(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20240423BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240423BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/12
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2022533668
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2021004031
(87)【国際公開番号】W WO2022004034
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2020112478
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 修
(72)【発明者】
【氏名】細谷 達也
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-028998(JP,A)
【文献】特開2015-223031(JP,A)
【文献】特開2011-199975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/40
H02J 50/12
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイル及び送電共振キャパシタを含む送電共振機構を有する送電回路と、前記送電コイルに磁気結合する受電コイル及び受電共振キャパシタを含む受電共振機構を有する受電回路と、を備えて、前記送電コイルから前記受電コイルへワイヤレスで電力を供給するワイヤレス給電システムにおいて、
前記送電回路は、それぞれが前記送電共振機構を構成する複数の送電共振機構の並列接続回路を有し、
前記送電回路は直流電源及びスイッチング回路を備え、前記スイッチング回路は前記複数の送電共振機構に対して
共通に接続されて、前記直流電源を
前記複数の送電共振機構に同時かつ断続的かつ周期的に与え、
前記スイッチング回路に流れる電流を前記複数の送電共振機構に分流して前記複数の送電共振機構のそれぞれに送電共振電流を発生させ、
前記複数の送電共振機構と前記受電共振機構とにより電磁界共鳴結合が形成され、前記受電共振機構は、前記電磁界共鳴結合によって誘導される共振電流を重ね合わせて受電電力を得る、
ワイヤレス給電システム。
【請求項2】
前記受電共振機構は前記スイッチング回路による、前記直流電源のスイッチング周波数において共鳴し、前記受電回路に共振電流が流れるように前記受電共振キャパシタが設定された、
請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項3】
前記送電共振キャパシタは、前記複数の送電共振機構がそれぞれ備える前記送電コイルと前記受電コイルとの位置関係と、前記送電コイル及び前記受電コイルの形状と、に応じて定まる磁気結合に応じて、前記電磁界共鳴結合を形成するように調整された、電子部品によるキャパシタを備える、
請求項1又は2に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項4】
前記複数の送電共振機構の前記送電コイルのうち、少なくとも2つの送電コイルは互いに磁気結合して相互インダクタンスを形成する、
請求項1から3のいずれかに記載のワイヤレス給電システム。
【請求項5】
前記受電回路は複数存在し、各受電回路の前記受電コイルは前記複数の送電共振機構の前記送電コイルにそれぞれ占有的にワイヤレスで磁気結合する、
請求項1から4のいずれかに記載のワイヤレス給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電回路と受電回路とで構成されるワイヤレス給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、送電装置と受電装置の任意の位置関係で高効率な電力伝送を実現する無線電力伝送システムが示されている。この特許文献1のシステムは、コイルとリアクタンス回路からなる送電側共振回路と各送電側共振回路に電力を供給する交流電源とを有する送電装置と、コイルとリアクタンス回路からなる受電側共振回路と受電側共振回路の負荷回路とを有する受電装置と、を備え、送電側共振回路と受電側共振回路とを共鳴結合することで、交流電源から負荷回路へ電力を無線伝送するシステムであって、各リアクタンス回路の各リアクタンスが、送電装置と受電装置とを所定の位置関係に配置した場合に得られる各コイルの各自己インダクタンスおよび各コイル間の各相互インダクタンスを定数とし、各リアクタンスを変数とする送電装置および受電装置を表す回路方程式を用いて算出された電力の伝送効率に基づき決定された各値を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤレス給電の一つのシステムとして、例えば、乾電池型2次電池をワイヤレスで充電する技術がある。その充電電流は有線で充電する場合と同等の電気仕様である。乾電池サイズに収まる小さな受電コイルに、そのような電気仕様を満たす充電電流を供給するため、利便性が良く、シンプルな構成で高い電力効率により電力を受電できる技術が必要である。
【0005】
直流電源を用いて、送電共振機構と受電共振機構とが共振する共鳴ワイヤレス給電、いわゆる直流共鳴ワイヤレス給電においては、一般に、受電電力を大きくするために、送電共振機構の共振周波数を最適な値に調整し、送電共振機構に流れる共振電流を大きくする必要がある。
【0006】
一般に、受電電力を大きくするには、送電側の電源電圧を高くするなどして送電共振電流を大きくする技術があるが、電源電圧を高くすると、電力回路を構成するスイッチング素子などの電力半導体において、電圧ストレスは大きくなり、スイッチング素子の耐圧を高くする必要があり、電力半導体が大型化したり、電力損失が増大したり、電圧ストレスにより信頼性が低下したりする問題がある。
【0007】
また、送電共振電流を大きくすると、送電コイルの発熱が大きくなり、送電コイルの導体幅や導体厚を大きくすることで実効面積を大きくして等価インピーダンスを小さくする必要がある。さらに、送電共振電流が大きくなると、送電コイルだけでなく、送電共振キャパシタなどに加わる電圧も高くなるので、共振回路を構成する部品における電力損失も大きくなり、発熱や部品サイズの大型化が問題となる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、直流共鳴ワイヤレス給電において、送電側の直流電源電圧を高くすることなく、また、送電共振電流を大きくすることなく、大きな電力を送電して、大きな電力を受電できるワイヤレス給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本開示の一例としてのワイヤレス給電システムは、
送電コイル及び送電共振キャパシタを含む1組の送電共振機構と、前記送電コイルと磁気結合する受電コイル及び受電共振キャパシタを含む受電共振機構を有する受電回路とを備え、前記送電コイルから前記受電コイルへワイヤレスで電力を供給するワイヤレス給電システムにおいて、
前記送電共振機構を含む複数の送電共振機構を並列に接続して送電回路を構成し、
前記送電回路は、直流電源及びスイッチング回路を備え、前記スイッチング回路を用いて前記複数の送電共振機構に対して前記直流電源を断続的かつ周期的に与え、
前記複数の送電共振機構と前記受電共振機構とにより電磁界共鳴結合が形成され、前記受電共振機構は、前記複数の送電共振機構が発生させる電磁界共鳴結合によって誘導される共振電流を重ね合わせて受電電力を得る、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、共鳴ワイヤレス給電において、送電側の直流電源電圧を高くすることなく、また、送電共振電流を大きくすることなく、シンプルな構成で、電力回路の部品を大型化させることなく、大きな電力を送電し、大きな電力を受電できるワイヤレス給電システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るワイヤレス給電システム101の回路図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したワイヤレス給電システム101の各部の波形図である。
【
図3】
図3は、第2の実施形態に係るワイヤレス給電システム102の回路図である。
【
図4】
図4は第3の実施形態に係るワイヤレス給電システムにおける送電コイルL1,L2,L3及び受電コイルLAの斜視図である。
【
図5】
図5は第3の実施形態の別の送電コイル同士の位置関係の例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第4の実施形態に係るワイヤレス給電システムに関する部分の第1の回路構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、第4の実施形態に係るワイヤレス給電システムに関する部分の第2の回路構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、第4の実施形態に係るワイヤレス給電システムに関する部分の第3の回路構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、第4の実施形態に係るワイヤレス給電システムに関する部分の第4の回路構成例を示す図である。
【
図10】
図10は、第4の実施形態に係るワイヤレス給電システムに関する部分の第5の回路構成例を示す図である。
【
図11】
図11は、第4の実施形態に係るワイヤレス給電システムに関する部分の第6の回路構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0013】
《第1の実施形態》
図1は、第1の実施形態に係るワイヤレス給電システム101の回路図である。このワイヤレス給電システム101は、送電回路11と受電回路21とで構成されている。送電回路11は、送電コイルL1,L2,L3及び送電共振キャパシタC1,C2,C3を含む送電共振機構TRM1,TRM2,TRM3を有する。送電コイルL1,L2,L3の端子T1,T2,T3に関しては後に説明する。受電回路21は、送電コイルL1,L2,L3に磁気結合する受電コイルLA及び受電共振キャパシタCAを含む受電共振機構RRMを有する。受電コイルLAの端子TA1,TA2に関しては後に説明する。ワイヤレス給電システム101は、送電コイルL1,L2,L3から受電コイルLAへワイヤレスで電力を供給するシステムである。
【0014】
この例では3つの送電共振機構TRM1,TRM2,TRM3は並列接続回路を構成する。送電回路11は、方形波電圧を発生する(方形波電力を供給する)方形波電源回路Vinを有する。この方形波電源回路Vinは、直流電源とそれをスイッチングするスイッチング回路とで構成されている。つまり、スイッチング回路は複数の送電共振機構TRM1,TRM2,TRM3に対して直流電圧を断続的かつ周期的に与える。このスイッチング回路は、例えば水晶振動子等から生成されるクロック信号でスイッチング周波数を定める。
【0015】
送電共振機構TRM1,TRM2,TRM3のいずれも、上記スイッチング回路のスイッチング周波数で共振する。これにより、送電共振機構TRM1に共振電圧Vres1が発生し、共振電流Ires1が流れる。同様に、送電共振機構TRM2に共振電圧Vres2が発生し、共振電流Ires2が流れ、送電共振機構TRM3に共振電圧Vres3が発生し、共振電流Ires3が流れる。
【0016】
複数の送電共振機構TRM1,TRM2,TRM3と受電共振機構RRMとにより電磁界共鳴結合が形成される。受電共振機構RRMには共振電流IresAが流れ、共振電圧VresAが発生する。受電共振機構RRMの共振周波数は上記スイッチング周波数で共鳴する。これにより、受電共振機構RRMは、電磁界共鳴結合によって誘導される共振電流が重ね合わされた受電電力を得る。
【0017】
受電回路21は、上記受電共振機構RRM、整流回路を構成するダイオードブリッジDB、平滑キャパシタCo1,Co2、DC-DCコンバータ31及び負荷を備える。
【0018】
ダイオードブリッジDBは、受電共振機構RRMを構成する受電コイルLA及び受電共振キャパシタCAの並列共振回路の電圧を入力して整流する。
【0019】
平滑キャパシタCo1はダイオードブリッジDBの整流電圧を平滑する。DC-DCコンバータ31は、配置などにより変動する受電電圧に対して一定となる所定の電圧に変換し、平滑キャパシタCo2はDC-DCコンバータ31の出力を平滑する。このようにして、所定の直流電圧が負荷へ供給される。
【0020】
図2は、
図1に示したワイヤレス給電システム101の各部の波形図である。方形波電源回路Vinの方形波電圧が送電共振機構TRM1に印加されることで、送電コイルL1に共振電圧Vres1が印加され、共振電流Ires1が流れる。送電共振機構TRM1は送電コイルL1と送電共振キャパシタC1との共振回路であるので、送電コイルL1及び送電共振キャパシタC1に正弦波状の共振電流Ires1が流れ、正弦波状の共振電圧Vres1が発生する。この共振電流と共振電圧とは90°の位相差がある。
【0021】
上述の作用は、送電共振機構TRM2,TMR3についても同様である。すなわち、送電コイルL2に正弦波状の共振電圧Vres2が印加され、正弦波状の共振電流Ires2が流れ、送電コイルL3に正弦波状の共振電圧Vres3が印加され、正弦波状の共振電流Ires3が流れる。
【0022】
受電共振機構RRMの受電コイルLAは送電コイルL1,L2,L3に磁気結合して、受電共振機構RRMは共振するので、受電コイルLAに正弦波状の共振電流IresAが流れ、受電共振機構RRMに正弦波状の共振電圧VresAが発生する。この共振電流と共振電圧とは90°の位相差がある。
【0023】
送電共振機構TRM1,TRM2,TRM3と受電共振機構RRMとにより電磁界共鳴結合が形成され、受電共振機構RRMには複数の送電共振機構TRM1,TRM2,TRM3からそれぞれ誘導される共振電流が重ね合わされた電流が流れる。したがって、単一の送電共振機構と単一の受電共振機構とが結合する構成に比べて、給電電力を大きくできる。
【0024】
複数の送電コイルL1,L2,L3のうち、少なくとも2つの送電コイルは互いに磁気結合して相互インダクタンスを形成する。例えば、送電コイルL1と送電コイルL2との磁気結合により相互インダクタンス(送電相互インダクタンス)が形成され、送電コイルL2と送電コイルL3との磁気結合により相互インダクタンス(送電相互インダクタンス)が形成される。
【0025】
送電共振キャパシタC1,C2,C3は電子部品としてのキャパシタで構成されている。送電コイルL1,L2,L3と受電コイルLAとの位置関係と、送電コイルL1,L2,L3及び受電コイルLAの形状と、に応じて定まる磁気結合に応じて、電磁界共鳴結合を形成するように、上記送電共振キャパシタC1,C2,C3のキャパシタンスは調整されている。
【0026】
本実施形態によれば、交流電源を必要とせず、また、方形波電源回路Vinの直流電圧を高めることなく、給電電力を高めることができるので、直流電圧をスイッチングするスイッチング素子の耐圧を大きくする必要がなく、半導体の大型化や電圧ストレスの高まりが回避できる。また、送電共振電流が大きくならないので、送電コイルの発熱が増大せず、送電コイルの導体幅や導体厚を大きくすることも不要となる。さらに、送電共振電流の増大による送電共振キャパシタなどの共振素子における電力損失の増大及び発熱の問題も回避できる。
【0027】
また、方形波電源回路Vinは水晶振動子等から生成されるクロック信号を利用でき、電源電圧を高く設定する必要がないので、送電回路11の動作周波数の高周波化が容易である。
【0028】
また、送電コイルL1,L2,L3と受電コイルLAとの所定の配置に影響するそれぞれの結合係数に応じて調整された、送電共振キャパシタC1,C2,C3のキャパシタンスにより、複数の送電共振機構が構成されて、受電コイルLAの位置が変化した場合においても、大きな変化範囲において、重ね合わせの理により所定の受電電力を得ることができる。
【0029】
また、複数の送電コイルL1,L2,L3の少なくとも1組は、電磁界共鳴結合を形成し、送電相互インダクタンスを形成するので、送電共振キャパシタC1,C2,C3のキャパシタンスは、送電相互インダクタンスを含めた送電コイルL1,L2,L3のインダクタンスとで調整することができ(送電コイルL1,L2,L3の自己インダクタンスを下げることができ)、電磁界共鳴結合させるための送電共振キャパシタC1,C2,C3のキャパシタンスによる調整範囲を広げることができる。つまり、自己インダクタンスに相互インダクタンスが加わった合成インダクタンスにより、共振に要するキャパシタの値を決めるので、結果的に送電共振キャパシタの値は小さいものを選択できる。耐圧的観点から、キャパシタンスの小さなキャパシタは種類が多く、選択肢が増えるので、調整範囲が広がる。
【0030】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、複数の受電回路を備えるワイヤレス給電システムについて例示する。
【0031】
図3は、第2の実施形態に係るワイヤレス給電システム102の回路図である。このワイヤレス給電システム102は、送電回路12と受電回路22とで構成されている。送電回路12は、送電コイルL1,L2・・・Ln及び送電共振キャパシタC1,C2・・・Cnを含む送電共振機構TRM1,TRM2・・・TRMnを有する。受電回路22は、送電コイルL1,L2・・・Lnに磁気結合する受電コイルLA1・・・LAm及び受電共振キャパシタCA1・・・CAmを含む受電共振機構RRM1・・・RRMmを有する。ワイヤレス給電システム102は、送電コイルL1,L2・・・Lnから受電コイルLA1・・・LAmへワイヤレスで電力を供給するシステムである。
【0032】
図1に示した例とは異なり、送電回路12は3つ以上の送電共振機構TRM1,TRM2・・・TRMnを有する。また、受電回路22は複数の受電共振機構RRM1・・・RRMmを有する。各受電共振機構RRM1・・・RRMmには、ダイオードブリッジDB、平滑キャパシタCo1,Co2、DC-DCコンバータ31及び負荷による回路がそれぞれ接続されている。
【0033】
複数の送電共振機構TRM1,TRM2・・・TRMnと複数の受電共振機構RRM1・・・RRMmとにより電磁界共鳴結合が形成される。
【0034】
複数の受電回路22の各受電コイルLA1・・・LAmは複数の送電コイルL1,L2・・・Lnにそれぞれ占有的にワイヤレスで磁気結合する。つまり、送電コイルL1,L2・・・Lnと受電コイルLA1・・・LAmとが、それぞれ一対一、または、複数対一で磁気結合して電磁界共鳴結合が形成される。
【0035】
本実施形態によれば、複数の受電回路22において、それぞれ電力を利用することができる。また、複数の受電回路22は、送電回路12の動作周波数において共鳴するように受電共振機構が設定されていることにより、複数の受電回路22の配置や距離が変化しても、安定した受電電力を得ることができる。
【0036】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、複数の送電コイルの構成、及び送電コイルと受電コイルとの位置関係の例について示す。
【0037】
図4は第3の実施形態に係るワイヤレス給電システムにおける送電コイルL1,L2,L3及び受電コイルLAの斜視図である。送電コイルL1,L2,L3それぞれは約2ターンの矩形状コイルであり、Z軸方向に積層状態に配置されていて、それぞれのコイル開口COが重なっている。送電コイルL1,L2,L3の一方端はグランド端子GNDでありグランドに接続される。他方端は個別の端子T1,T2,T3である。これら端子T1,T2,T3は
図1中に示した端子T1,T2,T3に対応する。
図1等に示したように、これら端子T1,T2,T3とグランド端子GNDとの間に、送電共振キャパシタC1,C2,C3をそれぞれ介して方形波電源回路Vinが接続される。
【0038】
受電コイルLAは約2ターンの矩形状コイルであり、2つの端子TA1,TA2を有する。この2つの端子TA1,TA2は
図1中に示した端子TA1,TA2に対応する。
【0039】
図4に示した構成によれば、同形状の送電コイルL1,L2,L3が積層状に配置されているので、コイル開口COを通過する磁束を形成するための、各送電コイルL1,L2,L3に流れる電流が分担される。但し、各々、相互インダクタンスの極性が正になるように、各送電コイルL1,L2,L3は同方向に巻かれている。
【0040】
上記送電共振キャパシタC1,C2,C3のキャパシタンスは、送電コイルL1,L2,L3と受電コイルLAとの位置関係と、送電コイルL1,L2,L3及び受電コイルLAの形状と、に応じて定まる磁気結合に応じて、電磁界共鳴結合を形成するように調整されている。つまり、送電コイルL1,L2,L3は互いに近接させ、またコイルの巻き方向も同じにすることで、互いの結合を強くしている。このことにより、各相互インダクタンスは自己インダクタンスに近づく。また、送電コイルL1,L2,L3は互いに近接しているので、送電コイルL1,L2,L3それぞれの自己インダクタンス及び相互インダクタンスの合成インダクタンスはほぼ同じになる。このことを踏まえ、送電共振キャパシタC1,C2,C3の値を決める。
【0041】
一方、各送電コイルL1,L2,L3と受電コイルLAとの間は、送電コイルL1,L2,L3間よりも距離があるので、受電コイルLAから見れば、送電コイルL1,L2,L3はほぼ同じ位置にあると見做して、送電共振キャパシタの値を決めることができる。
【0042】
なお、配線の寄生インピーダンスがあると、設定すべき共振周波数がずれるので、実装の際、送電コイルL1,L2,L3と送電共振キャパシタC1,C2,C3との間の配線距離は短いことが好ましい。
【0043】
図5は第3の実施形態の別の送電コイル同士の位置関係の例を示す斜視図である。送電コイルL1,L2,L3それぞれは約2ターンの矩形状コイルである。送電コイルL1は、Y-Z面に配置されてX軸方向をコイル軸とするコイルであり、送電コイルL2は、X-Y面に配置されてZ軸方向をコイル軸とするコイルであり、送電コイルL3は、X-Z面に配置されてY軸方向をコイル軸とするコイルである。
【0044】
このように、送電コイルL1,L2,L3を、XYZ面に配置することにより、
図5中破線で示す空間領域に3軸方向の成分を有する磁界が形成される。したがって、この空間領域に受電コイルを配置することにより、送電コイルL1,L2,L3と受電コイルとは磁界結合する。その際、受電コイルのコイル開口の向きは固定されず、任意である。そのため、受電コイルの配置の自由度が高い。
【0045】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、ワイヤレス給電システムの方形波電源回路Vinの具体例な構成及び受電回路の整流平滑回路の具体例な構成について例示する。
【0046】
図6は、ワイヤレス給電システムに関する部分の第1の回路構成例を示す図である。この例は送電側がD級インバータ動作、受電側が直列共振、倍電圧整流動作する回路である。
【0047】
送電回路11は、方形波電源回路Vin、送電コイルL1,L2,L3及び送電共振キャパシタC1,C2,C3を含む。
【0048】
方形波電源回路Vinは直流電源Viを備える。また、方形波電源回路Vinは、等価的にスイッチング素子Q1、ダイオードDds1及びキャパシタCds1の並列接続回路で構成される第1スイッチ回路S1と、等価的にスイッチング素子Q2、ダイオードDds2及びキャパシタCds2の並列接続回路で構成される第2スイッチ回路S2と、スイッチング素子Q1,Q2の制御を行う図外のスイッチング制御回路と、を備える。この方形波電源回路Vinは直流電源Viを断続して、送電共振機構に対して直流電源を断続的かつ周期的に与える。
【0049】
スイッチング素子Q1,Q2はMOSFETなどの、寄生出力容量や寄生ダイオードを有するスイッチング素子であり、スイッチ回路S1、S2を構成する。
【0050】
第1スイッチ回路S1のスイッチング素子Q1及び第2スイッチ回路S2のスイッチング素子Q2は交互にオン/オフされる。
【0051】
方形波電源回路Vinのスイッチング制御回路は第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を所定の動作周波数でスイッチングすることで、直流電圧を送電共振回路に断続的に与えて、送電コイルL1,L2,L3に共振電流を発生させる。これにより、送電コイルL1,L2,L3に正弦波状の電流を流す。具体的には、NFC通信で用いられる13.56MHzでスイッチング動作させる。
【0052】
受電回路21は、受電コイルLAと受電共振キャパシタCAによる受電共振機構RRMと整流平滑回路20とを備える。整流平滑回路20は、等価的にスイッチング素子Q3、ダイオードDds3及びキャパシタCds3の並列接続回路で構成されるスイッチ回路S3と、ダイオードD4とを備える。ダイオードD4は寄生容量キャパシタCds4を有する。
【0053】
スイッチ回路S3及びダイオードD4は、受電コイルLAと受電共振キャパシタCAによる受電共振回路に発生する電圧を整流し、平滑キャパシタCo1はその電圧を平滑する。この例では、受電コイルLAと受電共振キャパシタCAとは直列共振回路を構成している。
【0054】
図7は、ワイヤレス給電システムに関する部分の第2の回路構成例を示す図である。この例は送電側がD級インバータ動作、受電側が並直列共振、倍電圧整流動作する回路である。送電側の構成は
図6に示した例と同じである。受電回路21は、受電コイルLAと受電共振キャパシタCAs,CApによる受電共振機構RRMと整流平滑回路20とを備える。受電コイルLAと受電共振キャパシタCAsとは直列共振回路を構成していて、受電コイルLAと受電共振キャパシタCApとは並列共振回路を構成している。整流平滑回路20の構成は
図6に示した例と同じである。
【0055】
図8は、ワイヤレス給電システムに関する部分の第3の回路構成例を示す図である。この例は送電側がD級インバータ動作、受電側が並直列共振、全波整流動作する回路である。送電側の構成は
図6に示した例と同じである。受電回路21は、受電コイルLAと受電共振キャパシタCAs,CApによる受電共振機構RRMと整流平滑回路20とを備える。受電コイルLAと受電共振キャパシタCAsとは直列共振回路を構成していて、受電コイルLAと受電共振キャパシタCApとは並列共振回路を構成している。整流平滑回路20は、ダイオードブリッジDB、スイッチング素子Q3及び平滑キャパシタCo1で構成されている。ダイオードブリッジDBは、受電コイルLA及び受電共振キャパシタCAs,CApによる受電共振機構の共振電圧を全波整流する。スイッチング素子Q3はオン状態のとき、ダイオードブリッジDBの全波整流動作を停止させ、電力受電を停止する。
【0056】
図9は、ワイヤレス給電システムに関する部分の第4の回路構成例を示す図である。この例は送電側がE級インバータ動作、受電側が直列共振、E級整流動作する回路である。
【0057】
方形波電源回路Vinは、等価的にスイッチング素子Q1、ダイオードDds1及びキャパシタCds1の並列接続回路で構成される第1スイッチ回路S1と、インダクタLfと、キャパシタCiとスイッチング素子Q1の制御を行う図外のスイッチング制御回路と、を備える。
【0058】
スイッチング素子Q1はMOSFETなどの、寄生出力容量や寄生ダイオードを有するスイッチング素子であり、第1スイッチ回路S1を構成する。
【0059】
方形波電源回路Vinのスイッチング制御回路は、第1スイッチング素子Q1を所定の動作周波数でスイッチングすることで、インダクタLf、送電共振キャパシタC1,C2,C3及び送電コイルL1,L2,L3による共振回路に直流電圧を断続的に与えて、送電コイルL1,L2,L3に共振電流を発生させる。
【0060】
受電回路21は、受電コイルLAと受電共振キャパシタCAによる受電共振機構RRMと整流平滑回路20とを備える。整流平滑回路20は、等価的にスイッチング素子Q3、ダイオードDds3及びキャパシタCds3の並列接続回路で構成されるスイッチ回路S3と、インダクタLfsと、平滑キャパシタCo1と、を備える。
【0061】
スイッチ回路S3は、受電コイルLA、受電共振キャパシタCA及びインダクタLfsによる受電共振回路に発生する電圧を整流し、平滑キャパシタCo1はその電圧を平滑する。
【0062】
図10は、ワイヤレス給電システムに関する部分の第5の回路構成例を示す図である。この例は送電側がE級インバータ動作、受電側が並直列共振、倍電圧整流動作する回路である。
【0063】
送電回路11の構成は
図9に示した例と同様である。受電回路21の構成は
図7に示した例と同様である。
【0064】
図11は、ワイヤレス給電システムに関する部分の第6の回路構成例を示す図である。この例は送電側がE級インバータ動作、受電側が並直列共振、全波整流動作する回路である。
【0065】
送電回路11の構成は
図9に示した例と同様である。受電回路21の構成は
図8に示した例と同様である。
【0066】
以上に示した例のように、送電回路11の方形波電源回路VinとしてはD級インバータ構成やE級インバータ構成をとることができる。また、受電回路21の受電共振機構としては、
図1、
図3等に示した並列共振以外に、直列共振や並列直列共振を用いることができる。また、整流平滑回路としては、全波整流回路以外に倍電圧整流回路やE級整流回路の構成をとることができる。
【0067】
図6から
図11に示した例では、送電回路11、受電共振機構PRM、整流平滑回路20の幾つかの組み合わせについて示したが、これらは、例示であって、その他の組合せも可能である。
【0068】
なお、
図6から
図11では、単一の受電回路21を備えるワイヤレス給電システムについて例示したが、
図3に示したように、複数の受電回路22を備えてもよい。そして、各受電共振機構及び整流平滑回路の構成は異なっていてもよい。
【0069】
最後に、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。当業者によって適宜変形及び変更が可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変形及び変更が含まれる。
【符号の説明】
【0070】
C1,C2,C3…送電共振キャパシタ
CA,CA1…受電共振キャパシタ
CO…コイル開口
Co1,Co2…平滑キャパシタ
DB…ダイオードブリッジ
GND…グランド端子
L1,L2,L3…送電コイル
LA,LA1…受電コイル
RRM,RRM1…受電共振機構
S1,S2,S3…スイッチ回路
T1,T2,T3…端子
TA1,TA2…端子
TRM1,TRM2,TRM3…送電共振機構
Vi…直流電源
Vin…方形波電源回路
11,12…送電回路
20…整流平滑回路
21,22…受電回路
31…DC-DCコンバータ
101,102…ワイヤレス給電システム