(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池負極、リチウムイオン二次電池負極の製造方法およびリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240423BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240423BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240423BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M4/64 A
(21)【出願番号】P 2022063999
(22)【出願日】2022-04-07
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】202110467948.8
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲麗▼
(72)【発明者】
【氏名】周 燕
(72)【発明者】
【氏名】李 于利
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0045427(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0403230(US,A1)
【文献】特開2011-029075(JP,A)
【文献】特開2011-199210(JP,A)
【文献】特開2008-098151(JP,A)
【文献】特開2018-063755(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0268110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-4/62
H01M 4/64-4/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備リチウム化材料を導電材料にドープして溶媒に分散させ、導電材料スラリーを形成するステップS1と、
前記導電材料スラリーを負極集電体に塗布して硬化させ、前記負極集電体に予備リチウム化導電層を形成するステップS2と、
前記予備リチウム化導電層に負極活物質スラリーを塗布して硬化させ、リチウムイオン二次電池負極を形成するステップS3と
を含む、リチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項2】
前記予備リチウム化材料は、不動態化リチウム粉末を含む、
請求項
1に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項3】
前記予備リチウム化導電層の厚さは、1μm~50μmの範囲である、
請求項
1記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項4】
前記予備リチウム化導電層の厚さは、1μm~20μmの範囲である、
請求項
3に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項5】
前記予備リチウム化導電層の厚さは、1μm~10μmの範囲である、
請求項
4に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項6】
前記ステップS1は、-20℃~40℃の温度範囲で、真空、乾燥条件または露点≦-40℃の条件で、前記予備リチウム化材料を前記導電材料にドープし、5rpm~2000rpmの攪拌速度で2分間~2880分間攪拌して溶媒に分散させることを含む、
請求項
1に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項7】
90℃~120℃の温度で前記導電材料スラリーを硬化させる、
請求項
1に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項8】
前記予備リチウム化導電層の総重量に基づいて、前記予備リチウム化材料の量は、10wt%~50wt%の範囲である、
請求項
1に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項9】
導電材料スラリーを負極集電体に塗布して硬化させ、前記負極集電体に導電層を形成するステップS1と、
予備リチウム化材料を使用して前記導電層を予備リチウム化し、予備リチウム化導電層を形成するステップS2と、
前記予備リチウム化導電層に負極活物質スラリーを塗布して硬化させ、リチウムイオン二次電池負極を形成するステップS3と
を含む、リチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項10】
ステップS2において、前記予備リチウム化は、
リチウム箔またはリチウム粉末を前記導電層に積層すること、
溶融リチウムを前記導電層に塗布して冷却し、リチウム層を形成すること、
リチウムを前記負極集電体および前記導電層の表面にめっきすること
のいずれか1種を含む、請求項
9に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項11】
前記予備リチウム化導電層の厚さは、1μm~50μmの範囲である、
請求項
9に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項12】
前記予備リチウム化導電層の厚さは、1μm~20μmの範囲である、
請求項
11に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項13】
前記予備リチウム化導電層の厚さは、1μm~10μmの範囲である、
請求項
12に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項14】
-50℃~40℃の温度範囲で、真空、乾燥条件または露点≦-40℃の条件で、リチ
ウム箔またはリチウム粉末を前記導電層に積層する、
請求項
10に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項15】
180℃~400℃の温度で、溶融リチウムを前記導電層に塗布し、-20℃~40℃
の温度で冷却する、
請求項
10に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【請求項16】
前記負極集電体および前記導電層の表面をリチウム塩含有溶液に浸し、0ボルトより大
きく1.5ボルト以下の電圧で1分間~600分間めっきする、
請求項
10に記載のリチウムイオン二次電池負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池負極の分野に関し、具体的には、リチウムイオン二次電池負極、リチウムイオン二次電池負極の製造方法およびリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子技術の発展に伴い、電子機器のエネルギー供給を支える電池デバイスの需要が高まっている。現在、より多くの電力を蓄え、より高い電力を供給できる電池が求められている。従来の鉛蓄電池やニッケル水素電池では、新型電子製品の要求に応えられない。そのため、リチウム電池がより広く注目されている。リチウム電池の開発過程において、容量や性能をより効果的に向上させることができた。
【0003】
しかし、リチウム金属は化学的に活性なため、リチウムイオン二次電池の使用中、充電過程において集電体にリチウムイオンが不均一に析出してリチウムデンドライトが発生したり、充放電過程においてリチウムイオンと電解液との不所望な反応によるリチウムロスが発生するなどの問題が生じることがある。これらの問題を解決するために、従来技術では通常、負極集電体を直接予備リチウム化する方法が採用される。しかし、負極集電体を直接予備リチウム化する方法では、負極片の付着力が低下し、初回放電容量が低下するなどのデメリットがある。そのため、リチウムイオン二次電池負極を予備リチウム化する新型方法と、それによって形成された負極およびリチウムイオン二次電池の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、従来技術に存在した極片の付着力低下や初回放電容量が低いなどの問題を解決するためのリチウムイオン二次電池負極、リチウムイオン二次電池負極の製造方法およびリチウムイオン二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を実現するために、本発明の一態様によれば、負極活物質と、予備リチウム化導電層と、負極集電体とを含むリチウムイオン二次電池負極を提供する。
【0006】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池負極において、予備リチウム化導電層の厚さは、1μm~50μm、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは1μm~10μmの範囲である。
【0007】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池負極において、予備リチウム化導電層は、予備リチウム化材料がドープされた導電材料、または予備リチウム化材料層と導電材料層との積層体であり、予備リチウム化導電層の総重量に基づいて、予備リチウム化材料の量は、10wt%~50wt%の範囲である。
【0008】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池負極において、導電材料は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、気相成長炭素繊維、ケッチェンブラック、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリジアセチレンまたはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0009】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池負極において、負極集電体は、銅箔、銅メッシュ、発泡銅、ニッケル箔、ニッケルメッシュ、発泡ニッケル、ステンレス鋼箔、ステンレス鋼メッシュ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0010】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池負極において、予備リチウム化導電層は、予備リチウム化材料層と導電材料層の積層体であり、予備リチウム化導電層は、リチウム拡散領域を含み、リチウム拡散領域の厚さは、予備リチウム化導電層の総厚さの1%~100%である。
【0011】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池負極において、負極集電体は、予備リチウム化負極集電体である。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、予備リチウム化材料を導電材料にドープして溶媒に分散させ、導電材料スラリーを形成するステップS1と、導電材料スラリーを負極集電体に塗布して硬化させ、負極集電体に予備リチウム化導電層を形成するステップS2と、予備リチウム化導電層に負極活物質スラリーを塗布して硬化させ、リチウムイオン二次電池負極を形成するステップS3とを含むリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。
【0013】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法において、予備リチウム化材料は、不動態化リチウム粉末を含む。
【0014】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法において、予備リチウム化導電層の厚さは、1μm~50μm、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは1μm~10μmの範囲である。
【0015】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法において、ステップS1は、-20℃~40℃の温度範囲で、真空、乾燥条件または露点≦-40℃の条件で、予備リチウム化材料を導電材料にドープし、5rpm~2000rpmの攪拌速度で2分間~2880分間攪拌して溶媒に分散させることを含む。
【0016】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法において、90℃~120℃の温度で導電材料スラリーを硬化させる。
【0017】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法において、予備リチウム化導電層の総重量に基づいて、予備リチウム化材料の量は、10wt%~50wt%の範囲である。
【0018】
本発明のさらなる態様によれば、導電材料スラリーを負極集電体に塗布して硬化させ、負極集電体に導電層を形成するステップS1と、予備リチウム化材料を使用して導電層を予備リチウム化し、予備リチウム化導電層を形成するステップS2と、予備リチウム化導電層に負極活物質スラリーを塗布して硬化させ、リチウムイオン二次電池負極を形成するステップS3とを含むリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。
【0019】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法において、ステップS2において、予備リチウム化は、リチウム箔またはリチウム粉末を導電層に積層すること、溶融リチウムを導電層に塗布して冷却し、リチウム層を形成すること、リチウムを負極集電体および導電層の表面にめっきすることのいずれか1種を含む。
【0020】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法において、予備リチウム化導電層の厚さは、1μm~50μm、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは1μm~10μmの範囲である。
【0021】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法において、-50℃~40℃の温度範囲で、真空、乾燥条件または露点≦-40℃の条件で、リチウム箔またはリチウム粉末を導電層に積層する。
【0022】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法において、180℃~400℃の温度で、溶融リチウムを導電層に塗布し、-20℃~40℃の温度で冷却する。
【0023】
さらに、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法において、負極集電体および導電層の表面をリチウム塩含有溶液に浸し、0ボルトより大きく1.5ボルト以下の電圧で1分間~600分間めっきする。
【0024】
本発明のさらなる態様によれば、正極と、負極と、セパレータと、非水電解液とを含み、その負極は本発明によるリチウムイオン二次電池負極または本発明によるリチウムイオン二次電池負極の製造方法で製造されたリチウムイオン二次電池負極であるリチウムイオン二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のリチウムイオン二次電池負極、リチウムイオン二次電池負極の製造方法およびリチウムイオン二次電池を応用することにより、優れた電気化学特性、特に優れた初回放電容量および初回効率、並びに優れた負極片の結合力が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明における各実施例および実施形態の各特徴は、矛盾がない場合、互いに組み合わせることができることに留意されたい。以下、実施例を結合して本発明を詳細に説明する。
【0027】
背景技術に示されるように、従来技術では、負極集電体の予備リチウム化操作が用いられるが、この技術的解決策では、負極片の悪い付着力と低い初回放電容量の問題を有効に解決できないため、従来技術における予備リチウム化方法を改善する必要性が依然として存在する。従来技術の問題に対して、本発明の一つの代表的な実施形態によれば、負極活物質と、予備リチウム化導電層と、負極集電体とを含むリチウムイオン二次電池負極を提供する。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、リチウムイオン二次電池負極は、負極活物質と負極集電体との間に配置された予備リチウム化導電層を含む。従来技術における予備リチウム化方法は、通常、負極集電体を直接予備リチウム化する操作を行い、リチウム層が挿入された負極片を形成するものである。当該リチウム層は、負極集電体および導電層との粘着性が良くないため、得られる負極片の剥離強度を不利に低下させることになる。
【0029】
本発明のリチウムイオン二次電池負極を使用する場合に、従来技術の方法とは異なり、導電層が予備リチウム化された方式を採用しているので、負極活物質層と負極集電体との間に、粘着作用を発揮できる導電層のみを有し、従って、負極片の良好な付着が達成される。また、負極集電体のみが予備リチウム化されている従来技術において、リチウム層は、負極集電体と導電層との間に単独な層として存在するため、導電層の導電効率を効果的に高めることができず、電解液中のリチウムイオンが負極活物質層に埋め込まれるためには、依然として導電層を通過させる必要がある。したがって、従来技術における方法では、リチウムイオン二次電池の電気的性能を向上させることはできない。
【0030】
本発明のリチウムイオン二次電池負極は、従来技術の方法とは異なり、導電層を予備リチウム化する方式を採用する。導電層の予備リチウム化後に、導電層に存在するリチウム元素は、導電層の導電率を効果的に高めることができ、それにより、このように形成されたリチウムイオン二次電池の初回放電容量および初回サイクル効率を高める。負極集電体の導電層は負極の内部抵抗を低減し、予備リチウム化導電層のリチウムは、リチウムイオン電池の使用中の負極のリチウムイオン損失を補償することがで、電池の初回効率を効果的に上げる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、予備リチウム化導電層の厚さは、1μm~50μm、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは1μm~10μmの範囲である。予備リチウム化導電層の厚さが1μm未満の場合に、予備リチウム化の効果が低く、導電層の導電率を効果的に改善することができず、予備リチウム化導電層の厚さが50μmを超える場合に、導電層が厚すぎるため、リチウムイオンの浸透が妨げられ、抵抗が不利に増加し、電池のエネルギー密度が低下し、リチウムイオン二次電池の電気的性能が低下する可能性がある。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、異なる実施例では、予備リチウム化導電層の厚みの下限は、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μmまたは10μmであってもよく、予備リチウム化導電層の厚みの上限は、50μm、45μm、40μm、35μm、30μm、25μm、20μmまたは15μmであってもよい。具体的には、予備リチウム化導電層の厚みは、1μm~50μm、1μm~40μm、1μm~30μm、1μm~20μm、1μm~10μm、10μm~20μm、10μm~30μm、10μm~40μm、10μm~50μm、2μm~50μm、2μm~45μm、3μm~40μm、4μm~35μm、5μm~30μm、6μm~25μm、7μm~20μm、8μm~15μmまたは9μm~10μmの範囲であってもよい。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、予備リチウム化導電層は、予備リチウム化材料がドープされた導電材料、または予備リチウム化材料層と導電材料層との積層体であり、予備リチウム化導電層の総重量に基づいて、予備リチウム化材料の量は10wt%~50wt%の範囲である。いくつかの実施形態において、予備リチウム化導電層は、予備リチウム化材料がドープされた導電材料であり、予備リチウム化材料は、不動態化リチウム粉末、リチウムの酸化物、リチウムのケイ化物、リチウムの窒化物およびリチウム元素を供給可能な任意のリチウム含有化合物であってもよい。予備リチウム化材料がドープされた導電材料を使用した実施形態において、予備リチウム化材料は、導電材料と良好に混合し、十分に混合した均質な形態になる。予備リチウム化材料は、予備リチウム化導電層において導電層の導電性を均一に改善し、それによって、形成されたリチウムイオン二次電池の電気的特性を効果的に高める。他のいくつかの実施形態において、予備リチウム化導電層は、予備リチウム化材料層と導電材料層との積層体である。これらの実施形態において、予備リチウム化材料は、リチウム箔、リチウムインゴット、およびリチウムの酸化物、リチウムのケイ化物、リチウムの窒化物の層状体を含む層状である。積層体において、予備リチウム化材料層と導電材料層が順次積層され、密着した積層体を形成する。本発明のいくつかの実施形態において、積層体は、一つの予備リチウム化材料層および一つの導電材料層を含むことができる。他のいくつかの実施形態において、積層体は、互いに積層した複数の予備リチウム化材料層および導電材料層を含むことができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態において、導電材料は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、気相成長炭素繊維、ケッチェンブラック、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリジアセチレンまたはそれらの任意の組み合わせを含む。また、当該炭素材料以外に、導電性を有する材料であれば、任意の金属材料または導電性ポリマーを使用することができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、負極集電体は、銅箔、銅メッシュ、発泡銅、ニッケル箔、ニッケルメッシュ、発泡ニッケル、ステンレス鋼箔、ステンレス鋼メッシュ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、予備リチウム化導電層は、予備リチウム化材料層と導電材料層の積層体であり、予備リチウム化導電層はリチウム拡散領域を含み、リチウム拡散領域の厚さは予備リチウム化導電層の総厚さの1%~100%である。本発明のいくつかの実施形態において、予備リチウム化材料層と導電材料層の積層体において、予備リチウム化材料は、完全にまたは部分的に導電材料層に拡散してもよい。異なる実施例については、リチウム拡散領域の厚さは、例えば、予備リチウム化導電層の総厚さの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。異なる実施例において、予備リチウム化材料および導電層材料については、それに応じて異なる拡散度を選択することができる。最も好ましくは、予備リチウム化材料と導電層材料は完全に相互拡散され、即ち、リチウム拡散領域は、予備リチウム化導電層の総厚さの100%である。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態において、負極集電体は、予備リチウム化負極集電体である。予備リチウム化材料を用いた導電層の予備リチウム化に基づき、本発明のリチウムイオン二次電池負極における負極集電体は、予備リチウム化されたものであってもよい。予備リチウム化導電層が予備リチウム化材料をドープした導電材料である実施形態では、より多くの予備リチウム化材料がドープされると、負極集電体に接触した予備リチウム化材料が負極集電体に浸透し、それに応じて負集電体が予備リチウム化される。他のいくつかの実施形態において、予備リチウム化材料がドープされた導電材料を使用した上に、予備リチウム化材料を使用して負極集電体をさらに予備リチウム化することで、予備リチウム化導電層中の予備リチウム化材料を減らすことなく負極集電体をさらに予備リチウム化することができる。予備リチウム化材料層が導電材料層と積層体を形成する実施形態では、予備リチウム化材料層は、導電層と負極集電体との間に形成されていてもよい。この場合、リチウム拡散領域を形成するために導電層と相互浸透していない予備リチウム化材料層は、負極集電体と相互浸透することができ、導電層と負極集電体の同時予備リチウム化を達成することができる。さらに、さらなる実施形態において、予備リチウム化材料層と導電材料層とが完全に相互浸透した積層体(リチウム拡散領域の厚さは予備リチウム化導電層の総厚さの100%である)を形成する場合に、予備リチウム化導電層と負極集電体の間にさらに予備リチウム化材料層を追加し、負極集電体と導電層とを同時に予備リチウム化することが実現される。導電層と負極集電体とを同時に予備リチウム化することが実現された場合に、本発明の負極を含むリチウムイオン二次電池は、より優れた電気的特性を有する。
【0038】
本発明のさらなる代表的な実施形態によれば、リチウムイオン二次電池負極の製造方法を提供し、当該方法は、予備リチウム化材料を導電材料にドープして溶媒に分散させ、導電材料スラリーを形成するステップS1と、導電材料スラリーを負極集電体に塗布して硬化させ、負極集電体に予備リチウム化導電層を形成するステップS2と、予備リチウム化導電層に負極活物質スラリーを塗布して硬化させ、リチウムイオン二次電池負極を形成するステップS3とを含む。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態において、まず、予備リチウム化材料を導電材料のスラリーにドープして、導電材料スラリーを形成する。導電材料は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、気相成長炭素繊維、ケッチェンブラック、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリジアセチレンまたはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。形成された導電スラリーにおいては、予備リチウム化材料と導電材料との混合が均質相と呼ばれる。導電材料のスラリーは、導電材料と溶媒との均一な混合物であり、溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、リン酸トリエチル(TEP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。また、好ましい実施形態において、導電材料のスラリーは、接着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)をさらに含むことができる。形成された導電材料スラリーの固形分は、10%~20%の範囲である。そして、形成された導電材料スラリーを、負極集電体の一側または両側に塗布し、それを加熱して硬化させ、予備リチウム化導電層を形成する。本発明において、使用された負極集電体は、銅箔、銅メッシュ、発泡銅、ニッケル箔、ニッケルメッシュ、発泡ニッケル、ステンレス鋼箔、ステンレス鋼メッシュ、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。その後、負極活物質と接着剤を混合して負極混合物を調製し、この負極混合物を溶媒に分散させて負極活物質スラリーを調製する。その中、負極活物質スラリー用溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、リン酸トリエチル(TEP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。形成された負極活物質スラリーを予備リチウム化導電層に塗布し、90℃~120℃の温度で乾燥・硬化させ、本発明のリチウムイオン二次電池負極を得る。本発明の方法で製造されたリチウムイオン二次電池負極は、予備リチウム化導電層を含んでおり、そのリチウム含有量が高いため、優れた導電性を有し、それによって導電層の導電率が効果的に向上し、結果としてリチウムイオン二次電池の初回放電容量および初回サイクル効率を向上させることができる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態において、予備リチウム化材料は、不動態化リチウム粉末を含む。当該不動態化リチウム粉末は、任意の市販の不動態化リチウム粉末、例えば、FMC Lithium製造業者からのバッチ番号がSLMPTMである不動態化リチウム粉末であってもよい。本発明において、不動態化リチウム粉末の純度は、97.5wt%~100wt%の範囲である。形成した予備リチウム化導電層の導電率は、より純粋なリチウム粉末が予備リチウム化操作に使用されるため、形成された予備リチウム化導電層の電導率はさらに高まる。また、不動態化リチウム粉末を使用する場合に、予備リチウム化導電層におけるリチウム元素は、負極集電体に浸透する可能性があり、それにより、導電層と負極集電体とを同時に予備リチウム化された負極を形成し、リチウムイオン二次電池の電気的性能をさらに向上させるリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態において、予備リチウム化導電層の厚さは、1μm~50μm、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは1μm~10μmの範囲である。予備リチウム化導電層の厚さが1μm未満の場合に、予備リチウム化の効果が低く、導電層の導電率を効果的に改善することができず、予備リチウム化導電層の厚さが50μmを超える場合に、導電層が厚すぎるため、リチウムイオンの浸透が妨げられ、抵抗が不利に増加し、リチウムイオン二次電池の電気的性能が低下する可能性がある。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において、ステップS1は、-20℃~40℃の温度範囲で、真空、乾燥条件または露点≦-40℃の条件で、予備リチウム化材料を導電材料にドープし、5rpm~2000rpmの攪拌速度で2分間~2880分間攪拌して溶媒に分散させることを含む。ステップS1では、予備リチウム化材料は通常、活性のリチウム単体またはリチウム化合物であるため、予備リチウム化材料は、真空乾燥条件下または露点≦-40℃の超低湿度下でドープされる。-20℃~40℃の温度では、予備リチウム化材料を導電材料とよく混合して均一にすることができる。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、ドープ操作の温度は、-20℃~40℃の範囲、-10℃~30℃の範囲、または0℃~20℃の範囲であってもよい。また、予備リチウム化材料と導電材料とを混合した後に、5rpm~2000rpmの攪拌速度で2分間~2880分間攪拌して溶媒に分散させ、形成された導電材料スラリーをより均一なものとすることができる。好ましくは、他のいくつかの実施形態において、攪拌速度は、10rpm~1800rpmの範囲、50rpm~1500rpmの範囲、100rpm~1200rpmの範囲、200rpm~1000rpmの範囲または500rpm~800rpmの範囲であってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、攪拌時間は、5分間~48時間の範囲、10分間~36時間の範囲、0.5時間~24時間の範囲、1時間~12時間の範囲、5時間~15時間の範囲または10時間~12時間の範囲であってもよい。また、本発明のさらなる実施形態において、90℃~120℃の温度で導電材料スラリーを硬化させることができる。上記温度範囲では、導電材料スラリーにおける予備リチウム化材料と導電材料を、剥離や不連続性などの問題なく、均一な状態で一体的に良好に硬化させることができる。また、上記硬化範囲では、導電材料スラリーにおけるリチウム含有材料(またはリチウム単体)は、他の物質と反応しないため、最終的に形成した予備リチウム化導電層の導電性能を適切な範囲にすることができる。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、導電材料スラリーを硬化させる温度は、95℃~110℃の範囲、100℃~105℃の範囲、または90℃~100℃の範囲であってもよい。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、予備リチウム化導電層の総重量に基づいて、予備リチウム化材料の量は10wt%~50wt%の範囲である。上記範囲であれば、予備リチウム化材料は、導電層の導電性を向上させるのに有効である。好ましい実施形態において、異なる実施形態については、予備リチウム化材料の量は、予備リチウム化導電層の総重量に基づいて、10wt%~50wt%の範囲、11wt%~50wt%の範囲、12wt%~50wt%の範囲、13wt%~50wt%の範囲、14wt%~50wt%の範囲、15wt%~50wt%の範囲、16wt%~50wt%の範囲、17wt%~50wt%の範囲、18wt%~50wt%の範囲、19wt%~50wt%の範囲、20wt%~50wt%の範囲、10wt%~45wt%の範囲、10wt%~40wt%の範囲、10wt%~35wt%の範囲、10wt%~30wt%の範囲または10wt%~20wt%の範囲である。
【0044】
本発明のさらなる代表的な実施形態によれば、リチウムイオン二次電池負極の製造方法を提供し、当該方法は、導電材料スラリーを負極集電体に塗布して硬化させ、負極集電体に導電層を形成するステップS1と、予備リチウム化材料を使用して導電層を予備リチウム化し、予備リチウム化導電層を形成するステップS2と、予備リチウム化導電層に負極活物質スラリーを塗布して硬化させ、リチウムイオン二次電池負極を形成するステップS3とを含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明の方法によれば、導電層は、まず導電材料を含むスラリーを負極集電体上に塗布し、硬化させることにより形成することができる。そして、得られた導電層を予備リチウム化する。予備リチウム化した後に、導電層は全体または一部が予備リチウム化され、予備リチウム化された導電層は拡散領域を含み、リチウム拡散領域の厚さは予備リチウム化導電層の総厚さの1%~100%である。予備リチウム化導電層を形成した後に、予備リチウム化導電層に負極活物質スラリーを塗布し、硬化させることにより、本発明のリチウムイオン二次電池負極が形成される。本発明の方法で製造されたリチウムイオン二次電池負極は、予備リチウム化導電層を含んでおり、そのリチウム含有量が高いため、優れた導電性を有し、それによって導電層の導電率が効果的に向上し、結果としてリチウムイオン二次電池の初回放電容量および初回サイクル効率を向上させることができる。また、形成された予備リチウム化導電層において、予備リチウム化材料と導電層材料とが相互侵入するリチウム拡散領域を形成するため、使用中の層間剥離を有効に防止でき、負極片との良好な付着力を得ることができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態において、ステップS2では、予備リチウム化は、リチウム箔またはリチウム粉末を導電層に積層すること、溶融リチウムを導電層に塗布して冷却し、リチウム層を形成すること、リチウムを負極集電体および導電層の表面にめっきすることのいずれか1種を含む。いくつかの実施形態において、負極集電体に導電層を形成した後に、リチウム箔またはリチウム粉末を導電層に積層することにより、リチウム箔またはリチウム粉末が形成した層と導電層との積層構造を形成する。いくつかの好ましい実施形態において、リチウム箔またはリチウム粉末を積層した後に、導電層材料を塗布し、硬化させ、さらにリチウム箔またはリチウム粉末の層を積層する操作を繰り返すことにより、リチウム含有層と導電層との多層積層構造を形成することができる。他のいくつかの実施形態において、まず負極集電体に導電層を形成し、その導電層に溶融状態のリチウムを塗布し、リチウム層が完全に冷却した後に、冷却したリチウム塗層に負極活物質を形成する。さらに、好ましい実施形態において、リチウム層を形成した後に、リチウム層に導電層を形成することにより、導電層-リチウム層-導電層の多層構造を形成することができる。他のいくつかの実施形態において、負極集電体に導電層を形成した後に、導電層が形成された負極集電体とリチウム金属とを、リチウムイオンを含む溶液(好ましくはリチウムイオン二次電池の電解液)に浸漬し、電源の正極と負極をそれぞれ配線を介して負極集電体とリチウム金属に接続させる。電源を入れると、導電層と負極集電体とにそれぞれリチウム金属がめっきされる。上述した本発明の3つの実施形態では、いずれも、ステップS1を形成した後に、形成された導電層を表面処理することで、その後に形成されるリチウム層との表面結合力を高め、これにより形成される負極片の付着力をさらに高めることができる。多層積層構造を形成するいくつかの実施形態において、リチウム層は、それに隣接する導電層および/または負極集電体に完全に浸透するができ、それによって、単独の未浸透リチウム層を有することなく、均一な予備リチウム化導電層を形成することができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態において、予備リチウム化導電層の厚さは、1μm~50μm、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは1μm~10μmの範囲である。予備リチウム化導電層の厚さが1μm未満の場合に、予備リチウム化の効果が低く、導電層の導電率を効果的に改善することができず、予備リチウム化導電層の厚さが50μmを超える場合に、導電層が厚すぎるため、リチウムイオンの浸透が妨げられ、抵抗が不利に増加し、電池のエネルギー密度が低下し、リチウムイオン二次電池の電気的性能が低下する可能性がある。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態において、-50℃~40℃の温度範囲で、真空、乾燥条件または露点≦-40℃の条件で、リチウム箔またはリチウム粉末を導電層に積層する。リチウム箔またはリチウム粉末を積層して導電層を予備リチウム化する実施形態において、リチウム金属の性質が活発であるため、積層作業は完全に乾燥した真空中または露点が≦-40℃の真空環境中で行う必要がある。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態において、180℃~400℃の温度で、溶融リチウムを導電層に塗布し、-20℃~40℃の温度で冷却する。導電層を予備リチウム化するために溶融リチウムを塗布することを採用する実施形態において、リチウムの融点が180℃であるため、まず180℃より高く、好ましくは180℃以上400℃以下の温度でリチウムを液状に溶かして導電層に溶融リチウムを塗布する必要がある。溶融リチウムの温度が400℃を超えると、導電層や負極集電体にダメージを与え、リチウムイオン二次電池の性能を劣化させることがある。リチウムを塗布した後に、-20℃~40℃の温度で冷却して、リチウム層を形成することができる。好ましくは、10℃~30℃の温度で冷却して、リチウム層を形成する。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態において、負極集電体および導電層の表面をリチウム塩含有溶液に浸し、0ボルトより大きく1.5ボルト以下の電圧で1分間~600分間めっきする。導電層および負極集電体を予備リチウム化するためにリチウムめっきを採用する実施形態において、導電層が形成された負極集電体およびリチウム層をリチウムイオン含有溶液に浸漬した後に0ボルトより大きく1.5ボルト以下の電圧でめっきし、めっき時間が1分間~600分間の範囲とすることができる。いくつかの好ましい実施形態において、薄いリチウム層は、例えば、0.1ボルト~0.5ボルトの低電圧で1分間~30分間めっきすることによって形成されてもよい。導電層の形成とリチウムめっきの操作を繰り返すことで、導電層とリチウムめっき層の交互構造を形成する。一回で成形されるリチウムめっき層の実施形態において、1ボルト~1.5ボルトの電圧を用い、1時間~10時間めっきする。本発明のいくつかの実施形態において、リチウム塩の溶液は、LiPF6 、LiBF4 、LiAsF6 、LiClO4 、LiB(C6 H5 )4 、LiCH3 SO3 、LiCF3 SO3 、LiN(SO2 CF3 )2 、LiC(SO2 CF3 )3 、LiAlCl4 、LiSiF6 、LiCl、リチウムジフルオロ[オキサレート-O,O’]ボレート、リチウムビスオキサレートボレート、LiBr、またはその任意の組み合わせを含む。好ましい実施形態において、リチウム塩は、LiPF6 である。
【0051】
本発明のさらなる代表的な実施形態によれば、正極と、負極と、セパレータと、非水電解液と、を含むリチウムイオン二次電池を提供し、負極は本発明で提供したリチウムイオン二次電池負極または本発明の方法で製造されたリチウムイオン二次電池負極である。本発明の負極または本発明の方法によって製造された負極を使用する場合に、リチウムイオン二次電池の負極片は、良好な極片付着力を有し、優れた初回放電容量および初回サイクル効率を達成することができる。
【実施例】
【0052】
以下、具体的な実施例を結合して本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明に主張される保護範囲を制限することを意図するものではない。
【0053】
実施例1
負極の製造
真空且つ完全乾燥の条件で、20℃の温度で、10.0gのポリフッ化ビニリデンバインダー、55.0gのカーボンブラック、15.0gの黒鉛導電剤、80.0gの不動態化リチウム粉末を秤量し、640.0gのN-メチルピロリドンに加え、100rpmの撹拌速度で60分間撹拌し、固形分が20.0%(wt/wt)の予備リチウム化された導電塗層スラリーを得た。予備リチウム化導電塗層スラリーを、負極集電体である銅箔に塗布し、120℃で予備リチウム化導電塗層スラリーを硬化させ、予備リチウム化導電層を形成した。得られた予備リチウム化導電層の厚さは約5μmであり、不動態化リチウム粉末の量は、予備リチウム化導電層の乾燥重量の50.0wt%であった。
【0054】
真空且つ完全乾燥の条件で、20℃の温度で、80.0gの黒鉛負極材料、13.0gのケイ素ベース負極材料、2.0gの黒鉛導電剤、5.0gのポリフッ化ビニリデンバインダーを秤量し、122.0gのN-メチルピロリドンに加え、攪拌されて均一にされ、負極活物質スラリーを得た。負極活物質スラリーを予備リチウム化導電層に塗布し、120℃で硬化させ、負極活物質層を得た。
【0055】
予備リチウム化導電層および負極活物質層が形成された負極集電体を打ち抜き成形工程で形成し、負極片を形成した。
【0056】
正極の製造
94.5gの複合正極活物質、2.0gの黒鉛導電剤、2.5gのポリフッ化ビニリデンバインダーを混合して正極混合物を獲得し、得られた正極混合物を33.0gのN-メチルピロリドンに分散させて正極混合物スラリーとした。その後に、正極混合物スラリーをアルミニウム箔に塗布し、正極集電体を得た。正極集電体を乾燥させ、打ち抜き成形工程で正極片を成形した。
【0057】
電解液の製造
15.0gのエチレンカーボネート、70.0gのジメチルカーボネート、15.0gの六フッ化リン酸リチウムを混合して電解液を調製した。
【0058】
バッテリーの組み立て
ドライ実験室でCR2016ボタン電池を組み立てた。以上のステップで製造された正極片を正極として、負極片を負極とした。正極、負極、セパレータとボタン電池の電池ケースを組み立て、電解液を充填した。組み立てた後に、約24h放置して熟成させ、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムボタン電池を得た。
【0059】
実施例2
実施例1と同様の方法でリチウムイオン二次電池を製造したが、異なる点は、以下の通りである。
【0060】
真空且つ露点≦-40℃の条件で、10℃の温度で、10.0gのポリフッ化ビニリデンバインダー、55.0gのカーボンブラック、15.0gの黒鉛導電剤、8.89gの不動態化リチウム粉末を秤量し、800.0gのN-メチルピロリドンに加え、2000rpmの攪拌速度で2分間攪拌し、固形分が10.0%(wt/wt)の予備リチウム化された導電塗層スラリーを得た。予備リチウム化導電塗層スラリーを、負極集電体である銅箔に塗布し、120℃で予備リチウム化導電塗層スラリーを硬化させ、予備リチウム化導電層を形成した。得られた予備リチウム化導電層の厚さは約1μmであり、不動態化リチウム粉末の量は、予備リチウム化導電層の乾燥重量の10.0wt%であった。
【0061】
実施例3
実施例1と同様の方法でリチウムイオン二次電池を製造したが、異なる点は、以下の通りである。
【0062】
真空且つ完全乾燥の条件で、-20℃の温度で、10.0gのポリフッ化ビニリデンバインダー、55.0gのカーボンブラック、15.0gの黒鉛導電剤、20.0gの不動態化リチウム粉末を秤量し、566.7gのN-メチルピロリドンに加え、1000rpmの撹拌速度で2880分間撹拌し、固形分が15.0%(wt/wt)の予備リチウム化された導電塗層スラリーを得た。予備リチウム化導電塗層スラリーを、負極集電体である銅箔に塗布し、120℃で予備リチウム化導電塗層スラリーを硬化させ、予備リチウム化導電層を形成した。得られた予備リチウム化導電層の厚さは約10μmであり、不動態化リチウム粉末の量は、予備リチウム化導電層の乾燥重量の20.0wt%であった。
【0063】
実施例4
負極の製造
真空且つ露点≦-40℃の条件で、0℃の温度で、10.0gのポリフッ化ビニリデンバインダー、55.0gのカーボンブラック、15.0gの黒鉛導電剤を秤量し、720.0gのN-メチルピロリドンに加え、50rpmの攪拌速度で2880分間攪拌し、固形分が10.0%(wt/wt)の導電塗層スラリーを得た。導電塗層スラリーを、負極集電体である銅箔に塗布し、100℃で導電塗層スラリーを硬化させ、導電層を形成した。
【0064】
導電層上に80.0gの不動態化リチウム粉末を均一に配置し、プレス工程で不動態化リチウム粉末を導電層にプレスし、予備リチウム化導電層を形成した。得られた予備リチウム化導電層の厚さは約10μmであった。予備リチウム化導電層において、リチウム粉末の量は、予備リチウム化導電層の乾燥重量の50.0wt%であった。
【0065】
真空且つ完全乾燥の条件で、20℃の温度で、80.0gの黒鉛負極材料、13.0gのケイ素ベース負極材料、2.0gの黒鉛導電剤、5.0gのポリフッ化ビニリデンバインダーを秤量し、122.0gのN-メチルピロリドンに加え、攪拌されて均一にされ、負極活物質スラリーを得た。負極活物質スラリーを予備リチウム化導電層に塗布し、120℃で硬化させ、負極活物質層を得た。
【0066】
予備リチウム化導電層および負極活物質層が形成された負極集電体を打ち抜き成形工程で形成し、負極片を形成した。
【0067】
正極の製造
94.5gの複合正極活物質、2.0gの黒鉛導電剤、2.5gのポリフッ化ビニリデンバインダーを混合して正極混合物を獲得し、得られた正極混合物を33.0gのN-メチルピロリドンに分散させて正極混合物スラリーとした。その後、正極混合物スラリーをアルミニウム箔に塗布し、正極集電体を得た。正極集電体を乾燥させ、打ち抜き成形工程で正極片を成形した。
【0068】
電解液の製造
15.0gのエチレンカーボネート、70.0gのジメチルカーボネート、15.0gの六フッ化リン酸リチウムを混合して電解液を調製した。
【0069】
バッテリーの組み立て
ドライ実験室でCR2016ボタン電池を組み立てた。以上のステップで製造された正極片を正極として、負極片を負極とした。正極、負極、セパレータとボタン電池の電池ケースを組み立て、電解液を充填した。組み立てた後に、約24h放置して熟成させ、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムボタン電池を得た。
【0070】
実施例5
実施例4と同様の方法でリチウムイオン二次電池を製造したが、異なる点は、以下の通りである。
【0071】
真空且つ完全乾燥の条件で、10℃の温度で、10.0gのポリフッ化ビニリデンバインダー、55.0gのカーボンブラック、15.0gの黒鉛導電剤を秤量し、453.3gのN-メチルピロリドンに加え、2000rpmの攪拌速度で10分間攪拌し、固形分が15.0%(wt/wt)の導電塗層スラリーを得た。導電塗層スラリーを、負極集電体である銅箔に塗布し、110℃で導電塗層スラリーを硬化させ、導電層を形成した。
【0072】
導電層上に8.89gの不動態化リチウム粉末を均一に配置し、プレス工程でリチウム粉末を導電層にプレスし、予備リチウム化導電層を形成した。得られた予備リチウム化導電層の厚さは約5μmであった。予備リチウム化導電層において、不動態化リチウム粉末の量は、予備リチウム化導電層の乾燥重量の10.0wt%であった。
【0073】
実施例6
実施例4と同様の方法でリチウムイオン二次電池を製造したが、異なる点は、以下の通りである。
【0074】
真空且つ露点≦-40℃の条件で、15℃の温度で、10.0gのポリフッ化ビニリデンバインダー、55.0gのカーボンブラック、15.0gの黒鉛導電剤を秤量し、320.0gのN-メチルピロリドンに加え、1500rpmの撹拌速度で30分間撹拌し、固形分が20.0%(wt/wt)の導電塗層スラリーを得た。導電塗層スラリーを、負極集電体である銅箔に塗布し、120℃で導電塗層スラリーを硬化させ、導電層を形成した。
【0075】
導電層上に20.0gの不動態化リチウム粉末を均一に配置し、プレス工程でリチウム粉末を導電層にプレスし、予備リチウム化導電層を形成した。得られた予備リチウム化導電層の厚さは1μmであった。予備リチウム化導電層において、不動態化リチウム粉末の量は、予備リチウム化導電層の乾燥重量の20.0wt%であった。
【0076】
実施例7
実施例4と同様の方法でリチウムイオン二次電池を製造したが、異なる点は、以下の通りである。
【0077】
真空且つ完全乾燥の条件で、20℃の温度で、10.0gのポリフッ化ビニリデンバインダー、55.0gのカーボンブラック、15.0gの黒鉛導電剤を秤量し、364.4gのN-メチルピロリドンに加え、1000rpmの攪拌速度で1440分間攪拌し、固形分が18.0%(wt/wt)の導電塗層スラリーを得た。導電塗層スラリーを、負極集電体である銅箔に塗布し、120℃で導電塗層スラリーを硬化させ、導電層を形成した。
【0078】
200℃の温度でリチウムインゴットを溶融して液体リチウムとし、押出塗布方式を用いて、液体リチウムを形成した導電層の表面に塗布し、リチウム層を形成した。その後、溶融リチウムを20℃の温度で冷却し、固体状態にした。得られた予備リチウム化導電層の厚さは約5μmであった。予備リチウム化導電層において、リチウムの量は、予備リチウム化導電層の乾燥重量の20.0wt%であった。
【0079】
実施例8
実施例4と同様の方法でリチウムイオン二次電池を製造したが、異なる点は、以下の通りである。
【0080】
真空且つ完全乾燥の条件で、10℃の温度で、10.0gのポリフッ化ビニリデンバインダー、55.0gのカーボンブラック、15.0gの黒鉛導電剤を秤量し、535.4gのN-メチルピロリドンに加え、500rpmの攪拌速度で1800分間攪拌し、固形分が13.0%(wt/wt)の導電塗層スラリーを得た。導電塗層スラリーを、負極集電体である銅箔に塗布し、120℃で導電塗層スラリーを硬化させ、導電層を形成した。
【0081】
導電層上に20.0gのリチウム箔を均一に配置し、プレス工程でリチウム箔を導電層にプレスし、予備リチウム化導電層を形成した。得られた予備リチウム化導電層の厚さは約5μmであった。予備リチウム化導電層において、リチウム箔の量は、予備リチウム化導電層の乾燥重量の20.0wt%であった。
【0082】
実施例9
実施例4と同様の方法でリチウムイオン二次電池を製造したが、異なる点は、以下の通りである。
【0083】
真空且つ完全乾燥の条件で、0℃の温度で、10.0gのポリフッ化ビニリデンバインダー、55.0gのカーボンブラック、15.0gの黒鉛導電剤を秤量し、420.0gのN-メチルピロリドンに加え、100rpmの攪拌速度で600分間攪拌し、固形分が16.0%(wt/wt)の導電塗層スラリーを得た。導電塗層スラリーを、負極集電体である銅箔に塗布し、90℃で導電塗層スラリーを硬化させ、導電層を形成した。
【0084】
15.0gのエチレンカーボネート、70.0gのジメチルカーボネート、15.0gの六フッ化リン酸リチウムを均一に混合して電解液を調製した。得られた電解液を使用して、導電塗層が形成された負極集電体を60分間浸潤した。導電層が形成された負極集電体が十分に濡れた後に、リチウムシートを電解液に浸し、リチウムシートは導電塗層が形成された負極集電体と直接接触しなかった。リチウムシートをワイヤーで電源の負極に接続し、負極集電体をワイヤーで電源の正極に接続した。1.0ボルト電圧で60分間めっきした。これにより、電解液に接する導電層および負極集電体の表面にリチウム層が形成された。リチウムを電気めっきするプロセスでは、互いに接触しているリチウム層と導電層が互いに浸透して、予備リチウム化導電層を形成した。得られた予備リチウム化導電層の厚さは約5μmであった。予備リチウム化導電層において、リチウムの量は、予備リチウム化導電層の乾燥重量の20.0wt%であった。負極集電体におけるリチウム層の厚さは約2μmであった。
【0085】
比較例1
実施例1と同様の方法でリチウムイオン二次電池を製造したが、異なる点は、以下の通りである。
【0086】
加硫ポリアクリロニトリル、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースを90:5:5の質量比で混合し、溶媒としての水と均一に混合してスラリーを作り、集電体銅箔に塗布し、塗層の厚さは約10μmであった。溶媒が蒸発した後に、銅箔を極片に打ち抜き加工し、極片、セパレータ、リチウム金属をアルゴン保護のグローブボックスでボタン電池に組み立て、1.0Mのビス(トリフルオロメタンスルホニル)リチウムイミドと1.0%(wt/wt)質量濃度の硝酸リチウムの1,3ジオキソランとエチレングリコールジメチルエーテル(体積比で1:1)電解液を使用した。通電後電着を11時間行い、集電体の表面に金属リチウムを堆積させる。金属リチウムの堆積が完了した後に、上記の電池を分解し、金属リチウムが堆積した集電体を取り出した。このように製造した集電体を負極として使用した。
【0087】
比較例2
実施例1と同様の方法でリチウムイオン二次電池を製造したが、異なる点は、以下の通りである。
【0088】
リン化リチウムおよびケイ素-炭素負極材材料の混合物と、導電性カーボンブラックと、SBRとを8:1:1の質量比で混合し、ケイ素-炭素材料とリン化リチウムの質量比が9:1であるスラリーを調製した。得られたスラリーを銅箔負極集電体に塗布し、真空下120℃で12時間乾燥させ、負極片を得た。
【0089】
電池性能の測定
初回放電容量(mAh)の測定
上記の各実施例および各比較例で製造されたリチウムイオン二次電池の初回放電容量は、以下のようにして測定した。23℃の環境温度、4.35Vの充電電圧、0.5mAの充電電流および10時間の充電時間の条件で充電を行い、その後、2.5mAの放電電流および3.0Vの終端電圧の条件で放電を行い、初回放電容量(1サイクル目での放電容量)を測定した。実験結果を表1に示した。
【0090】
初回効率の測定
上記の各実施例および各比較例で製造されたリチウムイオン二次電池の初回効率は、下記の式によって計算した。
【0091】
初回効率=初回放電容量/初回充電容量
式中、初回充電容量は0.5mA×10h=5mAhである。実験結果を表1に示した。
【0092】
負極片の剥離強度測定
上述した各実施例および各比較例で製造された負極片を、CR2016ボタン電池から取り出した。引張り試験機を用い、剥離速度10mm/min、荷重10ニュートン、剥離角度180°で剥離強度を測定した。使用した引張り試験機は、上海衡翼微機制御電子万能材料試験機(モデル:HY-0230)である。実験結果を表1に示した。
【0093】
【0094】
以上の説明から、本発明の上記実施形態は、以下の技術的効果を奏することが明らかである。
【0095】
本発明のリチウムイオン二次電池負極を使用する場合に、それに予備リチウム化導電層を含むため、電池サイクル中にリチウムイオンが効果的に補充され、電池の初回放電容量および初回効率を向上させることができる。また、本発明の予備リチウム化材料は、導電層中に含有されているか、または導電層との結合力が良好であるため、形成した負極は負極片の結合力に優れ、リチウムイオン二次電池の負極片の使用時に発生し得る剥離やクラック等の問題を回避する。
【0096】
上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって様々な変更および変化が可能なものである。本発明の精神および原理の範囲で行われた修正、均等置換、改良等は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。