(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】仮保持構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
B62D25/20 N
(21)【出願番号】P 2023135290
(22)【出願日】2023-08-23
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】徳武 将也
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-280842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60R 19/00-19/56
B62D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフレームと、
前記フレームに固定される部品と、
前記部品を前記フレームに仮保持させるためのフックと、
を備え、
前記フックは、
前記部品の重心位置よりも水平方向にオフセットした位置に設けられるとともに、前記部品から上方に向かって延び出し、前記フレームに設けられた穴に通される先端部を有し、
前記先端部は、
前記穴を通って延在する第1領域と、
前記第1領域から前記水平方向における前記重心位置側に屈曲するように延びる第2領域と、
を含み、
前記穴を通過した前記第1領域を支持点として前記部品が前記フレームから吊り下げられた状態で、前記第2領域の末端が前記穴よりも下方に位置するように形成されている仮保持構造。
【請求項2】
前記先端部は、
前記第2領域の前記末端が、前記第1領域が前記穴に接する点と吊り下げられた前記部品の重心とを結ぶ線よりも、吊り下げられる前の前記部品の前記重心位置側となるように形成されている、
請求項1に記載の仮保持構造。
【請求項3】
前記フックは、
前記フレームの前記部品が固定される側において延在し、一端が前記部品に固定され他端が前記先端部に接続された接続領域を含み、
前記接続領域は、
前記部品から上方に延び出した第1部分と、
前記第1部分から前記重心位置の側に向かって屈曲した第2部分と、
を含む、
請求項1又は2に記載の仮保持構造。
【請求項4】
前記穴は前記水平方向に延在するように形成された長穴であり、
前記先端部は、吊り下げられる前の前記部品の状態で前記第2領域の高さ方向の寸法が前記長穴の高さ寸法より短くなるように形成されている、
請求項1又は2に記載の仮保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には仮保持構造が設けられている。特許文献1には、フロントアンダランプロテクタの両端部に取り付けられた各フック部材のフック部が夫々ブラケットの係合穴に引っ掛けられることで、フロントアンダランプロテクタがブラケットに仮保持される構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示す仮保持構造の場合、フロントアンダランプロテクタの両端部にフック部材が設けられているため、部品点数が増加し、構造が複雑になってしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、簡素な構造で良好に部品を被固定部材に仮保持させる仮保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、車両のフレームと、前記フレームに固定される部品と、前記部品を前記フレームに仮保持させるためのフックと、を備え、前記フックは、前記部品の重心位置よりも水平方向にオフセットした位置に設けられるとともに、前記部品から上方に向かって延び出し、前記フレームに設けられた穴に通される先端部を有し、前記先端部は、前記穴を通って延在する第1領域と、前記第1領域から前記水平方向における前記重心位置側に屈曲するように延びる第2領域と、を含み、前記穴を通過した前記第1領域を支持点として前記部品が前記フレームから吊り下げられた状態で、前記第2領域の末端が前記穴よりも下方に位置するように形成されている仮保持構造を提供する。
【0007】
また、前記先端部は、前記第2領域の前記末端が、前記第1領域が前記穴に接する点と吊り下げられた前記部品の重心とを結ぶ線よりも、吊り下げられる前の前記部品の前記重心位置側となるように形成されていてもよい。
【0008】
また、前記フックは、前記フレームの前記部品が固定される側において延在し、一端が前記部品に固定され他端が前記先端部に接続された接続領域を含み、前記接続領域は、前記部品から上方に延び出した第1部分と、前記第1部分から前記重心位置の側に向かって屈曲した第2部分と、を含んでいてもよい。
【0009】
また、前記穴は前記水平方向に延在するように形成された長穴であり、前記先端部は、吊り下げられる前の前記部品の状態で前記第2領域の高さ方向の寸法が前記長穴の高さ寸法より短くなるように形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、仮保持構造において、簡素な構造で良好に部品を被固定部材に仮保持させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る仮保持構造において、部品がフレームから吊り下げられる前の状態を示す。
【
図2】本実施形態に係る仮保持構造において、部品がフレームから吊り下げられた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[仮保持構造Sの構造]
図1は、本実施形態に係る仮保持構造Sにおいて、部品2がフレーム1から吊り下げられる前の状態を示す図である。なお、
図1は、部品2がフレーム1に固定された状態(ボルト及びナットは省略)を示す図でもある。
図2は、本実施形態に係る仮保持構造Sにおいて、部品2がフレーム1から吊り下げられた状態を示す図である。なお、
図2は、
図1中の部品2の状態から、穴11を通過した第1領域311を支持点として部品2が回転した状態を示す図である。
【0013】
図3は、フック3の構造を示す図である。
図3(a)は、
図1中のフック3を車両の車幅方向における内側から見た状態を示す図である。
図3(b)は、
図1中のフック3を車両の前後方向における後方側から見た状態を示す図である。
【0014】
仮保持構造Sは、車両のフレーム1に車両の部品2を固定する際に部品2をフレーム1に仮保持させる構造である。作業者は、部品2をフレーム1に仮保持させることで部品2から手を離すことが可能になるため、部品2をフレーム1に固定する際の作業性が向上する。
【0015】
仮保持構造Sは、フレーム1、部品2、及びフック3を有する。フレーム1は、車両のフレームである。フレーム1は、例えば、車両の前後方向に延在するサイドフレームである。車両には、車両の車幅方向において複数のサイドフレームが設けられている。
【0016】
フレーム1は、断面コ字形状を有する。フレーム1は、車両の高さ方向に延在する領域と、当該領域の上端及び下端からそれぞれ車両の車幅方向における内側に向かって延在する領域を有する。
【0017】
フレーム1は、穴11及び複数の穴12を有する。穴11は、後述するフック3の先端部31が通される穴である。穴11は、水平方向に延在するように形成された長穴である。穴11は、車両の前後方向に延在するように形成された長穴である。
【0018】
穴12は、部品2をフレーム1に固定するためのボルトが挿入される穴である。複数の穴12は、穴11よりも下方に設けられている。複数の穴12は、車両の前後方向に互いに離れている。
【0019】
部品2は、フレーム1に固定される。部品2は、フレーム1の車両の車幅方向における外側に固定される。部品2は、例えば騒音カバーである。騒音カバーは、車両の騒音の発生源となる音源を覆うことで、音源からの騒音を低減するための部品である。音源は、例えば複数のサイドフレームの間に設けられている。音源は、例えばエンジン、モータ、トランスミッション、及び排気管等を含む。
【0020】
部品2は、部品本体21及び複数の固定部22を有する。部品本体21は、車両の前後方向に延在する板状の領域を含む。部品本体21は、車両の騒音の発生源となる音源の車両の車幅方向における外側に位置する。
【0021】
複数の固定部22は、部品本体21をフレーム1に固定するための部品である。固定部22は、例えば車両の高さ方向に延在した領域を含み、当該領域が部品本体21の車両の車幅方向における外側の面に固定される。固定部22の上端は、部品本体21の上端よりも上方に位置する。
【0022】
部品2には、複数の固定部22として、第1固定部22A及び第2固定部22Bが設けられている。第1固定部22Aは、部品2の水平方向における一端側に設けられている。第1固定部22Aは、凹部221Aを有する。凹部221Aは、第1固定部22Aにおける部品本体21の上端よりも上方の位置に設けられている。
【0023】
第2固定部22Bは、部品2の水平方向における他端側に設けられている。第2固定部22Bは、穴221Bを有する。穴221Bは、第2固定部22Bにおける部品本体21の上端よりも上方の位置に設けられている。
【0024】
部品2は、
図1に示す状態で、第1固定部22Aの凹部221A及びフレーム1の穴12にボルトを挿入し、挿入したボルトにナットを締め付けるとともに、第2固定部22Bの穴221B及びフレーム1の穴12にボルトを挿入し、挿入したボルトにナットを締め付けることで、フレーム1に固定される。
【0025】
フック3は、部品2をフレーム1に仮保持させるための部品である。フック3は、例えばパイプ材又は棒材によって形成されている。フック3は、
図1のような部品2の取付け向きの状態で、部品2の重心Cの位置よりも水平方向にオフセットした位置に設けられている。フック3は、部品2の水平方向における他端側に設けられている。フック3は、部品2から上方に向かって延び出している。フック3は、第2固定部22Bの上端に設けられており、第2固定部22Bの上端から上方に向かって延び出している。
【0026】
フック3は、先端部31を有する。先端部31は、フレーム1に設けられた穴11に通される。
【0027】
先端部31は、第1領域311及び第2領域312を有する。第1領域311は、穴11を通って延在する領域である。第1領域311は、部品2がフレーム1に固定される状態(
図1)で、例えばフレーム1に交差する方向に延在する。
【0028】
第2領域312は、
図1に示すように、水平方向における部品2の重心Cの位置側に屈曲するように第1領域311から延びる領域である。第2領域312の一端は第1領域311の端部に接続されている。第2領域312は、
図1の状態では、フレーム1の内側に位置している。第2領域312は、この例では、直線状の領域を含んでいる。第2領域312が、このように直線状の領域を含むことで、フック3を例えばパイプ材又は棒材からベンダーで成形する際につかみしろとして用いた直線の部分を第2領域312の直線状の領域としてそのまま用いることができる。
【0029】
第2領域312が上述したように第1領域311から水平方向に屈曲しているため、次のような利点が得られる。第2領域が本実施形態のように屈曲しておらず、例えば「J」字型のフックを用いることも想定される。このようなフックの場合、第2領域312に相当する部分が車両の高さ方向に延在することになる。この構成では、フックを穴に引っかけるために、フレーム1の穴11の高さ寸法を大きくする必要がある。これに対して本実施形態の構成によれば、第2領域312が屈曲しているために
図3(a)から理解されるように、
図3(a)の状態における第2領域312の高さ寸法が小さくなる。したがって、フレーム1の穴11の高さ寸法を大きくする必要がない。
【0030】
穴11を通過した第1領域311を支持点として部品2がフレーム1から吊り下げられた状態では、部品2は自重により
図2に示すように傾く。先端部31は、この状態で、第2領域312の末端が穴11よりも下方に位置するように形成されている。第2領域312の屈曲角度や長さは、部品2が吊り下げられた状態を想定して、上記条件が満たされるように設計されていればよい。
【0031】
仮保持構造Sにおいては、上述したようにフック3の先端部31が、穴11を通って延在する第1領域311から水平方向における部品2の重心Cの位置側に屈曲するように延びる第2領域312を含み、穴11を通過した第1領域311を支持点として部品2がフレーム1から吊り下げられた状態で、第2領域312の末端が穴11よりも下方に位置するように形成されている。
【0032】
その結果、仮保持構造Sにおいては、作業者が部品2から手を離したとしても部品2がフレーム1から吊り下げられた状態で、フック3の先端部31が穴11から外れることがなく、部品2をフレーム1に良好に保持させることができる。したがって、1か所のフック3によって部品2をフレーム1に仮保持させることができるとともに、部品2がフレーム1から落下するのを防ぐことができる。よって、簡素な構造で良好に部品2を被固定部材に仮保持させることができる。
【0033】
先端部31は、具体的には、第2領域312の末端が、第1領域311が穴11に接する点と吊り下げられた部品2の重心Cとを結ぶ線Lよりも、吊り下げられる前の部品2の重心Cの位置側となるように形成されている。仮保持構造Sにおいては、このように先端部31が形成されていることで、部品2がフレーム1から吊り下げられた状態で第2領域312を穴11に良好に通すことができるため、部品2がフレーム1から落下しづらくすることができる。
【0034】
フック3は、接続領域32を有する。接続領域32は、一端が部品2に固定され他端が先端部31に接続された領域である。接続領域32は、フレーム1の部品2が固定される側において延在する。接続領域32は、フレーム1の車両の高さ方向に延在する領域の車両の車幅方向における外側において延在する。
【0035】
接続領域32は、第1部分321及び第2部分322を有する。第1部分321は、部品2から上方に延び出した部分である。部品2がフレーム1に固定された状態(
図1)で、第1部分321は、車両の高さ方向に延在している。
【0036】
第2部分322は、第1部分321から部品2の重心Cの位置の側に向かって(
図1における左側に向かって)屈曲した部分である。第2部分322の一端は第1部分321の上端に接続されている。第2部分322の他端は、第1領域311の車両の車幅方向における外側の端部に接続されている。部品2がフレーム1に固定された状態(
図1)で、第2部分322は、第2部分322の他端が第2部分322の一端よりも水平方向において部品2の重心Cの位置に近づくように車両の高さ方向に対して傾斜している。
【0037】
第2部分322がこのように第1部分321に対して屈曲していることで、第1領域311が穴11に接する点と部品2の重心Cとの水平方向における距離が近づくため、部品2がフレーム1から吊り下げられる前の状態から部品2がフレーム1から吊り下げられた状態になるまでに部品2が回転する角度を抑制することができる。
【0038】
先端部31は、吊り下げられる前の部品2の状態で第2領域312の高さ方向の寸法が穴11の高さ寸法より短くなるように形成されている。仮保持構造Sにおいては、このようにフック3の先端部31が形成されていることで、フック3の先端部31を穴11に挿入し易くすることができる。また、穴11の高さ寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0039】
[本実施形態に係る仮保持構造Sによる効果]
本実施形態に係る仮保持構造Sにおいては、上述したようにフック3の先端部31が、穴11を通って延在する第1領域311から水平方向における部品2の重心Cの位置側に屈曲するように延びる第2領域312を含み、穴11を通過した第1領域311を支持点として部品2がフレーム1から吊り下げられた状態で、第2領域312の末端が穴11よりも下方に位置するように形成されている。
【0040】
その結果、仮保持構造Sにおいては、作業者が部品2から手を離したとしても部品2がフレーム1から吊り下げられた状態で、フック3の先端部31が穴11から外れることがなく、部品2をフレーム1に良好に保持させることができる。したがって、1か所のフック3によって部品2をフレーム1に仮保持させることができるとともに、部品2がフレーム1から落下するのを防ぐことができる。よって、簡素な構造で良好に部品2を被固定部材に仮保持させることができる。
【0041】
なお、本実施形態ではフレーム1自体に穴が形成された例を説明したが、フレーム1に取り付けられた所定の部材に穴が形成されることによって、フレーム1に穴が設けられていてもよい。
【0042】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0043】
S・・・仮保持構造
1・・・フレーム
11・・・穴
12・・・穴
2・・・部品
21・・・部品本体
22・・・固定部
22A・・・第1固定部
221A・・・凹部
22B・・・第2固定部
221B・・・穴
3・・・フック
31・・・先端部
311・・・第1領域
312・・・第2領域
32・・・接続領域
321・・・第1部分
322・・・第2部分
C・・・重心
L・・・第1領域が穴に接する点と吊り下げられた部品の重心とを結ぶ線
【要約】
【課題】仮保持構造において、簡素な構造で良好に部品を被固定部材に仮保持させる。
【解決手段】仮保持構造Sは、車両のフレーム1と、フレーム1に固定される部品2と、部品2をフレーム1に仮保持させるためのフック3と、を備え、フック3は、部品2の重心位置よりも水平方向にオフセットした位置に設けられるとともに、部品2から上方に向かって延び出し、フレーム1に設けられた穴11に通される先端部31を有し、先端部31は、穴11を通って延在する第1領域311と、第1領域311から水平方向における重心位置側に屈曲するように延びる第2領域312と、を含み、穴11を通過した第1領域311を支持点として部品2がフレーム1から吊り下げられた状態で、第2領域312の末端が穴11よりも下方に位置するように形成されている。
【選択図】
図1