交流電力を得る回路である。
【0019】
負荷装置240は、2次側共振回路210に誘導された交流電力が利用される装置である。負荷装置240としては、一例として、2次側共振回路210で得られた交流電力を受電し、バッテリに充電する装置が挙げられる。この装置としては、受電回路及びバッテリが例示される。受電回路としては、交流電力をバッテリに供給可能な直流電力に変換する整流回路、及び、必要に応じてDCDCコンバータが例示される。バッテリに充電された電力は、受電装置200が搭載された装置において電力として利用される。負荷装置240としては、受電回路及びバッテリで構成される装置に限定されるものではなく、2次側共振回路210から出力される交流電力を利用する種々の装置が適用可能である。
【0020】
磁束増幅回路220は、増幅用コイル222と増幅用コンデンサ224とが直列に接続された閉回路で構成されている。増幅用コンデンサ224のキャパシタンスC3は、増幅用コイル222の自己インダクタンスL3に対して、動作周波数f0が共振周波数となるように、C3=1/(ω0・L3)に設定されている。なお、磁束増幅回路220の動作は、1次側検出回路120の動作とともに、後で説明を加える。なお、増幅用コイル222は、2次側コイル212と一定の結合状態となる位置に固定配置されている。
【0021】
1次側コンデンサ114の給電時におけるキャパシタンスC1は、例えば、1次側コイル112の自己インダクタンスL1に対して、動作周波数f0が共振周波数となるように、C1=1/(ω0・L1)に設定される。また、給電時のキャパシタンスC1は、1次側コイル112と2次側コイルと増幅用コイル222との互いの結合係数を考慮して、C1=1/[ω0・L1(1-k13・k12/k32)]に設定されるようにしてもよい。なお、knmはn次側コイルとm次側コイルの結合係数である。また、給電時のキャパシタンスC1は、動作周波数f0のx次倍(xは2以上の正数)の高調波周波数が共振周波数となるように設定されるようにしてもよい。すなわち、給電時のキャパシタンスC1は、動作周波数f0の交流電力が1次側共振回路110と2次側共振回路210との間で効率良く送電されるように、種々の予め定めた設定条件に従って、1次側コイル112の自己インダクタンスL1や動作周波数f0(動作角周波数ω0)、結合係数knm等に基づいて設定されるようにしてもよい。
【0022】
非給電時のキャパシタンスC1は、入力インピーダンスZ1が予め定めた値の待機電流に対応する値となるように、給電時のキャパシタンスC1の値に比べて十分に小さな値に設定される。
【0023】
2次側コンデンサ214のキャパシタンスC2も、給電時のキャパシタンスC1と同様に、2次側コイル212の自己インダクタンスL2に対して、動作周波数f0が共振周波数となるように、C2=1/(ω0・L2)に設定される。また、キャパシタンスC2は、1次側コイル112と2次側コイルと増幅用コイル222との互いの結合係数を考慮して、C2=1/[ω0・L2(1-k32・k12/k13)]に設定されるようにしてもよい。また、キャパシタンスC2は、動作周波数f0のx倍の高調波周波数が共振周波数となるように設定されるようにしてもよい。すなわち、キャパシタンスC2は、動作周波数f0の交流電力が1次側共振回路110と2次側共振回路210との間で効率良く送電されるように、種々の予め定めた設定条件に従って、2次側コイル212の自己インダクタンスL2や動作周波数f0(動作角周波数ω0)、結合係数knm等に基づいて設定されるようにしてもよい。
【0024】
なお、図1では、送電装置100から受電装置200への給電が可能状態、すなわち、送電側の1次側コイル112に対して受電側の2次側コイル212及び磁束増幅回路220の増幅用コイル222が磁気的に結合された状態となるように配置された状態にあることを2本の平行線にて示している。
【0025】
以下では、磁束増幅回路220及び1次側検出回路120の動作について説明する。送電装置100において、まず、1次側コンデンサ114のキャパシタンスC1が非給電時の状態に設定されているものとする。この場合、1次側コイル112の端子間には交流電源装置130から印加される交流の電圧V1が印加され、1次側コイル112に流れる交流の待機電流に応じた磁束が発生する状態となっている。
【0026】
上記状態の送電装置100に受電装置200が近づき、磁束増幅回路220の増幅用コイル222と1次側コイル112との間に磁気的な結合が発生すると、その結合の度合いの増加に応じて、磁束増幅回路220の増幅用コイル222は、誘導された磁束を発生する。この誘導された磁束は、1次側コイル112を鎖交する磁束を増加させる。すなわち、磁束増幅回路220は、実質的に、1次側コイル112の近傍における磁束を増幅し、磁界を増加する。
【0027】
従って、図2に示すように、1次側コイル112の端子間のコイル電圧(1次側コイル電圧)VL1は、配置面上における1次側コイル112の中心軸CX1の位置Pc1に対して、受電側の2次側コイル212の中心軸CX2の位置が近くなるほど増加し、遠くなるほど減少する。
【0028】
そこで、1次側検出回路120(図1参照)は、検出回路124によって1次側コイル電圧VL1の一定値以上の増加、例えば、1次側コイル電圧VL1の検出値の閾値Vth以上への増加を検出し、検出信号Sdが非アクティブ状態からアクティブ状態となる。
【0029】
特に、磁束増幅回路220に、動作周波数f0が共振周波数に設定された短絡共振回路が用いられている場合、短絡共振回路のQ値が十分大きいとすると、1次側コイル電圧VL1は、VL1=(k13・Q3)・V1で表すことができ、交流電源装置130から印加される電圧V1の[k13・Q3]倍とすることができる。Q3は短絡共振回路のQ値であり、Q3=ω0・L3/r3で表される。r3は増幅用コイル222の巻線抵抗である。これにより、1次側コイル電圧VL1の増加を大きくすることができるので、検出の安定性を高めることができる。
【0030】
従って、送電装置100は、受電装置200との通信によらずに、2次側コイル212、すなわち、受電装置200が受電可能な状態にあることを検出することができる。
【0031】
そして、1次側検出回路120は、上記したように、検出信号Sdがアクティブ状態となった場合、C制御回路126によって1次側コンデンサ114のキャパシタンスC1を給電時の状態に設定することができる。一方、検出信号Sdがアクティブ状態から非アクティブ状態となった場合には、C制御回路126によってキャパシタンスC1を非給電時の状態に設定することができる。
【0032】
従って、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことができる。また、送電装置100における受電装置200の有無の検出の速度は、送電装置100及び受電装置200を構成するそれぞれの回路の応答性に依存するものであり、回路の応答性は、通信によるハンドシェイクに比べて高速である。このため、送電装置100から受電装置200への自動的な給電を、通信によるハンドシェイクの場合に比べて、高速に開始することができる。
【0033】
なお、図1に示した1次側検出回路120は、1次側コイル電圧の変化を検出する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、1次側コイル112を流れるコイル電流も1次側コイル電圧と同様に変化する。そこで、図3Aに示すように、電流センサ等の電流検出素子122を用いて、1次側コイル112に流れるコイル電流の変化を検出する構成としてもよい。
【0034】
この場合には、図3Bに示すように、1次側コイル112を流れるコイル電流IL1は、配置面上における1次側コイル112の中心軸CX1の位置Pc1に対して、受電側の2次側コイル212の中心軸CX2の位置が近くなると増加し、遠くなると減少する。1次側検出回路120において、コイル電流IL1が閾値Ith以上となったことを検出回路124が検出することにより、検出信号Sdを非アクティブ状態からアクティブ状態とすることができる。この形態の非接触給電システムであっても、送電装置100は、受電装置200との通信によらずに、受電装置200が受電可能な状態にあることを検出することができ、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことができる。
【0035】
また、図4Aに示すように、磁気センサやコイル等の磁束検出素子123を用いて、磁束増幅回路220によって変化する1次側コイル112の近傍における磁界(磁束)を検出する構成としてもよい。なお、図3Aから図4Bを用いて説明した1次側検出回路120における検出対象の変形は、以下の実施形態においても同様に適用可能である。
【0036】
この場合には、図4Bに示すように、1次側コイル112近傍の磁束ΦL1は、配置面上における1次側コイル112の中心軸CX1の位置Pc1に対して、2次側コイル212の中心軸CX2の位置が近くなると増加し、遠くなると減少する。1次側検出回路120において、磁束ΦL1が閾値Φth以上となったことを検出回路124が検出することにより、検出信号Sdを非アクティブ状態からアクティブ状態とすることができる。この形態の非接触給電システムであっても、送電装置100は、受電装置200との通信によらずに、受電装置200が受電可能な状態にあることを検出することができ、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことができる。
【0037】
B.第2実施形態:
第1実施形態では、1次側コンデンサ114に制御電圧Vcに応じてキャパシタンスが変化する可変コンデンサ素子を用いて、1次側コンデンサ114をインピーダンス可変素子とした構成を例に説明したが、図5に示す1次側コンデンサ114bをインピーダンス可変素子とする構成としてもよい。
【0038】
1次側コンデンサ114bは、第1コンデンサ114b1と、第1コンデンサ114b1に直列に接続されたスイッチ114b3と、第1コンデンサ114b1及びスイッチ114b3に並列に配置された第2コンデンサ114b2と、で構成される可変コンデンサのユニットである。第2コンデンサ114b2のキャパシタンスCsは、第1コンデンサ114b1のキャパシタンスClよりも小さい。なお、スイッチ114b3は、例えば、双方向スイッチ回路で構成される。
【0039】
第1コンデンサ114b1は、スイッチ114b3がオンの場合に第2コンデンサ114b2に並列に接続され、スイッチ114b3がオフの場合には解放される。従って、1次側コンデンサ114bのキャパシタンスC1は、スイッチ114b3がオフの場合には、第2コンデンサ114b2のキャパシタンスCsとなり、スイッチ114b3がオンの場合には、第1コンデンサ114b1のキャパシタンスClと第2コンデンサ114b2のキャパシタンスCsの和[Cl+Cs]となる。[Cl+Cs]は第1実施形態で説明した給電用のキャパシタンスに設定され、Csは待機用のキャパシタンスに設定されている。
【0040】
1次側検出回路120は、図1に示したC制御回路126に代えてS制御回路126bを備えている。S制御回路126bは、検出信号Sdがアクティブ状態においてスイッチ114b3をオンとし、検出信号Sdが非アクティブ状態においてスイッチ114b3をオフとするスイッチ信号Scを出力する。これにより、給電時には、1次側コンデンサ114bのキャパシタンスC1を給電用のキャパシタンスとして、1次側共振回路110の入力インピーダンスを小さくし、非給電時には、キャパシタンスC1を待機用のキャパシタンスとして、1次側共振回路110の入力インピーダンスを大きくすることができる。
【0041】
以上説明した第2実施形態の構成においても、第1実施形態で説明したように、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことができる。また、送電装置100から受電装置200への自動的な給電始を、通信によるハンドシェイクの場合に比べて、高速に開始することができる。
【0042】
C.第3実施形態:
第1実施形態及び第2実施形態では、1次側共振回路110を構成する1次側コンデンサ114,114bを可変インピーダンス素子とした構成(図1,5参照)を例に説明した。これに対して、例えば、図6に示すように、1次側コンデンサを一定のキャパシタンスの1次側コンデンサ114cとし、インピーダンス可変素子116を別途有する構成としてもよい。なお、1次側コンデンサ114cのキャパシタンスC1は、第1実施形態で説明した給電用のキャパシタンスに設定されている。
【0043】
インピーダンス可変素子116は、1次側コンデンサ114cに直列に接続されたインピーダンス可変用コンデンサ116c1と、インピーダンス可変用コンデンサ116c1の端子間を短絡するスイッチ116c2と、で構成されている。
【0044】
1次側検出回路120は、C制御回路126(図1参照)に代えて、S制御回路126cを備えている。S制御回路126cは、検出信号Sdがアクティブ状態においてスイッチ116c2をオンとし、検出信号Sdが非アクティブ状態においてスイッチ116c2をオフとするスイッチ信号Szを出力する。これにより、給電時には、インピーダンス可変用コンデンサ116c1を短絡して、インピーダンス可変素子116のインピーダンスをゼロとして、1次側共振回路110の入力インピーダンスに応じた給電電流を1次側コイル112に流すことができる。非給電時には、インピーダンス可変用コンデンサ116c1のキャパシタンスCsによりインピーダンス可変素子116のインピーダンスを大きくして、インピーダンス可変素子116のインピーダンスに応じた待機電流を1次側コイル112に流すことができる。
【0045】
以上説明した構成の第3実施形態においても、第1,第2実施形態で説明したように、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことができる。また、送電装置100から受電装置200への自動的な給電始を、通信によるハンドシェイクの場合に比べて、高速に開始することができる。
【0046】
なお、上記インピーダンス可変素子116は、インピーダンス可変用コンデンサ116c1を用いた構成を例に説明したが、スイッチ116c2がオフ時におけるインピーダンスを待機電流に対応する大きさとすることができる素子であれば、コンデンサに限定されるものではなく、例えば、抵抗やリアクトル等であってもよい。
【0047】
ところで、上記インピーダンス可変素子116のように、インピーダンス可変用コンデンサ116c1を用いた場合には、インピーダンス可変素子116と1次側コンデンサ114cの組み合わせは、第2実施形態の1次側コンデンサ114b(図5参照)と同様に、1次側コンデンサを構成する可変コンデンサのユニットとみなすことも可能である。
【0048】
D.第4実施形態:
図7に示す受電装置200のように、2次側共振回路210を磁束増幅回路として利用する構成とすることも可能である。なお、図7では、送電装置の図示が省略されているが、上記各実施形態で説明した構成の送電装置100(図1,3~6参照)が適用可能である。
【0049】
第4実施形態の受電装置200は、磁束増幅回路220(図1参照)に代えて、2次側共振回路210の出力端子間を接続するスイッチ216と、スイッチ216のオン/オフを制御するスイッチ信号Ssを出力するS制御回路252と、を有している。
【0050】
スイッチ216は、直列に接続された2次側コイル212及び2次側コンデンサ214を短絡して閉回路を構成する短絡スイッチ回路に相当する。スイッチ216は、例えば、双方向スイッチ回路で構成される。
【0051】
なお、2次側共振回路210の2次側コンデンサ214のキャパシタンスC2は、2次側コイル212の自己インダクタンスL2に対して、動作周波数f0が共振周波数となるように、C2=1/(ω0・L2)に設定されている。
【0052】
スイッチ216がオフとされている場合には、2次側共振回路210は送電装置100の1次側共振回路110から受電可能な状態となり、スイッチ216がオンとされている場合には、2次側共振回路210は、短絡共振回路で構成される磁束増幅回路として機能する。
【0053】
従って、例えば、受電装置200において、送電装置100からの給電を望む場合に、スイッチ216を一定期間オンとして、2次側共振回路210を磁束増幅回路として動作させればよい。この場合、送電装置100は、第1実施形態で説明したように、受電可能な状態にある受電装置200の存在を自動的に検出し、送電装置100を給電可能な状態で動作させることができる。これにより、第4実施形態においても、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことが可能である。また、第4実施形態では、専用の磁束増幅回路220(図1参照)を構成するための増幅用コイル222及び増幅用コンデンサ224を省略することが可能である。
【0054】
なお、上記説明では、S制御回路252によりスイッチ216を一定期間オンとするものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、短絡共振回路として動作させている2次側共振回路210の2次側コイル212を流れるコイル電流が増加して、送電装置100が給電可能な状態となったことを検出した場合にスイッチ216をオフとするようにしてもよい。
【0055】
E.第5実施形態:
図8に示す受電装置200のように、イミタンスフィルタ230を有する構成の場合には、スイッチ216(図7参照)ではなく、2次側共振回路210と、イミタンスフィルタ230を構成するインダクタ232及びコンデンサ236と、を短絡共振回路として動作させる構成としてもよい。ここで、イミタンスフィルタ230は、2次側共振回路210で受電した交流電力に含まれ得る高調波ノイズを除去するために、多く利用され得る構成である。なお、図8も、図7と同様に、送電装置の図示が省略されているが、上記各実施形態で説明した構成の送電装置100(図1,3~6参照)が適用可能である。
【0056】
第5実施形態の受電装置200は、負荷装置240として、受電回路としての整流回路242と、バッテリ244と、を有しており、2次側共振回路210と整流回路242との間に設けられたイミタンスフィルタ230を有している。イミタンスフィルタ230は、一対のインダクタ232,234及びコンデンサ236で構成されるT-LCL型のイミタンスフィルタである。インダクタ232,234のインダクタンスLe及びコンデンサ236のキャパシタンスCeは、動作周波数f0でイミタンス特性が得られるように、すなわち、ω0=1/(Le・Ce)となるように設定されている。
【0057】
なお、2次側共振回路210の2次側コンデンサ214のキャパシタンスC2は、2次側コイル212の自己インダクタンスL2に対して、動作周波数f0が共振周波数となるように、C2=1/(ω0・L2)に設定されている。
【0058】
ここで、整流回路242の出力端子間電圧は、ダイオードに順方向電圧が発生しないように、入力端子間電圧に比べて大きな電圧となっていることが要求される。これは、例えば、バッテリ244が、要求される電圧に対応する値以上の蓄電量を有していることにより実現される。この場合、整流回路242の入力インピーダンスは高インピーダンスとなり、実質的に、イミタンスフィルタ230の出力端子に整流回路242が接続されていない場合と等価な状態となる。この結果、2次側共振回路210の2次側コイル212及び2次側コンデンサ214と、イミタンスフィルタ230の入力側のインダクタ232及びコンデンサ236とは、動作周波数f0で共振する短絡共振回路となり、磁束増幅回路として機能する。
【0059】
従って、送電装置100から受電装置200に給電が行なわれない状態、例えば、送電装置100が待機状態の場合において、受電装置200の2次側共振回路210及びイミタンスフィルタ230で構成される短絡共振回路が磁束増幅回路として動作する。これにより、送電装置100は、第1実施形態で説明したように、受電可能な状態にある受電装置200の存在を自動的に検出し、送電装置100を給電可能な状態で動作させることができる。
【0060】
以上のように、第5実施形態においても、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことが可能である。また、第5実施形態のように、高調波ノイズを除去するために多く利用され得るイミタンスフィルタ230を備える場合には、専用の磁束増幅回路220(図1参照)を構成するための増幅用コイル222及び増幅用コンデンサ224を省略することが可能であり、第4実施形態のような短絡用のスイッチ216(図7参照)を省略することも可能である。
【0061】
なお、図9に示す受電装置200のように、整流回路242とバッテリ244との間にDCDCコンバータ246を備える場合がある。DCDCコンバータ246は、整流回路242の出力電圧を、バッテリ244が許容する入力電圧の範囲内の電圧に変換する。この場合、DCDCコンバータ246には、双方向DCDCコンバータを用いることが好ましい。そして、上記のように、2次側共振回路210及びイミタンスフィルタ230を短絡共振回路の磁束増幅回路として利用する場合には、DCDCコンバータ246を、バッテリの出力電圧を変換して、ダイオードに順方向電圧が発生しないような入力端子間電圧に比べて大きな電圧を、整流回路242に向けて出力するように動作させればよい。
【0062】
また、図10に示す受電装置200のように、2次側共振回路210の2次側コンデンサ214eを制御入力に応じてキャパシタンスが変化する可変コンデンサとし、C制御回路254によって2次側コンデンサ214eのキャパシタンスC2を制御する構成としてもよい。この場合、2次側共振回路210及びイミタンスフィルタ230を短絡共振回路で構成される磁束増幅回路とする場合には、2次側コンデンサ214eのキャパシタンスC2を、2次側共振回路210を受電可能な状態の場合に設定されるキャパシタンスから、C2=1/(ω0・L2)で表されるキャパシタンスに調整すればよい。このようにすれば、受電可能な状態の場合の2次側共振回路210のキャパシタンスC2が、C2=1/(ω0・L2)とは異なるキャパシタンスに設定される場合においても、2次側共振回路210及びイミタンスフィルタ230を短絡共振回路で構成される磁束増幅回路として利用することができる。逆に、キャパシタンスC2を、C2=1/(ω0・L2)で表されるキャパシタンスからずらすことで、2次側共振回路210及びイミタンスフィルタ230を短絡共振回路として動作させないようにすることができるので、受電装置200が給電を受けるか否かを受電装置200側で制御することが可能である。
【0063】
なお、2次側コンデンサとして利用する可変コンデンサとしては、1次側コンデンサ114b(図5参照)と同様に、複数のコンデンサで構成される可変コンデンサのユニットを利用するようにしてもよい。
【0064】
F.第6実施形態:
上記第1~第5実施形態では、短絡共振回路を利用して磁束増幅回路を構成する場合について説明したが、以下で説明するように、動作周波数f0で変化する磁束を発生する回路により磁束増幅回路を構成するようにしてもよい。
【0065】
図11に示す受電装置200は、磁束増幅回路220f及び2次側検出回路260を有している。なお、負荷装置240は、整流回路242及びバッテリ244を有する構成を例として示している。図11も、図7と同様に、送電装置の図示が省略されているが、上記各実施形態で説明した構成の送電装置100(図1,3~6参照)が適用可能である。
【0066】
2次側共振回路210の2次側コンデンサ214のキャパシタンスC2は、第1実施形態で説明したように、動作周波数f0の交流電力が1次側共振回路110と2次側共振回路210との間で効率良く送電されるように、種々の予め定めた設定条件に従って、2次側コイル212の自己インダクタンスL2や動作周波数f0(動作角周波数ω0)、結合係数knm等に基づいて設定されていればよい。
【0067】
磁束増幅回路220fは、増幅用コイル222と、パルス生成回路226と、直流電源228と、駆動回路229と、を有している。なお、直流電源228は、バッテリ244を利用して省略することも可能である。パルス生成回路226は、駆動回路229から供給される駆動信号に従って、直流電源228から出力される直流電圧を動作周波数f0に等しい周波数の交流電圧(パルス電圧)に変換し、増幅用コイル222に印加する回路である。駆動回路229は、後述する2次側検出回路260から供給する駆動制御信号Smdがアクティブの場合に、上記した駆動信号をパルス生成回路226に供給する。増幅用コイル222は、印加された交流電圧によって流れる交流電流に応じて磁束を発生する。
【0068】
2次側検出回路260は、磁束検出素子262と、検出回路264と、判定回路266と、を備えている。磁束検出素子262は、磁気センサやコイル等で構成される。検出回路264は、磁束検出素子262の出力値の変化から、送電装置100において待機電流によって発生する磁束を検出する。判定回路266は、検出回路264が検出した磁束の変化から送電装置100の有無を判定する。具体的には、判定回路266は、検出回路264が検出する磁束があらかじめ定めた一定値以上に増加した場合、給電実行の可能性がある送電装置100が存在する判定し、駆動制御信号Smdを一定期間アクティブ状態とする。これにより、上記したように、磁束増幅回路220fは、駆動回路229によって駆動されて、動作周波数f0で変化する磁束を発生する。この結果、送電装置100では、第1実施形態で説明したように、1次側コイル112の近傍の磁束(磁界)が増幅されることにより、受電装置200の存在を検出することができ、受電装置200への給電が可能な状態となる。
【0069】
以上説明した第6実施形態の構成においても、第1実施形態で説明したように、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことができる。また、送電装置100から受電装置200への自動的な給電始を、通信によるハンドシェイクの場合に比べて、高速に開始することができる。
【0070】
なお、第1実施形態のように短絡共振回路を磁束増幅回路として利用した構成の場合の磁束増幅回路による磁束によって発生する1次側コイルのコイル電圧の増幅率は、上記したように(k13・Q3)となる。この増幅率は、1次側コイル112と増幅用コイル222の結合係数k13及び短絡共振回路のQ値Q3に依存するため、制約がある。これに対して、第6実施形態の磁束増幅回路220fが発生する磁束による1次側コイル112のコイル電圧の増幅率は、パルス生成回路226から増幅用コイル222に供給される交流のコイル電流の大きさに依存して変化させることができる。このため、短絡共振回路による磁束増幅回路に比べて大幅にコイル電圧の増幅率を大きくすることが可能であり、検出の安定性をより高めることができる。なお、1次側コイルを流れるコイル電流を検出する場合や、1次側コイルの近傍の磁束(磁界)を検出する場合も同様である。
【0071】
なお、上記した2次側検出回路260は、磁束検出素子262の出力値の変化を検出回路264が検出する構成を例に説明したが、2次側コイル212の端子間電圧の変化を検出する構成や、2次側コイル212を流れる電流の変化を検出する構成としてもよい。
【0072】
また、上記説明では、駆動制御信号Smdを一定期間アクティブ状態とするものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、2次側共振回路210の2次側コイル212を流れるコイル電流や2次側コイル212の端子間電圧が、送電装置100が給電可能な状態となることによって増加したことを検出して、駆動制御信号Smdを非アクティブ状態とするようにしてもよい。
【0073】
パルス生成回路226が増幅用コイル222に交流電流を流す場合において、増幅用コイル222のアンペア回数(アンペアターンとも呼ばれる)が、2次側コイル212のアンペア回数以下であるように設定されていることが好ましい。具体的には、増幅用コイル222に流れる電流と、増幅用コイル222の巻き線の巻数との積が、給電時に2次側コイル212に流れる電流と、2次側コイル212の巻き線の巻数との積以下となるように設定されていることが好ましい。このように構成することにより、送電装置100から受電装置200への給電時の電磁両立性(EMC: electromagnetic compatibility)の規格値を満たすことにより、磁束増幅回路220fが動作する際の電磁両立性の規格値を満たすことができ、回路設計が容易となる。
【0074】
G.第7実施形態:
図12に示す受電装置200のように、2次側共振回路210と整流回路242gとバッテリ244とを磁束増幅回路として利用する構成としてもよい。なお、図12も、図11と同様に、送電装置の図示が省略されているが、上記各実施形態で説明した構成の送電装置100(図1,3~6参照)が適用可能である。
【0075】
2次側共振回路210の2次側コンデンサ214のキャパシタンスC2は、第6実施形態と同様に、動作周波数f0の交流電力が1次側共振回路110と2次側共振回路210との間で効率良く送電されるように、種々の予め定めた設定条件に従って、2次側コイル212の自己インダクタンスL2や動作周波数f0(動作角周波数ω0)、結合係数knm等に基づいて設定されていればよい。
【0076】
第7実施形態の受電装置200は、磁束増幅回路220f(図11参照)に代えて、同期整流回路を用いた整流回路242gを有している。
【0077】
整流回路242gは、駆動制御信号Smdが非アクティブ状態の場合、駆動回路229によって駆動され、本来の同期整流回路として動作する。これに対して、整流回路242gは、駆動制御信号Smdがアクティブ状態の場合、駆動回路229によって駆動され、パルス生成回路226(図11)と同様に動作し、2次側共振回路210、整流回路242g、及びバッテリ244が磁束増幅回路として動作する。
【0078】
従って、第7実施形態においても、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことが可能である。また、第7実施形態では、専用の磁束増幅回路220f(図11参照)を構成するための増幅用コイル222、パルス生成回路226及び直流電源228を省略することが可能である。
【0079】
H.第8実施形態:
図13に示す受電装置200のように、イミタンスフィルタ230を有する構成の場合には、2次側検出回路260の磁束検出素子262(図12参照)を省略して、イミタンスフィルタ230のコンデンサ236の端子間電圧を検出回路264で検出する構成としてもよい。また、図示は省略するが、イミタンスフィルタ230の出力端子間電圧、すなわち、整流回路242gの入力端子間電圧、を検出回路264で検出する構成としてもよい。
【0080】
イミタンスフィルタ230のコンデンサ236の端子間あるいはイミタンスフィルタ230の出力端子間には無効電流が流れないため、コンデンサ236の端子間電圧あるいはイミタンスフィルタの出力端子間電圧は、2次側コイル212の端子間電圧に比べて低い電圧しか生じない。従って、コンデンサ236の端子間電圧を検出対象とすれば低い電圧での検出が可能である。
【0081】
また、2次側コイル212の端子間電圧は、給電が実行されている場合、通常、数百Vから数kVの電圧が発生する可能性があるため、非常に高い電圧に対する保護等の対策が必要で、そのための回路が複雑である。
【0082】
また、負荷装置240が解放状態となった場合に、2次側共振回路210の出力端子間に過電圧が生じる可能性があるため、例えば、イミタンスフィルタ230の出力端子間を短絡して保護する必要がある。イミタンスフィルタの出力端子間電圧を検出対象とする場合には、ラッチ回路を用いる等の保護回路を用意する必要がある。一方、コンデンサ236の端子間電圧を検出対象とする場合には、イミタンスフィルタ230の出力端子間を短絡しても、送電装置100からの給電が停止しない鍵値、電圧が大幅に低下しないため、保護回路を簡素化することができる。
【0083】
上記構成において、2次側共振回路210の2次側コンデンサ214のキャパシタンスC2は、第7実施形態で説明したように、動作周波数f0の交流電力が1次側共振回路110と2次側共振回路210との間で効率良く送電されるように、種々の予め定めた設定条件に従って、2次側コイル212の自己インダクタンスL2や動作周波数f0(動作角周波数ω0)、結合係数knm等に基づいて設定されていればよい。
【0084】
なお、2次側コンデンサ214のキャパシタンスC2を、2次側コイル212の自己インダクタンスL2に対して、動作周波数f0が共振周波数となる、C2=1/(ω0・L2)に設定した場合には、待機電流によって1次側コイル112から発生する磁束によって2次側コイル212に生じるコイル電流が2次側共振回路210のQ値Q3倍に増幅される。このため、2次側コイル212の端子間電圧や、イミタンスフィルタ230のコンデンサ236の端子間電圧、イミタンスフィルタ230の出力端子間電圧、は増幅される。これにより、1次側コイル112が待機電流によって発生する磁束が微少でも、2次側検出回路260による検出能力を高めることができ、安定な検出が可能である。言い換えれば、送電装置100における待機電流を小さくすることができ、漏洩磁束や損失を低減することができる。
【0085】
そこで、例えば、2次側コンデンサ214を可変コンデンサとして、非給電時は、2次側コンデンサ214のキャパシタンスC2を、2次側コイル212の自己インダクタンスL2に対して、動作周波数f0が共振周波数となる、C2=1/(ω0・L2)に設定しておき、給電時には、給電用のキャパシタンスC2に設定するようにしてもよい。
【0086】
I.第9実施形態:
図14に示すように、第1実施形態の送電装置100に短絡共振回路140を備える構成とするようにしてもよい。
【0087】
なお、共振用コンデンサ144のキャパシタンC4は、1次側コンデンサ114のキャパシタンスC1と同様に可変としてもよい。このようにすれば、待機時に短絡共振回路140に流れる電流を小さくすることができるので、漏洩磁束や損失を低減することができる。
【0088】
第9実施形態においても、第1実施形態と同様に、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことが可能である。また、送電装置100から受電装置200への自動的な給電始を、通信によるハンドシェイクの場合に比べて、高速に開始することができる。
【0089】
J.第10実施形態:
上記実施形態の非接触給電システムでは、1組の1次側共振回路及び1次側検出回路を備える構成を例に説明したが、1次側共振回路及び1次側検出回路を1組の送電部として、複数の送電部を有する構成としてもよい。
【0090】
例えば、図15に示すように、1次側共振回路110及び1次側検出回路120(図1参照)を複数有する送電装置100Jと、2次側共振回路210、磁束増幅回路220、及び負荷装置240(図1参照)を有する受電装置200と、を備える非接触給電システムを、車両用非接触給電システムとして適用可能である。図15に示す車両用非接触給電システムは、車両走行路RSの走路に沿って敷設された送電装置100Jから車両VHに搭載された受電装置200に対して電力を供給することが可能な給電システムである。車両VHは、例えば、電気自動車やハイブリッド車等の電力を動力として利用する車両として構成される。図15において、x軸方向は車両走行路RSの車線に沿った車両VHの進行方向を示し、y軸方向は車両走行路RSの幅方向を示し、z軸方向は垂直上方向を示す。後述する他の図におけるx,y,z軸の方向も、図15と同じ方向を示している。
【0091】
送電装置100Jは、1次側共振回路110及び1次側検出回路120を1組の送電部として、複数の送電部を有している。また、送電装置100Jは、交流電源装置130Jを有している。交流電源装置130Jは、電源回路132と、各1次側共振回路110に電力を印加するための送電出力回路134とを、を有している。
【0092】
各1次側共振回路110の1次側コイル112(図1参照)は、車両走行路RSの走路に沿って順に敷設されている。
【0093】
電源回路132は、外部電源の交流電力を直流電力に変換する装置であり、送電出力回路134は、電源回路132から供給される直流電力を動作周波数の交流電力に変換するインバータ等を含む装置である。
【0094】
車両VHに搭載された受電装置200は、2次側共振回路210と、負荷装置240と、を備えている(図1参照)。負荷装置240としては、整流回路あるいは整流回路及びDCDCコンバータで構成される受電回路243と、バッテリ244が例示されている。
【0095】
2次側共振回路210の2次側コイル212は、車両VHの底部に、1次側共振回路110の1次側コイル112に対向するように設置されている。2次側共振回路210に誘導された電力は、受電回路243を介してバッテリ244に充電され、不図示のモータ等を駆動するために利用される。
【0096】
1次側検出回路120は、第1実施形態(図1参照)で説明したように、対応する1次側コイル112に対して給電の対象となる2次側コイル212の有無、すなわち、受電装置200が搭載された車両VHの有無を検出する。そして、1次側検出回路120は、車両VHの存在を検出した場合には、対応する1次側共振回路110の1次側コンデンサ114(不図示)のキャパシタンスを待機用のキャパシタンスから給電用のキャパシタンスとし給電可能な状態とする。これにより、車両VHの受電装置200への給電を実行する。また、1次側検出回路120は、車両VHの存在を検出しなかった場合には、対応する1次側共振回路110の1次側コンデンサ114(不図示)のキャパシタンスを待機用のキャパシタンスに戻す。
【0097】
この車両用非接触給電システムにおいても、上記実施形態の非接触給電システムと同様の効果を得ることができる。
【0098】
図16に示すように、複数の1次側コイル112P~112Rは、車両走行路RSの走路、すなわち車両VHの進行方向であるx軸方向に沿った直線状に連続的に配列されている。なお、図16ならびに後述する図17~19の例では、複数の1次側コイル112が互いに当接して配列されている例を用いて説明するが、必ずしも複数の1次側コイル112が互いに当接している必要は無く、複数の1次側コイル112が互いに離間されていてもよい。ただし、車両VHの走行中において複数の1次側コイル112から2次側コイル212への給電を円滑にするために、1次側コイル112は互いに当接していることが好ましく、離間する場合には、離間距離は、例えば、1次側コイル112の幅の半分(1次側コイル112が円形で有ればその半径)以下であることが好ましい。
【0099】
車両VHの走行により、1次側コイル112Pに、増幅用コイル222および2次側コイル212が近づくと、増幅用コイル222と1次側コイル112Pとの間に磁気的な結合が発生し、増幅用コイル222は、誘導された磁束G1を発生させる。なお、技術の理解を容易にするために、図16ならびに後述する図17,18において、磁束を発生する状態のコイルにハッチングを付した。磁束G1は、1次側コイル112Pを鎖交する磁束を増加させ、その結果、1次側コイル112Pに印加されるコイル電圧が増加する。1次側検出回路120は、検出回路124によってこの1次側コイル電圧VL1の増加を検出し、検出信号Sdがアクティブ状態となる。その結果、1次側コイル112Pと2次側コイル212との磁気的結合による給電が開始する。
【0100】
図17に示すように、1次側コイル112Pの磁束G2と2次側コイル212の磁束G3との磁気的結合による給電が開始した後には、1次側コイル112Pに隣接する1次側コイル112Qは、2次側コイル212からの磁束G3により、1次側コイル112Qにコイル電圧が印加される。検出回路124がこの1次側コイル112Qの電圧の増加を検出することにより、1次側コイル112Qと2次側コイル212との磁気的結合による給電が開始する。この形態の非接触給電システムによれば、1次側コイル112Pによる最初の給電が開始された後、1次側コイル112Pに隣接する1次側コイル112Qは、増幅用コイル222を用いることなく給電を開始することができる。
【0101】
ここで、本実施形態では、図17に示すように、2次側コイル212の進行方向(図17の例においてx軸方向)に沿った幅W21は、2次側コイル212の進行方向、すなわち車両走行路RSに沿った1次側コイル112P~112Rの幅W11よりも長くなるように設定されている。2次側コイル212の幅W21を1次側コイル112P~112Rの幅W11よりも長くすることにより、1次側コイル112と2次側コイル212との重複範囲が広くなる。そのため、隣接する1次側コイル112Qに対応する検出回路124が、1次側コイル112Pとの給電中に発生する2次側コイル212の磁束G3を検出しやすくなる。したがって、隣接する1次側コイル112Qを非給電時から給電時へと早期に移行させることができる。
【0102】
複数の1次側コイル112の配列は、一方向に沿った直線状には限定されず、例えば、図18に示すように、2次側コイル212の進行方向(図18の例においてx軸方向)と、2次側コイル212の進行方向と交差する交差方向(図18の例においてy軸方向)とを含む面状で設定されてもよい。この場合において、2次側コイル212の幅は、x軸方向に加えてy軸方向においても1次側コイル112よりも長く設定されることが好ましい。図18の例では、y軸方向に沿った2次側コイル212の幅W22は、y軸方向に沿った1次側コイル112の幅W12よりも長くなるように設定されている。このように構成された非接触給電システムによれば、面状に配列された1次側コイル112上で2次側コイル212の進行方向が切り替わる場合であっても、異なる進行方向ごとに隣接する1次側コイル112を早期に非給電時から給電時へと移行させることができる。
【0103】
また、上記の車両用非接触給電システムは、第1実施形態の非接触給電システムを利用して説明したが、これに限定されるものではなく、上記した他の実施形態の非接触給電システムを車両用非接触給電システムとして適用可能である。
【0104】
K.第11実施形態:
上記第6実施形態では、図11に示すように、受電装置200が動作周波数f0で変化する磁束を発生する磁束増幅回路220fと、送電装置100における待機電流によって発生する磁束の変化から送電装置100の有無を判定する2次側検出回路260とを備える例を示した。これに対して、受電装置200は、図19に示すように、磁束増幅回路220fに代えて起動回路220kを備えてよく、2次側検出回路260に代えて送電装置検出部260kを備えてよい。本実施形態の受電装置200は、送電側に設けられる送電装置被検出部150を検出することにより、送電装置100の有無を判定する。
【0105】
起動回路220kの回路構成は、増幅用コイル222に代えて機能が異なる起動用コイル222kを備える点以外の点は、第6実施形態で示した磁束増幅回路220fの回路構成と同様である。送電装置検出部260kは、1次側コイル112または1次側コイル112の近傍に設けられる送電装置被検出部150を検出する。送電装置100の構成は、さらに送電装置被検出部150を備える点以外は、第6実施形態で示した送電装置100の構成と同様である。
【0106】
本実施形態では、送電装置被検出部150は、車両走行路RS表面上に表示される二次元コードであり、送電装置検出部260kは、二次元コードを読み取り可能な二次元コードリーダである。二次元コードとしては、例えば、QRコード(登録商標)、マイクロQRコード、iQRコード、PDF417などの種々の二次元コードを用いることができる。例えば、送電装置被検出部150がQRコードである場合には、送電装置検出部260kでは、QRコードを検出可能な撮像部としての検出部264kがQRコードを検出し、検出部264kによる検出結果を用いて判定回路266が送電装置100の有無を判定する。このように構成した場合でも、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことができる。なお、送電装置被検出部150は、車両走行路RS上に露出している必要はなく、送電装置検出部260kが認識可能であることを前提に、車両走行路RS内に配置されてもよい。
【0107】
判定回路266が送電装置100有りと判定すると、駆動制御信号Smdをアクティブ状態とし、駆動回路229によって起動回路220kが駆動される。起動回路220kでは、パルス生成回路226から起動用コイル222fに交流電流が供給され、起動用コイル222kは動作周波数f0で変化する磁束を発生させる。この結果、第1実施形態で説明したように、起動用コイル222kの磁束は、送電装置100の1次側コイル112を鎖交する磁束を増加させる。
【0108】
1次側検出回路120は、検出回路124によって1次側コイル電圧VL1の閾値Vth以上への増加を検出し、検出信号Sdは非アクティブ状態からアクティブ状態とされる。検出信号Sdがアクティブ状態になると、C制御回路126によって1次側コンデンサ114のキャパシタンスC1が給電時の状態に設定され、受電装置200への給電が可能な状態になる。なお、本実施形態では、検出信号Sdの状態が非アクティブ状態の場合には、1次側コイル112の待機電流は流されなくてもよい。したがって、本実施形態においても、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことが可能である。また、本実施形態によれば、送電装置100に待機電流を流すことなく、受電装置200が送電装置100を検出することができる。なお、本実施形態において、1次側検出回路120が1次側コイル電圧の変化を検出する例を示したが、これに限定されず、1次側コイル112に流れるコイル電流の変化を検出する構成としてもよく、磁束増幅回路220によって変化する1次側コイル112の近傍における磁界(磁束)を検出する構成としてもよい。
【0109】
本実施形態において、1次側共振回路110は、さらに、1次側共振回路110の入力インピーダンスを可変にするためのインピーダンス可変素子を有してもよい。インピーダンス可変素子は、1次側検出回路120の検出値が一定値以上である場合に、入力インピーダンスを小さくして給電を開始してもよい。さらに待機電流を利用することにより、受電装置200がより容易に送電装置100を検出することができる。
【0110】
本実施形態において、制御電圧に応じてキャパシタンスが変化する1次側コンデンサ114を可変コンデンサ素子として用いられる例を示したが、図5に示す1次側コンデンサ114bをインピーダンス可変素子とする構成としてもよい。また、1次側コンデンサを一定のキャパシタンスの1次側コンデンサ114cとし、インピーダンス可変素子116を別途有してもよい。
【0111】
本実施形態では、起動用コイル222kと、パルス生成回路226および直流電源228を備える起動回路220kを用いる例を示したが、図20に示すように、2次側コイル212を起動用コイル222kとして利用し、パルス生成回路226および直流電源228に代えて、負荷装置240に含まれる整流回路242gおよびバッテリ244を起動回路220kとして利用してもよい。受電装置200の構成は、2次側検出回路260に代えて送電装置検出部260kが用いられる点以外は、第7実施形態で示した受電装置200の構成と同様であるので説明を省略する。本実施形態によれば、起動用コイル222k、パルス生成回路226及び直流電源228を省略し、受電装置200を簡素化することができる。
【0112】
本実施形態において、起動用コイル222kに流れる電流と、起動用コイル222kの巻き線の巻数との積が、給電時に2次側コイル212に流れる電流と、2次側コイル212の巻き線の巻数との積以下となるように設定されていることが好ましい。このように構成することにより、送電装置100から受電装置200への給電時の電磁両立性(EMC: electromagnetic compatibility)の規格値を満たすことにより、起動回路220kが動作する際の電磁両立性の規格値を満たすことができ、回路設計が容易となる。
【0113】
L.他の実施形態:
(L1)上記第11実施形態では、送電装置被検出部150がRS表面上に表示される二次元コードであり、送電装置検出部260kが二次元コードを読み取り可能な二次元コードリーダである例を示した。これに対して、送電装置被検出部150は、磁気マーカであってもよく、送電装置検出部260kは、例えば、ホールセンサや検出用のコイルなど、磁気マーカから発生する磁束を検出可能な磁気マーカ検出器を含むようにしてもよい。送電装置検出部260kでは、磁気マーカ検出器としての検出部264kが磁気マーカを検出し、判定回路266が検出部264kによる検出結果を用いて送電装置100の有無を判定する。このように構成した場合でも、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことができる。
【0114】
また、送電装置被検出部150は、RFID(radio frequency identifier)に用いられるRFタグ、ならびに近距離無線通信(NFC: Near field communication)に用いられるNFCタグやICチップであってもよい。RFタグは、電子タグ、ICタグ、無線タグ、RFIDタグなどとも呼ばれることがある。送電装置被検出部150がRFタグである場合には、送電装置検出部260kは、RFタグに付与された情報を無線通信により取得可能なRFリーダを採用することができる。RFリーダには、RFリーダライタ、RFスキャナなど、RFタグを検出可能な種々の装置が含まれる。送電装置被検出部150がNFCタグやICチップである場合には、送電装置検出部260kは、NFCタグやICチップに付与された情報を無線通信により取得可能なNFCリーダを採用することができる。NFCリーダには、NFCリーダライタ、NFCスキャナなど、NFCタグを検出可能な種々の装置が含まれる。送電装置検出部260kでは、RFリーダあるいはNFCリーダとしての検出部264kがRFタグあるいはNFCタグを検出し、判定回路266が検出部264kによる検出結果を用いて送電装置100の有無を判定する。このように構成した場合でも、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことができる。
【0115】
また、送電装置被検出部150には、画像検出に適用可能な送電装置100の一部分が用いられてもよい。画像検出に適用可能な送電装置100の一部分としては、例えば、1次側コイル112の外形、1次側共振回路110を含む車両走行路RS用のタイル、送電装置100の表面上に付された検出用の図形・幾何学模様などが挙げられる。この場合には、送電装置検出部260kは、例えば、送電装置100の当該部分を撮像可能なカメラを含むようにしてもよい。このように構成することにより、送電装置100の部品点数を増加することなく、受電装置200の検出部264kが送電装置100を検出することができる。
【0116】
この場合には、送電装置検出部260kでは、カメラとしての検出部264kが送電装置100の当該部分を検出し、検出部264kによる検出結果を用いて判定回路266が送電装置100の有無を判定する。このように構成した場合でも、送電装置100と受電装置200との間で通信によるハンドシェイクを行なうことなく、自動的に送電装置100から受電装置200への給電を行なうことができる。
【0117】
(L2)上記第9実施形態では、図14に示すように、第1実施形態の送電装置100には、さらに、共振用コイル142および共振用コンデンサ144を有する短絡共振回路140が、1次側共振回路110に対して独立して備えられる例を示した。これに対して、短絡共振回路140に代えて、図21に示すように、共振用コイル142が1次側共振回路110の1次側コイル112に対して直列に接続され、共振用コンデンサ144が共振用コイル142に対して並列に接続された接続型共振回路140Lが備えられてもよい。なお、共振用コンデンサ144は、可変コンデンサでなくてもよい。
【0118】
この場合において、検出回路124は、1次側コイル112の端子間に発生する1次側コイル電圧VL1、あるいは、共振用コイル142の端子間に発生するコイル電圧VL4の増加の有無を検出することで、受電装置200の有無を検出することができる。なお、検出回路124は、1次側コイル電圧VL1に代えて、1次側コイル112に流れるコイル電流の変化を検出してもよく、コイル電圧VL4に代えて、共振用コイル142に流れるコイル電流の変化を検出してもよい。また、1次側コイル電圧VL1に代えて、磁気センサやコイル等の磁束検出素子123を用いて、1次側コイル112の近傍における磁界(磁束)の変化を検出してもよく、また、コイル電圧VL4に代えて、共振用コイル142の近傍における磁界(磁束)の変化を検出してもよい。
【0119】
(L3)本開示において、「共振状態」とは、特定の周波数において、交流電源装置130等の電源から出力される電圧、電流よりも、1次側コイル112もしくは2次側コイル212で発生する電圧、電流が大きくなる状態を意味する。もしくは、電源の皮相電力よりも、1次側コイル112もしくは2次側コイル212で発生する皮相電力の方が大きくなる状態を意味する。もしくは、電源から出力される電圧、電流の位相差よりも1次側コイル112もしくは2次側コイル212で発生する電圧、電流の位相差が小さくなる状態、さらには、1次側コイル112もしくは2次側コイル212の電圧、電流の位相差がゼロになることを意味する。もしくは、1次側コイル112と直列に接続された1次側コンデンサ114に、特定の周波数で互いに逆向きになる電圧が発生して、電源側から見たときのインピーダンスの虚数成分が低下する状態を意味する。さらには、1次側コイル112の電圧と、1次側コンデンサ114の電圧とが相殺し、電源側から見たときのインピーダンスの虚数成分がゼロとなってもよい。この場合における「特定の周波数」とは、電源の交流電圧を印加するために必要なインバータの駆動周波数である。
【0120】
(L4)本開示において、「非共振状態」とは、受電コイルが存在しない状態に等しい状態であり、安全磁束密度以下となった状態を意味する。具体的には、非共振状態とは、人に影響を与えない人体暴露の基準値(ICNIRPなど)以下の状態である。非共振状態において、受電コイルが存在しない場合に、1次側コイル112から発せられる磁束が大きくなり、かつ受電側が存在しない場合には、磁束が放射状に発生して、安全な基準値を超える領域が増えることがある。よって、給電対象としての受電装置200が存在するときだけ、共振状態とすることで安全に運用できる。
【0121】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0122】
100,100J…送電装置、110…1次側共振回路、112…1次側コイル、114,114b,114c…1次側コンデンサ、120…1次側検出回路、130,130J…交流電源装置、150…送電装置被検出部、200…受電装置、210…2次側共振回路、212…2次側コイル、214,214e…2次側コンデンサ、220,220f…磁束増幅回路、220k…起動回路、222k…起動用コイル、226…パルス生成回路、240…負荷装置、260…2次側検出回路、260k…送電装置検出部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21