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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】車両用ドア操作装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 79/22 20140101AFI20240423BHJP
   E05B 77/26 20140101ALI20240423BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
E05B79/22 A
E05B77/26
B60J5/00 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020130815
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022027045
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】平本 茂憲
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-146537(JP,A)
【文献】特開2011-21387(JP,A)
【文献】特開2018-24998(JP,A)
【文献】特開2014-5613(JP,A)
【文献】特開2001-182403(JP,A)
【文献】特開平11-81769(JP,A)
【文献】特開2012-067541(JP,A)
【文献】特開2015-197020(JP,A)
【文献】特開2015-206175(JP,A)
【文献】特開2007-2519(JP,A)
【文献】特開2006-348674(JP,A)
【文献】特開2007-2520(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0274268(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアの車内側に配置され、インサイドハンドル軸を中心に、閉操作によって第1方向に回動し、開操作によって第2方向に回動するインサイドハンドルと、
前記ドアを全開位置に保持可能な全開ドアラッチ装置に、前記インサイドハンドルの前記閉操作を伝達可能な全開ロック解除レバーと、
前記ドアを全閉位置に保持可能な全閉ドアラッチ装置に、前記インサイドハンドルの前記開操作を伝達可能な全閉ロック解除レバーと、
前記ドアに固定されるベースプレートと、を備える車両用ドア操作装置であって、
前記インサイドハンドルと、前記全開ロック解除レバーと、前記全閉ロック解除レバーとは、共通の前記ベースプレートに支持されており、
前記全開ロック解除レバーは、第1操作力伝達部材の一端部が連結される連結部を有し、該第1操作力伝達部材の他端部は、前記全開ドアラッチ装置に連結され、
前記全閉ロック解除レバーは、第2操作力伝達部材の一端部が連結される連結部を有し、該第2操作力伝達部材の他端部は、前記全閉ドアラッチ装置に連結され、
前記インサイドハンドルは、
前記インサイドハンドル軸の径方向において外側に突出した第1突起部及び第2突起部を有し、
前記閉操作によって前記第1方向に回動すると、前記第1突起部が前記全開ロック解除レバーに当接して、前記全開ロック解除レバーを動作させて前記第1操作力伝達部材を介して前記全開ドアラッチ装置に前記閉操作を伝達させ
前記開操作によって前記第2方向に回動すると、前記第2突起部が前記全閉ロック解除レバーに当接して、前記全閉ロック解除レバーを動作させて前記第2操作力伝達部材を介して前記全閉ドアラッチ装置に前記開操作を伝達させる、車両用ドア操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドア操作装置であって、
前記全開ロック解除レバーは、前記車両の側面視で、少なくとも一部が前記インサイドハンドルと重なる位置に配置されており、
前記全閉ロック解除レバーは、前記車両の側面視で、少なくとも一部が前記インサイドハンドルと重なる位置に配置されている、車両用ドア操作装置。
【請求項3】
車両のドアの車内側に配置され、インサイドハンドル軸を中心に、閉操作によって第1方向に回動し、開操作によって第2方向に回動するインサイドハンドルと、
前記ドアを全開位置に保持可能な全開ドアラッチ装置に、前記インサイドハンドルの前記閉操作を伝達可能な全開ロック解除レバーと、
前記ドアを全閉位置に保持可能な全閉ドアラッチ装置に、前記インサイドハンドルの前記開操作を伝達可能な全閉ロック解除レバーと、
チャイルドアンロック位置とチャイルドロック位置とに変位可能なチャイルドロックレバーを備える車両用ドア操作装置であって、
前記インサイドハンドルは、
前記インサイドハンドル軸の径方向において外側に突出した第1突起部及び第2突起部を有し、
前記閉操作によって前記第1方向に回動すると、前記第1突起部が前記全開ロック解除レバーに当接して、前記全開ロック解除レバーを動作させることができ、
前記開操作によって前記第2方向に回動すると、前記第2突起部が前記全閉ロック解除レバーに当接して、前記全閉ロック解除レバーを動作させることができ、
前記全閉ロック解除レバーは、
前記チャイルドロックレバーが前記チャイルドアンロック位置にある場合、前記インサイドハンドルの前記開操作が伝達されるチャイルドアンロック状態となり、
前記チャイルドロックレバーが前記チャイルドロック位置にある場合、前記インサイドハンドルの前記開操作が伝達されないチャイルドロック状態となり、
前記チャイルドロックレバーは、
前記全閉ロック解除レバーに当接して、前記全閉ロック解除レバーを前記チャイルドアンロック状態及び前記チャイルドロック状態に切り替え、
前記車両の側面視で、少なくとも一部が前記インサイドハンドルと重なる位置に配置されている、車両用ドア操作装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ドア操作装置であって、
前記全閉ロック解除レバーは、前記全閉ロック解除レバーの動作を前記全閉ドアラッチ装置に伝達する操作力伝達部材が連結されているレバー本体と、前記レバー本体に相対移動可能に係合された可動部材と、を備え、
前記可動部材は、前記第2突起部が当接するインサイドハンドル当接部と、前記チャイルドロックレバーが当接するチャイルドロックレバー当接部と、を有し、
前記チャイルドロックレバーが前記チャイルドアンロック位置にあるとき、前記インサイドハンドルが前記開操作によって前記第2方向に回動すると、前記第2突起部が前記可動部材の前記インサイドハンドル当接部に当接して前記可動部材を変位させ、前記可動部材が変位することによって前記レバー本体が変位して前記全閉ロック解除レバーが動作し、
前記チャイルドロックレバーを前記チャイルドロック位置に変位させると、前記チャイルドロックレバーは、前記可動部材の前記チャイルドロックレバー当接部に当接し、前記インサイドハンドルが前記開操作によって前記第2方向に回動しても前記第2突起部が当接しない位置に前記可動部材を変位させる、車両用ドア操作装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用ドア操作装置であって、
前記第1突起部は、前記インサイドハンドル軸の軸方向において、前記インサイドハンドルの一端側に設けられており、
前記第2突起部は、前記軸方向において、前記インサイドハンドルの他端側に設けられている、車両用ドア操作装置。
【請求項6】
車両のドアの車内側に配置され、インサイドハンドル軸を中心に、閉操作によって第1方向に回動し、開操作によって第2方向に回動するインサイドハンドルと、
前記ドアを全開位置に保持可能な全開ドアラッチ装置に、前記インサイドハンドルの前記閉操作を伝達可能な全開ロック解除レバーと、
前記ドアを全閉位置に保持可能な全閉ドアラッチ装置に、前記インサイドハンドルの前記開操作を伝達可能な全閉ロック解除レバーと、
前記ドアの車外側に配置されたアウトサイドハンドルの操作が伝達される入力部材と、を備える車両用ドア操作装置であって、
前記インサイドハンドルは、
前記インサイドハンドル軸の径方向において外側に突出した第1突起部及び第2突起部を有し、
前記閉操作によって前記第1方向に回動すると、前記第1突起部が前記全開ロック解除レバーに当接して、前記全開ロック解除レバーを動作させることができ、
前記開操作によって前記第2方向に回動すると、前記第2突起部が前記全閉ロック解除レバーに当接して、前記全閉ロック解除レバーを動作させることができ、
前記全開ロック解除レバーには、前記入力部材が係止される係止部が形成されており、
前記係止部は長孔形状を有し、前記入力部材は前記係止部の内部をスライドして前記全開ロック解除レバーに対して相対移動可能に係止されており、
前記入力部材は、
前記アウトサイドハンドルの操作が前記入力部材に伝達されると、前記全開ロック解除レバーを動作させ、
前記インサイドハンドルの前記閉操作によって前記全開ロック解除レバーが動作すると、前記係止部の内部を前記全開ロック解除レバーに対して相対移動し、前記車両用ドア操作装置における位置が変化しない、車両用ドア操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアを開閉操作するための車両用ドア操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のドアに設けられ、車両のドアを開閉操作するための車両用ドア操作装置が知られている。例えば、特許文献1には、スライドドアの車室内面側に設けられたインサイドハンドルと、スライドドアを全閉位置にて係止する係止機構(フロントドアロック装置及びリアドアロック装置)にインサイドハンドルの操作を伝達するレバー機構と、を備える車両用ドア操作装置が開示されている。また、特許文献2には、スライドドアの車室内面側に設けられたインサイドハンドルと、スライドドアを閉状態で保持するラッチユニットにインサイドハンドルの操作を伝達するリモートコントロールユニットと、を備える車両用ドア操作装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-005613号公報
【文献】特開2001-182403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両用ドア操作装置では、インサイドハンドルの操作をレバー機構に伝達するために、インサイドハンドルのハンドル操作部と、レバー機構の第1レバーに設けられたスライドブッシュと、を連結するロッド(特許文献1におけるロッド36)を設ける必要がある。同様に、特許文献2の車両用ドア操作装置では、インサイドハンドルの操作をリモートコントロールユニットに伝達するために、インサイドハンドルと、リモートコントロールユニットのインサイドレバーと、を連結するロッド(特許文献2におけるロッド61a)を設ける必要がある。
【0005】
このように、従来の車両用ドア操作装置は、インサイドハンドルの操作をレバー機構に伝達するためのロッド等の伝達部材を設ける必要があるため、部品点数が増加し、小型化が難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、部品点数を削減することができ、小型化が可能な車両用ドア操作装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
車両のドアの車内側に配置され、インサイドハンドル軸を中心に、閉操作によって第1方向に回動し、開操作によって第2方向に回動するインサイドハンドルと、
前記ドアを全開位置に保持可能な全開ドアラッチ装置に、前記インサイドハンドルの前記閉操作を伝達可能な全開ロック解除レバーと、
前記ドアを全閉位置に保持可能な全閉ドアラッチ装置に、前記インサイドハンドルの前記開操作を伝達可能な全閉ロック解除レバーと、
前記ドアに固定されるベースプレートと、を備える車両用ドア操作装置であって、
前記インサイドハンドルと、前記全開ロック解除レバーと、前記全閉ロック解除レバーとは、共通の前記ベースプレートに支持されており、
前記全開ロック解除レバーは、第1操作力伝達部材の一端部が連結される連結部を有し、該第1操作力伝達部材の他端部は、前記全開ドアラッチ装置に連結され、
前記全閉ロック解除レバーは、第2操作力伝達部材の一端部が連結される連結部を有し、該第2操作力伝達部材の他端部は、前記全閉ドアラッチ装置に連結され、
前記インサイドハンドルは、
前記インサイドハンドル軸の径方向において外側に突出した第1突起部及び第2突起部を有し、
前記閉操作によって前記第1方向に回動すると、前記第1突起部が前記全開ロック解除レバーに当接して、前記全開ロック解除レバーを動作させて前記第1操作力伝達部材を介して前記全開ドアラッチ装置に前記閉操作を伝達させ
前記開操作によって前記第2方向に回動すると、前記第2突起部が前記全閉ロック解除レバーに当接して、前記全閉ロック解除レバーを動作させて前記第2操作力伝達部材を介して前記全閉ドアラッチ装置に前記開操作を伝達させる
また、本発明は、
車両のドアの車内側に配置され、インサイドハンドル軸を中心に、閉操作によって第1方向に回動し、開操作によって第2方向に回動するインサイドハンドルと、
前記ドアを全開位置に保持可能な全開ドアラッチ装置に、前記インサイドハンドルの前記閉操作を伝達可能な全開ロック解除レバーと、
前記ドアを全閉位置に保持可能な全閉ドアラッチ装置に、前記インサイドハンドルの前記開操作を伝達可能な全閉ロック解除レバーと、
チャイルドアンロック位置とチャイルドロック位置とに変位可能なチャイルドロックレバーと、を備える車両用ドア操作装置であって、
前記インサイドハンドルは、
前記インサイドハンドル軸の径方向において外側に突出した第1突起部及び第2突起部を有し、
前記閉操作によって前記第1方向に回動すると、前記第1突起部が前記全開ロック解除レバーに当接して、前記全開ロック解除レバーを動作させることができ、
前記開操作によって前記第2方向に回動すると、前記第2突起部が前記全閉ロック解除レバーに当接して、前記全閉ロック解除レバーを動作させることができ、
前記全閉ロック解除レバーは、
前記チャイルドロックレバーが前記チャイルドアンロック位置にある場合、前記インサイドハンドルの前記開操作が伝達されるチャイルドアンロック状態となり、
前記チャイルドロックレバーが前記チャイルドロック位置にある場合、前記インサイドハンドルの前記開操作が伝達されないチャイルドロック状態となり、
前記チャイルドロックレバーは、
前記全閉ロック解除レバーに当接して、前記全閉ロック解除レバーを前記チャイルドアンロック状態及び前記チャイルドロック状態に切り替え、
前記車両の側面視で、少なくとも一部が前記インサイドハンドルと重なる位置に配置されている。
また、本発明は、
車両のドアの車内側に配置され、インサイドハンドル軸を中心に、閉操作によって第1方向に回動し、開操作によって第2方向に回動するインサイドハンドルと、
前記ドアを全開位置に保持可能な全開ドアラッチ装置に、前記インサイドハンドルの前記閉操作を伝達可能な全開ロック解除レバーと、
前記ドアを全閉位置に保持可能な全閉ドアラッチ装置に、前記インサイドハンドルの前記開操作を伝達可能な全閉ロック解除レバーと、
前記ドアの車外側に配置されたアウトサイドハンドルの操作が伝達される入力部材と、を備える車両用ドア操作装置であって、
前記インサイドハンドルは、
前記インサイドハンドル軸の径方向において外側に突出した第1突起部及び第2突起部を有し、
前記閉操作によって前記第1方向に回動すると、前記第1突起部が前記全開ロック解除レバーに当接して、前記全開ロック解除レバーを動作させることができ、
前記開操作によって前記第2方向に回動すると、前記第2突起部が前記全閉ロック解除レバーに当接して、前記全閉ロック解除レバーを動作させることができ、
前記全開ロック解除レバーには、前記入力部材が係止される係止部が形成されており、
前記係止部は長孔形状を有し、前記入力部材は前記係止部の内部をスライドして前記全開ロック解除レバーに対して相対移動可能に係止されており、
前記入力部材は、
前記アウトサイドハンドルの操作が前記入力部材に伝達されると、前記全開ロック解除レバーを動作させ、
前記インサイドハンドルの前記閉操作によって前記全開ロック解除レバーが動作すると、前記係止部の内部を前記全開ロック解除レバーに対して相対移動し、前記車両用ドア操作装置における位置が変化しない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インサイドハンドルは、閉操作によって第1方向に回動すると、第1突起部が全開ロック解除レバーに当接して、全開ロック解除レバーを動作させることができ、開操作によって第2方向に回動すると、第2突起部が全閉ロック解除レバーに当接して、全閉ロック解除レバーを動作させることができるので、インサイドハンドルの閉操作を全開ロック解除レバーに伝達するためのロッド等の伝達部材を設けることなく、インサイドハンドルの閉操作を全開ロック解除レバーに伝達することができ、また、インサイドハンドルの開操作を全閉ロック解除レバーに伝達するためのロッド等の伝達部材を設けることなく、インサイドハンドルの開操作を全閉ロック解除レバーに伝達することができる。これにより、車両用ドア操作装置は、部品点数を削減することができ、小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の車両用ドア操作装置が搭載された車両の車体及びドアの概略を示した側面図である。
図2】本発明の車両用ドア操作装置を車側から見た正面図である。
図3】インサイドハンドル及び施錠レバーを取り外した状態で図2の車両用ドア操作装置を車側から見た正面図である。
図4】インサイドハンドル操作検知ユニットを取り外した状態で、車両用ドア操作装置を車外側から見た正面図である。
図5図4の車両用ドア操作装置を斜め下方から見た要部斜視図である。
図6】インサイドハンドルが閉操作された状態の車両用ドア操作装置の要部正面図である。
図7図6の車両用ドア操作装置を斜め下方から見た要部斜視図である。
図8】チャイルドロックレバーがチャイルドアンロック位置にあるときに、インサイドハンドルが開操作された状態の車両用ドア操作装置の要部正面図である。
図9図8の車両用ドア操作装置を斜め下方から見た要部斜視図である。
図10】チャイルドロックレバーがチャイルドロック位置にあるときに、インサイドハンドルが開操作された状態の車両用ドア操作装置の要部正面図である。
図11】インサイドハンドル操作検知ユニット(カバー部を除く)を取り付けた状態で、車両用ドア操作装置を斜め上方から見た要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両用ドア操作装置が搭載された車両の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単かつ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。また、左右方向を車幅方向ともいう。
【0011】
<車両>
図1に示すように、本実施形態に係る車両用ドア操作装置1は、車両VのドアDに設けられている。本実施形態のドアDは、車両Vの車体Bの右側面に配置されており、前後方向にスライドして開閉可能に支持されたスライドドアである。したがって、以下の説明において、車外側というときは右側を指し、車内側というときは左側を指す。
【0012】
ドアDは、車体Bの側面に固定される前後方向のアッパーガイドレールG1、ウェストガイドレールG2及びロアガイドレールG3により前後方向にスライドして開閉可能に支持される。アッパーガイドレールG1は、車体Bのドア開口部の上部で前後方向に延びるように固定されている。ウェストガイドレールG2は、車体Bのドア開口部の後方でドア開口部の上下方向略中央の位置を前後方向に延びるように固定されている。ロアガイドレールG3は、車体Bのドア開口部の下部で前後方向に延びるように固定されている。
【0013】
車両用ドア操作装置1は、ドアDの車内側の側面を構成するインナパネルに取り付けられている。車両用ドア操作装置1は、ドアDを車内から開閉する際に操作されるインサイドハンドルIHと、手動操作でドアDを開錠状態及び施錠状態に切り替える際に操作される施錠レバーLLと、を備える。インサイドハンドルIH及び施錠レバーLLは、ドアDの車内側に配置され、車両Vの車内から操作可能になっている。
【0014】
ドアDには、ドアDを車外から開閉する際に操作されるアウトサイドハンドルOHが設けられている。アウトサイドハンドルOHは、ドアDの車外側の側面を構成するアウタパネルに取り付けられている。アウトサイドハンドルOHは、ドアDの車外側に配置され、車両Vの車外から操作可能になっている。
【0015】
なお、開錠状態とは、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHを開操作するとドアDを開くことができる状態をいい、施錠状態とは、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHを開操作してもドアDを開くことができない状態をいう。
【0016】
ドアDには、ドアDを閉鎖位置に保持するための全閉ドアラッチ装置DL1と、ドアDを全開位置に保持するための全開ドアラッチ装置DL2と、全閉ドアラッチ装置DL1に連結しており、ドアDを半ドア状態から全閉ロック状態に強制的に閉め込むためのクロージャ装置DCと、が設けられている。
【0017】
全閉ドアラッチ装置DL1は、ドアDの後部に配置されている。全閉ドアラッチ装置DL1は、公知の構造であって、車体Bに固定される全閉ストライカ(図示略)と噛合することでドアDを閉鎖位置に保持するための全閉ラッチ機構部(図示略)と、ドアDを開ける際に全閉ラッチ機構部と全閉ストライカとの噛合を解除するための全閉リリース機構部(図示略)と、を備える。全閉ドアラッチ装置DL1の全閉ラッチ機構部が、車体Bに固定される全閉ストライカとわずかに噛合しているとき、ドアDは半ドア状態となり、全閉ドアラッチ装置DL1の全閉ラッチ機構部が、車体Bに固定される全閉ストライカと完全に噛合しているとき、ドアDは全閉位置に保持される全閉ロック状態となる。
【0018】
クロージャ装置DCは、モータ(図示略)を備え、全閉ドアラッチ装置DL1の全閉ラッチ機構部に連結している。クロージャ装置DCは、ドアDの閉作動時に、モータの電動力をもって、全閉ドアラッチ装置DL1の全閉ラッチ機構部をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に作動させる。これにより、ドアDは、クロージャ装置DCによって、半ドア状態から全閉状態に強制的に閉め込まれる。
【0019】
全開ドアラッチ装置DL2は、ドアDの前下部に配置されている。全開ドアラッチ装置DL2は、公知の構造であって、車体Bに固定される全開ストライカ(図示略)と噛合することでドアDを全開位置に保持するための全開ラッチ機構部(図示略)と、ドアDを閉める際に全開ラッチ機構部と全開ストライカとの噛合を解除するための全開リリース機構部(図示略)と、を備える。全開ドアラッチ装置DL2の全開ラッチ機構部が、車体Bに固定される全開ストライカ噛合しているとき、ドアDは全開位置に保持される全開ロック状態となる。
【0020】
車体Bのドア開口部の後方の側面内部には、ドアDを電動で開閉するための電動ドア開閉装置PSDが設けられている。電動ドア開閉装置PSDは、公知の構造であって、駆動部M1と、回転ドラムに巻き取り、繰り出し可能に巻き付けられた開用ケーブルM2及び閉用ケーブルM3とを備える。駆動部M1は、モータと、及び該モータの回転を減速する減速機構及び当該減速機構により回転する回転ドラムと、を有する。電動ドア開閉装置PSDは、回転ドラムから繰り出される開用ケーブルM2及び閉用ケーブルM3をウェストガイドレールG2に支持された反転プーリ(図示略)にそれぞれ掛け回した状態でドアDに連結することで、駆動部M1のモータの動力を開用ケーブルM2又は閉用ケーブルM3を介してドアDに伝達し、ドアDを電動で開閉する。
【0021】
<車両用ドア操作装置の構成>
(ベースプレート)
図2及び図3に示すように、車両用ドア操作装置1は、上下方向及び前後方向に延び、ドアDに固定されるベースプレート10を備える。
【0022】
ベースプレート10の車内側を向く面には、側面視で上下方向が長くインサイドハンドルIHと略同形状の略長方形状であって、車外側に向かって窪んだ凹形状を有するインサイドハンドル収容部11が形成されている。ベースプレート10には、インサイドハンドル収容部11に対して前後方向略同位置の下方に、ベースプレート10の車内側を向く面と車外側を向く面とを貫通し、開口面積がインサイドハンドル収容部11よりも小さい略四角形状を有する施錠レバー開口部12が形成されている。ベースプレート10の車内側を向く面には、インサイドハンドル収容部11の上端部から車内側に向かって突出する第1突出壁131と、インサイドハンドル収容部11の下端部と施錠レバー開口部12の上端部との間で車内側に向かって突出する第2突出壁132と、施錠レバー開口部12の下端部から車内側に向かって突出する第3突出壁133と、が設けられている。
【0023】
インサイドハンドル収容部11は、車外側に向かって凹状に窪んだ凹状面110と、凹状面110の上端で前後方向及び左右方向に延びる上端面11aと、凹状面110の下端で前後方向及び左右方向に延びる下端面11bと、を有する。
【0024】
インサイドハンドル収容部11の凹状面110の上端部には、ベースプレート10の車内側を向く面と車外側を向く面とを貫通する第1開口部111が設けられている。インサイドハンドル収容部11の凹状面110の下端部には、ベースプレート10の車内側を向く面と車外側を向く面とを貫通する第2開口部112が設けられている。インサイドハンドル収容部11の凹状面110の第1開口部111と第2開口部112との間には、第3開口部113が設けられている。
【0025】
インサイドハンドル収容部11の上端面11aには、下方に突出する略円筒形状の上側係止部14aが設けられている。インサイドハンドル収容部11の下端面11bには、上方に突出する略円筒形状の下側係止部14bが設けられている。上側係止部14aの円筒中心軸と下側係止部14bの円筒中心軸とは同軸上となるように配置されている。
【0026】
第2突出壁132の下側面には、下方に突出する略円筒形状の上側係止部15aが設けられている。第3突出壁133の上側面には、上方に突出する略円筒形状の下側係止部15bが設けられている。上側係止部15aの円筒中心軸と下側係止部15bの円筒中心軸とは同軸上となるように配置されている。
【0027】
車両用ドア操作装置1は、さらに、ベースプレート10に支持された、インサイドハンドルIHと施錠レバーLLとを備える。
【0028】
(インサイドハンドル)
図2図5に示すように、インサイドハンドルIHは、ベースプレート10のインサイドハンドル収容部11に配置され、上側係止部14aと下側係止部14bとで係止されている。同軸上に配置された上側係止部14aの円筒中心軸及び下側係止部14bの円筒中心軸を通って上下方向に延びる仮想線がインサイドハンドル軸AX1となり、インサイドハンドルIHは、上下方向に延びるインサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て時計回り及び反時計回りに回動可能に上側係止部14aと下側係止部14bとでベースプレート10に支持されている。
【0029】
インサイドハンドルIHには、インサイドハンドル軸AX1よりも車外側で、インサイドハンドル軸AX1の径方向において外側に突出した第1突起部211が設けられている。第1突起部211は、インサイドハンドルIHの上端側に設けられており、ベースプレート10の第1開口部111から車外側に突出している。
【0030】
インサイドハンドルIHには、インサイドハンドル軸AX1よりも車外側で、インサイドハンドル軸AX1の径方向において外側に突出した第2突起部212が設けられている。第2突起部212は、インサイドハンドルIHの下端側に設けられており、ベースプレート10の第2開口部112から車外側に突出している。
【0031】
インサイドハンドルIHには、インサイドハンドル軸AX1よりも車外側で、インサイドハンドル軸AX1の径方向において外側に突出した第3突起部213及び第4突起部214が設けられている。第3突起部213及び第4突起部214は、インサイドハンドルIHの第1突起部211及び第2突起部212との間に設けられており、いずれもベースプレート10の第3開口部113から車外側に突出している。第3突起部213は、第4突起部214よりも上方に設けられている。インサイドハンドルIHの第3突起部213と第4突起部214との間には、車外側から車内側に向かって窪んだ凹形状を有するばね収容部22が形成されている。第3突起部213の前側面には、上下方向に延びる切欠溝213aが形成されている。第4突起部214の後側面には、上下方向に延びる切欠溝214aが形成されている。
【0032】
インサイドハンドルIHのばね収容部22には、ねじリコイルばね23が収容されている。ねじリコイルばね23は、上下方向に配置され、上端側がインサイドハンドルIHの第3突起部213の前側面に形成された切欠溝213aを通って上方に延びベースプレート10に係止されており、他端側がインサイドハンドルIHの第4突起部214の後側面に形成された切欠溝214aを通って下方に延びベースプレート10に係止されている。
【0033】
インサイドハンドルIHは、何も操作されていない状態においては、ねじリコイルばね23の付勢力によって中立位置に保持される。インサイドハンドルIHは、車内の乗員が閉操作を行うと、インサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て時計回りに所定角度回動する。そして、車内の乗員が閉操作を終了しインサイドハンドルIHから手を離すと、インサイドハンドルIHは、ねじリコイルばね23の付勢力によって中立位置に戻る。インサイドハンドルIHは、車内の乗員が開操作を行うと、インサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て反時計回りに所定角度回動する。そして、車内の乗員が開操作を終了しインサイドハンドルIHから手を離すと、インサイドハンドルIHは、ねじリコイルばね23の付勢力によって中立位置に戻る。
【0034】
(施錠レバー)
施錠レバーLLは、ベースプレート10の第2突出壁132と第3突出壁133との間に配置され、上側係止部15aと下側係止部15bとで係止されている。同軸上に配置された上側係止部15aの円筒中心軸及び下側係止部15bの円筒中心軸を通って上下方向に延びる仮想線が、施錠レバー軸AX2となり、施錠レバーLLは、上下方向に延びる施錠レバー軸AX2を中心に、上方から見て時計回り及び反時計回りに回動可能に上側係止部15aと下側係止部15bとでベースプレート10に支持されている。
【0035】
施錠レバーLLには、施錠レバー軸AX2よりも車外側で、施錠レバー軸AX2の径方向において外側に突出した突起部31が形成されている。突起部31は、ベースプレート10の施錠レバー開口部から車外側に突出している。突起部31には、上下方向に貫通する貫通孔形状である連結部32が設けられている。連結部32には、ボーデンケーブル等で構成される操作力伝達部材TC1の一端部が連結されている。操作力伝達部材TC1は、連結部32から後方に向かって延びており、操作力伝達部材TC1の他端部は、前述の全閉ドアラッチ装置DL1に連結されている。施錠レバーLLは、施錠位置又は開錠位置に保持される。施錠レバーLLの施錠位置は、操作力伝達部材TC1を引張しない位置となっている。施錠レバーLLの開錠位置は、上方から見て施錠レバー軸AX2を中心に、施錠位置に対して反時計回りに所定角度回動した位置となっている。上方から見て施錠レバー軸AX2を中心に、施錠レバーLLが施錠位置から開錠位置へと反時計回りに所定角度回動すると、突起部31も、上方から見て施錠レバー軸AX2を中心に反時計回りに所定角度回動する。突起部31は、施錠レバー軸AX2よりも車外側に設けられているので、上方から見て施錠レバー軸AX2を中心に反時計回りに所定角度回動すると、車外側からの側面視で前方に変位する。そして、突起部31が車外側からの側面視で前方に変位することによって、連結部32に連結された操作力伝達部材TC1は、前方に引張される。
【0036】
施錠レバーLLが施錠位置にあり、操作力伝達部材TC1が前方に引張されている状態にあるとき、操作力伝達部材TC1の他端部が連結された全閉ドアラッチ装置DL1は、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHの開操作を無効にしてドアDを開くことができない状態に維持される。
【0037】
ベースプレート10には、インサイドハンドル収容部11の後方に隣接する位置に、ベースプレート10の車外側を向く面から車外側に向かって車幅方向に突出する略円柱状のレバー軸16が設けられている。車両用ドア操作装置1は、さらに、ベースプレート10の車外側を向く面に配置された、全開ロック解除レバー40と全閉ロック解除レバー50とを備える。全開ロック解除レバー40と全閉ロック解除レバー50とは、ともにレバー軸16に支持されている。全開ロック解除レバー40と全閉ロック解除レバー50とは、車外側からの側面視でレバー軸16を中心に、互いに独立して時計回り及び反時計回りに回動可能なようにレバー軸16に支持されている。本実施形態では、全開ロック解除レバー40が車内側、全閉ロック解除レバー50が車外側となるように車幅方向に並んで、ともにレバー軸16に支持されている。
【0038】
全開ロック解除レバー40及び全閉ロック解除レバー50には、一端側がベースプレート10に係止されたねじリコイルばね17の他端側が係止されている。したがって、全開ロック解除レバー40及び全閉ロック解除レバー50は、インサイドハンドルIH及びアウトサイドハンドルOHが何も操作されていない状態においては、ねじリコイルばね17の付勢力によって中立位置に保持される。インサイドハンドルIH及びアウトサイドハンドルOHが操作されると、全開ロック解除レバー40及び全閉ロック解除レバー50は、ねじリコイルばね17の付勢力に抗して、車外側からの側面視でレバー軸16を中心に時計回り又は反時計回りに回動するが、インサイドハンドルIH及びアウトサイドハンドルOHの操作が終了すると、ねじリコイルばね17の付勢力によって中立位置に戻る。
【0039】
(全開ロック解除レバー)
全開ロック解除レバー40は、中立位置において、上下方向に長く、上方から下方に向かうにしたがって後方に傾斜した形状となっている。全開ロック解除レバー40は、レバー軸16が挿通される挿通孔41が形成された中央部400と、中央部400から前上方に向かって延びる上側部401と、中央部400から後下方に向かって延びる下側部402と、を有する。
【0040】
全開ロック解除レバー40の下側部402の下端部には、車幅方向に貫通する貫通孔形状である連結部42が設けられている。連結部42には、ボーデンケーブル等で構成される操作力伝達部材TC2の一端部が連結されている。操作力伝達部材TC2は、連結部42から後方に向かって延びており、操作力伝達部材TC2の他端部は、前述の全開ドアラッチ装置DL2の全開リリース機構部に連結されている。
【0041】
全開ロック解除レバー40の上側部401には、車幅方向の外側に突出した当接面43が形成されている。当接面43は、上側部401の前端に形成されており、全開ロック解除レバー40の中立位置において、インサイドハンドルIHの第1突起部211の後面と当接又は近接する位置に形成されている。
【0042】
全開ロック解除レバー40の上側部401には、車外側からの側面視でレバー軸16を中心とする円弧状の長孔形状を有する係止部44が形成されている。係止部44には、アウトサイドハンドルOHの操作が伝達される入力部材60が、係止部44に沿ってスライドして全開ロック解除レバー40に対して相対移動可能に係止されている。入力部材60には、ボーデンケーブル等で構成される操作力伝達部材TC3の一端側が連結されている。操作力伝達部材TC3は、入力部材60から後方に向かって延びており、操作力伝達部材TC3の他端部は、前述の全閉ドアラッチ装置DL1に連結されている。操作力伝達部材TC3は、アウトサイドハンドルOHが操作されると、全閉ドアラッチ装置DL1を介して一端部が後方に引張され、入力部材60は後方に変位する。このようにして、入力部材60には、アウトサイドハンドルOHの操作が伝達される。
【0043】
入力部材60は、全開ロック解除レバー40の中立位置において、円弧状の長孔形状である係止部44の後端に位置するように設けられている。したがって、ドアDが全開ロック状態でアウトサイドハンドルOHが操作されると、入力部材60が操作力伝達部材TC3によって後方に変位し、全開ロック解除レバー40の上側部401は、入力部材60によって後方に引張される。これにより、全開ロック解除レバー40は、レバー軸16を中心に、車外側からの側面視で反時計回りに回動する。全開ロック解除レバー40が、レバー軸16を中心に、車外側からの側面視で反時計回りに回動すると、全開ロック解除レバー40の下側部402に設けられた連結部42が前方に変位し、連結部42に連結された操作力伝達部材TC2の一端側は、前方に引張される。操作力伝達部材TC2の一端側が前方に引張されると、操作力伝達部材TC2の他端側が連結する全開ドアラッチ装置DL2の全開リリース機構部が動作して、全開ドアラッチ装置DL2の全開ラッチ機構部とドアDの全開ストライカとの噛合が解除される。これにより、ドアDは、全開位置に保持される全開ロック状態が解除され、閉動作が可能となる。このようにして、入力部材60は、アウトサイドハンドルOHの操作が入力部材60に伝達されると、全開ロック解除レバー40を動作させることができる。そして、全開ロック解除レバー40は、アウトサイドハンドルOHの操作を全開ドアラッチ装置DL2に伝達することができる。
【0044】
(全閉ロック解除レバー)
全閉ロック解除レバー50は、レバー本体51と、レバー本体51に相対移動可能に係合された可動部材52と、を備える。
【0045】
レバー本体51は、中立位置において、上下方向に長く、上方から下方に向かうにしたがって後方にやや傾斜した形状となっている。なお、全開ロック解除レバー40は、中立位置において、レバー本体51よりも上方から下方に向かうにしたがって後方により傾斜した形状となっている。レバー本体51は、レバー軸16が挿通される挿通孔53が形成された中央部510と、中央部510から上方に向かって延びる上側部511と、中央部510から下方に向かって延びる下側部512と、を有する。
【0046】
レバー本体51の下側部512の下端部には、下方に突出して前方に湾曲したフック形状を有する連結部54が設けられている。連結部54には、ボーデンケーブル等で構成される操作力伝達部材TC4の一端部が連結されている。操作力伝達部材TC4は、連結部54から後方に向かって延びており、操作力伝達部材TC4の他端部は、前述の全閉ドアラッチ装置DL1の全閉リリース機構部に連結されている。
【0047】
レバー本体51の下側部512には、さらに、長孔形状を有する係止孔51aが形成されている。本実施形態では、係止孔51aは、上下方向に長く、上端から下端に向かうにしたがって前方にやや傾斜した形状となっている。係止孔51aには可動部材52が係止されている。
【0048】
可動部材52は、中立位置において、前後方向に長く、インサイドハンドルIHに設けられた第2突起部212の上方を通って前後方向に延びている。可動部材52は、後方から前方に向かうにしたがって下方に傾斜した形状となっている。可動部材52は、前端部がインサイドハンドルIHの第2突起部212よりも前方となるように延びている。
【0049】
可動部材52の後端部には、レバー本体51に係止する係止部521が設けられている。係止部521は、可動部材52の車外側を向く面から車外側に略円柱状に突出した円柱部521aと、全閉ロック解除レバー50の中立位置において、円柱部521aの円柱面の先端部から前方及び後方に突出した突出部521bと、を有する。可動部材52は、突出部521bをレバー本体51の係止孔51aを車内側から車外側に向かって挿通させてレバー本体51の係止孔51aよりも車外側に突出させた後、円柱部521aを中心に車外側からの側面視で時計回り又は反時計回りに回動させると、可動部材52の車外側を向く面は、レバー本体51の車内側を向く面と当接し、可動部材52の突出部521bは、レバー本体51の車外側を向く面と当接する。これにより、可動部材52は、係止部521で、レバー本体51の係止孔51aに係止される。可動部材52は、円柱部521aを中心に車外側からの側面視で、時計回り又は反時計回りに回動するようにレバー本体51に対して相対移動可能であるとともに、円柱部521aがレバー本体51の係止孔51aの内部を相対移動可能となっている。
【0050】
これにより、レバー本体51に可動部材52を容易に係止することができるので、車両用ドア操作装置1の組付性が向上する。
【0051】
可動部材52の前端部には、下方及び車外側に向かって延びる当接面55が形成されている。当接面55は、全閉ロック解除レバー50の中立位置において、インサイドハンドルIHの第2突起部212の前面と当接又は近接する位置に形成されている。
【0052】
また、全閉ロック解除レバー50の可動部材52には、車内側を向く面から車内側に略円柱状に突出した突起部56が形成されている。
【0053】
(チャイルドロックレバー)
車両用ドア操作装置1は、さらに、ベースプレート10の車外側を向く面に配置された、チャイルドロックレバー70を備える。チャイルドロックレバー70は、インサイドハンドル収容部11の前方に隣接する位置で、車幅方向に挿通するボルト18によってベースプレート10に支持されている。チャイルドロックレバー70は、ボルト18を中心に車外側からの側面視で時計回り及び反時計回りに回動して、チャイルドアンロック位置とチャイルドロック位置とに変位可能となっている。
【0054】
チャイルドロックレバー70は、前後方向に延びる本体部700と、本体部700の前端に設けられたボルト18を中心として車外側からの側面視で円弧状に延びるカバー部71と、カバー部71から前方に突出した操作部71aと、を有する。操作部71aは、ドアDの前端面から露出しており、ドアDの開放時にチャイルドロックレバー70を操作することが可能となっている。
【0055】
チャイルドロックレバー70の本体部700の下面には、車外側からの側面視で環状に形成された環状部72が設けられている。環状部72の下端部には、下方に突出した係合突起72aが形成されている。
【0056】
本実施形態では、チャイルドロックレバー70の操作部71aが上方にあるときがチャイルドアンロック位置となっており、チャイルドロックレバー70の操作部71aをチャイルドアンロック位置から下方に引き下げると、チャイルドロックレバー70は、ボルト18を中心に車外側からの側面視で時計回りに回動してチャイルドロック位置に変位する。そして、チャイルドロックレバー70の操作部71aをチャイルドロック位置から上方に引き下げると、チャイルドロックレバー70は、ボルト18を中心に車外側からの側面視で反時計回りに回動してチャイルドアンロック位置に変位する。
【0057】
ベースプレート10には、車外側からの側面視で、チャイルドロックレバー70の係合突起72aと対応する位置に、車外側を向く面から車外側に突出して前後方向に延びる係合壁部19が形成されている。チャイルドロックレバー70の係合突起72aは、係合壁部19の上面に当接している。
【0058】
ベースプレート10の係合壁部19は、車外側からの側面視で、前後方向略水平に延びる前側部191と、前側部191の後端から後方に向かうにしたがって下方に傾斜して前後方向に延びる後側部192と、を有する。前側部191の上面と後側部192の上面とは、連続した面であり、係合壁部19の上面を構成する。
【0059】
チャイルドロックレバー70がチャイルドアンロック位置にあるとき、チャイルドロックレバー70の係合突起72aは、ベースプレート10の係合壁部19と、前側部191の上面の前端付近で係合している。
【0060】
チャイルドロックレバー70の本体部700には、ボルト18を挟んで操作部71aの反対側で車幅方向に貫通し、チャイルドアンロック位置にあるときにおいて、前後方向略水平に延びる長孔形状の係止溝73が形成されている。係止溝73の内部には、全閉ロック解除レバー50の可動部材52に形成された突起部56が配置されている。全閉ロック解除レバー50の可動部材52に形成された突起部56は、チャイルドロックレバー70がチャイルドアンロック位置にあるときにおいて、チャイルドロックレバー70の係止溝73の内周面73aと当接又は近接するように形成されている。
【0061】
<インサイドハンドルの閉操作による車両用ドア操作装置の動作>
図6及び図7に示すように、ドアDが全開ロック状態であるとき、インサイドハンドルIHが、車内の乗員が行う閉操作によって、インサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て時計回りに回動すると、インサイドハンドルIHの第1突起部211は、全開ロック解除レバー40の当接面43に当接して、全開ロック解除レバー40の当接面43を後方に変位させる。すると、全開ロック解除レバー40の上側部401が後方に変位するので、全開ロック解除レバー40は、レバー軸16を中心に、車外側からの側面視で反時計回りに回動する。全開ロック解除レバー40が、レバー軸16を中心に、車外側からの側面視で反時計回りに回動すると、全開ロック解除レバー40の下側部402に設けられた連結部42が前方に変位し、連結部42に連結された操作力伝達部材TC2の一端側は、前方に引張される。操作力伝達部材TC2の一端側が前方に引張されると、操作力伝達部材TC2の他端側が連結する全開ドアラッチ装置DL2の全開リリース機構部が動作して、全開ドアラッチ装置DL2の全開ラッチ機構部とドアDの全開ストライカとの噛合が解除される。これにより、ドアDは、全開位置に保持される全開ロック状態が解除され、閉動作が可能となる。このようにして、インサイドハンドルIHは、閉操作によってインサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て時計回りに回動すると、第1突起部211が全開ロック解除レバー40の当接面43に当接して、全開ロック解除レバー40を動作させることができる。そして、全開ロック解除レバー40は、インサイドハンドルIHの閉操作を全開ドアラッチ装置DL2に伝達することができる。
【0062】
これにより、車両用ドア操作装置1は、インサイドハンドルIHの閉操作を全開ロック解除レバー40に伝達するためのロッド等の伝達部材を設けることなく、インサイドハンドルIHの閉操作を全開ロック解除レバー40に伝達することができるので、部品点数を削減することができ、小型化が可能となる。
【0063】
一方、前述したように、入力部材60は、全開ロック解除レバー40の中立位置において、係止部44の後端に位置するように設けられている。したがって、インサイドハンドルIHの閉操作によって、インサイドハンドルIHの第1突起部211が全開ロック解除レバー40の当接面43に当接し、全開ロック解除レバー40が、レバー軸16を中心に、車外側からの側面視で反時計回りに回動すると、入力部材60は、円弧状の長孔形状である係止部44の内部を、全開ロック解除レバー40に対して前方に相対移動し、車両用ドア操作装置1における位置が変化しない。
【0064】
したがって、インサイドハンドルIHの閉操作によって全開ロック解除レバー40が動作しても、入力部材60は車両用ドア操作装置1における位置が変化しないので、インサイドハンドルIHの操作がアウトサイドハンドルOH及びアウトサイドハンドルOHに連結された他のデバイスに影響を及ぼさない。これにより、車両用ドア操作装置1によって駆動する他のデバイス(例えば、操作力伝達部材TC3や全閉ドアラッチ装置DL1)の耐久性を低下させることなく、1つの全開ロック解除レバー40で、インサイドハンドルIHの閉操作と、アウトサイドハンドルOHの操作とを、全開ドアラッチ装置DL2に伝達することができる。
【0065】
なお、インサイドハンドルIHが、車内の乗員が行う開操作によって、インサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て反時計回りに回動しても、第1突起部211は、全開ロック解除レバー40とは接触しないので、全開ロック解除レバー40は動作しない。
【0066】
全開ロック解除レバー40は、中立位置において、車外側からの側面視で、少なくとも一部がインサイドハンドルIHと重なる位置に配置されている。より詳細には、全開ロック解除レバー40は、中立位置において、車外側からの側面視で、当接面43がインサイドハンドルIHと重なる位置となるように配置されている。
【0067】
これにより、車両用ドア操作装置1は、前後方向及び上下方向の寸法を小さくすることができるので、より小型化が可能となる。
【0068】
<チャイルドロックレバーがチャイルドアンロック位置にある場合の、インサイドハンドルの開操作による車両用ドア操作装置の動作>
図8及び図9に示すように、チャイルドロックレバー70がチャイルドアンロック位置にある場合に、ドアDが全閉ロック状態であるとき、車内の乗員が行う開操作によって、インサイドハンドルIHが、インサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て反時計回りに回動すると、インサイドハンドルIHの第2突起部212が、全閉ロック解除レバー50の可動部材52の当接面55に当接して、可動部材52の当接面55には、前方向の荷重がかかる。
【0069】
チャイルドロックレバー70がチャイルドアンロック位置にある場合、チャイルドロックレバー70の係止溝73は、前後方向略水平に延びているので、可動部材52の当接面55に前方向の荷重がかかると、可動部材52は、突起部56がチャイルドロックレバー70の係止溝73の内部を前方にスライドしながら、前方に変位する。このように、チャイルドロックレバー70がチャイルドアンロック位置にある場合、可動部材52は、チャイルドロックレバー70に妨げられることなく、前方に変位する。
【0070】
可動部材52が前方に変位すると、係止部521を介して、全閉ロック解除レバー50のレバー本体51の下端部が前方に引張される。すると、レバー本体51の下端部が前方に変位するので、レバー本体51は、レバー軸16を中心に、車外側からの側面視で反時計回りに回動する。レバー本体51が、レバー軸16を中心に、車外側からの側面視で反時計回りに回動すると、レバー本体51に設けられた連結部54も前方に変位し、連結部54に連結された操作力伝達部材TC4の一端側は、前方に引張される。操作力伝達部材TC4の一端側が前方に引張されると、操作力伝達部材TC4の他端側が連結する全閉ドアラッチ装置DL1の全閉リリース機構部が動作して、全閉ドアラッチ装置DL1の全閉ラッチ機構部とドアDの全閉ストライカとの噛合が解除される。これにより、ドアDは、全閉位置に保持される全閉ロック状態が解除され、開動作が可能となる。
【0071】
このように、チャイルドロックレバー70がチャイルドアンロック位置にある場合、全閉ロック解除レバー50は、インサイドハンドルIHの開操作が伝達されるチャイルドアンロック状態となる。そして、チャイルドロックレバー70がチャイルドアンロック位置にある場合、インサイドハンドルIHが、開操作によってインサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て反時計回りに回動すると、第2突起部212が全閉ロック解除レバー50の可動部材52の当接面55に当接して可動部材52を変位させ、可動部材52が変位することによってレバー本体51が変位して全閉ロック解除レバー50を動作させることができる。
【0072】
これにより、車両用ドア操作装置1は、インサイドハンドルIHの開操作を全閉ロック解除レバー50に伝達するためのロッド等の伝達部材を設けることなく、インサイドハンドルIHの開操作を全閉ロック解除レバー50に伝達することができるので、部品点数を削減することができ、小型化が可能となる。
【0073】
なお、インサイドハンドルIHが、車内の乗員が行う閉操作によって、インサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て時計回りに回動しても、第2突起部212は、全閉ロック解除レバー50とは接触しないので、全閉ロック解除レバー50は動作しない。
【0074】
全閉ロック解除レバー50は、中立位置において、車外側からの側面視で、少なくとも一部がインサイドハンドルIHと重なる位置に配置されている。より詳細には、全閉ロック解除レバー50の可動部材52は、中立位置において、車外側からの側面視で、当接面55がインサイドハンドルIHと重なる位置となるように配置されている。
【0075】
これにより、車両用ドア操作装置1は、前後方向及び上下方向の寸法を小さくすることができるので、より小型化が可能となる。
【0076】
<チャイルドロックレバーをチャイルドアンロック位置からチャイルドロック位置への変位させた場合における車両用ドア操作装置の動作>
図10に示すように、チャイルドロックレバー70の操作部71aをチャイルドアンロック位置から下方に引き下げると、チャイルドロックレバー70は、車外側からの側面視で環状部72がつぶれるように変形して、係合突起72aがベースプレート10の係合壁部19の上面を当接しながら後方にスライドして、ボルト18を中心に車外側からの側面視で時計回りに回動する。そして、係合突起72aがベースプレート10の係合壁部19の後側部192の上面を当接しながら後方にスライドするとき、環状部72の変形が徐々に元の形状に戻る。そして、チャイルドロックレバー70がチャイルドロック位置に到達すると、環状部72の形状は元に戻り、チャイルドロックレバー70の係合突起72aは、ベースプレート10の係合壁部19と、後側部192の上面の後端付近で係合する。
【0077】
一方、チャイルドロックレバー70の操作部71aをチャイルドロック位置から上方に引き下げると、チャイルドロックレバー70は、車外側からの側面視で環状部72がつぶれるように変形して、係合突起72aがベースプレート10の係合壁部19の上面を当接しながら前方にスライドして、ボルト18を中心に車外側からの側面視で反時計回りに回動する。そして、係合突起72aがベースプレート10の係合壁部19の前側部191の上面を当接しながら前方にスライドするとき、環状部72の変形が徐々に元の形状に戻る。そして、チャイルドロックレバー70がチャイルドアンロック位置に到達すると、環状部72の形状は元に戻り、チャイルドロックレバー70の係合突起72aは、ベースプレート10の係合壁部19と、前側部191の上面の前端付近で係合する。
【0078】
このように、チャイルドロックレバー70の操作部71aをチャイルドアンロック位置から下方に引き下げると、チャイルドロックレバー70は、車外側からの側面視で環状部72がつぶれるように変形した後、再び元の形状に戻って、チャイルドロック位置に到達する。したがって、チャイルドロックレバー70は、チャイルドロック位置にあるとき、操作部71aに上方向の大きな荷重がかからない限り、環状部72に生じる抗力によって、チャイルドロック位置に維持される。
【0079】
同様に、チャイルドロックレバー70の操作部71aをチャイルドロック位置から上方に引き下げると、チャイルドロックレバー70は、車外側からの側面視で環状部72がつぶれるように変形した後、再び元の形状に戻って、チャイルドアンロック位置に到達する。したがって、チャイルドロックレバー70は、チャイルドアンロック位置にあるとき、操作部71aに下方向の大きな荷重がかからない限り、環状部72に生じる抗力によって、チャイルドアンロック位置に維持される。
【0080】
チャイルドロックレバー70の操作部71aをチャイルドアンロック位置から下方に引き下げると、チャイルドロックレバー70は、ボルト18を中心に車外側からの側面視で時計回りに回動するので、本体部700の後端部は上方に変位する。すると、チャイルドロックレバー70の係止溝73の内部には、全閉ロック解除レバー50の可動部材52の突起部56が配置されているので、チャイルドロックレバー70は、係止溝73の内周面73aの下側の面が可動部材52の突起部56に当接して、可動部材52の突起部56が上方に変位する方向へ可動部材52を変位させる。これにより、可動部材52は、円柱部521aを中心に車外側からの側面視で反時計回りに回動する。このとき、可動部材52は、円柱部521aを中心に車外側からの側面視で反時計回りに回動するともに、円柱部521aがレバー本体51の係止孔51aの内部をスライドする場合もある。
【0081】
可動部材52が、円柱部521aを中心に車外側からの側面視で反時計回りに回動すると、可動部材52の前端部に形成された当接面55は、上方に変位する。そして、チャイルドロックレバー70がチャイルドロック位置にあるとき、可動部材52の前端部に形成された当接面55は、インサイドハンドルIHの第2突起部212よりも上方に位置する。このように、チャイルドロックレバー70をチャイルドロック位置に変位させると、チャイルドロックレバー70は、インサイドハンドルIHが開操作によってインサイドハンドル軸AX1を中心に上方から見て反時計回りに回動しても第2突起部212が当接しない位置に可動部材52を変位させる。
【0082】
したがって、チャイルドロックレバー70がチャイルドロック位置にある場合に、ドアDが全閉ロック状態であるとき、車内の乗員が行う開操作によって、インサイドハンドルIHが、インサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て反時計回りに回動しても、インサイドハンドルIHの第2突起部212は、全閉ロック解除レバー50の可動部材52の当接面55には当接しない。そして、車内の乗員が行う開操作によって、インサイドハンドルIHが、インサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て反時計回りに回動しても、全閉ロック解除レバー50の可動部材52及びレバー本体51は、変位しない。このように、チャイルドロックレバー70がチャイルドロック位置にある場合、全閉ロック解除レバー50は、インサイドハンドルIHの開操作が伝達されないチャイルドロック状態となる。そして、チャイルドロックレバー70がチャイルドロック位置にある場合、インサイドハンドルIHが、開操作によってインサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て反時計回りに回動しても、全閉ロック解除レバー50は動作せず、レバー本体51に設けられた連結部54に連結された操作力伝達部材TC4の一端側は、前方に引張されないので、操作力伝達部材TC4の他端側が連結する全閉ドアラッチ装置DL1の全閉リリース機構部は動作せず、ドアDは、全閉位置に保持される全閉ロック状態が維持され、開動作しない。これにより、チャイルドロックレバー70がチャイルドロック位置にある場合は、車内の子供等が誤ってインサイドハンドルIHを開操作しても、ドアDは、全閉位置に保持される全閉ロック状態が維持され、開動作しないので、車両Vの安全性が向上する。
【0083】
また、チャイルドロックレバー70をチャイルドアンロック位置からチャイルドロック位置へと変位させたとき、チャイルドロックレバー70は、全閉ロック解除レバー50の可動部材52を変位させるが、レバー本体51は変位しない。同様に、チャイルドロックレバー70をチャイルドロック位置からチャイルドアンロック位置へと変位させたときも、チャイルドロックレバー70は、全閉ロック解除レバー50の可動部材52を変位させるが、レバー本体51は変位しない。したがって、チャイルドロックレバー70をチャイルドアンロック位置からチャイルドロック位置へと変位させたとき、操作力伝達部材TC4が連結されているレバー本体51を変位させることなく全閉ロック解除レバー50をチャイルドロック状態にすることができる。これにより、チャイルドロックレバー70の動作が全閉ドアラッチ装置DL1に影響を及ぼさないので、簡素な構造で、車両用ドア操作装置1によって駆動する他のデバイス(例えば、全閉ドアラッチ装置DL1)の耐久性が低下することを防止できる。
【0084】
さらに、チャイルドロックレバー70は、全閉ロック解除レバー50の可動部材52に当接して、全閉ロック解除レバー50をチャイルドアンロック状態及びチャイルドロック状態に切り替えるので、車両用ドア操作装置1は、チャイルドロックレバー70の操作を全閉ロック解除レバー50に伝達するためのロッド等の伝達部材を設けることなく、全閉ロック解除レバー50をチャイルドアンロック状態及びチャイルドロック状態に切り替えることができる。これにより、車両用ドア操作装置1は、部品点数を削減することができ、小型化が可能となる。
【0085】
また、チャイルドロックレバー70は、車外側からの側面視で、少なくとも一部がインサイドハンドルIHと重なる位置に配置されている。より詳細には、チャイルドロックレバー70は、チャイルドアンロック位置において、車外側からの側面視で、本体部700がインサイドハンドルIHを横切って前後方向に延びている。
【0086】
これにより、車両用ドア操作装置1は、前後方向及び上下方向の寸法を小さくすることができるので、より小型化が可能となる。
【0087】
また、インサイドハンドルIHの第1突起部211は、インサイドハンドル軸AX1の軸方向において、インサイドハンドルIHの上端側に設けられており、インサイドハンドルIHの第2突起部212は、インサイドハンドル軸AX1の軸方向において、インサイドハンドルIHの下端側に設けられているので、インサイドハンドルIHの第1突起部211と第2突起部212とを、互いにより離間して設けることができる。これにより、インサイドハンドルIHの閉操作によって第1突起部211に全開ロック解除レバー40が当接し、インサイドハンドルIHの開操作によって第2突起部212に全閉ロック解除レバー50に当接するように配置しながら、全開ロック解除レバー40と全閉ロック解除レバー50とをスペース効率よく配置でき、車両用ドア操作装置1をより小型化できる。
【0088】
(インサイドハンドル操作検知ユニット)
図11に示すように、車両用ドア操作装置1は、さらに、ベースプレート10の車外側を向く面に配置された、インサイドハンドル操作検知ユニット80を備える。インサイドハンドル操作検知ユニット80は、インサイドハンドルIHの第3突起部213の下方を前後方向に延びるように配置されている。インサイドハンドル操作検知ユニット80は、ベース部81と、ベース部81に固定された開操作検知ユニット82及び閉操作検知ユニット83と、ベース部81の後端部に設けられたコネクタ部84と、を備える。インサイドハンドル操作検知ユニット80は、ベース部81、開操作検知ユニット82及び閉操作検知ユニット83の車外側を向く面を覆うカバー部(図示略)を備える。ベース部81には、開操作検知ユニット82及び閉操作検知ユニット83とコネクタ部84とを電気的に接続する導体回路811が形成されている。コネクタ部84には、前述の電動ドア開閉装置PSDに接続するハーネス線(図示略)が接続されており、開操作検知ユニット82及び閉操作検知ユニット83は、導体回路811、コネクタ部84及びハーネス線を介して、電動ドア開閉装置PSDに電気的に接続されている。
【0089】
開操作検知ユニット82は、開操作検知部821を有する。開操作検知部821は、インサイドハンドルIHの第3突起部213の前方で、ベース部81より上方に突出し、インサイドハンドルIHの第3突起部213の前面と対向するように配置されている。開操作検知部821は、下方に沈み込むように変位可能であり、バネ等の付勢手段により上方に付勢されている。
【0090】
車内の乗員が行う開操作によって、インサイドハンドルIHが、インサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て反時計回りに回動すると、インサイドハンドルIHの第3突起部213は、開操作検知ユニット82の開操作検知部821に当接し、開操作検知部821を下方に押圧する。開操作検知ユニット82は、開操作検知部821がインサイドハンドルIHの第3突起部213によって押圧されて下方に変位すると、インサイドハンドルIHが開操作されたことを示す信号を、導体回路811、コネクタ部84及びハーネス線を介して、電動ドア開閉装置PSDに出力する。電動ドア開閉装置PSDは、開操作検知ユニット82から出力された、インサイドハンドルIHが開操作されたことを示す信号に基づいて、ドアDを電動で開動作させることができる。
【0091】
車内の乗員が行う開操作が終了し、インサイドハンドルIHが中立位置に戻り、インサイドハンドルIHの第3突起部213が開操作検知部821から離れると、開操作検知部821は、上方に付勢する付勢手段により元の位置に戻る。
【0092】
閉操作検知ユニット83は、閉操作検知部831を有する。閉操作検知部831は、インサイドハンドルIHの第3突起部213の後方で、ベース部81より上方に突出し、インサイドハンドルIHの第3突起部213の後面と対向するように配置されている。閉操作検知部831は、下方に沈み込むように変位可能であり、バネ等の付勢手段により上方に付勢されている。
【0093】
車内の乗員が行う閉操作によって、インサイドハンドルIHが、インサイドハンドル軸AX1を中心に、上方から見て時計回りに回動すると、インサイドハンドルIHの第3突起部213は、閉操作検知ユニット83の閉操作検知部831に当接し、閉操作検知部831を下方に押圧する。閉操作検知ユニット83は、閉操作検知部831がインサイドハンドルIHの第3突起部213によって押圧されて下方に変位すると、インサイドハンドルIHが閉操作されたことを示す信号を、導体回路811、コネクタ部84及びハーネス線を介して、電動ドア開閉装置PSDに出力する。電動ドア開閉装置PSDは、閉操作検知ユニット83から出力された、インサイドハンドルIHが開操作されたことを示す信号に基づいて、ドアDを電動で閉動作させることができる。
【0094】
車内の乗員が行う閉操作が終了し、インサイドハンドルIHが中立位置に戻り、インサイドハンドルIHの第3突起部213が閉操作検知部831から離れると、閉操作検知部831は、上方に付勢する付勢手段により元の位置に戻る。
【0095】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0096】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0097】
(1) 車両(車両V)のドア(ドアD)の車内側に配置され、インサイドハンドル軸(インサイドハンドル軸AX1)を中心に、閉操作によって第1方向(上方から見て時計回り方向)に回動し、開操作によって第2方向(上方から見て反時計回り方向)に回動するインサイドハンドル(インサイドハンドルIH)と、
前記ドアを全開位置に保持可能な全開ドアラッチ装置(全開ドアラッチ装置DL2)に、前記インサイドハンドルの前記閉操作を伝達可能な全開ロック解除レバー(全開ロック解除レバー40)と、
前記ドアを全閉位置に保持可能な全閉ドアラッチ装置(全閉ドアラッチ装置DL1)に、前記インサイドハンドルの前記開操作を伝達可能な全閉ロック解除レバー(全閉ロック解除レバー50)と、を備える車両用ドア操作装置(車両用ドア操作装置1)であって、
前記インサイドハンドルは、
前記インサイドハンドル軸の径方向において外側に突出した第1突起部(第1突起部211)及び第2突起部(第2突起部212)を有し、
前記閉操作によって前記第1方向に回動すると、前記第1突起部が前記全開ロック解除レバーに当接して、前記全開ロック解除レバーを動作させることができ、
前記開操作によって前記第2方向に回動すると、前記第2突起部が前記全閉ロック解除レバーに当接して、前記全閉ロック解除レバーを動作させることができる、車両用ドア操作装置。
【0098】
(1)によれば、インサイドハンドルは、閉操作によって第1方向に回動すると、第1突起部が全開ロック解除レバーに当接して、全開ロック解除レバーを動作させることができ、開操作によって第2方向に回動すると、第2突起部が全閉ロック解除レバーに当接して、全閉ロック解除レバーを動作させることができるので、インサイドハンドルの閉操作を全開ロック解除レバーに伝達するためのロッド等の伝達部材を設けることなく、インサイドハンドルの閉操作を全開ロック解除レバーに伝達することができ、また、インサイドハンドルの開操作を全閉ロック解除レバーに伝達するためのロッドの伝達部材等を設けることなく、インサイドハンドルの開操作を全閉ロック解除レバーに伝達することができる。これにより、車両用ドア操作装置は、部品点数を削減することができ、小型化が可能となる。
【0099】
(2) (1)に記載の車両用ドア操作装置であって、
前記全開ロック解除レバーは、前記車両の側面視で、少なくとも一部が前記インサイドハンドルと重なる位置に配置されており、
前記全閉ロック解除レバーは、前記車両の側面視で、少なくとも一部が前記インサイドハンドルと重なる位置に配置されている、車両用ドア操作装置。
【0100】
(2)によれば、全開ロック解除レバーは、車両の側面視で、少なくとも一部がインサイドハンドルと重なる位置に配置されており、全閉ロック解除レバーは、車両の側面視で、少なくとも一部がインサイドハンドルと重なる位置に配置されているので、車両用ドア操作装置は、前後方向及び上下方向の寸法を小さくすることができ、より小型化が可能となる。
【0101】
(3) (1)又は(2)に記載の車両用ドア操作装置であって、
前記車両用ドア操作装置は、チャイルドアンロック位置とチャイルドロック位置とに変位可能なチャイルドロックレバー(チャイルドロックレバー70)をさらに備え、
前記全閉ロック解除レバーは、
前記チャイルドロックレバーが前記チャイルドアンロック位置にある場合、前記インサイドハンドルの前記開操作が伝達されるチャイルドアンロック状態となり、
前記チャイルドロックレバーが前記チャイルドロック位置にある場合、前記インサイドハンドルの前記開操作が伝達されないチャイルドロック状態となり、
前記チャイルドロックレバーは、
前記全閉ロック解除レバーに当接して、前記全閉ロック解除レバーを前記チャイルドアンロック状態及び前記チャイルドロック状態に切り替え、
前記車両の側面視で、少なくとも一部が前記インサイドハンドルと重なる位置に配置されている、車両用ドア操作装置。
【0102】
(3)によれば、チャイルドロックレバーは、全閉ロック解除レバーに当接して、全閉ロック解除レバーをチャイルドアンロック状態及びチャイルドロック状態に切り替えるので、車両用ドア操作装置は、チャイルドロックレバーの操作を全閉ロック解除レバーに伝達するためのロッド等の伝達部材を設けることなく、全閉ロック解除レバーをチャイルドアンロック状態及びチャイルドロック状態に切り替えることができる。これにより、車両用ドア操作装置は、部品点数をより削減することができ、小型化が可能となる。さらに、チャイルドロックレバーは、車両の側面視で、少なくとも一部がインサイドハンドルと重なる位置に配置されているので、車両用ドア操作装置は、前後方向及び上下方向の寸法を小さくすることができる、より小型化が可能となる。
【0103】
(4) (3)に記載の車両用ドア操作装置であって、
前記全閉ロック解除レバーは、前記全閉ロック解除レバーの動作を前記全閉ドアラッチ装置に伝達する操作力伝達部材(操作力伝達部材TC4)が連結されているレバー本体(レバー本体51)と、前記レバー本体に相対移動可能に係合された可動部材(可動部材52)と、を備え、
前記可動部材は、前記第2突起部が当接するインサイドハンドル当接部(当接面55)と、前記チャイルドロックレバーが当接するチャイルドロックレバー当接部(突起部56)と、を有し、
前記チャイルドロックレバーが前記チャイルドアンロック位置にあるとき、前記インサイドハンドルが前記開操作によって前記第2方向に回動すると、前記第2突起部が前記可動部材の前記インサイドハンドル当接部に当接して前記可動部材を変位させ、前記可動部材が変位することによって前記レバー本体が変位して前記全閉ロック解除レバーが動作し、
前記チャイルドロックレバーを前記チャイルドロック位置に変位させると、前記チャイルドロックレバーは、前記可動部材の前記チャイルドロックレバー当接部に当接し、前記インサイドハンドルが前記開操作によって前記第2方向に回動しても前記第2突起部が当接しない位置に前記可動部材を変位させる、車両用ドア操作装置。
【0104】
(4)によれば、全閉ロック解除レバーは、操作力伝達部材が連結されているレバー本体と、レバー本体に相対移動可能に係合された可動部材と、を備え、チャイルドロックレバーをチャイルドロック位置に変位させると、チャイルドロックレバーは、インサイドハンドルが開操作によって第2方向に回動しても第2突起部が当接しない位置に可動部材を変位させるので、操作力伝達部材が連結されているレバー本体を変位させることなく全閉ロック解除レバーをチャイルドロック状態にすることができる。これにより、チャイルドロックレバーの動作が全閉ドアラッチ装置に影響を及ぼさないので、簡素な構造で、車両用ドア操作装置によって駆動する他のデバイスの耐久性が低下することを防止できる。
【0105】
(5) (1)~(4)のいずれかに記載の車両用ドア操作装置であって、
前記第1突起部は、前記インサイドハンドル軸の軸方向において、前記インサイドハンドルの一端側(上端側)に設けられており、
前記第2突起部は、前記軸方向において、前記インサイドハンドルの他端側(下端側)に設けられている、車両用ドア操作装置。
【0106】
(5)によれば、インサイドハンドルの第1突起部は、インサイドハンドル軸の軸方向において、インサイドハンドルの一端側に設けられており、インサイドハンドルの第2突起部は、インサイドハンドル軸AX1の軸方向において、インサイドハンドルの他端側に設けられているので、インサイドハンドルの第1突起部と第2突起部とを、互いにより離間して設けることができる。これにより、インサイドハンドルの閉操作によって第1突起部に全開ロック解除レバーが当接し、インサイドハンドルの開操作によって第2突起部に全閉ロック解除レバーに当接するように配置しながら、全閉ロック解除レバーと全開ロック解除レバーとをスペース効率よく配置でき、車両用ドア操作装置をより小型化できる。
【0107】
(6) (1)~(5)のいずれかに記載の車両用ドア操作装置であって、
前記車両用ドア操作装置は、前記ドアの車外側に配置されたアウトサイドハンドル(アウトサイドハンドルOH)の操作が伝達される入力部材(入力部材60)をさらに備え、
前記全開ロック解除レバーには、前記入力部材が係止される係止部(係止部44)が形成されており、
前記係止部は長孔形状を有し、前記入力部材は前記係止部の内部をスライドして前記全開ロック解除レバーに対して相対移動可能に係止されており、
前記入力部材は、
前記アウトサイドハンドルの操作が前記入力部材に伝達されると、前記全開ロック解除レバーを動作させ、
前記インサイドハンドルの前記閉操作によって前記全開ロック解除レバーが動作すると、前記係止部の内部を前記全開ロック解除レバーに対して相対移動し、前記車両用ドア操作装置における位置が変化しない、車両用ドア操作装置。
【0108】
(6)によれば、車両用ドア操作装置は、ドアの車外側に配置されたアウトサイドハンドルの操作が伝達される入力部材をさらに備え、入力部材は、アウトサイドハンドルの操作が入力部材に伝達されると、全開ロック解除レバーを動作させ、インサイドハンドルの閉操作によって全開ロック解除レバーが動作すると、全開ロック解除レバーに形成された係止部の内部を全開ロック解除レバーに対して相対移動し、車両用ドア操作装置における位置が変化しないので、インサイドハンドルの操作がアウトサイドハンドル及び該アウトサイドハンドルに連結された他のデバイスに影響を及ぼさない。これにより、車両用ドア操作装置によって駆動する他のデバイスの耐久性を低下させることなく、1つの全開ロック解除レバーで、インサイドハンドルの閉操作と、アウトサイドハンドルの操作とを、全開ドアラッチ装置に伝達することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 車両用ドア操作装置
211 第1突起部
212 第2突起部
40 全開ロック解除レバー
44 係止部
50 全閉ロック解除レバー
51 レバー本体
52 可動部材
55 当接面(インサイドハンドル当接部)
56 突起部(チャイルドロックレバー当接部)
60 入力部材
70 チャイルドロックレバー
D ドア
DL1 全閉ドアラッチ装置
DL2 全開ドアラッチ装置
IH インサイドハンドル
OH アウトサイドハンドル
TC4 操作力伝達部材
V 車両
AX1 インサイドハンドル軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11