(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】構造体および電子部品付き構造体
(51)【国際特許分類】
H05K 1/14 20060101AFI20240423BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H05K1/14 Z
H05K1/02 N
(21)【出願番号】P 2022560661
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2021033747
(87)【国際公開番号】W WO2022097370
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2020185615
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 和則
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-237233(JP,A)
【文献】特開平07-202437(JP,A)
【文献】特開平07-193350(JP,A)
【文献】特開2009-100440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および前記第1面とは反対側を向く第2面を有する主基板と、
前記主基板に設けられた電源モジュールと、
前記主基板に設けられたソケットと、
前記主基板の厚み方向に延在して前記ソケットを貫通する、1以上の電源配線および1以上の信号配線とを備え、
前記1以上の電源配線の各々は、前記第1面側の第1端と、前記第1端とは反対側の第2端とを有しており、
前記1以上の信号配線の各々は、電子部品に電気的に接続されるための第3端と、前記第3端とは反対側の第4端とを有しており、
前記第4端は、前記第1面に設けられた導体パターンに電気的に接続されて
おり、
前記主基板は、前記第1面と前記第2面とを結ぶ貫通孔を有し、
前記電源モジュールは前記第2面に設けられており、
前記ソケットは、前記第1面に設けられ、前記第1面に沿って配置される本体部と、前記本体部から突出する部分であって前記貫通孔に挿入される突出部とを備え、
前記1以上の電源配線は、前記突出部を貫通しており、
前記1以上の電源配線に含まれる第1電源配線の長さは、前記1以上の信号配線に含まれる第1信号配線の長さよりも長い、構造体。
【請求項2】
第1面および前記第1面とは反対側を向く第2面を有する主基板と、
前記主基板に設けられた電源モジュールと、
前記主基板に設けられたソケットと、
前記主基板の厚み方向に延在して前記ソケットを貫通する、1以上の電源配線および1以上の信号配線とを備え、
前記1以上の電源配線の各々は、前記第1面側の第1端と、前記第1端とは反対側の第2端とを有しており、
前記1以上の信号配線の各々は、電子部品に電気的に接続されるための第3端と、前記第3端とは反対側の第4端とを有しており、
前記第4端は、前記第1面に設けられた導体パターンに電気的に接続されており、
前記ソケットは前記電源モジュールを受け入れるための電源モジュール受入部を有し、
前記電源モジュールは前記電源モジュール受入部に配置され、
前記第2端は前記電源モジュール受入部の内部で前記電源モジュールに接続されている、構造体。
【請求項3】
前記1以上の電源配線に含まれる第1電源配線の長さと、前記1以上の信号配線に含まれる第1信号配線の長さとが異なっている、請求項1
または2に記載の構造体。
【請求項4】
前記1以上の電源配線は、前記1以上の信号配線に比べて太い、請求項1から
3のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項5】
前記第1面に垂直な方向から前記ソケットを見たとき、前記1以上の信号配線は、前記1以上の電源配線を取り囲むように配置されている、請求項1から
4のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項6】
前記ソケットは、チップ部品を受け入れるためのチップ部品受入部を有し、前記チップ部品受入部の内部には前記チップ部品が配置されており、前記チップ部品は、前記電源配線に電気的に接続されている、請求項1から
5のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項7】
前記チップ部品はコンデンサである、請求項
6に記載の構造体。
【請求項8】
前記第1端、前記第2端、前記第3端、および前記第4端の少なくともいずれかは、外力によって前記主基板の厚み方向に押されたときに弾性変形しつつ前記外力に抵抗する弾性構造を備える、請求項1から
7のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項9】
前記1以上の電源配線は、接地された1以上のGND配線と、接地されていない1以上の非GND配線とを含み、前記1以上のGND配線は、前記1以上の非GND配線と前記1以上の信号配線との間に配置されている、請求項1から
8のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項10】
前記第1端と前記第3端とは、同一平面内にある、請求項1から
9のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか1項に記載の構造体と、前記電子部品とを備え、前記第1端および前記第3端は、前記電子部品に電気的に接続されている、電子部品付き構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体および電子部品付き構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品が基板上に実装される場合、この電子部品にどのように電源を供給するかが問題となる。特開2016-134543号公報(特許文献1)には、半導体モジュールと回路基板とを備える「半導体装置」が開示されている。半導体モジュールは、回路基板に接続されている。半導体モジュールの内部には、半導体素子が配置されている。回路基板の表面に電源配線が配置されている。半導体素子からは外部接続端子が引き出され、外部接続端子は電源配線と接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成においては、電源配線における電気エネルギの損失が問題となる。損失を小さく抑えるためには、電源配線の幅を大きくすることが考えられる。しかし、電源配線が配置されることによって、回路基板の表面の一部は、部品の実装には利用できない状態となっているところに、電源配線の幅を大きくすれば、電源配線が基板表面において占める面積がますます大きくなってしまい、基板表面のうち部品の実装に利用できる面積がさらに減ってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、電源配線における電気エネルギの損失を抑えつつ、基板表面の実装可能面積を大きく確保することが可能な構造体および電子部品付き構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に基づく構造体は、第1面および前記第1面とは反対側を向く第2面を有する主基板と、前記主基板に設けられた電源モジュールと、上記主基板に設けられたソケットとと、上記主基板の厚み方向に延在して上記ソケットを貫通する、1以上の電源配線および1以上の信号配線とを備える。上記1以上の電源配線の各々は、前記第1面側の第1端と、上記第1端とは反対側の第2端とを有している。上記1以上の信号配線の各々は、電子部品に電気的に接続されるための第3端と、上記第3端とは反対側の第4端とを有している。上記第4端は、上記第1面に設けられた導体パターンに電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1以上の電源配線および1以上の信号配線は、主基板の厚み方向にソケットを貫通するように配置されており、それぞれ適切に接続されているので、電源配線における電気エネルギの損失を抑えつつ、基板表面の実装可能面積を大きく確保することが可能な構造体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に基づく実施の形態1における電子部品付き構造体の断面図である。
【
図2】本発明に基づく実施の形態1における構造体の断面図である。
【
図3】本発明に基づく実施の形 態1における構造体に備わるソケットの平面図である。
【
図4】本発明に基づく実施の形態2における電子部品付き構造体の断面図である。
【
図5】本発明に基づく実施の形態2における構造体の断面図である。
【
図6】本発明に基づく実施の形態3における電子部品付き構造体の断面図である。
【
図7】本発明に基づく実施の形態3における構造体に備わる電源配線の側面図である。
【
図8】本発明に基づく実施の形態3における構造体に備わる電源配線の一部において内部構造が見えるようにした図である。
【
図10】電源配線の第1端の第2の形状の例である。
【
図11】電源配線の第1端の第3の形状の例である。
【
図12】電源配線の第1端の第4の形状の例である。
【
図13】電源配線の第1端の第5の形状の例である。
【
図14】電源配線の第1端の第6の形状の例である。
【
図15】電源配線の第1端の第7の形状の例である。
【
図16】電源配線の第1端の第8の形状の例である。
【
図17】配線の先端の第1の例の第1の側面図である。
【
図18】配線の先端の第1の例の第2の側面図である。
【
図19】配線の先端の第2の例の第1の側面図である。
【
図20】配線の先端の第2の例の第2の側面図である。
【
図21】本発明に基づく実施の形態4における構造体の部分拡大断面図である。
【
図22】本発明に基づく実施の形態5における構造体の部分拡大断面図である。
【
図23】本発明に基づく実施の形態5における構造体の部分平面図である。
【
図24】本発明に基づく実施の形態6における構造体の部分拡大透視図である。
【
図25】本発明に基づく構造体で用いられうるソケットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面において示す寸法比は、必ずしも忠実に現実のとおりを表しているとは限らず、説明の便宜のために寸法比を誇張して示している場合がある。以下の説明において、上または下の概念に言及する際には、絶対的な上または下を意味するとは限らず、図示された姿勢の中での相対的な上または下を意味する場合がある。
【0010】
(実施の形態1)
図1~
図3を参照して、本発明に基づく実施の形態1における構造体および電子部品付き構造体について説明する。電子部品付き構造体501の断面図を
図1に示す。電子部品付き構造体501は、電子部品5および押さえ具6を含む。電子部品5は、たとえば、いわゆるXPUである。すなわち、電子部品5は、たとえば中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)であってもよく、画像処理装置(Graphics Processing Unit:GPU)であってよい。押さえ具6は、電子部品5を下向きに押さえつけた状態で、主基板1に対して固定するためのものである。押さえ具6は、たとえば切替レバー(図示せず)を備えており、この切替レバーを操作することによって、電子部品5を下向きに押さえつけている状態と、電子部品5に対する押さえつけを解除した状態との間で切り換えることができる。
【0011】
電子部品付き構造体501から電子部品5および押さえ具6を取り除いたところを
図2に示す。
図2に示す物は、構造体201である。電子部品5は、押さえ具6によって構造体201の上面に押さえつけられていた。構造体201の構成について、以下に述べる。
【0012】
構造体201は、第1面1aおよび第1面1aとは反対側を向く第2面1bを有する主基板1と、主基板1に設けられた電源モジュール3と、主基板1に設けられたソケット4とを備える。主基板1としては、たとえばガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板、ガラスポリイミド基板などが用いられうる。ソケット4の材料としては、絶縁性の樹脂が用いられうる。構造体201は、主基板1の厚み方向に延在してソケット4を貫通するように、1以上の電源配線8および1以上の信号配線9とを備える。1以上の電源配線8の各々は、第1面1a側の第1端71と、第1端とは反対側の第2端72とを有している。第1端71は、電子部品5に電気的に接続されている。第2端72は、電源モジュール3に電気的に接続されている。1以上の信号配線9の各々は、電子部品5に電気的に接続されるための第3端73と、第3端73とは反対側の第4端74とを有している。第4端74は、第1面1aに設けられた導体パターンに電気的に接続されている。第4端74は、第1面1aにはんだバンプを介して接続されていてよい。構造体201においては、1以上の電源配線8に含まれる第1電源配線の長さと、1以上の信号配線9に含まれる第1信号配線の長さとが異なっている。構造体201においては、電源配線8の方が信号配線9より長い。
【0013】
ソケット4の上面の様子を
図3に示す。複数の電源配線8が中央に配列されている。複数の信号配線9が複数の電源配線8を取り囲むように周囲に配列されている。電源配線8の径は信号配線9の径より大きい。すなわち、電源配線8は信号配線9より太い。
【0014】
なお、主基板1の第1面1aには、ここで図示されている以外の部品も配置されていてもよい。主基板1の第2面1bについても、同様である。他の部品としては、たとえばメモリ素子が配置されていてもよい。
【0015】
本実施の形態では、主基板1の厚み方向にソケット4を貫通するように配置された1以上の電源配線8および1以上の信号配線9を用いて、電子部品5と電源モジュール3との間の電気的接続を行なう構造となっているので、電源配線を主基板1の面方向に引き出す必要がない。したがって、電子部品5と電源モジュール3との間の電気的接続を、きわめて少ない面積で行なうことができる。その結果、基板表面の実装可能面積が減少することを抑制することができる。
【0016】
1以上の電源配線8および1以上の信号配線9は、主基板1の厚み方向にソケット4を貫通するように配置されるものであるので、薄膜状の導体パターンではなく柱状のものを用いることができる。特に、大きな電流を通すことが求められる電源配線8には、必要に応じて大きな径の導体柱を用いることができるので、電源配線8の電気抵抗を低減することができる。したがって、電子部品5に電力を供給する際の電気エネルギの損失を低減することができる。
【0017】
こうして、電源配線における電気エネルギの損失を抑えつつ、基板表面の実装可能面積を大きく確保することが可能な構造体を実現することができる。
【0018】
本実施の形態で示したように、電子部品付き構造体501は、構造体201と、電子部品5とを備え、第1端71および第3端73は、電子部品5に電気的に接続されている。電子部品付き構造体501は、本実施の形態で説明したような構成の構造体201を備えるので、電源配線における電気エネルギの損失を抑えつつ、基板表面の実装可能面積を大きく確保することが可能な電子部品付き構造体を実現することができる。ここでは、構造体201を備える例を挙げて示したが、電子部品付き構造体は、構造体201に代えて、本明細書で説明する他の構成の構造体を備えるものであってもよい。
【0019】
本実施の形態においては、構造体の好ましいひとつの例として、両面実装構造が採用されている例を示した(
図2参照)。すなわち、本実施の形態においては好ましいことに、構造体201においては、電源モジュール3は第2面1bに設けられている。電源モジュール3は、ネジ34によって第2面1bに固定されている。主基板1は、第1面1aと第2面1bとを結ぶ貫通孔1cを有する。ソケット4は、第1面1aに設けられている。ソケット4は、第1面1aに沿って配置される本体部41と、本体部41から突出する部分であって貫通孔1cに挿入される突出部42とを備える。前記1以上の電源配線8は、突出部42を貫通している。前記1以上の電源配線8に含まれる第1電源配線の長さは、前記1以上の信号配線9に含まれる第1信号配線の長さよりも長い。
【0020】
この構成を採用することにより、電源モジュール3を、電子部品5および押さえ具6が配置されている第1面1a側ではなく、第2面1b側に配置することとしているので、限られた面積の主基板1において、電源モジュール3を効率良く配置することができる。特に、電源モジュール3のサイズが大きい場合には、電源モジュール3を第2面1b側に配置することで、第1面1a側の実装可能面積に余裕ができるので、好ましい。
【0021】
本実施の形態で示したように、前記1以上の電源配線8は、前記1以上の信号配線9に比べて太いことが好ましい。この構成を採用することにより、電源配線8の電気抵抗を下げることができる。一般的に、電源配線8には大きな電流を通すことが求められるので、大きな電流を流すためには、電源配線8が太くなっていることが好都合である。一般的に、信号配線9にはあまり大きな電流を流す必要はないので、信号配線9は細いものであっても差し支えない。
【0022】
本実施の形態で
図3を参照して示したように、第1面1aに垂直な方向からソケット4を見たとき、信号配線9は、電源配線8を取り囲むように配置されていることが好ましい。電源配線8は、厚み方向に延在して電源モジュール3に向かい、その一方、信号配線9は主基板1に設けられたさまざまな配線、部品に向かう。このように信号配線9が、電源配線8を取り囲むように配置されていると、信号配線9は、電源配線8の存在によって妨げられることなく外側のいずれの方向に向かっても引き出しやすいので、好ましい。
【0023】
本実施の形態で
図1および
図2に示したように、第1端71と第3端73とは、同一平面内にあることが好ましい。この構成を採用することにより、電子部品5の平坦な面に対して、1以上の電源配線8と1以上の信号配線9とを一斉に当接させることが容易になる。電子部品5の端子は、この平坦な面に配置しておけばよい。
【0024】
(実施の形態2)
図4~
図5を参照して、本発明に基づく実施の形態2における構造体および電子部品付き構造体について説明する。電子部品付き構造体502の断面図を
図4に示す。電子部品付き構造体502は、電子部品5および押さえ具6を含む。電子部品5および押さえ具6の基本的な構成は、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0025】
電子部品付き構造体502から電子部品5および押さえ具6を取り除いたところを
図5に示す。
図5に示す物は、構造体202である。電子部品5は、押さえ具6によって構造体202の上面に押さえつけられていた。構造体202の構成について、以下に述べる。
【0026】
構造体202の基本的な構成は、実施の形態1で構造体201に関して説明したものと同様である。ただし、構造体201が両面実装構造であったのに対して、構造体202は片面実装構造である。
【0027】
構造体202においては、ソケット4は電源モジュール3を受け入れるための電源モジュール受入部4eを有する。電源モジュール3は電源モジュール受入部4eに配置されている。第2端72は電源モジュール受入部4eの内部で電源モジュール3に接続されている。ここで示す例では、電源モジュール受入部4eはソケット4の下面に設けられた凹部である。ソケット4は、筐体状となっており、電源モジュール3は、ソケット4の内部に完全に収容されている。すなわち、電源モジュール3は、ソケット4の下面から突出しないように配置されている。本実施の形態における構造体202においては、信号配線9の方が電源配線8より長い。電源モジュール3は主基板1の第1面1aに対して電気的に接続されていてもよい。
【0028】
本実施の形態では、主基板1の片方の面に電子部品5および電源モジュール3の両方を配置することができる。電源モジュール3と電子部品5との間の距離を短くすることができるので、電源配線8を短くすることができる。電源配線8が短いことによって、電気エネルギの損失をさらに抑えることができる。
【0029】
(実施の形態3)
図6~
図8を参照して、本発明に基づく実施の形態3における構造体および電子部品付き構造体について説明する。構造体および電子部品付き構造体の基本的な構成は、これまでに述べたものと同様である。
【0030】
本実施の形態における電子部品付き構造体503の断面図を
図6に示す。電子部品付き構造体503においては、第1端71、第2端72、第3端73、および第4端74の少なくともいずれかは、外力によって主基板1の厚み方向に押されたときに弾性変形しつつ前記外力に抵抗する弾性構造を備える。個々で用いられている電源配線8を単独で取り出したところを
図7に示す。電源配線8の一部において内部構造が見えるようにしたところを
図8に示す。電子部品付き構造体503において、電源配線8は筒状部材11の内部にばね12を配置した構造となっている。第1端71および第2端72は、外力を受けた際に、ばね12の弾性変形により後退することができる。一方、信号配線9には弾性構造は設けられていない。
【0031】
ソケット4の上面には、
図6に示すように、電子部品5に対応する凹部が設けられていてもよい。
図6では、電子部品5はこの凹部に収納されておらず、少し浮いた位置に配置されているが、これはあくまで一例である。電子部品5の一部または全部が、ソケット4に設けられた凹部に収められていてもよい。
【0032】
本実施の形態における電子部品付き構造体503のように、弾性構造を備えることによって、配線の端部は、対向する部材に押し付けられた状態となるので、ソケット4と電子部品5との間の電気的接続、または、ソケット4と電源モジュール3との間の電気的接続を確実に行なうことができる。
【0033】
なお、ここでは、電子部品付き構造体503について説明したが、電子部品付き構造体503から電子部品5および押さえ具6を取り除いたものが、本実施の形態における構造体である。
【0034】
なお、電源配線8の第1端71の構造は、
図9~
図16に示すようにさまざまなものが考えられる。
図9に示す例では、先端が単純に平坦面となっている。
図10に示す例では、先端に径が大きな部分が設けられていて、その先端が平坦面となっている。
図11に示す例では、先端が尖っている。ここで示す例では、先端が円錐状となっている。円錐状とする代わりに角錐状であってもよい。
図12に示す例では、先端に径が大きな部分が設けられていて、その先端面は凹凸面となっている。
図13に示す例では、先端が凹部となっている。この凹部の形状は、たとえばここで図示したように円錐状であってもよい。この凹部の形状は、他の形状であってもよい。
図14に示す例では先端が半球面となっている。
図15に示す例では、先端に径が大きな部分が設けられていて、その先端が半球面となっている。
図16に示す例では、先端に径が大きな部分が設けられていて、その先端が尖っている。ここで示す例では、先端が円錐状となっている。
【0035】
このような構造のバリエーションが考えられるということは、電源配線8の第2端72についてもあてはまる。さらに、このような構造のバリエーションは、信号配線9の第3端73についてもあてはまる。このような構造のバリエーションは、信号配線9の第4端74についてもあてはまる。
【0036】
電源配線8と信号配線9との両方に上述のような弾性構造を設けてもよいが、現実的には、製造コスト、配線の径などを考慮して、必要な配線のみに弾性構造を設けることとしてもよい。
【0037】
ここでは、筒状部材11の内部にばね12を内蔵している例について説明したが、「外力によって主基板1の厚み方向に押されたときに弾性変形しつつ前記外力に抵抗する弾性構造」は、コイルばねを用いたものに限られない。
【0038】
たとえば、第1の例として、配線の先端を
図17および
図18に示すような構造としてもよい。
図17はソケット4の表面から配線の一部が突出している様子を示している。
図18は、
図17に示したのと同じ構造を、
図17とは90°異なる方向から見た様子である。配線の端部は薄板状となっており、ある程度曲がった形状となっている。すなわち、配線の端部は、板ばねとなっている。
【0039】
また、第2の例として、たとえば配線の先端を
図19および
図20に示すような構造としてもよい。
図19はソケット4の表面から配線の一部が突出している様子を示している。
図20は、
図19に示したのと同じ構造を、
図19とは90°異なる方向から見た様子である。配線の端部は、2枚の薄板を組み合わせた構造となっている。2枚の薄板はいずれも板ばねである。2枚の薄板は、Y字形状をなしている。配線の端部がこのようにY字形状になっている場合、接続相手となる端子の端部をY字形状で挟み込むようにして電気的接続が確立されるものであってもよい。
【0040】
(実施の形態4)
図21を参照して、本発明に基づく実施の形態4における構造体および電子部品付き構造体について説明する。構造体および電子部品付き構造体の基本的な構成は、これまでに述べたものと同様である。
【0041】
本実施の形態における構造体の一部を拡大したところを
図21に示す。ソケット4を貫通するように電源配線8および信号配線9が配置されている。電源配線8は、その途中において径が大きくなった部分である張出し部8aを備える。電源配線9は、その途中において径が大きくなった部分である張出し部9aを備える。ソケット4は、張出し部8a,9aを包み込むように空洞部分を有している。張出し部8a,9aが空洞部分に閉じ込められていることによって、電源配線8および信号配線9はソケット4から抜け落ちることなく保持されている。このような空洞部分を有するソケット4は、たとえば2回に分けて樹脂成形することによって作製することができる。すなわち、ソケット4の半分までを先に成型し、この時点では、空洞部分は凹部として形成しておき、張出し部を備える配線をこの凹部に配置してから、ソケット4の残りの半分を成型すればよい。
【0042】
本実施の形態における構造体としては、他の部分に関しては、これまでの実施の形態で述べた構造と同様であるので、説明を繰返さない。また、本実施の形態における構造体に、電子部品5および押さえ具6を追加したものが、本実施の形態における電子部品付き構造体である。
【0043】
本実施の形態における構造体では、ソケット4を貫通するように配置された電源配線8および信号配線9が途中に張出し部8a,9aを備えているので、電源配線8および信号配線9はソケット4から抜け落ちることなく安定して配置される。
【0044】
(実施の形態5)
図22を参照して、本発明に基づく実施の形態5における構造体および電子部品付き構造体について説明する。構造体および電子部品付き構造体の基本的な構成は、実施の形態4で述べたものと同様である。本実施の形態における構造体の一部を拡大したところを
図22に示す。
【0045】
本実施の形態における構造体では、ソケット4は、チップ部品を受け入れるためのチップ部品受入部13を有する。チップ部品受入部13は凹部である。チップ部品受入部13の内部には前記チップ部品としてコンデンサ14が配置されている。このチップ部品は、電源配線8に電気的に接続されている。コンデンサ14およびその近傍を、
図22における真上から見たところを
図23に示す。チップ部品受入部13の中に配置されたコンデンサ14が見えている。チップ部品受入部13の内部には、張出し部8aの一部も見えている。チップ部品は、張出部8aに重なるように配置されることによって、電源配線8と電気的に接続されている。
【0046】
本実施の形態における構造体としては、他の部分に関しては、これまでの実施の形態で述べた構造と同様であるので、説明を繰返さない。また、本実施の形態における構造体に、電子部品5および押さえ具6を追加したものが、本実施の形態における電子部品付き構造体である。
【0047】
本実施の形態では、ソケット4に設けられたチップ部品受入部13の内部にチップ部品が設けられているので、必要なチップ部品を配置することができる。ここでは、チップ部品受入部13が凹部であるものとして説明したが、チップ部品受入部13は、凹部とは限らず切欠きであってもよい。
【0048】
本実施の形態で示したように、チップ部品受入部13の内部に配置されるチップ部品はコンデンサ14であることが好ましい。チップ部品としてのコンデンサ14は両端にそれぞれ外部電極を備える。コンデンサ14の一方の外部電極は1つの電源配線8に接続され、他方の外部電極はもうひとつの電源配線8に接続されていることが好ましい。これらは、はんだ付けによって接続されていてよい。ただし、これら2本の電源配線は、1つの電子部品5に対して電力を供給する1対の電源配線である。すなわち、2本のうち一方がGND配線である。この構成を採用することにより、コンデンサ14はバイパスコンデンサとして働き、電子部品5に供給される電力からノイズを除去することに役立つ。
【0049】
(実施の形態6)
図24を参照して、本発明に基づく実施の形態6における構造体および電子部品付き構造体について説明する。構造体および電子部品付き構造体の基本的な構成は、実施の形態4で述べたものと同様である。本実施の形態における構造体の一部を拡大したところを
図24に示す。この図では、説明の便宜のため、ソケット4が透明で見えないものと仮定して、電源配線8および信号配線9が示されている。したがって、本来はソケット4によって大部分が隠れている配線が、
図24では、むき出しで配置されているように表示されている。
【0050】
本実施の形態では、前記1以上の電源配線8は、接地された1以上のGND配線8dと、接地されていない1以上の非GND配線8eとを含み、前記1以上のGND配線8dは、前記1以上の非GND配線8eと前記1以上の信号配線9との間に配置されている。
【0051】
本実施の形態における構造体としては、他の部分に関しては、これまでの実施の形態で述べた構造と同様であるので、説明を繰返さない。また、本実施の形態における構造体に、電子部品5および押さえ具6を追加したものが、本実施の形態における電子部品付き構造体である。
【0052】
本実施の形態では、1以上のGND配線8dが、1以上の非GND配線8eと1以上の信号配線9との間に配置されているので、1以上のGND配線8dの並びがシールドの役割を果たし、1以上の非GND配線8eから発せられる電磁波が信号配線9にノイズとして伝わることを抑制することができる。
【0053】
なお、
図24に示した例では、複数の非GND配線8eが、中央に4×4の正方形に配置されており、GND配線8dの配列は、非GND配線8eの配列の正方形の平行な2辺に沿うように配置されているが、これはあくまで一例である。GND配線8dの配列は、非GND配線8eの配列の2辺に沿って配置する代わりに1辺のみに沿って配置されてもよく、3辺に沿って配置されてもよい。GND配線8dの配列は、非GND配線8eの配列の全周を取り囲むように配置されてもよい。
図24に示した配線の本数、配列の形状は、説明のために一例として示したものであって、この通りとは限らない。
【0054】
なお、上記各実施の形態では、電源配線8および信号配線9が円柱形状のものとして示されていたが、これらの配線の断面形状は円形とは限らない。たとえば
図25に示すように、配列される配線の一部または全部は、円形以外の形状であってもよい。
図25では、ソケット4の一部のみを平面図で表示している。この例では、電源配線8の断面形状は、長方形となっている。3本の電源配線8が中央に配置され、その周囲を多数の信号配線9の配列が取り囲んでいる。このような構成であってもよい。
【0055】
なお、上記実施の形態のうち複数を適宜組み合わせて採用してもよい。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0056】
1 主基板、1a 第1面、1b 第2面、1c 貫通孔、3 電源モジュール、4 ソケット、4e 電源モジュール受入部、5 電子部品、6 押さえ具、7 (電源モジュール用の)ソケット、8 電源配線、8a 張出し部、8d GND配線、8e 非GND配線、9 信号配線、9a 張出し部、11 筒状部材、12 ばね、13 チップ部品受入部、14 コンデンサ、30 (電源モジュールの)基板、31,32,33 部品、34 ネジ、41 本体部、42 突出部、71 第1端、72 第2端、73 第3端、74 第4端、201,202 構造体、501,502,503 電子部品付き構造体。