IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-鞍乗型車両 図1
  • 特許-鞍乗型車両 図2
  • 特許-鞍乗型車両 図3
  • 特許-鞍乗型車両 図4
  • 特許-鞍乗型車両 図5
  • 特許-鞍乗型車両 図6
  • 特許-鞍乗型車両 図7
  • 特許-鞍乗型車両 図8
  • 特許-鞍乗型車両 図9
  • 特許-鞍乗型車両 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 43/16 20200101AFI20240423BHJP
   B62J 43/23 20200101ALI20240423BHJP
   B62J 25/04 20200101ALI20240423BHJP
   B62J 15/00 20060101ALI20240423BHJP
   B62J 9/14 20200101ALI20240423BHJP
   B62J 9/23 20200101ALI20240423BHJP
【FI】
B62J43/16
B62J43/23
B62J25/04
B62J15/00 C
B62J9/14
B62J9/23
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023139280
(22)【出願日】2023-08-29
【審査請求日】2023-09-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】津島 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】山村 理
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆世
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05150762(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103935438(CN,A)
【文献】国際公開第2019/194048(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103879485(CN,A)
【文献】中国実用新案第206914535(CN,U)
【文献】中国実用新案第201761592(CN,U)
【文献】欧州特許出願公開第2423087(EP,A1)
【文献】中国実用新案第209225286(CN,U)
【文献】特開2010-083332(JP,A)
【文献】特開2010-083333(JP,A)
【文献】国際公開第2020/194985(WO,A1)
【文献】Coco Hong,“EEC big wheel citycoco electric scooter with seat removable battery”,YouTube[online][video],2018年05月31日,[令和5年11月1日検索],インターネット<URL: https://www.youtube.com/watch?v=ZnEkbMGMPRU>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 43/00-43/30
B62J 25/04
B62J 15/00
B62J 9/00- 9/40
B62K 19/00-19/48
B62M 7/00- 7/14
B62H 1/00- 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインバッテリ及びサブバッテリの電力によって走行可能な鞍乗型車両であって、
運転者の脚部が載置される低床のフロアボードと、
前記フロアボードの後部を上方から覆うシートと、
前記メインバッテリを着脱可能に保持するメインホルダと、
前記サブバッテリを着脱可能に保持するサブホルダと、
車体を車幅方向に傾けて自立させるサイドスタンドと、を備え、
前記フロアボードと前記シートの間のスペースが周囲に開放され、
前記スペースに前記メインホルダ及び前記サブホルダが設置され、当該メインホルダ及び当該サブホルダに周囲から前記メインバッテリ及び前記サブバッテリが着脱可能であり、
車幅方向で前記メインホルダが前記サイドスタンド側に設置され、前記サブホルダが前記サイドスタンド側とは逆側に設置され、当該サブホルダに前記サブバッテリが前傾姿勢で保持され、
前記メインホルダに対する前記メインバッテリの着脱方向と前記サブホルダに対する前記サブバッテリの着脱方向が異なっており、前記メインホルダに前記サイドスタンド側から前記メインバッテリが着脱可能であり、前記サブホルダに前側から前記サブバッテリが着脱可能であることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
メインバッテリ及びサブバッテリの電力によって走行可能な鞍乗型車両であって、
運転者の脚部が載置される低床のフロアボードと、
前記フロアボードの後部を上方から覆うシートと、
前記メインバッテリを着脱可能に保持するメインホルダと、
前記サブバッテリを着脱可能に保持するサブホルダと、
前記メインバッテリを着脱不能にロックするロック機構と、を備え、
前記フロアボードと前記シートの間のスペースが周囲に開放され、
前記スペースに前記メインホルダ及び前記サブホルダが設置され、当該メインホルダ及び当該サブホルダに周囲から前記メインバッテリ及び前記サブバッテリが着脱可能であり、
前記メインホルダに対する前記メインバッテリの着脱方向と前記サブホルダに対する前記サブバッテリの着脱方向が異なり、
前記ロック機構が前記メインホルダの上方で前記メインバッテリと前記サブバッテリの中間に位置付けられることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項3】
車体を車幅方向に傾けて自立させるサイドスタンドを備え、
車幅方向で前記メインホルダが前記サイドスタンド側に設置され、前記サブホルダが前記サイドスタンド側とは逆側に設置され、
前記メインホルダに前記サイドスタンド側から前記メインバッテリが着脱可能であることを特徴とする請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記サブバッテリを着脱不能にロックする他のロック機構を備え、
前記他のロック機構が前記サブホルダの上方で前記サイドスタンド側とは逆側に位置付けられることを特徴とする請求項3に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力によって走行する電動式の鞍乗型車両が開発されている。この種の鞍乗型車両として、シート下方の収容ボックス内にバッテリが設置されたスクータタイプの車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の鞍乗型車両では、シート前方に低床のフロアボードが設置されており、シート下方の空間がボディカバーによって覆われている。ボディカバーの内側には収容ボックスが設置されており、収容ボックスの上面開口がシートによって覆われている。シートを開いた状態で、収容ボックスに対してバッテリが上下方向に着脱可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/043518号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の鞍乗型車両では、重量物のバッテリを収容ボックスから引き上げるのは容易ではなく、バッテリの着脱性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、車体に対するバッテリの着脱性を向上することができる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の鞍乗型車両は、バッテリの電力によって走行可能な鞍乗型車両であって、運転者の脚部が載置される低床のフロアボードと、前記フロアボードの後部を上方から覆うシートと、前記バッテリを着脱可能に保持するバッテリホルダと、を備え、前記フロアボードと前記シートの間のスペースが周囲に開放され、前記スペースに前記バッテリホルダが設置され、当該バッテリホルダに周囲から前記バッテリが着脱可能であることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の鞍乗型車両によれば、フロアボードとシートの間のバッテリホルダに周囲からバッテリが着脱される。このため、シートを開閉したり、重量物のバッテリを高く引き上げたりすることなく、バッテリホルダに対して容易にバッテリを着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
図2】本実施例の鞍乗型車両の右側面図である。
図3】本実施例の車体後部の右側面図である。
図4図2の鞍乗型車両をA-A線に沿って切断した断面図である。
図5】本実施例のメインバッテリの着脱作業の説明図である。
図6】本実施例のサブバッテリの着脱作業の説明図である。
図7】変形例1のバッテリの着脱作業の説明図である。
図8】変形例2のバッテリの着脱作業の説明図である。
図9】変形例3のバッテリの着脱作業の説明図である。
図10】変形例4のバッテリの着脱作業の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の鞍乗型車両は、バッテリホルダに着脱可能に保持されたバッテリの電力によって走行する。鞍乗型車両の低床のフロアボードには運転者の脚部が載置され、フロアボードの後部はシートによって上方から覆われている。フロアボードとシートの間のスペースが周囲に開放されており、このスペースにはバッテリホルダが設置されている。バッテリホルダには周囲からバッテリが着脱可能であり、シートを開閉したり、重量物のバッテリを高く引き上げたりすることなく、バッテリホルダに対して容易にバッテリを着脱することができる。
【実施例
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例の鞍乗型車両について説明する。図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。図2は本実施例の鞍乗型車両の右側面図である。なお、以下の図では、鞍乗型車両から車体カバーを取り外した状態を示している。また、以下の図では、矢印Frは車両前方、矢印Reは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1及び図2に示すように、鞍乗型車両1の車体フレーム10にはシート41前方に低床のフロアボード45が設置されている。車体フレーム10の前端部にはヘッドパイプ11が設けられており、ヘッドパイプ11から後斜め下方にフロントフレーム12が延びている。フロントフレーム12の下部には左右一対のロアフレーム13が接続され、一対のロアフレーム13がフロアボード45の下側を後方に延びている。一対のロアフレーム13の後部からシート41に向かって一対のサイドフレーム14が立ち上がり、一対のサイドフレーム14の上部が後方に屈曲してシートフレーム15が形成されている。
【0012】
ヘッドパイプ11にはステアリングシャフト(不図示)を介してフロントフォーク31が操舵可能に支持されている。ステアリングシャフトの上部にはハンドル32が設けられており、フロントフォーク31の下部には前輪33が回転可能に支持されている。一対のサイドフレーム14から後方にU字状の一対のリアフレーム16が延びており、一対のリアフレーム16の後端の一対のリアブラケット18には後輪34が回転可能に支持されている。また、リアブラケット18及びリアフレーム16の上部にはリアフェンダ35が取り付けられ、リアフェンダ35によって後輪34が上方から覆われている。
【0013】
一対のシートフレーム15上にはシート41が支持されており、シートフレーム15の下方には収容ボックス29が設置されている。収容ボックス29は一対のサイドフレーム14の内側に位置しており、収容ボックス29の上部の出し入れ口がシート41によって上方から覆われている。一対のロアフレーム13上にはフロアボード45が設置されており、フロアボード45上の踏面にはシート41に座った運転者の脚部が載置される。フロアボード45の後部上面にはバッテリホルダ50を介してバッテリ53が設置されており、フロアボード45の後部下側にはモータ60が設置されている。
【0014】
なお、詳細は後述するが、本実施例の鞍乗型車両1には、バッテリホルダ50としてメインホルダ51とサブホルダ52が設置されている。メインホルダ51にはモータ60に対して電力を供給するメインバッテリ54が着脱可能に保持されており、サブホルダ52にはモータ60に対して予備電力を供給するサブバッテリ55が着脱可能に保持されている。以下においては、メインホルダ51及びサブホルダ52を区別しないときにはバッテリホルダ50と総称して説明し、メインバッテリ54及びサブバッテリ55を区別しないときにはバッテリ53と総称して説明する。
【0015】
モータ60の出力軸にはドライブスプロケット36が設けられ、後輪34の車軸にはドリブンスプロケット37が設けられている。モータ60のドライブスプロケット36と後輪34のドリブンスプロケット37がチェーン38を介して連結されている。バッテリ53からモータ60に電力が供給されて、モータ60によってドライブスプロケット36、チェーン38、ドリブンスプロケット37を介して後輪34が駆動されている。左側のロアフレーム13にはサイドスタンド39が設けられており、サイドスタンド39を立てることによって車体が左側(車幅方向一方側)に傾けられた状態で自立される。
【0016】
電動式の鞍乗型車両1では、バッテリレイアウトによってはバッテリ53が着脱し難い。一般的な鞍乗型車両ではシート下方の収容ボックス内にバッテリが設置されるが、重量物であるバッテリを収容ボックスから引き上げるのは容易ではない。バッテリの装着時には収容ボックスの底面のバッテリホルダにバッテリが装着し難い。また、バッテリを着脱する度にシートを開閉しなければならない。そこで、本実施例では、シート41とフロアボード45の間の外部スペースを利用して、外部スペースのバッテリホルダ50に対して周囲からバッテリ53を装着可能にして着脱性を向上させている。
【0017】
以下、図3及び図4を参照して、鞍乗型車両の後部構造について説明する。図3は本実施例の車体後部の右側面図である。図4図2の鞍乗型車両をA-A線に沿って切断した断面図である。
【0018】
図3に示すように、一対のシートフレーム15上にはシート41が支持されており、収容ボックス29の前面よりもシート41が前方に突き出している。側面視にて収容ボックス29の前面は一対のサイドフレーム14と平行に形成され、一対のサイドフレーム14を覆うボディカバー26の内側に収容ボックス29が設置されている。ボディカバー26の内側では一対のサイドフレーム14の下部を連ねるフレームブリッジ21に収容ボックス29の下部が支持され、一対のシートフレーム15の後側を連ねるフレームブリッジ22に収容ボックス29の上部が支持されている。
【0019】
フロアボード45の後方からシート41に向けて一対のサイドフレーム14は立ち上がり、一対のサイドフレーム14よりも前方にシート41が突き出している。シート41の前半部はフロアボード45に対向しており、シート41の前半部によってフロアボード45の後部が上方から覆われている。一対のサイドフレーム14及び収容ボックス29がボディカバー26の内側に位置し、ボディカバー26の外側はフロアボード45とシート41に上下から挟まれた外部スペースになっている。フロアボード45とシート41の間の外部スペースが後方を除いて周囲に開放されている。
【0020】
フロアボード45とシート41の間の外部スペースには、メインホルダ51(図4参照)及びサブホルダ52が設置されている。メインホルダ51にはメインバッテリ54が保持され、サブホルダ52にはサブバッテリ55が保持されている。側面視にてサイドフレーム14にメインバッテリ54及びサブバッテリ55が重ならないように、メインバッテリ54及びサブバッテリ55よりも後方に一対のサイドフレーム14が位置付けられている。ボディカバー26からメインバッテリ54及びサブバッテリ55が外部に露出されることで、メインバッテリ54及びサブバッテリ55の着脱性が向上されている。
【0021】
メインホルダ51及びサブホルダ52がシート41前端とサイドフレーム14の間に位置している。メインホルダ51及びサブホルダ52にメインバッテリ54及びサブバッテリ55が保持されると、メインバッテリ54及びサブバッテリ55もシート41前端よりも後方に位置付けられる。このように、運転者の脚部よりも後方のスペースを利用してメインバッテリ54及びサブバッテリ55が設置される。運転者が脚部を真下に下ろした状態では、メインバッテリ54及びサブバッテリ55が運転者の脚部に干渉することがなく、シート41前方のフロアボード45には脚部を載せるのに十分な踏面が確保される。
【0022】
メインバッテリ54及びサブバッテリ55はサイドフレーム14に沿うようにメインホルダ51及びサブホルダ52に保持されており、メインバッテリ54及びサブバッテリ55の後面の傾きがサイドフレーム14の傾きと略平行になっている。また、メインバッテリ54及びサブバッテリ55の上端部が下端部よりも前方になるように前傾している。メインバッテリ54及びサブバッテリ55がサイドフレーム14に近づけられると共に、メインバッテリ54及びサブバッテリ55の下端部が後方に位置付けられることでフロアボード45の踏面が広く確保されている。
【0023】
フロアボード45の上方にメインバッテリ54及びサブバッテリ55が設置され、これらメインバッテリ54及びサブバッテリ55の真下にモータ60の一部が位置されている。すなわち、フロアボード45を挟んでメインホルダ51及びサブホルダ52の真下にモータ60が設置されている。側面視にてメインバッテリ54及びサブバッテリ55とモータ60が上下に並べられることで、メインバッテリ54及びサブバッテリ55とモータ60がコンパクトに設置されている。フロアボード45の下方にモータ60が設置されることで、フロアボード45が庇として機能して降雨時に雨水がモータ60に付着し難くなっている。
【0024】
フロアボード45が一対のロアフレーム13に下側から支持され、ロアフレーム13の下方にモータ60が位置付けられている。また、ロアフレーム13とサイドフレーム14の境界付近にリアフレーム16の基端部17が位置しており、このリアフレーム16の基端部17よりもモータ60が下方に位置付けられている。重量物であるモータ60が低位置にあるため、車体の重心が下がって走行安定性が向上する。さらに、停車状態でモータ60の駆動軸中心O1が後輪34の回転軸中心O2よりも下方に位置しているため、より車体の重心が下がって走行安定性が向上している。
【0025】
図4に示すように、フロアボード45上にはメインホルダ51とサブホルダ52が車幅方向に並んで設置されている。メインホルダ51は上方及び左側方を開放した凹状に形成されており、メインホルダ51に対して左側からメインバッテリ54が着脱可能になっている。メインホルダ51の前後壁には一対のガイド穴(不図示)が形成され、メインバッテリ54の下部にはガイド穴に嵌る一対のガイド軸(不図示)が形成されている。また、メインホルダ51の底面からホルダ端子(不図示)が突き出しており、メインバッテリ54の底面の挿込口内にバッテリ端子(不図示)が設けられている。
【0026】
サブホルダ52は上方及び前方を開放した凹状に形成されており、サブホルダ52に対して前側からサブバッテリ55が着脱可能になっている。サブホルダ52の左右壁には一対のガイド穴(不図示)が形成され、サブバッテリ55の下部にはガイド穴に嵌る一対のガイド軸(不図示)が形成されている。また、サブホルダ52の底面からホルダ端子(不図示)が突き出しており、サブバッテリ55の底面の挿込口内にバッテリ端子(不図示)が設けられている。このように、メインホルダ51に対するメインバッテリ54の着脱方向とサブホルダ52に対するサブバッテリ55の着脱方向が異なっている。
【0027】
この場合、メインホルダ51に対してサイドスタンド39側からメインバッテリ54が着脱可能になっている。車体左側にはサイドスタンド39が設けられており、鞍乗型車両1の停車時には車体が左側に傾けて自立される。メインホルダ51が左側に傾けられているため、メインホルダ51に対して左側からスムーズにメインバッテリ54が着脱される。また、サブホルダ52に対して前側からサブバッテリ55が着脱可能になっている。サブバッテリ55は前傾姿勢でサブホルダ52に保持されている。サブホルダ52が前側に傾けられているため、サブバッテリ55に対して前側からスムーズにサブバッテリ55が着脱される。
【0028】
メインバッテリ54及びサブバッテリ55の右側にはロック機構56、57が設けられている。ロック機構56、57は一対のサイドフレーム14を繋ぐ横断プレート25に取り付けられている。ロック機構56、57にはそれぞれロック片(不図示)が設けられており、メインバッテリ54及びサブバッテリ55にはそれぞれロック穴(不図示)が設けられている。ロック機構56、57の前面にはキーシリンダ58、59が設けられており、メカニカルキーによってキーシリンダ58、59が回転されることで、ロック片がロック穴に嵌ってメインバッテリ54及びサブバッテリ55が着脱不能にロックされる。
【0029】
図5及び図6を参照して、メインバッテリ及びサブバッテリの着脱作業について説明する。図5は本実施例のメインバッテリの着脱作業の説明図である。図6は本実施例のサブバッテリの着脱作業の説明図である。
【0030】
図5に示すように、シート41とフロアボード45の間の外部スペースにメインホルダ51とサブホルダ52が横並びに設置されている。メインホルダ51はサイドスタンド39側である左側に設置され、サブホルダ52はサイドスタンド39側とは逆側の右側に設置されている。ロック機構56、57はそれぞれメインホルダ51及びサブホルダ52の右上方に設けられ、サイドスタンド39側とは逆側にロック機構56、57が位置付けられている。鞍乗型車両1の停車時には車体がサイドスタンド39側の左側に傾けられており、メインホルダ51及びサブホルダ52も左側に傾けられている。
【0031】
メインバッテリ54の装着時には、メインホルダ51に対して左側からメインバッテリ54が近づけられ、メインバッテリ54が左側に傾けられた状態でメインホルダ51上に載せられる。メインホルダ51のガイド穴にメインバッテリ54のガイド軸が嵌められて、メインホルダ51に対してメインバッテリ54が位置合わせされる。メインバッテリ54が傾斜姿勢から起こされて、メインバッテリ54の挿込口にメインホルダ51のホルダ端子が挿し込まれる。メインバッテリ54が装着されると、メインバッテリ54がロック機構56に当接してメカニカルキーによって施錠される。
【0032】
メインバッテリ54の取り外し時には、メカニカルキーによってメインバッテリ54に対するロック機構56のロックが解除される。メインホルダ51からメインバッテリ54が左側に倒されて、メインバッテリ54の挿込口からメインホルダ51のホルダ端子が抜け出す。メインホルダ51から左斜め上方にメインバッテリ54が引き抜かれて、メインホルダ51のガイド穴からメインバッテリ54のガイド軸が外れる。メインホルダ51の高さ分だけメインバッテリ54を持ち上げればよく、メインホルダ51を高く持ち上げる必要はないので作業負担が軽減されている。
【0033】
このとき、メインホルダ51が車体と共に左側に傾いている分だけ、着脱時のメインバッテリ54の起こし量や倒し量が抑えられている。具体的には、鉛直方向を示す基準線L1に対するメインバッテリ54の傾斜角θ1よりも、メインホルダ51の軸線方向を示す基準線L2に対するメインバッテリ54の傾斜角θ2が小さい。この傾斜角θ1、θ2の差分だけメインバッテリ54の起こし量や倒し量が抑えられている。また、メインバッテリ54の取り外し時には、メインバッテリ54が左側に傾いているため、重量物であるメインバッテリ54の自重を利用して倒し易くなっている。
【0034】
図6に示すように、サブバッテリ55の装着時には、サブホルダ52に対して前側からサブバッテリ55が近づけられ、サブバッテリ55が前傾された状態でサブホルダ52上に載せられる。サブホルダ52のガイド穴にサブバッテリ55のガイド軸が嵌められて、サブホルダ52に対してサブバッテリ55が位置合わせされる。サブバッテリ55が傾斜姿勢から起こされて、サブバッテリ55の挿込口にサブホルダ52のホルダ端子が挿し込まれる。サブバッテリ55が装着されると、サブバッテリ55がロック機構57に当接してメカニカルキーによって施錠される。
【0035】
サブバッテリ55の取り外し時には、メカニカルキーによってサブバッテリ55に対するロック機構57のロックが解除される。サブホルダ52からサブバッテリ55が前側に倒されて、サブバッテリ55の挿込口からサブホルダ52のホルダ端子が抜け出す。サブホルダ52から前斜め上方にサブバッテリ55が引き抜かれて、サブホルダ52のガイド穴からサブバッテリ55のガイド軸が外れる。サブホルダ52の高さ分だけサブバッテリ55を持ち上げればよく、サブホルダ52を高く持ち上げる必要はないので作業負担が軽減されている。また、サブバッテリ55がロック機構56、57に干渉することがない。
【0036】
このとき、サブホルダ52が僅かに前傾している分だけ、着脱時のサブバッテリ55の起こし量や倒し量が抑えられている。具体的には、鉛直方向を示す基準線L3に対するサブバッテリ55の傾斜角θ3よりも、サブホルダ52の軸線方向を示す基準線L4に対するサブバッテリ55の傾斜角θ4が小さい。この傾斜角θ3、θ4の差分だけサブバッテリ55の起こし量や倒し量が抑えられている。また、サブバッテリ55の取り外し時には、サブバッテリ55が前傾しているため、重量物であるサブバッテリ55の自重を利用して倒し易くなっている。
【0037】
また、鞍乗型車両1には運転者が左側から乗降して、運転者が鞍乗型車両1の左側に立ってメインバッテリ54及びサブバッテリ55の着脱作業が実施される。このため、メインホルダ51に対して左側から着脱可能なメインバッテリ54が、サブホルダ52に対して前側から着脱可能なサブバッテリ55よりも着脱し易くなっている。このように、メインホルダ51がサイドスタンド39側に設置され、サブホルダ52がサイドスタンド39側とは逆側に設置されることで、サブバッテリ55よりも着脱頻度の高いメインバッテリ54がメインホルダ51に対してスムーズに着脱される。
【0038】
以上、本実施例の鞍乗型車両1によれば、フロアボード45とシート41の間のメインホルダ51及びサブホルダ52に周囲からメインバッテリ54及びサブバッテリ55が着脱される。このため、シート41を開閉したり、重量物のメインバッテリ54及びサブバッテリ55を高く引き上げたりすることなく、メインホルダ51及びサブホルダ52に対して容易にメインバッテリ54及びサブバッテリ55を着脱することができる。
【0039】
なお、本実施例においては、メインバッテリが左側から着脱され、サブバッテリが前側から着脱されたが、メインホルダ及びサブホルダに周囲からメインバッテリ及びサブバッテリが着脱可能であればよい。例えば、図7の変形例1に示すように、メインホルダ81に対してメインバッテリ83が左側から着脱され、サブホルダ82に対してサブバッテリ84が右側から着脱されてもよい。この場合、メインバッテリ83とサブバッテリ84の間に単一のロック機構85が設けられ、単一のロック機構85によってメインバッテリ83とサブバッテリ84がロックされてもよい。
【0040】
図8の変形例2に示すように、メインホルダ86及びサブホルダ87に左側からメインバッテリ88及びサブバッテリ89が着脱されてもよいし、メインホルダ86及びサブホルダ87に右側からメインバッテリ88及びサブバッテリ89が着脱されてもよい。この場合、破線に示すように、メインバッテリ88やサブバッテリ89の上側や、メインバッテリ88やサブバッテリ89の下部側方にロック機構が設置されてもよい。
【0041】
また、本実施例においては、鞍乗型車両にメインバッテリ及びサブバッテリが設置されたが、鞍乗型車両には少なくとも1つのバッテリが設置されていればよい。例えば、図9の変形例3に示すように、フロアボード91とシート92の間の外部スペースにバッテリホルダ93が設置され、バッテリホルダ93に対してバッテリ94がサイドスタンド95側から着脱されてもよい。この場合、バッテリホルダ93に周囲からバッテリ94が着脱可能であればよい。また、破線に示すように、バッテリ94の上側やバッテリ94の下部側方にロック機構が設置されてもよい。
【0042】
また、本実施例においては、フロアボードの上方にバッテリホルダが設置されたが、リアフェンダの上方にバッテリホルダが設置されてもよい。例えば、図10の変形例4に示すように、リアフェンダ96とシート97の間の外部スペースにバッテリホルダ98が設置され、バッテリホルダ98に対して後側からバッテリ99が着脱されてもよい。この場合、バッテリホルダ98に周囲からバッテリ99が着脱可能であればよい。
【0043】
また、本実施例においては、メインホルダが車体左側に設置され、サブホルダが車体右側に設置されているが、メインホルダが車体右側に設置され、サブホルダが車体左側に設置されてもよい。
【0044】
また、本実施例のバッテリの脱着構造は上記の鞍乗型車両には限定されず、他の鞍乗型車両に採用されてもよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0045】
以上の通り、第1態様は、バッテリ(94)の電力によって走行可能な鞍乗型車両であって、運転者の脚部が載置される低床のフロアボード(91)と、フロアボードの後部を上方から覆うシート(92)と、バッテリを着脱可能に保持するバッテリホルダ(93)と、を備え、フロアボードとシートの間のスペースが周囲に開放され、スペースにバッテリホルダが設置され、当該バッテリホルダに周囲からバッテリが着脱可能である。この構成によれば、フロアボードとシートの間のバッテリホルダに周囲からバッテリが着脱される。このため、シートを開閉したり、重量物のバッテリを高く引き上げたりすることなく、バッテリホルダに対して容易にバッテリを着脱することができる。
【0046】
第2態様は、第1態様において、車体を車幅方向に傾けて自立させるサイドスタンド(95)を備え、バッテリホルダにサイドスタンド側からバッテリが着脱可能である。この構成によれば、停車時にバッテリホルダに対してスムーズにバッテリを着脱することができる。
【0047】
第3態様は、メインバッテリ(54、83、88)及びサブバッテリ(55、84、89)の電力によって走行可能な鞍乗型車両であって、運転者の脚部が載置される低床のフロアボード(45)と、フロアボードの後部を上方から覆うシート(41)と、メインバッテリを着脱可能に保持するメインホルダ(51、81、86)と、サブバッテリを着脱可能に保持するサブホルダ(52、82、87)と、を備え、フロアボードとシートの間のスペースが周囲に開放され、スペースにメインホルダ及びサブホルダが設置され、当該メインホルダ及び当該サブホルダに周囲からメインバッテリ及びサブバッテリが着脱可能である。この構成によれば、フロアボードとシートの間のメインホルダ及びサブホルダに周囲からメインバッテリ及びサブバッテリが着脱される。このため、シートを開閉したり、重量物のメインバッテリ及びサブバッテリを高く引き上げたりすることなく、メインホルダ及びサブホルダに対して容易にメインバッテリ及びサブバッテリを着脱することができる。
【0048】
第4態様は、第3態様において、メインホルダに対するメインバッテリの着脱方向とサブホルダに対するサブバッテリの着脱方向が異なる。この構成によれば、メインバッテリ及びサブバッテリを異なる方向から装着することができる。
【0049】
第5態様は、第3態様又は第4態様において、車体を車幅方向に傾けて自立させるサイドスタンド(39)を備え、車幅方向でメインホルダがサイドスタンド側に設置され、サブホルダがサイドスタンド側とは逆側に設置され、メインホルダにサイドスタンド側からメインバッテリが着脱可能である。この構成によれば、着脱頻度の高いメインバッテリをメインホルダに対してスムーズに着脱することができる。
【0050】
第6態様は、バッテリ(99)の電力によって走行可能な鞍乗型車両であって、後輪を上方から覆うリアフェンダ(96)と、リアフェンダの前部を上方から覆うシート(97)と、バッテリを着脱可能に保持するバッテリホルダ(98)と、を備え、リアフェンダとシートの間のスペースが周囲に開放され、スペースにバッテリホルダが設置され、当該バッテリホルダに周囲からバッテリが着脱可能である。この構成によれば、リアフェンダとシートの間のバッテリホルダに周囲からバッテリが着脱される。このため、シートを開閉したり、重量物のバッテリを高く引き上げたりすることなく、バッテリホルダに対して容易にバッテリを着脱することができる。
【0051】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0052】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0053】
1 :鞍乗型車両
39、95 :サイドスタンド
41、92、97 :シート
45、91 :フロアボード
50、93、98 :バッテリホルダ
51、81、86 :メインホルダ
52、82、87 :サブホルダ
53、94、99 :バッテリ
54、83、88 :メインバッテリ
55、84、89 :サブバッテリ
84 :サブバッテリ
96 :リアフェンダ
99 :バッテリ
【要約】
【課題】車体に対するバッテリの着脱性を向上する。
【解決手段】鞍乗型車両は、メインバッテリ(54)及びサブバッテリ(55)の電力によって走行する。鞍乗型車両には、運転者の脚部が載置される低床のフロアボード(45)と、フロアボードの後部を上方から覆うシート(41)と、メインバッテリを着脱可能に保持するメインホルダ(51)と、サブバッテリを着脱可能に保持するサブホルダ(52)と、が設けられている。フロアボードとシートの間のスペースが周囲に開放されている。スペースにバッテリホルダが設置され、当該バッテリホルダに周囲からバッテリが着脱可能である。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10