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特許7477049ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/17 20160101AFI20240423BHJP
   B60W 20/16 20160101ALI20240423BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240423BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20240423BHJP
   F02P 5/15 20060101ALI20240423BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20240423BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B60W20/17 ZHV
B60W20/16
B60W10/06 900
B60K6/46
F02P5/15 B
F02D29/06 D
F01N3/20 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023522070
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2021018934
(87)【国際公開番号】W WO2022244132
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】露木 毅
(72)【発明者】
【氏名】足利 彰夫
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-10590(JP,A)
【文献】特開2010-185433(JP,A)
【文献】特開2016-159878(JP,A)
【文献】特開2016-112918(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0010089(US,A1)
【文献】特開2017-166353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/17
B60W 20/16
B60W 10/06
B60K 6/46
F02P 5/15
F02D 29/06
F01N 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電した電力をバッテリに供給可能な第1電動機と、
上記バッテリからの電力または上記第1電動機で発電した電力によりハイブリッド車両の駆動輪を駆動する第2電動機と、
上記第1電動機を駆動する内燃機関と、
上記内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化用の触媒と、を有し、上記内燃機関の駆動力が上記駆動輪に対して機械的に伝達されないハイブリッド車両の制御方法において、
上記触媒の温度が所定温度以下の場合に上記内燃機関の点火時期をリタードする触媒昇温制御を行い、
上記触媒昇温制御は、車両停止中の点火時期リタード量よりも車両停止中に比べてハイブリッド車両に振動が生じる状態のときの点火時期リタード量を大きくするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項5】
発電した電力をバッテリに供給可能な第1電動機と、
上記バッテリからの電力または上記第1電動機で発電した電力によりハイブリッド車両の駆動輪を駆動する第2電動機と、
上記第1電動機を駆動する内燃機関と、
上記内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化用の触媒と、
上記触媒の温度が所定温度以下の場合に上記内燃機関の点火時期をリタードする制御部と、を有し、
上記内燃機関の駆動力は、上記駆動輪に対して機械的に伝達されないものであって、
上記制御部は、車両停止中の点火時期リタード量よりも車両停止中に比べてハイブリッド車両に振動が生じる状態のときの点火時期リタード量を大きくするハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ハイブリッド車両に搭載された内燃機関の排気を浄化する触媒を暖機するために、当該内燃機関の点火時期をリタードさせる技術が開示されている。
【0003】
内燃機関は、点火時期をリタードさせると燃焼安定性が悪化する。内燃機関は、燃焼安定性が悪化すると、振動が大きくなる。そのため、内燃機関の点火時期は、触媒暖機のためとはいえ、そのリタード量に燃焼安定性の観点で自ずと制限が加えられることになる。
【0004】
しかしながら、内燃機関の振動が車両の振動に紛れるような場合には、運転者に違和感を与えることなく、内燃機関の燃焼安定性よりも触媒暖機の早期化を優先することが可能となる。
【0005】
すなわち、内燃機関は、触媒暖機のための点火時期リタード量を設定するにあたって更なる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-94691号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明のハイブリッド車両は、排気通路に設けられた排気浄化用の触媒の温度が所定温度以下の場合に内燃機関の点火時期をリタードする触媒昇温制御を行い、上記触媒昇温制御は、車両停止中の点火時期リタード量よりも車両停止中に比べてハイブリッド車両に振動が生じる状態のときの点火時期リタード量を大きくする。
【0008】
本発明によれば、運転者に違和感を与えることなく、触媒の暖機を可及的速やかに実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明が適用されるハイブリッド車両のシステム構成を模式的に示した説明図。
図2】本発明が適用されるハイブリッド車両に搭載される内燃機関7のシステム構成を模式的に示した説明図。
図3】第1点火時期リタード量を算出する第1点火時期リタード量算出マップ。
図4】第2点火時期リタード量を算出する第2点火時期リタード量算出マップ。
図5】車速に応じて設定される比率を算出する比率算出マップ。
図6】ハイブリッド車両における触媒昇温制御の流れを示すフローチャート。
図7】ハイブリッド車両における触媒昇温制御の流れを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両のシステム構成を模式的に示した説明図である。
【0012】
ハイブリッド車両は、当該車両の駆動輪1と、駆動輪1を回転駆動させる駆動用モータ2と、駆動用モータ2に交流電力を供給するインバータ3と、インバータ3に電力を供給するバッテリ4及び発電ユニット5と、を有している。
【0013】
駆動輪1は、駆動用モータ2を駆動源として回転駆動する。
【0014】
駆動用モータ2は、第2電動機に相当するものであって、例えば、ロータに永久磁石を用いた同期型モータからなっている。
【0015】
駆動用モータ2は、ハイブリッド車両の駆動源であり、インバータ3からの交流電力により駆動する。また、駆動用モータ2は、ハイブリッド車両の減速時に発電機として機能する。すなわち、駆動用モータ2は、車両減速時の回生エネルギーを電力としてインバータ3を介してバッテリ4に充電可能となっている。
【0016】
インバータ3は、発電ユニット5や駆動用モータ2で発電された電力を直流電力に変換してバッテリ4に供給する電力変換回路である。また、インバータ3は、バッテリ4から出力される直流電力を交流電力に変換して駆動用モータ2に供給する電力変換回路でもある。
【0017】
バッテリ4は、発電ユニット5や駆動用モータ2で発電された電力を直流電力として充電可能な二次電池である。バッテリ4は、充電された電力をインバータ3を介して駆動用モータ2に供給する。
【0018】
発電ユニット5は、発電電動機としての発電機6と、発電機6を駆動する発電用の内燃機関7と、を有している。
【0019】
つまり、本発明が適用されるハイブリッド車両は、内燃機関7が発電機6を駆動するために運転される。
【0020】
発電ユニット5は、駆動用モータ2とは独立した動作(作動及び停止)が可能となっている。
【0021】
発電機6は、例えば、ロータに永久磁石を用いた同期型モータからなっている。発電機6は、第1電動機に相当するものであって、内燃機関7に発生した回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、インバータ3を介してバッテリ4や駆動用モータ2に供給する。また、発電機6は、内燃機関7の始動時にスタータモータとしても機能する。
【0022】
ハイブリッド車両は、例えば発電しながら運転する場合、発電機6で発電された電力で駆動用モータ2を駆動するとともに、残った電力をバッテリ4に充電する。また、ハイブリッド車両は、例えば触媒昇温制御を行いながら運転する場合、発電機6で発電された電力とバッテリ4からの電力とで駆動用モータ2を駆動する。
【0023】
図2は、本発明が適用されるハイブリッド車両に搭載される内燃機関7のシステム構成を模式的に示した説明図である。
【0024】
内燃機関7は、ピストン11の往復直線運動をクランクシャフト(図示せず)の回転運動に変換して動力として取り出すいわゆるレシプロ式の内燃機関である。なお、内燃機関7は、発電機6とは異なる専用のスタータモータにより始動するようにしてもよい。本実施例の内燃機関7は、機械的圧縮比を変更可能な複リンク式のピストンクランク機構7aを備えたものとなっている。
【0025】
内燃機関7は、吸気通路12と排気通路13とを有している。吸気通路12は、吸気弁14を介して燃焼室15に接続されている。排気通路13は、排気弁16を介して燃焼室15に接続されている。
【0026】
内燃機関7は、燃焼室15内に燃料(ガソリン)を直接噴射する燃料噴射弁17を有している。燃料噴射弁17から噴射された燃料は、燃焼室15内で点火プラグ19により点火される。なお、内燃機関7は、各気筒の吸気ポートに燃料を噴射するものであってもよい。
【0027】
吸気通路12には、吸気中の異物を捕集するエアクリーナ20と、吸入空気量を検出するエアフローメータ21と、コントロールユニット22からの制御信号によって開度が制御される電動のスロットル弁23と、が設けられている。
【0028】
エアフローメータ21は、スロットル弁23の上流側に配置されている。エアフローメータ21は、温度センサを内蔵したものであって、吸気導入口の吸気温度を検出可能となっている。エアクリーナ20は、エアフローメータ21の上流側に配置されている。
【0029】
排気通路13には、三元触媒等からなる排気浄化用の触媒としての排気触媒装置24、25が設けられている。第1排気触媒装置24は、いわゆるマニホールド触媒であり、排気通路13上にある排気浄化用の触媒の中で最も上流側に位置している。第2排気触媒装置25は、いわゆる床下触媒であり、第1排気触媒装置24の下流側に位置している。
【0030】
また、この内燃機関7は、吸気通路12に設けられたコンプレッサ26と排気通路13に設けられた排気タービン27とを同軸上に備えた排気タービン式の過給機(ターボ過給機)28を有している。コンプレッサ26は、スロットル弁23の上流側で、かつエアフローメータ21よりも下流側に配置されている。排気タービン27は、第1排気触媒装置24よりも上流側に配置されている。
【0031】
吸気通路12には、リサーキュレーション通路29が接続されている。リサーキュレーション通路29は、その一端がコンプレッサ26の上流側で吸気通路12に接続され、その他端がコンプレッサ26の下流側で吸気通路12に接続されている。このリサーキュレーション通路29には、コンプレッサ26の下流側からコンプレッサ26の上流側へ過給圧を解放可能な電動のリサーキュレーション弁30が配置されている。なお、リサーキュレーション弁30としては、コンプレッサ26下流側の圧力が所定圧力以上となったときのみ開弁するようないわゆる逆止弁を用いることも可能である。
【0032】
また、吸気通路12には、コンプレッサ26の下流側に、コンプレッサ26により圧縮(加圧)された吸気を冷却して充填効率を良くするインタクーラ31が設けられている。インタクーラ31は、リサーキュレーション通路29の下流側端よりも下流で、スロットル弁23よりも上流側に位置している。
【0033】
排気通路13には、排気タービン27を迂回して排気タービン27の上流側と下流側とを接続する排気バイパス通路32が接続されている。排気バイパス通路32の下流側端は、第1排気触媒装置24よりも上流側の位置で排気通路13に接続されている。排気バイパス通路32には、排気バイパス通路32内の排気流量を制御する電動のウエストゲート弁33が配置されている。ウエストゲート弁33は、排気タービン27に導かれる排気ガスの一部を排気タービン27の下流側にバイパスさせることが可能であり、内燃機関7の過給圧を制御可能なものである。
【0034】
また、内燃機関7は、排気通路13から排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路12へ導入(還流)する排気還流(EGR)が実施可能なものであって、排気通路13から分岐して吸気通路12に接続されたEGR通路34を有している。EGR通路34は、その一端が第1排気触媒装置24と第2排気触媒装置25との間の位置で排気通路13に接続され、その他端が第2スロットル弁35の下流側となりコンプレッサ26の上流側となる位置で吸気通路12に接続されている。このEGR通路34には、EGR通路34内のEGRガス流量を調整(制御)する電動のEGR弁36と、EGRガスを冷却可能なEGRクーラ37と、が設けられている。
【0035】
第2スロットル弁35は、吸気通路12に設けられ、エアフローメータ21とコンプレッサ26との間に位置している。第2スロットル弁35は、コンプレッサ26の上流側における吸気圧力を制御する。
【0036】
また、図2中の符号38は、第2排気触媒装置25の下流側に位置して排気音を低減する消音用のするマフラーである。
【0037】
コントロールユニット22は、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェースを備えた周知のデジタルコンピュータである。
【0038】
コントロールユニット22には、上述したエアフローメータ21の検出信号のほか、ハイブリッド車両の車速を検出する車速センサ41、クランクシャフトのクランク角を検出するクランク角センサ42、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ43、第1排気触媒装置24の入口側の排気温度を検出する第1排気温度センサ44、第2排気触媒装置25の出口側の排気温度を検出する第2排気温度センサ45、空燃比を検出するA/Fセンサ46及び酸素センサ47等の各種センサ類の検出信号が入力されている。
【0039】
車速センサ41は、車速検出部に相当するものである。
【0040】
クランク角センサ42は、内燃機関7の機関回転速度を検出可能なものである。
【0041】
アクセル開度センサ43は、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度のほか、アクセルペダルの操作速度であるアクセル変化速度を検出可能なものである。つまり、アクセル開度センサ43は、アクセル操作量検出部に相当する。
【0042】
A/Fセンサ46は、排気空燃比に応じたほぼリニアな出力特性を有するいわゆる広域型の空燃比センサであり、第1排気触媒装置24の上流側の排気通路13に配置されている。詳述すると、A/Fセンサ46は、第1排気触媒装置24よりも上流側で排気バイパス通路32の下流側端よりも下流側に位置している。
【0043】
酸素センサ47は、理論空燃比付近の狭い範囲で出力電圧がON/OFF(リッチ、リーン)的に変化して、空燃比のリッチ、リーンのみを検知するセンサであり、第1排気触媒装置24の下流側の排気通路13に配置されている。
【0044】
そして、コントロールユニット22は、各種センサ類の検出信号に基づいて、燃料噴射弁17から噴射される燃料の噴射量や噴射時期、内燃機関7(点火プラグ19)の点火時期、吸入空気量等を最適に制御する。コントロールユニット22は、アクセル開度センサ43の検出値を用いて、内燃機関7の要求負荷(内燃機関7の負荷)が算出する。また、コントロールユニット22は、バッテリ4の充電容量に対する充電残量の比率であるSOC(State Of Charge)を検出可能となっている。
【0045】
上述した実施例のハイブリッド車両は、内燃機関7により駆動される発電機6からの電力及びバッテリ4からの電力により駆動用モータ2を駆動して走行するいわゆるシリーズハイブリッド車両である。シリーズハイブリッド車両は、走行中にバッテリ4のSOCが低くなると、当該バッテリ4を充電するために内燃機関7を駆動する。また、シリーズハイブリッド車両は、走行中にバッテリ4のSOCが所定値以上になる等の所定の停止条件が成立すると、当該バッテリ4を充電するために駆動していた内燃機関7を停止する。
【0046】
また、上述した実施例のハイブリッド車両は、内燃機関7の始動時に、第1排気触媒装置24の触媒温度が所定温度以下の場合、第1排気触媒装置24の触媒が活性化温度となるように、触媒昇温制御を実施する。
【0047】
第1排気触媒装置24の触媒温度は、例えば、第1排気温度センサ44の検出値を用いてコントロールユニット22で算出される。なお、第1排気触媒装置24の触媒温度は、温度センサで直接検出するようにしてもよく、エンジン運転状態(内燃機関7の運転状態)から推定してもよい。
【0048】
触媒昇温制御は、排気触媒装置24の触媒の温度が所定温度より高いときよりも内燃機関7の点火時期をリタードする。
【0049】
そして触媒昇温制御は、車両停止中の点火時期リタード量よりも車両停止中に比べてハイブリッド車両に振動が生じる状態のときの点火時期リタード量を大きくする。車両停止中に比べてハイブリッド車両に振動が生じる状態とは、例えば車両走行中である。
【0050】
触媒昇温制御は、例えば、車両走行中であれば、車速が高くなるほど内燃機関7の点火時期のリタード量を大きくする。
【0051】
触媒昇温制御における点火時期リタード量は、より具体的には、車両停止中の点火時期リタード量である第1点火時期リタード量を算出する第1点火時期リタード量算出マップと、車両走行中の点火時期リタード量である第2点火時期リタード量を算出する第2点火時期リタード量算出マップと、車速に応じて設定される比率と、を用いて算出される。
【0052】
詳述すると、制御部としてのコントロールユニット22は、第1点火時期リタード量に車速に応じて設定される第1比率を乗じた値と、第2点火時期リタード量に車速に応じて設定される第2比率を乗じた値と、の和を触媒昇温制御時に用いる触媒昇温制御用リタード量として、触媒昇温制御における内燃機関7の点火時期を設定する。つまり、コントロールユニット22は、第1排気触媒装置24の触媒の温度が所定温度以下の場合に内燃機関7の点火時期をリタードする制御部に相当する。
【0053】
図3は、第1点火時期リタード量算出マップを示している。第1点火時期リタード量は、内燃機関7の充填効率と内燃機関7の機関回転数とによって規定される内燃機関7の動作点に応じて設定される。なお、充填効率は、例えばエアフローメータ21の検出値に基づいてコントロールユニット22にて算出される。
【0054】
内燃機関7は、触媒暖機を行う場合(排気触媒装置24の触媒温度が所定温度以下の場合)、触媒暖機用の動作点Aで運転を行う。第1点火時期リタード量算出マップは、内燃機関7の動作点が動作点Aから離れるほど第1点火時期リタード量が小さくなるよう設定されている。
【0055】
なお、内燃機関7は、触媒暖機が必要ない場合(排気触媒装置24の触媒温度が所定温度よりも高い場合)、動作点Aとは異なる通常発電用動作点(図示せず)で運転を行う。通常発電用動作点は、効率が最もよい運転である。動作点Aは、例えばガスボリュームが少なく排気温度が上がりやすい動作点であり、発電用の動作点に比べて低回転低負荷となる動作点である。
【0056】
図4は、第2点火時期リタード量算出マップを示している。第2点火時期リタード量は、内燃機関7の充填効率と内燃機関7の機関回転数とによって規定される内燃機関7の動作点に応じて設定される。第2点火時期リタード量算出マップは、内燃機関7の動作点が動作点Aから離れるほど第2点火時期リタード量が小さくなるよう設定されている。
【0057】
車速に応じて設定される比率は、図5に示す比率算出マップを用いて算出される。詳述すると、図5の比率算出マップを用いて算出される比率は、第2点火時期リタード量に乗ずる第2比率である。第2比率は、「1」以下の値である。第1点火時期リタード量に乗ずる第1比率は、「1」から第2比率を減じた値である。つまり、第1比率と第2比率との和は「1」である。
【0058】
第2比率は、車速が所定の第1車速までは「0」となる。第2比率は、車速が所定の第1車速から所定の第2車速になるまでは車速に比例して大きくなり、車速が第2車速のとき「1」となる。第2比率は、車速が第2車速以上になると「1」となる。
【0059】
第1点火時期リタード量算出マップ、第2点火時期リタード量算出マップ及び比率算出マップは、例えばコントロールユニット22内のROMに予め記憶させておけばよい。
【0060】
図6は、上述した実施例のハイブリッド車両における触媒昇温制御の流れを示すフローチャートである。触媒昇温制御は、キーオン後に所定条件が成立して内燃機関7が始動する際の状況に応じて実施される。内燃機関7は、バッテリ4のSOCや車速に応じて始動する。
【0061】
ステップS1は、触媒昇温制御要求の有無を判断する。すなわち、内燃機関7の始動時に第1排気触媒装置24の触媒温度が所定温度以下であれば、触媒昇温要求が有ると判断してステップS2へ進む。ステップS1では、第1排気触媒装置24がエミッション低減に必要な活性状態であるか否かを判別し、活性状態でなければ触媒昇温制御を実施するルーチンに移行する。
【0062】
ステップS2は、触媒昇温制御時における内燃機関7の動作点を決定する。すなわち、ステップS2は、触媒暖機用の動作点Aを触媒昇温動作点とする。
【0063】
ステップS3は、車速に応じて触媒昇温制御時における内燃機関7の点火時期のリタード量を決定する。点火時期のリタードによる振動は、車速が大きくなるほど車両振動に紛れ込ませることができる。そのため、触媒昇温制御時における内燃機関7の点火時期のリタード量は、車速が大きくなるほど大きくなるよう設定される。
【0064】
ステップS4は、内燃機関7の点火時期を決定する。すなわち、ステップS4は、MBTとなる点火時期からステップS3で決定された点火時期リタード量をリタードさせたタイミングを内燃機関7の点火時期とする。なお、基準となる点火時期はMBTではなく、ノック限界となる最進角の点火時期でもよい。
【0065】
ステップS5は、内燃機関7の点火時期のリタード量を考慮して、第1排気触媒装置24の触媒温度を予測する。第1排気触媒装置24の触媒温度は、例えば、第1排気触媒装置24の触媒に供給された熱量から予測することが可能である。リタード量が大きい場合は、第1排気触媒装置24の触媒に供給された熱量が多くなるため、第1排気触媒装置24の触媒温度が速やかに上昇する。
【0066】
ステップS6は、触媒昇温制御終了の可否を判断する。すなわち、ステップS6は、ステップS5で予測された触媒温度が所定温度より高いと判定されると、第1排気触媒装置24の触媒が活性化されたものと判断し、触媒昇温制御を終了する。
【0067】
図7は、上述した実施例のハイブリッド車両における触媒昇温制御の流れを示すブロック図である。
【0068】
ステップS101は、第1点火時期リタード量算出部であり、内燃機関7の機関回転数及び充填効率に基づいて第1点火時期リタード量を算出する。ステップS102は、第2点火時期リタード量算出部であり、内燃機関7の機関回転数及び充填効率に基づいて第2点火時期リタード量を算出する。ステップS103は、比率算出部であり、車速に基づいて第2比率を算出する。ステップS104は、第1比率算出部であり、「1」から第2比率を減じて第1比率を算出する。ステップS105は、第1算出部であり、第1点火時期リタード量に第1比率を乗じて停車時相当リタード量を算出する。ステップS106は、第2算出部であり、第2点火時期リタード量に第2比率を乗じて走行時相当リタード量を算出する。ステップS107は、触媒昇温制御時リタード量算出部であり、停車時相当リタード量と走行時相当リタード量とを合算して昇温制御時の内燃機関7の点火時期のリタード量である昇温制御リタード量を算出する。ステップS108は、最終点火時期算出部であり、触媒昇温要求の有無に応じて、点火時期のリタードの有無を決定する。ステップS108は、触媒昇温要求がない場合、点火時期のリタード量を「0」とする。ステップS108は、触媒昇温要求がある場合、点火時期のリタード量を昇温制御リタード量とする。
【0069】
以上説明してきたように、上述した実施例のハイブリッド車両は、触媒暖機のために点火時期をリタードする場合、ハイブリッド車両に生じる振動が大きいときの点火時期のリタード量を停止中の点火時期のリタード量よりも大きくすることで、運転者に違和感を与えることなく、触媒の暖機を可及的速やかに実現(達成)することができる。
【0070】
また、ハイブリッド車両において、内燃機関7の振動は、停止中よりも走行中のほうが許容される。そのため、ハイブリッド車両は、触媒暖機のために点火時期をリタードする場合、走行中の点火時期のリタード量を停止中の点火時期のリタード量よりも大きくすることで、運転者に違和感を与えることなく、触媒の暖機を可及的速やかに実現することができる。
【0071】
ハイブリッド車両の走行時の振動は、車速が高いほど大きくなる。そのため、ハイブリッド車両は、触媒昇温制御を実施する場合、車速が高くなるほど点火時期のリタード量を大きくしても車両振動への影響を相殺(抑制)できる。
【0072】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0073】
ハイブリッド車両は、例えば、走行中のロードノイズが大きくなるほど、触媒昇温制御における点火時期リタード量を大きくしてもよい。つまり、ハイブリッド車両は、触媒昇温制御中、車速が同一であってもロードノイズが大きくなるほど火時期リタード量を大きくしてもよい。ロードノイズは、例えばロードノイズを検出可能なセンサを設けることで検出可能である。また、ロードノイズは、例えばクランク角センサ42で検出されるクランクシャフトの角速度変化が大きいときに大きいと判定することも可能である。
【0074】
また、ハイブリッド車両は、雨天走行時に触媒昇温制御における点火時期リタード量を大きくしてもよい。つまり、ハイブリッド車両は、触媒昇温制御中、車速が同一であっても雨天走行には晴天時よりも火時期リタード量を大きくしてもよい。雨天走行か否かの判定は、例えばワイパーなどに付帯する雨滴を検知するセンサの信号を用いることで可能となる。
【0075】
また、触媒昇温制御は、第1排気触媒装置24及び第2排気触媒装置25の双方の触媒が活性化温度となるように実施するようにしてもよい。第2排気触媒装置25の触媒温度は、第2排気温度センサ45の検出値に基づいて推定可能である。なお、第2排気触媒装置25の触媒温度は、温度センサで直接検出してもよい。
【0076】
上述した実施例は、ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7