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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/00 20060101AFI20240423BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B66B29/00 Z
B66B31/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023106772
(22)【出願日】2023-06-29
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【弁理士】
【氏名又は名称】福屋 好泰
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】大脇 裕之
(72)【発明者】
【氏名】能 愛莉
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-195289(JP,A)
【文献】特開2008-013358(JP,A)
【文献】特開2013-170021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 29/00
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り場から降り場に至るように設けられた乗客通路に沿って乗客を搬送する機能を有する無端搬送体を含む乗客コンベアであって、
前記無端搬送体上に存在する物体を検知する物体検知部と、
前記無端搬送体の始動操作を行うための操作部と、
前記無端搬送体を所定の速度で走行させる通常運転モードを有する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記操作部を介して前記始動操作が行われることにより起動するとともに前記物体検知部を介して物体が検知されていないことを条件に前記通常運転モードを実行する、
乗客コンベア。
【請求項2】
異常が発生していることを報知する報知部を含み、
前記制御部は、前記条件を満たしていない場合には前記報知部を介して異常が発生していることを報知する、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記制御部は、前記条件が満たされていない場合には前記通常運転モードよりも低速で前記無端搬送体を走行させる低速運転モードを実行する、
請求項1または2に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗客コンベアは、複数の踏段を無端状に連結して構成される無端搬送体を乗客通路に沿って乗り場から降り場に向かって走行させることにより乗客を搬送する機能を有する。このような乗客コンベアでは、乗り場や降り場の欄干部などに無端搬送体を始動させる始動操作を行うためのキースイッチなどの操作部が設けられており、同操作部に操作キーを挿し込んで所定位置まで回転させるなどの操作を行うことにより無端搬送体を始動させるように構成されている。
【0003】
また、乗客コンベアの始動操作は、無端搬送体上に乗客が存在しない状態で行うことが安全上望ましいため、作業者は乗客コンベア内に乗客がいないことを予め目視により確認した上で始動操作が行われる。
【0004】
しかしながら、乗客が急に乗客コンベアに乗り込んできた場合などには、無端搬送体上に乗客が存在しているにも拘わらず始動操作が行われてしまうような場合も起こり得る。
【0005】
ところで、乗客コンベアの中には、例えば、乗り場に接近する乗客を検知する乗客検知部を有し、乗客検知部を介して同コンベアに接近する乗客が検知されていない場合に無端搬送体を一時的に停止させる、いわゆる、自動発停運転を行う機能を有するものもある。
【0006】
このような自動発停運転機能を有する乗客コンベアにおいて、一時的に無端搬送体が停止状態となっている場合には乗客検知部を介して乗客が検知されていないのであるから無端搬送体上に乗客が存在しないことが通常である。
【0007】
しかしながら、無端搬送体上の乗客が乗り口側に向かって歩いて移動するなどした場合には無端搬送体上に乗客が残っているにも拘らず無端搬送体が一時的に停止状態となることも考えられる。
【0008】
また、無端搬送体が一時的に停止状態となっているときに、降り場側から侵入した乗客が無端搬送体上を乗り口側に向かって歩いて移動(逆走)するなどした場合にも無端搬送体が一時的に停止状態であるにも拘らず乗客が無端搬送体上に存在するという状況は発生し得る。
【0009】
そして、これらの状況下で、他の利用者が乗り場に接近して乗客検知部に検知されると、停止中の無端搬送体上に乗客が存在しているにも拘らず無端搬送体の走行が再開されてしまう場合も起こり得るという問題がある。
【0010】
この点に関し、特許文献1には、運転中に乗客転倒判定部によって乗客転倒と判定された場合において、乗客コンベアの傾斜移動部および乗り場に設置された受光器のセンサ遮光信号に基づいて利用中乗客不在判定部によって利用中の他の乗客が存在しないと判定されたことを条件に無端搬送体を停止させる乗客コンベアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2014-169175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1に記載の乗客コンベアの構成では利用中の他の乗客が存在していないことを条件として運転中の無端搬送体を停止させることはできるものの、例えば、降り場側から乗客が進入するなどした場合には停止状態の無端搬送体上に乗客が存在しているにもかかわらず無端搬送体の走行が再開(開始)されてしまうようなことも起こり得る。
【0013】
また、同様に、乗客コンベアを始動する場合においても、上述したように、乗客コンベアに乗客が急に乗り込んできた場合などには無端搬送体上に乗客が存在しているにも拘らず始動操作がなされてしまい無端搬送体の走行が開始されてしまうという場合も起こり得る。
【0014】
本発明は、無端搬送体の走行開始時における安全性を向上させることが可能な乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る乗客コンベアは、乗り場から降り場に至るように設けられた乗客通路に沿って乗客を搬送する機能を有する無端搬送体を含む乗客コンベアであって、無端搬送体上に存在する物体を検知する物体検知部と、無端搬送体の始動操作を行うための操作部と、無端搬送体を所定の速度で走行させる通常運転モードを有する制御部と、を備え、制御部は、操作部を介して始動操作が行われることにより起動するとともに物体検知部を介して物体が検知されていないことを条件に通常運転モードを実行するものである。
【0020】
本発明に係る乗客コンベアにおいて、異常が発生していることを報知する報知部を含み、制御部は、条件を満たしていない場合には報知部を介して異常が発生していることを報知させてもよい。
本発明に係る乗客コンベアにおいて、制御部は、条件が満たされていない場合には通常運転モードよりも低速で無端搬送体を走行させる低速運転モードを実行してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る乗客コンベアによれば、無端搬送体を始動する操作が行われた場合において物体検知部を介して物体が検知されていなければ通常運転モードが実行されるものの物体検知部を介して物体が検知されている場合には通常運転モードは実行されない。このため、無端搬送体上に乗客が存在している状況で通常運転モードが実行されてしまうことを防ぐことができる。これにより、無端搬送体の走行開始時における安全性を向上させることが可能となる。
【0022】
本発明に係る乗客コンベアによれば、休止運転モードの実行中に乗客検知部を介して乗場に接近する乗客が検知された場合には物体検知部を介して物体が検知されていないことを条件に通常運転モードが実行される。このため、休止運転モードの実行中に無端搬送体上に乗客が入り込んでいる状況で通常運転モードが実行されてしまうことを防ぐことができる。これにより、無端搬送体の走行開始時における安全性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る乗客コンベアの構成を模式的に示す図であり、同図に含まれる踏段周辺の部分拡大図と、同図に含まれる乗り場周辺の構成を示す斜視図を併せて示す図である。
図2図2(a)は図1に示すB方向から見たときのスカートガードと踏段の構成を示す図であり、図2(b)は図1に含まれる従動スプロケットおよび駆動スプロケットの構成を模式的に示す図である。
図3図1に示す乗客コンベアに形成されるブロック図である。
図4図2に示す制御装置における運転制御の流れを示すフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る制御装置における運転制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態であるエスカレータ(乗客コンベア)10の構成を示す図である。図1では、乗り場11周辺の構成を示す斜視図と、斜行区間DLの物体検知部P周辺の部分拡大図を一部に各々示している。また、図1において、踏段チェーン31を2点鎖線で示している。なお、各図において図中に示す「X」はエスカレータ10の上面視における長手方向と略平行をなす水平方向Xを示し、「Y」は水平方向Xと直交する水平方向Yを示し、「Z」は鉛直方向Zを示すものとする。
【0025】
図1に示すように、エスカレータ10は、下階側に設けられた乗り場11と、上階側に設けられた降り場12と、乗り場11および降り場12の間に設けられた走行路SWとを含み、乗り場11から降り場12に向かう搬送方向Aに沿って乗客を搬送する機能を有する。この走行路SWは、複数の踏段32A,32B,32C,・・・(以下、特に区別する必要が無い場合は適宜、踏段「32」と表記)が階段状を呈して走行する斜行区間DLと乗り場11および降り場12に各々隣接し各踏段32が略水平に走行する水平区間HN1,HN2とを含む。
【0026】
乗り場11及び降り場12は、ほぼ同一の構成を備える。図1に示すように乗り場11において踏段32が床面からせり出す位置および降り場12において踏段32が床面に潜り込む位置には櫛状に構成されたコムプレートPL1,PL2(以下、特に区別する必要がなければコムプレート「PL」と表記)が各々取り付けられている。このうち少なくとも降り場12のコムプレートPLには、安全装置(不図示)が取り付けられており、踏段32とコムプレートPLの間に異物が挟まるなどした場合に踏段32を停止させる機能を有する。
【0027】
また、図1に示すように、上記走行路SWおよび降り場12および乗り場11から構成される乗客通路15の両側には欄干部21,22が各々設けられている。欄干部21および欄干部22は、乗客通路15を挟んで対称形をなしており、同様の構成部材からなる。以下の説明では、欄干部22について主に説明を行うとともに欄干部21については適宜説明を省略する。
【0028】
欄干部22は、乗客通路15に沿って立設する欄干パネル24Pと、欄干パネル24Pを支持する支持部24とを有する。この欄干パネル24Pは、例えば、複数の板ガラスを列状に並べて構成され透光性を有する。また、欄干パネル24Pの乗り場11側の端部および降り場12側の端部は、各々円弧状に構成される。また、欄干部22の外周部には、踏段32と同じ向きに同じ速度で循環走行する無端状に構成されたハンドレール(移動手摺)27が移動可能に取り付けられている。支持部24の乗客通路15に面する側面はスカートガード(側板)24Aによって覆われている。
【0029】
図1に示すように、スカートガード24Aには、各々同一の構成を具備する物体検知部P1,P2,P3,…(以下の説明において特に区別する必要が無い場合は適宜、物体検知部「P」と表記する)が走行路SWに沿って設けられている。各物体検知部P同士の間隔は、走行路SWと略並行な方向における踏段32の長さと同程度の間隔となるように設置されている。なお、各物体検知部P同士の間隔はより狭くなるように設置してもよいし、より広くなるように設置してもよい。
【0030】
ここで、図2(a)に示す部分拡大図は、図1に示すB方向から見たときの踏段32とスカートガード23A,24Aの位置関係を摸試的に示すものである。図2(a)に示すように、物体検知部Pの投光部PXおよび受光部PYは、両スカートガード24A,23Aを間に挟んで互いに対向するように各々スカートガード24A,23Aに取り付けられている。また、両スカートガード24A,23Aにおける物体検知部Pの投光部PXおよび受光部PYそれぞれの取付部分には、投光部PXが照射する光を受光部PYに受光させるため各々貫通孔が設けられている。
【0031】
次に、乗り場11周辺の構成について図1を参照しつつ説明を行う。図1に示すように、エスカレータ10には、支持部24,23の下階側端部に乗り場11に進入する乗客を検知する機能を有する乗客検知部19-1,19-2(以下、特に区別する必要が無い場合は適宜、検知部「19」と表記)が設けられている。乗客検知部19-1,19-2は、例えば、同一構成を具備する光電センサにより構成され、乗客が踏段32に乗り込む前に非接触で乗り場11に接近する乗客を検知する役割を有する。
【0032】
より具体的には、乗客検知部19は、図1に破線で示すように、乗り場11の斜め前方の中央付近に設定された領域Rに向かって各々可視光や赤外線などの光を照射し、領域Rおよび同領域Rの周辺で照射した光が乗客にあたって反射する際、その反射光を受光することで乗客を検知して検知信号を後述する制御装置40に送信する。
【0033】
また、図1に示すように、支持部23の下階側端部には、キースイッチ(操作部)28が設けられている。このキースイッチ28は、無端搬送体30の始動(起動)操作を行う機能を有する。ここで、始動操作とは、操作キー(不図示)をキースイッチ28に挿し込んだ状態で初期位置から起動位置まで回転させる操作を意味する。そして、この始動操作を行うことによって無端搬送体30を搬送方向Aに沿って走行させることが可能となる。
【0034】
図1に示す斜行区間DLの物体検知部P周辺の部分拡大図においてハッチングを付して示す領域CVは、側面から見たときにスカートガード24Aに踏段32が重なる領域、換言すると、スカートガード24Aが踏段32に対向する領域を示すものである。物体検知部Pは、領域CVの直上方に各々設置するようにしてもよい。物体検知部Pを構成する投光部PX(図2(a)参照)および受光部PY(図2(a)参照)は、領域CVとの間の距離が20cm以内となる位置に設置するのが好ましく、より好ましくは10cm以内に設置するのが好適である。このように踏段32の通過領域である領域CVに近接する直上方の位置に物体検知部Pを設けることで検知精度を向上させることができる。また、水平区間HN1,HN2の物体検知部Pについても、斜行区間DLの物体検知部Pと同様に設けるのが好ましい。
【0035】
図1に示すように、無端搬送体30は、踏段チェーン31を介して上述した複数の踏段32を無端状に連結して構成される。また、乗り場11の直下方に設けられた下階側機械室14Mには回転自在に支持された踏段スプロケット14Pが設けられ、降り場12の直下方に設けられた上階側機械室12Mには回転自在に支持された踏段スプロケット12Pが設けられる。両踏段スプロケット12P,14Pには、上述した無端搬送体30の一部を構成する踏段チェーン31が各々巻き掛けられており、踏段チェーン31が後述する従動スプロケット12Qを介して回転駆動されるのに伴い踏段32が走行路SWを乗り場11から降り場12に向かって循環移動するように構成される。
【0036】
図1に示すように、乗り場11および降り場12の欄干部22の支持部24においてスピーカSP2,SP1(以下、特に区別する必要が無い場合には適宜スピーカ「SP」と表記)が各々内蔵されている。各スピーカ(報知部)SPは、音声案内などを放送する役割を有する。
【0037】
本実施形態では、欄干部22にスピーカSPを内蔵しているが、エスカレータ10の他の部分にスピーカを設けてもよいし、エスカレータ10周辺の建屋の壁面や天井などにスピーカを設置してもよい。
【0038】
また、上階側機械室12Mには、電動機34が設置されており、電動機34の駆動力は減速機(不図示)を介して出力軸(不図示)に伝達され、出力軸を介して駆動スプロケット34Pが回転駆動される。この駆動スプロケット34Pの回転動力は、ローラーチェーン34Cを介して従動スプロケット12Qに伝達される。従動スプロケット12Qは踏段スプロケット12Pとともにシャフト12Xに取り付けられており、従動スプロケット12Qを回転させることにより踏段スプロケット12Pも連動して回転させることとなる。
【0039】
これにより、上述した踏段チェーン31がガイドレール(不図示)に沿って周回走行し、これに伴い同チェーン31に無端状に各々連結された複数の踏段32が循環走行する。
【0040】
上記シャフト12Xには、従動スプロケット12Qの回転量を検出する回転検出部36(図3参照)が取り付けられている。この回転検出部36はロータリーエンコーダ(不図示)を含み、シャフト12Xの回転(角)量に応じてパルス信号を後述する測定部44(図3参照)に出力する機能を有する。本実施形態では、回転検出部36を従動スプロケット12Qのシャフト12Xに取り付けているが、電動機34の出力軸(不図示)や、その他、無端搬送体30の駆動と連動して回転する軸などに取り付けるようにしてもよい。
【0041】
ここで、図2(b)は、図1に示す従動スプロケット12Qと駆動スプロケット34P周辺の構成を模式的に示す部分拡大図である。図2(b)に示すように、回転検出部36は、上記ロータリーエンコーダに代えて、従動スプロケット12Qの外周に等角度間隔で形成される歯の先端部(歯先)を各々検出する機能を有する近接センサ36Aを用いるものとしてもよい。
【0042】
この場合には、従動スプロケット12Qの回転に伴って近接センサ36Aの検出位置に従動スプロケット12Qの歯先が逐次到来し近接センサ36Aにより検出される。そして、近接センサ36Aの検出信号が後述する測定部44に出力されることで上記ロータリーエンコーダを用いる場合と同様に後述する測定部44において無端搬送体30の搬送速度を算出することが可能となる。
【0043】
続いて、図3を用いて制御装置40の構成について説明を行う。図3は、制御装置40を中心としたブロック図である。図3に示すように、エスカレータ10は、エスカレータ10の運転を統括的に制御する制御装置40を上階側機械室12M(図2参照)に備える。制御装置40は、各種制御プロブラムが記憶されたROM、RAM、およびHDDなどからなる記憶デバイス(不図示)やCPUなどの演算処理装置(不図示)を備える。
【0044】
そして、制御装置40は、演算処理装置が記憶デバイスから上記制御プログラムを読み出して演算処理を行うことにより電動機34の駆動を制御する運転制御部(制御部)45や、無端搬送体30の搬送速度を測定する測定部44として機能する。運転制御部45は、測定部44の測定結果や乗客検知部19の検知結果、物体検知部Pの検知結果に基づいて通常運転モードまたは休止モードのうちいずれかの運転モードを選択し、選択した運転モードに対応する速度指令信号などの制御信号を電動機34に送信する機能を有する。
【0045】
より具体的には、運転制御部45は、乗客検知部19を介して乗り場11に接近する乗客が検知されない状態が予め設定された時間だけ継続した場合に通常運転モードから休止モードに運転モードを切り替える機能を有する。また、運転制御部45は、休止モードの実行中に乗客検知部19を介して乗り場11に接近する乗客を検知した場合には通常運転モードに運転モードを切り替える機能を有する。
【0046】
本実施形態において、一例として、通常運転モードは毎分30mの設定速度で踏段32を走行させる運転モードであり、休止モードは踏段32を一時的に停止させる運転モードである。
【0047】
また、運転制御部45は、電動機34を始動するために上述したキースイッチ28を介して始動操作が行われた場合に、物体検知部Pを介して走行路SW内に乗客などの物体が検知されていないこと条件に通常運転モードを実行する機能も有する。これにより、走行路SW内に乗客が立ち入っている状況で無端搬送体30の運転が開始されてしまうのを防止することができる。
【0048】
ここで、図4は、始動操作時における通常運転モード実行可否の判断処理の流れを示すフローチャートである。図4を用いて始動操作が行われた場合における制御装置40に含まれる運転制御部45による通常運転モードの実行可否判断処理の流れについて説明を行う。
【0049】
図4に示すように、キースイッチ28を介して始動操作が行われると制御装置40および物体検知部Pが起動する(ステップS1,S2)。そして、運転制御部45は物体検知部Pが物体を検知しているか否かを判断する(ステップS3)。具体的には、運転制御部45は物体検知部Pによって物体が検知されている場合にはスピーカSPを介して「ステップ上に異常を検知しました、ステップを確認してください」などの警告メッセージを放送する(ステップS3:YES,ステップS4)。本実施形態では、運転制御部45はスピーカSPを介して警告メッセージを放送しているが、警告メッセージに代えて警告音を放送するようにしてもよい。
【0050】
これにより、乗客が走行路SW内に存在している可能性がある場合には踏段32を停止させた状態を維持しつつ異常を検知した旨の警告メッセージを放送して作業者に確認を促すことができる。
【0051】
一方、運転制御部45は、物体検知部Pを介して物体が検知されていない場合には(ステップS3:NO)、通常運転モードを実行する(ステップS5)。
【0052】
本実施形態では、ステップS1,S2の処理において、キースイッチ28を介して始動操作が行われることによって制御装置40および物体検知部Pが起動する場合を例に挙げて説明しているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、制御装置40にタイマー機能を具備させるとともに同タイマー機能によって制御装置40および物体検知部Pを予め設定されているエスカレータ10の始動(営業開始)予定時刻よりも少しだけ早く(一例として30分前)に起動するように設定するものとしてもよい。この場合には、上記始動予定時刻にキースイッチ28を用いて始動操作が行われることにより制御装置40は物体検知部Pを介して物体が検知されていないことを条件に通常運転モードを実行することとなる。
【0053】
第1実施形態のエスカレータ10によれば、無端搬送体30の始動操作が行われた場合に物体検知部Pを介して物体が検知されていなければ通常運転モードが実行されるものの同物体検知部Pを介して物体が検知されている場合には通常運転モードが実行されることはない。
【0054】
このため、無端搬送体30上に乗客が存在している状況で通常運転モードが実行されてしまうことを防ぐことができる。これにより、無端搬送体30を構成する踏段32の走行開始時における安全性を向上させることが可能となる。
【0055】
第1実施形態では、上述したキースイッチ28を介して始動操作が行われた場合に運転制御部45は物体検知部Pを介して走行路SW内に乗客などの物体が検知されていれば無端搬送体30を走行させることなく、換言すると、停止状態を維持しつつ警告メッセージを放送する例を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記始動操作が行われた場合に物体検知部Pを介して走行路SW内に物体が検知されていれば通常運転モードよりも低速で踏段32を走行させる低速モードを運転制御部45に実行させつつ警告メッセージを放送するようにしてもよい。
【0056】
なお、第1実施形態では、運転制御部45は、無端搬送体30の搬送速度を測定部44より取得しているが、電動機34に送信する速度指令信号などに基づいて無端搬送体30の搬送速度を算出するようにしてもよい。
【0057】
上記第1実施形態では、始動操作時における通常運転モードの実行可否を判断する場合を例に挙げて説明している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、休止運転モードから通常運転モードに復帰する場合に本発明を適用してもよい。この場合の第2実施形態におけるエスカレータ10の構成について以下において説明を行う。以下の第2実施形態に係るエスカレータ10の説明では、上記第1実施形態におけるエスカレータ10の構成と共通する部分については適宜説明を省略しつつ構成の異なる部分についてのみ説明を行うものとする。
【0058】
この場合において、運転制御部45は、休止モードの実行中に乗客検知部19を介して乗客が検知された場合において、物体検知部Pを介して走行路SW内で物体が検知されていないことを条件に運転モードを休止モードから通常運転モードに切り替えて実行する機能を有する。
【0059】
図5は、制御装置40に含まれる運転制御部45における運転モードの切り替え可否判断の制御処理の流れを示すフローチャートである。図5に示すように、乗客検知部19を介して乗客を検知している場合には、運転制御部45は、通常運転モードの実行を継続するとともに後述する待機時間をリセットして一連の運転モード切り替え判断の制御処理を終了する(ステップS10,ステップS11:YES,ステップS18)。
【0060】
一方、乗客検知部19を介して乗客を検知していない場合においても、運転制御部45は、所定の待機時間(一例として、5分間)が経過するまでは通常運転モードを継続して実行する(ステップS10,ステップS11:NO,ステップS12:NO)。これにより、エスカレータ10を利用する乗客がやや少ない状況のときでもしばらくの間は通常運転モードが継続される。これにより、運転モードが休止モードに頻繁に切り替わるのを抑制することができる。
【0061】
また、運転制御部45は、乗客検知部19を介して乗客が検知されない状態が所定の待機時間以上継続した場合には運転モードを休止モードに切り替える(ステップS12:YES,ステップS13)。これにより、無端搬送体30の駆動に要する消費電力を低減することができる。
【0062】
運転制御部45は、休止モードの実行中に乗客検知部19を介して乗客を検知すると(ステップS13,ステップS14:YES)、物体検知部Pを介して物体が検知されていないことを条件に運転モードを通常運転モードに変更する(ステップS15:NO,ステップS10)。
【0063】
一方、運転制御部45は、ステップS15の処理において物体検知部Pを介して物体が検知された場合には(ステップS15:YES)、休止モードを継続しつつスピーカSPを介して「ステップ上に異常を検知したため運転休止中です」などの警告メッセージを放送させる(ステップS16)。これにより、乗り場11から踏段32に乗り込む乗客に対して異常を検知したため運転休止中であることを報知することができる。また、休止モード中に例えば降り場12側から走行路SW内に乗客が入り込んでしまっているような場合にも通常運転モードが再開されるのを防ぐこができるという利点もある。
【0064】
なお、本実施形態では、運転制御部45はスピーカSPを介して警告メッセージを放送しているが、警告メッセージに代えて警告音を放送するようにしてもよい。
【0065】
さらに、運転制御部45は、所定時間が経過するまで休止モードを継続し(ステップS17:NO)、所定時間の経過後に上述したステップS14の処理に進む(ステップS17:YES)。これにより、ステップS14の処理において乗客検知部19を介して乗り場11に接近する乗客を検知したときに走行路SW内で乗客が検知された場合には休止モードが延長されることとなる。
【0066】
この結果、休止モードの実行中に走行路SW内に乗客が入り込んでしまっているような場合に通常運転モードが実行され踏段32が走行し始めるのを防止できる。
【0067】
上記第2実施形態では、ステップS15の処理において、運転制御部45は物体検知部Pを介して物体が検知された場合には休止モードを継続しつつ警告メッセージを放送する例を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものはない。例えば、ステップS15の処理において、運転制御部45は物体検知部Pを介して物体が検知された場合には休止モードの代わりに通常運転モードよりも低速で踏段32を走行させる低速運転モードを実行しつつスピーカSPを介して警告メッセージを放送するものとしてもよい。
【0068】
第2実施形態の乗客コンベアによれば、休止運転モードの実行中に乗客検知部19を介して乗り場11に接近する乗客が検知された場合には物体検知部Pを介して走行路SW内で物体が検知されていないことを条件に通常運転モードが実行される。このため、休止運転モードの実行中に無端搬送体30上に乗客が入り込んでいる場合などに通常運転モードが実行され無端搬送体30を構成する踏段32の走行が開始されてしまうことを防ぐことができる。これにより、無端搬送体30を構成する踏段32の走行開始時における安全性を向上させることが可能となる。
【0069】
また、上記第1および第2実施形態では、エスカレータ10における搬送方向Aが下階側から上階側に向かう方向である場合を例に挙げて説明しているが、搬送方向Aを上階側から下階側に向かう方向としてもよい。
【0070】
上記第1および第2実施形態では、乗客検知部19を乗り場11側の欄干部21,22の支持部23,24に設ける例を挙げて説明している。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、乗り場11周辺にポール(支柱)を設置し、同ポールに乗客の接近を検知する乗客検知部19を設けるようにしてもよい。
【0071】
上記実施形態では、乗客コンベアの一例としてエスカレータ10を例に挙げて説明しているが、動く歩道に本発明を適用してもよい。
【0072】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0073】
10 エスカレータ
11 乗り場
12 降り場
15 乗客通路
19,19-1,19-2 乗客検知部
30 無端搬送体
32,32A,32B,32C 踏段
34 電動機
40 制御装置
44 測定部
45 運転制御部(制御部)
P,P1,P2,P3 物体検知部
PL1,PL2,PL コムプレート
S1~S18 ステップ
SW 走行路
SP,SP1,SP2 スピーカ(報知部)
【要約】
【課題】無端搬送体の走行開始時における安全性を向上させることが可能な乗客コンベアを提供する。
【解決手段】エスカレータ10は、乗り場11から降り場12に至るように設けられた乗客通路15に沿って乗客を搬送する機能を有する無端搬送体30上に存在する物体を検知する物体検知部Pと、無端搬送体30を始動する操作を行うためのキースイッチ28と、無端搬送体30を所定の速度で走行させる通常運転モードを有する運転制御部45とを備え、運転制御部45は、キースイッチ28を介して操作が行われた場合には物体検知部Pを介して物体が検知されていないことを条件に通常運転モードを実行する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5