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特許7477071値を検出するための装置を備えた便座、システム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】値を検出するための装置を備えた便座、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20240423BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240423BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20240423BHJP
   G01N 33/497 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G01N21/27 A
A61B5/00 M
G01N33/483 C
G01N33/497 Z
A61B5/00 101A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022523402
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2021051805
(87)【国際公開番号】W WO2021156117
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】20155560.4
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522158487
【氏名又は名称】ヘルプスト, マルティン
【氏名又は名称原語表記】HERBST, Martin
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヘルプスト, マルティン
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/094341(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110735284(CN,A)
【文献】特開2019-190983(JP,A)
【文献】特開平07-136276(JP,A)
【文献】特開2019-198386(JP,A)
【文献】中国実用新案第206178827(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0000026(US,A1)
【文献】特表2019-530858(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063547(WO,A1)
【文献】米国特許第09756297(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第107072449(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109793501(CN,A)
【文献】特開2019-198385(JP,A)
【文献】特表2018-510334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0187232(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/83
A47K 13/00 - A47K 13/30
E03D 9/00 - E03D 9/16
G01N 33/00 - G01N 33/98
A61B 5/00 - A61B 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ーザの健康に関連する値を検出するための値検出装置を備える便座(1)において、前記値検出装置が、マルチスペクトルデータを収集するためのマルチスペクトルカメラ(2,2a,2b)を備え、
前記マルチスペクトルカメラ(2、2b)が、ユーザの身体のマルチスペクトルデータを収集するように向きが定められており、又はユーザの身体のマルチスペクトルデータを収集するように向けられることができ
前記値検出装置が、レーザ分光計を備えることを特徴とする、便座(1)。
【請求項2】
前記マルチスペクトルカメラが、前記便座における窓部(3、3a、3b)の背後に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の便座(1)。
【請求項3】
前記マルチスペクトルカメラ(2、2b)が、排泄物のマルチスペクトルデータを収集するように向きが定められており、又は排泄物のマルチスペクトルデータを収集するように向けられることができることを特徴とする、請求項1又は2に記載の便座(1)。
【請求項4】
前記値検出装置が、マルチスペクトルデータを収集する第2のマルチスペクトルカメラ(2,2a,2b)を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の便座(1)。
【請求項5】
前記値検出装置が、
ユーザの皮膚の色を検出するためのセンサ及び/又は
前記皮膚の皮膚電気活動及び/又は前記皮膚上の発汗量を測定するように構成された皮膚表面検出
備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の便座(1)。
【請求項6】
前記値検出装置がガスセンサを備えることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の便座(1)。
【請求項7】
前記値検出装置が、バイオフィードバックセンサ、及び/又は、バイオ共鳴測定のためのセンサ若しくはセンサシステムを備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の便座(1)。
【請求項8】
前記便座がディスプレイ(6)を備えることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の便座(1)。
【請求項9】
ーザの健康に関連する値を検出するためのシステムであって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の値検出装置を有する便座(1)と、
プロセッサ又はプロセッサシステムと
を備えるシステムにおいて、
前記プロセッサ又は前記プロセッサシステムが、マルチスペクトルデータを用いて前記ユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータを決定し、結果を出力するように構成されていることを特徴とする、システム。
【請求項10】
前記便座(1)に光源が含まれており、前記プロセッサ又は前記プロセッサシステムが、前記ユーザの皮膚の色を検出し、それに基づいてマルチスペクトルカメラのための前記光源のスペクトル及び/又は強度を決定し、それに応じて前記光源を制御しつつ、前記ユーザの身体内の血液に関する情報を収集するための前記マルチスペクトルカメラによる測定を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサ又は前記プロセッサシステムが、供給されたデータ、例えばマルチスペクトルデータを含むトレーニングデータセットに基づいて、アルゴリズムによって機械学習を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の値検出装置を備える便座及び/又は請求項9~11のいずれか一項に記載の値を検出するためのシステムによって、ユーザの値を検出するための方法において、
ユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータがマルチスペクトルデータを使用して決定され、結果が出力されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な値を測定するための装置を備える便座、そのような便座を備える、値を検出するためのシステム、及びそのような便座又はそのようなシステムによってユーザの値を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
便座は、一日に数回、誰もが使用する。例えば、欧州特許出願公開第3417766号明細書(EP3417766A1)から、ユーザの身体の値を測定するために、便座に重量センサ、組織の脂肪含有量、含水量、及びタンパク質含有量を測定するためのセンサを装備することが知られている。そして、ユーザがトイレを使用するたびにそれぞれの値を検証することができ、それにより、ユーザが追加のステップを取る必要はなく、またユーザが測定するための手間をかける必要なく、値の定期的な検証が保証される。収集されたデータは、ユーザの身体状態及びフィットネスを監視するために使用することができる。単一の便座はまた、通常、数人のユーザ、基本的には任意数のユーザによって使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなことから開始し、本発明の課題は、特にユーザの健康状態のより正確な及び/又は費用効果的な決定ないしは判定を可能にする改善された便座を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の便座、請求項10に記載のシステム、及び請求項11に記載の方法によって達成される。さらなる実施形態は従属請求項に記載される。
【0005】
便座は、所定の値、特にユーザの健康に関連する値(健康関連値)を検出するための値検出装置を備える。値検出装置は、マルチスペクトルデータを収集するためのマルチスペクトルカメラを備える。
【0006】
本明細書におけるユーザの健康関連値は、それぞれが単独である値であり、これらの値は集合的に、ユーザの健康状態に関する結論を引き出すことを可能にする。これらの健康関連値は、ユーザの身体内又は身体上で直接測定されないが、ユーザの身体についての結論を引き出すことを可能にする値、例えば、排泄物、老廃物、臭気、毛髪及び/又は爪の測定値を含み得るか、又はそのような値であり得る。健康関連値は、代替的に又は追加的に、ユーザの身体上で直接測定される値、例えば、体温、心拍数、体脂肪含有量、身体タンパク質含有量、身体含水量、血中酸素飽和度、及び/又は他の身体パラメータ等の身体パラメータを含むか、又はそのような値であり得る。
【0007】
マルチスペクトルカメラは、様々なスペクトル範囲内の光又は放射線(すなわち様々な周波数範囲内の光又は放射)を捕捉することによって、マルチスペクトルデータを提供することができる。様々なスペクトル範囲(周波数範囲)内の情報を用いて、そのようなマルチスペクトルデータは、ある物質(そこからの放射光がマルチスペクトルカメラによって捕捉された)内の成分及び存在する分子に関する情報を提供することができる。したがって、検出された物質の分析は、そのようなマルチスペクトルカメラを用いて実行され得る。例えば、マルチスペクトルカメラは、少なくとも2つ、例えば2つ、3つ又は4つのスペクトル範囲内のマルチスペクトルデータを収集することができ、その場合、各スペクトル範囲は、例えば少なくとも20nm又は少なくとも50nmの連続スペクトルを含み得る。
【0008】
マルチスペクトルカメラは、光を集束させ、次いで、集束された光の全体からマルチスペクトルデータを収集するか、又は2次元画像あるいは3次元画像内のマルチスペクトルデータを収集することができ、その場合、マルチスペクトルデータは、2次元画像又は3次元画像の各点(又は他の所定の領域)について収集され得る。
【0009】
特に、マルチスペクトルカメラは、マルチスペクトルデータを収集することができる(それによって、さらなる使用のためにマルチスペクトルデータを生成する)。このマルチスペクトルデータは、様々な波長で反射又は放射された電磁放射に関する情報を含み得る。マルチスペクトルカメラは、様々なスペクトル、例えば、完全な可視光スペクトル(又は可視光スペクトルの部分的な範囲)及び/又は非可視光スペクトル、例えば、紫外線又は赤外線、及び/又は紫外線又は赤外線スペクトルを超えて到達するスペクトルを捕捉することができる。例えば、マルチスペクトルカメラは、細菌又は分子等の多種多様な物質によって反射及び/又は吸収された光の量を検出(及び測定)することができ、それらを引き続き分析することができるようになっている。マルチスペクトルカメラは、様々な波長で物質によって反射又は放射された光を捕捉することができる1つ又は複数のセンサを備えることができる。
【0010】
マルチスペクトルカメラでは、マルチスペクトルデータに加えて、従来の(2次元)画像を任意選択的に記録することができる。次いで、そのような画像を、例えば自動画像解析によって評価することができる。例えば、排泄物の外観を考慮することができる。あるいは、従来の(2次元)画像を記録することができる1つ、2つ、又はそれ以上の追加のカメラを、値を検出するための装置(以下「値検出装置」ともいう)に含めることができる。
【0011】
捕捉されるスペクトルに関して(特に使用される周波数に関して)、マルチスペクトルカメラは、検査される材料に、特に検出される分子に適合され得る。マルチスペクトルカメラは、それが捕捉するスペクトル範囲が、検出される分子又は検査される物質が典型的なスペクトルを有するスペクトル範囲であるように構成され得る。検出される分子は、例えば、血液成分、血液、尿の成分、皮膚の成分等であり得、又はそれらを含み得る。次いで、身体の酸性化又は炎症の徴候及び/又は環境毒素(例えば、重金属又は薬物残留物)への曝露等の警告徴候の早期検出、並びに/あるいは結腸癌又は他の形態の癌等の疾患の早期検出を行うことができる。
【0012】
マルチスペクトルカメラのスペクトルは、機械的及び/又は電子的フィルタによって調整することができ、記録されたスペクトルを使用して、検査される材料又は検出される分子の有無についての結論を引き出すことができ、及び/又は検出される分子の量の定量的測定を行うことができる。そのようなマルチスペクトルカメラは、使用されるスペクトル(周波数)に関して制御可能であり得、及び/又は異なるフィルタと共に使用され得る。
【0013】
マルチスペクトルカメラは、水のスペクトルを除去する(機械的又は電子的)フィルタを備えることができ、その結果、身体のこの(主要な)成分及び身体自体の物質が干渉信号として現れない。
【0014】
マルチスペクトルカメラは、マルチスペクトルカメラによって覆われる領域(すなわち、光がマルチスペクトルカメラに当たることができる領域)を変更することができるように、便座内で移動可能であるように配置構成され得る。他の実施形態では、所定の領域(そこからの光)を記録することができるように、便座内に固定されるように構成される。
【0015】
マルチスペクトルカメラはトイレ又は他の場所に存在する周囲光又は光源で動作することができる。代替的に、マルチスペクトルカメラに一体化された又はそれとは別個の光源をマルチスペクトルカメラ用の便座に含めることができる。便座に含まれる(マルチスペクトルカメラに一体化された又はそれとは別個の)光源は、特に、1つ以上のスペクトル範囲、例えば、赤外線、UV及び/又はスペクトル光(例えば、可視光又は可視光の一部の範囲)をカバーすることができる。便座に含まれる光源のスペクトルは、光源を制御することによって調整可能(選択可能)とすることができる。代替的に、特定のスペクトル範囲のための1つ以上の光源を便座に含めることができる。光源は、便座に配置することができるが、トイレに別個に配置することもできる。光源は、固定的に配置されてもよく、又は代替的に、光源は、それが放射する光の方向が予め規定され得るように移動可能であってもよい。
【0016】
このような便座は、市販のトイレに後付けすることができるように、標準的な接続部を備えることができる。
【0017】
便座は、値検出装置に供給するための充電式電池を備えることができる。代替的又は追加的に、それは、例えば再充電可能なバッテリを充電することによって、その中に設けられた値検出装置に電力を供給するための電力接続及び/又は他のオプションを含むことができる。例えば、それは、USB、ミニUSB、又は他の充電ポート等の充電ポート、及び/又は本線に接続することができる従来の電力接続部を備えることができる。代替的に、便座は、便座内の充電式バッテリが誘導によって充電され得るように構成され得る。このような便座は、適合するトイレと共に配されることもでき、又は適合するトイレのために設けることもできる。この場合、便座には、例えば、便器の電力接続部を介して電力を供給することができ、例えば、便器への接続部材を介して便座に電力を供給することができる。
【0018】
さらに、便座は、データ、特に検出された値が、例えばUSBケーブル又はネットワークケーブル等のケーブルを介して、及び/又は無線接続、例えばWIFI又はBluetooth(登録商標)を介して、便座の外部のプロセッサに送信されることを可能にすることができる。
【0019】
本発明による便座は、便蓋を備えることができる。便蓋は、便座上に配置され、使用していないときに便座を保護することができる。便蓋又は便座は、便座を洗浄するための装置を備えることができ、それにより、値又はその一部を検出するための装置を備える便座は、各使用後に洗浄され、その後の使用に利用可能にされ得る。
【0020】
マルチスペクトルカメラは、便座内の窓部の背後に配置することができる。したがって、窓部を通して外部から視認することができる。窓部は、検出されるべき分子が典型的なスペクトルを有するスペクトル範囲において光透過性であることができ、すなわち、考慮中のスペクトル範囲において光の少なくとも50%、例えば少なくとも80%を通過させる。光源は、マルチスペクトルカメラと同じ又は異なる窓部の背後に配置することができる。光源は、窓部なしで配置することもできる。
【0021】
便座のこのような窓部は、市販のトイレ洗浄化学薬品で洗浄できるように、耐酸性とすることができる。窓部は、便座と同一平面に位置合わせすることができ、その結果、便座と窓部との間にはほこりが集まる可能性がある空間がなくなる。
【0022】
便座において、マルチスペクトルカメラの向きを、排泄物のマルチスペクトルデータを収集するよう定めることができる。特に、マルチスペクトルカメラは、便器の内容物のマルチスペクトルデータが収集され得るようその向きを定めることができる。例えば、マルチスペクトルカメラは、便座の下側及び/又は便座の内側に配置することができる。便座の上側、下側、内側及び外側を特定する場合、便座は、使用準備状態、即ち、便器上に静止した状態にあり、上側がユーザに面し、下側が便器に面し、外側が便器から離れる方向に面する便座の側に配置され、便座の内側が、便器を使用することができる開口部を定めると仮定する。便座は、便座が下側で便器上に載置され、便器の縁を越えてわずかに内側に突出する、すなわち、特に便器の縁と同一平面上にないように、例えば、便器の縁を越えて内側に少なくとも0.5cm、例えば少なくとも1cm又は少なくとも2cm突出するのに適しているように構成され得る。
【0023】
マルチスペクトルカメラは、特に便座の下側で、例えば便座の内側に隣接する領域に配置することができる。便器の縁を越えて内側に突出するように構成された便座内のマルチスペクトルカメラのそのような配置により、マルチスペクトルカメラが便器の縁の背後に隠れないようにすることができる。
【0024】
排泄物のマルチスペクトルデータを収集するように向きが定められているか又は向きを定め得るマルチスペクトルカメラは、特に検出されるスペクトルに関して、検査される分子又は材料に適合されており適合され得る。検査されるそのような材料及び分子は、例えば、血液、血液成分、癌細胞又はそれらの残留物、排泄物中の色及び/又は他の残留物を含むものとすることができる。マルチスペクトルカメラは、特に、それぞれの分子又は材料が典型的なスペクトルを有するスペクトル範囲を、例えば1つ又は複数のフィルタを通して検査するように構成することができる。排泄物からマルチスペクトルデータを収集するように向きを定めることができるマルチスペクトルカメラの使用は、テストストリップ又は実験室分析を使用する従来の方法とは異なり、排泄物を包括的に検査することができるが、消耗品を廃棄する必要がないという利点を有する。
【0025】
マルチスペクトルカメラは、ユーザの身体のマルチスペクトルデータを収集するように向きを定めることができる。例えば、便座に座っている間にユーザの身体のマルチスペクトルデータを収集することができるように、便座の上側(任意選択的に窓部の後ろ)に配置することができる。そのような場合、光源は、任意選択的にカメラ内に含まれてもよく、及び/又はカメラと同じ窓部の背後に配置されてもよい。
【0026】
あるいは、ユーザの身体のマルチスペクトルデータを収集するように向きが定められた又は向きを定めることができるマルチスペクトルカメラを便座の内側に配置することができ、ユーザが便座に座っている間にユーザの身体のデータを上向きの角度で記録することによって収集することができる。便座の内側に配置される場合、マルチスペクトルカメラは、排泄物のマルチスペクトルデータ及びユーザの身体のマルチスペクトルデータを1つの同じマルチスペクトルカメラで収集することができるように、移動可能(及び制御可能)に配置することができる。このマルチスペクトルカメラはまた、使用されるスペクトルに関して適合可能であり得、例えば、検査されるべき異なる材料及び検出されるべき分子に対して調節され得るように、電子フィルタ及び/又は機械的フィルタを用いて制御可能であり得る。
【0027】
マルチスペクトルカメラは、特に、ユーザの皮膚を通して、皮膚のマルチスペクトルデータ、例えば、皮膚の色及び皮膚の質感、又は血液の酸素飽和度等を示すマルチスペクトルデータを収集することができるように位置合わせすることができる。そのようなマルチスペクトルカメラは、ユーザの身体のマルチスペクトルデータを収集するように構成されており、又はそのように構成することができ、検査される材料及び分子に関して、例えば、血液又は皮膚の酸素飽和度又は他の成分について結論を引き出すことを可能にするスペクトルに一致させることができる。
【0028】
便座において、検出装置は、マルチスペクトルデータを収集するための第1及び第2のマルチスペクトルカメラを備えることができる。これら2つのマルチスペクトルカメラのそれぞれは、前述のように構成することができる。例えば、1つ又は両方のマルチスペクトルカメラを(個別に又は一緒に)窓部の背後に配置することができる。第1のマルチスペクトルカメラは、排泄物のマルチスペクトルデータを収集するように向きを定めることができ、排泄物のマルチスペクトルデータを収集するためのマルチスペクトルカメラについて前述したよう構成することができる。第2のマルチスペクトルカメラは、ユーザの身体のマルチスペクトルデータを収集するように向きを定めることができ、そのようなマルチスペクトルカメラについて上述したように構成及び配置することができる。
【0029】
ユーザの値を検出するための値検出装置は、ユーザの皮膚の色を検出するセンサ、例えば、ユーザの皮膚の色を判定するのに適したスペクトルセンサを有することができる。次いで、この情報を使用して、マルチスペクトルカメラを用いてユーザの値をさらに検出するために光源の強度及びスペクトル放射を調整することができる。
【0030】
ユーザの値を検出するための値検出装置は、代替的に又は追加的に、皮膚表面検出器を有することができる。皮膚表面検出器は、例えば、皮膚上の粒子及び臭気を測定するように、例えば、皮膚の皮膚電気活動及び/又は皮膚上の発汗量を測定するように構成することができる。
【0031】
ユーザの値を検出するための値検出装置は、代替的又は追加的にレーザ分光計を備えることができる。レーザ分光計は、例えば、原子成分又は分子成分を試験するために使用され得、そして例えば、任意の種類の生物学的試料の分子組成物のフィンガープリントを作製するために使用され得る。生体学的試料の分子組成のそのようなフィンガープリントは、特に、特定の(既知の)原子又は分子成分が存在するかどうか、及び任意選択的に、これらの成分がどの程度の量又は濃度で存在するかを測定することを可能にすることができる。
【0032】
値検出装置は、ガスセンサを備えることができ、それを用いて、例えば、排泄物についてのさらなる情報、特にそれらのガス放出、皮膚からのガス放出又は周囲空気からのガス混合の情報を得ることができる。
【0033】
ガスセンサは、ガス状物質を検出するための化学センサとすることができる。例えば、ガス中の特定の化学成分の割合は、化学センサによって、読み出すことができる電気信号に変換することができる(したがって、例えば、ユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータを決定するときに考慮に入れることができる値として検出することができる)。ガスセンサは、1つ又は複数の標的物質に対する選択性及び応答に限界を有することがある。センサ選択性は、例えば、1つ、2つ又はそれ以上の標的物質に対する特定の反応性を用いて予め設定することができる(センサは、例えば、1つ、2つ又はそれ以上の標的物質を選択的に検出し、他の物質に対して(関連する)応答を示すことができない)。
【0034】
あるいは、センサ感度を変化させることができる(例えば、センサを制御することによって)。測定は、例えば、電気的及び/又は機械的センサによって行うことができる。ガスセンサは、任意選択的に分子センサとすることができる。ガスセンサは、能動センサ又は受動センサとすることができる。
【0035】
ガスセンサは、H濃度から引き出された結論を数学的にマッピングすることができるCOeq(CO当量)を出力することができる。
【0036】
値検出装置は、代替的に又は追加的に、1つ又は複数のさらなるセンサ、例えば、1つ又は複数の重量センサ、皮膚抵抗を測定するための(例えば体脂肪率を決定するための)測定センサ、組織中の含水量を測定するためのセンサ、骨量を測定するためのセンサ、汚染物質センサ、高周波センサ又は他の周波数のためのセンサ、X線センサ、自律神経系を分析するためのセンサ若しくはセンサシステム、温度センサ、心拍を測定するためのセンサ及び/又は血圧、ECGの測定センサ、血糖を測定するためのセンサ、血流及び/又は血液量を測定するためのセンサ、血液中の乳酸及び/又は塩濃度を測定するためのセンサを備えることができる。装置は、ユーザの排泄物及び/又は身体内の放射能を測定するためのガイガーカウンタ又は他の放射線センサを含むセンサ又はゲージを含むことができる。そのような各センサは、ユーザの健康状態のさらにより正確な状況を得ることを可能にすることに寄与することができる。値検出装置は、バイオフィードバックセンサ及び/又は生体共鳴測定のためのセンサ及び/又はセンサシステムを含むこともできる。
【0037】
便座は、情報、例えば単純な情報又は警告及び/又はバイオフィードバックを表示することを可能にするディスプレイを備えることができる。
【0038】
本発明はさらに、上述の便座と、プロセッサ又は2つ以上のプロセッサから構成されるプロセッサシステムとを備える、ユーザの値を検出するためのシステムを備え、プロセッサ又はプロセッサシステムは、マルチスペクトルデータを使用して、ユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータを決定し、結果を出力するように構成される(プロセッサ又はプロセッサシステムは、以下、全体として評価プロセッサとも称する)。
【0039】
プロセッサ又はプロセッサシステムのプロセッサは、便座に配置することができる。便座内のプロセッサは、値検出装置の測定値を検出し、それらを一時的に記憶し、それらを例えばケーブルを介して又は無線で外部に転送するように構成することができる。
【0040】
プロセッサ又はプロセッサシステムの1つ又は複数のプロセッサは、代替的又は追加的に、便座の外側、例えば近くのコンピュータ、クラウド、クラウドシステム、分散システム、スマートフォン又は他の携帯装置に配置することができる。
【0041】
ユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータは、特に、マルチスペクトルデータ又は直接測定された値又はマルチスペクトルデータから計算された値及び任意選択でさらなる測定値又は何らかの他の方法で導出された値とすることができる。特に、情報は、ユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータを決定するために、1つ又は複数のマルチスペクトルカメラからのマルチスペクトルデータから取得され得る。例えば、評価プロセッサは、マルチスペクトルデータから、例えば検査される物質の1つ(又は複数)の成分について及び/又は検出される分子についての情報をアルゴリズム的に決定するように構成することができる。この目的のために、それは、特定のスペクトル範囲内のマルチスペクトルデータを検査及び比較することによって、特に背景スペクトル(例えば、便器からの反射及び/又は水)又はマルチスペクトルデータからの他の干渉信号を除去するように構成され、及び/又は、検出されるべき特定の成分及び/又は分子の存在又は不在についての情報を得るように構成され得る。検査される材料の1つ又は複数の成分に関する、及び/又は検出される分子に関するこの情報は、ユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータを表すことができる。
【0042】
ユーザの健康状態に関連する1つ又は複数のパラメータを決定するために、マルチスペクトルデータからの上述の情報(例えば、検査される材料の1つ又は複数の成分についての情報及び/又は検出される分子についての情報)は、任意的に又は追加的に、1つ又は複数の他のセンサから任意選択的に入手可能な1つ又は複数のさらなる測定データと、及び/又はユーザに関する任意選択的に入手可能な1つ又は複数の情報、例えば年齢、サイズ、医療データ等と組み合わせることができる。そこから、例えば計算又は標準値との比較によって、1つ又は複数の健康パラメータを決定することができる。それらは、傾向を決定するために過去からのユーザのデータと任意に比較されることができる。評価プロセッサは、評価に関して前述されたステップのうちの1つ、一部、又は全てを行うように構成されることができる。
【0043】
評価プロセッサは、結果を出力するように構成される。結果は、ユーザの健康状態に関する1つ又は複数の健康パラメータであるか、それを含むか、又はそれに基づくものとすることができる。
【0044】
結果は、評価プロセッサに接続された制御可能なディスプレイ、例えば、モニタ上に表示することができ、テキスト又は機械可読形式で1人又は複数の受信者に送信することができ、音声出力によって出力することができ、別のプロセッサ、例えば、便座又はスマートフォン内のプロセッサに送信することができ、又は別の方法で出力することができる。例えば、便座のディスプレイ及び/又は別の装置、例えばユーザのスマートフォンに結果を示すことができる。
【0045】
例えば、評価プロセッサは、全てが「OK」であること、又は測定された値が問題を示唆することのいずれかを示す値に基づいて、全体的なバイナリ結果を提供するように構成され得る。代替的に、評価プロセッサは、より詳細な結果、例えば、ユーザの健康状態に関するいくつかのパラメータ、過去からのユーザのデータとの比較、データに関する傾向、ユーザ又は排泄物の生体診断値、正常値との比較を提供するように、及び/又はユーザに対する提案、例えば栄養アドバイス等を出力するように、構成され得る。さらに、結果は、評価プロセッサによって記憶され、将来の結果を決定するときに考慮されることができ、及び/又はさらなるステップが、結果に基づいて実行されることができる。
【0046】
供給されたデータに基づいて、評価プロセッサは、特に、供給されたデータ、特にマルチスペクトルデータを含む検出値を有するトレーニングデータセット、及び任意選択的に、検出値が供給される個人に関するさらなる情報、例えば医療情報、例えば年齢、サイズ、体重、前提条件等に基づいて、1つ又は複数のアルゴリズムにより機械学習を実行するように構成され得る。したがって、現在の知得状態に従ってユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータを計算するアルゴリズムを開発することができる。そのようなアルゴリズムは、特に量子物理学を考慮に入れることができる。
【0047】
評価プロセッサは、システムをさらに発展させることができるよう、追加の又は新しい健康情報に基づいて、及び/又はさらなるトレーニングデータセットを用いて、任意選択的にシステムの初期化後に、さらなる機械学習を実行するように構成することができる。特に、新たな医学的所見を機械学習によってシステムに考慮することができる。さらに、評価プロセッサは、さらなる機械学習ステップを別の時点で(例えば、ユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータのそれぞれの追加の決定を用いて、又はユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータを決定する特定のサイクル数の後に)実行するように構成することができる。したがって、評価プロセッサの人工知能を機械学習によってさらに発展させることができる。
【0048】
便座及び評価プロセッサに加えて、システムはまた、1つ以上のさらなるディスプレイを備えることができる。例えば、システムは、ディスプレイ(例えば、モニタ)を備えることができ、そこに結果を表示することができ、また、それは例えばトイレの隣に設置することができ、あるいは、プロセッサがシステムの評価プロセッサである携帯端末装置のディスプレイを備えることができる。特に、評価プロセッサは、いくつかのプロセッサのシステムとすることができ、例えば、いくつかのプロセッサは、例えば計算集約的なステップを実行することができるクラウド内に配置することができ、一方、便座内又は携帯端末装置若しくはユーザのスマートフォン内のプロセッサは、計算されたユーザの1つ以上の健康パラメータを出力し、任意選択的に表示する。
【0049】
評価プロセッサは、ユーザの皮膚の色を検出し、それに基づいて、マルチスペクトルカメラのための光源のスペクトル及び/又は強度を決定し、それに応じて光源を制御して、例えば、光源のための適切なフィルタをオンにし、及び/又は光源の強度を調整することによって、光源の対応するスペクトル及び/又は対応する強度で値の検出が実行されるように構成され得る。ユーザの皮膚の色は、例えば、ユーザの皮膚の色を検出するためのセンサによって、又はマルチスペクトルカメラによる第1の測定によって検出することができる。ユーザの皮膚を通して測定値を得るために、例えば、ユーザの身体内の血液に関する情報を収集するために、ユーザの皮膚の色素沈着に応じて、対応する異なる光源の強度及び/又は異なるスペクトルが必要とされ得るので、ユーザの身体に対して実際の測定が実行される前にユーザの皮膚の色を検出することが有利であろう。加えて、ユーザの皮膚の色に関する情報は、皮膚を通して得られるスペクトルからユーザの皮膚の色を適宜除去することを可能にすることができる。
【0050】
評価プロセッサはまた、マルチスペクトルデータから、1つ又は複数のスペクトル(例えば水のスペクトル、光源及び/又はマルチスペクトルカメラが背後に配置される1つ又は複数の窓部のスペクトル、及び/又は背景のスペクトル(例えば便器の反射))のような干渉信号を除去するように構成され得る(したがって、これらの干渉信号なしでユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータを決定するように構成され得る)。
【0051】
評価プロセッサは、結果に基づいて処理ステップを実行するように構成することができる。例えば、生体共鳴測定のためのセンサシステムの結果に基づいて生体共鳴治療を実行するように、又は生体フィードバックを提供するように構成することができる。
【0052】
本発明は、上述したような値を検出するための値検出装置及び/又は上述したようなユーザの値を検出するためのシステムを含む便座によってユーザの値を検出するための方法を更に含む。そのような方法では、マルチスペクトルデータを使用してユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータが決定され、結果が出力される。したがって、上記で説明され、システム内で又は便座を用いてそれぞれ、特に評価プロセッサによって実行することができるすべてのステップは、方法のステップとすることができる。
【0053】
以下、本発明のさらなる態様を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1a】上からある角度で見た便座を示している。
図1b】上からある角度で見た便座を示している。
図2a】便座の一部の断面図である。
図2b】便座の一部の断面図である。
図3a】便座を有する便器の断面図である。
図3b】便座を有する便器の断面図である。
図4】便座を備えるシステムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1aは、上からある角度で見た便座を示している。便座1は、特に、(様々な値を検出するための値検出装置において)マルチスペクトルデータを収集するためのマルチスペクトルカメラ2を備える。図示の例では、このマルチスペクトルカメラ2は、便座の窓部3の背後に配置され、ユーザの身体のスペクトルを捕捉するように配向されるように向きが定められている。マルチスペクトルカメラ2は、特に、典型的にはユーザが通常の姿勢で便座1に座っているときにユーザの脚の下に配置されるよう、便座1内に配置される。
【0056】
便座は、便座を便器に接続するための接続部4を備えることができ、その場合、便座が任意の市販のトイレに接続され得るように、通常のトイレに典型的に使用される標準的な接続部とすることができる。あるいは、接続部は、例えば、便座と共に販売され得る特定のトイレに適合するように構成され得、その結果、例えば、電力供給及び/又はデータ伝送もまた、接続部4(図示せず)によって可能とすることができる。便座は、さらなるセンサ5、例えば、以下のセンサのうちの1つ又は複数を備えることができる。すなわち、ガスセンサ、皮膚色を検出するためのセンサ、皮膚表面検出器、重量センサ、温度センサ、ECG、ガイガーカウンタ、バイオフィードバックセンサ、生体共鳴測定のためのセンサシステムのうちの1つ又は複数を備えることができる。追加的又は代替的に、便座1はレーザ分光計(図示せず)を任意選択的に備えることができる。
【0057】
図示のように、便座1は、任意選択的に、ディスプレイ6を備えることができる。図において、ディスプレイ6は、例えば便座1の後端部に配置され、ユーザが立ち便器を洗浄する際にこのディスプレイを見ることができるようになっている。また、例としては、推奨されるパラメータから逸脱するユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータを示すことができる「X」の形の二値結果表示がディスプレイ6上に示される。もちろん、異なる形の警告、二値の「OK」等の他の結果表示も得られる。より詳細な結果表示、例えば、1つ以上のパラメータ、測定値、又は情報の形態もまた、ディスプレイ上に表示され得る。
【0058】
図示のマルチスペクトルカメラに加えて、又はその代替として、便座は、排泄物(図1aでは見えない)に向けることができるマルチスペクトルカメラを任意選択的に備えることができる。他の実施形態では、便座は、ユーザの身体及び排泄物に向けることができ、例えば便座1の内側に移動可能かつ制御可能に配置されるマルチスペクトルカメラを備えることができる(図1aには示さず)。
【0059】
図1bは、上からある角度で見た便座の代替実施形態を示している。この実施形態では、マルチスペクトルカメラ2は、便座1の後部領域の内側において軸線Bに対して中心に配置され、ディスプレイ6は、便座1の前部領域において軸線Bに対して中心に配置されている。軸線Bは、ここでは、便座の形状の対称軸線を表す(諸数値を検出するための装置、特にマルチスペクトルカメラやセンサ、またディスプレイ等は、便座の形状の対称軸線に関しては考慮されない、すなわち、対称軸線に関して対称に配置される必要はない)。図示実施形態では、マルチスペクトルカメラ2は、便座を使用するときにユーザが通常はマルチスペクトルカメラ2上に着座しないように配置される。
【0060】
他の実施形態では、マルチスペクトルカメラ2及び/又はディスプレイ6は、軸線Bに対して中心ではなく、軸線Bに対して側方にオフセットして配置することもできる(図示せず)。
【0061】
図示されるように、便座1はまた、便座を便器に接続するための接続部4を備えることができ、接続部4は、特に図1aに示されるように構成され得る。さらに、便座1は、1つ又は複数のさらなるセンサ5、例えば、図1aについて説明したようなセンサを備えることができる。便座1は、任意選択的に、レーザ分光計を備えることができる。便座1は、任意選択的に、便座1の例えば後半分、例えば後部3分の1に配置することができるガスセンサ9を備えることができる。ガスセンサ9は、例えば、便座1の内側に配置することができ、又は便座1の外側よりも内側に近い位置に配置することができる。
【0062】
例えば、レ点の形の二値結果がディスプレイ6上に表示され、ユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータが所定の(通常の)パラメータ内にあることを示すことができる。例えば、図1aに関して説明されるような他の結果もまた、当然ながら、ディスプレイ6上に表示され得る。図1aについて説明したように、マルチスペクトルカメラは、代替的に又は追加的に、例えば排泄物(図1bには図示せず)に向けられたマルチスペクトルカメラからなるものとすることができる。他の実施形態では、マルチスペクトルカメラを便座内に備えることができ、ユーザの身体及び排泄物に向けることができ、マルチスペクトルカメラは、例えば便座1の内側に移動可能かつ制御可能に配置される(図1bには図示せず)。
【0063】
図2aは、本発明による便座1の一部の断面を示しており、例えば、図1aの便座の線Aに沿って見えるものである。窓部3aの背後に第1のスペクトルカメラ2aが、窓部3bの背後に第2のマルチスペクトルカメラ2bがあるように示されている。
【0064】
マルチスペクトルカメラ2aは、便座を使用するときに、典型的にはユーザの身体(典型的にはユーザの腿の下面)に向けられるように配置される。図示のマルチスペクトルカメラ2aには光源を組み込むことができる。光源のスペクトルは、ユーザの身体を検査するのに適したスペクトル、特に、例えば赤外線放射、UV放射、又は身体成分、例えば血液成分若しくは血中酸素飽和度について結論を引き出すことを可能にする他のスペクトル範囲を含むことができる。他の実施形態では、光源は、マルチスペクトルカメラ2aと同じ窓部3aの背後に配置されるが、そこから分離されているものとすることができる(図示せず)。
【0065】
第2のマルチスペクトルカメラ2bは、例えば、窓部3bの背後にあり、便座が使用されるときに便器への方向に向けられるように下向きに向きが定められている(したがって、便器内の排泄物の写真を撮影することができる)。このマルチスペクトルカメラは、一体化された光源を備えるか、又は別個の光源を使用することもできる。代替的又は追加的に、それは、いずれにしても存在する光、例えば、周囲光又は照明されたトイレからの光と共に使用するように構成され得る。
【0066】
便座及びマルチスペクトルカメラ2bを半径方向に通る断面において、窓部3bは、便座が使用されるときにマルチスペクトルカメラ2bが便器のリムによって覆われないように、図2に示されるように、外側よりも便座の内側に近い位置に配置され得る。便座及びマルチスペクトルカメラ2bを半径方向に通る断面において、図2の窓部3aも便座の内側に向かってオフセットして配置されている。しかしながら、この配置は、他の実施形態では異なる場合もあり、例えば、マルチスペクトルカメラ2aは、便座及びマルチスペクトルカメラ2aを通る断面において、便座1の内側と外側との間の中央に、又は便座1の外側に近い位置に配置され得る。
【0067】
図2bは、例えば、図1bの便座の線Aを通るように見える便座1の一部の断面を示す。任意的な窓部3aの背後に第1のスペクトルカメラ2aがあり、任意的な窓部3bの背後に第2のマルチスペクトルカメラ2bがあるように示されている。
【0068】
マルチスペクトルカメラ2a及び/又は2bはそれぞれ、図2aのマルチスペクトルカメラ2a及び/又は2bについて説明したように構成することができる。代替的又は追加的に(図2aには記載されていない)、マルチスペクトルカメラ2aは、存在する光、例えば周囲光と共に使用するように構成することができる。
【0069】
図3aは、マルチスペクトルカメラ2及び便座1の断面を示し、便座1は便器上に配置されている。このような断面は、例えば、図1aの線Bに沿った断面とすることができる。2つのマルチスペクトルカメラ2a及び2bがそこに例として描かれており、窓部3aの背後にある1つのマルチスペクトルカメラ2aは任意選択的にユーザの身体に向けられ、窓部3bの背後にある第2のマルチスペクトルカメラ2bは任意選択的に排泄物に向けられる。図3aに示す例では、マルチスペクトルカメラ3bに光を提供するために、光源7が便座1の後部に任意選択的に設けられる。光源7は、例えば機械的又は電子的フィルタによって調整することができるスペクトルを含むことができ、及び/又は、排泄物を検査するために適合される光のスペクトル分布を含むことができる。光源7は、点光源であってもよく、又は、例えば光ストリップとして構成されるように拡張されてもよい。光帯状光源7は、例えば、便座の内側に平行に、それに沿って1cmより長く、例えば少なくとも10cm延びるものとすることができる。また、図3aには、例えば図1aのディスプレイのように構成することができる便座1の任意選択的に存在するディスプレイ6も示されている。
【0070】
図3bは、マルチスペクトルカメラ2a及び2bと便座1との断面を示し、便座1は便器上に配置されている。そのような断面は、例えば、図1bの線B(軸B)に沿った断面とすることができる。マルチスペクトルカメラ2aは、任意選択的に、窓部3aの背後に配置することができ、図3aのマルチスペクトルカメラ2aについて説明したように構成することができる。マルチスペクトルカメラ2bは、任意選択的に、窓部3bの背後に配置され、図3aのマルチスペクトルカメラ3bについて説明したように構成することができる。光源7は、任意選択的に便座1に含まれてもよく、例えば、図3aの光源7について説明したように構成されてもよい(図示せず)。
【0071】
図4は、便座1を備えるシステムを示している。図4に示されるシステムには便座1が含まれ、便座1において、諸数値を検出するための装置は、任意選択的な窓部3の背後のマルチスペクトルカメラ2と、任意選択的な1つ又は複数のセンサ5及び/又はレーザ分光計とを備えることができる。加えて、システムは、例えばスマートフォン等の携帯端末装置の形態で現在示されている外部ディスプレイ8も備え、外部ディスプレイ8において、評価プロセッサから結果を出力することができる。他の実施形態では、システムは、異なるディスプレイ、例えば、異なるモニタ(図4に図示せず)を備えることができる。他の実施形態では、マルチスペクトルカメラ2(又はいくつかのマルチスペクトルカメラ、例えばマルチスペクトルカメラ2a、2b)は、便座1内のシステム内の異なる位置に配置することができ、例えば図1b又は図2bに示すように配置することができる。代替的又は追加的に、システムは、便座内にディスプレイ(図示せず)を備えることができる。
【0072】
そのようなシステムにおける評価プロセッサは、例えば、結果を出力するようにアプリによって構成される、例えばスマートフォンの携帯端末装置のプロセッサを含むものとすることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、評価プロセッサはまた、任意選択的に、例えばマルチスペクトルデータを使用してユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータを決定する更なるステップを実行するように構成された、例えばクラウド内に配置された1つ又は複数のさらなるプロセッサを含むことができる。他の実施形態では、これらのさらなるステップは、携帯端末装置、例えばスマートフォンのプロセッサによってのみ実行することもできる。すなわち、データ保護の理由から、検出された値、特に1つ又は複数のセンサによって収集されたマルチスペクトルデータ及び任意選択のさらなるデータを、例えばユーザ又は小さなグループの人々によってしか物理的にアクセスできない(システムに含まれる)携帯装置において直接処理し、そこで結果を出力できるようにすることが有利であろう。
【0074】
加えて、便座1は、マルチスペクトルデータを収集するための値及び任意選択的にさらなる値を検出するための装置を使用するように構成されたプロセッサを、例えばセンサ5を使用するプロセッサを任意選択的に備え得る。したがって、いくつかの実施形態では、評価プロセッサは、携帯端末装置及び任意選択で便座のみに配置することができ、他の実施形態では、クラウド又は外部データセンタに配置されたプロセッサを備えることもできる。
[発明の項目]
[項目1]
値、特にユーザの健康に関連する値を検出するための値検出装置を備える便座(1)において、前記値検出装置が、マルチスペクトルデータを収集するためのマルチスペクトルカメラ(2,2a,2b)を備えることを特徴とする、便座(1)。
[項目2]
前記マルチスペクトルカメラが、前記便座における窓部(3、3a、3b)の背後に配置されていることを特徴とする、項目1に記載の便座(1)。
[項目3]
前記マルチスペクトルカメラ(2、2b)が、排泄物のマルチスペクトルデータを収集するように向きが定められており、又は排泄物のマルチスペクトルデータを収集するように向けられることができることを特徴とする、項目1又は2に記載の便座(1)。
[項目4]
前記マルチスペクトルカメラ(2、2b)が、ユーザの身体のマルチスペクトルデータを収集するように向きが定められており、又はユーザの身体のマルチスペクトルデータを収集するように向けられることができることを特徴とする、項目1~3のいずれか一項に記載の便座(1)。
[項目5]
前記値検出装置が、マルチスペクトルデータを収集する第2のマルチスペクトルカメラ(2,2a,2b)を備えることを特徴とする、項目1~4のいずれか一項に記載の便座(1)。
[項目6]
前記値検出装置が、ユーザの皮膚の色を検出するためのセンサ及び/又は皮膚表面検出器及び/又はレーザ分光計を備えることを特徴とする、項目1~5のいずれか一項に記載の便座(1)。
[項目7]
前記値検出装置がガスセンサを備えることを特徴とする、項目1~6のいずれか一項に記載の便座(1)。
[項目8]
前記値検出装置が、バイオフィードバックセンサ、及び/又は、バイオ共鳴測定のためのセンサ若しくはセンサシステムを備えることを特徴とする、項目1~7のいずれか一項に記載の便座(1)。
[項目9]
前記便座がディスプレイ(6)を備えることを特徴とする、項目1~8のいずれか一項に記載の便座(1)。
[項目10]
値、特にユーザの健康に関連する値を検出するためのシステムであって、
項目1~9のいずれか一項に記載の値検出装置を有する便座(1)と、
プロセッサ又はプロセッサシステムと
を備えるシステムにおいて、
前記プロセッサ又は前記プロセッサシステムが、マルチスペクトルデータを用いて前記ユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータを決定し、結果を出力するように構成されていることを特徴とする、システム。
[項目11]
前記プロセッサ又は前記プロセッサシステムが、前記ユーザの皮膚の色を検出し、それに基づいてマルチスペクトルカメラのための光源のスペクトル及び/又は強度を決定し、それに応じて前記光源を制御するように構成されていることを特徴とする、項目10に記載のシステム。
[項目12]
前記プロセッサ又は前記プロセッサシステムが、供給されたデータ、例えばマルチスペクトルデータを含むトレーニングデータセットに基づいて、アルゴリズムによって機械学習を実行するように構成されていることを特徴とする、項目10又は11に記載のシステム。
[項目13]
前記プロセッサ又は前記プロセッサシステムが、前記結果に基づいて、治療ステップ、例えば生体共鳴療法を実行するように構成されていることを特徴とする、項目10~12のいずれか一項に記載のシステム。
[項目14]
項目1~9のいずれか一項に記載の値検出装置を備える便座及び/又は項目10~13のいずれか一項に記載の値を検出するためのシステムを備える便座によって、ユーザの値を検出するための方法において、
ユーザの健康状態に関する1つ又は複数のパラメータがマルチスペクトルデータを使用して決定され、結果が出力されることを特徴とする、方法。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4