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  • 特許-ヒータ制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ヒータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20240423BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240423BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240423BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20240423BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6571
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022139090
(22)【出願日】2022-09-01
(65)【公開番号】P2024034682
(43)【公開日】2024-03-13
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓也
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-114103(JP,A)
【文献】特開2008-035581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/633
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/6571
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧リレーを含む複数のバッテリパックと、前記複数のバッテリパックからの電力供給により動作し、前記複数のバッテリパックを加温するバッテリヒータと、を備える車両で用いられ、
前記車両が未起動状態となったときに、前記高電圧リレーが未接続であって充放電が可能である使用可能バッテリパックの温度を示す第1温度情報を取得し、予め定められた閾値以下の温度を示す前記第1温度情報があるか否かを判定する判定部と、
前記閾値以下の温度を示す前記第1温度情報がある場合、前記使用可能なバッテリパックの前記高電圧リレーが接続された後で、当該使用可能バッテリパックの温度を示す第2温度情報を取得し、前記第2温度情報に基づいて前記バッテリヒータの加温動作を制御する制御部と、を有する、
ヒータ制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記車両が未起動状態となってから定期的に、前記第1温度情報を取得し、前記閾値以下の温度を示す前記第1温度情報の有無を判定する、
請求項1に記載のヒータ制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記複数のバッテリパックの状態を管理するバッテリ管理装置から、前記第1温度情報および前記第2温度情報を取得する、
請求項1または2に記載のヒータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載バッテリは、極低温環境下に置かれた場合、充放電が困難になることがある。その結果、車両を起動できない事態が生じうる。そこで、従来では、バッテリヒータにより車載バッテリを加温することで、その車載バッテリを充放電可能な状態にすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-86878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、1つのバッテリを備えた車両において、そのバッテリを加温する場合を想定している。これに対し、複数のバッテリを備えた車両では、使用可能なバッテリが適宜変更(選択)されるため、効率良くバッテリを加温するための工夫が必要となる。
【0005】
本開示の一態様の目的は、複数のバッテリを搭載した車両において、極低温環境下におけるバッテリの加温を効率良く実現できるようにするヒータ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るヒータ制御装置は、高電圧リレーを含む複数のバッテリパックと、前記複数のバッテリパックからの電力供給により動作し、前記複数のバッテリパックを加温するバッテリヒータと、を備える車両で用いられ、前記車両が未起動状態となったときに、前記高電圧リレーが未接続であって充放電が可能である使用可能バッテリパックの温度を示す第1温度情報を取得し、予め定められた閾値以下の温度を示す前記第1温度情報があるか否かを判定する判定部と、前記閾値以下の温度を示す前記第1温度情報がある場合、前記使用可能なバッテリパックの前記高電圧リレーが接続された後で、当該使用可能バッテリパックの温度を示す第2温度情報を取得し、前記第2温度情報に基づいて前記バッテリヒータの加温動作を制御する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数のバッテリを搭載した車両において、極低温環境下におけるバッテリの加温を効率良く実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施の形態に係るバッテリパックシステムの構成を示す模式図
図2】本開示の実施の形態に係るVCUの構成を示すブロック図
図3】本開示の実施の形態に係るVCUの動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
まず、本実施の形態に係るバッテリパックシステム1の構成について、図1を用いて説明する。図1は、バッテリパックシステム1の構成例を示す模式図である。
【0011】
図1に示すバッテリパックシステム1は、車両(例えば、電気自動車)に搭載される。
【0012】
バッテリパックシステム1は、1つのMBMS(Master Battery Management System)10、複数のバッテリパック20、1つのVCU(Vehicle Control Unit)30を含む。
【0013】
複数のバッテリパック20は、並列に接続されている。各バッテリパック20には、PBMS(Pack Battery Management System)21が内蔵されている。
【0014】
なお、図示は省略するが、各バッテリパック20には、充放電可能な二次電池、高電圧リレー(例えば、正極側リレー、負極側リレー)、抵抗器、電圧計、電流計、温度センサ等も含まれる。
【0015】
また、図1では、バッテリパック20の図示を2つとしているが、バッテリパック20の数は2つ以上であってもよい。
【0016】
VCU30は、車両の全般的な制御を行うコンピュータである。VCU30は、MBMS10の上位コンピュータ(コントローラ)に相当する。なお、VCU30は、本開示の「ヒータ制御装置」の一例に相当する。
【0017】
VCU30の詳細については、図2図3を用いて後述する。
【0018】
MBMS10は、主に、各バッテリパック20の管理を行うコンピュータである。MBMS10は、PBMS21の上位コンピュータ(コントローラ)に相当する。なお、PBMS21は、本開示の「バッテリ管理装置」の一例に相当する。
【0019】
PBMS21は、主に、バッテリパック20の状態を監視したり、高電圧リレーの駆動を制御したりするコンピュータである。バッテリパック20の状態としては、例えば、バッテリパック20内の電流、電圧、温度、劣化度、充電量(SOC:State Of Charge)等が挙げられる。これらの値は、状態情報として、MBMS10へ送信される。
【0020】
MBMS10とVCU30との通信、および、MBMS10と各PBMS21との通信には、CAN(Controller Area Network)が用いられる。よって、各PBMS21と、MBMS10とは、CAN通信線(符号略)を介して電気的に接続されている。また、MBMS10と、VCU30とは、CAN通信線(符号略)を介して電気的に接続されている。
【0021】
本実施の形態では、各PBMS21は、バッテリパック20の状態を示す状態情報をMBMS10へ送信する。そして、MBMS10は、各状態情報に基づいて、複数のバッテリパック20のうち、どれが充放電可能なバッテリパック(故障していないバッテリパックと言ってもよい。以下、使用可能バッテリパックという)であるかを認識する。また、MBMS10は、複数のバッテリパック20のそれぞれについて、高電圧リレーが接続されているか否かを認識する。これらの認識処理は、例えば、車両のキーオン時に行われる。
【0022】
さらに、MBMS10は、VCU30から通知された車両モード(例えば、充電モードまたは放電モード)や、各PBMS21から受信した状態情報(具体的には、充電状態)に基づいて、高電圧リレーが未接続である使用可能バッテリパックのうち、高電圧リレーの接続を行うべきバッテリパックを選択する。また、MBMS10は、選択したバッテリパックの高電圧リレーの接続を実行した後、そのバッテリパック(すなわち、高電圧リレーの接続が実行された使用可能バッテリパック)を、リレー接続済バッテリパックとして認識する。
【0023】
また、本実施の形態では、MBMS10は、各バッテリパック20の温度を示す温度情報(各状態情報に含まれている)をVCU30へ送信する。例えば、MBMS10は、高電圧リレーが接続される前の使用可能バッテリパックの温度を示す温度情報(第1温度情報の一例に相当)をVCU30へ送信する。また、例えば、MBMS10は、高電圧リレーが接続された後の使用可能バッテリパックの温度を示す温度情報(第2温度情報の一例に相当)をVCU30へ送信する。
【0024】
以上、バッテリパックシステム1の構成について説明した。
【0025】
次に、本実施の形態に係るVCU30の構成について、図2を用いて説明する。図2は、VCU30の構成例を示すブロック図である。
【0026】
図示は省略するが、VCU30は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラムを格納したROM(Read Only Memory)、作業用メモリであるRAM(Random Access Memory)等を有する。以下に説明する機能は、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムをRAMにて実行することにより実現される。
【0027】
図2に示すように、VCU30は、MBMS10およびバッテリヒータ40のそれぞれと電気的に接続されている。
【0028】
バッテリヒータ40は、図1に示した各バッテリパック20を加温する装置である。バッテリヒータ40は、各バッテリパック20の電力を用いて動作する。バッテリヒータ20の加温動作は、VCU30により制御される。
【0029】
図2に示すように、VCU30は、判定部110および制御部120を有する。
【0030】
判定部110は、車両が未起動状態となったとき(例えば、キーオフされた時。イグニッションオフされた時と言ってもよい)に、MBMS10から第1温度情報を取得する。未起動状態とは、バッテリパック20の高電圧リレーが全て未接続(接続前)の状態である。
【0031】
第1温度情報とは、高電圧リレーが未接続である(換言すれば、全ての)使用可能バッテリパックの温度を示す情報である。
【0032】
そして、判定部110は、取得した第1温度情報において、予め定められた閾値以下の温度を示す第1温度情報があるか否かを判定する。
【0033】
閾値は、加温する必要があると判断できる上限値であり、実験またはシミュレーション等の結果に基づいて予め設定される。
【0034】
閾値以下の温度を示す第1温度情報が1つでもある場合、判定部110は、バッテリヒータ40による加温が必要であると判定する。一方、閾値以下の温度を示す第1温度情報が1つもない場合、判定部110は、バッテリヒータ40による加温が不要であると判定する。
【0035】
なお、判定部110は、車両が未起動状態となってから定期的に、第1温度情報を取得し、閾値以下の温度を示す第1温度情報の有無を判定してもよい。
【0036】
閾値以下の温度を示す第1温度情報がある場合(すなわち、バッテリヒータ40による加温が必要である場合)、MBMS10の制御により、使用可能バッテリパックの高電圧リレーの接続が実行される。
【0037】
具体的には、まず、制御部120は、MBMS10から第2温度情報を取得する。
【0038】
第2温度情報とは、高電圧リレーが接続された使用可能バッテリパックの温度を示す情報である。
【0039】
そして、制御部120は、第2温度情報に基づいてバッテリヒータ40の加温動作を制御する。例えば、制御部120は、第2温度情報が示す温度を予め定められた目標温度以上となるようにバッテリヒータ40を動作させる。これにより、バッテリヒータ40によってバッテリパック20が加温される。
【0040】
以上、VCU30の構成について説明した。
【0041】
次に、VCU30の動作について、図3を用いて説明する。図3は、VCU30の動作を示すフローチャートである。
【0042】
図3に示すフローは、例えば、車両が未起動状態となったとき(例えば、キーオフされた時)に開始される。
【0043】
まず、判定部110は、MBMS10から第1温度情報を取得する(ステップS1)。
【0044】
次に、判定部110は、取得した第1温度情報の中に、閾値以下の温度を示す第1温度情報があるか否かを判定する(ステップS2)。
【0045】
閾値以下の温度を示す第1温度情報がない場合(ステップS2:NO)、バッテリヒータ40による加温は不要と判定され、フローは終了する。なお、この場合、再度、ステップS1からフローが開始されてもよい。
【0046】
一方、閾値以下の温度を示す第1温度情報がある場合(ステップS2:YES)、バッテリヒータ40による加温が必要と判定され、フローはステップS3へ進む。
【0047】
ここで、MBMS10の制御により、使用可能バッテリパックの高電圧リレーの接続が実行される。
【0048】
次に、制御部120は、MBMS10から第2温度情報を取得する(ステップS3)。
【0049】
そして、制御部120は、第2温度情報に基づいて、バッテリヒータ40の加温動作を制御する(ステップS4)。
【0050】
このようにして、バッテリヒータ40によってバッテリパック20が加温される。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態のVCU30は、高電圧リレーを含む複数のバッテリパック20と、複数のバッテリパック20を加温するバッテリヒータ40と、を備える車両で用いられ、車両が未起動状態となったときに、複数のバッテリパック20のうち高電圧リレーが未接続であって充放電が可能である使用可能バッテリパックの温度を示す第1温度情報を取得し、予め定められた閾値以下の温度を示す第1温度情報があるか否かを判定する判定部110と、閾値以下の温度を示す第1温度情報がある場合、使用可能なバッテリパックの高電圧リレーが接続された後で、当該使用可能バッテリパックの温度を示す第2温度情報を取得し、第2温度情報に基づいてバッテリヒータ40の加温動作を制御する制御部120と、を有することを特徴とする。
【0052】
この特徴により、本実施の形態のVCU30は、複数のバッテリを搭載した車両において、極低温環境下におけるバッテリの加温を効率良く実現することができる。極低温環境下では、キーオフ時にバッテリパック20の温度が低下し、キーオン時に充電や放電ができないおそれがあるが、本実施の形態のVCU30によれば、バッテリパック20を予め定められた目標温度以上に加温もしくは温度維持することで、充電も放電も可能となる。
【0053】
また、判定部110では第1温度情報を使用し、制御部120では第2温度情報を使用することにより、以下の作用効果を得ることができる。第2温度情報の温度には、バッテリヒータ40による昇温とバッテリパック20の自己発熱による昇温とが反映される。これに対し、第1温度情報の温度には、バッテリヒータ40による昇温のみが反映される。よって、
第2温度情報の温度は、第1温度情報の温度に比べて昇温速度が速いので、リレー接続済バッテリパックに対する加温完了の判定処理が早い。すなわち、極低温環境においても充放電を許可できる頻度が増える。
【0054】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示のヒータ制御装置は、複数のバッテリパックを備えた車両が極低温環境下におかれた場合に有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 バッテリパックシステム
10 MBMS
20 バッテリパック
21 PBMS
30 VCU
40 バッテリヒータ
110 判定部
120 制御部
図1
図2
図3