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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】無線通信装置及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 61/5069 20220101AFI20240423BHJP
   H04L 45/00 20220101ALI20240423BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20240423BHJP
   H04W 40/22 20090101ALI20240423BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20240423BHJP
【FI】
H04L61/5069
H04L45/00
H04W84/18 110
H04W40/22
H04W16/26
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022516825
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017865
(87)【国際公開番号】W WO2021215016
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 哲哉
【審査官】大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/032127(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/132429(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 61/5069
H04L 45/00
H04W 84/18
H04W 40/22
H04W 16/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のパケットを生成するプロセッサと、
前記プロセッサによって生成された前記第1のパケットを無線送信する送信部とを有し、
前記プロセッサは、
第1の装置を含む複数のノード宛てのデータを含む前記第1のパケットを生成し、
前記第1のパケットに、前記複数のノードそれぞれのアドレスとは異なるアドレスであって前記第1のパケットが前記複数のノード宛てであることを示す宛先アドレスを設定する処理を実行し、
前記プロセッサは、前記宛先アドレスを前記第1のパケットに設定することで、前記第1の装置に、前記宛先アドレスに応じて前記第1のパケットの送信先を判定する処理、及び、前記第1のパケットに応じた、前記第1のパケットとは異なる第2のパケットの送信に関する処理をさせる
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記第1のパケットがブロードキャストされる場合に、前記第1のパケットに第1の宛先アドレスを設定し、
前記第1のパケットがマルチキャストされる場合に、前記第1のパケットに前記第1の宛先アドレスとは異なる第2の宛先アドレスを設定し、
前記第1の宛先アドレスは、前記第1の装置に対し、前記第1の装置の下位に接続する全てのノードを、前記第1のパケットの送信先と判定する処理をさせる
ことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記第1のパケットに、前記第1のパケットの転送経路に対応するパスの識別情報を設定し、
前記識別情報は、前記第1の装置に前記第1のパケットの送信先を示す
ことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記第1のパケットの転送経路上に位置するノードに対して受信した前記第1のパケットの送信先を指示する経路設定パケットを生成し、前記第1のパケットを送信する前に、前記経路設定パケットを送信する
ことを特徴とする請求項1及び請求項3記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第1のパケットは、
BAP(Backhaul Adaptation Protocol)のパケットであり、
前記宛先アドレスを設定する処理は、
前記第1のパケットのヘッダに含まれる宛先アドレスフィールドに、前記宛先アドレスを格納する
ことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項6】
第1のパケットを受信する受信部と、
前記受信部によって受信された前記第1のパケットの送信先を決定するプロセッサと、
前記プロセッサによって決定された送信先へ前記第1のパケットを送信する送信部とを有し、
前記プロセッサは、
受信された前記第1のパケットの宛先アドレスが、自装置のアドレスとは異なるアドレスであって前記第1のパケットが自装置を含む複数のノード宛てであることを示す宛先アドレスである場合に、前記宛先アドレスに応じて前記第1のパケットの送信先を判定し、且つ前記第1のパケットに応じた、前記第1のパケットとは異なる第2のパケットの送信に関する処理を実行する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記第1のパケットの前記宛先アドレスが、前記第1のパケットがブロードキャストされることを示す第1の宛先アドレスである場合に、自装置の下位に接続するすべてのノードを送信先と判定する
ことを特徴とする請求項6記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記第1のパケットに含まれる識別情報に応じて、前記第1のパケットの送信先を判定し、
前記識別情報は、前記第1のパケットの転送経路に対応するパスを示す識別情報である
ことを特徴とする請求項6記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記第1のパケットの前記宛先アドレスが、前記第1のパケットがマルチキャストされることを示す第2の宛先アドレスである場合に、前記第1のパケットより前に受信された経路設定パケットに従っ送信先判定する
ことを特徴とする請求項6記載の無線通信装置。
【請求項10】
第1の無線通信装置と、第2の無線通信装置とを有する無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、
第1のパケットを生成する第1プロセッサと、
前記第1プロセッサによって生成された前記第1のパケットを無線送信する第1送信部とを有し、
前記第1プロセッサは、
第1の装置を含む複数のノード宛てのデータを含む前記第1のパケットを生成し、
前記第1のパケットに、前記複数のノードそれぞれのアドレスとは異なるアドレスであって前記第1のパケットが前記複数のノード宛てであることを示す宛先アドレスを設定する処理を実行し、
前記第2の無線通信装置は、
前記第1のパケットを受信する受信部と、
前記第1のパケットの送信先を決定する第2プロセッサと、
前記第2プロセッサによって決定された送信先へ前記第1のパケットを送信する第2送信部とを有し、
前記第2プロセッサは、
前記第1のパケットの前記宛先アドレスが、前記第2の無線通信装置を含む前記複数のノード宛てであることを示す宛先アドレスである場合に、前記宛先アドレスに応じて前記第1のパケットの送信先を判定し、且つ、前記第1のパケットに応じた、前記第1のパケットとは異なる第2のパケットの送信に関する処理を実行する
ことを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のネットワークにおいては、モバイル端末(スマートフォンやフィーチャーホン)のトラフィックがネットワークのリソースの大半を占めている。また、モバイル端末が使用するトラフィックは、今後も拡大していく傾向にある。
【0003】
一方で、IoT(Internet of Things)サービス(例えば、交通システム、スマートメータ、装置等の監視システム)の展開に合わせて、多様な要求条件を持つサービスに対応することが求められている。そのため、第5世代移動体通信(5G又はNR(New Radio))の通信規格では、第4世代移動体通信(4G)の標準技術(例えば、非特許文献1~11)に加えて、さらなる高データ信号レート化、大容量化、低遅延化を実現する技術が求められている。なお、第5世代通信規格については、3GPP(3rd Generation Partnership Project)の作業部会(例えば、TSG-RAN WG1、TSG-RAN WG2等)で技術検討が進められており、2017年12月に初版が出されている(非特許文献12~39)。
【0004】
上述したように、多種多様なサービスに対応するために、5Gでは、eMBB(Enhanced Mobile BroadBand)、Massive MTC(Machine Type Communications)、及びURLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communication)に分類される多くのユースケースのサポートを想定している。
【0005】
また、5Gでは、基地局装置と端末装置の間の通信を他の基地局装置が中継することが検討されている。この中継においては、コアネットワークと端末装置との間に配置された複数の基地局装置が無線接続し、基地局装置間の無線通信によって中継が実行される。このような5Gにおける中継は、IAB(Integrated Access and Backhaul)とも呼ばれ、マルチホップの中継が許容される。IABでは、コアネットワークに接続する最上位のIABドナー及びIABノードが無線により接続し、IABドナーは、1つ以上のIABノードを経由して端末装置と通信することができる(非特許文献25)。このとき、IABドナーは、端末装置までの経路上にある各IABノードに対して経路設定パケットを送信し、パケットの転送経路を設定した上でデータを含むパケットを送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2019/216371号
【非特許文献】
【0007】
【文献】3GPP TS 36.211 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 36.212 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 36.213 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 36.300 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 36.321 V15.8.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 36.322 V15.3.0(2019-09)
【文献】3GPP TS 36.323 V15.5.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 36.331 V15.8.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 36.413 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 36.423 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 36.425 V15.0.0(2018-06)
【文献】3GPP TS 37.340 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.201 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.202 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.211 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.212 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.213 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.214 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.215 V16.0.1(2020-01)
【文献】3GPP TS 38.300 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.321 V15.8.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.322 V15.5.0(2019-03)
【文献】3GPP TS 38.323 V15.6.0(2019-06)
【文献】3GPP TS 38.331 V15.8.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.340 V1.0.0(2020-03)
【文献】3GPP TS 38.401 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.410 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.413 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.420 V15.2.0(2018-12)
【文献】3GPP TS 38.423 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.470 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TS 38.473 V16.0.0(2019-12)
【文献】3GPP TR 38.801 V14.0.0(2017-03)
【文献】3GPP TR 38.802 V14.2.0(2017-09)
【文献】3GPP TR 38.803 V14.2.0(2017-09)
【文献】3GPP TR 38.804 V14.0.0(2017-03)
【文献】3GPP TR 38.900 V15.0.0(2018-06)
【文献】3GPP TR 38.912 V15.0.0(2018-06)
【文献】3GPP TR 38.913 V15.0.0(2018-06)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、IABネットワークにおいては、IABドナー及びIABノードの間で送受信されるパケット量が増大する傾向があり、輻輳が発生するという問題がある。具体的には、例えば緊急速報などのページング情報やSIB(System Information Block)がブロードキャストされる場合には、IABドナーから配下のすべてのIABノードへ経路設定パケットが送信された後、それぞれのIABノードへページング情報又はSIBを含むパケットが送信される。このとき、いずれかのIABノードまでの経路が他のIABノードまでの経路と一部重複していても、それぞれのIABノードへ別々にパケットが送信される。
【0009】
すなわち、例えばIABドナーに2つのIABノードが直列に接続している場合、IABドナーは、経路設定パケットを上位のIABノードへ送信するとともに、経路設定パケットを上位のIABノードを経由して下位のIABノードへ送信する。その後、IABドナーは、データを含むパケットを上位のIABノードへ送信するとともに、同様のパケットを上位のIABノードを経由して下位のIABノードへ送信する。
【0010】
このように、IABドナーは、ブロードキャスト又はマルチキャストされるパケットを、ユニキャストと同様にそれぞれのIABノードに対して個別に送信する。このため、IABネットワークにおいて伝送されるパケット量が多くなり、無線回線の輻輳が発生することがある。この結果、IABネットワークでのスループットが低下する。
【0011】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、輻輳の発生を回避し、スループットの低下を抑制することができる無線通信装置及び無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願が開示する無線通信装置は、1つの態様において、パケットを生成するプロセッサと、前記プロセッサによって生成されたパケットを無線送信する送信部とを有し、前記プロセッサは、複数のノード宛てのデータを含むパケットを生成し、生成されるパケットに、前記複数のノードそれぞれのアドレスとは異なる宛先アドレスであって前記パケットが前記複数のノード宛てであることを示す宛先アドレスを設定する処理を実行する。
【発明の効果】
【0013】
本願が開示する無線通信装置及び無線通信システムの1つの態様によれば、輻輳の発生を回避し、スループットの低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施の形態1に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
図2図2は、実施の形態1に係るIABドナーの構成を示すブロック図である。
図3図3は、パケットフォーマットの具体例を示す図である。
図4図4は、実施の形態1に係るIABノードの構成を示すブロック図である。
図5図5は、実施の形態1に係るブロードキャストの一例を示すシーケンス図である。
図6図6は、実施の形態1に係るマルチキャストの一例を示すシーケンス図である。
図7図7は、実施の形態1に係るIABノードのパケット処理を示すフロー図である。
図8図8は、パスの設定を説明する図である。
図9図9は、実施の形態2に係るブロードキャストの一例を示すシーケンス図である。
図10図10は、他の実施の形態に係るマルチキャストの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願が開示する無線通信装置及び無線通信システムの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る無線通信システムの構成例を示す図である。図1に示す無線通信システムは、コアネットワークに接続されたIABドナーと、複数のIABノード#1~#4と、端末装置(UE:User Equipment)#1~#3とを有する。以下においては、コアネットワークに近い装置ほど上位の装置であり、コアネットワークから遠い装置ほど下位の装置であるものとする。したがって、図1に示す無線通信システムにおいては、IABドナーが最上位の装置であり、IABドナーの下位にIABノード#1、#2が接続され、IABノード#1、#2の下位にIABノード#3、#4が接続されている。IABドナー及びIABノード#1~#4の間の無線通信には、例えばBAP(Backhaul Adaptation Protocol)が用いられる。
【0017】
IABドナーは、コアネットワークに有線接続されており、IABノードと無線通信する無線通信装置である。IABドナーは、コアネットワークから受信するパケットをIABノード#1~#4を経由してUE#1~#3へ送信する。また、IABドナーは、UE#1~#3からIABノード#1~#4を経由して受信するパケットをコアネットワークへ送信する。IABドナーは、コアネットワークを構成する例えばAMF(Access and Mobility Management Function)及びUPF(User Plane Function)などに有線接続されている。
【0018】
IABドナーは、UE#1~#3へパケットを送信する際、経路上のIABノード#1~#4に対して経路設定パケットを送信し、その後、データを含むパケットを送信する。このとき、IABドナーは、それぞれのパケットに宛先アドレスを設定して無線送信する。宛先アドレスの設定に際しては、IABドナーは、ブロードキャストされるデータを含むブロードキャストパケットにはブロードキャスト用アドレスを設定し、マルチキャストされるデータを含むマルチキャストパケットにはマルチキャスト用アドレスを設定する。すなわち、IABドナーは、複数の宛先へ送信されるパケットには、個々のIABノード#1~#4又はUE#1~#3のアドレスではなく、複数の宛先へ送信されるパケットであることを示すアドレスを設定する。IABドナーの構成については、後に詳述する。
【0019】
IABノード#1~#4は、IABドナー又は他のIABノード#1~#4と無線通信する無線通信装置である。IABノード#1~#4は、上位のIABドナー又はIABノードからパケットを受信し、受信したパケットの宛先アドレスに応じてパケットを転送する。すなわち、IABノード#1~#4は、受信したパケットの宛先アドレスが自身のアドレスである場合には、受信したパケットに対する終端処理を実行し、配下に接続するUE#1~#3へパケットを無線送信する。また、IABノード#1~#4は、受信したパケットの宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスである場合には、受信したパケットに対する終端処理を実行し、配下に接続するUE#1~#3へパケットを無線送信するとともに、下位に接続するすべてのIABノードへパケットを転送する。さらに、IABノード#1~#4は、受信したパケットの宛先アドレスが下位のいずれかのIABノードのアドレスかマルチキャスト用アドレスである場合には、経路設定パケットによってあらかじめ設定された送信先へ、受信したパケットを転送する。IABノード#1~#4の構成については、後に詳述する。
【0020】
UE#1~#3は、IABノード#1~#4との間で無線通信する端末装置である。具体的には、UE#1は、IABノード#1の配下に位置し、IABノード#1との間でパケットを送受信する。UE#2は、IABノード#3の配下に位置し、IABノード#3との間でパケットを送受信する。UE#3は、IABノード#4の配下に位置し、IABノード#4との間でパケットを送受信する。
【0021】
図2は、図1に示したIABドナーと同等のIABドナー100の構成を示すブロック図である。図2に示すIABドナー100は、有線インタフェース部(以下「有線I/F部」と略記する)110、プロセッサ120、メモリ130及び無線送受信部140を有する。
【0022】
有線I/F部110は、コアネットワークに有線接続し、コアネットワークを構成する例えばAMF及びUPFとの間でデータを送受信する。有線I/F部110は、コアネットワークから受信するデータをプロセッサ120へ出力し、プロセッサ120から入力されるデータをコアネットワークへ送信する。
【0023】
プロセッサ120は、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はDSP(Digital Signal Processor)などを備え、IABドナー100の全体を統括制御する。具体的には、プロセッサ120は、上位プロトコル処理部121、BAP送信制御部122、宛先アドレス設定部123及びBAP受信制御部124を有する。
【0024】
上位プロトコル処理部121は、データに対してBAPよりも上位のプロトコルの処理を実行する。具体的には、上位プロトコル処理部121は、例えばPDCP(Packet Data Convergence Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)及びIP(Internet Protocol)などのプロトコルの処理を実行する。上位プロトコル処理部121は、有線I/F部110から入力されるデータに各プロトコルの処理を施し、得られた送信データをBAP送信制御部122へ出力する。そして、上位プロトコル処理部121は、送信データの宛先を宛先アドレス設定部123へ通知する。また、上位プロトコル処理部121は、BAP受信制御部124から入力される受信データに各プロトコルの処理を施し、得られたデータを有線I/F部110へ出力する。
【0025】
BAP送信制御部122は、送信データにBAPの処理を施す。具体的には、BAP送信制御部122は、送信データにBAPのヘッダを付加し、BAPのパケットを生成する。このとき、BAP送信制御部122は、BAPのヘッダの宛先アドレスフィールドには、宛先アドレス設定部123によって設定される宛先アドレスを格納する。
【0026】
BAP送信制御部122が生成するBAPのパケットフォーマットの一例を図3に示す。図3において、D/Cは、データ用のパケットであるか制御用のパケットであるかのパケット種別を表すフィールドであり、Rは、リザーブビットを表すフィールドである。宛先アドレスのフィールドは、最上段から2段目にかけて配置され、BAP送信制御部122は、宛先アドレス設定部123によって設定される宛先アドレスをこのフィールドに格納する。宛先アドレスのフィールドに続いて、パスのフィールドが配置される。パスのフィールドには、IABネットワークにおけるパスの識別情報が格納される。これらのフィールドがBAPのヘッダに含まれるため、BAP送信制御部122は、これらのフィールドを含むヘッダをデータに付加し、BAPのパケットを生成する。
【0027】
また、BAP送信制御部122は、BAPのパケットの宛先が1つのIABノード又は特定の複数のIABノードである場合には、パケットの転送経路を設定するための経路設定パケットを生成する。BAP送信制御部122は、パケットの宛先のIABノードまでの転送経路上に位置するIABノードごとに、上位のIABドナー100又はIABノードから受信したパケットの送信先を規定する経路設定パケットを生成する。すなわち、BAP送信制御部122は、パケットの宛先アドレスとパケットの送信先との対応関係を示す経路設定パケットを設定する。BAP送信制御部122は、経路設定パケットの宛先アドレスとしては、転送経路上のそれぞれのIABノードのアドレスを設定する。
【0028】
宛先アドレス設定部123は、送信データの宛先が上位プロトコル処理部121から通知されると、通知された宛先に対応する宛先アドレスを設定する。具体的には、宛先アドレス設定部123は、送信データの宛先が1つのIABノードである場合には、このIABノードのアドレスを宛先アドレスに設定する。また、宛先アドレス設定部123は、送信データの宛先が特定の複数のIABノードである場合には、マルチキャスト用アドレスを宛先アドレスに設定する。さらに、宛先アドレス設定部123は、送信データの宛先がすべてのIABノードである場合には、ブロードキャスト用アドレスを宛先アドレスに設定する。
【0029】
宛先アドレス設定部123は、IABノードのアドレスとして用いられない値を、マルチキャスト用アドレス及びブロードキャスト用アドレスとして用いる。宛先アドレス設定部123は、例えば、16進数表記で先頭がEのアドレス(0xE000 0000など)をマルチキャスト用アドレスとして用い、先頭がFのアドレス(0xFFFF FFFFなど)をブロードキャスト用アドレスとして用いることができる。
【0030】
BAP受信制御部124は、BAPのパケットを無線送受信部140から取得し、パケットから受信データを取り出して上位プロトコル処理部121へ出力する。
【0031】
メモリ130は、例えばRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)などを備え、プロセッサ120によって処理が実行される際に、種々の情報を記憶する。
【0032】
無線送受信部140は、BAP送信制御部122によって生成されるBAPのパケット及び経路設定パケットに対して無線送信処理を施し、アンテナを介して送信する。また、無線送受信部140は、アンテナを介してBAPのパケットを受信し、受信したパケットに対して無線受信処理を施し、BAP受信制御部124へ出力する。
【0033】
図4は、図1に示したIABノード#1~#4と同等のIABノード200の構成を示すブロック図である。図4に示すIABノード200は、プロセッサ210、メモリ220及び無線送受信部230を有する。
【0034】
プロセッサ210は、例えばCPU、FPGA又はDSPなどを備え、IABノード200の全体を統括制御する。具体的には、プロセッサ210は、BAP受信制御部211、上位プロトコル処理部212、送信先判定部213及びBAP送信制御部214を有する。
【0035】
BAP受信制御部211は、BAPのパケットを無線送受信部230から取得し、パケットのヘッダに含まれる宛先アドレスがIABノード200のアドレスである場合には、BAPの終端処理を実行する。すなわち、BAP受信制御部211は、BAPのパケットから受信データを取り出して上位プロトコル処理部212へ出力する。また、BAP受信制御部211は、パケットのヘッダに含まれる宛先アドレスがIABノード200のアドレスでない場合には、パケットをBAP送信制御部214へ出力する。
【0036】
なお、BAP受信制御部211は、パケットのヘッダに含まれる宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスである場合には、BAPの終端処理を実行して受信データを上位プロトコル処理部212へ出力するとともに、BAPのパケットをBAP送信制御部214へ出力する。さらに、BAP受信制御部211は、パケットのヘッダに含まれる宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスであり、かつ、マルチキャストパケットの終端処理を指示する経路設定パケットが事前に受信されている場合にも、BAPの終端処理を実行して受信データを上位プロトコル処理部212へ出力するとともに、BAPのパケットをBAP送信制御部214へ出力する。
【0037】
上位プロトコル処理部212は、データに対してBAPよりも上位のプロトコルの処理を実行する。具体的には、上位プロトコル処理部212は、例えばRLC(Radio Link Control)、UDP及びIPなどのプロトコルの処理を実行する。上位プロトコル処理部212は、BAP受信制御部211から入力される受信データに各プロトコルの処理を施し、得られたデータを例えば無線送受信部230から端末装置へ無線送信させる。
【0038】
送信先判定部213は、経路設定パケットによって示される宛先アドレスと送信先との対応関係に基づいて、BAP受信制御部211からBAP送信制御部214へ出力されるパケットの送信先を判定する。具体的には、送信先判定部213は、BAP受信制御部211から出力されるパケットの宛先アドレスを取得し、経路設定パケットによって規定された送信先であって、取得した宛先アドレスに対応する送信先を特定する。
【0039】
このとき、送信先判定部213は、宛先アドレスがIABノードのアドレスである場合には、経路設定パケットによって規定される送信先を特定する。また、送信先判定部213は、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスである場合にも、経路設定パケットによって規定される送信先を特定する。そして、送信先判定部213は、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスである場合には、IABノード200の下位に接続するすべてのIABノードを送信先として特定する。送信先判定部213は、特定した送信先をBAP送信制御部214へ通知する。
【0040】
BAP送信制御部214は、BAP受信制御部211から出力されるパケットを、送信先判定部213から通知される送信先へ転送する。すなわち、BAP送信制御部214は、宛先アドレスがIABノードのアドレス又はマルチキャスト用アドレスであるパケットを、経路設定パケットによって規定される送信先へ転送する送信処理を実行する。また、BAP送信制御部214は、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであるパケットを、IABノード200の下位に接続するすべてのIABノードへ転送する送信処理を実行する。
【0041】
メモリ220は、例えばRAM又はROMなどを備え、プロセッサ210によって処理が実行される際に、種々の情報を記憶する。
【0042】
無線送受信部230は、アンテナを介してBAPのパケットを受信し、受信したパケットに対して無線受信処理を施し、BAP受信制御部211へ出力する。また、無線送受信部230は、BAP送信制御部214によって送信処理されたBAPのパケットに対して無線送信処理を施し、アンテナを介して送信する。
【0043】
次いで、図1に示した無線通信システムにおけるパケットのブロードキャストについて、図5に示すシーケンス図を参照しながら説明する。
【0044】
ブロードキャストされるデータは、コアネットワークから送信され、IABドナーによって受信される(ステップS101)。ブロードキャストされるデータとしては、例えば緊急速報などのページング情報やSIBの情報などがある。
【0045】
IABドナーは、ブロードキャストされるデータからBAPのパケットを生成する。すなわち、BAP送信制御部122によって、データにBAPのヘッダが付加されてパケットが生成される。このとき、宛先アドレス設定部123によって、パケットの宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスに設定される。つまり、例えば「0xFFFF FFFF」のように先頭がFのブロードキャスト用アドレスがヘッダの宛先アドレスのフィールドに格納される。
【0046】
BAPのパケットは、IABドナーの下位に接続するIABノード#1、#2へ送信される(ステップS102、S103)。IABノード#1によってパケットが受信されると、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、BAP受信制御部211によってBAPの終端処理が実行され、パケットに含まれるデータが上位プロトコル処理部212へ出力される。そして、上位プロトコル処理部212によって各プロトコルの処理が施された上で、パケットに含まれていたデータは、IABノード#1の配下のUE#1へ無線送信される(ステップS104)。
【0047】
また、IABノード#1によって受信されたパケットの宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、このパケットは、BAP受信制御部211からBAP送信制御部214にも出力される。そして、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、パケットの送信先がIABノード#1の下位に接続するIABノード#3、#4であると特定され、IABノード#3、#4へパケットが転送される(ステップS105、S106)。なお、図5においてはIABノード#4の図示を省略しているが、ステップS106は、IABノード#1からIABノード#4へのパケットの転送を示している。
【0048】
IABノード#1から送信されたパケットがIABノード#3、#4によって受信されると、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、BAPの終端処理が実行され、パケットに含まれるデータがそれぞれIABノード#3、#4の配下のUE#2、#3へ無線送信される。
【0049】
一方、IABドナーから送信されたパケットがIABノード#2によって受信されると、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、このパケットは、BAP受信制御部211からBAP送信制御部214へ出力される。そして、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、パケットの送信先がIABノード#2の下位に接続するIABノード#3、#4であると特定され、IABノード#3、#4へパケットが転送される(ステップS107、S108)。なお、図5においてはIABノード#4の図示を省略しているが、ステップS108は、IABノード#2からIABノード#4へのパケットの転送を示している。
【0050】
IABノード#2から送信されたパケットがIABノード#3、#4によって受信されると、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、BAPの終端処理が実行され、パケットに含まれるデータがそれぞれIABノード#3、#4の配下のUE#2、#3へ無線送信される。
【0051】
このように、パケットの宛先アドレスをブロードキャスト用アドレスに設定することにより、各IABノードは、下位に接続するすべてのIABノードへパケットを転送するとともに、パケットに含まれるデータを配下のUEへ送信する。このため、データをブロードキャストする際、IABドナーは、経路設定パケットを送信する必要がないとともに、各IABノードへ個別にパケットを送信することなく直近下位のIABノード#1、#2へ1回ずつパケットを送信すれば良い。結果として、IABネットワークにおいて送受信されるパケット量を削減し、輻輳の発生を回避してスループットの低下を抑制することができる。
【0052】
次に、図1に示した無線通信システムにおけるパケットのマルチキャストについて、図6に示すシーケンス図を参照しながら説明する。
【0053】
データがマルチキャストされる場合には、IABノードのグループが設定され、グループに属するIABノードがパケットを受信する。ここでは、IABノード#2を除く、IABノード#1、#3、#4がグループに属するものとして説明をする。IABドナーは、グループに属するIABノード#1、#3、#4へのパケットの転送経路を決定し、それぞれのIABノード#1、#3、#4へ経路設定パケットを送信する。
【0054】
具体的には、IABドナーは、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスのパケットを終端処理するとともに、IABノード#3、#4へ転送するように指示する経路設定パケットをIABノード#1へ送信する(ステップS201)。また、IABドナーは、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスのパケットを終端処理するように指示する経路設定パケットを、IABノード#1経由でIABノード#3へ送信する(ステップS202、S203)。同様に、IABドナーは、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスのパケットを終端処理するように指示する経路設定パケットを、IABノード#1経由でIABノード#4へ送信する(ステップS204、S205)。
【0055】
このように、IABドナーは、マルチキャスト用アドレスのパケットを受信した場合の処理を指示する経路設定パケットを各IABノードへ送信する。なお、経路設定パケットは、IABドナーからグループに属するIABノードまでの転送経路上に位置するすべてのIABノードへ送信される。したがって、転送経路上に位置するIABノードであれば、グループに属さないIABノードに対しても、経路設定パケットが送信されることがある。
【0056】
ところで、マルチキャストされるデータは、コアネットワークから送信され、IABドナーによって受信される(ステップS206)。マルチキャストされるデータとしては、例えばMBMS(Multimedia Broadcast and Multicast Service)のようにマルチメディア配信の情報などがある。
【0057】
IABドナーは、マルチキャストされるデータからBAPのパケットを生成する。すなわち、BAP送信制御部122によって、データにBAPのヘッダが付加されてパケットが生成される。このとき、宛先アドレス設定部123によって、パケットの宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスに設定される。つまり、例えば「0xE000 0000」のように先頭がEのマルチキャスト用アドレスがヘッダの宛先アドレスのフィールドに格納される。
【0058】
BAPのパケットは、マルチキャストのグループに属するIABノード#1へ送信される(ステップS207)。IABノード#1によってパケットが受信されると、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスであることから、事前に受信された経路設定パケットに従ってパケットの終端処理が実行され、パケットに含まれるデータがIABノード#1の配下のUE#1へ無線送信される(ステップS208)。
【0059】
また、IABノード#1によって受信されたパケットの宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスであることから、事前に受信された経路設定パケットに従って、このパケットは、BAP受信制御部211からBAP送信制御部214にも出力される。そして、経路設定パケットに従ってパケットの送信先がIABノード#3、#4に設定され、IABノード#3、#4へパケットが転送される(ステップS209、S210)。
【0060】
IABノード#1から送信されたパケットがIABノード#3、#4によって受信されると、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスであることから、事前に受信された経路設定パケットに従ってパケットの終端処理が実行され、パケットに含まれるデータがそれぞれIABノード#3、4の配下のUE#2、#3へ無線送信される。
【0061】
このように、パケットの宛先アドレスをマルチキャスト用アドレスに設定することにより、各IABノードは、事前に受信された経路設定パケットに従って、下位のIABノードへパケットを転送するとともに、パケットに含まれるデータを配下のUEへ送信する。このため、データをマルチキャストする際、IABドナーは、各IABノードへ個別にパケットを送信することなく、パケットの転送経路上に位置するIABノード#1へ1回パケットを送信すれば良い。結果として、IABネットワークにおいて送受信されるパケット量を削減し、輻輳の発生を回避してスループットの低下を抑制することができる。
【0062】
次に、IABノード#1~#4と同等のIABノード200によるパケット受信時の動作について、図7に示すフロー図を参照しながら説明する。以下においては、IABドナー又は他のIABノードから送信されたパケットが受信される場合の動作について説明する。
【0063】
アンテナを介して無線送受信部230によってパケットが受信されると(ステップS301)、パケットは、BAP受信制御部211へ出力される。そして、BAP受信制御部211によって、パケットのヘッダに含まれる宛先アドレスに基づいて、パケットがIABノード200宛てのパケットであるか否かが判定される(ステップS302)。具体的には、パケットのヘッダに含まれる宛先アドレスが確認され、宛先アドレスがIABノード200のアドレスである場合には、パケットがIABノード200宛てのパケットであると判定される。また、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスである場合にも、パケットがIABノード200宛てのパケットであると判定される。さらに、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスであり、かつ、事前に受信された経路設定パケットによってマルチキャストパケットの終端処理が指示されている場合にも、パケットがIABノード200宛てのパケットであると判定される。
【0064】
このような判定の結果、パケットがIABノード200宛てのパケットである場合には(ステップS302Yes)、BAPの終端処理が実行される(ステップS303)。すなわち、BAP受信制御部211によって、パケットに含まれる受信データが取り出され、受信データは、上位プロトコル処理部212へ出力される。この受信データは、上位プロトコル処理部212によって処理された後、無線送受信部230から配下の端末装置へ送信される。そして、パケットの宛先アドレスがマルチキャスト用アドレス又はブロードキャスト用アドレスである場合には、パケットがBAP受信制御部211からBAP送信制御部214へ出力される。
【0065】
一方、パケットがIABノード200宛てのパケットでない場合には(ステップS302No)、パケットがBAP受信制御部211からBAP送信制御部214へ出力される。したがって、パケットの宛先アドレスが、マルチキャスト用アドレス、ブロードキャスト用アドレス、又は、IABノード200以外のIABノードのアドレスである場合には、パケットがBAP送信制御部214へ出力される。そして、送信先判定部213によって、パケットの宛先アドレスが確認され、BAP送信制御部214へ出力されたパケットの送信先が判定される(ステップS304)。
【0066】
具体的には、送信先判定部213によって、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであるか否かが判定される(ステップS305)。この判定の結果、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスである場合には(ステップS305Yes)、BAP送信制御部214へ出力されたパケットの送信先は、IABノード200の下位に接続するすべてのIABノードであると判定される。そして、BAP送信制御部214によって、下位に接続するすべてのIABノードへパケットを転送する送信処理が実行され、無線送受信部230からパケットが送信される(ステップS309)。
【0067】
パケットの宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスではない場合には(ステップS305No)、送信先判定部213によって、宛先アドレスに対応する送信先を指示する経路設定パケットが事前に受信されているか否かが判定される(ステップS306)。この判定の結果、経路設定パケットによって宛先アドレスに対応する送信先が指示されている場合には(ステップS306Yes)、BAP送信制御部214へ出力されたパケットの送信先が経路設定パケットに従って特定される。ここでは、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスである場合にも、事前に受信された経路設定パケットに従って、マルチキャスト用アドレスに対応する送信先が特定される。そして、BAP送信制御部214によって、特定された送信先へパケットを転送する送信処理が実行され、無線送受信部230からパケットが送信される(ステップS308)。
【0068】
一方、宛先アドレスに対応する送信先を指示する経路設定パケットが事前に受信されていない場合には(ステップS306No)、パケットの送信先が特定されないため、BAP送信制御部214へ出力されたパケットが破棄される(ステップS307)。これにより、送信先が不明なパケットが無駄に送信されることがなく、IABネットワークにおいて送受信されるパケット量が増加することを防止することができる。
【0069】
以上のように、本実施の形態によれば、複数のIABノードへ同一のデータを送信するブロードキャスト又はマルチキャストが実行される場合には、IABドナーは、BAPのパケットの宛先アドレスをブロードキャスト用アドレス又はマルチキャスト用アドレスに設定して送信する。そして、パケットを受信するIABノードは、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであれば、下位に接続するすべてのIABノードへパケットを転送し、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスであれば、事前に受信された経路設定パケットに従ってパケットを転送する。このため、IABドナーは、各IABノードへ個別にパケットを送信することなく、複数のIABノードへパケットを送信することができる。結果として、IABネットワークにおいて送受信されるパケット量を削減し、輻輳の発生を回避し、スループットの低下を抑制することができる。
【0070】
(実施の形態2)
ところで、上記実施の形態1に係るパケットのブロードキャストでは、各IABノードが下位に接続するすべてのIABノードへパケットを転送するため、IABノードの接続関係によっては複数の経路を介して同一のパケットが受信されることがある。具体的には、例えば図5に示したパケットのブロードキャストでは、IABノード#3は、IABノード#1、#2の双方から重複してパケットを受信する。同様に、IABノード#4も、IABノード#1、#2の双方から重複してパケットを受信する。
【0071】
そこで、実施の形態2においては、パケットのブロードキャストが行われる際、IABノードに同一のパケットが重複して受信されるのを回避する方法について説明する。
【0072】
図8は、実施の形態2に係る無線通信システムの構成例を示す図である。図8に示す無線通信システムは、実施の形態1に係る無線通信システム(図1)と同様の構成を有するが、実施の形態2においては、IABドナーとIABノード#1~#4とを接続するパス#1、#2が設定されている。具体的には、IABドナー、IABノード#1及びIABノード#3を接続するパス#1と、IABドナー、IABノード#2及びIABノード#4を接続するパス#2とが設定されている。パス#1、#2は、IABドナーによって経路探索が実行される際に定義される。
【0073】
なお、実施の形態2に係るIABドナー及びIABノード#1~#4の構成は、実施の形態1に係るIABドナー100(図2)及びIABノード200(図4)と同等であるため、その説明を省略する。実施の形態2においては、IABドナー100のBAP送信制御部122は、パケットの宛先アドレスをブロードキャスト用アドレスとする際に、パケットのヘッダのパスフィールドに、パス#1、#2のいずれかの識別情報を格納して送信する。また、BAP送信制御部122は、パス#1、#2それぞれに対応するパケットの送信先を指示する経路設定パケットを事前に各IABノードへ送信する。
【0074】
次いで、図8に示した無線通信システムにおけるパケットのブロードキャストについて、図9に示すシーケンス図を参照しながら説明する。図9において、図5と同じ部分には同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
【0075】
IABドナーは、データをブロードキャストする際に、パス#1、#2を定義し、パス#1、#2に応じた経路設定パケットをIABノード#1、#2へ送信する。
【0076】
具体的には、IABドナーは、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであり、パスがパス#1に設定されたパケットを終端処理するとともに、IABノード#3へ転送するように指示する経路設定パケットをIABノード#1へ送信する(ステップS401)。また、IABドナーは、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであり、パスがパス#2に設定されたパケットを、IABノード#4へ転送するように指示する経路設定パケットをIABノード#2へ送信する(ステップS402)。
【0077】
このように、IABドナーは、ブロードキャスト用アドレスのパケットを受信した場合のパスに応じたパケットの送信先を指示する経路設定パケットを各IABノードへ送信する。なお、経路設定パケットは、それぞれのパスに含まれるすべてのIABノードへ送信される。
【0078】
このようにパスごとに送信先が設定された状態で、ブロードキャストされるデータがIABドナーによって受信されると(ステップS101)、BAPのパケットが生成される。このとき、IABノード#1へ送信されるパケットの宛先アドレスはブロードキャスト用アドレスに設定され、パスがパス#1に設定される。同様に、IABノード#2へ送信されるパケットの宛先アドレスはブロードキャスト用アドレスに設定され、パスがパス#2に設定される。
【0079】
BAPのパケットは、IABドナーの下位に接続するIABノード#1、#2へ送信される(ステップS102、S103)。IABノード#1によってパケットが受信されると、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、BAP受信制御部211によってBAPの終端処理が実行された後、パケットに含まれていたデータは、IABノード#1の配下のUE#1へ無線送信される(ステップS104)。
【0080】
また、IABノード#1によって受信されたパケットの宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、このパケットは、BAP受信制御部211からBAP送信制御部214にも出力される。そして、パケットの宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであり、パスがパス#1に設定されていることから、事前に受信された経路設定パケットに従って、パケットの送信先がIABノード#3であると特定され、IABノード#3へパケットが転送される(ステップS105)。
【0081】
IABノード#1から送信されたパケットがIABノード#3によって受信されると、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、BAPの終端処理が実行され、パケットに含まれるデータがIABノード#3の配下のUE#2へ無線送信される。
【0082】
一方、IABドナーから送信されたパケットがIABノード#2によって受信されると、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、このパケットは、BAP受信制御部211からBAP送信制御部214へ出力される。そして、パケットの宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであり、パスがパス#2に設定されていることから、事前に受信された経路設定パケットに従って、パケットの送信先がIABノード#4であると特定され、IABノード#4へパケットが転送される(ステップS108)。なお、図9においてはIABノード#4の図示を省略しているが、ステップS108は、IABノード#2からIABノード#4へのパケットの転送を示している。
【0083】
IABノード#2から送信されたパケットがIABノード#4によって受信されると、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、BAPの終端処理が実行され、パケットに含まれるデータがIABノード#4の配下のUE#3へ無線送信される。
【0084】
このように、パスごとの経路設定をすることにより、パケットがブロードキャストされる場合にも、パケットが重複してIABノードに受信されることがない。すなわち、例えばIABノード#3は、IABノード#1から送信されるパケットを受信する一方、IABノード#2から送信されるパケットを受信しない。同様に、IABノード#4は、IABノード#1から送信されるパケットを受信しない一方、IABノード#2から送信されるパケットを受信する。したがって、同一のパケットが重複して送受信されることがなく、IABネットワークにおいて送受信されるパケット量を削減し、輻輳の発生を回避してスループットの低下を抑制することができる。
【0085】
以上のように、本実施の形態によれば、すべてのIABノードへ同一のデータを送信するブロードキャストが実行される場合に、IABドナーは、各IABノードを重複して通過しないパスを定義し、パスに応じたパケットの送信先を指示する経路設定パケットを各IABノードへ送信する。そして、IABドナーは、BAPのパケットの宛先アドレスをブロードキャスト用アドレスに設定するとともに、パスの識別情報をパケットのヘッダに格納して送信する。パケットを受信するIABノードは、宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであれば、事前に受信された経路設定パケットに従って、パスに応じた送信先のIABノードへパケットを転送する。このため、パケットがIABノードに重複して受信されることがなく、IABネットワークにおいて送受信されるパケット量を削減し、輻輳の発生を回避し、スループットの低下を抑制することができる。
【0086】
(他の実施の形態)
上記実施の形態1に係るパケットのマルチキャストでは、グループに属する各IABノードへ個別に経路設定パケットが送信されるものとした。しかしながら、経路設定パケットをブロードキャストすることにより、IABネットワークにおいて送受信される経路設定パケットを削減することも可能である。具体的には、IABドナーは、マルチキャストのグループに属するすべてのIABノードに関する経路設定情報を含む経路設定パケットを生成し、この経路設定パケットの宛先アドレスをブロードキャスト用アドレスに設定して送信しても良い。
【0087】
図10は、複数のIABノードに関する経路設定情報を含む経路設定パケットを用いるマルチキャストを示すシーケンス図である。図10において、図6と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
データがマルチキャストされる場合には、IABノードのグループが設定され、グループに属するIABノードがパケットを受信する。ここでは、IABノード#2を除く、IABノード#1、#3、#4がグループに属するものとして説明をする。IABドナーは、グループに属するIABノード#1、#3、#4へのパケットの転送経路を決定し、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスのパケットについて、IABノード#1、#3、#4それぞれからの送信先を指定する経路設定パケットを生成する。すなわち、IABドナーは、複数のIABノードの経路設定情報を含む経路設定パケットを生成する。そして、IABドナーは、生成した経路設定パケットの宛先アドレスをブロードキャスト用アドレスに設定し、IABノード#1へ送信する(ステップS501)。
【0089】
IABノード#1によって経路設定パケットが受信されると、IABノード#1は、経路設定パケットに含まれる自ノードに関する設定を記憶する。すなわち、IABノード#1は、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスであるパケットを受信した場合には、このパケットを終端処理してデータを配下のUE#1へ送信するとともに、パケットをIABノード#3、#4へ転送することを記憶する。そして、IABノード#1は、経路設定パケットの宛先アドレスがブロードキャスト用アドレスであることから、経路設定パケットを下位に接続するIABノード#3、#4へ転送する(ステップS502、S503)。
【0090】
IABノード#3、#4によって経路設定パケットが受信されると、IABノード#3、#4は、それぞれ経路設定パケットに含まれる自ノードに関する設定を記憶する。すなわち、IABノード#3は、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスであるパケットを受信した場合には、このパケットを終端処理してデータを配下のUE#2へ送信することを記憶する。同様に、IABノード#4は、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスであるパケットを受信した場合には、このパケットを終端処理してデータを配下のUE#3へ送信することを記憶する。
【0091】
このように、マルチキャストされるパケットの転送経路上に位置するすべてのIABノードに関する経路設定情報を経路設定パケットに含め、この経路設定パケットがブロードキャストされる。これにより、経路設定パケットを受信するIABノードは、自ノードに関する経路設定情報を記憶し、宛先アドレスがマルチキャスト用アドレスであるパケットの受信に備えることができる。
【0092】
経路設定パケットがブロードキャストされた後は、上記実施の形態1に係るパケットのマルチキャストと同様に、宛先アドレスにマルチキャスト用アドレスが設定されたパケットがIABドナーからIABノード#1、#3、#4へマルチキャストされる。
【0093】
以上説明したように、複数のIABノードに関する経路設定情報を含む経路設定パケットをブロードキャストすることにより、パケットがマルチキャストされる際に送受信される経路設定パケットの量を削減することができ、より確実に輻輳の発生を回避することができる。
【0094】
なお、上記各実施の形態は、適宜組み合わせて実施することが可能である。例えば、複数のIABノードに関する経路設定情報を含む経路設定パケットをブロードキャストする際に、上記実施の形態2のようにパスの設定をした上で経路設定パケットがブロードキャストされるようにしても良い。
【符号の説明】
【0095】
110 有線I/F部
120、210 プロセッサ
121、212 上位プロトコル処理部
122、214 BAP送信制御部
123 宛先アドレス設定部
124、211 BAP受信制御部
130、220 メモリ
140、230 無線送受信部
213 送信先判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10