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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】接続構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240423BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20240423BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
E04B1/58 505N
E04B1/30 K
E04B1/94 N
E04B1/94 P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023199723
(22)【出願日】2023-11-27
(62)【分割の表示】P 2021057119の分割
【原出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2024009253
(43)【公開日】2024-01-19
【審査請求日】2023-11-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-018461(JP,A)
【文献】特開2005-048471(JP,A)
【文献】特開2014-29092(JP,A)
【文献】特開2018-12959(JP,A)
【文献】特開2022-122012(JP,A)
【文献】特開2008-019652(JP,A)
【文献】特開2017-133271(JP,A)
【文献】特開2017-133277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/26
E04B 1/30
E04B 1/58
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製柱と鋼製構造とを接続する接続構造であって、
鋼製本体部と前記鋼製本体部に接合された鋼製面板材とを有して前記鋼製構造が接合される鋼製仕口部材と、
前記木製柱と前記鋼製面板材との間に配置される耐火応力伝達部材と、
一端が前記鋼製面板材に固定され、他端が前記木製柱に接合される接合部材と、を備え、
前記耐火応力伝達部材は、前記接合部材が貫通する貫通孔を有するプレキャスト材であり、
前記木製柱、前記鋼製面板材、および、前記耐火応力伝達部材は、前記木製柱の横断面方向において同じ外形形状を有する
接続構造
【請求項2】
前記鋼製構造は、フランジを有し、
前記鋼製面板材に前記フランジが接合されている
請求項1に記載の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の躯体における木製柱と鋼製構造とを接続する接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、建物の躯体を構成する柱部分を木製構造とする場合、躯体のエネルギー吸収性能を確保するために、梁部分を鉄骨などの鋼製構造とする工法が知られている。例えば特許文献1には、柱部分を構成する木製構造と梁部分を構成する鋼製構造とが鋼板を用いたRC製の仕口部材で接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-133278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、木製構造と鋼製構造とを強固に接続することが可能であるものの、柱部分と梁部分とが交差する仕口部分の重量が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する接続構造は、木製柱と鋼製構造とを接続する。前記接続構造は、鋼製本体部と前記鋼製本体部に接合された鋼製面板材とを有して前記鋼製構造が接合される鋼製仕口部材と、前記木製柱と前記鋼製面板材との間に配置される耐火応力伝達部材と、一端が前記鋼製面板材に固定され、他端が前記木製柱に接合される接合部材と、を備える。前記耐火応力伝達部材は、前記接合部材が貫通する貫通孔を有するプレキャスト材であり、前記木製柱、前記鋼製面板材、および、前記耐火応力伝達部材は、前記木製柱の横断面方向において同じ外形形状を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、仕口部分の重量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1接続構造の一実施形態を備える合成構造の概略構成を示す分解斜視図。
図2】合成構造の施工方法の一実施形態を示すフローチャート。
図3】耐火応力伝達部材設置ステップの過程を示す断面図。
図4】(a)鋼製仕口部材設置ステップの過程を示す断面図、(b)鋼製仕口部材設置ステップが完了した状態を示す断面図。
図5】(a)上方材設置ステップが完了した状態を示す断面図、(b)上階木製構造設置ステップが完了した状態を示す断面図。
図6】合成構造が適用された建物の躯体の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1図6を参照して、接続構造の一実施形態について説明する。
図1に示すように、合成構造10は、木製構造11、鋼製構造12、および、木製構造11と鋼製構造12とを接続する接続構造13を有している。これら木製構造11、鋼製構造12、および、接続構造13は、建物の躯体を構成する。
【0009】
木製構造11は、上下方向に延びる木製柱である。木製構造11は、例えば矩形状の断面形状を有する。木製構造11は、その外側面が石膏ボードなどの耐火層によって被覆されていてもよい。また、この耐火層の外側面が木製の仕上げ層などによって被覆されていてもよい。
【0010】
木製構造11は、端面15に開口する複数の接続孔16を有する。各接続孔16は、木製構造11の延在方向に沿って所定の深さだけ延びている。各接続孔16は、後述する接合部材27,28が所定の隙間を空けた状態で挿入可能な大きさに形成されている。接続孔16の開口は、端面15における中心部を取り囲むように配列されている。なお、図1において、下側に示されている2つの木製構造11と上側に示されている2つの木製構造11とは、別の階の木製構造11である。
【0011】
鋼製構造12は、隣り合う2つの木製構造11に架設される大梁(梁材)である。鋼製構造12は、例えば、ウェブと一対のフランジとを有するH型鋼である。鋼製構造12は、第1鋼製構造17と第2鋼製構造18とを有する。第1鋼製構造17は、図1の下側に示される2つの木製構造11が並ぶ第1水平方向において隣り合う2つの木製構造11に架設される。第2鋼製構造18は、第1水平方向に直交する第2水平方向に架設される。第2鋼製構造18は、第2鋼製構造本体19と本体連結部20とで構成されている。第2鋼製構造本体19と本体連結部20は、これらを突き合わせた状態で溶接や剛接合、ピン接合などの接合法により連結される。
【0012】
接続構造13は、耐火応力伝達部材25、鋼製仕口部材26、下側接合部材27、および、上側接合部材28を有する。
耐火応力伝達部材25は、直方体形状を有するセメント組成物であって、例えば製造工場などで製造されたのちに施工現場へと搬入されるプレキャスト材である。耐火応力伝達部材25は、建物の躯体における柱部分を構成する。耐火応力伝達部材25は、木製構造11に対する位置合わせにより、その外側面が木製構造11の外側面と面一となることが望ましい。セメント組成物の一例は、コンクリートである。セメント組成物の他例は、スリムクリート(登録商標)等、繊維を混合したセメント系材料(繊維補強コンクリート材料)である。
【0013】
耐火応力伝達部材25は、下面と上面とに開口して直線状に延びる複数の貫通孔30を有する。各貫通孔30は、その内周面との間に所定の隙間を空けた状態で接合部材27,28が挿入可能な大きさに形成されている。また、下面および上面における貫通孔30の開口は、木製構造11の端面における接続孔16の開口と同じ配列で形成されている。すなわち、接続孔16と貫通孔30は、木製構造11と耐火応力伝達部材25との位置を合わせることにより、接合部材27,28が挿通可能に構成されている。なお、耐火応力伝達部材25は、木製構造11を被覆する耐火層やこの耐火層を被覆する仕上げ層などによって外側面が被覆されてもよい。
【0014】
耐火応力伝達部材25は、鋼材よりも熱容量が大きく、鋼材よりも高い耐火性能を有するため、火災時などに鋼製仕口部材26から木製構造11への熱の移動を抑えることができる。これにより、鋼製仕口部材26からの熱伝達に起因した木製構造11の燃焼を抑えることができる。また、耐火応力伝達部材25は、木製構造11よりも機械的な強度が大きいため、木製構造11に作用した荷重を効率よく鋼製仕口部材26に伝達することができる。
【0015】
鋼製仕口部材26は、各種の鋼材が溶接などの接合法によって連結された鉄骨造である。鋼製仕口部材26は、本体部31、下面部32、および、上面部33を有する。
本体部31は、ウェブとフランジとを有する。ウェブは、十字形状の断面形状を有して上下方向に延びている。フランジは、板状の形状を有して上下方向に延びている。フランジは、上面視において各ウェブの先端に連結されている。フランジには、鋼製構造12のウェブが接合される。ウェブの上端およびフランジの上端は、同一面内に位置している。ウェブの下端およびフランジの下端は、同一面内に位置している。
【0016】
下面部32は、本体部31の下端に連結された矩形状の板材である。本体部31は、ウェブの交差部分が下面部32の重心部分に、また、上面視におけるウェブの各先端部が下面部32の各辺の中点部分に向かって延びるように連結される。下面部32には、鋼製構造12における下側のフランジが接合される。
【0017】
上面部33は、本体部31の上端に連結された矩形状の板材である。本体部31は、ウェブの交差部分が上面部33の重心部分に、また、上面視におけるウェブの各先端部が上面部33の各辺の中点部分に向かって延びるように連結される。上面部33には、鋼製構造12における上側のフランジが接合される。
【0018】
下側接合部材27は、その一端が下面部32に固定されている。下側接合部材27は、下面部32から下方に向かって延びている。下側接合部材27は、耐火応力伝達部材25を貫通可能な長さを有している。下側接合部材27は、下面部32の中心部を取り囲むように配列されている。
【0019】
上側接合部材28は、その一端が上面部33に固定されている。上側接合部材28は、上面部33から上方に向かって延びている。上側接合部材28は、上面部33の中心部を取り囲むように配列されている。上側接合部材28は、鋼製仕口部材26の上側に配設される耐火応力伝達部材25を貫通可能な長さを有している。この耐火応力伝達部材25には、鋼製構造12の上方に設けられる上方材、例えば木製の床や屋根などが接続される。
【0020】
下側接合部材27および上側接合部材28は、接続孔16と貫通孔30との位置合わせが完了した状態において、これら接続孔16と貫通孔30とに挿入可能となっている。
図2図5を参照して、上述した合成構造10の施工方法について説明する。ここでは、所定の階において木製構造11と鋼製構造12とを接続構造13を介して連結し、その所定の階の上階に木製構造11を設置するまで工程について説明する。
【0021】
図2に示すように、合成構造の施工方法は、木製構造設置ステップ(S101)、耐火応力伝達部材設置ステップ(S102)、鋼製仕口部材設置ステップ(S103)、上方材設置ステップ(S105)、上階木製構造設置ステップ(S106)を有する。また、鋼製仕口部材設置ステップ(S103)は、鋼製構造接続ステップ(S104)を有する。
【0022】
木製構造設置ステップ(S101)では、所定の階において、複数の木製構造11を各々の設置位置に設置する。
図3に示すように、耐火応力伝達部材設置ステップ(S102)では、設置された木製構造11の端面15に対して、耐火応力伝達部材25を設置する。具体的には、木製構造11と耐火応力伝達部材25との位置合わせを行ったのち、木製構造11の端面15に対して耐火応力伝達部材25を載置する。これにより、木製構造11の接続孔16と耐火応力伝達部材25の貫通孔30とが互いに連通した状態となる。
【0023】
鋼製仕口部材設置ステップ(S103)では、鋼製仕口部材26が各位置に設置される。鋼製仕口部材設置ステップ(S103)の鋼製構造接続ステップ(S104)は、鋼製仕口部材26に対して第1鋼製構造17が接続される工程である。
【0024】
第1鋼製構造17は、例えば工場や施工現場など、鋼製構造12の設置場所と異なる場所において鋼製仕口部材26に予め接続されてもよい。第1鋼製構造17と鋼製仕口部材26は、ウェブ同士およびフランジ同士が連結される。また、この工程では、鋼製仕口部材26に対して第2鋼製構造18の本体連結部20も連結される。鋼製仕口部材26に対して第1鋼製構造17および本体連結部20が連結されたユニットを架設ユニット40という。
【0025】
図4(a)に示すように、鋼製仕口部材設置ステップ(S103)では、クレーンなどを用いて架設ユニット40を木製構造11の上方に配置する。次に、耐火応力伝達部材25と鋼製仕口部材26との位置合わせを行ったのち、鋼製構造12と鋼製仕口部材26とを下方へ移動させる。
【0026】
これにより、図4(b)に示すように、耐火応力伝達部材25の貫通孔30および木製構造11の接続孔16に下側接合部材27が挿入される。そして、これら木製構造11、耐火応力伝達部材25、および、下側接合部材27がGIR(Glued in Rod)接合等により接合される。
【0027】
鋼製仕口部材設置ステップ(S103)では、架設ユニット40の配設が各位置において行われる。そして、鋼製仕口部材設置ステップのあとには、図4(b)の紙面奥側において、本体連結部20に対して第2鋼製構造本体19が接合される第2鋼製構造接合ステップが実行される。また、第2鋼製構造18に対して後述する小梁47(梁材)が接続される小梁接続ステップが実行される。
【0028】
図5(a)に示すように、上方材設置ステップ(S105)では、鋼製構造12の上方に位置する上方材を設置する。本実施形態では、まず、鋼製仕口部材26の上側に位置する耐火応力伝達部材25が設置される。鋼製仕口部材26に対する耐火応力伝達部材25の位置合わせを行ったのち、上側接合部材28が貫通孔30を通じて耐火応力伝達部材25を貫通するように、鋼製仕口部材26に対して耐火応力伝達部材25が載置される。そして、この耐火応力伝達部材25に上方材が接続されることにより、鋼製構造12の上方に上方材が設けられる。
【0029】
図5(b)に示すように、上階木製構造設置ステップ(S106)では、上記所定の階の上階における木製構造11が設置される。具体的には、鋼製仕口部材26の上側接合部材28と木製構造11との位置合わせを行ったのち、当該木製構造11の接続孔16に上側接合部材28を挿入する。そして、鋼製仕口部材26、耐火応力伝達部材25、および、木製構造11がGIR接合等により接合される。以後、耐火応力伝達部材設置ステップ(S102)から上階木製構造設置ステップ(S106)までの各ステップが適宜繰り返されることにより、建物の躯体が構築される。
【0030】
図6を参照して、合成構造10が適用された建物の躯体の一例について説明する。
図6に示すように、躯体45は、複数階を有する。この躯体45において、上方材は、各階に設置される床スラブ48である。この床スラブ48は、現場打設コンクリート材である。床スラブ48において、木製構造11と鋼製仕口部材26の上面部33との間の部分は耐火応力伝達部材として機能する。また、上方材である床スラブ48の上に上階の木製構造11が設置される。
【0031】
躯体45は、図6における各階の左右方向において、隣り合う2つの木製構造11が鋼製仕口部材26を介して鋼製構造12(第1鋼製構造17あるいは第2鋼製構造18、図6では第1鋼製構造17)で連結される部分と連結されない部分とを交互に有する。躯体45の梁部分のうち、鋼製構造12の部分を大梁部分という。
【0032】
また、躯体45は、鋼製構造12で連結されない部分においては、図6における左右方向で隣り合う2つの第2鋼製構造18が機械的な強度が弱い小梁47で接続される。小梁47は、図6に二点鎖線で示しており、例えばH形鋼などの鋼材によって形成される。躯体45の梁部分のうち、小梁47で連結されている部分を小梁部分という。
【0033】
躯体45においては、大梁部分に対する直上階または直下階には、小梁部分が配設されている。また、小梁部分に対する直上階または直下階には、大梁部分が配設されている。こうした構造の躯体45においては、仕口部分の上下の柱部分における降伏曲げモーメントの和が梁部分における降伏曲げモーメントよりも大きくなる。
【0034】
本実施形態の効果について説明する。
(1)接続構造13においては、耐火応力伝達部材25と鋼製仕口部材26とが各別の部材として構成されている。また、鋼製仕口部材26が鉄骨造である。これにより、木製構造11についての耐火性能と応力伝達性能とを確保しながら、柱部分と梁部分とが交差する仕口部分の軽量化を図ることができる。
【0035】
(2)鋼板を用いたRC製の仕口部材は、鋼板部分の製造場所とコンクリートの打設場所が異なることが一般的である。このため、鋼板部分の製造場所、コンクリートの打設場所、施工現場の順に部材を搬送する必要がある。
【0036】
上述した合成構造10においては、耐火応力伝達部材25と鋼製仕口部材26とが各別の部材である。このため、耐火応力伝達部材25および鋼製仕口部材26を、各々の製造場所から施工現場へと直接搬入することができる。これにより、合成構造10における運搬コストを低減することができる。
【0037】
(3)また、RC製の仕口部材は、仕口部材と木製構造とを接合する接合筋をコンクリート部分で支持している。このため、コンクリート部分の強度を確保するために、接合筋の間隔をある程度確保しなければならない。
【0038】
これに対して、上述した合成構造10においては、接合筋である接合部材27,28が溶接などの接合法によって鋼製仕口部材26に固定される。このため、RC製の仕口部材よりも接合筋の間隔を小さくすることができる。つまり、合成構造10においては、仕口部材と木製構造とを接合する接合筋の配置についての自由度が向上する。その結果、より多くの接合筋を配設することが可能となるから、木製構造11と鋼製仕口部材26とをより強固に接合することができる。
【0039】
(4)図1図5に示す合成構造10においては、鋼製仕口部材26の上方に位置する耐火応力伝達部材25に上方材が接続されるため、鋼製仕口部材26から床スラブへの熱伝達が抑えられる。これにより、床スラブの材質に関する自由度が向上するため、例えば木製の床スラブを採用することができる。
【0040】
(5)図6に示す躯体45においては、鋼製仕口部材26の上側に位置する耐火応力伝達部材として、現場打設コンクリート材である床スラブ48の一部が機能する。これにより、当該耐火応力伝達部材と床スラブとの接続ステップが不要となることから、工期の短縮を図ることができる。
【0041】
(6)躯体45においては、仕口部分の上下の柱部分における降伏曲げモーメントの和が梁部分における降伏曲げモーメントよりも大きくなることから、躯体45に大きな荷重が作用したときには、木製構造11よりも先に鋼製構造12を降伏させることができる。
【0042】
(7)第2鋼製構造18は、第2鋼製構造本体19と、鋼製仕口部材26に予め連結された本体連結部20とで構成されている。これにより、鋼製仕口部材26の本体部31のフランジに対する第2鋼製構造18の連結を容易に行うことができる。
【0043】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・合成構造10においては、小梁47が存在しなくてもよい。こうした構成であっても上記(6)に記載した効果に準ずる効果を得ることができる。
【0044】
・合成構造10は、互いに隣り合う2つの木製構造11の全てが第1鋼製構造17あるいは第2鋼製構造18によって接続されていてもよい。こうした構成においても、第1鋼製構造17および第2鋼製構造18の機械的な強度を小さくすることにより、上記(6)に記載した効果に準ずる効果を得ることができる。
【0045】
・鋼製構造接続ステップにおいては、第1鋼製構造17および第2鋼製構造18の全てが施工現場において鋼製仕口部材26に対して連結されてもよい。
・鋼製仕口部材26の本体部31は、下面部32と上面部33とを連結し、かつ、鋼製構造12が接合可能であればよい。このため、本体部31は、例えば、矩形枠状の断面形状を有して上下方向に延びる部材であってもよい。
【0046】
・耐火応力伝達部材25は、木製構造11に一体化された状態で施工現場に搬入されてもよい。この場合、木製構造11と耐火応力伝達部材25は、接続孔16と貫通孔30との位置を合わせた状態で接着等により一体化される。
【0047】
・接合部材27,28は、一端が鋼製仕口部材26に固定され、他端が木製構造11に接合される構成であればよい。このため、接合部材27,28は、鋼製仕口部材26に固定された状態で施工現場に搬入される構成に限らず、例えば、木製構造11に接合された状態で施工現場に搬入されてもよい。この場合、下側接合部材27は、鋼製仕口部材26に対して鋼製仕口部材設置ステップにて固定され、上側接合部材28は、鋼製仕口部材26に対して上階木製構造設置工程にて固定される。
【0048】
(付記)
木製構造と、鋼製構造と、前記木製構造と前記鋼製構造とを接続する接続構造と、を有する合成構造であって、前記接続構造は、前記木製構造の応力を伝達する耐火性能を備えた耐火応力伝達部材と、前記耐火応力伝達部材を介して前記木製構造と前記鋼製構造とを接続する鉄骨造の鋼製仕口部材と、一端が前記鋼製仕口部材に固定され、他端が前記木製構造に接合され、前記耐火応力伝達部材を貫通する接合部材と、を備える。
【0049】
上記合成構造において、前記鋼製構造は、梁材であり、前記耐火応力伝達部材は、プレキャスト材であり、前記プレキャスト材に接続され、前記梁材の上方に設けられる上方材を有する。
【0050】
上記合成構造において、前記鋼製構造は、梁材であり、前記耐火応力伝達部材は、現場打設コンクリート材であり、前記梁材の上方に前記現場打設コンクリート材と一体に設けられる上方材を有する。
【0051】
上記合成構造において、前記鋼製構造として複数階の梁材を有し、所定の階の梁が大梁であり、前記所定の階の直上階又は直下階の梁材は、存在しない又は小梁である。
木製構造と、鋼製構造と、前記木製構造と前記鋼製構造とを接続する接続構造と、を有する合成構造を施工する施工方法であって、所定の階に前記木製構造を設置する木製構造設置ステップと、前記木製構造に耐火応力伝達部材を設置する耐火応力伝達部材設置ステップと、前記木製構造と前記耐火応力伝達部材とに接続される鉄骨造の鋼製仕口部材を設置する鋼製仕口部材設置ステップと、を有する。
【0052】
上記施工方法において、前記鋼製仕口部材設置ステップは、前記木製構造と前記耐火応力伝達部材とに前記鋼製仕口部材が接続される前に、当該鋼製仕口部材に前記鋼製構造を接続する鋼製構造接続ステップを有する。
【0053】
上記施工方法において、前記鋼製構造は、梁材であり、前記鋼製仕口部材設置ステップの後に、前記梁材の上方に設けられる上方材を設置する上方材設置ステップを有する。
上記施工方法において、前記上方材の上に前記所定の階の上階の木製構造を設置する上階木製構造設置ステップを有する。
【符号の説明】
【0054】
10…合成構造、11…木製構造、12…鋼製構造、13…接続構造、15…端面、16…接続孔、17…第1鋼製構造、18…第2鋼製構造、19…第2鋼製構造本体、20…本体連結部、25…耐火応力伝達部材、26…鋼製仕口部材、27…下側接合部材、28…上側接合部材、30…貫通孔、31…本体部、32…下面部、33…上面部、40…架設ユニット、45…躯体、47…小梁、48…床スラブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6