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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】車両用バッテリケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/249 20210101AFI20240423BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20240423BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240423BHJP
   H01M 50/233 20210101ALN20240423BHJP
【FI】
H01M50/249
H01M50/244 Z
B60K1/04 Z
H01M50/233
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023524040
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2022013390
(87)【国際公開番号】W WO2022249687
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2021087508
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】城 光
(72)【発明者】
【氏名】浅野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴統
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/055695(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/125353(WO,A1)
【文献】特表2014-504569(JP,A)
【文献】特開2009-248708(JP,A)
【文献】特開2008-285150(JP,A)
【文献】特開2012-146588(JP,A)
【文献】中国実用新案第206307118(CN,U)
【文献】中国実用新案第207790292(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、内部にバッテリが収納されるバッテリケースであって、
車幅方向の左右にそれぞれ設けられたバッテリ収納部と、
左右の前記バッテリ収納部の間において車両の前後方向に延びる、底部が開口したトンネル部と、
左右の前記バッテリ収納部の底部にそれぞれ設けられ、平面視X字形に組まれた第一トラス部と、
前記トンネル部の底部に設けられ、平面視X字形に組まれた第二トラス部と、
を有し、
前記第二トラス部は、左右の前記第一トラス部とそれぞれ接続されている、
車両用バッテリケース。
【請求項2】
前記第二トラス部が、前記トンネル部の前端から後端に亘って複数並んで形成されている、
請求項1に記載の車両用バッテリケース。
【請求項3】
前記第一トラス部が、前記バッテリ収納部の車両前後方向に複数並んで形成されており、前側の前記第一トラス部の後端と、後側の前記第一トラス部の前端とが接続されている、
請求項1または2に記載の車両用バッテリケース。
【請求項4】
前記バッテリ収納部内のスペースを前後に仕切る第一隔壁を有し、該第一隔壁の車幅方向の両端部が、車両前後方向に並んで形成された前側の前記第一トラス部の後端、および、後側の前記第一トラス部の前端とそれぞれ接続されている、
請求項3に記載の車両用バッテリケース。
【請求項5】
前記バッテリ収納部の車幅方向外側側面に、前記バッテリケースを前記車両に取り付ける取付ブラケットが設けられ、
前記取付ブラケットは、車両前後方向に並んで形成された前側の前記第一トラス部の後端、および、後側の前記第一トラス部の前端と車幅方向から見て重なる、
請求項3または4に記載の車両用バッテリケース。
【請求項6】
前記バッテリ収納部内のスペースを前後に仕切る第二隔壁を有し、
前記第二隔壁は、平面視において前記第一トラス部のX字形の交差部分を通る、
請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用バッテリケース。
【請求項7】
前記第二トラス部の前後方向の一端側が前記第一トラス部に接続されており、前後方向の他端側が前記第二隔壁に接続されている、
請求項6に記載の車両用バッテリケース。
【請求項8】
前記バッテリ収納部の車幅方向外側側面に、前記バッテリケースを前記車両に取り付ける取付ブラケットが設けられ、
前記取付ブラケットは、前記第二隔壁と車幅方向から見て重なるように設けられている、
請求項6または7に記載の車両用バッテリケース。
【請求項9】
前記車両が、内燃機関を備えたハイブリッド車両であり、前記内燃機関から前記車両の後方に向かって設けられた排気管が、前記トンネル部の内部に挿通されている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の車両用バッテリケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用バッテリケースに関する。
【背景技術】
【0002】
プラグインハイブリッド車などのように比較的大型のバッテリを搭載する車両においては、車両客室の床下にバッテリケースが設けられることが多く、このバッテリケース内にバッテリモジュールが収納される。このバッテリケースはそれ自体が剛性を有するため、車体の剛性向上に寄与し得るが、その剛性向上効果を高めるべく、このバッテリケースの車幅方向のサイズを拡大して、例えば下記特許文献1の図3に示すように、その車幅方向の両端部を車体のサイドメンバなどに直接固定する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2013-193706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにバッテリケースを拡大して、車体のサイドメンバに直接固定することにより、このバッテリケースを車体の補強部材として活用できる一方で、バッテリケースを構成するフレームの間隔が拡がることによって、それ自体の剛性が却って低下するおそれがある。また、バッテリケースと車体のサイドメンバとの間に内燃機関から延びる排気管を通すスペースが確保できないため、特許文献1のように、バッテリケース(バッテリパック15)の車幅方向中央にプロペラシャフトや排気管を通す経路を設けるために凹部(トンネル部)が設けられる。しかしながら、この凹部によってもバッテリケースの剛性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、この発明は、バッテリケースの剛性低下を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明においては、
車両に搭載され、内部にバッテリが収納されるバッテリケースであって、
車幅方向の左右にそれぞれ設けられたバッテリ収納部と、
左右の前記バッテリ収納部の間において車両の前後方向に延びる、底部が開口したトンネル部と、
左右の前記バッテリ収納部の底部にそれぞれ設けられ、平面視X字形に組まれた第一トラス部と、
前記トンネル部の底部に設けられ、平面視X字形に組まれた第二トラス部と、を有し、
前記第二トラス部は、左右の前記第一トラス部とそれぞれ接続されている、
車両用バッテリケースを構成した。
【0007】
前記構成においては、
前記第二トラス部が、前記トンネル部の前端から後端に亘って複数並んで形成されている構成とすることができる。
【0008】
前記各構成においては、
前記第一トラス部が、前記バッテリ収納部の車両前後方向に複数並んで形成されており、前側の前記第一トラス部の後端と、後側の前記第一トラス部の前端とが接続されている構成とすることができる。
【0009】
第一トラス部が複数並んで形成された構成においては、
前記バッテリ収納部内のスペースを前後に仕切る第一隔壁を有し、該第一隔壁の車幅方向の両端部が、車両前後方向に並んで形成された前側の前記第一トラス部の後端、および、後側の前記第一トラス部の前端とそれぞれ接続されている構成とすることができる。
【0010】
また、第一トラス部が複数並んで形成された構成においては、
前記バッテリ収納部の車幅方向外側側面に、前記バッテリケースを前記車両に取り付ける取付ブラケットが設けられ、
前記取付ブラケットは、車両前後方向に並んで形成された前側の前記第一トラス部の後端、および、後側の前記第一トラス部の前端と車幅方向から見て重なる構成とすることができる。
【0011】
前記各構成においては、
前記バッテリ収納部内のスペースを前後に仕切る第二隔壁を有し、
前記第二隔壁は、平面視において前記第一トラス部のX字形の交差部分を通る構成とすることができる。
【0012】
第二隔壁を有する構成においては、
前記第二トラス部の前後方向の一端側が前記第一トラス部に接続されており、前後方向の他端側が前記第二隔壁に接続されている構成とすることができる。
【0013】
また、第二隔壁を有する構成においては、
前記バッテリ収納部の車幅方向外側側面に、前記バッテリケースを前記車両に取り付ける取付ブラケットが設けられ、
前記取付ブラケットは、前記第二隔壁と車幅方向から見て重なるように設けられている構成とすることができる。
【0014】
前記各構成においては、
前記車両が、内燃機関を備えたハイブリッド車両であり、前記内燃機関から前記車両の後方に向かって設けられた排気管が、前記トンネル部の内部に挿通されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明では、バッテリ収納部とトンネル部のそれぞれの底面に第一トラス部および第二トラス部を形成し、この第一トラス部と第二トラス部を接続したので、トンネル部を設けたとしてもバッテリケースの剛性低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明に係る車両用バッテリケースを搭載した車両を示す平面図である。
図2】この発明に係るバッテリケースの内部構造を斜め上前方から見た斜視図である。
図3図2に示す車両用バッテリケースに蓋を取り付けた状態を斜め上前方から見た斜視図である。
図4図2中のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図2に示す車両用バッテリケースを斜め下前方から見た斜視図である。
図6図2に示す車両用バッテリケースの底面図である。
図7図2に示す車両用バッテリケースにバッテリモジュールを収納した状態を斜め上前方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る車両用バッテリケース1(以下、バッテリケース1と略称する。)を本願の図面に基づいて説明する。なお、以下においては、各図中に記載のX方向を前後方向、Y方向を車幅方向、Z方向を高さ方向と称する。
【0018】
バッテリケース1は、例えば、内燃機関としてのエンジンと、外部電源から充電可能なバッテリによって駆動されるモータとが併設されたプラグインハイブリッド車などのハイブリッド車両に採用される。このハイブリッド車両は、内燃機関のみによって駆動する従来型の車両と比較して大型のバッテリケースを備えている。図1に示すように、バッテリケース1は、車両2の前後の重量バランスや走行安定性などを考慮して、車室の床下に設けられることが多い。
【0019】
図2に示すように、バッテリケース1は、外形において平面視ロ字形に組まれた外側フレーム3を有している。外側フレーム3は、車幅方向の右側に配置される平面視コ字形の右フレーム4と、車幅方向の左側に配置される平面視コ字形の左フレーム5と、右フレーム4と左フレーム5をその前端と後端でそれぞれ接続するように車幅方向に延びる接続部材6と、によって構成される。右フレーム4および左フレーム5は、その内部が中空となっている。
【0020】
右フレーム4および左フレーム5には、そのコ字形の前後の端部同士を連結するように前後方向に延びる連結部材7A、7Bがそれぞれ設けられている。接続部材6は、外側フレーム3(右フレーム4および左フレーム5)の上面から上向きに山形に形成された部材である。接続部材6は、右フレーム4と左フレーム5を確実に接続する接続強度を有する一方で、車幅方向から非常に大きな荷重が作用したときに、その荷重によって右フレーム4および左フレーム5から外れるように構成されている。例えば、接続部材6を外側フレーム3の上面にピンで接続し、ピンを側突時などの車幅方向から非常に大きな荷重が作用したときに破断するような強度とすればよい。
【0021】
外側フレーム3(右フレーム4および左フレーム5)の車幅方向の両外側には、取付ブラケット8(以下、その取付場所に対応して車両前方から順に8a、8b、8c、8d、8eと適宜区別する。)が車両前後方向に並んで複数設けられている。取付ブラケット8を車体のサイドメンバ9(図1参照)に取り付けることによって、バッテリケース1がサイドメンバ9に固定される。最も前側の取付ブラケット8aは、外側フレーム3の前端に設けられており、最も後側の取付ブラケット8eは、外側フレーム3の後端に設けられている。外側フレーム3の前後端は、中間部に比べ剛性が高くなっているので、このように外側フレーム3の前後端に取付ブラケット8a、8eを配置したことにより、バッテリケース1を車体に強固に固定することができるとともに、後述するバッテリケース1による車体の剛性向上において有利となる。
【0022】
図2に示すように、バッテリケース1は、車幅方向の左右にそれぞれ設けられたバッテリ収納部10と、左右のバッテリ収納部10の間において車両2の前後方向に延びる、両側壁11Aと天井11Bを有し底部が開口した空洞状のトンネル部11と、を有している。
【0023】
図2図5および図6に示すように、車幅方向の右側のバッテリ収納部10は、右フレーム4と右側の連結部材7Aによって形成された枠組み内の空間である。車幅方向の左側のバッテリ収納部10は、左フレーム5と左側の連結部材7Bによって形成された枠組み内の空間である。各枠組みの底部には、それぞれ底板12が設けられており、その底板12上に、後述する平面視X字形に組まれた第一トラス部13が設けられている。左右側のバッテリ収納部10内にはそれぞれバッテリモジュール14が収納される。なお、図5および図6においては、底板12の記載を省略している。
【0024】
図4に示すように、トンネル部11は、左右の連結部材7A、7Bの間の空間である。トンネル部11は、左右の連結部材7A、7Bから車両上方に延びる側壁11Aと、左右の側壁11Aの上端を接続するように車幅方向に延びる天井11Bと、で形成される。トンネル部11の底部は、開口している。本実施形態では、バッテリ収納部10の底板12が左右の連結部材7A、7Bの間で上向きに山形に変形されることで左右の側壁11A及び天井11Bが形成されている。トンネル部11の内部には、図1に示すように、車両2の前部に搭載されたエンジン15から車両2の後方に向かって延びる排気管16が挿通されている。トンネル部11の底部には、後述する平面視X字形に組まれた第二トラス部17が設けられている。
【0025】
左右のバッテリ収納部10及びトンネル部11の上方には、バッテリ収納部10の上方への開口を塞ぐ蓋18が設けられる。この蓋18には、トンネル部11の形状に沿うように上向きに山形に形成された突部19が形成されている。トンネル部11の天井11Bと蓋18(突部19)の下面との間には、上下方向に隙間が形成される。
【0026】
第一トラス部13は、断面がハット形(下向きに開口する断面コの字の両端に、外向きの水平フランジが連設された形状)の鋼材であって、底板12に溶接されている。第一トラス部13は、車幅方向の外側で右フレーム4または左フレーム5に溶接され、車幅方向の内側で連結部材7Aまたは7Bに溶接されている。詳細には、右側のバッテリ収納部10を例に説明すると、第一トラス部13は、前端が右フレーム4に接続されるとともに車両後方かつ車幅方向内側に延びて後端が右側の連結部材7Aに接続される部材と、前端が右側の連結部材7Aに接続されるとともに車両後方かつ車幅方向外側に延びて後端が右フレーム4に接続される部材と、を交差させることによって形成されている。
【0027】
第一トラス部13は、バッテリ収納部10の車両前後方向に並んで複数(本実施形態では2個)形成されている。そして、前側の第一トラス部13の後端と、後側の第一トラス部13の前端とは、互いに接続されている。ここでいう「接続」とは、前後の第一トラス部13の間で荷重を伝達することが可能な状態を意味し、第一トラス部13同士が直接接続されている状態のみならず、隣り合う第一トラス部13の間に他の部材が介在して第一トラス部13間で荷重が伝達可能となっている状態も含む。また、前側の第一トラス部13の前端(車幅方向内外両側の前端)は平面視ロ字形のバッテリ収納部10の前側の角部にそれぞれ接続され、後側の第一トラス部13の後端(車幅方向内外両側の後端)はバッテリ収納部10の後側の角部にそれぞれ接続されている。
【0028】
トンネル部11の底部の開口には、左右のバッテリ収納部10の底部の間に跨るように平面視ロ字形(長方形)の枠体20(櫓)が設けられている。すなわち、枠体20は、トンネル部11の左右の側壁11Aの下端の車幅方向内側にそれぞれ設けられ、側壁11Aに沿って車両前後方向に延びる縦部材20Aと、左右の縦部材20Aの前端を連結するように車幅方向に延びる第一横部材20Bと、左右の縦部材20Aの後端を連結するように車幅方向に延びる第二横部材20Cと、によって形成されている。そして、枠体20の内側には、平面視X字形に組まれた第二トラス部17が固定されている。これにより、トンネル部11の底部に第二トラス部17が設けられる。なお、枠体20は、左右のバッテリ収納部10同士を確実に接続する接続強度を有する一方で、車幅方向から非常に大きな荷重が作用したときに、この荷重によって第一横部材20Bおよび第二横部材20Cが折損するように構成されている。例えば、第一横部材20Bおよび第二横部材20Cに切欠きを設けるなどすればよい。
【0029】
第二トラス部17は、トンネル部11(枠体20)の前端から後端に亘って複数(本実施形態では4個)並んで形成されている。そして、前側の第二トラス部17の後端と、後側の第二トラス部17の前端が、それぞれ接続されている。また、本実施形態においては、前から数えて1番目の第二トラス部17の前端、2番目の第二トラス部17の後端(3番目の第二トラス部17の前端)、および、4番目の第二トラス部17の後端が、それぞれ左右のバッテリ収納部10に形成された第一トラス部13と接続されている。
【0030】
トンネル部11はバッテリ収納部10と異なり底部が開口しているため、トンネル部11の底部側は、第二トラス部17の隙間を介して外部と連通している。また、第二トラス部17は、第一トラス部13とほぼ同一の高さ方向位置となるように(車幅方向で見て端部が第一トラス部13と重なるように)構成されている。
【0031】
なお、第一トラス部13および第二トラス部17の数はこの実施形態に限定されず、適宜変更することもできる。例えば、トンネル部11(枠体20)の前端から後端まで至る前後方向に長尺の1個の第一トラス部13または第二トラス部17を採用してもよいし、第一トラス部13および第二トラス部17をそれぞれ前後に3個ずつ並べてもよい。なお、本明細書中における「前側の第一トラス部13(第二トラス部17)」、「後側の第一トラス部13(第二トラス部17)」とは、前後に並んだ第一トラス部13(第二トラス部17)のうち、隣り合った第一トラス部13(第二トラス部17)において前側、後側に位置しているものを指す。
【0032】
左右の各バッテリ収納部10には、車幅方向に延びバッテリ収納部10内のスペースを前後に仕切る第一隔壁21が設けられている。第一隔壁21は、右フレーム4から左フレーム5まで延び、車幅方向端部がそれぞれ右フレーム4、左フレーム5に固定されている。また、第一隔壁21の車幅方向中部には、トンネル部11を通す切欠きが車両上下方向下端から中部にかけて設けられている。切欠き下端にて、第一隔壁21は左右の連結部材7A、7Bに接続される。また、第一隔壁21の車幅方向の両端部および左右の連結部材7A、7Bとの接続部は、前側の第一トラス部13の後端、および、後側の第一トラス部13の前端とそれぞれ接続されている。なお、本実施形態においては、左右の第一隔壁21をトンネル部11を跨ぐ一体物としたが、左右で分離した別部材とすることもできる。
【0033】
また、各バッテリ収納部10には、第一隔壁21とは別に、車幅方向に延びバッテリ収納部10内のスペースを前後に仕切る第二隔壁22が設けられている。この第二隔壁22は、平面視において第一トラス部13のX字形の交差部分を通っており、第一隔壁21同様に車幅方向端部が右フレーム4および左フレーム5に固定されている。また、第一隔壁21同様に第二隔壁22にも切欠きが設けられ、切欠き下端にて、第二隔壁22は、前から数えて3番目の第二トラス部17の後端(4番目の第二トラス部17の前端)に接続されている。
【0034】
外側フレーム3(右フレーム4および左フレーム5)の車幅方向の両外側の、第一隔壁21と車幅方向で重なる位置(前側の第一トラス部13の後端、および、後側の第一トラス部13の前端の位置)および第二隔壁22と車幅方向で重なる位置に、取付ブラケット8c、8dがそれぞれ設けられている。
【0035】
バッテリ収納部10には、図7に示すようにバッテリモジュール14が収納される。本図に示すバッテリモジュール14の個数、大きさ、配置などは例示に過ぎず、車種やバッテリのトータルの容量などに対応して、それらを適宜変更することができる。バッテリモジュール14は、外側フレーム3(右フレーム4、左フレーム5)や、第一隔壁21、第二隔壁22に支持される。また、バッテリ収納部10の空きスペース、バッテリ収納部10に収納されたバッテリモジュール14の上側(バッテリモジュール14と蓋18との間の隙間)、および、トンネル部11の天井11Bと蓋18(突部19)との間の隙間(くら形の部分)には、バッテリモジュール14を冷却するためのエアコンモジュール、電装系機器、補機類などの各種機器(図示せず)が収納される。なお、本願の各図においては、バッテリケース1に接続される電源ケーブルや各種配管などの記載は省略している。
【0036】
この発明に係る上記構成のバッテリケース1は、バッテリ収納部10に第一トラス部13を形成するとともに、トンネル部11に第二トラス部17を形成し、かつ、第二トラス部17の車幅方向の両端側を第一トラス部13に接続したので、トンネル部11によるバッテリケース1全体の剛性低下を抑制することができる。また、バッテリケース1の車幅方向一方側に入力された荷重を、車幅方向一方側の第一トラス部13から第二トラス部17を通って、車幅方向他方側の第一トラス部13に伝達し、荷重をバッテリケース1全体に分散させることができる。また、トンネル部11の底部の全体を板などで覆う代わりに隙間の多いトラス構造とすることにより、軽量化を図ることができる。なお、本実施形態のようにバッテリケース1をサイドメンバ9に固定する、若しくはサイドメンバ9近傍に固定することによって、車体の上下方向(ねじり方向)や前後方向(剪断方向)に対する剛性をバッテリケース1によって高めることができるので、走行時における車体のねじれや、衝突時における車体の変形を抑制することができる。
【0037】
また、上記構成のバッテリケース1は、トンネル部11の前端から後端に亘って第二トラス部17を設けた、言い換えると、第二トラス部17の前端(本実施形態では、前から数えて1番目の第二トラス部17の前端)をトンネル部11の前端に接続し、第二トラス部17の後端(本実施形態では、前から数えて4番目の第二トラス部17の後端)をトンネル部11の後端に接続したため、トンネル部11におけるバッテリケース1の剛性を十分に確保することができる。また、第二トラス部17を車両前後方向で複数設けた構成としたので、第二トラス部17をトンネル部11の前後方向に亘って1個設けた場合と比較して、トンネル部11におけるバッテリケース1の車幅方向の剛性が向上する。
【0038】
また、上記構成のバッテリケース1は、第一トラス部13を車両前後方向に複数並べて設けたため、バッテリケース1の車両前後方向中間部の剛性が向上する。このとき、前側の第一トラス部13の後端と、後側の第一トラス部13の前端とを接続したため、前後の第一トラス部13同士で荷重の伝達を行うことができ、バッテリケース1の剛性を向上させることができる。
【0039】
また、上記構成のバッテリケース1は、第一隔壁21が、前側の第一トラス部13の後端と、後側の第一トラス部13の前端とに接続される、言い換えると、外側フレーム3と連結部材7A、7Bとで形成された枠を第一隔壁21で前後に分割し、分割された枠内にそれぞれ第一トラス部13を設けることで、バッテリケース1の剛性を向上させることができる。
【0040】
また、上記構成のバッテリケース1は、第二隔壁22は、第一トラス部13による補強効果が相対的に低いX字形の交差部分(トラス構造の端部から最も離れた個所)を通っているため、この交差部分における剛性を強化する効果を発揮する。なお、第一隔壁21および第二隔壁22は、バッテリ収納部10内のスペースを区画するための既設の部材なので、剛性向上のための部品を別途用意する必要がなく、部品コストの上昇を防止することができる。
【0041】
また、上記構成のバッテリケース1は、前から数えて3番目の第二トラス部17において、前端が前側の第一トラス部13の後端に接続され、後端が第二隔壁22に接続されているため、バッテリケース1の車幅方向一方側に入力された荷重を第一トラス部13、第二トラス部17に加え、第二隔壁22を介してバッテリケース1の車幅方向他方側に分散させることができる。
【0042】
また、上記構成のバッテリケース1は、取付ブラケット8cが、前側の第一トラス部13の後端と、後側の第一トラス部13の前端に対応して設けられているため、この取付ブラケット8cから入力された荷重を、前側の第一トラス部13と後側の第一トラス部13の両方に分散して伝達することができ、バッテリケース1の変形を一層抑制することができる。また、取付ブラケット8dが、第二隔壁22の位置に対応して設けられているため、この取付ブラケット8dから入力された荷重を、第二隔壁22を介して、車幅方向の左右一方側から他方側に効率良く伝達することができる。
【0043】
また、上記構成のバッテリケース1は、トンネル部11の内部に排気管16が挿通されているが、トンネル部11の底部には底板が設けられておらず、第二トラス部17の隙間を介して外部と連通しているため、トンネル部11に高温の排気ガスが流れる排気管16を通しても熱がこもりにくい。このため、バッテリモジュール14の温度管理への悪影響を防止することができる。
【0044】
上記のように、バッテリケース1は、外部から作用した荷重に対する高い剛性を備えているが、非常に大きな荷重が作用したときはバッテリケース1が破損することも想定される。特に、バッテリ収納部10が破損すると、バッテリモジュール14の内容物が飛散して大きなダメージが生じるおそれがある。
【0045】
そこで、上記構成のバッテリケース1においては、第一に、外側フレーム3(右フレーム4および左フレーム5)を中空としたことにより、取付ブラケット8が内側に向かって強く押し込まれた際にこの中空部分が潰れることによって、バッテリ収納部10が変形するのを防止することができる。また、第二に、車幅方向から非常に大きな荷重が作用したときに、その荷重によって接続部材6が右フレーム4および左フレーム5から外れるように構成するとともに、トンネル部11の底部に設けられた枠体20の第一横部材20Bおよび第二横部材20Cが折損するように構成したので、仮に損傷しても大きな問題が生じないトンネル部11が優先的に潰れる一方で、バッテリ収納部10の破損を防止することができる。
【0046】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0047】
本出願は、2021年5月25日出願の日本特許出願2021-087508に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 車両用バッテリケース(バッテリケース)
2 車両
3 外側フレーム
4 右フレーム
5 左フレーム
6 接続部材
7A、7B 連結部材
8(8a、8b、8c、8d、8e) 取付ブラケット
9 サイドメンバ
10 バッテリ収納部
11 トンネル部
11A 側壁
11B 天井
12 底板
13 第一トラス部
14 バッテリモジュール
15 エンジン
16 排気管
17 第二トラス部
18 蓋
19 突部
20 枠体
20A 縦部材
20B 第一横部材
20C 第二横部材
21 第一隔壁
22 第二隔壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7