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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】半導体装置と半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240423BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240423BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240423BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20240423BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240423BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240423BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240423BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/78 Q
H01L21/78 X
H01L23/28 Z
H01L29/78 652N
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/78 658Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023007003
(22)【出願日】2023-01-20
(62)【分割の表示】P 2019154913の分割
【原出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2023052535
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南雲 裕司
(72)【発明者】
【氏名】永田 賢昌
(72)【発明者】
【氏名】朽木 克博
(72)【発明者】
【氏名】浦上 泰
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-207382(JP,A)
【文献】特開2004-214431(JP,A)
【文献】特開2003-133260(JP,A)
【文献】特開2006-032418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/301
H01L21/304
H01L21/336
H01L21/463
H01L21/76
H01L21/78
H01L23/28-23/31
H01L25/00-25/18
H01L29/06
H01L29/12
H01L29/739
H01L29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
ダイシング領域によって区画されている複数の素子領域を有する半導体ウェハを準備する工程と、
前記半導体ウェハを機械的に薄板化することによって、前記半導体ウェハの一方の主面に脆弱層を形成する工程と、
前記複数の素子領域の各々の前記脆弱層を消失させることにより、前記ダイシング領域の前記脆弱層を選択的に残存させる工程と、
前記半導体ウェハの平面方向に引張応力を加えることによって、前記半導体ウェハを前記複数の素子領域に分割して複数の半導体装置を得る工程と、
を備える、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置と半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている半導体装置では、半導体基板の主面上に、複数の電極、複数の配線、それらを覆う絶縁膜等を含む表面構造が設けられている。また、半導体基板の主面は、はんだを介して金属ブロックに接続されている。半導体基板と金属ブロックは、モールド樹脂によって封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-046151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の使用時には、半導体基板が繰り返し発熱する。これにより、半導体装置の各部材(半導体基板、金属ブロック、モールド樹脂等)に熱変形が生じる。各部材の線膨張係数が異なるので、半導体基板の主面と表面構造との間に高いせん断応力が生じる。このとき、特に、半導体基板の主面の外周端の角部において応力が集中し易い。特許文献1のような半導体装置では、このような応力が繰り返し生じることにより、当該角部を起点として、半導体基板の主面に沿う方向に向かって、半導体基板と表面構造との間で剥離が生じることが分かってきた。本明細書では、第1の発明として、半導体基板と表面構造との間の剥離を抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、第1の発明として半導体装置を開示する。本明細書が開示する半導体装置は、半導体基板と、金属ブロックと、モールド樹脂と、を備えている。前記半導体基板は、第1主面と、第2主面と、前記第1主面と前記第2主面を接続する端面と、を有する。前記金属ブロックは、前記半導体基板の前記第1主面上に設けられている。前記モールド樹脂は、前記半導体基板と前記金属ブロックを封止するように設けられている。前記端面は第1端面と第2端面を有しており、前記第1端面が前記第1主面に接続しており、前記第2端面が前記第2主面に接続しており、前記第1端面と前記第2端面が凸部を構成している。前記第1端面と前記第2端面のなす角が、前記第1主面と前記第1端面のなす角よりも小さい。
【0006】
なお、第1端面及び第2端面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
【0007】
上記の半導体装置では、半導体基板の端面が、第1端面と第2端面を有している。そして、第1端面と第2端面のなす角が、第1主面と第1端面のなす角よりも小さい。このため、各部材に熱変形が生じると、第1端面と第2端面により構成される凸部に応力が集中する。したがって、半導体装置の内部に繰り返し応力が生じた場合、凸部が起点となって剥離が生じる。すなわち、凸部とモールド樹脂との間において剥離が生じる。このため、剥離の起点となる位置から第1主面上に設けられた表面構造(例えば、電極や絶縁膜等)までの距離が従来よりも長く、半導体基板と表面構造との間に剥離が生じ難い。
【0008】
ところで、特開2009-260211号公報には、半導体装置の製造方法が開示されている。この製造方法は、半導体ウェハの一方の主面にレーザを照射することにより、ダイシングパターンに沿って半導体ウェハの内部に脆弱層を形成する工程と、半導体ウェハの平面方向に引張応力を加えることにより、半導体ウェハをダイシングパターンに沿って分割し、複数の半導体装置を得る工程を有している。この製造方法では、脆弱層を形成するためだけに半導体ウェハの一方の主面にレーザを照射する工程が必要という問題がある。本明細書では、第2の発明として、従来よりも効率良く半導体装置を製造することができる技術を提案する。
【0009】
本明細書は、第2の発明として半導体装置の製造方法を開示する。前記製造方法は、ダイシング領域によって区画されている複数の素子領域を有する半導体ウェハを準備する工程と、前記半導体ウェハを機械的に薄板化することによって、前記半導体ウェハの一方の主面に脆弱層を形成する工程と、前記複数の素子領域の各々の前記脆弱層を消失させることにより、前記ダイシング領域の前記脆弱層を選択的に残存させる工程と、前記半導体ウェハの平面方向に引張応力を加えることによって、前記半導体ウェハを前記複数の素子領域に分割して複数の半導体装置を得る工程、を備える。
【0010】
上記の製造方法では、まず、半導体ウェハを機械的に薄板化する。これにより、半導体ウェハの一方の主面が荒れ、当該一方の主面に脆弱層が形成される。次いで、ダイシング領域の脆弱層を選択的に残存させる。その後、半導体ウェハの平面方向に引張応力を印加する。脆弱層が残存する範囲(すなわち、ダイシング領域)は、他の範囲よりも機械的強度が低い。このため、半導体ウェハに引張応力を印加すると、脆弱層が形成されている範囲で半導体ウェハが破断する。これにより、ダイシング領域に沿って半導体ウェハが分断され、複数の素子領域に分割される。これにより、複数の半導体装置を得ることができる。以上のように、上記の製造方法では、薄板化に起因して脆弱層が形成されるため、半導体ウェハ内に脆弱層を形成するためだけの工程を別途要さない。このように、上記の製造方法によれば、従来よりも効率良く半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の半導体装置10の断面図。
図2】実施例1の半導体装置10の要部断面図。
図3】実施例1の半導体装置10の製造工程を説明するための図。
図4】実施例1の半導体装置10の製造工程を説明するための図(図3のIV-IV線断面に相当する図)。
図5】実施例1の半導体装置10の製造工程を説明するための図(図3のIV-IV線断面に相当する図)。
図6】実施例1の変形例の半導体装置の製造工程を説明するための図(図3のIV-IV線断面に相当する図)。
図7】実施例1の他の変形例の半導体装置の製造工程を説明するための図(図3のIV-IV線断面に相当する図)。
図8】実施例2の半導体装置110の製造工程を説明するための図。
図9】実施例2の半導体装置110の製造工程を説明するための図(図8のIX-IX線断面に相当する図)。
図10】実施例2の半導体装置110の製造工程を説明するための図(図8のIX-IX線断面に相当する図)。
図11】実施例2の半導体装置110の製造工程を説明するための図(図8のIX-IX線断面に相当する図)。
図12】実施例2の半導体装置110の製造工程を説明するための図(図8のIX-IX線断面に相当する図)。
図13】実施例2の半導体装置110の製造工程を説明するための図(図8のIX-IX線断面に相当する図)。
図14】実施例2の半導体装置110の製造工程を説明するための図(図8のIX-IX線断面に相当する図)。
図15】実施例2の半導体装置110の他の製造工程を説明するための図(図8のIX-IX線断面に相当する図)。
図16】実施例2の半導体装置110の他の製造工程を説明するための図(図8のIX-IX線断面に相当する図)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施例1)
図面を参照して、実施例1の半導体装置10について説明する。図1に示すように、半導体装置10は、半導体素子12と、金属ブロック20と、上部リードフレーム22と、下部リードフレーム24と、モールド樹脂26と、を有している。
【0013】
半導体素子12は、半導体基板14、複数の上部電極16、及び下部電極18を有している。本実施形態では、半導体素子12は、いわゆるパワー半導体素子である。半導体基板14には、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)が形成されている。なお、半導体基板14に形成される半導体構造は、MOSFETに限定されず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やダイオード等であってもよい。半導体基板14は、SiC(炭化シリコン)によって構成されている。半導体基板14の材料は特に限定されず、Si(シリコン)、GaN(窒化ガリウム)等の他の半導体材料であってもよい。半導体基板14は、上面14aと、下面14bと、端面14cを有している。端面14cは、上面14aと下面14bを接続しており、半導体基板14の外周縁を一巡している。
【0014】
複数の上部電極16は、半導体基板14の上面14aに設けられている。複数の上部電極16は、複数の主電極16aと、複数の信号用配線16b(図1では、いずれも1つのみ図示)により構成されている。主電極16aは、ソース電極として機能する。各信号用配線16bには、例えば、半導体素子12の温度を示す電圧を出力するための配線、半導体素子12に流れる電流値を示す電圧を出力するための配線、半導体素子12のゲート配線となるもの等がある。各信号用配線16bは、外部端子(不図示)にそれぞれ接続されている。下部電極18は、半導体基板14の下面14bの略全域に設けられている。上部電極16及び下部電極18は、例えば、Al(アルミニウム)によって構成されている。
【0015】
主電極16aの上面には、ニッケル膜34が設けられている。信号用配線16bは、ポリイミド膜36によって覆われている。ポリイミド膜36は、信号用配線16bから主電極16aの上面(ニッケル膜34が設けられていない範囲)に跨る範囲を覆っている。
【0016】
金属ブロック20は、半導体素子12の上部に配置されている。金属ブロック20の下面は、はんだ層28及びニッケル膜34を介して半導体素子12の主電極16aに接続されている。金属ブロック20は、例えば、Cu(銅)により構成されている。
【0017】
上部リードフレーム22は、金属ブロック20の上部に配置されている。上部リードフレーム22の下面は、はんだ層30を介して金属ブロック20の上面に接続されている。上部リードフレーム22は、例えば、Cuにより構成されている。
【0018】
下部リードフレーム24は、半導体素子12の下部に配置されている。下部リードフレーム24の上面は、はんだ層32によって半導体素子12の下部電極18に接続されている。下部リードフレーム24は、例えば、Cuにより構成されている。
【0019】
図1に示すように、上部リードフレーム22、金属ブロック20、半導体素子12及び下部リードフレーム24の積層体は、モールド樹脂26によって覆われている。上部リードフレーム22の上面と下部リードフレーム24の下面を除く積層体の表面全体が、モールド樹脂26によって覆われている。モールド樹脂26は、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性の樹脂により構成されている。上部リードフレーム22の上面と下部リードフレーム24の下面は、図示しない冷却器に接続される。
【0020】
図2は、図1の破線部50の拡大図である。図2に示すように、半導体基板14の端面14cは、第1端面15aと第2端面15bを有している。端面14cは、半導体基板14の全周において、第1端面15a及び第2端面15bを有している。第1端面15aは、半導体基板14側に凹となる曲面形状を有している。第2端面15bも同様に、半導体基板14側に凹となる曲面形状を有している。第1端面15aの上端は、半導体基板14の上面14aに接続されている。第2端面15bの下端は、半導体基板14の下面14bに接続されている。第1端面15aの下端は、第2端面15bの上端に接続されている。
【0021】
半導体基板14の端面14cは、凸部40を有している。凸部40は、第1端面15aの下端と第2端面15bの上端により構成されている。したがって、半導体基板14の全周に亘って凸部40が設けられている。凸部40は、半導体基板14の厚み方向において、上面14aからの距離y1と下面14bからの距離y2とが略等しくなる位置に設けられている。すなわち、凸部40は、半導体基板14の厚み方向において、半導体基板14の中間位置に設けられている。また、半導体基板14の上面14aに平行な方向(図面左右方向)において、凸部40から上面14aの外周端の角部42(換言すると、第1端面15aの上端)までの距離x1は、凸部40から下面14bの外周端の角部44(換言すると、第2端面15bの下端)までの距離x2と、略等しい。
【0022】
第1端面15aと第2端面15bのなす角(詳細には、第1端面15aと第2端面15bの交点における、第1端面15aの接線と第2端面15bの接線とがなす角)の角度θ1は、上面14aと第1端面15aのなす角(詳細には、上面14aと第1端面15aの交点における、上面14aと第1端面15aの接線とがなす角)の角度θ2よりも小さい。また、角θ1は、下面14bと第2端面15bのなす角(詳細には、下面14bと第2端面15bの交点における、下面14bと第2端面15bの接線とがなす角)の角度θ3よりも小さい。以下、便宜的に、第1端面15aと第2端面15bのなす角の角度θ1を「凸部40の角度θ1」、上面14aと第1端面15aのなす角の角度θ2を「角部42の角度θ2」、下面14bと第2端面15bのなす角の角度θ3を「角部44の角度θ3」という。なお、これら角度θ1,θ2,θ3は、図2の断面図(半導体基板14の上面14a及び半導体基板14を平面視したときの角部42で構成される辺の双方に垂直な断面)によって測定される角度である。
【0023】
半導体装置10の使用時には、半導体基板14が繰り返し発熱する。これにより、半導体装置10の各部材(半導体基板14、金属ブロック20、モールド樹脂26等)に熱変形が生じる。各部材の線膨張係数が異なるので、各部材に応力が生じる。本実施例の半導体装置10では、半導体基板14の端面14cが、第1端面15aと第2端面15bを有している。そして、凸部40の角度θ1が、角部42の角度θ2及び角部44の角度θ3よりも小さい。このため、各部材に熱変形が生じると、角部42、44ではなく、凸部40に応力が集中する。したがって、半導体装置10の内部に生じた繰り返しの応力に起因して部材間の剥離に至った場合、その起点が凸部40となる。すなわち、凸部40とモールド樹脂26との間における剥離が起点となる。これに対し、背景技術で例示した従来の半導体装置では、半導体基板の端面が平面であった。このため、半導体装置の内部に応力が繰り返し生じると、半導体基板の主面(上面や下面)の外周端(本実施例の角部42、44に相当する位置)を起点として剥離が生じていた。なかでも、半導体基板の上面の外周端(本実施例の角部42に相当する位置)を起点として剥離が生じると、半導体基板と表面構造(本実施例の上部電極16やポリイミド膜36に相当)の間でも剥離が生じ、複数の電極(本実施例の主電極16aと信号用配線16bに相当)が短絡し、信頼性が低下するという問題があった。一方、本実施例では、剥離の起点となる位置(すなわち、凸部40の位置)から半導体基板14の上面14a上に設けられた構造(例えば、上部電極16やポリイミド膜36等)までの距離が従来よりも長く、半導体基板14と、その上面14aに設けられた構造との間に剥離が生じ難い。このため、この半導体装置10では、主電極16aと信号用配線16bとの間に短絡が生じ難く、信頼性が高い。
【0024】
次に、半導体装置10の製造方法について説明する。ただし、本実施例では、特に、半導体基板14の端面14cに凸部40を形成する工程について説明する。他の構成要素を形成する工程については、従来公知の各種の方法を適宜用いて実施することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0025】
まず、図3に示すように、内部にMOSFETの構造が複数形成された円形状の半導体ウェハ60を準備する。半導体ウェハ60の上面60aには、上部電極16、ニッケル膜34、ポリイミド膜36等が設けられている(図4参照)。なお、図3の破線62は、ダイシングブレードが通過する領域(以下、ダイシング領域62という。)を示している。ダイシング領域62によって区画された各領域が、MOSFETの構造が形成された素子領域64である。
【0026】
次に、図4に示すように、半導体ウェハ60の上面60aにダイシングテープ70を貼付する。具体的には、半導体ウェハ60上に形成されたニッケル膜34及びポリイミド膜36の上面にダイシングテープ70を貼付する。これにより、半導体ウェハ60をダイシングテープ70上に固定する。そして、半導体ウェハ60の下面60b側からダイシングブレード74を用いてダイシング領域62に沿って半導体ウェハ60をダイシングする。このとき、半導体ウェハ60の厚み方向における中間深さまで半導体ウェハ60を切削する。すなわち、この工程では、ダイシングブレード74を半導体ウェハ60の下面60bから上面60aまで貫通させない。したがって、この工程では、半導体ウェハ60は個片化されず、半導体ウェハ60の下面60bには、溝部61が形成される。
【0027】
続いて、ダイシングテープ70を除去した後、図5に示すように、半導体ウェハ60の下面60bにダイシングテープ72を貼付する。これにより、半導体ウェハ60をダイシングテープ72上に固定する。そして、半導体ウェハ60の上面60a側から、ダイシングブレード76を用いてダイシング領域62に沿って半導体ウェハ60をダイシングする。半導体ウェハ60は、上述した工程において、その中間深さまで溝部61が形成されている。したがって、この工程でのダイシング(すなわち、上面60a側から実施するダイシング)において、ダイシングブレード76が溝部61に達することによって、半導体ウェハ60が個片化されて、凸部40が形成される。すなわち、半導体ウェハ60が、複数の半導体基板14に分割される。この工程により、第1端面15a及び第2端面15bを有する半導体基板14を得ることができる。
【0028】
その後、分割された半導体基板14に対して、下部電極18、金属ブロック20、上部リードフレーム22、下部リードフレーム24等を形成し、モールド樹脂26によってこれらの部材を封止することにより、図1に示す半導体装置10が完成する。
【0029】
本実施例の製造方法では、半導体ウェハ60に対して、上面60a側からのダイシングと下面60b側からのダイシングを行う。このため、ダイシングブレード74、76の目詰まりやチッピングが生じ難い。また、ダイシングブレード74、76がダイシングテープ70、72に達することが抑制されるので、ダイシングテープ70、72の巻き込みに起因するクラックを抑制することができる。
【0030】
なお、上述した実施例1では、距離x1と距離x2(図2参照)が略等しかった。しかしながら、距離x1と距離x2の間には、x1<x2の関係が成立してもよいし、x1>x2の関係が成立してもよい。x1<x2である場合、半導体基板14の上面14aの面積を比較的広く確保することができる。すなわち、素子領域64を広く確保することができる。また、半導体ウェハ60の上面60a側からのダイシングにおけるダイシングブレード76の位置ずれに対するマージンを大きく確保することができる。また、x1>x2である場合、半導体ウェハ60の下面60b側からのダイシングにおけるチッピングに対するマージンを比較的広く確保することができる。なお、例えば、x1<x2の関係が成立する半導体装置は、上述した製造工程において、図6に示すように、刃の幅が異なる2つのダイシングブレード74、76を用いることによって製造することができる。なお、図6では、ダイシングブレード74による上面60a側からのダイシングと、ダイシングブレード76による下面60b側からのダイシングが同時に行われているように描かれているが、実際には、上述した図4及び図5の工程のように、それぞれのダイシングは別々に実施される。
【0031】
また、上述した実施例1では、距離y1と距離y2(図2参照)が略等しかった。しかしながら、距離y1と距離y2の間には、y1<y2の関係が成立してもよいし、y1>y2の関係が成立してもよい。y1<y2である場合、半導体ウェハ60の上面60a側からダイシングする深さが短くなるため、半導体ウェハ60の上面60a側におけるチッピングを抑制することができる。また、y1>y2である場合、凸部40が、半導体基板14の厚み方向において、下面14b側に位置することとなる。すなわち、剥離の起点となる位置(すなわち、凸部40の位置)が上面14aから比較的遠くなる。したがって、半導体基板14と上面14a上の構造との間の距離をより長く確保することができる。その結果、主電極16aと信号用配線16bとの間の短絡をより抑制することができる。なお、例えば、y1<y2の関係が成立する半導体装置は、上述した製造工程において、図7に示すように、上面60a側からのダイシング深さと、下面60b側からのダイシング深さとを適宜調整することによって製造することができる。
【0032】
また、上述した実施例1では、第1端面15a及び第2端面15bが曲面形状を有していた。しかしながら、第1端面15a及び第2端面15bは、平面であってもよい。例えば、直線状のテーパを有するダイシングブレードを用いることによって、第1端面15a及び第2端面15bを平面形状に形成することができる。
【0033】
(実施例2)
図面を参照して、実施例2の半導体装置110の製造方法について説明する。なお、以下では、主たる工程のみを説明する。したがって、半導体装置110の製造方法には、必要に応じて以下の説明に含まれない一又は複数の工程が含まれ得る。
【0034】
まず、図8に示すように、円形状の半導体ウェハ160を準備する。半導体ウェハ160は、SiC(炭化シリコン)により構成されている。半導体ウェハ160の材料は特に限定されず、Si(シリコン)等の他の半導体材料であってもよい。図示していないが、半導体ウェハ160内には、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)の構造が複数形成されている。なお、半導体ウェハ160内に形成される半導体構造は、MOSFETに限定されず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であってもよい。また、図8の破線162は、後の工程でダイシングされる領域(以下、ダイシング領域162という。)を示している。ダイシング領域162によって区画された各領域が、半導体構造が形成された素子領域164である。
【0035】
次に、図9図8のIX-IX線断面に相当する図)に示すように、半導体ウェハ160の上面160aに上部電極116を形成する。上部電極116は、ソース電極として機能する。
【0036】
次に、図10に示すように、半導体ウェハ160の下面160bを機械的に薄板化する。ここでは、例えば、研削によって半導体ウェハ160を薄板化することができる。このとき、研削によって下面160bが荒れ、下面160bの表層には脆弱層166が形成される。脆弱層166は、半導体ウェハ160内に応力を生じさせる層であり、半導体ウェハ160の他の範囲よりも機械的強度が低い層である。なお、脆弱層166の荒れの程度及び脆弱層166の厚み等は、研削に用いる砥石の種類に応じて調整可能である。
【0037】
次に、図11に示すように、半導体ウェハ160の下面160bに選択的に下部電極118を形成する。ここでは、下部電極118は、素子領域164の範囲内にのみ形成し、ダイシング領域162の範囲には形成しない。下部電極118は、例えば、スパッタリングにより形成することができる。下部電極118は、例えば、Ni、Mo、Al、Ti、Cu、Siのいずれかを含有する材料により構成される。
【0038】
次に、図12に示すように、半導体ウェハ160の下面160bからレーザを照射することにより、半導体ウェハ160の下面160bの略全域をアニールする。アニールを実施すると、半導体ウェハ160の下面160b近傍で下部電極118が瞬間的に溶融する。その結果、下部電極118を形成した範囲では、下部電極118を構成する材料と半導体ウェハ160(すなわち、SiC)とが合金化する。これにより、下部電極118を形成した範囲(すなわち、素子領域164)では、脆弱層166が消失する。一方、下部電極118が形成されていない範囲(すなわち、ダイシング領域162)では、脆弱層166が残存する。
【0039】
次に、図13に示すように、半導体ウェハ160の上面160a側にダイシングテープ170を貼付する。具体的には、半導体ウェハ160上に形成された複数の上部電極116の上面に跨るように、ダイシングテープ170を貼付する。これにより、半導体ウェハ160をダイシングテープ170に固定する。
【0040】
次に、図14の矢印172に示すように、ダイシングテープ170に対して、半導体ウェハ160の上面160aに沿う方向に引張力を加える。これにより、各上部電極116に接続されている半導体ウェハ160には、その平面方向(上面160aに平行な方向)に引張応力が印加される。その結果、半導体ウェハ160は、機械的強度の比較的低い脆弱層166が残存する範囲(すなわち、ダイシング領域162)に沿って切断される。以上の工程を経ることによって、半導体ウェハ160を素子領域164毎に分割して、半導体装置110を得ることができる。
【0041】
以上に説明したように、本実施例では、まず、半導体ウェハ160を機械的に薄板化する。これにより、半導体ウェハ160の下面160bが荒れ、下面160bの表層に脆弱層166を形成する。次いで、半導体ウェハ160の下面160b上に下部電極118を形成する際に実施するアニールにより、下部電極118が形成される範囲(すなわち、素子領域164)の脆弱層166を消失させることができる。その後、半導体ウェハ160の平面方向に引張応力を印加する。これにより、機械的強度が比較的低いダイシング領域162に沿って半導体ウェハ160が分断され、複数の素子領域164に分割される。これにより、複数の半導体装置110を得ることができる。以上のように、本実施例の製造方法では、半導体ウェハ160の薄板化に起因して脆弱層166が形成されるため、半導体ウェハ160内に脆弱層を形成するためだけの工程を別途要さない。また、脆弱層166を残存させる工程は、従来から採用されている下部電極118の形成工程を実施することによって実現することができる。このように、本実施例の製造方法によれば、従来よりも効率良く半導体装置110を製造することができる。
【0042】
なお、半導体ウェハ160を薄板化した後(図10の後)、図15に示すように、半導体ウェハ160の下面160bの略全域に下部電極118を形成してもよい。この場合、図16に示すように、素子領域162のみに対してレーザアニールを行うことで、素子領域162内の脆弱層166のみが下部電極118と合金化し、脆弱層166をダイシング領域162に選択的に残存させることができる。その後、上述した実施例と同様に、ダイシングテープ170を各上面電極116の上面に跨るように貼付し、ダイシングテープ170に対して引張力を加えることで、残存する脆弱層166に沿って半導体ウェハ160を複数の素子領域164に分割することができる。
【0043】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0044】
10:半導体装置
12:半導体素子
14:半導体基板
14a:上面
14b:下面
14c:端面
15a:第1端面
15b:第2端面
16:上部電極
16a:主電極
16b:信号用配線
18:下部電極
20:金属ブロック
22:上部リードフレーム
24:下部リードフレーム
26:モールド樹脂
28、30、32:はんだ層
34:ニッケル膜
36:ポリイミド膜
40:凸部
42:角部
44:角部
60:半導体ウェハ
60a:上面
60b:下面
61:溝部
62:ダイシング領域
64:素子領域
110:半導体装置
114:半導体ウェハ
116:上部電極
118:下部電極
160:半導体ウェハ
160a:上面
160b:下面
162:ダイシング領域
164:素子領域
166:脆弱層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16